双線形モデルにおける因子回転
小笠原 春 彦
要 約
因子分析モデルで代表 される双線形モデルには,交互作用項の部分に因子回 転に相当する自由度が存在する。 この研究では,因子分析以外の双線形モデル のうち,
2元頻度表に関す る対数双線形モデル と2 要因分散分析モデルのひと つである
FANOVAモデルを とりあげ,複数の因子負荷行列 を対象 に因子 回 転 を行い,その標準誤差を推定する方法 を示 した。 また,線形項の含 まれるモ デルでは因子負荷行列の列和が
0である制約が課 されることが多いので,従来 の回転方法に加 えて,寄与の分散 を最小化する方法を示 した。
1
.淑線形モデル
観測個体 ×変数で構成 され るデー タ行列や
2元の分割表等 において,
(i,j)要素の頻度 または連続変数の測定値 を
xl jとあ らわす ( i = 1
,…,p;j=
1,..
.,q).双線 形 とは
∫
xij
≡
∑ llik
=1 k l2jk (1)の ようにモデルが積 の形の項 を含む ことを意味す る。 この場合, Al i k ,
A夢 kは パ ラメータである場合 と確率変数である場合がある。 また,次のように線形の
〔181〕
182 商 学 討 究 第47巻 第2・3号
項が含 まれることがある
。γ
xi,・芸FLg+FLli+FLz,.+∑ ス1ikA2ik
k=1 (2)
Kruskal(1981)
は
(1)式のモデルを純双線形
(purebilinearexpression),
(2)式のモデルを混合双線形
(mixedbilinearexpression)とよび区別 している 。 当 論文では
(1), (2)式の表現 をともに双線形モデル とよ ぶ 。
(2)式の典型的なモ デルはいわゆる因子分析モデルである
。すなわち,
xi
=
FL+Afi (3)である。ここで,x
j=(Ni l , . . . Xi I ・ ) ' , 旦=(
ill, . . . ,F L p) I ,
A=lAg】 , 透 ‑gi l , ‥. t f i r ) ' で あ り,
x
j
は i 番 目の被験者 に関する観測値のベク トル,且 は平均のベ ク トル, A は因 子負荷行列,f l ・ は因子得点のベ ク トルである
。f iが確率変数ではな く且 ,
Aと同様 にパ ラメータである場合 は因子分析 の母数模型 とよばれるが,これは
(2)式 において 〟g,F L l iがない場合 に相当する. f iが確率分布 に従 う変量模型の場 合 は,パ ラメータについてのみ考 えると
(3)式は線形モデルである
。ところで
(2)式 にはモデルに一意性がない ことはあ きらかである。そのひと つは位置 に関す るもので, もうひとつは尺度を含む変換 に関す るものである。
j ' q メ q
前者の不 定性 を除 くために,通常 ∑
FLli‑∑
FLZj‑
∑ Alik‑∑ A2jk‑0,(k‑1 , …, r ) i ‑
1 j=li
=1 j‑1の ような制約が課 される。後者の不定性の 問題は次 により示 される。
AIA
Z '
‑ AITTllA2'‑ AIT(A2T'‑1)' (4)ここで,
(4)式は
(2)式の右辺第
4項 に対応す る行列であ り,
Al=【Alik1
,AZ‑lA2jk]
である。 また,
Tは任意の k次の正則な正方行列である。
この間題は
(3)式の因子分析 モデルでは因子の変換や回転の問題 として古 く
双線形モデルにおける因子回転
183か ら研究 されてきた ( 例えば
Harman,1976,芝
,1979,柳井他
,1990参照
)0これは一意性の欠如 を逆 に利用 して ,A の変換後の行列 A 7 1 をよ り適切 なもの に構成するということで もあるが,変換 の対象は通常の場合 A というひとつの 負荷行列である。一方
,(2)式の場合 に因子分析 モデル との類似性か らAl とA
2を因子負荷行列 とよぶ と
(2)式には通常の因子分析モデル と異 な り,
2つの因 子負荷行列が存在す ることになる。
当論文ではこの ような双線形モデルにおける因子の変換 問題を
2つの主なモ デルについて扱 う。 なお,
(2)式は最 も簡単 なケース として示 した もので一般 には次のように表わされる
。′
i(E(Xij))‑FLg+FLli+ FL2i+∑Alk‑1 ikA2ik (5)
ここで,
f(・ )は一般化線形モデル
(McCullagh &Nelder,1989)における種 々 の リンク関数 に対応する。すなわち,期待値のある変換が双. 線形 となっている モデルである。ただ し,
(5)式の右辺は双線形モデルであるので これは一般化 双. 線形モデル
(Choulakian,1996)である
。2.
