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貿易 自由化 とマレーシアの自動車部品メーカー

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(1)

穴 沢 異

本論 は2006年 度 か ら2007年度 にか けて,科 学研 究費基盤( B)( 課題番 号 : 1 840201 8)

AFTA,FTA

とマ レー シアの 自動車産業 一貿易 自由化 と地場企 業の競争力強化」の もとで行 った研究の成果の一部である。

マ レー シアの 自動車産業 は1 9 83 年の国民車計画の開始以来,政府 による保護 が 継 続 され て きたが

,AFTA (ASEANFreeTradeArea)

の も とで の

ASEAN

域 内の貿易 自由化 や 日本 との経済連携協定

(EconomicPartnership Agreement

,以下

EPA

とする)によ り,貿易の 自由化が求め られるようになっ た。 これは保護 されて きた輸入代替産業が国際競争 に晒 されることを意味する が,同国の 自動車産業 においてその準備がで きていたわけではな く, 自由化 と 並行 して一定の保護の もと,国際競争力の強化 に努める政策が とられている

その際,主 に国民車 メーカーが議論の中心 となるが,裾野産業 を形成する部品 メーカーについての議論 は少 な く,政策面での言及 もセ ッ トメーカーに比べ る と少ない。 これ ら部品メー カーの動向を現地調査 によ り明 らかにす ることが本 論の主たる 目的である。

以下,第

1

節ではマ レー シア自動車産業の歴史 を簡単 に振 り返 る。第

2

節で は 自由貿易協定

(FreeTradeAgreement

,以下

FTA

とす る) による貿易 自 由化の流れについて概観 し, 自動車部品の関税引 き下げが完成車 よ りも前倒 し で進んでいることを示す。第

3

節ではマ レーシアの 自動車部品産業の現状 を考 察す る。第

4

節では国家 自動車政策

(NationalAutomotivePolicy

,以下

NAP

とす る) について言及する。 ここで もその中心が国民車 メーカーに代表 される セ ッ トメーカーであることを示す。第

5

節 は現地での ヒア リング結果 をまとめ

47

(2)

た ものであ り,第

6

節は結論部である。

1

節 マ レー シアの 自動車産 業 の変 遷

マ レー シアの 自動 車 産業 は

1960

年代 の欧州企 業 に よる

CKD (complete knockdown)

生産 にまで遡 ることがで きる。その後

,1970

年代 には 日系企業 が地場企業 と組 んで

CKD

生産 を開始 し,マ レーシアの国内では圧倒的なシェ アを占めるようになった。 もともと狭 い国内市場 に多 くの

CKD

メーカーが多 様 な車種 を供給 していたため,彼 らは規模の経済 を享受することがで きなかっ た。 この ような状況は部品産業 において も同様であった。 しか し,マ レーシア の 自動 車 産業 は

1983

年 に国民 車 を生 産 す るた め に設 立 され た プ ロ トン社

(PerusahaanOtomobilNasiona

l ,略称

Proton)

の出現 によ り一変す る。同社 はマ レー シア初の一貫生産 メーカーであ り,政府系企業であるマ レー シア重工 業公社

(HeavyIndustryCorporationofMalaysia

,以下

HICOM

とす る) と 三菱 自工並 びに三菱商事が 出資す る合弁企業であ った。 出資比率 は

HICOM

70%

,三菱 自工 と三菱商事が各

15%

であった。プロ トン社 はマハティール首 棉 ( 当時)の肝い りで開始 された国民車計画 を担 う国策企業であ り

,1980

年代 の同国の第

2

次輸入代替工業化,す なわち,重化学工業での輸入代替の推進役 である

HICOM

が筆頭株主 とな り,政府の政策を体現する企業であった。

プロ トン社 は

1985

年か ら商業生産 を開始 し,瞬 く間に国内市場での シェアを 急増 させ

,1994

年 に第

2

国民車 メー カーであ るプ ロデ ウア社

(Perusahaan OtomobilKedua

,略称

Perodua)

が市場 に参入するまでは最大で

70%

近いシェ アを持つに至 った。輸入代替工業化推進の際に国内市場 を守るために導入 され る関税 による保護 をマ レー シア政府 も実施 した。 また,政府 はプロ トン社の育 成のために様 々な政策 を実行 した

1)

。 自動車産業 は多数の部品を必要 とする裾 野の広い産業であ り,マ レーシア政府が同産業の育成 を開始 した理由の一つに

1)詳細については穴沢

(1998)

を参照のこと。

(3)

国民車計画 を通 じて地場の部品産業の振興 をはかることがあげ られる。その際, 育成の対象 となる部品メーカーは,マ レー シアの特殊事情 を反映 して,ブ ミプ

トラ

2)

企業が選ばれた。マ レー シアは主にブ ミプ トラ ( マ レ一系),華人系住民, イン ド系住民か らなる多人種国家であ り,人口の過半 を占めるブ ミプ トラは政 治的には優位 にあるが,経済活動,特 に商工業部門においては華人系企業が優 位 にあ り

,1971

年 に開始 された新経済政策

(NewEconomicPolicy

,通称

NEP)

において も,商工業部門へのブ ミプ トラの進出を促進す ることが明記 されてい た。プロ トン社 はこの ような政府の政策 に従い,積極的に部品の国産化 も推進 し,ブ ミプ トラ優遇政策の もと,多 くのブ ミプ トラ企業が 自動車部品産業に新 たに参入 した。

自動車部品産業 はプロ トン社が設立 されるまでは,華人系企業が中心であっ たが,プロ トン社が設立 されて以降はブ ミプ トラ企業が急増 した。設立か ら

5

年 を経た

1988

年か らプロ トン社 はベ ンダーの育成 を本格化する

。1988

年末か ら プロ トン ・コンポーネ ン ト・スキームが開始 されたが, これはブ ミプ トラ中小 企業に対 して部品の購入 を保証 し,あわせて,技術的な支援 を行 うものであ り, 必要に応 じて政府の補助金 も支給 された。 これは,後 にベ ンダー育成プログラ ム

(VendorDevelopmentProgramme,VDP)

