はじめに 日本は自然災害に見舞われ,甚大な被害を受け ている.1993(平成5)年の冷害は,全国的に異 常気象が頻発し,東北・北海道の大冷害,九州の 台風,大雨等の被害により,稲作の全国作況指数 が74という近年にない水準まで低下した.特に東 北では,収量が304kg,作況指数は56で,昭和51年, 55年の冷害の水準を大きく下回る未曾有の大冷害 となり,水稲の被害額は東北地域では4,690億円 に達し1),この年の大冷害で80年ぶりの大凶作となっ た2). 遡って,元禄8(1695)年は,異常な低温のた めに五穀が実らず,奥羽地方はひどい飢饉に見舞 われた.また,宝暦5(1755)年にも再び冷害に 見舞われ,飢饉となった.建部清庵が藩医として 仕えた奥州の一関藩では,藩内の飢えた人々に米 を配給して急場を救った.その後,宝暦の飢饉時 に飢えた人々が食べて命をつなぎ,しかも体に害 のなかった植物を調べ,それらを採集したり,取 り寄せて栽培したりした. 建部清庵は,食料と して利用できる100余りの植物を救荒書にまとめた. 救荒書とは,一般的には飢饉を生き延びる術を記 した書物である.その動機となったのは,中国の 『荒政要覧』3)を見たことがきっかけで,『民間備 荒録』4)および『備荒草木図』5)の編纂を思い立った. 『備荒草木図』の植物は,北郷子明に形状を写生 してもらい,だれが見てもわかりやすい挿画とし た5). 十勝は自然に恵まれている.筆者は,『備荒草 木図』5)に掲載されている植物が,居住地・近郊 にどのくらい生育しているかを調べるため,上巻 に掲載されている43種を調べた. 方法は,挿絵に該当する植物の科や属,特徴な どを調べた.また,生薬名,性味,臨床応用等に ついて調べた.採集した植物は, 調理して試食した. Ⅰ.『備荒草木図』上巻に掲載されている植物 『備荒草木図』に掲載されている順に,漢字名 (括弧内の振り仮名はそのまま用いた)で記し, 薬用の植物には※印を付けた.上巻に出てくる草 木図は次の順である. 稀薟(めなもみ)※,繁縷(はこべ),蒼朮(を けら)※,茅(つばな)※,木通(あけび)※, 紅藍苗(くれなゐのなへ)※,萆薢(ところ)※, ISSN 2188−9791 2020年9月16日受稿,2020年10月13日受理 帯広大谷短期大学社会福祉科 〒080-0335 北海道河東郡音更町希望が丘3番地3 帯広大谷短期大学地域連携推進センター紀要(第7号) 2020年10月 要 約:『備荒草木図』上巻に掲載されている43種の草木について調べた.殆どが日本や東アジア等 に分布している.北海道十勝に生育する植物も多い.また,生薬や民間薬として使用されて いるものが多い.調理法はゆでて食べる方法が殆どである.味つけは,塩とみそである.食 べるのは,葉が最も多く,次いで若芽であり,根や実の使い方や,かてもの,蒸しもち,粥・ 飯の食べ方を記述している.草木の前処理は,灰汁を使ってから,水に浸して苦味などを抜 くものが多い.草木の性味は,味は甘味が最も多く,次いで苦味・辛味が多い.性は平性が 最も多く,次いで寒性や微寒性も多い. キーワード:備荒草木図,食べられる草木,草木の調理
『備荒草木図』上巻に掲載されている草木について
A Study of Vegetation in the Upper Volume of the “Bikousoumokuzu”
山﨑 民子
荇菜(あさざ)※,萱草(わすれくさ)※,馬藺 (ばりん)※,錦葵(ぜにあふひ),山葵(わさび), 剪刀股(ぢしばり),水芥菜(ただいこん),水朝 顔(みづあさがほ),菫菜(すみれ)※,蒲(がま) ※,野葡萄(のぶどう),沢瀉(おもだか)※, 山蔥(ぎやうじやにんにく),後庭花(はげいとう), 土圓䜌児(ほど),巻丹(おにゆり)※,茼蒿(し ゆんぎく),馬歯莧(すべりひゆ)※,珍珠菜(と らのを),鼓子花(ひるがを),鶏眼草(やはづさ う),巻耳(みみなぐさ),藜(あかざ),川穀(づ づたま),鹻蓬(くがひじき),莧菜(ひゆ),胡 枝子(はぎ),敗醬(をみなへし)※,金盞花(き んせんくわ),黄独(かしゆう)※,蒲公英(た んほほ)※,橐吾(つわ),蓮実(はすのみ)※, 桔梗(ききやう)※,糸瓜(へちま)※,棣棠(や まぶき)である. Ⅱ.草木について 1.稀薟(めなもみ)※ 食べ方:若葉をゆで,水を換えながら浸し,苦 味を除いて,塩あるいはみそ,しょう油で味をつ け食べるとよい5). (以後の食べ方は同じ文献につき,省略する). なお,『備荒草木図』5)に掲載されている名称を 除く草木名等は,基本的にカタカナを用いた. メナモミSiegesbeckia pubescens,Makino は, キク科メナモミ属(豨薟草・キレンソウ)の全草. 草丈0.5∼1.3m の1年生草本.葉は対生し,下部の 葉身は上部より大きく,広卵形か卵状3角形で葉 辺には鋸歯がある.総苞は2列で,花は黄色 7). メナモミは北海道から九州,朝鮮,中国に分布す る.山野や落ち葉のたまった林道脇などで見かけ る.花は秋に咲き,茎の先に幾つもの頭花をつけ る.頭花は縁の雌性の舌状花,中側の両性の筒状 花からなる6). 生薬名,豨薟草は干した全草を用いる.性味は 苦,寒,小毒.(帰経:肝・腎経).臨床応用では, 主として風湿による四肢の痺痛,とくに腰や膝の 冷痛に用いる8).また,オナモミは蒼茸草(そう じそう)として全草の各部を用いている8). メナモミは,ナモミ(菜揉み)からきており, 奈良・平安時代から強壮薬製造にも使われていた ようだ. 2.繁縷(はこべ) 食べ方:葉をゆで,水に浸してから,塩かみそ で味つけして食べるとよい. ハコベは,ナデシコ科ハコベ属の越年草.春の 七草の一つで,畑,野原などいたるところ,特に 肥沃な土に好んで生育する.日本全土に分布し, 枝は根元から数多く分かれ株状になっている.別 名,ハコベラ,スズメグサなどと呼ばれているよ うに小鳥が好んで食べるようである. 全草を乾燥したものは繁縷(ハンル)と呼び, 婦人の浄血に1日10g を煎じて1日3回に分けて飲 むほか,乳の出をよくするためにも用いられる. また,昔は全草を軽く炒って粉にして塩とまぜハ ミガキ粉とした9). 料理には,生のまま付け合せ,サラダ,浸しも のやみそ汁の具としても旨い9). ゆでものやみそ汁の具として試食した.食感は 良好で,匂いが口内に残ることはないく,さっぱ りとしている. 写真1 稀薟(めなもみ)6) 写真2 はこべ 帯広市東4南7 畑 2020.9.8.
