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機械構造部材の制振処理技術の研究
−拘束型の制振処理の振動減衰特性一 遠藤 紘・田口隆士*
StudyofDampingTreatmentforaStructuralMemberofMachines
‑VibrationDampingPropertiesofDampingTreatmentonConstrainedType‑
HiroshiENDoandTakashiTAGucHI*
(1999年11月30日受理)
Inthispaper,dampingpropertieswerestudiedtoconstrainedtypedampingstructure whichhasconformedthreelayeredbeamfromthicksteelplateofbasedlayer,viscoelastic materialsheetofmiddlelayerandthinsteelplateofconstrainedlayer. Itshaveclarifiedthat lossfactorwasvariedtotemperatureandvibrationmodebutnotalmosttodependon
frequency1 .緒
一 一 一 一
巨 振鋼板と同様の高い制振性能を付与するためには,
効率のよい制振処理法を見出さねばならない。特に,
厚鋼板などの機械構造部材においては,強度や接合 などの条件から基板に強度を保持させ,拘束板は強 度には寄与しない構造を取らねばならないので,拘 束板はできるだけ薄く,少量の使用で大きな制振効 果を得ることが必要になる。
そこで本研究では,厚鋼板を基板としてそれに粘 弾性材料を介して薄い拘束板を張り付けた非対象性
の三層積層構造板の損失係数におよぼす温度,周波
数,振動モードおよび波長の影響について,実験的 に検討した。近年,各種の機械において,高速化や軽量化の動 向が強まっている。それらは機械の振動や騒音を大 きくすることが多いので,機械の振動を制御するこ とは重要な課題となっている。機械振動を制御する
方法としては高剛性化,振動源の隔離,制振材料の 付加などの方法がが考えられが, この場合,重量の
増加をできるだけ抑えて振動を低減することが望ま れる。一方,粘弾性材料を用いて振動を減衰させるいわ ゆる制振処理法として,非拘束型と拘束型の2つの
方法が考えられている')。非拘束型は,金属板に粘弾 性材料を張り付けた二層構造を取るのに対して,拘 束型は金属板に粘弾性材料と拘束板を張り三層構造
を取るものである。 2枚の薄鋼板で粘弾性材料を挟んだ拘束型の制振材料は, 「制振鋼板」2)として高い 制振性能が得られることはよく知られ, 自動車や電 気機器のパネル部材に実用的に用いられている。
本研究は,機械の振動を制御するために,厚板や
形鋼などの機械構造部材自身に,制振性能を付与す ることを目的とする。その場合,拘束型の制振処理技術を適用し,重量の増加をできるだけ抑えて,制
2.拘束型の損失係数
拘束型の振動減衰性能は,曲げ振動が加えられる と上下の板の粘弾性材料層との界面における曲げ変 形の差を粘弾性材料層のせん断ひずみエネルギとし て吸収されることによると考えられている。
曲げ変形がわずかでも,拘束された粘弾性層には 大きなせん断変形が生ずるので,曲げ振動のエネル
ギを大きく吸収することになる。
一般的に,振動減衰性能は損失係数〃で表され,
〃=AE/21zE(AEは1サイクル中に消費されるエ ネルギ,Eは1サイクルの振動エネルギ)で定義され
*秋田高専専攻科学生
万 一イー
機械構造部材の制振処理技術の研究
構造部材の一部として厚さ5.7mmのはり状試験片 を基板として用い, 1mm厚さの粘弾性物質と0.4 rnln厚さの拘束板を用いて三層積層板とした。損失 係数の周波数やモードの影響を明らかにするため,
試験片の長さを70mmから500mmの間で変化させ た。 また,温度依存性を得るため試験片を恒温層内 に入れ,‑40。C〜+100。Cまで温度を変化させて損 る。薄鋼板と粘弾性材料からなる制振鋼板について
は,損失係数の理論的解析モデル,測定方法,予測 式などについてこれまでに多くの研究がなされてき た。3)4)5)6)
その結果,制振鋼板の損失係数は温度や周波数に 依存するコア材料の粘弾性特性および積層材料の厚 さなど構成要素のほかにも振動モードや支持条件の 影響をも受けること力:明らかになっている。そこで,
厚板や形鋼などの機械構造部材に制振鋼板と同様の 高い損失係数を保持させ, さらに重量の増加をでき るだけ抑制して,効率のよい制振処理技術を確立す るためには,厚鋼板を基板としそれに粘弾性材料を 介して拘束板を貼り付けた三層積層構造板の損失係 数におよぼす種々の条件の影響について,実験的に 調べ最適な制振処理方法を見出す必要がある。
失係数叩を求めた。
基板
' 1"【
荊一一蹄
~W ]mm
田0.4mm
70〜Rnnmm
3 .実験方法
損失係数の測定はFig. 1に示すように,試験片の 中央部をインピーダンスヘッドに固定し, インピー ダンスヘッドを介して加振器で加振する中央支持一 中央加振法を用いた。このときの加振力Fと加速度 AからFFTにて伝達関数A/Fの周波数応答を求 め, さらにそのリアルパー│、から損失係数万を求め た。本研究における振動モードは,両端自由支持条 件において出現する中央部の曲げ振動の共振次数モ ードをその対象とし,低周波数側から1次, 2次,
3次モードとした。
実験に用いた試験片は, Fig.2に示すように機械
実験サンプルの仕梯
幅:30m、長さ: 70〜500mmのはり状試験ハ
基板一厚鋼板
材 質: ss4 ()o
直 径: 5.7mm
