かのえ⑤三伏 庚の金氣の伏藏する日︒即ち夏至の後の第三の庚
の日を初伏︑第四の庚の日を中伏︑立秋の後の第一の庚
の日を末伏といふ︒夏の最も暑い期間をいふ︒
⑥年に稀なる良夜 七夕︒邸ち星會の日︒
⑦笈を留める 旅中に逗留する︒笈は行脚檜や修験者など
が︑佛具や日用の品を入れて背に負ふ箱で︑四隅に脚が
あり︑開閉の戸がついてみる︒
⑧推敲 詩文を煉って良いものにすること︒
⑨魚目 魚目燕石といひ︑玉に似て非なるもの︒ にせも
の︒輪雪らの作を卑下した稔︒
⑩口をひらく 議論する︒前の推敲を受けた語︒ ﹁叩﹂は
問ふ︒尋ねる意︒
⑪梓の手をやとふ 上梓出版する意︒ ﹁梓﹂は文書を彫る
板︒書物を印刷する版木︒また書物を印刷すること︒
﹁けらし﹂は⁝⁝たらしいと娩曲に言った︒
⑫纂輯 詩文を集め牧めること︒編纂︒
⑬梓行 出版︒⑭参照︒
附 記 版本のコピーをいただきました学習院大学国文学科研究
室︑東京大学図書館に厚く御禮申上げます︒
参考文献
星會集︵俳書文庫本︶ 松本義一校訂
芭蕉研究 杉浦正一郎著
美作俳譜史 池田土城著
俳諸旧名僻典 高木蒼梧著
(75)
津山高専紀要第20号(1982)
つむ﹂或は﹁ふくさ﹂の意︒
⑯衣々 後朝とも書く︒相星つた男女が翌朝別れること︒
⑰硝子 ﹁ビイドロ﹂はポルトガル語︒
⑱橘さけば ﹃古今集﹄夏︑よみ人しらずの︑ ﹁さ月まつ
花橘の香をかげば昔の人のそでの香ぞする﹂の引用︒或
は垂仁天皇の時︑田道聞守は勅を奉じて常世國に至り︑
非時の証果︵ときじくのかくのこのみ−橘︶を得て蹄朝
したが︑垂仁天皇は既に崩御せられてるた︒香子を御陵
に献じた田道聞守は悲歎のあまり途に死んだ︒この事を
引くか︒記紀に見える︒橘は初夏に白色の花を開き芳香
を放つ︒實は蜜柑に似て酸味が強く香料にする︒食用に
はならない︒
⑲忍路 ひそみかくれて行く路︒
⑳匂ひ水 香水︒ ﹁しだる﹂はしなだれる︒甚だしなへ
る︒⑳執筆 俳譜の席で句を撃取り︑披露して懐紙に記する
入︒⑫壮嚢 肚は盛大の意︒大きな︒嚢は詩嚢︒詩句の原稿を
入れる袋︒錦嚢ともいふ︒この集の朱拙の牧集してみた
諸家の句をいった︒朱拙の序の﹁乞食袋の口をほどき︑
東西の珠玉をえりて其文房になげぬ﹂とある︒但し﹁此
一巻﹂とは牛部屋の歌仙である︒
㊧梓行 版行︒印刷して螢行ずること︒ ﹁いまだ世の梓行
に見ざる﹂とあるやうに︑この牛部屋歌仙の版行は﹃星
會集﹄が最初である︒文字に若干の出入があるが︑この
後に享保八年︵一七二二︶に朱拙・有隣編﹃芭蕉盟﹄が 出︑天明八年︵一七八八︶東蓋編﹃桃の白實﹄にも牧められてるるが︑ ﹃男工集﹄より後のことである︒
①星 會 後 題 僻
② ③ ④今年水無月︑おもはざるに四方郎旅鼠ありて︑四國 ⑤の方に赴かれなむめるを︑三伏の行先おぼっかなけ ⑥れば︑秋涼を強磁に司れよ︑年に稀なる良夜も近き ⑦ ⑧になど︑ひたすら笈を留めて︑推敲の膓をしぼる︒⑨ ⑩魚目に彼肚嚢のたまをならべて︑同志の者と口をひ たたく ⑪らかむと叩に︑梓の手をやとひけらし︒
⑫ 作陽久世杉山氏輪雪纂輯
註
軽量京寺町二条上ル町
井 筒 屋 ⑬ 重勝運行
①後二面 題僻は書物の成立の趣旨や讃僻などを記した文
章で︑書物の初めに記するものであるが︑書後に記した
ので後の字を冠した︒
②水無月 陰暦六月の稗︒
③おもはざるに 思ひがけなくも︒
④四方郎 朱拙の別当︒
一 100 一
⑮カセ︵桿︶ ⑯きぬ 納買客のかへる衣く⑰ビイド︒ へ 硝子に減り際見ゆる藥酒 ⑱ 橘さけぽむかし泣かるX ︵替︶ 草むらに燦所かゆる行脚曾
明石の城の太鼓うち出す
大かたはおなじゃうなる船じるし つぶて︵ひ︶ ちからに似せぬ礫かみなき
ゆるされて女の中の音頭取 ⑲しのびぢ 籔く黛られぬ忍路の月 ⑳ 匂ひ回しだるくなりて初あらし fタチ ︵子鼠︶ オビ 亦も髄鼠のこねら逐出す もら 手に持し物見うしなふいそ早しさ
油あげせぬ奄はやせたり
鶯の花には牒じと高ぶりて たすけ 柳は風の扶でぞふく
註
執⑳正野去丈史路芭正野去丈史路芭
㊧此一巻は朱拙の肚嚢にひめおけるなり︒
いまだ世の梓行に見ざるによりて︑友隣
の同志と共にめで侍らんとこXに出し侍
る︒①認個 この歌仙は元亀四年七月成立︒
②この句は﹃芭蕉庵小文庫﹄ ﹃泊船集﹄
筆秀童來草邦通蕉秀童來草邦通蕉