3.蒼朮(をけら)※
食べ方:根を採取して皮をはぎ,薄く切って2, 3日水に浸して苦味を除いてからよく煮て食べる. オケラAtractylis ovata Thunb. はキク科オケ ラ属の植物で,本州以南の山野の日あたりのよい 場所に分布する多年草で,雌雄異株.茎は高さ40 ∼80cm で細くかたい.秋,枝端に白または紅色 の花が咲く.葉の若いものは白い軟毛におおわれ ている11). 生薬は,芳香化湿薬の蒼朮(ソウジュツ)であ る.味は苦・辛,性は温.(帰経 : 脾・胃経).臨 床応用では,祛湿の重要な薬物である8). 食用とするのは若芽で,暖かな地方では4月頃 から6月頃まで採取できる.料理にはゆでてから, 浸し物のほか,クルミ和え,マヨネーズ和え,酢 の物,白和え,辛し和え,汁の実,煮つけ,卵と じなど.てんぷらはそのまま揚げる.北海道には 生育していない9). 4.茅(つばな)※ 食べ方:若芽の表皮をはいで食べるとよい. チガヤImperata cylindrica(L.)は,イネ科チ ガヤ属の多年草で草丈は1m になり,根茎は白色で, 鱗片が密生する.春と秋に掘り取り,日干する. または生で用いる7).チガヤ(千茅)の名は,た くさん群生するという意味で,土手や道端,川原 などいたるところに雑草として自生するという意 味がある.根茎を抜き取って,白く柔らかいとこ ろを噛むと少し甘い.また,一度乾燥したものは 切れる心配がないほど丈夫なヒモになる9). 生薬の白茅根(茅根)は,根茎を乾燥したもの で,性味は甘,寒.(帰経 : 肺・胃経).清熱し, 涼血,止血し,利尿作用がある.臨床応用として, 熱性病の強い口渇,肺熱の咳嗽,排尿時の熱感・ 疼痛,排尿困難などに用いる7),8). 5.木通(あけび)※ 食べ方:若芽をゆで,味をつけて食べるとよい. ア ケ ビ 科 ア ケ ビ 属 の 植 物,ア ケ ビAkebia quinata(Thunb.)Decne. は,落葉木質の巻きつ き性藤本で,全体は無毛.総状花序が腋生し,花 は濃紫色で雌雄同株7).果実は肉厚で内面が白く, 淡白で甘い.半透明の果肉の中に黒い種が多数あ るので食べにくい.春から夏にアケビの若葉をと り,ゆでて苦味をとっておひたしにする13). 生薬名,木通(モクツウ)は,アケビの木質茎 を乾燥したもの.性味は苦,寒.(帰経 : 心・肺・ 小腸・膀胱経).臨床応用として,口内炎・咽頭 部がひりひり痛む・煩燥・睡眠不良などの心火旺 の症状,排尿困難・排尿痛・頻尿などに用いる. 古人は“心腎の気をひどく消耗するのでみだりに 用いてはならない”としている. 若芽(葉)は,ゆでて食べると軟らかく,くせ がない. 写真3 おけら10) 写真4 ちがや12) 写真5 あけび 帯広市東4南6 畑 2020.9.8.
6.紅藍苗(くれなゐのなへ)※ 食べ方:若苗を灰汁でゆでて食べるとよい. ベニバナ(紅花)Carthamus tinctrius L. は, 管状花冠のキク科ベニバナ属の植物.草丈0.6∼1.2m の1年生ないし2年生の草本.茎は直立,葉は互生 し,基部は包茎し,卵形または被針形7). エジプト原産で,別名を末摘花(スエツムハナ) というが,花が末の枝の花からつみとるというこ とで名がついた.昔から口紅に利用され,菓子や カマボコなどの紅色素としても利用されている. 現在は種子から油をとり,食用に使用されている13). 生薬名の紅花は,性味が辛・微苦,温.(帰経: 心・肝経).臨床応用では,血瘀による月経痛・ 無月経や産後の悪露が続くときなどに使用するが, 妊婦や月経過多などには使用しない8). 7.萆薢(ところ)※ 食べ方 : 根を輪切りにして刻み,よく煮てか ら流水のなかに一晩浸して苦味をとる.または灰 汁でよく煮たあと,水を換えて二晩浸してから蒸 して食べるとよい.また,米や麦などに混ぜて炊 き,食べるのもよい.ただし,虚弱な人はたくさ ん食べてはならない.
トコロ(野老)Dioscorea tokoro Makino.は, ヤマノイモ科ヤマノイモ属 の蔓性多年草の植物. 「∼ドコロ」と呼ばれる多くの種があるが,特に オニドコロを指すことがある. ヤマノイモなど と同属だが,根は食用に適さない.ただし,灰汁 抜きをすれば食べられる.トゲドコロは広く熱帯 地域で栽培されて主食となっている地域もある. 日本でも江戸時代にはオニドコロ(またはヒメ ドコロ)の栽培品種のエドドコロが栽培されてい た17). 生薬の萆薢(ヒカイ)は地下根茎を乾燥したも ので,味は苦,性は平.(帰経:肝・胃経).臨床 応用は,湿熱による萆痛に用いる.特に背部腰部 の冷痛・下肢の運動障害・しびれなどの症状があ るとき(末梢性神経炎・慢性関節リウマチなど) に適している8). 8.荇菜(あさざ)※ 食べ方:若い苗をゆでてたべるとよい. アサザは,『備荒草木図』5)ではミツガシワ科ア サザ属の多年生水草と表記されているが,『中国 草本図録』7)巻四および『中薬大辞典』19)では,基 原はリンドウ科植物荇菜(莕菜),和名アサザ
Nymphoides peltatum (Gmel.)O.Ktze と 記 さ れ ている. アサザは,ハナジュンサイともいわれ,茎は細 長く,根は節のところに生えている.葉は対生に 近く卵形で直径2.5∼7cm.上面は明るい緑色,下 面は紫色を帯びている.花は黄色で,腋生し,萼 写真6 べにばなの写真14) 写真8 あさざ18) 写真7 おにどころ15),16)
片・花弁は5枚である19).ユーラシア大陸の温帯 地域に分布し,日本では本州や九州に分布する 20).性味は甘,寒.清熱,利尿,消腫,解毒など の効能があり,寒熱,熱淋,丹毒を治す19). 9.萱草(わすれくさ)※ 食べ方:若葉をゆでて水に浸してから,味つけ して食べる.根はわらびの粉をつくるのと同じ方 法で粉にし,蒸しもちにする.また,かてものと してもよい.