と呼ばれる,大企業 による中小 企業育成の先駆 けであ った。上記のスキーム以外 に も, プロ トン社 は

QCD

(quality,cost,delivery)

チームの派遣 など,ベ ンダーの巡回指導 を様 々な形 で行っている

3)

0

1980

年代末か ら

1990

年代央 までは,マ レーシアの工業化政策の基本 を提示 し た工業 マス ター プラ ン

1986‑1995

( 正式名称 は

Medium andLongTerm ln‑

dustrialMasterPlanMalaysia

,以下

,IMP

とする)の期間中であ り, この期 間中,プロ トン社 はベ ンダー,特 にブ ミプ トラ ・ベ ンダーの支援 を行 うよう, 政府か ら要請 されていた。 これに従 ってプロ トン社 はベ ンダーの支援 を行 った

2

)マレー語で土地の子を意味し,主にマレー人と他の先住民族をさす。

3)

プロ トン社によるベンダー支援の詳細については穴沢

(1998)

を参照のこと。

(4)

が,同社 自身 も設立後 まだ 日の浅い企業であ り,技術的に三菱 自工 に依存 して いたため,ベ ンダーの育成について も,三菱 自工が協力す ることとなった。実 際には,各ベ ンダーに派遣 されるプロ トン社 の技術者のサポー トを三菱 自工か らの出向者が行 っていた。また,十分 な技術力 を持たないベ ンダーに対 しては, 三菱 自工の 日本の協力会社 と技術提携 を進めるマ ッチ ・メイキ ングとい う制度 を導入 し

,35

社が 日本企業 と技術提携 を行 った。

ブ ミプ トラ ・ベ ンダーを育成す る一方で,華人系企業に対 しては厳 しい対応 もみ られた。 これまで華人系企業が納入 していた部品であって も,同様 な部品 をブ ミプ トラ企業が生産で きるようになると,納入先 をブ ミプ トラ企業 に変更 する場合 もあった。

新規 に設立 された企業が部品メーカーの育成 まで担 うことは重荷 であったこ とは十分理解 される。 しか し,国策企業であるプロ トン社 自身は自動車産業育 成 とい う政策の もと,関税 によ り保護 され, さらに同社のみ部品等の輸入につ いては関税が免除されるなど,様 々な特権 を与 えられていた。 このため,保護 に付随する不効率が生 じやすい状況にあ り,マ レーシアの狭い国内市場 によ り 規模の経済が働かない とい う不利 な条件が これをさらに助長 していた。

プロ トン社 に対する保護 は部品の関税引 き上げ とあいまって, 部品メーカー, 特 にブ ミプ トラ ・ベ ンダーの保護につながっていった。 ここに 「 保護の連鎖」

とい う状況が生 まれたのである。

1994

年 に第

2

国民車 メー カーであるプロ ドゥア社が ダイハ ツと組んで,軽 自 動車の生産 を開始 した。 プロ ドゥア社 に対 して もプロ トン社 同様の各種の保護 が与 えられた。一方で,プロ トン社 とは異 な り,プロ ドゥア社 はすでにプロ ト

ン社が育成 した部品メーカーを活用することがで きるとい う点で有利であ り, プロ トン社 ほ どにはベ ンダー育成のための コス トを負担する必要 はなかった。

また,部品メーカーにとってはプロ ドゥア社 の参入 は市場の拡大 を意味 し, こ れによ り,多少な りとも規模の経済が作用す ることとなった。

2

次工業マス タープラン

19962005(SecondIndustrialMasterPlan

,以

IMP2

とする) は

AFTA

の もとでの 自由貿易が開始 されたことを受け, こ

(5)

れ まで保護 されて きた 自動車産業の競争力強化 を促す内容 となっている。具体 的には研究開発能力の強化,人材育成,海外進出などがあげ られていた。また,

IMP2

以降,プロ トン社 はベ ンダー育成の義務 を負 うことはな くな り,部品メー

カーに対 して も価格の引 き下げを要求す るなど,両者の関係 に変化がみ られる ようになった。 しか し,これまでの保護育成か ら突然 ビジネス ライクな関係 に 変わることはな く,依然 として,ブ ミプ トラ ・ベ ンダーがプロ トン社 に依存す るとい う構 図が継続 された。

プロ トン社,プロ ドゥア社 はその後 も,時には協力 しあいなが ら,ベ ンダー の育成 を続けている

4)

。 これは部品メーカーの競争力の向上が結果的には両社 の競争力 を向上 させ ることになるか らである。 また,ジャス ト・イ ン ・タイム

(JIT)

システムの もと,海外か ら部品を輸入す るよ りも,工場 に近接 してい る地場ベ ンダーを有効活用することが両社 にとってプラスになることも事実で ある

2

節 貿易 自由化 の流 れ5

)

1992

年 の

AFTA

の もとでの共通有効特 恵 関税

(CommonEffectivePre ferentialTariff

,以下

,CEPT

とす る) スキームによ り

,ASEAN

域内の貿易

自由化が開始 された。マ レー シアをは じめ とす る

ASEAN

発足 当時か らの加 盟国は

2002

年 までに関税 を

0‑ 5%

に引 き下げることが義務付 け られたが,一 部の除外品 目も設け られ,マ レーシアの 自動車 もそのなかに含 まれた。そのた め,当初は貿易 自由化の対象外であったが

,2000

年 にマ レーシアは

2005

年か ら 自動車関連品 日を適応品 目リス トに加 えることとし,貿易 自由化 を認めること となった。 しか し,これに先立ち

,2004

1

月にマ レー シアは自動車の輸入関 税引 き下げに踏み切 った。マ レー シアで最 も生産台数の多い

1,800cc

未満の ク

4)

詳細については穴沢

(2006)

を参照のこと。

5

)本節の詳細については穴沢

(2007)

を参照のこと。

(6)