二葉集﹄などに 見える︒③下樋 埋み樋︒地下に造った水を通す管︒④蒲生 蒲萄・蒲陶・葡萄とも書く︒萄と陶と同音である ために誤って繭としたのであらう︒ ﹃文選﹄の﹁蜀都 賦﹂に︑ ﹁蒲萄齪レ潰ユ﹂ ︵蜀では果物が多く熟して腐 るほどだ︶とある︒蒲萄は西城が原産地といふ︒⑤路通 ﹃芭蕉盤﹄には﹁三三﹂に作る︒以下同じ︒⑥史邦 中村氏︒尾張犬山藩の一一︒別號は五雨亭︒ ﹃芭 蕉庵小文庫﹄を刊行した︒芭蕉門︒⑦呉竹 もと奨の地から來たといふ︒葉が細かく節が多 い︒杖や格子に用ひる︒⑧野壷 京都の人︒仙洞御所に出仕︒去來に學ぶ︒⑥笈摺 巡禮者が着物の上に着る袖なし羽織に似た白衣︒ もと笈を負ふ時に摺れるのを防ぐためといふ︒⑩遊行の輿 遊行上人の輿︒遊行上人は時宗の総本山の藤 澤の遊行寺の住職で︑常に諸國を行脚した︒⑪いぶせき きたなくていやな感じ︒氣がふさぐ︒⑫薄縁 縁をとったござ︒⑬掻 この字不明︒ ﹁コブ﹂と讃みがながあるので﹁瘤﹂ であらう︒ り⑭人心 正氣つくこと︒よみがへること︒ ﹁ひと⁝⁝ひた ロ り ち﹂の音の呼慮と︑ ﹁寒かへる﹂の意味に封してみる︒ 寒かへるは暖かくなりかけて寒さが再びぶり返ってくる のをいふ︒⑮細 ﹁カセ﹂の戒みがながあるので﹁総﹂又は﹁梓﹂で
あらう︒紡いだ縣をかけ巻く馬具︒紬は舶と同じく﹁つ
(73)
津山高専紀要第20号(1982)
る︒⑳この句は﹃五元集﹄に見える︒ ﹁露﹂を﹁雪﹂に作る︒
㊧ロハの人 尋常普通の人︒ここは無風流の人︒
⑳風袖 雲水の所々を遍歴する行脚檜︒柄は柄袈裟︑粗末
なけさ︒檜の意に用ひられる︒
㊧三々 ただ只管に喜ぶ檬子︒
⑳學 思ふに學問の問の字を脱したのではあるまいか︒
二息﹂は一ふんばり︒
⑳冬至 陰暦十一月の﹁中﹂に詰る︒二十四節氣の一で︑
この日を祠ふ習慣があり︑小豆粥や南瓜を食べ︑柚子を
俘かした風呂に入る︒
魯めりやす ポルトガル語︒今いふメリヤスと同じ︒
⑳洒堂 浜田氏︒名は道夕︒別號を珍鳥といふ︒馨を業と
した︒芭蕉門︒七部集の﹃ひさご﹄を刊行した︒
⑳師走 陰暦十二月の構︒
⑳冠里 安藤氏︒備中松山の城主︒封馬守信哉︒後に美濃
へ韓封となった︒所領六萬五千石︒老中も勤めた︒其角
門︒⑫本多隠州公 ﹃五元集﹄に﹁本多練州公﹂に作る︒ ﹃五
元三﹄には次の前書がある︒ ﹁本多総州公に侍座しける
夜︑むら雨とひとしくかうほりの鳴たるを蛮回せよと仰
られしに﹂
⑳この句﹃五元集﹄ ﹃類柑子﹄に見える︒ ことぢ⑭柱琴柱︒
調①
仙
② 牛部屋に蚊の聲よはし穐の風 ③したひ ④ぶどう 下樋の上に蒲商かさなる
酒しぼる雫ながらに月暮て
扇四五本書なぐりけり ⑦︵ほ︶ずずみどこ 呉竹に置なをしたる涼躰 ころ 蓮の巻葉のとけかエる比ウ⑨参ずり ︵連︶ 笈摺もまだ新しくかけつれて
⑩ゆぎやうこし 遊行の輿をおがむ︹辱さ ︵獲︶ 休み日も疵ふるひの顔よはく みぞ ︵臭︶ ⑪ 溝汲むかざの隣いぶせき び なま乾なる裏打紙をすかし見る
いつも露もつ萩の下露
たち なすび 秋立て又一しきり茄子汁
⑫ウスヘりたた 薄縁﹁拓く檜堂の月 ︵割︶ 分別の外を書かるx筆のわれ
⑬ソブ︵瘤︶ 疾につられて浮世さり行
ちるとき 散時はならねばちらぬ花の色
畠をふまるx春ぞくるしき ⑭ ひたら 人心常陸の國は寒かへり
ウミ 産月までもかろきおもかげ
うき事を辻井に語る隙もなし
正野去丈史路芭正野眉唾史路芭正野⑧去丈史⑥路⑤芭
蕉 秀童來草邦通三三童來草邦通蕉秀童玩草邦通
一 102 一
水仙にあの日はゆかし障子紙 ⑳
初雪やあたまの上の下駄の音⑳ うら雪買に雪を責ばや鶴の璽 ⑳多はつ雪にとはれてつらしロハの人 ⑳ 風柄なにがしの草蓄にて
貧僧に雪の上なる月夜哉・
初雪や鍋の上なる薄曇 ⑳多初雪や子共のやうに詑≧走り⑳ ⑳學の一息づエや冬至たけ
我がそらの冬至も過ぬ花仕事
賀⑳
めりやすの旅燦はやすしはつあられ ⑳・よす母にあふ師走もちかし山法師 ⑳ 本多隠州公の館にて⑳斐ほり⑭事騙蟷や柱をねぢたる一時然
諾
行
芳墨甘海
船
母角石考
落 久
榮世取落合言es輪
木貝平易雪
@
二三 訴
里洒⑳
堂
其 角
①この句は﹃蛮句五百題﹄所牧︒ ﹁誰やらにいつくしま
る﹂は﹃鷹筑波﹄三に︑ ﹁だいてねてはらつづみ打たん
ぽ哉﹂に依ったと思はれる︒
②たんぽ 湯婆︒湯たんぽ︒金冠や陶器で作り︑中に湯を
入れて疲る時の保温にする器︒
③てんぽ 手製︑手のないこと︒若桐に枝のない様子︒
④かへり花 返り険きの花︒二度響きの花︒
⑤雪こかし 雲ころがし︒ ⑥惟然 廣瀬氏︒美濃の人︒隠遁して芭蕉の門に入った︒ 芭蕉の供してよく旅をした︒奇行が多い︒元気十五年久 世にも訪れて影響を與へてるる︒⑦しら粥 白米の粥︒⑧十夜 十夜念佛︒浮土宗で陰暦十月六日から十五日まで の十日間︑念佛を修する行事︒⑨回雪 霰︒萬葉集に霰を丸雪と記したことによる︒⑩竹が鼻 今の岐阜縣羽島郡の地︒⑪凍菟 岩田氏︒伊勢山田の神職︒即妙な伊勢風を創め た︒旅を好み︒著書も多い︒芭蕉門︒⑫擾欄の葉 夏帽子︑敷物などに仕立てた︒⑬非群 橋本氏︒伊賀上野の商入︒芭蕉門︒⑭よ所外 豫想外の意であらう︒⑮講太刀 切りつけられた太刀を受止める太刀︒⑯木因 谷氏︒大垣の人︒船問屋を業とした︒曝気の門︒ 宗因︒西鶴・芭蕉とも交際があった︒⑰内の首尾 家庭内の事のなりゆき︒⑱口切 陰暦十月始め頃に︑茶壺のロを切って新茶を用ひ る儀式的な茶會︒ この日は茶席の調度を一切新たにす る︒⑲赤鰯 赤錆びの刀︒⑳この句は﹃蓮二吟集﹄に見える︒⑳支考 各務氏︒美濃の人︒蕉門の高足︒十哲の一人︒能 筆・能文で特に俳論に秀でた︒ ﹃葛の松原﹄ ﹃笈日記﹄ ﹃俳譜十論﹄ ﹃和漢墨田﹄等著書が多い︒寳永二年に久