ノカンゾウ(野萱草)Hemerocallis fulva var.
longituba. は,ユリ科ワスレグサ属(ヘメロカリ ス属)の植物.野原や川岸の少し湿ったところに 咲く.6∼8月頃,オレンジ色の赤っぽい大きい一 重の花が咲く. ヤブカンゾウ(薮萱草)によく 似ているが,ヤブカンゾウは八重咲きである21). 花の蕾を干したものは,キンシンサイ(金針菜, 黄花,忘憂)と言い,薬膳材料などとに利用され る.キンシンサイの性味は平,甘で帰経は肝,腎 経.肝血の熱を鎮め,めまい,耳鳴り,吐血,血 便を治す.湿熱性の水腫,排尿痛をとり,よく利 尿するなどの効用がある22). 乾物のキンシンサイを水で洗い,湯で戻してか ら,炒め物などにして食べる.乾物は,茶色に褐 変していることが多い. 10.馬藺(ばりん)※ 食べ方:葉をゆでて,水を換えて浸し,味つけ して食べる.
ネジアヤメIris lacteal Pall.var.chinensis(Fisch.) は,アヤメ科アヤメ属の多年草.ハナショウブの 近縁であるが,葉は長さ30∼90cm,幅約5mm, 白緑色を帯び,質は堅く,2∼3回ねじれる.この ためネジアヤメの名がある.5月,芳香のある花 が咲く.外花被片は,広がった部分は倒卵形で垂 れ下がり,白地に淡紫色の脈とぼかしがある.内 花被片は細いへら形で直立する.朝鮮半島,中国 の乾燥した草原に生え,日本では観賞用に栽培さ れる24). 生薬名の馬藺子(バリンシ)は,馬藺の種子を 使用する.果実が成熟してから果穂を切り取り, 日干ししてから採取する.性味は甘,平.清熱・ 利湿し,止血・解毒作用がある.排尿困難,咽頭 炎,吐血,子宮出血,化膿したできもの,はれも のなどに用いる7). 11.錦葵(ぜにあふひ) 食べ方:茎や葉をゆでて,味付けして食べると よい.
ゼニアオイMalva sylvestris var. mauritianaは, 写真10 ねじあやめ23)
写真11 ぜにあおい25)
写真9.のかんぞう 左 : 皇居東御苑21) 2008.6.14.
アオイ科ゼニアオイ属の植物.草丈80∼100cm の一年生草本.茎は直立し,比較的頑丈で,上部 が分岐し,単毛が疎生するが,下部は無毛.単葉 が互生し,葉身はほぼ円形か腎臓形である7). ヨー ロッパ南部生まれの帰化植物で,すでに江戸時代 に鑑賞用に栽培されており,『大和本草』(貝原益 軒,1708年)などに記載されている.若芽や葉, 果実は食用となる.茎や花の煎汁は,うがい薬と なる5). 生薬の大花葵 Malva mauritiana L は,種子を 秋に採取し,日干しにする.性味は甘, 寒.腸を 滑らかにして便通をつけ,催乳や利尿作用がある. 臨床応用では,排尿痛,排尿困難,乏乳,便秘に 用いる7). 12.山葵(わさび) 食べ方:若芽の葉をゆでて食べる.また,生の まま塩漬けにして食べるのもよい.
ワサビWasabia japonica MATSUM. は,アブ ラナ科ワサビ属の植物.東洋原産の多年草.日本 では古くから栽培され,清い渓流中にはえ,根茎が 肥大して緑色,主茎は4年目に枯死する.3∼5月 に長さ30cm の花茎の先に4弁の白花をつける11). ワサビの性味は温,辛で,帰経は脾経.食欲増 進,湿性の神経痛,リウマチに有効である22). おろして,刺身やすしの香辛料,そばの香辛料 に用いる.葉や茎とともにきざんでわさび漬けな どにする11). 13.剪刀股(ぢしばり) 食べ方:若芽の葉をゆで,水に浸して苦味をと り,味つけをして食べる. ジシバリ(地縛り)Ixeris stolonifera. は,キ ク科ニガナ属の多年草.別名イワニガナ(岩苦菜). 細長い茎が地面を這いながら,所々に根をおろす 様子が,地面を縛るように見えることからついた 名. 北海道,本州,四国,九州,沖縄.朝鮮, 中国に分布する27). ジシバリの若葉はよく水にさらすと食用になり, 全草は健胃剤として利用される.類似種にオオジ シバリ(大地縛り)がある. 生薬は解熱,消炎剤として利用される5). 14.水芥菜(ただいこん) 食べ方:若芽をゆでて水に浸し,辛味を除いて から,塩やみそで味つけして食べるとよい. ア ブ ラ ナ 科 イ ヌ ガ ラ シ( カ ン サ イ )は,
Rorippa indica(L.)と,Rorippa montana(Wall)が ある7).日本では,前者の学名を用いている29,30).『備 荒草木図』5)の挿画は,後者の葉に類似している. 日本では多年草と記述されているが,文献 7)は1 年生草本としている. 写真12 わさび わさび田 2009.8.7.26) 写真13 じしばり27) 写真14 いぬがらし 小石川植物園 2007.12.11.28)
『備荒草木図』5)の食べ方では,辛味を除いて 食べるように記述しているところから,前者の性 味が辛・甘,涼,後者が甘・淡,涼であることか ら前者と思われる.両種とも鎮咳・利尿作用など がある. 15.水朝顔(みづあさがほ) 食べ方:葉をよくゆでて水に浸し,塩やみそで 味つけしてたべるとよい. ミズオオバコOttelia alismoides. は,トチカガ ミ科ミズオオバコ属の湖沼や水田,用水路などに 生育する一年生の水草.ミズオオバコの葉は薄く てスプーン型,生育しているときには形がよくわ からないが,葉脈がはっきりしているのがオオバ コの葉に似ているのでこの名がある.現在では絶 滅危惧種に指定されている31). 16.菫菜(すみれ)※ 食べ方:葉をゆでて水に浸して食べるとよい. スミレViola mandshurica W. Beck は,スミレ 科スミレ属の植物.草丈7∼15cm の多年生草本7). ラッパのような形の花を横向きか,やや斜め下向 きにつける.5枚の花びらは大きさが同じでなく, 下側の1枚が大きいので,花の形は左右対称になる. 山間部の道端から都会まで,コンクリートのひび 割れなどからも顔を出す33). 生薬の紫花地丁(シカジチョウ)は,ノジスミ レの全草を乾燥したもの.性味は苦・辛,寒.(帰 経 : 心・肝経).清熱解毒,消腫などの薬理作用 がある8). 葉はてんぷら,ゆでておひたしや和え物にする. 花の部分は酢の物や吸い物の椀種にする.ただし, 他のスミレ科植物,例えばパンジーやニオイスミ レなど,有毒なものがあるため注意が必要である33). とにかく,咲き終わると種を落として,次の花 をつける強靭な植物である.花は,和食の天盛り やサラダなどに散らして使うことがある. 17.蒲(がま)※ 食べ方:若芽をとってゆでる.あるいは蒸して 塩やみそで味つけして食べるとよい. ガマTypha latifolia (L.)は,ガマ科ガマ属の 多年草の抽水植物である.日本全土に分布し,湿 地や沼地などに見られる36). 花粉は,生薬の蒲黄(ホオウ)であり,性味は 甘,平.(帰経 : 肝・心包経).薬理作用として収 斂止血,活血祛瘀がある8). ガマは若芽が食用にされ,根茎に含まれるでん 粉も食用とされた5). 『民間備荒録』4)では,でん粉を採る方法に言 及している. 写真15 みずおおばこ31) 写真17 がま 左 : 蒲黄 2012.8.31.34) 右 : がまの根 2010.5.18. 落合政栄35) 写真16 すみれ32)
18.野葡萄(のぶどう)
食べ方:熟した実を食べると良い.
