<総説>ラグビー競技者の技術、体力の融合化を企 図する体力トレーニングの計画化について
加 月 秋 芳
目 次
1. はじめに
2. ラグビー競技者の体力,技術の問題点 (1)最近のラグビーの傾向と体力,技術の問題 (2)コンタクトプレーと体力,技術問題
③ ラグビーの技術と体力との融合化トレーニング
(4)ラグビー競技者の技術,体力の融合化トレーニングの狙い 3,ラグビー競技者の技術,体力の融合化トレーニングの計画化 (1)技術,体力の融合化トレーニングの指標
(2)計画の具体化 ① 長期計画 ② 年聞計画
㈲ 段階計画,週間計画,1日の練習計画 4.おわりに
1,はじめに
本論文は,最近のラグビー競技の実態に基き,ラグビー競技に必要と考えられるプレー ヤーの資質のうち,体力トレーニングの観点から,体力と技術の融合化を企図するトレー ニングについて,その構想を明らかにし,これが計画化について論述したものである。
ラグビー競技者としては,小,中生(ラグビースクール,少年ラグビー,部活動)高 校,大学(何れも部活動)を対象に含め,トレーニング計画化については,年間計画(1.
移行期,2.鍛練期,3.完成;期,4.試合期に区分)し,それぞれについて具体策を論じ,さ らにこれを段階計画,週間計画,1日の練習案に移し,具体案を提起した。
註本論文は1975年8月22日起稿し,9月22日脱稿したもので,その間ウエールズチームの来日をみ た。
2. ラグビー競技と体力,技術の問題点
(1)最近のラグビー競技の傾向と体力,技術の問題
1975年の東京教育大学夏季合宿期間における慶応大対教育大30分ハーフでの練習試合は 別表1に示す如く,モール及びラック32,ペナルティキック13,キックオフll,ラインア
ウト19,セットスクラム17の結果を示した。
この日は,教育大が順調な滑り出しをみせ40−16と快勝した。教育大の勝因としては,
モール及びラックに於て,慶応をはるかに上回わる技術をみせていた点と全員気力に溢 れ,闘志満々のうちに試合を進めていた2点にあると思われる。これに比し,慶応は,セ
ットスクラムに於て断然の強みを示していたが,モール及びラックに低調さがみられ,且 つ,T.Bアタックラインが浅く,教大のデフェンスに敢なく阻止され,次のモール及び
ラックでのチャンスを産み出し得なかった。
最近のラグビー試合をみて,筆者が常に感ずることは,高校生の体格が年々良くなりつ つあることと,これに比し,大学生の方が逆にそれ程見ばえがしないこと。もう一つは,
別表1 ラグビー実態調査
東京教育大一慶応 8/21於山中湖畔慶応グランド
項 目 1
前
半 1後 半1計
モ 一 ノレ
9 15
24ラ ッ ク
5 3 8
ペナルティキック
6 7 13
キ ッ ク オ フ
6 5
1ユラ イ ンアウ ト
11 8 19
セッ トスクラム
7 10 17
ス ・ 刻
前
半1 後 半隔考
教 大 慶 応 教 大 慶 応
T
! 1.G 3 1 2 1
PG 3 1
DG
計
1 25i 6 1 ・5} 10
教大一慶応
40 16
モールがだんだん板についてはきたものの,動かないボール争奪のモールが,多く見られ ることである。最近のモール及びラックではドライブが強調されており,このようなコン タクトプレーの優劣が「勝敗」を左右する段階に来ているように思われる。
わが国のラグビーが少し,レベルアップしたとしても,これを世界のラグビーに比ぶれ ばものの数ではない。とくに体力,技術を要するコンタクトフ。レーにいたっては,20年の 開きがあるように思われる。あるいはそれ以上かも知れない。わが国のラービーが歴史的 に20年の開きを持つとしても,実力的にもそのような開きを持たなければならない道理は ない。とりわけ,体力,技術は合理的方法により改善さるべき性質のものである。にもか かわらず20年の開きがあるように思われる。
これは数年前ニュージランドで確め得た収穫の一つでもある。
少く共,20年頃いう開きをどう解決していったらいいのか。体力,技術にしぼってみて も仲々困難な問題である。
コンタクトプレーは,文字通り身体的接触プレーの総称であり,モール及びラックが代 表的プレーである。これからのラグビーは,このような体力,技術を最高度に駆崩するコ (註1)
ンタクトプレーが「勝敗」の鍵を握るようになりつつある。
② コンタクトプレーと体力,技術問題
1975年7月一8月全日本ラグビーチームが,オーストラリヤに遠征し,4勝5敗の成績 を収めた。4勝は当初からの予想であり,5敗の試合が,実はウエールズを迎えるための (註2)
テストマッチであった。不振の原因として金野団長は,体力問題を提起した。モール及び (註3)
ラックでは到底彼等に及ばざるを歎き,体力,技術の貧困さを訴えた。また,数日して,
T.Vで,この録画を公開した。
この9月には,愈々ウエーールズチームがやってくる。ことし,2−3月に挙行された五 ケ国対抗(英国四協会とフランス)に優勝したそのメンバーがそっくりやってくる。素晴 (註4)