ラスでは関税 は1

40%か ら70%に引 き下げ られたが,輸入関税 の引 き下げを相

殺す る形で6

0%の物品税 を賦課 したため,実質的には保護は継続 された。そ し

て,翌2

005

1

月 に,マ レー シアは

ASEAN

城 内か らの 自動車 の輸入 関税

(

1,800cc

未満のクラス) を

CEPT

のルールに基づ き

20%に引 き下げた。 この

時 も,関税の引 き下げを一部相殺するように,物品税が9

0%に引 き上げ られた。

その後,自動車 (

1,800cc

未満のクラス)の輸入関税 は2

005

年1

0

月に1

5%,2006

年3 月に

5%に引 き下 げ られた。 また,物品税 もそれぞれ80%,75%

と若干引

き下げ られた。

完成車の輸入 関税引 き下げ とともに

,ASEAN

域 内か らの乗用車用 の

CKD

部品の関税 も

2004

1

月に

42%か ら25%に引 き下げ られ,2005

1

月か らは関 税 は撤廃 された

。CKD

部品に対 しては以前か ら物品税が課 されていたが,2

004

1

月か らは1,

800cc

未満のクラス用 に対 して6

0%の物品税が課 された。その

後,2

005

1

月に完成車同様,物品税 は9

0%に引 き上げ られたが,2005

年1

0

月 には8

0%,2006

3

月には75

%

と完成車同様の引 き下げがみ られた。ちなみに,

2005

年1

0

月には後述す る

NAP

の枠組み」が公表 され,2

006

3

月に正式 に

NAP

が公表 された。

これ まで,完成車 と

CKD

部品のみ を取 り上 げたが,一般 の 自動車部品の

ASEAN

域内での関税 は,完成車や

CKD

部品に先行 して引 き下げ られていた。

比較的関税の高かった シー トベル ト,クラッチ,ラジエー ター

(1997

年時点で

22%)

を除 く,ほとん どの品 目が1

997

年の時点で関税が

5%か ら9%の範囲内

にあ り,上記の

3

品 目も

2003

年 にはすべて

5%にまで引 き下げ られた6)

ASEAN

域内での貿易 自由化 と並行 して, 日本 との

FTA

の交渉が進んでい た。2

003

年1

2

月に両国は

FTA

よ りも包括的な

EPA

交渉に正式 に合意 し

,2004

年 に合計

6

回の交渉が持たれた。2

005

年 に入 り,次官級の会議が持たれ,4 月,

5

月 と連続 して 日本の経産相 とマ レー シアの通産相 との会談が持たれ,大筋の 合意 をみて,同年1

2

月に両国首脳 によ り署名 され,2

007

7

月に 日本 一マ レー

6

)詳細については

Koo(2001)を参照のこと。

(7)

シア

EPA

は発効 した。

日本 一マ レー シア

EPA

の最大の懸案事項 は 自動車の取 り扱 いであった。 国 民車メーカーを持つマ レー シア としては引 き続 き自動車産業の保護が必要 と考 えていたが, 自動車関連の関税が引 き下 げ られなければ

,EPA

の もとでの貿 易 自由化 は形骸化 した ものになって しまう。最終的には,大臣クラスでの交渉 によ り, マ レーシアの 自動車産業に対す る各種の支援 を行 うことと,国民車 メー カーの車種 と競合するクラスでは関税引 き下げの年限を長 くす ることで決着 を みた。

自動車関連では

2,000cc

以上の乗用車や

20

トン以上のバス, トラックな どに ついては段 階的に

2010

年 までに関税 を撤廃 し

,2,000cc

未満の完成車 について は段 階的に

2015

年 までに関税 を撤廃する

。CKD

部品については即時撤廃 とし, それ以外の 自動車部品 も

2010

年 までに関税 は撤廃 される。 この ように, 自動車 関連については 日本側 も特別 な配慮 をしている7 ) 0

3

節 自動車産 業 の現 状

本節 では

2006

年 に公表 された第

3

次工業マス タープラン

20062020(Third lndustrialMasterPlan

,以下

MP3

とす る) などをもとに,マ レー シアの 自 動車産業の実態 に迫 る

8)

。マ レー シアの製造業 に占める, 自動車 を含む輸送機 器産業の比重 は低 く,全製造業生産のお よそ

4%

にす ぎない。同国の製造業内 では電機 ・電子産業の比重が圧倒的に高 く,全製造業生産のお よそ

40%

を占め ている。輸出産業である電機 ・電子の生産額が大 きいことを割 り引いて も, 自 動車産業の相対的な地位の低 さが 目立つ。しか し,すでに述べたように,マ レー シアの 自動車産業 は政府主導の産業であ り,現在 もプロ トン社の筆頭株主は政 府系企業であるなど,その政治的な意味合いの大 きさは,電機 ・電子産業の比

7)詳細については穴沢

(2007)

を参照のこと。

8)

本節の数値は主に

MinistryoflnternationalTradeandlndustryMalaysia (2006),ch.13

によった。

(8)

ではない。

まず,マ レー シアの 自動車産業の特徴 として,乗用車の生産比率が高いこと があげ られる。マ レーシアにはプロ トン社,プロ ドゥア社以外 に も,規模 は小 さいが乗用車 を生産す る国民車 メーカーがある。 また, トヨタ,ホ ンダ, 日産 などが合弁で乗用車 を生産 してお り,全 自動車生産台数の9

0%以上が乗用車で

ある。一般 に,発展途上国ではピックア ップ ・トラックなどの商用車の生産が 多 く,マ レーシアの近隣諸国であるタイやイ ン ドネシアで もこの ような傾向が み られる。

マ レー シアの商用車は

2

つの国民車 メーカーが生産 を行 っているが,その生 産台数 は少 ない。 ちなみに,2

005

年の生産台数 は乗用車が5

2

万2

000

台強,商用 車が

4

万2

000

台であった。

マ レー シア国内で生産 された自動車はほ とん どが国内市場向けであ り,輸出 は極めて少 ない。2

005

年の乗用車の輸 出額 は

4

億1

000

万 リンギ

9)

,商用車の輸 出額は

1

億5

000

万 リンギであった。一方,部品 ( 二輪車 を含 む)の輸出額は21 億40

00

万 リンギにのぼる。ただ し,その うちの多 くが 日系企業な どの外資系企 業 によってなされてお り,純粋 な地場企業 による輸出は少 ない。時系列でみる と,部品の輸出は1

996

年か ら

2005

年 にかけて年率1

6.3%で増加 しているのに対

し,乗用車の輸 出は‑0.