世に來り︑多くの句を残してみる︒ ﹃乙酉紀行﹄に見え
組)
津 山 高 専紀 要 第20号 く1982)
⑮氣疎げ 氣に入らぬ様子︒興ざめのした様子︒
⑯誰かさはるぞ ﹁さはる﹂は障る︒氣にさはる︒誰が氣
にさはることをしたのか︒
⑰息だはし 呼吸がせはしい︒息づかひがはげしい︒
⑱空窓 天窓︒明りを取り入れるために屋根につけた窓︒
⑲狐つき 狐の妖術にとりつかれて︑精神を喪失したと信
じられてるる狂入︒
⑳即興す 座興︑當座に起る興味を詩歌に作る︒
⑳はしる 痛む︒
㊧とろ瓦汁山の芋をすり︑汁に混じたもの︒
⑳手ぶり ともびと︒從者︒
⑳頭べし 頭を押してへこませる︒
⑳笹むすび 笹を︑紐を結んだやうな形にしたもの︒
㊧まかる 行くの謙遜の語︒
⑳小腕 小さな腕︒少女の腕であらうか︒
⑳小座頭 子供の座頭ρ座頭は盲人に賜った官名であった
が︑後に盲人の通読となった︒ ﹁小袖﹂は小さい袖の常
用の着物︒
⑳九日 九月九月︒重陽︒菊の節供︒
⑳裸むし 裸嫁︒仕度萬端を貰ふ方で調へて迎へる嫁︒
⑳居た卒 板塀︒卒は人の名に用ひられるので︑塀を人格
化した稽︒塀の下部を尻といったのも同じ︒ 冬之部
① ②誰やらにいつくしまるXたんぽ哉 正 秀 ③ 伊賀若桐のてんぽな形や冬木立 雲 芝 ④あのやうなうそも険けりかへり花 朱 拙 まぎ盗人にあたま紛れて頭巾かな 牛 残 ⑤ 行脚⑥誠とは丸い物なり雪こかし 惟 然
⑦ 加ゆしら粥のけばくしさよ初時雨 回雪 ⑧ 長崎大根の輪ぎり尊き十夜かな 蘭 戸 ⑨あられ 全とつくりと暮たる音やはつ丸雪 百 舟 讐前中津僧梅はまつ険て出しけり冬仕事 眠 山 ⑩ ︵別︶ 美濃の國竹が鼻にして朱乳母にわかる かれ おき 伊 勢⑪野は枯つどう罧ようとも起うとも 涼 菟
とほとうみ 遠江の國なにがしの草奄にやどりて よき k時雨く能名になるぞ夜の雨
初時雨ようあそぶのに照りかエる⑫ζ︒ いだ櫻欄の葉の仕立て出すやはつ時雨
我がやうな人ほしき夜や冬ごもり
こつじき乞食の家造りけり年の暮
内の首尾取成かねて夜は寒し ⑰ とりなし 請太刀に成て見よとて氷柱哉 ⑮うけたち なつ つらら よ所外に思はぬ雪の雀かな ⑭
松卒銀牛予の館にて⑱ ⑲口切に御家老殿や赤鰯 朱 拙筑前挾生 土 明肥前田代 晩 柳伊賀⑬ 非 群 芳 船 千 川美濃大垣⑯ 木 因筑前嘉 知 方
朱 拙
一104一
⑱ うづら空窓に夜はまじりけり哺鶉 ⑲鴫なくや猫こちたる狐つき ⑳ いなづまといふ事を剛興す ⑳山妻に轟歯はしるや里がへり ノド ⑫いなづまやどこやら咽にとろX汁 ㊧ あきねたるべき手ぶり出來たり穐の雨 づ⑳秋立て頭べしにしけり雲の峯 ⑳いなづまや足本ころぶ笹むすび
唐黍やふり分髪のしらむまで ⑳ 山家の小義見にまかりて わ せ郡内の帯を頭や早智祭 ︵鳥︶ プン穐來ぬと親子がらすや分世帯
しげくと目で憎いふや萩の露
コカイナ⑳ すすき小腕に穐は菊醤薄かな いとこ山伏に又從弟あり萩の花
あみワナ ヒヂ網打の肱なげちらす月夜かな⑳ ⑳くじつ小座頭に小袖の出來る九日哉 ⑳ハダカ舞や職人の子の裸むし
居た卒に尻べったりと桐一葉 ⑳ 註
備中杜宮 高 吉三三日田 可 曉
遅
取讐前小倉 片肥後熊本 輕
芳讐後日田 若
エ肥後熊本 江
丈
旦
一 朱
土高 田 白
近
芝船芦海貝候 之三芳拙笑流り」柳嶺
①この句は﹃五霞集﹄ ﹃類柑子﹄に見える︒これには﹁ひ
とつ鷹﹂を﹁︑鷹ひとつ﹂に作る︒
②苔蘇 岡本氏︒伊賀上野の藩士︒芭蕉門︒ ③喘かれて 哺いて催促せられて︒④西施 中國春秋時代の越の美女︒魚心勾淺が呉に敗れた 時︑越から呉に途られた︒坐臥夫差は西施に溺れて國政 を怠り︑逡に越に亡ぼされた︒越の萢蚕は西施をつれて 五湖に隠栖した︒ ﹁痘﹂は庖瘡のあと︒あばた︒萢瘡を 司る神を痘の神といふ︒この病の旧いことを回る肺︒芭 蕉に﹁月に名を包みがねてやいもの神﹂の句があり︑同 じく芭蕉の﹁象潟や雨に西施がねぶの花﹂の句を融案し たもの︒⑤越人 越智氏︒越後の入︒名古屋に住した︒芭蕉十哲の 一入︒ ﹃猿蓑﹄ ﹃鵠尾冠﹄等の著がある︒⑥ねり物 煉って作った寳石の濫造品︒⑦紅かのこ かのこしぼり︒鹿子斑に絞染にしたもの︒⑧十日 九月十日︒重陽の翌日︒ ﹁十日菊﹂は菊は重陽の ものであるので︑十日になると既に時機におくれたこと になる︒またその時に間に合はぬ意︒⑨名立そ 名を立てるな︒名は禁止の ﹁な﹂を兼ねてゐ る︒名を立てるとは名を揚げる︒評判を立てる︒⑩あと口 物を食べた後に口の申に残る感じ︒また︑飲物 の後になほ物足りない感じ︒⑪燈籠 盆燈籠︒古くは七月一日より噛した︒秋の季語︒⑫はらはら鶏 明け方に聲を合せず思ひ思ひに鳴く鶏︒⑬一文僅少の銭︒鏡一文は藩一束︒唐辛子一盛の代金︒ 川柳にコ文で思ひのままに辛がらせ﹂がある︒⑭りん 野紅の妻︒夫と共に朱拙に學ぶ︒二女・論婦とも