らしい体力,技術を持った世界最強チームである。平均身長182.3伽,体重89.4晦。これ に対して,第1試合早大,近鉄連合軍,第2試合日本B,第3試合全日本,第4試合全日 本計4試合が予定されているが,日本チームに1つでもトライがとれるか。百戦練磨のウ エールズに比べ,競技力構成要素(別表2一(1)一(5))の総てに20年の開きを感じている筆 者にとって,まさにこの試合は問題にされないだろうし,日本選手にとっては,世界の壁 の厚さを身をもって経験することになるだろう。ウエールズのあの赤シャツが思う存分暴 れまわって,走りまくって帰えることだろう。
なかでも体力,技術を最も必要とするコンタクトプレーにいたっては,彼等の思うま ま,足下にも寄せつけないであろう。
コンタクトプレーは,人間の持つあらゆるものの融合から昇華されるラグビーのく花〉
にも例えられる。ウエールズがどんな名花を咲かせてくれるだろうか。
コンタクトプレーが,ラグビーの核心の座を占あるに至った歴史はまだ浅い。 (1967年 のルールからモールが採用された)
にもかかわらず,先年の英国遠征といい,今回の豪洲遠征において,このプレーに完全 にお手挙げだったのは何故か。
(註2)
筆者はこれについて,金野団長も指摘した如く,体力差,次で技術熟練度の2点を特に 重要視したい。
別表2 ラグビーの競技力構成要素
体
カー一筋肉一
(1)体力(スピード,
一筋力 スピード
パワー(カ×スピード)
一筋持久力(局所持久力)一
一関節滑酪麟)雨漏強度
呼吸器一 循環器一
ト二流久力(スタミナ)
一神経一調整力=
一月イミングー
リ ズ ム
バランス
一集 中 カー
スタミナ,ストレングス)
雪ストレングス
=スピード
注 ラグビーに必要と考えられる体力のうち,最近のラグビーの傾向を踏まえ,且又,技術 を左右する要因としてのスピード,スタミナ,ストレングスを重視したものである。
(2)技
技
術
術一
一基礎技術一
一ランニング(各種)
パスシング キャッチング キック ドリブル
フォーリングオンザボール タックル
ーピック,アップ等 一セットスクラム モール及びラック ラインアウト アタック デフェンス ー応用 技術一
戦術の理解と習得
へ くシ
コンビ不一ションフレー 戦術と技術の応用展開
テスト,マッチ(技術,戦術の完成)
しその他
(3)精神力
精 神カー
一意志的要素一
一道徳的要素一
一心理的障害一
一独創力 決断力 判断力 勇気
不擁不屈の精神 闘魂
一規律性
一スポーツマンシップ 自制心
寛大,礼儀 一服従と責任感 一恐怖心,無気力の克服 無用な神経興奮の抑制 不信感,絶望感の排除 自信過剰
成績に対する病的反応の排除 一その他精神的ストレスの克服
(4)チーム・ワーク
チーム,ワークー
一個人的要素一
一チーム的要素一
一個入技能の自信と相互連繋 ラグビーに対する目的感の高揚 一ラグビーに打込む入生観の確立 一同一目的に対する共通理解 相互練磨と相互扶助 一和合と団結の生活の確保
(5)体験度
体験 度:一
一質的,量的,トレーニング時間の多少 地域大会出場経験の多少
全国大会の経験度 一国際ゲームの経験の多少
(3)ラグビーの技術と体力の融合化と体力トレーニング
ラグビーの一つ一つの技術が, (別表2一(2))体力要素(別表2一(1))と融合されるそ の形成過程に於て,技術の習熟度と体力要素のトレーニング度合を深く検討してみる必要 がある。
これまでの学校体育では,各種の運動を総合的に練習することによって体力の向上を期 待しようとした。この考え方は,活動の過程において体力要因が強化されるという前提に (註5)
立っている。勿論,体力育成が目標であることが先行している。これに対して,スポーツ の基礎的トレーニングでは,体力を筋力,持久力,調整力,柔軟性に分析し,その各要因 を強化することによって体力の強化をはかろうとする考え方に立っている。
これは,スポーツにおいては,技能の限界に挑戦するためには,その種目に必要な体力 を基礎的に強化することが必要であるという理論から構成されているが,技術との関連に おいて,さらに形成についての融合化においては詳かにされていない。
元来,技能には,このようなスキル的なものと,体力的なものとの二面性が認あられる が,技術と体力とが一元化され,融合化されて初めて技能として,その真価を発揮するこ とになる。
ラグビーの技術は,ラグビーの本性から由来する身体的接触プレーが中核をなし,これ らの技術は,その殆んどが体力要素と融合し技能として,構成され得るものである。
なかんづく,スピード,スタミナ,ストレングスの体力要素との結びつきが,一そのすべ てであり,これらの融合野並にその質度が問題視される。したがって,ラグビーの基礎技 術と体力要素=筋力,スピード,持久力,柔軟性との融合化については,総てのラグビー 競技者に一様に課せられなければならない性質のものと考える。
(4)ラグビー競技者の体力トレーニングの狙い
(註6)
HIGH SPEED RUGBYの著者E. S. AND W.」. HIGHAMは次のようなものを,
ラグビー競技者のより良い資質であると述べている。ポジィション別に示すと次の運りで
ある。
①よいS.Hの資質として
を挙げ,よいS.Hとは,
に短身とはいいながらも,ずんぐりと作られている。
体重の点については,スピードや敏捷性を養うことによって補うことが出来る。
しからば,S.Hの本質的なものは何かと言うとそれは,両脚,特に大腿部の強靱さで あり,ヒップの周辺を補うことにある。a.bで前記したようなものについて,総ゆるS.