対数双線 形 モデル にお ける因子 回転
2. 1
対数線形モデル と対数双線形モデル
対数線形モデルは頻度表 ・分割表のモデル としてよく知 られている ( 例 えば
Bishopeta1.,1975
参照)
0 2元頻度表の
(i,j)要素の東度 に関す る確率変数 を
X l j とす ると典型的な対数線形モデルは
ln(E(Xij))=FLg+FLli+FLZj+FL3ij (6)
である
。ここで
IL3ijはいわゆる交互作用の項 を表わ している。対数双線形
(log bilinear)モデルは
FL3ljの項が双線形 に構造化 されたモデルであ り,
RC連関
184
商 学 討 究 第
47巻 第
2・3号モデル,乗法的交互作用モデル等 ともよばれることがある
(Goodman,1985,1986,1991;Andersen,1994)0
上記の確率変数 X l j は互いに独立にポアソン分布 に従 うと仮定するとそれぞ れの確率関数は次のように記述 される
。p (xiJ・‑ xi)
・
)‑ exp(8ijXij)expトexp(8ij)i/xij!,r
S ij‑FLg+FLli+FL2j+∑ llik≠k l2jk,(i‑ 1,...,9;I
‑1
,... , q)
k=1
( 7 )
ここで 4 ・ kはモデルの一意性のために導入 されたパ ラメータで,厳密 には
(7)式 は三重線形
(trilinear)であるが, これは回転により双線形 に変換 される。
さて,モデルの一意性のためにパ ラメータに制約 を付す。 まず,各パ ラメー タをベ ク トルと行列で次のように表わす。
L l= (FLll,‑,FLIp)',̲些 = (FLll,‑・,FLlq)',
Al‑Ellik],A2‑【12t
h
],◎
‑diag(41, . .
.,¢Y)パ ラメータの制約は
旦 1'ip‑ 0,iL2'土q= 0,Al'12=A2'土q=Or,
Al'Al‑Ir,A2'A2
‑ I r
(8)
(9)
である. ここで
,ム =
(1 ,...,1 )' (S個の1 ) , 9 Z :
=(0,. . . , 0 ) ' ( r個の0 )で ん は r次の単位行 列である。
ところで,
(7)式 において
Alikあるいは
A2jkの一方が潜在確率変数であるモ
デルは,
Ogasawara(1996a,b)のモデルであるが これは
(3)式の通常の因子分
析モデルを頻度のケースにあてはめた ものであ り,「 ポアソン因子分析」あるい
は「 潜在変数を含む対数双線形モデル」と名付 けられている。 この表現 を用いる
と
(7)式のモデルはポアソン因子分析の母数模型 とい うこともで きよう 。 ただ
双線形モデルにおける因子 回転 185
し,通常の因子分析 モデルの ように
Alと
A 2の一方が因子負荷で他方が因子得 点であるとい う区別 は一般 にはない。
2
.2 回転前パラメータの推定
パ ラメー タの推定 は尤度 を最大化す ることにより行 う 。 回転前のパ ラメータ の推定 に関す る当節 の方法 は
GiluraandHaberman (1986)によ り,示 されて いるものであるが, この方法は他 の双線形モデルにも応用可能であ り, また, 回転後の結果 とも密漢 に関連するので要点 を述べ る。
各頻度
(X‑lxlj])の観測が相互 に独立である とい う仮定の下で,各パ ラメー タの尤度 は次のようになる
。ZIq
L(Pg,‑ti・L2,Al,A2,◎Jx)‑pl,qe苦p(q∂ljx2j)expトeI) qxp(∂lj)
i / xl j !
(10)= e;p(q
妄言
Si,・Xi
j)
exp∑i=1j∑‑1トexp(
Sij)i/i E lj gl Xl ' ] ' !