コア材一粘弾性材料
材 質: プチルゴム系粘弾性物質
厚 さ: 1mm
拘束板一薄鋼板
材 質: SC(冷延鋼板)
厚 さ: 0.4mm
Fig.2実験サンプル
4. 実験結果
4. 1 温度依存性
−
…
1 1
1
》
Fig.3とFig.4に代表的な長さの試験片(長さ180 Innlと450mm)について測定した損失係数と温度の 関係を示す。
これらの図においては, モード次数ごとの損失係 数の温度依存性を示し, 周波数の影響はここでは無 視している。 これらの図から明らかなように,拘束 板力罫基板の1/10程度の不等厚の三層積層板において も,損失係数はある温度でピークとなる温度によっ て大きく変化する特性を有する。 この場合いずれの 長さでもと3次モードは30°Cで損失係数力:ピーク になるのに対して, 1次モードでは40。Cでピークと なり,次数モードが高いほとゞピーク温度が低い傾向 を示す。 また, それらのピークの値は短い試験片で はモード次数によって大きく異なっているのに対し て,長い方の試験片ではあまり変わらないことを示
席nt画
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Fig. 1 実験装置
−8−
遠藤紘・田口隆士
10 100
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Temperature (℃)
Fig.S損失係数と温度の関係(180mm)
500 750 1皿
Frequency (Hz)
1250
0 250
Fig.5損失係数と周波数の関係(1次モード)
10 100
864z
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﹄︒︺︒﹂画㈲◎ゴ
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−50 0 50 100
Temperature (℃)
Fig.4損失係数と温度の関係(450mm)
0 1 0 2… 30 … 5…
Frequency(Hz)
Fig.S損失係数と周波数の関係(2次モード)
しており,長くなるほど2, 3次モードの損失係数 のピーク値が高くなる挙動を示している。 しかし,
このような挙動は周波数の影響を受けているわけで あり,直ちにモード次数の影響や試験片長さの影響 とは言及できないところである。
1 一一一 53z ℃℃℃000
−0℃
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10 ー
4.2 周波数依存性
Fig.5, 6, 7は試験片の長さと温度を変えて測定 したモードごとの損失係数と周波数の関係を示した ものである。損失係数に対する周波数の影響は温度 やモード次数の影響に比べ非常に小さい。
粘弾性特性を利用した制振材料は一般に周波数と
温度の影響を受けるとされているが,本実験のよう
に試験片の長さを変えて周波数依存性を求めると異 なった結果が得られる。実用的見地から拘束タイプの制振材料は温度依存性は極めて大きいが,周波数
依存性は小さいと見ることもできる。1 戸
■
01
0 50 10000 15000
Frequency (Hz)
Fig.フ損失係数と周波数の関係(3次モード)
4. 3 モード依存性
Fig.8, 9, 10, 11, 12はモード次数の影響を明ら かにするため各温度ごとにモード次数をパラメータ ーとして損失係数と周波数の関係を示した図であ
1
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八
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機械構造部材の制振処理技術の研究
10 1
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100 10Ⅸ)
Frequency (Hz) Fig. 10損失係数と周波数の関係
1 OO
(30。C)
100 10 10000
Frequency(IE)
Fig.8損失係数とモードの関係(‑20。C)
10 1
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︵竿×○こ唐﹄○﹈○砲﹂②伽◎ゴ ︵甲○一×︶唐﹄︒︺Q阿些めめ◎ヨ
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1000 1”OO
Frequency (Hz)
損失係数と周波数の関係(40。C)
100 1000 10000 100
Frequency (Hz)
Fig.9損失係数とモードの関係(10。c) Fig. 1 1
る。 10
Fig.8は減衰効果が現れない‑10。Cにおけるも ので,損失係数に対する次数モードの影響は認めら れない。それに対してFig.9は+10。Cにおけるもの で次数モードの影響が現れ, 1次モードと2, 3次 モードとは同一周波数に対して異なると損失係数を 持ち, 2, 3次モードの方が大きい値となっている。
Fig.10は損失係数がピークとなる温度30。Cにおけ
るモード依存性を示す図であるが, この温度におい ては1次モードの損失係数が大きくなり, 1, 2,3次モードとも一つの曲線にのっており,再びモー ド依存性が認められなくなる。また, Fig.11は損失 係数がピークとなる温度を越した40。Cにおけるモ ード依存性を示し, 40。Cでは1次モードと2, 3次 モードの損失係数は周波数に対して再び異なった値 を示し, ここでは1次モードの損失係数のレベルは 2, 3次モードのそれより大きくなっている。Fig.