3%

と減少傾向にある。

2005

年の輸入は,乗用車,約49 億 リンギ,商用車,1

6

億5

000

万 リンギ, 自動 車部品,約

44

億 リンギ となっている。乗用車の輸入が部品の輸入 を上回ってい るが,部品の輸入 は1

996

年か ら

2005

年 にかけて急増 している。 この間の年率の 増加率 は部品が1

6.5%であるのに対 し,乗用車 は1.6%であった。輸入 につい

て も, 日系企業 による輸入が多い。

続いて,雇用 についてみて行 く。同 じく

,ⅠMP3によれば,2005

年のセ ッ ト メーカーの従業員数は2

2,541

人であった。 これに対 し,部品メーカーの従業員 数 は2

9,861

人であった。1

996

年か ら

2005

年 までの年率の増加率 は前者が5.

7%

9

)マレーシアの通貨単位であり,マレーシア ・ドルとも呼ばれることがある。

(9)

であ り,後者が7 . 4%であった。

この ように, 自動車産業内での部品メーカーの地位 は年々上昇 している。そ の一方で,彼 らの生産はセ ッ トメーカーであるプロ トン社やプロ ドゥア社 の動 向に大 きく依存 している。特 に地場の部品メーカーではその依存率が高 くなる 傾向にある。そのため, 自動車政策 もその中心 はセ ッ トメーカー,特 に国民車 メーカーを強 く意識 した ものになっている。

セ ッ トメーカーについては

5

社 の国民車 メーカー と日系企業 との合弁 による 地場セ ッ トメーカーの他 に,欧州系企業 との合弁 もみ られる。一方,部品メー カーについてはその構造 はやや複雑である。プロ トン社やプロ ドゥア社 は多 く のベ ンダーを抱 えてお り,その数 はプロ トン社が

250

社 を超 え,プロ ドゥア社 のそれは約1

30

社 である。これ らのベ ンダー うち,多 くは両社 に供給 している。

マ レー シアの部品メーカーで

1

次ベ ンダー と呼ばれる,比較的規模の大 きな地 場 メーカーは約30 社 あるといわれてお り,これ ら以外 に,地場の中小 メーカー, 外資系 メーカーがある。 この うち,地場の部品メーカーをみると,上記の

1

次 ベ ンダーはさらに輸出や海外進出を果た しているメーカー,すなわち国際化 を 進めるメーカー と引 き続 き国民車メーカーに依存す る国内市場 を重視するメー カーに分 けることがで きる。そ して,1 次ベ ンダーの下に位置す る

2

次ベ ンダー はその大半が国民車 メーカー向けの部品の生産に従事 している。近年,国民車 メーカーか らの価格引 き下げ圧力が高 ま り

, 1

次ベ ンダーによる

2

次ベ ンダー の選別が厳 しさを増 している。 この ようななか, 2 次ベ ンダーの淘汰が進む可 能性が高い。

4

節 国家 自動車 政策 ( NAP)

10)

マ レー シアの工業化政策の基本 は工業マス タープラ ンであ り

,IMP

では各 産業 につ いての分冊が出 され

, IMP2,1MP3

ではそれぞれ,主要産業 につ

10)

NAPの詳細については穴沢

(2007)

を参照のこと。

(10)

いての独立 した章があ り, 自動車産業 を含む,輸送機器産業 もこれ らの章で と りあげ られている。これ までの 自動車産業 に対す る政策 もI

MP,IMP2

に沿 っ た形 で進め られている

。IMPでは国民車の立 ち上 げが中心 であ り,IMP2

で は 自動車産業 を国家主導の産業 と位置付 け,AFTA の もとでの貿易 自由化 に 備 える方策が示 されている。 しか し

,ⅠMP3

では自動車産業の現状分析 に続い て,2

006

3

月に公表 された

NAPを掲載 している。以下ではこのNAPと2009

年1

0

月の新

NAPl

l

)

について考察する。

200510

月にマ レーシア政府 は

NAPの枠組み」を公表 した。これは当初,

同年

6

月には公表す るとされていた

NAPの策定が遅れていたためである。 し

か し,その内容 は2

006

3

月に正式 に公表 された

NAPとは若干異 なるもので

あった

12)

NAPの 目的は以下の通 りである13)

0

(1)

国内の 自動車セクター,特 に国民車 メーカーの競争力の向上 と存続

(2)

ニ ッチに焦点 を当てた

ASEAN域内でのハブ化の推進

(3)

持続可能な レベルでの付加価値の向上 と能力の拡大

(4)

世界市場で競争可能な完成車 と部品の輸出促進

(5)

競争的で広範 なブ ミプ トラの参加拡大

(6)

価値や安全性,製品やサービスの質の面で消費者の利益の遵守

これ らの 目標 を達成するために,政府 は以下の ような

9

つの戦略 を立ててい る。

(1)

継続的な貢献度に応 じて,政府の支援 を提供する。

(2)

合理的な競争力拡大 を通 じて,生産規模 を拡大す る。

(3)

海外企業 との戦略的連携 を促進す る

ll)正式にはReviewofNationalAutomotivePolicy

であるが,公表前か らNe

w NAPと呼ばれてお り,これにならった。その内容についてはMinistryoflnterna tionalTradeandIndustry,Malaysia

のホームページに掲載されている。

12)詳細については穴沢 (2007)を参照のこと。

13)MinistryofInternationalTradeandIndustryMalaysia(2006),pp.358359.