書く︒
津山高専紀要第20号(1982)
(69)・
老を殺し自乱した︒
②つかへ 支障︒ふせぐ意︒
③うつかうか 俘々か︒心の落着かぬ様︒
④荻子 辻氏︒伊賀上野の人︒藤堂良次の家臣︒芭蕉門︒
⑤六月 裾裸をかける︒ ﹁繧る﹂は過ぎる︒終る︒
⑥虻なく 危くをかける︒
⑦懐付 けしかける︒おだてる︒相手の感情を刺戟する︒
⑧芥子 消しをかける︒
⑨奥の細道の旅で︑芭蕉が曾良に別れる時の句に︑ ﹁今日
よりや書付清さん笠の露﹂がある︒
ル ニ テナパ ヲ
⑩杜甫の﹁購二衛八慮士一﹂詩句に︑明日隔二山一一︒ ともニ タラン 世事雨荘 ︒とあるのに依った︒⑪立日 地に置いて米などをつく臼︒
⑫饗の秋 饗秋︒委の取入れ時︒初夏の候︒
⑬芙雀 永田氏︒大阪の人︒芭蕉門︒
⑭故人 善友︒おさななじみ︒ ﹁身まかる﹂は死ぬ意︒
⑮夷檬 田舎風︒
⑯むら雨 一しきり降り來る雨︒夕立︒この句は嵐雪の作
とあるが︑其角の作か︒其角の﹃五三集﹄ ﹃蕉尾琴﹄に
見える︒
⑰木賊 砥草の意︒董は圓筒形で四五十糎に直立する︒物
を磨くに用ひる︒
⑱この句は百入一首の李求職の﹁しのぶれど色にでにけり
わが懸は物や思ふと人のとふまで﹂に依った︒ ﹁穗に出
づ﹂は外に現はれる意︒ ﹁蓼庫入﹂は人の好まぬ意に取
つたか︒或は醜の意か︒ ⑲調子 しらべ︒波の音を音律と見た︒⑳脱 殻をぬぐ︒脱は蜆の誤りであらう︒⑳びちう 備中︒ ﹁びちう﹂とも忌んだ︒㊧ほのめかす それとなく言ふ︒
秋之部
酒買に行か雨夜のひとつ鷹 ①
残る蚊の力ちり行夕日かな ③木の間より虫に哺かれて月の照り ④セイン イモ名月の雨や西施が痘の神⑥ねり物のならぶや秋の沖すエき
あさがほ舞にまだ残る蚊の力かなタバコ ⑦煙艸羅馬や篠巻の紅かのこ ⑧ 十 日タ﹂ミ ⑨タテ⑧畳ふむ客の名立そ十日菊 ⑩早稻を喰ふあと口竹に鳴雀⑪ ⑫燈籠やはらく鶏の風の音
いなづまや一かけきゆる駒の傷 ︵駈︶ 一文が物で目覧す唐がらし ⑬
いなづまやひと顔冷すあとあかり
⑮ケウト ⑯ ︵は︶ もず氣疎げに誰かさわるぞ鵡の声 ⑰轟の音にのぞくや鼻の息だはし
美 周 尾全 伊
箕關謂孤雀越醤青苔器三濃 防
十易櫟芝之死角
粟津 楚 江倉吉 近 貞
輪 雪近江田上 木 志
甘 石豊後婦人⑭ り ん伊勢女 い ち
國 歩
一 106 一
⑳晋子 其角は別に俳姓を晋と思した︒子は男子の通構︒
⑳六味丸 精力増進剤︒川柳に﹁六味丸飲んでる側にいい
女房﹂とある︒
⑰山吹 太田道灌が雨にあって蓑を乞ふた時︑里の娘が無
言で差出した山吹の花︒
⑳柳さくら 素性法師の歌の﹁見渡せぱ柳さくらをこき交
ぜて都は春の錦なりけり﹂を引く︒
な つ の ぶ
か や ひとへきっぱりと燦てとる蚊帳の一重哉 ︵動︶夕立の露いこかせず照日かな ② ︵へ︶ あつさ暮かねてつかえなき野の暑哉 ③螢火は夜川にふけてうつかうか
わかう ⑤むつき へた若ても六月を経る柳かな ⑥アブ あつさ何事を虻なく耳の暑かな
は
這ふやうにして山下りつ蝉の声⑦タギ ⑧けし懐付ん思日は消て芥子の花 おくり 四方郎のぬしを船場に見邊て⑨ ⑩タガヰけふよりや互の中の雲の峯 いで風吹て世には出けりけしの花 ︵離︶ ︵へ︶花の香のなじみはなれそ衣がえ
ゆふがほ ゆふべ夕虹に相手のほしき夕哉
はひ︵散︶蝿ちりて馬よく眠る清水哉 膳所① 曲伊 賀 己
推 尾 州 己 尾道僧 荻 全④ 蝶 全
租 宮嶋 藤 全
筑前 水大坂二女 さ肥前婦人 紫豊後女 紫堅 田 成
活写令子伽必需 秀那貞よ颯
⑪ ⑫立臼の寡て骨折るや変の秋
涼しさをすまして居るや苔の花 ︵破︶また花をやるか茂みの若葉ども
行ぬけて雲見る川や湿すゴみ ⑭ 備後の國にて︑ ひばり夏寵の名には死すとも夕雲雀 ⑮ヒナブリ竹の子や夷様なして月の庭⑯ ⑰とくさむら雨の木賊に通る暑さ哉 ︵へ︶おとろえて憎まれぬるも牡丹哉
手にふれて道のながさよけしの花
我が懸よたとへ穗に出て蓼美人 ⑬
蚊やり火や袋より出る藥屑
クツ︵垣︶ ワフ沓かきの藁打門や夕す攣み ⑲テウシひらめきて海の調子に黙す屈み
⑳姜ケ︵蜆︶脱てもおなじ暑さを蝉の声 ⑳ @ 尾 州 此 通
清 意 赤間關檜 芙 雀 大坂⑬ 朝 尺 全
故人の身まかりたるに
びちうにて人くにほのめかされて