12は70。Cのもので40。Cと同様の傾向を示すが1次
8
64z
︵甲○一×︶戸﹄︒︺︒﹂のの◎己
0
100 10Ⅸ〕
FrequenCy (Hz) Fig. 12損失係数とモードの関係
10000
(70。C)
モードと2, 3次モードとの損失係数値の差が小さ くなっている。
さらに80。C以上では低温の‑10。C以下と同様に,
損失係数のモード依存性は消失する。
|
‑10‑
遠藤紘・田口隆士
10 値は試験片の長さによって異なるので材料に励起さ
れる振動の波長などの影響も考慮する必要があると 思われる。
従って,減衰モデルとしては,粘弾性材料の減衰 は粘性減衰として整理されるが,三層積層の拘束タ イプの材料ではその減衰作用はモードの影響を受け ることなどから構造減衰的モデルを考慮しなければ ならないと考えられる。
8
64z
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6.結 一一一一巨
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Length(mm)
Fig. 13各モードの損失係数のピーク値と長さの関係
機械構造部材として用いられる厚鋼板に,できる だけ重量の増加を抑えてより効果的に制振性能を付 与するために,拘束タイプのダンピング構造におけ る損失係数におよぼす種々の要因を検討した結果次 ぎのような結論が得られた。
(1) 基板に対して,粘弾性材料を介して基板の 1/10程度の厚さの拘束板を張り付けることに より薄鋼板の制振鋼板と同様の大きな制振性 能が得られる。
(2) この場合,損失係数は温度によって大きく変 化するが周波数による変化は比較的小さい。
(3) 損失係数はモード次数の影響も受け同一周波 数,同一温度でもモードによって異なった損 失係数となる場合がある。
(4) 1次モードと他の高次モードでは特に異なっ た挙動を示す。
(5) 拘束タイプの材料の損失係数の測定や最適な
三層積層板を得るには振動モードを考盧する
必要がある。4.4 損失係数のピーク値と長さの関係
Fig.3, Fig.4に示したように損失係数の温度変 化において,損失係数のピーク値は試験片の長さに よって異なる。試験片の長きとピーク値の関係を Fig.13に示す。図に見られるように, 1次モードで は長さが変わっても損失係数のピーク値はあまり変
わっていない。一方2次, 3次モードは長さに比例して損失係数のピーク値も大きくなり,右上がりの グラフとなり,最終的にはどのモードもある値に収 束する傾向となった。即ち損失係数のピーク値は1 次モードでは長さにあまり依存しないが, 2次, 3 次モードは長さに大きく依存すると考えられる。こ のような材料の長さによって損失係数が変化する挙
動は材料に生ずる波長の影響と考えることができる。
5.考 察
参考文献
以上のような実験結果から,厚鋼板に粘弾性材料
を介して拘束として厚鋼板の板厚の1/10程度の薄鋼 板を取り付けた三層積層鋼板も薄鋼板の制振鋼板と 同様に大きな損失係数が得られることが明らかとな った。 また, その損失係数は温度,周波数, モード の影響を受ける力:,温度については極めて敏感であ
るのに対して周波数依存性は小さいことおよびモードの影響としては1次モードの影響が大きいことが
判明した。このような結果は,Mead4)の理論やそれ を基にした伊藤らの解析研究5)の結果と合致していると言える。特に温度変化において損失係数の最大
1)田中良平編集,制振材料(日本規格協会)制振
鋼板, (1992)632)佐々木,遠藤,他,鉄と鋼, 70(1983)16 3)Ross,D.,Ungar, E.E., andKerwin,EM.
(Ruzieka,J.E編)ASME, (1959)49,Pergamon
Press
4)Mead,D・ andMarkS,S., JSoundVib., 10
(1969)163