(11)

(4)

ニ ッチ分野 に焦点 を当て,マ レーシアを域内のハブとす る

(5)

成長分野への投資を促進す る。

(6)

技能の向上 を強化す る。

(7)

各種機関による支援 を強化する。

(8) ASEAN

域 内及び世界的なサプライ ・チェー ンへの参加 を促進する

0

(9)

部品メーカーの競争力 を強化する。

上記の戦略の うち, 部品メーカーに言及 した ものは

9

番 目の ものだけである。

MP3

によればその具体的な方法 として以下の

5

項 目をあげている

14)。

(1

) 共通する部品の開発 と生産 を促進することによ り,重複 を避 け,挽模の 経済 を達成す る。

(2)M&A

( 合併 と買収) を通 じて部品メーカーの生産規模 を適正 なものに する。

(3)

要求 される品質をもつ部品を生産するために設備 を向上 させ る

(4)

合弁企業の設立 を促す。

(5)

生物分解性, リサイクルなどの 自動車の世界標準 に適合する部品の生産 を奨励する。

これ らの うち,( 1 ) と

(2)

が当面の対策 として考 えられる。長期的な観点か らは

(4)

にある外国企業 との合弁 も視野に入れる必要があろう

マ レー シア政府 は

2009

10

月に上記の

NAP

を見直 した,新

NAP

を公表 し た。 これは既存の

NAP

を,変化す る環境の もとで よ り効果的な ものにするこ とを意 図 してい る。今 回のキイ ワー ドは

"PeopleFirs

t " であ る。 また,新

NAP

の 目標 は以下の もの となっている。

(1

) 市場の 自由化の結果 として,国内 自動車産業の長期的な競争力 と能力の 開発のみな らず,規定方針通 りの発展 を確実なものにする。

(2)

新規投資 と既存の投資機会の拡大の助 けとなる環境 を作 る。

(3)

戦略的パー トナー シップを通 じて国民車メーカーの競争力 を拡大す る0

14)MinistryofInternationalTradeandIndustry(2006),pp.363364.

(12)

(4)

最新の よ り高度 な技術の開発 を支援す る

(5)

ニ ッチ分野で高付加価値生産活動 を進める。

(6)

ブ ミプ トラの参加 を拡大す る。

(7)

消費者のための安全基準の引 き上げ, 環境 に優 しい製品作 りを推進す る。

(8)

現行の

NAPの実行面 を強化する

NAPは貿易の 自由化が進 むなか, さらには環境 に配慮 したハ イブ リッ ド

カーや電気 自動車の生産 を視野に入れた政策 となっている。一方で,国民車の 生 き残 りをかけた外資 との戦略的提携やブ ミプ トラの参加拡大な ど, これまで 同様の保護 も継続 されるものである。上記の 目標 に向けた具体的な戦略のなか には高級車, ピックア ップ ・トラック,ハイブ リッ ドカー生産への外資参入の 自由化,輸 出競争力の強化のための輸出増 に対する税制上の優遇措置 など,踏 み込んだ もの も含 まれている

部品については, まず,上記の輸出増 に対する税制上の優遇措置が適用 され る。 また,基幹部品,高付加価値部品を生産するメーカーに対 して税制上の優 遇措置 を供与 し,その他のメーカーに対 して も,競争力向上のために融資や補 助金の充実 をはかるなどの措置 を導入す るとしている。 また,部品の基準 を法 的に制定す ることや中古部品の輸入の段 階的廃止なども詣われている。

なお,新

NAPは2010

1

月か ら実施 される

5

節 ケーススタデ ィ

本節では2006 年か ら

2008

年 にかけての

2

年 間にヒアリングを実施 した地場の 部品メーカーを取 り上げ,詳細 にこれ ら企業 について競争力の源泉 を分析 し, さらに,貿易 自由化‑の対応 をみる

現地調査では 日系の部品メーカー

5

社 に対 して もヒアリングを行 ったが,本

論ではマ レー シアの地場企業 を対象 としているため,ケース ・ス タデ ィか らは

はず している。ただ し, 日系部品メーカーについてはほぼ共通する戦略が観察

されたため,ここで簡単 に触れることとする。 日系部品メーカーは基本的には

(13)

マ レーシアの国民車計画の もと,プロ トン社への部品の供給 を目的 として進出 したケースがほ とん どである。 これは国民車計画の もと,部品の国産化 も進め られ, 日本か らの輸出が困難になったこと,そ してプロ トン社 として も信頼性 の高い部品を日系企業がマ レー シアにおいて供給 して くれることによ り,現地 調達率 を高めることを望んだことによる。 しか し, 日系部品メーカーにとって マ レーシアの市場 は規模の経済性 を追求 し, コス トを下げることがで きるほ ど には大 きくなかった。そのため,多 くの 日系部品メーカーは国内供給 と並行 し て輸出 も行 ってお り, これによって生産規模の拡大 をはかっている。 これ らの 企業 に とっては AFTA や FTA は市場 の拡大 を意味 してお り,マ レー シアに 立地す ることの戦略的な意義は大 きい。本来 この ような戦略はマ レーシアの地 場企業 に とって も必要であるが,本格 的 な輸 出を行 っている地場 の部品メー カーはご くわずかである。

以下では,マ レー シアの地場の部品メーカ

ー 8

社 について順次 ヒア リングの 結果 を示 して行 く。

A

A

社 は1

989

年に設立 されたプラスチ ック部品メーカーである。従業員数は約 300 名であ り,2007年の売 り上げは3, 700 万 リンギにのぼる。純粋 なブ ミプ トラ 企業であ り,マ レー シアの基準では もはや中小企業ではない。 もともとはプロ トン社への供給 を目指 して設立 され,同社の QCD に合格 し,供給 を開始 した。

当初 は全製品がプロ トン社 向けであったが,プロ ドゥア社の設立 に伴い,販路 を拡大 した。主要 な納入先 はこれ ら2 社 であるが,日系 自動車 メーカーや トラッ ク,二輪車メーカー‑ も部品を供給 している。ただ し

, 2

大国民車 メーカー以 外‑の販売 はご くわずかである。プロ トン社 とプロ ドゥア社‑の納入額 はほぼ 同額 となっていた。

A

社 はプロ トン社の

1

次ベ ンダーである。ただ し,1 次,2 次などのベ ンダー

の分類 は2000年以降のモデルには当てはまるが,それ以前 にはその ような区別

はなかった。 また,部品によってはA社が

2

次ベ ンダー となることもある

(14)

A

社 はプラスチ ックの基幹部品を生産 してお り,付加価値 と技術 の向上によ る生 き残 りをはかっている。セ ッ トメーカーの設計 をもとに試作品を製作す る だけの技術 はあ り,デザイ ン ・イ ンもで きる。売 り上げの