コゥムリ ナク
蠕幅の我は世に暗鳥ならず粟津正秀がもとにて ながさゴ浪や詠めて涼む是を船
雷闇や若葉さxやく雨の聲
註
朱 拙
正 興
嵐 雪
輪 雪宮嶋遊君 小くら豊後日田 牛輪
正 秀
取 貝安藝竹原僧 一 故
丈 少
朱
其備中趾宮 高 拙角
革
①曲翠 菅沼氏︒膳所の藩士︒芭蕉門︒芭蕉とは特に親交
があった︒享保二年︑家老曾我標太夫の不正を知り︑家
(67)
津山高専紀要第20号(1982)
⑧配力 杉野氏︒名は房事︒伊賀上野の人︒藤堂藩の伊賀
作事目付役︒芭蕉門︒
⑨智月 大津の人︒川井佐衛門の妻︒乙州の母︒芭蕉門︒
⑩よみて期す ﹁よむ﹂は現在から推量する意︒ ﹁期す﹂
は約束する︒待ち設ける︒期限とする︒限る意︒
⑪そのめ 斯波氏︒伊勢山田の神職秦師貞の女︒滑川︵一
有︶の妻︒剃髪して智鏡と帯した︒ ﹃菊の塵﹄ ﹃鶴の
杖﹄の編著がある︒蕉門︒
⑫中心女 忠女の誤篇であらう︒或は ﹁ただ女﹂ とも書
く︒當時この地方で最も活躍した女流俳人で︑當時の俳
書に散見するところである︒但し姓氏未詳︒
⑬そぼろふる ﹁そぼろ﹂は齪れからまる笥子︒ ﹁ふる﹂
は鯛る︑さはる意︒
⑭浪士 浪人︒主家を失って家腺から離れた武士︒
⑮埋木木が久しく土にうもれて化石のやうになったも
の︒⑯饒寒 立春の後の寒さ︒
⑰うしろめたさ 後のことが氣にかかること︒ ビタリ ヲ⑱梨の花白樂天の﹁長恨歌﹂に︑梨花一枝春帯レ雨︒
の詩句を引いた︒
⑲草亭 草ぶきの家︒ ﹁亭﹂はあづまや︑或は風雅な建
物︒⑳禽羅 榎並氏︒大阪の人︒調竹の門︒ ﹃荒小田﹄ ﹃追鳥
狩﹄は彼の撰である︒
⑳夜寒 晩秋の頃の夜の寒いこと︒
⑳あふのく 仰ぐ︒あをむく︒鶏が空を仰いで鳴く︒ ︵⑳はさがる 挾る︒はさまる︒⑳この句は素堂の有名な﹁目には青葉山ほととぎす初鰹﹂ と措辞が相似てみる︒⑳素堂 山口氏︒名は信章︑字は子晋︒甲斐の人︒江戸に 出て葛飾に隠栖した︒漢學に造詣が深く︑芭蕉の蕉風の 樹立に助力した︒葛飾風の一派を成した︒遺稿を集めた ものに﹃素堂家集﹄がある︒⑳湖春 北村氏︒季吟の長子︒江戸に出て芭蕉に學ぶ︒ ﹃績山井﹄はその著︒⑳初午 二月の初の午の日︒重荷の祭事︒江戸では稻荷杜 は一町に少くとも一思はあり︑祭には幟を立て︑子供は 太鼓を打鳴らした︒子供の寺子屋入りはこの日にした︒⑱美女 ﹃五子稿﹄に﹁美女﹂を﹁妻﹂に作る︒⑳沽徳 内田氏︑後に水間氏︒江戸の人︒内藤上底の門︒ 享保の頃江戸俳壇に重ぎをなした︒ ﹃一字幽虚誕﹄ ﹃文 蓬莱﹄ ﹃沽徳随筆﹄等の著がある︒ キ ス⑳行蓋す ﹃三艦詩﹄の杜常の﹁華清宮﹂ に︑行器江 ノ ル ニ 南数十程︒曉風鐸月旦二華清一︒とある︒松永貞 徳に﹁行き臆す江南の春の光かな﹂の作がある︒⑳三月菜 三月頃に出る菓︒早春に蒔いて三四月に食べ る︒油茱・小松菜など︒風味がよい︒⑫いつくれて いつしか暮れて︒蒼虻に﹁いつくれて水田 の上の春の月﹂の句がある︒⑳紫白 肥前田代の人︒寺崎一波の妻︒落懸に學び︑後野 披の門に錦した︒
⑭助然 荒巻氏︒筑前内野の人︒蕉門︒
一 108 一
ひなたち雛達のつぼみの貞や桃の花 ⑩ ゴ鶯によみて期したる日誌哉
蛤や今朝鶯のふた三声 ナマ家もたぬ燕がやさし顔の様
初夢のもぬけうれしや語られぬ ︵寝︶ かりうらやましいぬるときけば﹁の声
そぼろふる柳は朝のえがほ哉 ⑬
蝶くも此子にたよれ花の白ハ ⑭ 浪士の子をもうけたるに
ちらくと誰が笠影ぞ藤の花 た 蓑笠のうしろめたさよ梨の花 ミノ ⑰ ⑱ 曉の瀧に目魔す絵画哉 めさま ⑯ 埋木のつぼみといはんつくくし ⑮
はてしなき世とや白魚赤鰯
正直なあたま出しけりつくくし さい牛の目に険て見せけり梨の花⑲ もた草亭の隣も持ぬ柳かな ⑳春雨や夜寒を分る山の音 ⑳行春の空あふのくや鶏の声 ⑳春雨や町にはさがる饗畠
宇 治⑳ トキ山は朝日薄花櫻紅鷺の羽
雀さりけん細藪そよぎ落梅す⑳ ⑳初午や美女の影ふむ素浪人 大津尼⑨ 智 月 x 嶺 正 秀大坂⑬ そのめ落合婦人⑫ 中心女宮嶋遊女 遍 路おなじく 和 國尾州信 東 推
長宮大宮 ミ
ノ
船越三一民団舞二野確率調二正角 露
江沼江
漏湖⑳素毒
泥路通羅夕船竹扇興早川
徳春堂
⑳ ⑳行冒す前な畠の三月菓
いつくれて花にはざかる三日の月 ⑳
有明のありのまxさよ春の風 なくきぎしふりあぐる鍬の光りや痛雑子 ⑳ ⑯りくみぐわん ひとXせ︑晋子と六味丸の店に
まかりて︑短冊のみぞ待るに ⑳主は誰山吹いはず六味丸
柳さくら都は春の六味丸
註
筑 肥 前
輪助臨奨土
@
雪急白芳
朱軍 民角
①慮 返事︒鷹答の﹁はい︒はい﹂の語︒
②去來 向井氏︒諦は蕪時︒通構は喜平次︒別號を落語舎
といふ︒彦根藩士︒蕉門の高足︒蕉門の衆望を集めた︒
﹃去來套句集﹄の外に︑ ﹃去來抄﹄ ﹃青根が峰﹄の俳論