Hにそれを見出すことは仲々;期待出来ないことであるが,理想的S.Hを作ろうとするな らばこのようなものが見出し得るように努力していく必要があると述べている。
次に,
③よいF.Hの資質として a 生来の機能
・ 迅速な反応 。 頑健 。 勇気 b 実践と経験によって獲得せられるものとして
。 スタミナ 。 敏捷性 。 総ゆるパスの型の用途を知っていること 。 F.WやTBのプレーの両者についての知識を持っていること
。 左右いつれの足ででもキックができること 。 タックルやセービングが上手に出来ること
身長や身体の骨組みといったものが重大とは思えないが,一般
a b
C
d e
f
安全な手練(パスやキャッチの)
マークから離脱する際の瞬間的なスピードを持っていること 迅速な反応動作
ラグビーセンス 器用なランニング
左右何れの足でもキックが出来ること
④よいC.T.Bの資質として a
b
C
d
e
f
g h
攻撃精神と進取の気象
天性具わるハンドリングの良さ,迅速な判断力と思考力 足さばきの迅速さ
真直ぐに走る能力 安全なタックル
左右何れの足でもキックが出来ること スタミナ
両センター間における相互の理解
⑤よいW.T.Bの資質として
a b
C d e
瞬間的な判断力と決心力 スビード
器用なランニング
強固かつ躊躇せざるタックル クロスキックが出来ること
⑥よいF.Bの資質として
a b
C
d e
f
9
予見力とスピード(戦術的知識,ラグビーセンス,切迫の際における沈着さ)
あるべき位置についての注意深さ 安全なキヤッチングとブイルデイング 正確な左右両足でのパンテイング 確実なタックル
ドリブルに対する勇敢な防禦 攻撃精神
⑦よいF.Wの資質
a b
C
de f
g h
i
j k最:後に(註)を加え,
であり,また,それぞれの資質を分離して論ずることも困難である。何故ならば,いくつ かの資質が他の資質を包摂し,それなしには不可能になるからである」と結んでいる。
上記のようなプレヤーの育成こそ,これからの課題として充分に検討し直す必要を認め ると同時に,これが具体策についてふれてみたい。まず,体力トレーニングの点から体 力,技術の融合化を考えながら,プレヤーにどのようなものを望むかを明らかにする必要 がある。
①FWに何を望むか a フロントロー
押しの中心であり,しかも最前線であることから,スクラムで組み合うということを含 めて,常に相手方と強く激しい身体のぶつつかり合いがあり,気力,迫力共に烈々たるも のをもっていることが大切である。
気力,迫力 (プレスする力)の不足時のスクラムは,事故に連がる危険性をもってい
る。
体力,気力の充実に加えて,さらに地道に頑張るという素朴な粘り強さを必要とする。
b ロ ッ ク
ロックはスクラムの中央に位置し,スクラムの構成に当っては,支柱的役割をなし,泰 然として不動であること,またラインアウトでは「イスペシヤリスト」として,中心プレ ヤーになるものでなければならない。
したがって,ジャンプカを持ち,しかも機敏で常に細心な注意力,警戒心を有するもの でなければならない。
持久性
スタミナとスピード 予見力(勘)
警戒心 強靱性
可なり素朴な粘り強さ よいハンドリング 器用なドリブル
確実なタックルとセービング 安全なキック
機敏:であり,素直に命令に従う
「このような資質を重要の度に応じて順番づけていくことは困難
長崎大学教育学部教育科学研究報告 第23号
C フランカー及びNo.8
フランカー及びNo.8にとって一番大切なことは,スピードのある走力を持っているこ とである。T.Bの攻,防に参加したり,またT.Bのサポーターとして,完全に任務を遂 行するためには,どうしてもスピードのある走力を持つことである。走力はあってもスピ ードに欠けるフランカー及び:No.8では用をなさない。モール及びラックの主導権iを握る か,否かは,このスピードのある走力にかかっている。
次に大切なことは,鋭い勘(ANTICIPATION)が必要である。
良いフランカー及びNo.8とは,機敏であり,気力に溢れ,機動力,スタミナに富んで いるフ。レヤーを指している。
②S.H及びF.H
S.H及びF.Hは,共にどんな場合でも沈着であり,確実なプレーができることと,判 断力が的確で,機を見るに敏といった迅速な反癒動作に秀れていること,またそれが安定
したものであることを必要とする。特に,F.H:の動きは,バックスの大部分の戦法の基 になっており,したがって戦法の知識を豊富に持つと同時に,それを基になされる局面の 展開の如何は,直ちに勝敗を左右することになる。
F.Hは扇の要目といわれる。相手の動きに応じ,上述した適性が必要になってくる。
③ C.T. B
C.T.Bは相手の動きに対する瞬間的判断を適切に処置し得る能力が,まず要求され る。絶対に躊躇し,機を失することが許されない。そのプレーの主なことは,ボールの 処理であり,相手を抜くことであり,相手をタックルすることであり,まことに多彩であ る。ラインが抜けないC.T.Bは役に立たない。抜くためには,相手の位置の確認,相手 をプレスし,相手を思うままに支配できること,相手の心理状態まで見透すほどの鋭い勘 を持つことにいたるまで複雑なものが要求されるのである。
④ W.T. B
まずスピードに秀れていることが第1条件であり,次にそのスピードを生かして器用な ランニングに慣れることが要求される。