ノブドウ Ampelopsis brevipedunculata (Maxim.) Trautv. は,ブドウ科ノブドウ属に属するつる性 の落葉低木7). 生薬は蛇葡萄根(ダブドウコン)で,根皮を用 いる.性味は辛・苦,涼.清熱解毒し,風邪を除 いて活絡し,止血作用がある.応用では,関節リ ウマチ,嘔吐,腹くだしなどに用いる7). 日本では山野に自生する多年草植物.一般にま ずくて利用されない38). 『救荒草木図』5)の校注でも,一般にはまずく て利用されないとあり,ヤマブドウと比定するこ ともできるが,挿画の葉から,ノブドウにしたと 記述している. ヤマブドウであれば,果実の他に新芽やつるも 食べることができるが,かなり酸っぱい. 19.沢瀉(おもだか)※ 食べ方:若葉をゆでて水に浸し,味つけして食 べるとよい.
オモダカ(沢瀉・タクシャ)Alisma orientale(Sam.) は,オモダカ科オモダカ属の植物.草丈は50∼ 100cm の多年生草本.地下茎は球塊状で,外皮 は褐色,ひげ根が密生する.浅い沼沢地,水田や 湿り気のあるところに生える7). 秋に地下に走出枝をのばし,先端に小さな芽を つけ,大きなものは食用にする.クワイは,オモ ダカの栽培種で,中国原産の植物である5). 生薬の沢瀉(タクシャ)はサジオモダカの塊茎 を乾燥したもので,性味は甘,寒.(帰経:腎・ 膀胱経).利水,渗湿,清熱の薬理作用がある8). 20.山蔥(ぎやうじやにんにく) 食べ方:若芽を十分にゆでて味付けして食べる. あるいは生のまま塩漬けにして食べるのもよいと いう. ギ ョ ウ ジ ャ ニ ン ニ クAllium victorialis L. platyphyllum Makino. は,ユリ科ネギ属の多年草. 東日本の高山や北海道に生える.葉は長さ15∼ 30cm あり,2∼3枚生ずる.全草を使用,ニラの ような臭みがあり,若芽や葉を春に摘んで,ゆで てから,浸し物,みそ和え,油炒めなどにする. 花やつぼみはてんぷら,地下部のネギ状の鱗茎は 味噌合えに適している11). 今も人気のある山菜の一つである.近年,イヌ サフランをギョウジャニンニクと間違って食べる 事故が発生している. 21.後庭花(はげいとう) 写真18 のぶどう37) 2009.9.20. 秋田県大館市 写真19 おもだか39) 写真20 ぎょうじゃにんにく 帯広市東4南7 畑 2020.9.8. 写真21 はげいとう40)
食べ方:若芽の葉をゆでて水に浸し,味つけし て食べると良い.あるいは水にさらしてから乾燥 したものもよい. ハゲイトウAmaranthus tricolor L. は, ヒユ科 ヒユ属の植物.原産地は熱帯アジア.草丈は1.5m ∼2m,主な鑑賞期は7月-10月40). 生薬は,夏に全草を,秋に種子を採取する.性 味は,甘,涼.目の疲れをとり,解熱・止血作用 がある7). ハゲイトウは同種のヒユから育成された.ヒユ はインド原産で野菜として食用に,薬用,観賞用 に広く栽培されている5). 22.土圝児(ほど) 食べ方:根をよく煮てから食べるとよい. ホドイモApios fortunei は,マメ科ホドイモ属 の植物.中国大陸南部から日本列島全域にかけて の一帯が原産地であり,日本では山野,特に日当 たりのよい林の中に自生する42).地下茎のところ どころにでん粉を含む塊根があり,食用となる. 中国ではホドイモの塊根を風邪の咳,百日咳,の どの痛みなどに用いる5). 23.巻丹(おにゆり)※ 「食べ方」:根を食べる.また葉もゆでて食べ るとよい.
オニユリLilium lancifolium (Thunb).ユリ科 ユリ属の多年草.中国,朝鮮,日本に自生する. 茎は1∼2m になり,7月下旬ころから紅赤色の大 花が下向きに咲く.茎の上半部の葉のつけねには 木子(きご)がつく.球根(鱗茎)は甘みがあり, ほかのユリ類の球根とともに,ゆり根として食用 にされる.甘煮,きんとん,汁の実などにする11). 生薬の百合(ヒャクゴウ)は,日本ではササユ リを用いる.性味は甘・苦,微寒で潤.(帰経:心・ 肺経).乾咳・慢性咳嗽,清心安神に用いる8). ユリ根の鱗片は小さいが,食味は食用ユリと変 わらない.葉はアルカロイドのためか,水に浸し ても苦味が強い. 24.茼蒿(しゆんぎく) 「食べ方」:茎も葉もよくゆでて,塩やみそで 味つけして食べるとよい. シュンギク(春菊)Chrysanthemum coronarium L. キク科キク属の1年または2年草.地中海沿岸 原産,日本へは室町時代に渡来,栽培は江戸時代. 葉が細く裂け,薄いものをセリバシュンギク,厚 葉で,へら形できざみの浅いものをオタフクまた は琉球春菊(var. spatiosum BAILEY)という. 全草に芳香があり,葉や若苗を汁の実,浸し物に する5),11). 欧茼蒿(オウトウコウ)は,種々のアミノ酸を 含み,辛・甘,平で健胃・健脾し,大・小便を通 じ,痰飲を除く.同じ学名でも,日本のシュンギ クとは見た目は異なるが,通常は野菜として煮て 食べるとある7). 春に種を播いて,霜がくるまで摘み取って食べ られる野菜である. 写真22 ほどいも41) 写真23 おにゆり 帯広市東4南6 庭 2019.8.12. 写真24 しゅんぎく 帯広市東4南7 畑 2020.9.9.