パ ラメータの推定値 は(
9)式の制約の下で
(10)式 を最大化するものである。
負の対数尤度 を′とす ると
FEZ pi
i‑
‑ l n
L‑ ∑∑ト 8i , ・ x
ij+ exp( 8ij)+l n (
x ij !)
ii=lj'‑1
( ll )
である
。 (9)式の制約 に対応す るラグランジュの未定乗数 をそれぞれ,
α1,α2,̲ 負 ‑(
β11,...,β1 ,
)I
,̲& =( β2 1, . . . ,β2 , ) ' ,rl( =rl ' ) ,r2( =r2 ' )とす る と最小化基
準 g は次のようになる
。g
=
f+l,i
‑ α1̲色 'ip+α2」塑 'iq+過
.'
Al ' i
p+ii2'A2'主q・‡ tr
け 1 (
Al,A1‑I,)廿i trlr2(J b・ J
b‑I,)i(12)
186
商 学 討 究
第47巻
第 2・3号
( 1 2) 式の最小化 はス コア法 を用いた数億計算 による。 これに必要 なグラデ イエ ン トベク トルは g 番 目のパ ラメー タを
0gとすると
I)q
9i ‑∑∑
1 ‑x2
・j
・ exp(8 i j ) i
豊 十 蓋Bog i‑1j‑1 (13)
のように表わされる。上式の右辺の要素 は容易 に得 られ表 1‑ 1の ようになる
。また,情報行列の
(g,h)要素は
P q
Ei∂2g/。o g ∂
o hi‑ 茅 昌 e xp
(8i j
)∂Sij
∂S
ij.+ ∂21Bog a
O
hIaO g aO h ( 1 4)
である
oここで
∂ 21
/∂
Og∂
Ohの うち
0でない要素 は表
1‑ 2の ようになる
。未 定乗数 を除 くパ ラメー タの数 は
♪+q+1+r(♪+q+1)であ るが,未定乗数の 数 に相 当する制約の数は逝 , 也
,Al,A2の順 に1
,1,r+(r/2)(r+1),r+ (r/2)(r+1)
である。繰 り返 し計算 は次の ように行 う
。旦♪(
i+ 1)‑旦
夕(i)+ (li)a(i) (15)ここでは̲ Q P( i )未定乗数 を含 む
♪+q+3+r(♪+q+Y+4)個 のパ ラメー タを並 べたベ ク トルで添字の ( i )は i 番 目の繰 り返 しにおける値であることを表わす。
I(i)
は情報行列,
a(l・ )はグラデイエ ン トベク ト) i , である。
双線形 モデルにおける 囚1・ 回転
表 11 1 グラデ ィエン トベク トルの要素
187
パ ラメー タ
∂∂〆/βog ∂// ∂βg添字の範囲
FLg 1
0
ど ‑1, ‑
,♪〟1g βi●g dl
FL2h 6
]
●. h
α2 h ‑1, . .
.,qAlgh ∂l
T
gd,kA2jk β1k+(
Alr1).gk g‑1,
‑,
P,
.A‑1, ‑
,r^2hk a:
h
bkAlik. C2k+(
^2r2)hk h‑1,...,
q;k‑1,...,r¢k
AlikA2jk0
A‑1, . .
.,rα1
0
空̲1'i♪ k‑1, . .
.,rα2
0
旦2'iqA 9, Al/iJ, A2 9, A2'lq
γ1kk
0
(1/2)1(Al'A1)kk‑1iylk1
0
(Al'A1)kl r≧ k> l≧1γ2kk
0
(1/2)1(A2'A2)kk‑1i A‑1, . .
.,r注 ∂i gはクロネ ッカーのデルタ (∂ s T t
‑1,S‑ i
,・aslt‑0,S≠ t )
であ り、rl=〔γ1 k l 〕
,r2‑〔γ2kl〕である。表
1‑ 2情報行列の要素
パ ラルー タの対
a2l/ aOgaOh添字の範 囲
Pl c
,a1 1 ど‑1,‑,♪FL2h,a2 1 h‑1
, . ,
.,qAlgk,Algl ylkl g‑1
, ‑, A
;r≧ k≧ l≧1Algk,β1k 1 g‑1
,
‑,
A;
k‑1,...r Algk,γ1kl Algl g‑1,
‑,A;r≧ k≧ l≧1Alg
l
,γ1kl Algk a ‑1,
‑,A;r≧ k> l≧ 1^2hk,A2hl y2kl h ‑1
, ‑
,q;r≧ k≧ l≧1 12hk,β2k 1 h ‑1 , . .
.,
q;
A‑1 , . .