さらに,烈々たる気力,果敢な闘志,強引さ,瞬間的判断力と決断力等の精神力をも必 要とする。
⑤ F.B
沈着で冷静,的確,総ての動作に安定性があり,判断力が的確且つ予見力に優れている ごとが必要条件である。
以上は,ラグビープレヤーに望まれるものであると同時に,直接トレーニングの目標と も考えられるものである。
このようなトレーニングの狙いが設定されると,次にこれが具体化のための手順を踏ま ねばならない。
3 ラグビー競技者の技術,体力の融合化を企図する体力トレーニングの計画化 (1)ラグビー競技者の技術,体力の融合化の体力トレーニングの計画化指標 ラグビー競技者の技術,体力の融合を企図する体力トレーニングの計画化に当っては,
年令,体力の現状,技術的,精神的現状,健康状態など競技者の個人的特性に応じて,個
人の可能性を最大限に伸展するように配慮することが第1であり,更に試合シーズン,オ フシーズン,器材,器具及び環境などの条件を考え,時;期に即応した有効適切なトレーニ ングが行なえるように工夫していくことが大切である。以下細部に亘って計画化の指標を 列挙すると。
① 競技者自身の人間としての全面的発達が企図されなければならない。
スポーツには,それなりに不可欠の体力を必要とする。体力作りは勿論必要であるが,
それ以上にまず人間としての全面的発達すなわち,強固な意志,体力の総合的,調和的発 達なしには,さらに高次の専門的体力を獲得することは不可能である。技術,体力のトレ ーニングといっても,このような人間としての全面的発達を土台として,この上に望まし いラグビー競技者としてのトレーニングの遂行が,必要であることは申すまでもない。
このことは,・体力トレーニング計画の中に常にこの考え方を一貫させていく必要があ
る。
② 競技者自身の自覚が前提となる。
「トレーニングは誰のためにやるのか」という迷いが生じないとも限らない。そのため には,競技者自身の理解を深め,トレーニングに対して積極的に対処する態度を養うこと が必要である。自分の体力の現状を知り,体力分野のどの要素にどの程度劣っているかを 理解し,それらを改善するために,どのようなトレーニングを行なうべきかという自覚的 態度を育成する必要がある。
③ 反復の原則に従う必要がある。
技術,体力の融合を計るたあには,反復することにおいて,筋,神経の統合をつくりだ し,技術,体力の向上,融合に大きく役立つことになる。勿論,この際,競技者自身の態 度如何もトレーニング効果を左右する。技術,体力の融合化企図の下での体力トレーニン グに当っては,個々の動作や全身的な運動に於ても,常に心身共に最良の状態で反復した 方が良い効果が得られる。融合の度合いについては,テストマッチ等に託て把握される が,指導者はこれについての感度 (熟練の程度について)を養っておくことが必要であ る。また,これが計画化に当っても,諸々の条件を充分考慮した上で, トレーニングの 質,量,休息,反復回数等を適切にしなければならない。
③ 負荷の与え方を適正にしなければならない。
体力トレーニング項目の中の負荷の決定については,技術内容の上達状況をもととして 充分検討してみる必要がある。
技術,体力の融合度合には必ずゲームコンディションの状態を必要とする。そのために は1−3ケ月に1回は必ずテストマッチを計画する必要がある。
④ よりよいトレーニング方法を注意深く観察することによって,自分のトレーニン グにプラスすることができるよう計画すべきである。
⑤ トレーニング実施においては,競技者自身の個人的特性を考慮した処方に基づく ものであることを前提とし,その上にチーム的特性を織込んでいくような手順を踏むこと が大切であると考える。
(2)計画の具体化
①長期計画(発育,発達に即応したトレーニング計画)
a 長期計画の意義
(註7)
体力が自然に,発育,発達している時期にそれを一層促進させるようなトレーニングを 行なえば,その効果は極めて大きいとされている。また,これに反して自然な発育,発達 が停止した後にトレーニングを行っても,その効果は少ないといわれる。このことは,極 めて常識的なことではあるが,トレーニング立案に当って終始考えておかなければならな い大原則である。さらに体力要素別についても発育,発達の様相を異にし,発現の時期が 異なる。したがって,そのような発育,発達の毅階に応じて計画されなければならないの で計画もまた長期にわたることになる。
このことは,長年月にわたって,その時期に応じたトレーニングを行なうことにより,
個人の可能性を最高度に伸展するばかりでなく,発育,発達に合わない無理なトレーニン グを行なうことにより,発育,発達を阻害したり,健康をそこねたり,或いは,生命にか かわるような事故にも連っていくことを防止するためにも極めて重要な事柄である。
② 発育,発達に応じた技術,体力の融合化を狙う体力トレーニング a 小学校時代(ラグビースクールを主体として)
体力要素の中で最も早く発育,発達が現われるのは神経機能である。中枢神経の筋支配 (註8)
の能力は10才頃までには,その90%が発達するといわれる。したがって,このような適期 を捉えて,ラグビーの基本技術(別表2一②)の遊戯化,ゲーム民庶を試み,彼等の発 育,発達に即応させながら,幅広く,身のこなし,リズム,バランス,タイミングなどを 反復し,神経機能の発達を狙いとしたトレーニングを立案するのも一方法であろう。