の編著がある︒
③打 接頭語︒動詞につけて下の意を張める︒
④如行 近藤氏︒大垣の入︒蕉門︒ ﹃奥の細道﹄は如行の
家を行脚の終着とした︒
⑤万乎 伊賀上野の入︒屋號を大坂屋といふ︒剃髪して諦
厭坊といった︒
⑥毛虫 人にきらはれる者にたとへられる︒雑俳に親仁を
﹁けむし﹂ と讃ませ︑ 浮瑠璃に ﹁いとしらしい男なれ
ど︑かたい兄このけむし殿﹂といふのがある︒ えんじゅ⑦調竹 三三︒屋號を伏見屋といひ︑大坂薫修町で藥種商
を螢﹇む︒鬼貫の風を學び︑後に蕉門に婦した︒
(65)
津山高専紀要第20号(1982)
⑬野披 志太氏︒越前福井の人︒大阪に移住す︒蕉門十哲
の一人︒ ﹃炭俵﹄を即した︒
⑭つら役艦面上のつき合ひ︒面目を重んずる交際︒
⑮あてがふ あてはめる︒間にあはせにあてる︒
⑯十五日 ここは陰暦五月十五日︒
⑰荊口 宮崎氏︒大垣藩士︒エ・弟はみな芭蕉門︒
⑱むら雨 一しきり降り︑また一しきり降る雨︒夕立︒
⑲千川 岡田氏︒荊口の二男︒
⑳取はつす とり違へる︒
⑳番子 番小屋の番人︒
⑳勢田 滋賀縣琵琶湖の湖南︑勢田川の左岸の地︒
働ながめ 景色︒見渡した趣︒近江八景に﹁瀬田の夕照﹂
がある︒
⑳もれく 漏れよ漏れよ︒
⑳不破の關 岐阜縣の關が原に在る︒三關の一︒歌枕︒
⑳遊行橋 僧が諸國を行脚することを遊行といふ︒但し時
宗︵一遍上人の開宗︒現在は遊行・一向の二派に分れて
みる︒︶の曾の行脚するのをいふ場合が多い︒遊行橋は
遊行上人の通った橋の意で︑固有名詞ではあるまい︒
⑳時鳥は書三共に鳴くが︑夜特によく鳴く︒
⑳里山の圖 虎渓三笑の圏︒晋の檜三遠は鷹山の東林寺に
隠栖して虎渓を渡らないことを誓ったが︑二入即ち友人
の陸修静・陶淵明を邊って︑思はず虎渓を渡り︑三人見
合って大笑したといふ︒これを糟にしたものを虎渓三笑
圖といふ︒
⑳三きく 頭をつき合せてみる様︒こきくは物の上れ る音やその軍紀︒⑳桐油 ﹁きりゆ﹂ともいふ︒桐の種子から取った油︒傘 や桐油紙に用ひる︒ ここは桐油合羽︒桐油紙製の雨合 羽︒雑俳に﹁頭痛持かやはかくるる駕籠桐油﹂がある︒⑳すみよし 住吉︒大阪市南部の地名︒もと﹁すみのえ﹂ と云った地︒⑫ながめ 長く引く聲︒聲を長く伸して吟ずる聲︒曾伊勢の歌 伊勢音頭か︒俗謡︒伊勢古市で歌はれた︒⑭公義 公儀か︒公儀は公事沙汰︒訴訟︒⑳はれ 晴れ︒正しくは﹁晴るれ﹂⑳秣道 秣は家畜の飼料の草で︑その草を刈るために行き 漏りする道︒⑰竹の子のあるじ 竹の子飯を主として馳走する︒⑱なり込み 大聲を出しながら席に割り込む︒⑳佛法長吉 不詳︒
春 の 部
①なにも慮かも旧くと柳かな ③尤で打くらしたる柳かな ツカ梅がエを掴んで入るや浪がしら ︵へ︶ ⑥兄親にたとえられたる毛虫哉
旅 行
ニギ つくつくレ嬉しさを握りすてたり土筆・ 京② 去 來ミノ大垣④ 如 行イ ガ⑤ 万 乎大坂⑦ 諏 竹イ ガ⑧
配 力
一 110 一
⑱ シルむら雨やほとxぎす待つ雲に液
時鳥雨夜そろく花白し
ほととぎす ⑳郭公昨日の曇取はつし のかち ⑳バンコほと玉ぎす野鍛冶の番選炭ぼこり
時鳥手届て居て川一里
旅 行 ⑫ ⑳時鳥勢田の夕日のながめ出し ⑳ ⑳ほとxぎす月もれくと不破の關 ⑳ゆぎやう時鳥暗や去年の遊行橋
由房にて
草の戸に公義こそはれ時鳥 ⑭ ㊥︵晴︶ 郭公ながめ聲きく伊勢が歌 ⑫ ⑳ すみよしにて ⑳ 時鳥桐油掛けたる駕籠は限れ ⑳とうゆ カゴ 三人のあたまごきく時鳥 ㊥ 盧山の圖に賛す ⑳ろざん 時鳥谷ふたわたる月夜哉 ⑳
時鳥眠たい足を幾はしり ⑳まぐさみち時鳥幾筋きえる秣道
大名を通してをいてほと奥ぎす
時鳥蚊の死に行山路哉 ⑰ 竹の子のあるじするに︑
客の部にのがれて安し時鳥 ⑳ほと玉ぎす鳴かば佛法長吉か 全⑲ 千
蓑 備 中 一 肥前田代 大 全
X
嶺里披早川 芳甘遅
船石門
馬 貞蚤取
雪貝
大坂 素筑前 一長門下膳 梧
山
國
歌
歩鹿水定鱒 じ
@あとよりなり込みて
旦 流
嵐 雪
①﹃五元集﹄に﹁起きて見よ﹂を﹁起きて聞け﹂に作る︒ 註
②時鳥 渡り鳥︒他に子規・杜鵤・蜀魂・望帝・比島・不
如錦・郭公などと書く︒山地に住み︑飛ぶことが早い︒
卵は自ら艀化せず︑鶯などの集に産む︒ ﹁てっぺんかけ
たか﹂と鳴くといはれる︒五月︵盛夏︶を知らせる鳥と
いふ︒③市兵衛記 ﹃窓のすさび﹄に出る上総國姉崎の忠僕市兵
衛の記事︒主人惣兵衛が借りた弓張で︑あやまって隣家
の妻女を害して伊豆に流された︒市兵衛夫婦は主人の子
を育て︑十敷年間主人の赦菟を願出た︒その忠義の心に
感じて田地を賞與せられたといふ記事︒
④其角の﹃五元集﹄に﹁ほとxぎすた黛有明の狐落ち﹂と
ある︒この句の謙案︒
⑤猪太鞍 いのししを追ふために鳴らす太鼓︒