25.馬歯莧(すべりひゆ)※ 食べ方:葉をゆでて水に浸し,塩やみそで味つ けして食べる.妊婦や子供は食べてはならない. また,わらびの粉と混ぜて食べるのはよくない. 馬歯莧(バシケン)Portulaca oleracea L の全草. 全世界の温帯から熱帯に分布する1年草.日本で は北海道から九州まで分布.市街地や農耕地の雑 草.日あたりのよい土地を好む.ふつう開花前の 茎葉全体をとり,浸し物にして辛子しょう油で食 べる.また,納豆と和えてもよく,酸味と独特の ぬめりがあり美味である.ゆでて乾燥し,保存食 とすることもできる5),11),43). 性味は酸,寒.(帰経:心・大腸経).清熱解毒, 涼血止痢でおもに下痢に用いる8),22). ゆでて食べると,歯ざわりがよい.数日,水に 浸すと抵抗なく食べられる.酸味がある. 26.珍珠菜(とらのを) 食べ方:葉をゆでて,水を換えて浸し,渋みを とったのち,塩やみそで味つけして食べるとよい. ヌマトラノオLysimachia fortune Maxim は, サクラソウ科オカトラノオ属の多年草.根は朱色, 全体が無毛,単葉が互生またはほぼ対生し,長楕 円状被針形,上部に黒い線状の斑点がある7).日 本では本州から九州に分布し,湿地に生える.類 似種にオカトラノオがあり,これは北海道から九 州に分布し,日当たりのよい山野に自生する.ヌ マトラノオは花序が直立し,オカトラノオは先端 が下にたれる.両種を含めてトラノオと呼んでい たものと思われ,両種とも若芽が食用にされる5) と校注がある. トラノオの性味は苦・渋,平.活血し,瘀血を 散らし,利水し,湿邪を除く.応用では打撲傷, 関節リウマチ,浮腫,腹くだしなどにもちいる5). 中国はヌマトラノオを星宿菜(セイシュクサイ) と呼び,日本のトラノオの花や葉の形状は,やや 異なる. 27.鼓子花(ひるがを) 食べ方:根は塩をふって蒸すか,あるいは煮て 食べるとよい.また,皮を取り去った根を刻み, よく煮てから水に浸して洗い,麦や米などに混ぜ てかゆにするとよい.また,臼ですって粉にした ものを煉り,蒸しもちにして食べるとよい.葉は よくゆでて,かてものにするとよい.ただし,毎 日つづけて食べてはならない.
ひるがおCalystegia japonica Choisy は,多年 生草本.旋花(センカ)と呼ばれるヒルガオ科ヒ ルガオ属の植物7).北海道から九州,朝鮮半島, 中国に分布し,野原や道端に生える.根茎は白色 で地中を横走し,茎はつる性でほかの物にまきつ く.葉は互生,長柄があり,長楕円形被針形,長 さ5∼10cm.腋生の花柄の先端に大形の淡紅色花 を単生する43). 性味は甘,寒.降圧,利尿,傷口を癒合する. 臨床応用では,高血圧,排尿困難に用いる7). 写真25 すべりひゆ 帯広市東4南7 畑 2020.9.8. 写真27 ひるがお45) 写真26 ぬまとらのお44)
28.鶏眼草(やはづさう) 食べ方:やはずそうは,葉をゆでてから水に浸 し,味つけをして食べる.また,実を臼でついて 挽き割りにし,水に浸してかきまぜながら洗って かわをはじかせ,かゆあるいは飯にして食べると よい.また,臼ですった粉を練り,蒸しもちにす るとよい. ヤハズソウ(鶏眼草・ケイガンソウ・ヤハズソ ウ)Kummerowia striata (Thunb.)Schindl. は, 拡散性の草本で,通常広範囲に広がって生長する7). 日本全土の道端などにふつうに見られる.茎には 下向きの毛があり,よく分枝して高さ15∼40cm になる.小葉は長さ1∼1.7cm,幅3∼7mm の長楕 円形.花は葉腋に1∼2個つき,淡紅紫色で長さ約 5mm.豆果は萼よりわずかに長く,先はとがる. 種子は斑紋がある.花期は8∼10月46). 性味は甘・淡,微寒.清熱解毒し,排膿して傷 口を治す.臨床応用では,肝炎・細菌性下痢・胃 腸炎・夜盲症・できものなどに用いる7). 29.巻耳(みみなぐさ) 食べ方:みみなぐさは,葉をゆでて食べるとよい. ミミナグサは,ナデシコ科ミミナグサ属の越年 草.茎は株立ちとなり,高さ10∼30cm,上部は 赤紫色を帯びることが多い.葉は楕円形,毛が多 い.春,茎頂に小花をまばらに開く.花弁は白色, 浅く2裂する.果(さくか)は萼片よりも長く突 き出,先は10裂するが,これはミミナグサ属の特 徴である.日本,および朝鮮半島,中国からイン ドに分布する.名は,葉をネズミの耳に見立てた ものという.道端や田畑にふつうに生える雑草と して知られる48).ハコベに似ている. 30.藜(あかざ) 食べ方:葉をゆでて,かてものとして食べると よい.また,乾燥して保存しておき,食べるとよい. アカザChenopodium album L. は,アカザ科ア カザ属の1年草.インド,中国原産.市街地や畑 の雑草として全国に分布する.高さ1∼1.5m に茂 り,夏から秋に黄緑色の小さい花をつける.シロ ザとアカザがあるが,一般には両者をアカザと総 称する. 春から初夏に若芽を摘み,葉についている粉を よく洗いとり,ゆでて和え物,浸し物などに利用 する.果実をつくだ煮にすることもある.第2次 世界大戦中や戦後の食糧不足時代によく食用とさ れた11). 性味は甘,平.小毒.清熱利湿し,かゆみを止 め発疹を促進する.臨床応用では,風邪・熱邪の 感冒,細菌性下痢,はしかの発疹不足に外用する7). 昔,畑仕事で手に切り傷をしたとき,アカザを 血止めにすることを教えられた.秋口に摘んだ実 をつくだ煮にして食べた.くさみもなく食べるこ とができた. 写真28 やはずそう46) 写真30 あかざ 音更町希望が丘 畑 2020.9.8. 写真29 みみなぐさ47)
31.川穀(づづたま) 食べ方:実を臼でついて砕き,蒸して食べると よい.あるいは臼ですった粉を練り,蒸しもちに したものもよい. ジュズダマCoix lacrymajobi L. は,イネ科ジュ ズダマ属の多年草7).東南アジア原産で日本には 中国を経由して導入された.ジュズダマの栽培変 種がハトムギで,ともに子実(漢名は薏苡仁・ヨ クイニン)が薬用,食用に利用される. ジュズダマの生薬は川穀根(センコクコン)で, 根と皮を用いる5).ジュズダマの栽培変種のハト ムギ(薏苡仁)の性味は,淡甘,微寒で脾,胃, 肺経である.むくみをとり,利尿し,熱を下げ, 排膿する.関節炎や尿路結石,イボなどにも効果 がある.煎じて茶にして飲むか,粥にして食べる と脾,胃の虚を補う22).薏苡仁は,食材としても 薬としても,広く使用されている. 32.鹻蓬(くがひじき) 食べ方:はままつなは,ゆでて水に浸してあく を除いて,塩やみそで味つけして食べるとよい. ハママツナはアカザ科マツナ属の一年草.宮城 県以南の本州から九州に分布する.海辺の砂地に 生え,若葉や茎が食用となり,栽培されることも ある.クガヒジキは,オカヒジキ(アカザ科オカ ヒジキ属)の異名.漢名の鹻蓬はマツナを指す5). 『備荒草木図』5)の校注では,ハママツナと比 定したが,オカヒジキの可能性も否定できないと している.ハママツナは岩手県には自生していな いとも. 33.莧菜(ひゆ) 食べ方:葉をゆでて食べる.またかてものにす るとよい.