ここで考えておかなければならないことは,筋力,持久力について注意を要することで ある。小学3,4年頃までは,呼吸,循環機能,筋肉にはあまり発達は見れないことと,
特に毛細血管の発育は充分でないので,このような器管に重い負荷を与えるような,スク ラム,ラインアウト,モール及びラックといったプレーについては,力,スピード等を要 求するような指導は絶対に慎まねばならない。
小学5,6年になると,神経機能は成人とあまり変らなく発揮できる。
パス,キャッチ,キック,ドリブル,ランニング,セービング,タックル,ピックアッ プといった基本技術や,簡易スクラム,簡易ラインアウト,簡易モール及びラック攻撃,
防禦,簡易な戦術の理解と習得, コンビネーションプレー,簡易な戦術と技術の応用展 開,練習試合といった技術を中心としたプレーの発揮も可能であり,それなりの体カトレ ーニングについても効果が期待できる。
ただし,方法については,充分に検討されなければならない。特に「場」の構成につい ては,ゲーム,コンディションであることを必要条件とする。
b 中学校時代(少年ラグビー,部活動,ラグビースクール)
13,14才頃になると,筋肉や骨諮の発達が顕著になるので,筋力(瞬発力,持久力),
スピード,心肺系持久性,柔軟性などのトレーニングに,ラグビー技術を負荷として与 え,体力と技術の融合化を本格的に立案しても差支えないし,また最適の適期でもある。
ラグビーで特に必要と思われるスピードやストレングスの育成は,この時代のトレーニ ング如何にかかっているように筆者には思われる。しかし,スタミナについては,未だそ の;期に達していない。
これについては,次の高校期を待たねばならない。
以上を踏えて,ラグビーの基本技術,応用技術と体力要素との融合化についてのトレー
ニングを工夫する必要がある。
c 高校,大学時代
高校一年次については,既に述べたように心肺機能に強い負荷のかかるトレーニング種 目,強度等について特に考慮しなければならないが,2年次以降及び大学生については,
体力,技術,精神力,チームワーク,経験度の全面にわたり可なりのトレーニングを行う 絶好の時期であり,特に大学二年時以降については,自己の特性に応じた独創的トレーニ
ング法を編み出すよう各人に工夫努力させることが大切である。
以上発育,発達の立場からみたトレーニングの特徴を明らかにしたのであるが,各年代 を通じて,全面的なトレーニングを欠かないように常に注意すべきである。発育,発達に 応じたトレーニング内容の特徴を要約すれば別表3の通りになる。
別表3 発育,発達に応じたトレーニング内容 発育,発達段階
トレーニング内容
オールラウンドなからだっくり
(ハンドリングゲーム)
身のこなし,スキル(協応性)
(ハンドリングゲーム)
筋力,スピード(パワー)
(コンタクトゲーム)
スピード,ストレングス,スタ ミナ(コンタクトゲーム)
小 学
○
◎
中 学
○
○
◎
高 校
○
○
◎
◎
大 学
○
○
◎
◎
注 1.○印は主として全面的な身体つくりのためのトレーニング内容 2.◎印は主としで体力,技術との融合化を狙うためのトレーニング内容
② 年間計画 ・
1年間のトレーニングをどのように行なっていくかについては発育段階,トレーニング 度合,競技者の特性,試合の年間スケジュール,予算などをもとに決定しなければならな い。わが国では,9,10,11,12,1,2,3月をもってシーズンとし,4,5,6,、7,
8月をシーズンオフとしているが実状は,7,8月を除いて,殆んどシーズン並みに試合
(例高体連大会等)が,行なわれている。また,多くのチームが夏季合宿に入っている。
したがって,主要な試合と体力,技術完成の山を一致させることなどを考慮しながら年 間計画を立案する必要がある。また一つの体力的要素と技術との融合が完成するには少く 共1ケ月〜2ケ月の期間を必要とするので,それより短い期間でトレーニング効果のねら いを大きく変更することは広々困難なことである。
以上のような理由で,トレーニングの基準として,1年間をシーズンとシーズンオフに 分け,更に各々を2期に分け,若干修正を試み次のような区分にしたのである。
すなわち,1.移行期(2月目3月)
2. 錫と練期 (3月〜4月)
3,完成期(5月〜8月)
4.試合;期(9月〜2月)
a 移 行 期
この時期はシーズンからシーズンオフへの移行といわれる期間で前年度の公式試合を全 部終了し,メンバーも一新して,新主将の下に新年度のスタートを切ろうとする大切な時 期である。この時;期の初期には,気分転換を図る意味でIO日間程度の休息を入れて,前シ ーズンの身体的,精神的の疲労の回復を図り,あわせて競技者が新しいシーズンには入る に当って,完全なよりよい体調の維持と心身の充実を図り,技術的な進歩の土台をつくっ ておくようにしなければならない。この時期には多くのチームが春の合宿や合同練習には 入るのであるがまず技術を従として体力に重点をおくべきである。ラグビーの体力づくり はまず,脚力を中心とした走力にねらいを置いて強化を図り,スピードのある走力に高め ていくべきである。スピードのある走力は,ラグビーの殆んどの技術との結びつきが容易 であり,神経回路の構成は比較的単純である。次は,相手を圧倒する気力(プレスする気 力)を一つ一つの動作の中に充満させていくことである。