.,rAZhk,γ2kl ^2hl h ‑1
, ‑
,q;r≧ k≧ l≧1 12hl,γ2kl ^2hk h ‑1, ‑
,q;r≧ k> l≧ 1188 商 学 討 究 第47巻 第 2・3号
2.3
線形項のないモデル
(7)
式のモデルにおいて
FL
g,F L l i,
IL2iを除いたモデルは前述の純双線形のモ デルである
.これは,
(3)式の通常の因子分析モデルでは平均項且 を除いたモ デルに相 当す る。
Okamoto(1972)は主成分分析 の文脈 ではあるが このような モデルを N
(natural,naiveの意)テクニクとよんだ。 ここで も,その呼び方 を援用する 。 このモデルは表現が簡略になる反面,データへのモデルのあては ま りは,同一の
γ( 因子数 と呼ぶ)の場合 は
(7)式のモデル と比べ ると不利で ある
。N テクニクのモデルでは
∂lj=(^1◎ ^ 2')ljである . したがって,モデルの一 意性のための
^1と
^2の制約 は
^1'A1
‑I,
,A2'^2=Z,のみでよいoパ ラメー タの推定法は前節 において,該当 しないパ ラメータと不要な制約の部分 を除い て構成すればよい。 なお,
(7)式のモデル と
Nテクニクのモデルの中間の もの として通常の因子分析モデルのように,
2つの要因 ( 被験者 と変数)のうち平 均項が一方の要因のみに設定 されるモデルも同様 に構成することがで きる。
2.4
因子回転の方法
線形項 を含 むモデル及び
Nテクニクのモデルのいずれにおいて も交互作用 項 を様 々に変換す ることが可能である。交互作用項 を集合的に
Al◎A2 'で表 わす と,
Al申A2'‑ AIT(T
l ◎
S‑1)(A2S)'‑ (Al◎1/2C77(A2⑳1/2(1/C
)
r l1)I( 16 )
である. ここで, S ,T は r次の任意の正則 な正方行列である
。( 1 6) の上の式 は Tl◎ S
'11が因子 問の関連 を表わす行列 ( 一般 に非対称) としてあ らわれて お り,解釈 は単純ではない。( 16) の下の式の T は直交行列である必要はないが,
T'T‑TT'‑(,とす る と
,tri(^1◎ 1/2cT)(Al◎1/2cT)'1‑tr(◎)C2,trlA2◎1/2(1/C)T)(^2◎1/2(1/C)T)・
ト
ーr(◎)/C2となって C が一定 とす ると因子負荷の
双線形モデルにおける国子回転
189 2乗の平均の大 きさが変換 によって も変わらないのでわか りやすい。 また,因 子分析 における直交回転の諸手法 を利用することも容易 となる。
C
の大 きさは
1とす ると各 因子の寄与が
2つの因子負荷行列で等 しくな り自 然の ようにみえる
。これは, 2つの要因の水準の数
(少
,q)が同一の場合 は良 いが,それ らが異 なると水準数の大 きい ( 小 さい)方の要因の因子負荷が平均 的に小 さく ( 大 きく)なるので,同一の座標 にプロッ トする場合 などはわか り に くくなる
。したがって,因子負荷の
2乗の平均が
Alと
A2とで等 しくなるよ うに
C‑ 抄/q)
1/4とす ると便利であろう
。さて,
Al◎1/2Cと
A2◎1/2/Cをそれぞれ
Al
,A2とあ らわ し, これを回転前 因子負荷行列 とよび,直交回転後の因子負荷行列 を
β1
,β2であ らわす と
Bl‑A
l
Ol/2cT‑AIT,B2‑A201/2 ( 1 / C ) T
‑A2T ( 1 7 )
である 。 ここで問題 は適切 な
Blと
B2をもた らす
Tを求めることである . 通常 の因子分析 の状況では因子負荷行列 はひ とつであることが多いが,イ ンター バ ッテ リー法のように変数が
2つのグループに分かれる場合 ̲ ( 小笠原
,1986)や複数の被験者集団か ら得 られたデータ等の場合のように,複数の因子負荷行 列が存在す ることもある
。 Hakstian(1976)は
2つの因子負荷行列が存在す る 場合 に,いずれの行列にもいわゆる単純構造 をもた らす ような共通の直交行列