⑥﹃有磯海﹄﹃丈草獲句集﹄に見える︒﹃五和集﹄には﹁川
むかひたが屋敷へかほとxぎす﹂の句がある︒
⑦雲井 雲のあるところ︒遙か高いところ︒
⑧路通 八十村氏︒美濃の人︒ 一に京都の人ともいふ︒大
坂に住した︒芭蕉に力量を認められたが︑放縦な生活の
ために芭蕉から疎んぜられた︒
⑨はしり雨 通り雨︒降るかと思へば︑やがて晴れる雨︒
⑩北枝 立花氏︒金澤の人︒蕉門十哲の一人︒
⑪宇佐 豊前國︵大分縣︶宇佐︒宇佐八幡宮がある︒
⑫朔日 その月の初めの日︒この日の月は新月︒ここは陰
暦五月一日︒
(63)
津山高専紀要第20号(1982)
①土芳 服部氏︒伊賀上野の人︒槍術を以て藤堂家に仕へ 註
た人︒蕉門の高足︒俳論書﹃三冊子﹄の著がある︒
②牟残 山岸氏︒伊賀上野の人︒肝和の子︒芭蕉門︒
③髪撫 撫は整へる意︒髪床へ髪を整へに行く︒
④杜若 土田氏︒伊賀上野の人︒藤堂藩士︒蕉門︒
⑤ふんこむ 踏込む︒山櫻が空に向って勢よく伸びてみる
様の形容︒この語が一句の眼目︒
⑥正興 柳本氏︒備中井原の人︒ ﹃柴橋﹄の著がある︒こ
の人岩壺を珍藏して全國の俳人より句を乞ひ﹃岩壺集﹄
を編した︒其角の序があり︑久世連中の名が見える︒
⑦知積院 京都市下京塵東瓦町の新義島上宗智山派の纏本
山︒⑧所化 櫓侶の弟子︒能化の封︒
⑨前髪 前額の髪︒元服前の男子の裕︒前髪を取って大人
になる︒
⑩相傘 相合傘︒一本の傘を二人でさす︒男女の場合が多
い︒⑪句空 金澤の人︒伊賀の人とあるが不詳︒北陸蕉門の重
鎭であった︒
⑫露量 備中倉敷の人︒寳永三年︑除風と共に久世に來
た︒⑬櫻がり 開花を尋ねて観賞すること︒花見︒
おとくに⑭乙州 川井氏︒大津の入︒智月の弟で後に養子となる︒
近江の代官蕪湖水奉行となる︒蕉門︒芭蕉の遺稿﹃笈の
小文﹄を刊行した︒ ⑮はね鯉水面に跳上る鯉︒⑯陸奥殿 仙台侯︒伊達家︒⑰小十郎 伊達家の重臣︒白石の城主片倉小十郎村長︒伊 達綱宗を諫めたことは有名︒⑱大傷 請い場所︒⑲日牛 酒間︒牛日︒⑳ねだり 強請︒ ﹁はっす﹂は外す意︒にがす︒梅の頃に ねだりそこねて初日の時季になったの意︒ ﹁はっしては の つさくら﹂とはつの音を重ねた︒
時 鳥
④ ②ほととぎす③起て見よ此時鳥市兵衛記
山家にて④ ⑤シシタイ時鳥只あり明の猪太鞍⑥川むかひ誰に渡さむ時鳥 ⑦時鳥それで浮世の雲井かな ⑨ほとxぎす哺や若葉のはしり雨 ⑪ 宇佐にて
⑫ついたち朔日の月の瀬川でほとNぎす
深る足を二足三あし時鳥⑭ ⑮つら役にあてがふ月かほとxぎす ⑯ 十五日
このあした此朝殿の御影やほとxぎす 其 角宮長大 加京
城崎宇崎蜷北器路⑧丈朱
一通草拙 平鹿披
ミノ大垣⑰ 荊 口
一 112 一
櫻の名所として名盲同い︒
⑳宇治勢田 川の名︒及びその川に沿ふ一帯の地︒淀川の
上流を勢田川といひ︑宇治に入って宇治川といふ︒
⑳與力 江戸時代に奉行に隷些し︑同心を指揮して上司の
事務を分掌し輔佐した役︒
⑳晋の陸機が飼ってみた名犬三三は︑陸機の寓居した都と
郷里の家との間を︑手紙を口にくはへて回したといふ︒
﹃述異記﹄や﹃晋書﹄陸機傳に見える︒
⑳都府櫻 本來節度使の高櫻を構したが︑我が國では太宰 デ ヲ 府の聴にあった建物をいふ︒菅原道志の﹁不レ出レ門﹂の ハニ ノヲ ハダク
ヲ
詩に︑都府櫻纏看二瓦三一︒観音寺只聴唖鐘聲一︒とあるのに依る︒
⑳服娑 絹布二枚を裏表に合ぜて方形に作り︑模様に文字
を現はしたもの︒物を包み︑または進物の上に掛けるに
用ひる︒
⑳は釜 羽釜︒飯をたく釜︒中ほどの周園につばをつけて
みる︒毛↓イ9
無遠慮に椿は赤し初ざくら は いで掃除して下這ひ出ん糸ざくら かほ髪ゆふて貞を見せたり花見の子③ナノ髪撫に出るや花見の供の者
②賀全全全伊 陽時磁土①
和吟残芳
入ゆかぬ宿や月來る花の上 をなご戻りては女子足出す花見哉 ⑤おもふ圖に空やふんこむ山ざくら よせづきん 寄頭巾さくらといふ事を
⑦ちじやくみん⑧しょけ知積院の所化の頭巾やはつ櫻
前髪をとるか頭巾のはつ櫻 ⑨
⑩あひかさ相傘のわかるx中や初ざくら ︵吉︶ よし野にて
おもしろう行やさくらのわたし舟
重ては市中に生れ山ざくらもっとも ⑬尤の峠までとて櫻がり いと こ山ざくら酒で從弟になりやすし
はね鯉のあそぶか懸か糸ざくら ⑮
城 下
ヘツヲ いで謡ひも出ける時か初ざくら⑯むつ ⑰陸奥殿の花咲にけり小十郎 ︵う︶女共に笑ふてけふも山ざくら ⑱蝶くの大瘍かけるや山ざくら
米買て二日旅ねや山ざくら
山ざくら一三の時から畠中
⑱ひなかみち ︵う︶日牛路を川にそふてや山ざくら ⑳梅の時ねだりはつしてはつざくら
備全全 正翫杜④
久世
甘口一 大備伊
言er貞磁鰯磯
旦輪山素X取其朱
石船笑 興野若 扇義州堂空
樽雪鹿覧嶺貝角拙
(61)・
津山高専紀要第20号(1982)