ラグビーはチャレンジするという性格のものである。相手に挑戦するためには,何より も先ず相手を圧倒する烈々たる気醜を必要とする。気力は人間生涯のものである。
一動作の中に気力が生かされると,相手には殺気にも似た圧迫感を感じさせるものであ
る。
次に,脚力を中心に更に,全身筋力の調和的発達におし拡げ,一般的持久力,敏捷性,
柔軟性,身体調整力,リラクゼーションなどの全面的体力作りを立案すべきである。
トレーニング内容としては,基本技術の遊戯化,ゲーム化,体操(補強運動を含む),
野外走,ラグビー以外のスポーツなどを組み合わせて,変化に富んだものにして,強度は あまり強くしないで,できるだけ楽しくやれる雰囲気をつくり,過度にならないように,
留意しなければならない。
b 鍛練 期
ラグビー競技力の中でなかんずく,スピード,ストレングス,スキル,スタミナは基本 的なものと考えられる。今回のウェルズの来日はこれを裏書きしている。日本チームに課 せられた20年間のハンデを如何にして対等にするか。体格差は仲々困難と思われるが,体 力,技術面については,上記に挙げた項目のみでも可能と思われる。要はどんなトレーニ ングをやるのか?によって解決さるべき性質のものである。ラグビーのあらゆる技術が不 退転の意志力に支えられ,かつそれらを支えるのもまたスピード,スタミナ,ストレング ス,の一体化から発現されるような競技者を育成した暁に於て,はじあてこの問題の解答 がなされると信じている。今日のハイスピード,ラグビーの根幹はスピードであり,スピ ードの向上,スピードの持続が鍛練期のねらいとなるのは当然であろう。手順としては,
個人の段階から,集団のスピードアップに移行し,あらゆるラグビー技術がスピードに満 ち満ちていることが大切である。
スピードといっても,ラグビーのそれは,陸上競技のスピードと多少趣きを異にし,
陸上競技の走のような一定距離の記録の優劣を争うのではない。動きの遅速例えば,
ボールの遅速,ハンドリングの遅速,モールやラックの離合,集散の遅速,突込みの遅 速,T.Bパスの遅速等スピードに依る仕事量や動作についての遅速を指しているのであ
る。
スピードアップは,方法的には,走力を作ることから始まる。走力を作るには走らなけ ればならない。真直ぐ走るQジグザグに走る。ループする。カットイン,カットアウト走
をする。スワープ走をする。パッキングアップ走をする。いろいろの走り方が,ラグビー では要求せられる。このような各種の走を行いながら,ゲームの事態に即応出来る走力を 作っていくことが必要である。次に走力と同時にストレングスを養うことも大切である。
スピートとスピードとのぶつつかり合いに打勝つからだ,特に頸部や内臓諸器官を囲う 筋や皮膚の強靱性は最も重要視しなければならない。頸部や内臓の損傷は致命的であり,
競技者の最大の不幸を招く。強靱性を無視して,唯興味本位やゲームが本旨だといった理 由でゲームのみに終始するラグビーを考えていると,とんだ不幸を招くことになる。それ なりにからだの強靱性を作っていくことを忘れてはならない。
方法的には,筋の肥大,皮膚組織の強化,内臓諸器官の強化等の積み重ねを図るべきで
ある。
c 完 成 期
鍛練期で獲得した全面的体力を基盤として,技術の融合を定着させるのがこの期の狙い である。ラグビーのあらゆる技術が,スピードに満ち,闘志満々として試合期を迎える体 勢を完了しなければならない。方法的には,コンタクトゲームやハンドリングアンドキツ キングゲームといったゲームを主体に,スピード,象トレングス,スタミナの強化を図
り,併せて練習試合を織込むように計画すべきである。
d 試 合 ;期
試合期には次の3つの事項について留意し,実行する必要がある。
① 試合のための体力的,技術的,精神的調整を計る必要がある。
② 試合をしながら試合についての技術や知識を高あ,同時に試合に対する慣れ や度胸や自信をつけることである。
③ これまでに獲得した体力を,シーズン中も低下させないように体力,技術の 調整を常に念頭に入れて練習すべべきである。
したがって,敏捷性,パワー,スピード,ストレングス,スタミナなどを含む練習内容 を多く組入れ,試合の場同様な競技者の動きに通じるような状態で,できるだけ動的な連
別表4 ラグビートレーニング主要課題配分表
\トレー
ング分野
トレーニ ング期
移 行;期
(2,月一3月)
(4月一5月)鍛練期
完 成 期
(6月一8月)
(9月一2月)試 合期
小学轍委)
体力,技術トレ ーニング 体力の全 面的発達
70%
50%
30%
20%
体力,技 術の融合
化
30%
50%
70%
80%
中 学 校 体力,技術トレ
ーニング
高校,大学
体力,技術トレ ーニング
トレーニング主要課題 体力,技術の融合化を企 図する体カトレーニング の課題
50% 50%
30%
20%
ユ0%
70%
80%
90%
30%
20%
体力の全面的発達基礎体力
i
の向上,リラクゼーション 70%体力,技術の融合化スピー ド,スタミナ,ストレングス と基礎,応用技術の融合化 80%
10%
10%
90%
90%
コンタクトプレーに要する 体力特にパワーの強化 戦術的プレーの完成当たり,
タックル等のパワーの完成,
作戦,意志的素質の完成 実践的知識と技術の完成
続プレー例えばF.W3, T.B3に依る3分間のアタックキングプレーを行うことも一策
である。