ヒユAmaranthus inamoenus WILLD. は,ヒユ 科ヒユ属の1年草.温帯から熱帯に広く分布する11). インド原産で,古くから栽培されており,現在で も,ときに蔬菜として畑で栽培される.高さ約 1m.葉は長柄をもち菱状卵形で緑・紅・暗紫色 または紫斑のあるものなど変化が多い.夏から秋 にかけ,茎頂および葉腋に,ごく小さな黄緑色の 花が球状に密集してつらなった花穂をつくる.果 実は楕円形で横に裂け,種子は黒褐色51). 漢 名,反 枝 莧( ハ ン シ ケ ン )Amaranthus retroflexus L. はヒユ科アオゲイトウで全草と種 子を使用する.生のままか乾燥して用いる. 性味は甘・淡,微寒.全草を腹くだし,細菌性 下痢に用いる.種子は熱症と視力減退に用いる7). ヒユの葉はやわらかく,ホウレンソウと同様に 煮つけ,汁の実,炒め物にする.近縁の観賞用の バゲイトの葉や,雑草のイヌビユの葉も食用にな る11). 若いイヌビユの全草をゆでて食べた.全くクセ がなく食べやすい. 写真31 じゅずだま49) 写真32. はままつな50) 写真33 いぬびゆ 音更町希望が丘 畑 2020.9.8.
34.胡枝子(はぎ) 食べ方:やまはぎは,実を臼でついて挽き割り にして水で洗い,かゆや飯に炊いて食べる.葉は, 蒸してから日にさらし,茶のかわりにするとよい. ヤマハギは,マメ科ハギ属の落葉低木で,学名 は Lespedeza bicolor.わが国の各地をはじめ, 朝鮮半島や中国に分布している.山地の草地や林 縁に生え,高さは1∼2m になる.葉は3出複葉で やや薄く,小葉は広楕円形から広卵形.7月から9 月ごろ,葉腋から基部につく葉より長い総状花序 を出して,赤紫色の花を咲かせる.秋の七草のひ とつ52).花も葉を落ちたはぎの枝を束ねて,箒に する. 35.敗醬(をみなへし)※ 食べ方:若芽をゆでて水に浸し,塩やみそで味 つけして食べる.
オミナエシPatrinia scabiosifolia Fisch. はオミ ナエシ科オミナエシ属の多年草.北海道から九州, 東アジア各地に広く分布する.繁殖は株側に新し い苗を出して増える.根茎はやや太く横に這って いる.茎は1m 内外で丈夫である.晩夏から秋に かけて茎の上部は分岐し,その先に黄色の細い花 を多数つけて房状になる9). 生薬名は敗醤草(ハイショウソウ)という.性 味は苦・辛,微寒.(帰経 : 胃・大腸・肝経).清 熱解毒,排膿,活血祛瘀などの働きがある8). 盆花として供花する風習もある. 36.金盞花(きんせんくわ) 食べ方:若芽の葉をゆでてから,水を換え浸し て酸味を除き,塩やみそ,しょう油で味つけして 食べるとよい. キンセンカ(金盞花)Calendula officinalisは, キク科キンセンカ属の植物. 茎は4稜形で,中ほ どで分枝し,腺毛がある.葉は長さ5∼18cm の へら状で互生し,下葉は全縁,上葉はわずかに鋸 歯があり,基部は茎を抱く.茎の先端に直径7∼ 12cm の芳香のある花を一個つける.ハーブの一 種で,ヨーロッパでは古くから食用や薬用(虫さ されの薬)に使われてきた54). 特有の芳香があるので,野菜と混植して虫よけ にできる. 37.黄独(かしゆう)※ 食べ方:根をよく蒸し,あるいはよくゆでて苦 味を除き,皮をむいて食べるとよい.または,わ らなどの熱い灰の中に埋めて蒸し焼きにして食べ るとよい.実も根と同じようにして食べるとよい. ニガカシュウは,ヤマノイモ科ヤマノイモ属の 多年草.関東以西の本州から沖縄に分布する.地 下に大型の塊茎をつけ,ひげ根が多い.葉腋にむ 写真35 おみなえし53) 写真36 きんせんか54) 写真37 にがかしゆう55),56) 写真34 やまはぎ 音更町雄飛が丘 道端 2020.9.16.
食べ方:皮をむいた茎をゆで,水に浸してよく 煮て食べる.葉もまた同様にして食べるとよい. また,ゆでたものを乾燥して保存しておき,用い るとよい.
ツワブキLigularia tussilaginea Makino. は,キ ク科ツワブキ属の多年草で,浜辺近くに自生する. ややフキに似て,上面はつやがあり光る.晩秋に とうが出て直径5cm の黄色の花をつける.若い 葉柄を,フキと同様に皮をむいてから煮てアク抜 きし,煮つけにする.また,キャラブキにする11). 漢方では,全草を風邪やのどの痛みに用いた. 日本でも葉を解毒や化膿,湿疹の治療に用いた5). 40.蓮実(はすのみ)※ 食べ方:はすの実は,蒸して食べる.あるいは, よくついて砕き,米や麦に混ぜてかゆや飯にする. また,米の粉に混ぜて蒸しもちにする.若葉はゆ でてかてものにするとよい.