①星夕 この三十六句の連句を歌仙といふ︒三十六歌仙に 註
ちなんだ稽である︒連句に百韻・五十韻・三十六韻があ
るが︑百韻が正式である︒芭蕉の頃から歌仙が主流とな
つた︒省末の着信と題するものも勿論これである︒蓮句
とは句を連ねる長い形式の俳譜の意で︑長句︵五七五︶ ほっく と短句︵七七︶を交互に連ねる︒初句を鷺句︑第二句を
わきく あ一げく 脇句︑以下第三︑第四⁝⁝と稽し︑最終の句を墨句とい
ひ︑このまとまったものを一巻と︑いふ︒
②取員 久世俳壇に重きをなした人物の一人︒姓氏不詳︒
支考も取貝亭に立寄ってみる︒寳永四年︑芭蕉十三回忌
追善の﹃二千折﹄の著がある︒
③そよ 静かに風が吹く音︒またそのけはひ︒
みつのえね みつのとみ④怨語 陰暦で壬子の日から癸亥の日までの十二日間をい
うし たつ うま いぬ まび ふ︒ただし丑・辰・午・戌の四日を間日といって除くの
で八日となる︒この日が一年間に六度あり︑雨が多いと
いはれる︒從って﹁日和おもしろく﹂といふ︒
⑤青地 青磁の意︒ ﹁こかす﹂は倒す意︒
⑥法眼 法眼和尚位︒法印に次ぐ僧の位︒ ﹁七太夫﹂未
詳︒⑦筑前紅 未詳︒筑前絞では?﹁沙汰﹂は虞置︑しらべ︒
④源三位頼政が鵡を射て恩賞に挙り︑階を牛ば下った時左
大臣頼長が︑ ﹁ほととぎす名をも雲井に上ぐる哉﹂と詠
むと︑頼政が﹁弓張月いるにまかせて﹂ とつけたとい
ふ︒後に頼政は卒家の追討を企て︑敗れて治承四年李等
院で自匁した︒ ﹁首尾﹂とは結末の意︒ ⑨漉 瘡の誤篇であらう︑巻末の謁仙にも見える︑瘡は隔 日または毎日時を定めて発作する熟病︒⑩やらざなるまい 歌舞伎のせりふの調子を眞似たもの︒⑪晦日 三十日そばの意か︒ 延命を祝って月末に食ふそ ば︒ ﹁行戻り﹂は行き戻りする道の意︒⑫百舌 秋に人家近くに棲み︑キーキーと硬い聲で暗く︒ ﹁鳶が鳴けば風が吹く﹂ といふ里諺があるのを逆にし て︑百舌が鳴くのであるから︑風は止むだらうとしゃれ た︒⑬嵯峨 京都市左京匝の地名︒清涼寺・天龍二等の名刹が あり︑嵐山に封ずる景勝の地︒⑭曙 この字義は聲が入り誉れること︒聲がもつれるこ と︒佛語ではおしゃべり︑歌ふ等の意となり﹁もらふ﹂ 訓の出典が分らない︒ ﹁鵬﹂は鴉鳥︒雁が馴化せられた もので︑人家で衝養せられる︒⑮杉茱 つくしの成長したもの︒置く柔いものは食用にす る︒葉が杉に似てみるのでいふ︒⑯虫出し 轟出し雷︒啓蟄の頃によく鳴るのでいふ︒春の 初雷︒⑰縁 縁の誤りであらう︒縁はたるき︒當時よく縁を縁に 誤用せられた︒⑱訴詔 訴訟がよい︒詔はみことのり︒ ﹁立﹂は定まる︒ 決る意︒⑲霜月 陰暦十一月の構︒ ﹁立つ﹂は漏る意︒⑳灘 兵庫縣の灘︒良質の米と水に恵まれて︑古言銘酒の
産地として有名︒ ﹁よしの﹂は吉野︒奈良縣の吉野山︒
一 114 一一
⑳れん木 すりこ木︒連理をもちったもの︒
⑳其角 榎本氏︒後に寳井氏を構した︒また晋子ともい
ふ︒父は竹下東順︒江戸の入︒蕉門の奇才︒十哲の一
入︒洒落風の組︒編著が甚だ多く︑ ﹃盧栗﹄ ﹃枯尾花﹄
﹃五元集﹄ ﹃蕉尾琴﹄等の外に遺稿集に﹃類柑子﹄があ
る︒淡々はその門︒
星①
夕久世連中
③星の行時か野もそよ笹もそよ えのき カアあれ月もはや榎ほど陰
初富を京への相場さxやきて
アタ マ そつ節句天窓の十も剃たり
カケ ④はっせんびより賭にした八專日和おもしろく ⑤あをじ憎い鼠の青地こかする
ウ⑥ほふげん法眼の今もどこぞか七太夫
⑦ ︵問︶︵ひ︶筑前紅の沙汰もとみしか
⑧ほととぎす時鳥御所での首尾はわるかった
⑨ヲず︵癖︶⑩漉の禮にやらざなるまい
@つごもり ゆきもど晦日があるかと畠の行戻り
⑫もず ない百舌の暗たりやもう風でなし ︵う︶⑬虫狩に夕飯くふて嵯峨へ行
菊の勝負は大手柄なり
取 貝 ②
取輪朱國馬遅臨調:X甘芳山輪 貝雪影青貞候流罪嶺石船鹿卜
ころモラ⑭月の比曝ひにやりし鵬のたまご ︵紙︶ こもど民需とりに道の小戻り
初花は寒く椿はぼつたく
杉菜しらねど杉菜つみけり ⑮
名⑯ ナル虫出しの鳴にもかっく小袖ども⑰ はなし縁の噺の追ひこまれたるもみ⑱ てをのいれ縦の木の訴詔が立て手斧入 ⑲祭くと霜月も立つ
⑳︵吉野︶灘よしの租父も見事に年よられ
とんと條てとる雷闇のほど⑳ ガソ宇治勢田をならして鷹の吸物か
萩一本にごはされにけ︑り クツ見ぬ懸に先沓などをはきならひ
都府棲の瓦を包む服婆物 ⑭トフコク ⑳ふくさ 雪薄くと茶山花の上 さざんくわ 百里やる唐犬戻る顔がまえ ⑳ ︵へ︶ 與力のむす子物思ひする ⑫
母のきらひに舟はやめたり ⑳赤飯をは釜くにむしちらし
燕の干るは吉日じゃげな あんぎゃ久世くと行脚のはいる花盛
つxじゃ藤に包む山川
執國馬遅旦調二X甘芳山輪朱國取回馬語旦甘X山亭 筆歩貞候流域嶺石船鹿雪穴歩員候貞扇流石嶺鹿船