また,試合期が他の3つの期に比べて可なり長いので,今まで獲得した全面的な体力を 維持し,増強するためには,全身的な筋力トレーニングを週1回必ずとり入れることも考 えなければならないことである。
また,試合のときには,普段のようにゆっくりウォーミングできないことが多いので,
この時期にはできるだけ短時間で調子があがるようなウオーミングアップ法を考案し,そ れに慣れておくことも必要である。
また気候的変化の馴化についてもこのようなことが考えられるが方法については省略す る。以上を要約して,別表4を提起した。
③段階計画,週間計画,1日の練習計画
年間計画を細分し,1〜3ケ月又は4〜8週間ごとの段階計画,さらにこれを週に配分 した週間計画,1日の練習計画に細分して,計画を立案しなければならない。
a 段階計画
計画内容は,各位によって異なるが,一般には,一週聞を区切りとして2−3の段階に 分けて計画を立て,トレーニングの計画が実際にどのように行なわれ,どのような効果が
あがっているかを段階ごとに認確し,体力テストなどを実施して,トレーニングを分析,
反省し,次期段階のトレーニングの質と量を再編成しなければならない。
b 週間計画
段階計画は,さらに週間計画に細分される。週間計画では,この段階で達成されなけれ ばならない課題を細分し,それを各曜日のトレーニング内容に分けて組入れ,1週間で全 部を消化するようにしなければならない。
この内容は段階によって異なるが構成上大切なことは,1週間の中でのトレーニングの 質と量に変化をもたせることと,特に強化する必要のある要素については週3日,一般に 強化する要素については週2日,あまり重点においていない要素については週1日実施す るに止めておくように構成する。
具体例については別表5−10表を提起した。
別表5 全面的発達のトレーニング週間スケジュール
体力要素円1甲唄木i釧到司計
筋力(瞬発力,持久力)
×1◎
×△
×○
×3
ス ピ 一 ド ○
×◎
×○
× ×3
心 肺 系 持 久 性 ×
○
×△
×◎
×3
柔 軟 性○
×○
×◎
× ×3
練 習 量
中 強
強 弱強 強 休
時 商 (分)60 90
9・13・ ig・90
注 L ◎印は主として体力,技術との融合化を狙うもの2.○印は主として全面的身体つくりを狙うもの 3.△印はリラクゼーションを狙うもの
別表6 トレーニング量に変化をもたせたスケジュール
脚
フ力要素掬ほ水陸}釧到則計
筋力(瞬発力,持久力) × × × ×
○
× ×1
ス ピ 一 ド
×◎
×○
×◎
×3
心肺系持久性
○
× × × ×○
× 2柔 軟 性 ×
○
× ×○
× ×2
練 習 量弱 強
休弱 中 強
休 時 間 (分) 3090 0 30 60 90 0 注 1.
2.
3.
◎印は主として体力,技術の融合化を狙うもの
○印は主として全面的発達を狙うもの
×印は実施しない
別表7 移行期の内容に変化をもたせた全面的トレー二・ング
トレーニング内容膣隻される体列口火1水陸降到司計
ハンドリングゲーム 3〜4人での2分〜
3分のアタックキン
グ
3〜4人でのキッキ ングアンドアタック キング
モール及びラックの
ドライブ
柔 軟 体 操
練
習 量
持久力,身体調整 力,敏捷性,瞬発
力
心肺系持久力
柔軟性,瞬発力,
身体調整力 筋力,瞬発力 柔軟性
(50分〜80分)
○
×
○
×
×
中 60
×
○
×
○
○ 強 80
○
×
○
×
×
中 60
×
×
×
○
○ 弱 50
○
×
○
×
×
中 60
×
○
×
○
○
強 80
×
×
×
×
×
休 3
2
3
3
3
注1.○印は実施
×印はやらない
C l日の練習計画
ラグビーの1日の練習計画は,既に述べた年間計画,段階計画,週間計画に基き策定さ れる。ユ日の練習計画の中に組入れられる体力,技術の融合化を狙うトレーニング内容に ついても,このことは適用される。各期を通じて言えることは,トレーニング効果につい て考えれば,トレーニング内容の配列,休息のとり方がその効果に大きな影響を与えると いうことである。したがって,内容の配列,休息のとり方について検討しなければならな
い。
トレーニング内容の配列については,技術に直接かかわりのある体力要素を分析し,発 育,発達との関連を踏えてこれを配列する。
長崎大学教育学部教育科学研究報告 第23号
別表8 スピード中心のスケジュール
体 力 要 素
筋力(瞬発力,持久力)
ス ピ 一 ド
心肺系持久性
柔 軟 性 練 習 十 時 間 (分)
御1刈田1木1釧土i
×
○
×
○ 中 60
×
◎
×
×
強
90×
○
○
×
中 60
×
×
×
○ 弱 30
○
◎
×
×
強 90
×
○
×
×
中 60
日
×
×
×
×
休
計
ユ
5 1
2
注し◎印は主として体力,技術の融合化を狙うもの 2.○印は主として体力づくりを狙うもの 3.×印は実施しない
別表9 持久力(心肺系)中心のスケジュール
体力要素困 火水極除
土1日1計筋力(瞬発力,持久力) ×
○
× × ×○ × 2
ス ピ 一 ド
×○
× × 圏×○
× 2心 肺 系 持 久 性 ○ ×
◎
× ◎ × ×3
× × ×
○
× × ×練 習 量
中 強 強 中 強 強
休 時 間 (分) 6090
90 6090
900
注1.◎印は主として体力,技術の融合化を狙うもの2.○印は主として体力づくりを狙うもの 3.×印は実施しない
別表10 シーズン中の筋力,柔軟性中心のスケジュール