ハスNelumbo nucifera Gaerth は,スイレン科 ハス属の多年生の水生草本.熱帯アジアの原産で, 広く各地の池沼,水田などに栽培される.根茎(蓮 藕・レングウ)は肥大して数条の空洞があり,葉 は長柄があり,扁円形である.夏に長梗を出し, 薄紅色から白色大型の美しい花(荷花・カカ)が 開く.果実は肥大して(蓮房・レンボウ),海綿 状になった花托の上面の孔の中に入っている.楕 円形をして,果皮は硬い.ハスは,天日乾燥した 蓮実(石蓮子・せきれんし),果皮や種皮を取り去っ て胚乳組織を蒸乾した蓮肉(蓮子・レンシ),緑 色で棒状の胚(蓮子心・レンシシン)地下茎のレ ンコン,葉(荷葉・カヨウ),雄シベ(蓮鬚・レ ンシュ)などすべてを利用する7),13). 蓮子の性味は,甘・渋,平.(帰経:肝・腎・ 心経).臨床応用では,心火をさまして精神を安 かごをつける.同種の栽培変種がカシュウイモで, 大きなむかごを葉腋につける5). 生薬の黄薬子(オウヤクシ)は黄独(ニガカシュ ウ)Dioscorea bilbifera L. の塊茎を乾燥したもの で,性味は苦,平.(帰経:肝・心経).清熱涼血 し,解毒して甲状腺腫を治す7),8). 38.蒲公英(たんほほ)※ 食べ方:葉をゆでて水に浸して食べるとよい. タンポポTaraxacum platycarpum DAHLST.は, キク科タンポポ属の多年草.郊外から山地まで自 生している.地方によっては,異なった種が知ら れている.関東にはカントウタンポポ,山地には エゾタンポポ,関西にはカンサイタンポポが多く, さらに西ではシロバナタンポポガがふつうである. しかし,欧州原産のセイヨウタンポポが広く帰化 して,いたるところで繁茂して猛威をふるい,日本 古来のタンポポは平地から姿を消しつつある13). 生薬の蒲公英(ホコウエイ)は,タンポポの全 草を乾燥したものである.性味は苦・甘,寒.(帰 経 : 肝・胃経).臨床応用は急性乳腺炎,急性虫 垂炎に適応する8). 春に若葉を摘んでゆで,浸し物,和え物にする11). タンポポの葉は,多少苦味があるが,水に晒す とさほど気にならない.根はタンポポコーヒーな どとして利用される. 39.橐吾(つわ) 写真38 えぞたんぽぽ57) 写真40 左:山梨県長栄寺 2020.6.16. 右:はすの実59)
定させる.脾胃を補益して止瀉させる8). 最近は,レンコンは日常的に食べられる食材で ある.ハスの実は非常に硬いので,調理には手間 がかかる.ハスの実の緑の芯は,お茶にするが, かなり苦い. 41.桔梗(ききやう)※ 食べ方:ききょうは,若芽をゆでて水に浸して, 何度も水を換えて苦味を除き,塩やみそで味つけ して食べるとよい.
キキョウPlatycodon grandiflorumt (Jacq.)A.DC は,キキョウ科キキョウ属の多年草.東アジアに 固有の種で,日本全土,朝鮮,中国に分布し,山 野の日当たりのよい草地に自生する5),7).キキョ ウの若芽は山菜としても食べられる.茎葉はアク もくせもなく美味である.ゆでてから各種和え物, 浸し物,煮物,漬け物にする9). 韓国ではキキョウをトラジと言って,根を調理 して食べる.キキョウの根の性味は,苦・辛,平. (帰経 : 肺経).臨床応用では,祛淡・鎮咳,咽 頭の炎症で声が出ないとき,排膿などに用いる8). 乾燥トラジは水に戻してから使用する.やや苦 味がある. 42.糸瓜(へちま) 食べ方:へちまは,若いうりを細かく切り,ゆ でて水に浸し,味つけして食べるとよい.若葉も またゆでて水に浸して食べるとよい.
ヘチマLuffa cylindrica(L)Roem. は,ウリ科 ヘチマ属の栽培植物.1年生のよじのぼり性草本. ウリ状果は,長円柱状.種子は偏平な長卵形.ヘ チマは,タワシ,化粧品(ヘチマ水)などが作ら れる.未熟果は野菜として利用される5),7). ヘチマの生薬名は,絲瓜絡(シカラク)で,味 は甘,性は平.(帰経 : 肺・胃・肝経).臨床応用 では,気管支炎・肺炎などの肺熱による咳嗽,打 撲捻挫による腫脹,風湿による関節痛・筋肉痛に 適している8). 43.棣棠(やまぶき) 食べ方:若葉を灰汁でゆでて水に浸し,塩やみ そで味つけして食べるとよい. ヤマブキKerria japonica(L)DC. は,バラ科 ヤマブキ属の落葉低木.樹高1∼2m.葉は互生し, 楕円状卵形で先端はするどい.花は側枝先端につ き,黄色7).北海道から九州,中国に分布し,山 野に自生するほか園芸品種がある5). 生薬名は,棣棠花(テイトウカ)と言い,花と 葉を用いる.性味は微苦・渋,平.風邪に効き, 肺燥を潤し,鎮咳去痰作用がある.応用として, 慢性の咳,消化不良,浮腫,リウマチ痛などに用 いる7). 葉は灰汁でゆでなくても苦みもなく食べること ができた. 以上,『備荒草木図』上巻に掲載されている植 物43種について調べた.居住地・近郊で見られる 植物は,繁縷,茅,木通,紅藍苗,萱草,錦葵, 菫菜,蒲,山蔥,後庭花,巻丹,茼蒿,馬歯莧, 鼓子花,藜,莧菜,敗醤,金盞花,蒲公英,蓮実, 写真42 へちま61) 写真43 やまぶき 帯広市東4南7 畑 2020.9.9. 写真41 左:ききょうの花60) 右:ききょう若芽,帯広市東4南6 庭 2020.9.8.