1‑ 2%

を研究開発 に当ててお り,専属の技術者

2

名がデザイン ・インを担当 している。大型の金 型 は韓国か ら輸入 しているが,小型の金型 は自社内で生産可能である

A

社 の コア ・コ ンピタ ンス は製 品の 品 質 にあ り,世 界標 準 で あ る

ISO/

TS1694915)

を取得 している。 また,借入金が少 ないため,資金面で も強みが あるといえる。プロ トン社 のマ ッチ ・メイキ ングによ り日本企業か ら技術支援 を受けていたことも技術面の強化 に貢献 した と思われる。

一方で,他のベ ンダーにもいえることであるが,マーケテイング面で弱点が あ り,新規分野へのマーケテイングや新 たな顧客開拓が進んでいない。 また, 欠損率が

3%

と若干高いことや工場のオペ レー ターが不足 しているなどの問題 点 もある。オペ レー ターに対 してはオ ンザ ジ ョブ ・トレーニ ング

(O

J T) を実 施 してお り,熟練工の比率が上昇するなど,改善がみ られる。

A 社 はプロ トン社の タンジ ョン ・マ リム新工場への生産の移管 に伴い,新規 に同地 に工場 を建設 した。 タンジ ョン ・マ リム‑進出 した企業は皆 プロ トン社 の 1次ベ ンダーであ り,かつプロ トン社への依存が強い企業である。 A社 は基 本的には国民車メーカー との取引がメイ ンであ り,顧客の多様化 も他の国民車 メーカーへの供給 による。 日系 自動車メーカーへの供給が限 られてお り,現在 の技術水準ではさらなる日系企業への納入拡大 も難 しい とい う。 また,輸 出は 行 ってお らず,国内市場 にのみ依存するため

, 2

大国民車 メーカーの動向に大 きく左右 されやすい経営体質 となっている。ただ し,今後 に向けて トヨタ生産 方式の導入 も考 えてお り,経営者 自らもセ ミナーに出席 して勉強す るなど向上 心 は強 く, さらなる品質や生産性の向上 も期待で きる

なお

,AFTA

FTA

については今 の ところ影響 は出ていない とい う。 ま た,顧客の近 くに立地 しているため,納入面で輸入品に対抗で きるとのことで

15)

自動車産業向けの品質マネジメント規格である。

(15)

あった。

B

B

社 は1

985

年 に設立 されたメタル製品を製造する企業である。当初か らプロ トン社 に製品を出すためにファミリー ・ビジネス として兄弟 と従業員

4

人で始 めた企業である。同社 はプロ トン社 にとって最初のブ ミプ トラ ・ベ ンダーで も ある。すでにクアラル ンプール証券取引所の

2

部に上場 してお り,経営形態 は 持 ち株会社の下に製造会社がある形 となっている。製造関係の企業全体で従業 員は700 名にのぼる

もともとの母体である製造会社 はプロ トン社の 1 次ベ ンダーである 。B 社 は 中規模の金型 を使 ったメタルプレス製品を製造 しているが,持 ち株会社の下 に 研究開発専 門の企業 もある。 B 社 自身は製品の9

0%をプロ トン社 に納入 してい

るが,兄弟企業はプロ ドゥア社への納入が90% あ り,両社で顧客の棲み分けを している。 また,額 は少 ないが 日系 自動車 メーカー

1

社 にも納入実績があ り, 今後,他の 日系 自動車 メーカー‑ も納入 したい と考 えている。中規模のメタル プ レスの国内競合企業は

3

社のみであ り,競争相手が少 ないことが同社 にとっ て有利 に働いている

B

社の競争優位 は人材,す なわちエ ンジニアと勤勉 なオペ レー ターである。

700

人の従業員の

1

割 に当たる7

0

名のエ ンジニアを擁 している。彼 らの うち2

0

名が新製品の開発 にあたっている。 また, 2 部上場 を果た したことによ り,餐 金の獲得が容易 となったことも同社 の強みである。技術面ではプロ トン社 の マ ッチ ・メイキ ングによ り日本企業か らの技術支援 を長 く受 けたことが技術力 の強 さに表れている。現在 はタイの企業 との間で技術提携 を している。

B 社 は今度の戦略 として 自動車以外の産業への販路拡大 を考えている。具体 的には二輪車,農機 メーカーへの納入 を検討 中である。製品の設計がで き,金 型 も生産で きること, さらには比較的大型のプ レス機 を持 っていることが新規 市場の開拓 に役立つ と思われる。

また,同社 はイン ドネシアで合弁企業 を設立 している。ブ ミプ トラの部品メ‑

(16)

カー としては珍 しい ものであるが, これはプロ トン社のイ ン ドネシア進出を見 越 してのことであった。

AFTA,FTA の影響 はB社 にとって今の ところ目立った ものはない とい う。

イン ドネシアへの進出は逆 に AFTA を活用す る可能性 を同社 に与 えている

C

C社 も, もともとはプロ トン社 に製品を納入するために設立 された企業であ る。2005 年にクアラル ンプール証券取引所

1

部 に上場 し,プロ トン社 のベ ンダー の中で も トップクラスの技術力 を持つ ブ ミプ トラ企業である。製品はプラス チ ックをは じめ多岐に渡ってお り,製造,エ ンジニア リングなどの企業が持 ち 株会社の下 にある。

主要 な顧客 は国民車 メー カーで,プロ トン社への販売が約

4

割,プロ ドゥア 社への販売が約

6

割である。ただ し,国民車以外の 自動車 メーカーにもご くわ ずかではあるが納入 を している。

プロ トン社 に対 してはデザイン ・インを行 ってお り,設計図は自社 で作成 し ている。同社 もプロ トン社 のマ ッチ ・メイキ ングによ り日本企業か らの技術支 援 を受けている。 日本の提携先 との関係 は良好で,両社 の合弁企業 をタイに設 立 したほ どである。

同社の強みはまず製品の品質である。 自動車 は安全性が第一であ り,そのた めにもまず高品質の製品作 りに気 を配っている。 この品質を大前提 として, さ らに生産性の向上 をはかっている。 日本流のカイゼ ンを取 り入れ,工程の改善 によ りコス ト削減 をはかっている。工程の改善 は1