を得 る方法 を提案 している
。これは,因子回転後の各因子負荷行列のいわゆるオーソマ ックス基準の和 を 最大化するものである
。すなわち,最大化基準
o(Bl
,B2)は
o(BIB2,‑
忘
,f
l・
ilbilj芽 貴b21l・j,2°忘 f
,l{
#42lj 等 貴
酬 (18,である
。ここで
,B1‑【bllj],B2‑ 【b2ij]であ り, uJはオー ソマ ックス ・ウェ
イ トである。例 えば
W=1のケースはいわゆるバ リマ ックス法 に対応する。なお,
因子負荷行列が 2つある場合で も( 1 8) 式の 2つの項のうち,一方のみを用いる
190
商 学 討
究第
47巻第
2・3号ことも可能であるし,各項 に異なるオーソマ ックス ・ウェイ トを用いることも 可能である。
ところで, ( 18) 式 を最大化することにより,
β1
,β2には単純構造が もた らさ れ , 解釈が容易 になることが期待 される。 しか し, 平均項 を含むモデルでは
Alと
A2には,各列の和が
0であるという制約が課 されている
。この制約は,
ip,Bl‑ip
,Al◎1′2cT‑9, ,
iq,B2‑主q'A2◎1/2(1/C)T‑9,であ り,回転後 も保存 さ
れる
。したがって, このようなケースでは ( 1 8) 式を最大化す ることにより,解 釈 の容易 な行列が得 られない可能性がある。そこで,次のような方法 を考 える。
オー ソマ ックス法 において,バ リマ ックス法は
u7‑0のクオーティマ ックス 法 よりも寄与の大 きさが平均化 ( 水準化) されることが知 られている。寄与の 水準化が好 ましいことの根拠は必ず しも明確ではないが,各因子が異なる側面 を同程度の強 さで表現 している場合 ( 寄与が水準化 されている場合)には,因 子の解釈 も全体 として,行いやすいことは確かである。そこで,
(17)式の直交
回転の もうひとつの方法 として
β1と
β2 の寄与の水準化 を得 ることを考える
。寄与の水準化 を最大化す るには寄与の分散 を最小化すればよい。
r ♪r
I) β1 につい てのみ考 える とこれは
(1/r)∑(∑bj=1i‑1
fij)2‑i(1/r ) j ∑ ‑ 1
∑bi ‑
1fij12を最小化することで
あるが,第
2項 は直交回転 によ り不変であるので第
1項 を最小化すればよい。
これは,
(18)式か らもわかるように,オーソマ ックス ・ウェイ トのつかない項 を除いたオーソマ ックス基準 を最大化す ることに対応 している。前川 ( 柳井他
,1990,p.102)
はこれを u, ‑ +‑のケース として説明 しているが,実際にこ の方法が適用 された例 を筆者は知 らない。
この方法 を水準化法
(levelingmethod)とよぶ ことにす る
。 2つの行列 の 場合 については寄与の分散の和 を定数 ( 負)倍 した次の
l(Bl,B2)のを最大化 す る
。r ♪
ql(B',B2)‑
‑( 1/4) j ∑i ‑ 1i (
∑ b=l写ij)2+ (∑ bi
=122ij)2t (19)ここで負 の値 を とるの は通常 の オー ソマ ックス法 のアル ゴ リズ ム ( 例 えば
双線形モデルにおける因子回転
191 Kaiser,1958)を少ない修正で用いることがで きるようにするためである。なお, 前述の
Hakstianの方法 も通常のオーソマ ックス法の計算法 を基本的には用い
ることがで きる
。2. 5
因子回転後の因子負荷の棲準誤差
因子回転後の因子負荷の漸近的標準誤差 は,多変量正親分布 を仮定する連続 変数の因子分析モデルの場合 と同様 に,制約付最尤推定量の漸近的標準誤差 と
して求めることがで きる
。ポアソン分布 を仮定する,対数双線形モデルの場合 もこの方法 を利用することがで きる。 また,因子回転後の因子負荷の制約式の 表現 は,複数の因子負荷行列がある場合 にも単一の因子負荷行列のケースを基 にして簡単 に求め られる 。 単丁の因子負荷行列における直交回転の場合の制約 は