桔梗,棣棠である.また,これまで試食した植物 には下線を付けた. 今後は, 『備荒草木図』5)の下巻に掲載されてい る植物について調べたいと考えている. 参考資料 1)http://www.reigai.affrc.go.jp/zusetu/reigai/ kako/h5jittai.html 2020.9.4 2)h t t p s : / / w w w . m e t s o c . j p / t e n k i / pdf/1994/1994_08_0465.pdf 2020.9.4. 3)h t t p s : / / i s s . n d l . g o . j p / b o o k s / R100000002-I000000477506-00 2020.9.4. 4)山田龍雄,飯沼二朗,岡光夫編(1983年): 日本農書全集 第18巻,『民間備荒録』建部清庵著, 社団法人農山漁村文化協会. 5)佐藤常雄,徳永光俊,江藤彰彦編(1996年): 日本農書全集68,本草・救荒『備荒草木図』建 部清庵著,社団法人農山漁村文化協会. 6)http://had0.big.ous.ac.jp/plantsdic/ angiospermae/dicotyledoneae/sympetalae/ compositae/menamomi/menamomi.htm 2020.9.4. 7)蕭培根主編,大塚恭男,庄司順三,滝戸道夫, 丁宗鐵監修,真柳誠翻訳編集(1992年 -1993年): 中国草本図録 巻一∼巻十,中央公論社. 8)神戸中医学研究会訳編(1979年):漢薬の臨 床応用,医歯薬出版株式会社. 9)矢萩禮美子(1986年):食卓に生かす四季の 山野草,社団法人農山漁村文化協会. 10)https://www.kigusuri.com/kampo/jiten/ shouyaku/soujutsu/ 2020.9.4. 11)星川清親,千原光雄(1970年):食用植物図説, 女子栄養大学出版部. 12)http://www.e-yakusou.com/yakusou/440. htm 2020.9.4. 13)森田直賢(1990年):よく効く薬用植物がわ かる本,健友館株式会社. 14)https://www.yamada-egg.com/blog/wp-content/uploads/2016/06/%e7%b4%85%e8%8a %b1-1024x768.jpg 2020.9.5 15)h t t p s : / / g a r d e n i n g . b i o t o p e . w o r k / lonidokorotoyamanoimo 2020.9.5. 16)http://takezoumaru.blog.fc2.com/blog-entry-43.html 2020.9.5. 17)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88% E3%82%B3%E3%83%AD 2020.9.5. 18)http://www.parkcornernurseries.co.uk/ page9.html 2020.9.5. 19)上海科学技術出版社編(1985年):中薬大辞典, 小学館. 20)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2 %E3%82%B5%E3%82%B6 2020.9.7. 21)https://www.hana300.com/nokanz.html 2020.9.7 22)山崎郁子(1988年):中医営養学,第一出版 株式会社. 23)http://art5.photozou.jp/pub/559/112559/ photo/19299579_624.v1566529243.jpg 2020.9.7. 24)小学館編(1987年):日本大百科全書 第18巻, 小学館. 25)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BC %E3%83%8B%E3%82%A2%E3%82%AA%E3% 82%A4 2020.9.7. 26)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF %E3%82%B5%E3%83%93 2020.9.7. 27)http://www.jugemusha.com/yasou-zz-jisibari.htm 2020.9.8. 28)https://www.hana300.com/inugar1.html 2020.9.8. 29)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4 %E3%83%8C%E3%82%AC%E3%83%A9%E3% 82%B7 2020.9.8. 30)https://www.ootk.net/cgi/shikihtml/ shiki_598.htm 2020.9.8. 31)http://had0.big.ous.ac.jp/plantsdic/ a n g i o s p e r m a e / m o n o c o t y l e d o n e a e / hydrocharitaceae/mizuoobako/mizuoobko.htm 2020.9.8. 32)h t t p : / / b l o g - i m g s - 5 3 . f c 2 . c o m / y / a / t / yatsuga103/DSCF8721.jpg 2020.9.8.
33)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9% E3%83%9F%E3%83%AC 2020.9.9. 34)http://blog.livedoor.jp/dancededance/ archives/1701438.html 2020.9.10. 35)http://www.simoyokote.sakura.ne.jp/ saizikidousyokubutu/yasou/gama/gama.html 2020.9.10. 36)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC% E3%83%9E 2020.9.10. 37)http://www.jplants.sakura.ne.jp/nobudou. html 2020.9.10. 38)https://www.weblio.jp/content/%E9%87%8 E%E8%91%A1%E8%90%84 2020.9.10. 39)https://www.botanic.jp/plants-aa/omodak. htm 2020.9.10. 40)http://www.yasashi.info/ha_00003.htm 2020.9.10. 41)https://plaza.rakuten.co.jp/negishinouen/ diary/201402250000 2020.9.10. 42)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B% E 3 % 8 3 % 8 9 % E 3 % 8 2 % A 4 % E 3 % 8 3 % A 2 2020.9.10. 43)山岸喬(1992年):北海道薬草図鑑 野生編, 北海道新聞社. 44)https://livedoor.blogimg.jp/kaedecyan38/ imgs/5/c/5c60582b.jpg 2020.9.11. 45)https://www.botanic.jp/plants-ha/hiruga. htm 2020.9.11. 46)https://matsue-hana.com/hana/yahazusou. html 2020.9.11. 47)https://www.hakodate.or.jp/nature/flower/ nadesiko/oobamimi.htm 2020.9.11. 48)小学館編(1988年):日本大百科全書 第22巻, 小学館. 49)http://gkzplant.sakura.ne.jp/souhon2/ shousai2/sa-gyou/se/sennkoku/sennkoku.html 2020.9.11. 50)https://www.weblio.jp/content/%E3%81%8A% E3%81%8B%E3%81%B2%E3%81%98%E3%81%8D 2020.9.12. 51)日本国語大辞典第二版編集委員会,小学館国 語辞典編集部編(2001年):日本国語大辞典 第 11巻,小学館. 52)https://www.weblio.jp/content/%E5%B1%B1% E8%90%A9 2020.9.12. 53)http://nky.air-nifty.com/blog/2018/09/post-7fcb.html 2020.9.12. 54)http://hamakazuchan.la.coocan.jp/flowers/ gojyuuon/kinsenka.html 2020.9.12. 55)h t t p : / / p l a n t i d e n t i f i e r . e c - n e t . j p / t s _ nigakashuu.html 2020.9.12. 56)h t t p s : / / a m e b l o . j p / s h o j i - f u k u s a t o / entry-11943199610.html 2020.9.12. 57)http://www.mfi.or.jp/w3/home0/isoda/ sansai/ezotanpopo2.html 2020.9.12. 58)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%84% E 3 % 8 3 % A F % E 3 % 8 3 % 9 6 % E 3 % 8 2 % A D 2020.9.12. 59)http://blog.livedoor.jp/dancededance/ archives/1703471.html 2020.9.12. 60)https://nishiawa.blog.fc2 .com/blog-entry-2277.html 2020.9.12. 61)h t t p : / / k o u e n 2 . b l o g 8 3 . f c 2 . c o m / b l o g -entry-11492.html 2020.9.12.