00%

自社 内で行 えるほ どで あ り, これ らを支 える

40

名のエ ンジニアが競争優位 の源 といえる

。CEO

も人 材 を資産 と考 えている。離職率 は

1%

と非常 に低 く,従業員のモラルも高い。

また,従業貞向けの トレーニ ングも充実 している。 さらに,上場企業であるた め資金面で も余裕がある。

すでに述べたように

C

社 はタイに進出 しているが, この他 にイン ドネシアに

も工場 を持 っている。海外進出はいずれ も顧客か らの要請 によるものであ り,

(17)

ここか らも同社が顧客か ら高い信頼 を得ていることがわかる。マ レーシア, タ イ,イン ドネシアの工場 はそれぞれ 自国内への供給基地であ り,輸 出は行 って いない。 また,マ レーシア国内では半島東海岸 に新工場 を建設 した。部品メー カーは顧客である自動車 メーカーに近接することが一般的であるが

,

C社 は製 品の納入遵守 も徹底 してお り,顧客か ら離れた場所 に立地 して も特 に問題はな い とい う。

C社 はすでに国内外 で高い評価 を受 けてお り,マ レー シアを代表す る部品 メーカー となっている。 日本企業 との技術提携のみならず

, 2

名の 日本人エ ン ジニアを雇用 し, トヨタ生産方式の導入 にも熱心である。 しか し, 日本の技術 提携先への依存度が高いことが不安材料 として残 る。 この点は今後の課題 とい

えよう。

なお

,AFTA

FTA

について,同社 はすでにタイやイン ドネシアに進出 し, ある程度布石 を打 っているが,今後 は貿易の 自由化 を活用することも考えられ る。

D

1969

年に 日系 自動車メーカーのアフター ・マーケ ッ トへの供給 を目的 として 設立 された

D

社 は地場の有力企業 グループのメ ンバー企業で もある。当初 アフ ター ・マーケ ッ トと日系部品メーカーへの供給のみを行 っていたが,1

990

年か らプロ トン社へ,後 にプロ ドゥア社へ も部品を納入するようになった。 さらに 日系 自動車 メーカー

2

社 にも納入実績がある。現在では国民車 メーカー

2

社 向 けの生産が全生産の

7

割 を占め,残 る

3

割がアフター ・マーケ ッ ト向け となっ ている。 シリンダーヘ ッ ド,オイルフィルターなどの部品を生産 してお り,プ ロ トン社‑ はシリンダーヘ ッ ドとい う基幹部品を納入 している。 これは同社の

R&D

( 研究開発)によ り品質が向上 したことによる

D社 はプロ トン社の 1次ベ ンダーであ り,エ ンジン回 りのデザイ ン ・イ ンを

行 っているいわゆる承認図メーカーである。同社 の競争優位 は

R&D

( 研 究開

発) にある。エ ンジンルームについては同社が基本的に設計 を行 っている。 ま

(18)

,R&D

( 研 究 開発) は製造工程 に も及んでいる。 これに よ り,生産量 の拡 大 とコス トの削減 を可能に した。 自社 の

R&D

( 研究開発) は過去 において 日 本企業 と技術提携 をしていたことが,その基礎 となっている。今で もその 日本 企業 とは良好 な関係 を保 っているが技術提携 自体 は終了 してお り,現在 はプロ ジェク トベースで様 々な企業 と技術提携 している

R&D(

研究開発)のセクショ ンには

5

名のエ ンジニアがいる。

また

,QCD

について も強み を持 っている。品質については

ISO/TS16949

を 取得 し

,ISOの9000

番台 と1

4000

番台 も取得済みである。 コス ト削減 について はモジュール化 を納入先 に提案 し,実行 している。低価格の製品については生 産量の拡大や ロジスティックスの工夫,無駄の排除などでコス ト削減 を目指 し ている。納入 についてはプロ トン社へ は自社 で,プロ ドゥア社 には運送会社 を 使 って行 っているが, これ まで納期 に遅れたことはない。

これまで,輸 出は行 っていなかったが,今後 タイへの輸出 も検討 している。

AFTA を活用 した, さらなる輸 出について も興味 を示 している。マ レー シア は乗用車の生産に強みがあ り,これを活かす ことによ り,輸出は可能であろう としている。 また,中国‑の進出 も検討中である。プロ トン社の中国進出計画 にあわせての ものであるが,それだけでな く,巨大 な中国市場 において他の 自 動車メーカーへの供給 も考 えている。

E

E

社 は1

985

年か らプロ トン社 にプラスチ ック製品を納入 している華人系の企 業である。現在は

1

部上場 を果た してお り,その意味では華人系企業 と呼ぶ こ とはで きない。 納入先 は電機 ・電子産業 と自動車産業が半分ずつを占めている。

自動車産業内ではプロ トン社が

3

割,プロ ドゥア社が

5

割,残 る

2

割は 日系 自

動車メーカーや 日系部品メーカーへの納入である。1

0

年前 までは電機 ・電子産

業への納入が中心であったが,顧客である日系家電メーカーが生産 を中国にシ

フ トし,ハ イエ ン ドの機種 のみがマ レー シアで生産 されるようになったため,

ボ リュームが減少 し, 自動車向けが増加 した。直接の輸 出は行っていないが,

(19)

日系 自動車部品メーカーに納入 した部品がその企業 を通 じて タイやイ ン ドネシ アの関連企業 に輸出されている。

現在 国内には

3

つの工場があるが,2007 年1 1月に中国に子会社 を設立 した。

これはマ レー シアか ら中国の顧客 に部品を輸 出すると関税が高いことと, 日本 か ら輸入 した原材料 を使 うため,直接 日本か ら中国に原材料 を入れる方が安い ためである。 もちろん,顧客の近 くに位置す る利点 もある。それはジャス ト・

イ ン ・タイム ( J I T)で納入で きることである。 中国での顧客 は 日系,米系, 韓国系,台湾系 と多岐に渡 る。そ して, これ らの企業は もともとはマ レーシア での納入先であった。

E

社 の競争優位 は

OEM (originalequipmentmanufacturing)

でな く自社 で設計がで きる

ODM (originaldesignmanufacturing)