ArcherandJennrich (1973)によって得 られた。 これは, どんな種類 の回 転法で も解析的な方法であれば適用す ることがで きる一般的なものである。 し か し,
ArcherandJennrichの証明は読みやすい ものではない。
一方,回転後の制約式 とい う観点か らではな く,回転後の国子負荷行列 を求 める とい う観点か らは,バ リマ ックス法 については
MagnusandNeudecker(1988,p.375
,
(12)式)が ラグランジュの未定乗数法 を用 いて,その導出の途 中で制約式 に相当する式 に到達 している
。しか し,推定量の制約 とい う観点で はないので途 中の式 として記述 されてい るのみであ る。 また,竹 内 ・柳 井
(1972,p.230,(7.78)式)もラグランジュの未定乗数法 を用いて直交回転後の 因子負荷 を求める一般解 として制約式の直前の段階に到達 しているが,推定量 の制約式 という観点はとられていない。
ここでは,ラグランジュの未定乗数法 をもとにして, これ らの研究の延長 と して複数の因子負荷行列がある場合 について,回転後の因子負荷の制約式 を次 に示す。
まず, S個 の回転後の因子負荷行列
B1,...,Bsが存在 し,回転の最大化基準 t
は個 々の最大化基準 ( 異 なる種類の基準で もよい)の和で次のようにあ らわさ
れるとする。
192 商 学 討 究 第47巻 第2・3号
S
i
(B1 , . . . , B
s)‑∑ tk(B k)k=1
(20)
この とき
B1,...,Bsは直交 回転 のための行列 を
Tとす る と
T'T‑I,の条件 の 下で
t(B1 , .
..Bs)を最大化するもの として得 られる . したがって, ラグランジュ の未定乗数 として対称行列
rを導入すると解は
i
‑ i(B1,..,Bs)‑(1/2)trけ(TT‑I,)i (21)を最大化す る もの として得 られる。 (
21)式 に
(20)式 を代入 して′の rに関す る微分 をとると次のようになる 。
i..∂tk(Bk)
d f ‑ k
∑t̀=■ut∂Bk1ri 'S
dBkLtr(rTd7l‑trl
l ∑ k ‑1( ∂ a t k B ( Bk k ' )
最適値 においてはfの
Tに関する偏微分が 0であることか ら
atk(B
k )
A
k)‑IIT= 0
であ り,右か ら T をかけて
rが対称であることを用いると
Q‑
表 蒋欝
Bk‑∑ B・kS k=1
a a t k B ( B k‑ k ) 0
A
k)‑rT'ld71(22)
(23)
(24)
が得 られる
。(24)式 における
Qのユニークな要素数は
r(r‑1)/2個である。
(18)式のオーソマ ックス基準の場合 について具体的に表現すると
Q=lqlj]として,
乙 . っ
w 且
。 n .. .
♪qij‑∑L=l"b
3 q 1
i一言
bll 庖 h
‑I i,qqbllj‑
(b31,‑号
bllj∑蟹lL‑.1ib弓I
(i") ・ L
皇
=l1 ( b 3
2li一 号
b2 li∑halb2 2
hi)bZlj‑(b32lj一号bZljhj
h皇)‑b1l lib2 2 i h i‑
j)b21 i i i
(25)双線形モデルにおける国子回転
193である。 なお,
(16),(
17)式か らわかるように
Alと
A2を変換前因子負荷行列
として定めた場合,一般には回転以外の変換の自由度があるので,モデルの一 意性 のためには ㍉個の制約が必要である
。そ こで,
(24)式以外 の制約 は次の
ように求める。
Bl,Bl‑
r ◎ ( P /q )
1/2T
,B2'B2‑T'◎ ( q / p )
1/ 2T
であるので
R ‑ q B
l'B1‑P
B2'B2‑ 0
である .
Rの (
i,j)要素 r l jについてみると
メ q
rij
‑ q J
∑ b=1 llibllrP
∑ bg
‑1 21ib2lj(i21)
(26)
(27)
(28)
であ り,ユニークな R の要素の数は
r(r+1)/2個である.