体力要素i則潮水1木降1土司計
筋力(瞬発力,持久力) ×
◎ 【
× × ◎ × × 2
ス ピ 一 ド
× × × × ××1× 0
心 肺 持 久 性 × × × × × ×t× ト
0
柔 軟 性 × × ×◎
××i× 1
練 習 量
休 強
休中 強
休 休 時 間 (分)0
900 60 90
0 0 圏注1.◎印は実施するもの 2.×印は実施しないもの
別表ll シーズン中の量に変化をもたせたスケジュール
体力要素i則刈劃利到土i日計
筋力(瞬発力,持久力) × ◎ × ×
◎
× 12
ス ピ 一 ド ◎
×◎
×◎
× ×3
心肺 系 持久性 × ×
◎
× × × ×1
柔 軟 性 × × ×◎
× × ×1
練 習 量中 中 強 中 強
休 休 時 間 (分)60 60
9060 90 0 0
注し◎印は実施するもの 2.×印は実施しないもの
技術即体力トレーニングではなくて,技術の学習の過程の中にそれに関係する体力をト レーニングしょうという考え方を持たねばならない。体力トレーニングと技術的トレーニ ングの方法的な一元化の試みを,企図するものである。
練習内容のとり上げ方については,各期に依り,また,チームの特色に依り,異なるこ とは当然である。しかし,次に述べるような基本的技術並応用技術については,常に習熟 させる必要がある。
① 準備運動(ウオーミングアップの仕方)
② パスシング(4人一6人) (各種)
パスシング動作は,大きく,速い動作で行なう。ダツシユ,ハーフダツシユとス ビードを適宜交替させながら反射的な動き,敏捷な動きなど,主として神経系のト レーニングを狙いとする。
初歩の者には疲労しないように適宜スタンデイングパス等を挿入しながら行う。
③コンタクトプレー
筋のパワー,ストレングスを狙う。但し,小,中1の段階では,コンタクトプレー に慣れるとと,中2以降ではこれにパワーを挿入し,モール及びラック形成の段階 では,パックカ,ドライブカ,の筋力関係を重視させるがよい。
④アタックキング,アン賎サポーティング ⑤ハンドリング,ゲーム
人数,広さ,は競技者の程度に応じ勘案する。このゲームは,攻撃,防禦の瞬間 的変化に即応する身体調整力,ハンドリングのタイミング,サポーティング,ラグ ビーセンス等さまざまな状況の変化に応じ,筋,神経の調整力め向上を図るに適し ている。
⑥コンタクトゲーム
ストレングス,筋,神経の熱応力のテストマッチである。
⑦セットスクラム(:F.W)
フオ ム
姿勢の定着,ストレングス,筋力,パワーを狙う。
⑧モール及びラック(F.W)
⑨ラインアウト(F.W)
長崎大学教育学部教育科学研究報告 第23号
⑩アタック,デフェンス(T.B)
⑪パスシング,アンド,キッキング
F.W3T.B3(S.Hを含む)状況に応じての攻撃を,パスとキックで行なう。
心肺機能の持久性,敏捷性,反応動作を狙って,3〜4分間持続して行なう。
⑫コンビネーションプレー
⑬ 上半身の筋力トレーニング
⑭ 頸回部強化トレーニング
⑮ 整理運動,脱力走,脱力運動,柔軟体操
⑯その他その期に特に必要と思われるプレーなどをとりあげる。
4.お わ り に
(註8)
本論文の脱稿を見る頃,ウエールズ戦は第三戦を終了した。第一戦ウエールズ32〜3早
(言主9) (註10)
大,近鉄,第二戦ウエールズ34〜7全日本B.第三戦ウエールズ56〜12全日本。
圧倒的成績を記録して,次の試合を控えていま彼等は日本の初秋を楽しんでいることだ ろう。第四戦は,きっともっといい記録を残すよう頑張ることだろう。
これまでわが方がトライをとったのは第二戦の全日本Bの文字通り唯一の貴重なもので あった。果して,第四戦で一つでもまたトライがとれるだろうか。これに比しウエールズ は,第三戦までの戦績はまさに,20年の開きを立証するに足る堂々たる試合振りを見せて
くれた。
日本チームにも,個々のプレーでは素晴らしいプレヤーがいたにもかかわらず,結果は 前記の通りに終った。「何故か」。
ラグビーは名プレーだけの展示会ではない。単発に終るプレーでは,例えそれがどんな に,見ごたえのあるプレーでも,トライへの緒ロにはならない。そのプレーがトライに連 結するか否かが,重要な条件になってくる。
既に触れた如く,トライに連結するプレーであるためには,いろいろの必要条件が整備 されていなければならない。(競技かとして(別表2)に示した)とりわけ,体力,技術が 勝敗を大きく左右する。
体力,技術をどのようにトレーニングするか。これからの日本チームにとってこの問題 は何十年かかるかも知れないが,是が非でも積み重ねを必要とする課題である。
ウエールズチームの体力,技術は,高度にトレーニングされた汗の結晶であり,体力,
技術が見事に融合されていた。パワーに例をとってみても,ステップ技術とこれを支える スピード,力,ストレングスが完全に一体化されていた。まさしく世界の最高をいくチー ムである。 . 彼等と互角に渡り合うたあには,少く共彼等を上回る体力,技術を必要とすることは自
明の理である。
体力,技術育成策として,体力,技術の融合を企図する体力トレニング計画化に当って 次のような諸点に特に留意する必要がある。
(1) トレーニング示標の中では,競技者の発育,発達の実態を踏まえて計画化されなけ ればならない。特に,少年ラグビー,ラグビースクールの育成に当って,発育,発達との 関連を把握し,体力,技術の融合を計るべきである。