にまで達 しているこ とである。その裏付 けとなるものが技術力である。技術面では 日本企業 との技 術提携が大 きな役割 を担 っている

。E

社が使用する技術 は特殊 な ものであ り, ただ単 に技術 を日本企業か ら移転するだけでな く,スキルを向上 させ る必要が ある。 これ らの技術 とスキルを用いて高品質の製品を生産 している。 自動車部 品の仕上げは車種 によって異 なるが これ も

E

社 には可能である。 プロ トン社 と は開発段 階か ら協力 を してお り,プロ トン社 に

E

社 のエ ンジニアが出向いて いる

一方で,工場のオペ レー ターが不足す るとい う事態が生 じている。 これを克 服す るため,外 国人労働者 を大量 に雇用 している。全従業員500 名の うち,実 に300 名が ミャンマーやベ トナム,バ ングラデシュな どか らの労働者である

この ようにマ ンパ ワーの問題がある

E

社 は中国以外‑の進出 も検討 してお り,ベ トナム,イ ン ドが候補 としてあ がっている。今後

1‑ 2

年の間にこれ らの国々に進出す る可能性がある。

E

社 は自動車産業だけでな く,マ レーシアの最大の産業 となった電機 ・電子

産業に も部品を納入 してお り,顧客の多様化が進んでいる。 このことが E社の

海外進出を促 した要因 ともなっている。ブ ミプ トラ企業によ くみ られる自動車

メーカー,特 に国民車 メー カーのみへの供給 に依存する企業 に比べ, リスクの

(20)

分散が進んでいるといえる。

す で に海外 進 出 を果 た してい る

E

社 に とって,特 に電機 ・電子 産業 で は AFTA以前か ら実質的な貿易 自由化が進行 してお り,特 に影響 はない とい う。

F社

F

社 は

1982

年 にタイ企業によ り設立 された。当初か らプロ トン社への納入 を 目的 として設立 された企業である

。 F

社 はその後

,1997

年 に

HICOM

か ら発 展 した民間企業の傘下 に入 ることとなった。 F社の販売先はプロ トン社が中心 であ り,ほ

ぼ 9

割 をプロ トン社 に納入す る年 もあったが,現在 はプロ トン社 向 けの比重 は

7

割 ほどに落ち,プロ ドゥア社 向けが

2

割 にまで増加 している。そ の他, 日系 自動車メーカーや二輪車メーカーに も部品を納入 している。製品は メタルプ レスである。

過去 にタイに部品を輸出 したことがあったが,モデルの変更 と共にこれは終 了 している。現在 はイ ン ドネシアと ドイツ‑の輸出を検討中である。

F

社 は株主であるグループの親会社 と協力 して トヨタ生産 システムとほぼ同 様の システムを

3

年前か ら導入 している。 これにはフレキシブル生産や ジャス ト ・イ ン ・タイム

(JIT)

等が含 まれる。 トヨタのみな らず他の 日系や ドイツ 系企業の システムを研究 し,最終的に トヨタ生産 システムを修正 した ものを導 入 した とい う。 これによ りコス トと欠損率 を削減 し,品質を向上 させている。

また,プロ トン社の製品の開発段 階か ら参加す るデザイン ・イ ンも行っている。

F

社 はタイの親会社 と技術提携 を しているだけでな く,製品に応 じて 日本企 業

6

社 と技術提携 をしている。 日本企業 とのエ ンジニアの交流 を通 じて良好 な 関係 を保 っていることも

F

社の強みである

また, F社 はプロ トン社 の中国進出計画にあわせて,中国‑の進出を検討 し

ている。プロ トン社 と共に中国に進出 した場合,仕事が確保 されるだけでな く,

資金面 などで もプロ トン社 の支援が得 られるため,単独 での進出よ りも安全で

ある。ただ し,今後の成長が見込めるイン ドへの進出 も考 えてお り,最終的に

中国かイン ドのいずれかに進出す る予定である。

(21)

今後 はプロ トン社‑の依存 を徐 々に下げ,プロ ドゥア社‑の供給 を増や した い考 えである。 プロ トン社 に対 してはこれ まで多 くの部品を生産 していたが, 徐 々にシャー シーなど特定の部品に特化 し,提案型の企業 になることを目指 し ている。また,メタルプ レスの技術がその まま生かせ る家具の製造 にも進出 し, 顧客の多様化 を果た したい としている。輸出についてはもともとタイの企業で あ り,親会社が タイにあるため競合 しない ように している。

F

社の動向か らはこれまで, ともすると特定の分野に競争優位 を持つ ことを 目指す企業が多い中で, システムとしての競争力の強化 とい う新 しい視点 を入 れている点が注 目に値する。

AFTA や FTA はプロ トン社 の戦略 に大 きく関係 し,間接 的に F社 に とっ て も影響が出る可能性がある。特 に 日本 との EPA によ り, 日本企業がマ レー シアに進出 した り, 日本製の部品が輸入 されることになると影響が出やすい と 考えている

G社

G

社 はもともと持 ち株会社の もと, 日系二輪車 メーカー‑の部品の納入 を目 的に設立 されたプラスチ ックメーカーである。二輪車 に続 き電機 ・電子産業へ の供給 も開始 し, 日系家電メーカーが主要 な顧客であった。そ して1

985

年か ら プロ トン社への供給 を開始 した。現在, 自動車関連 と電機 ・電子関連の比重 は 半分ずつである。 自動車関連ではプロ トン社への販売が

4

割,国民車 メーカー であるナザ社 向けが 同 じく4 割であ る。 その他 は 日系 自動車 メー カー とプロ

ドゥア社である。

G

社の発展 には 日本企業 との技術提携が大 きな役割 を果た している。 この 日 本の提携先 を通 じて 日系の大手家電 メーカー との取引が始 まった。 また, 日系 家電メーカーを通 じて機能別 に他の技術提携先 も紹介 され,技術支援 を仰いで いる。

G

社の コア ・コンピタンスは一言で言 えば総合力であるとい う。 プラスチ ッ

ク製品の生産だけでは十分な競争力 を持つ ことはで きず, 日本か ら技術 を導入

参照

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