β
1と
β2の漸近的標準誤差は拡大 された情報行列 Jに以上の結果 を用 いるこ とにより求めることがで きる
(S止vey,1970;Jennrich,1974;小笠原
,1996a,ち)0Jの具体的な表現は付録 にある。
3. FANOVA
モデルにおける因子回転
FANOVA (factoranalysisofvariance)
モデルとは
2要因分散分析の交互 作用項が因子分析モデルの ように構造化 されたモデルで,
Gollob(1968)によ
り名付 け られた ものである
。このモデルでは前節 ませの対数双線形卓デルの対
数期待値が連続変数の期待値そのもの となっている。 このモデルは分散分析 の
データにおいて各セルの観測数が
1の場合で も交互作用 を検定で きる長所があ
194
商
学討
究第47 巻 第
2・3号り,因子 の数
(r)が ひ とつの場合 は
1950年代か ら提案 されている
(Goodman&Haberman,1990)。
因子数が
2以上 の場合 は
Gollobが最初 の ようであるが, この場合 には回転等の変換の自由度が発生する。モデルは次のように記述 される。
Xij‑a ij+eij
= FLg+ FLli+ FJ2j+ (Al◎ A2')iJ.+ eij, eij‑ N(0,6
; ・ )
,(i‑1 , . . . , 9;
i‑1 , . . . , q )
(29)
ここで e l jは相互 に独立である とす る
。qf jは等分散 を仮 定す ることが多 いが ここでは, よ り一般的な異 なる分散のケースを扱 う
。また,各パ ラメ⊥夕は対 数双線形モデル と同様 の制約があるもの とす る。パ ラメータの値 は正規分布 の 次 の尤度 をパ ラメー タの制約の下で最大化す ることに よ り求 めることがで き
る
。
L(E
・
l隼
61 ,411ng去 ex汗 密
} (30)ここで且 , は,それぞれ
∂ ijにおけるパ ラメー タを並べたベ ク トルである。
nljは (
i,j)セルの観測個体数であ る。繰 り返 し計算 も前節 までの方法 とほぼ同様 に行 うことがで きる
。分布型がポアソン分布ではな く,正規分布であることに よる計算上の相違 は次の点である
。負の対数尤度
f=‑1nLに関す るグラデ イエ ン トベ ク トル と
0でない情報行列 の部分 は
竹∑H・・・
v
rL
♪
∑ TT
hi i皿 CQ
=り∬(2 ⁚り b
也 .3i 市 一義 善 (xijl‑8
i j
,2, nija
o'a6;1‑E
(蕊
,‑ 貴 著 普(
i= 1,. . . , 9 ; j= 1 , . . . , q )
双線形モデルにおける因子回転 である。 (
31)式 より
2JW<Au⁚り〟
叫 VI
Hl
一
町ニ2⁚り<♂195
であるので, qi J ・ は繰 り返 し計算 において,他のパ ラメータの最新値 を用 いて 計算 した 6 "l j .により更新するとよい.
因子回転の方法,回転後の国子負荷の標準誤差の求め方 も前節 までの結果 と 同様である 。
FANOVAモデルにおいて,
Nテクニクのモデルを考 えること がで きることも同様である。なお, 等分散が仮定 され, 釣合い型データであれば, モデルのあてはめは各セルの平均値の線形項か らの残差に関する特異値分解 を 行 うことに相 当する 。
4.
数値例
表
2‑1は
Haberman(1979)に引用 されている L
Srole他 の研究例で,棉 神 の健康のカテゴリーと親の社会経済的地位に関する頻度表である
。表
2‑2は
2因子モデルのあてはめの結果である
。回転の方法は
2つの因子負荷行列 を 対象 にしたバ リマ ックス法 と水準化法の ものである。線形項 は周辺度数に対応
した ものであ り,その標準誤差は交互作用 を表わす因子負荷 に比べて小 さい。
この例 は行 と列の各 カテゴリーがそれぞれ順序 を構成 してお り,回転前の第 Ⅰ 因子はその順序 に対応 し,第 Ⅱ因子は
Guttman(1954)の
intensity( 強度)及 び符号 を逆 にした ものを表わ している
。一方, ◎の対角要素の大 きさをみると 第 Ⅱ因子 は第 Ⅰ因子 に比べ るとかな り小 さい。
回転後の結果は水準化法では第 Ⅰ因子 は精神 の健康 と高い地位 を表わ し,第
Ⅱ因子は逆に精神の不健康 と低い地位 を表わ してお り,回転前の因子負荷 とは
別のわか りやす さが得 られている 。 バ リマ ックス法では社会経済的地位 のパ
ター ンは回転前の傾向をかな り残 している。なお,回転後の因子負荷 の標準誤
差 も寄与の水準化 に対応 して均等化 していることがわかる。 なお, このモデル
196 商 学 討 究 第47巻 第2・3号