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集団的スポーツの質的授業分析の試み 特にバレーボールの授業について

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(1)

特にバレーボールの授業について

松  永  淳  一*

(昭和57年10月31日受理)

A Study on the Analysis of Team Games  Based on the Qualitive Work Factor

Especially of the Volley Ball Games in the Course of Study

Jmichi MATsuNAGA

(Rece圭ved,October31,1982)

1 はじめに

 現行の中学校学習指導要領保健体育の目標1)では,健康の増進や体力の向上を図るととも に,生涯を通じて運動の実践による豊かで健康な生活を営む能力や態度を養うことが強調 されている。

 特に「生涯を通じての運動の実践」については,運動を単に行わせるだけでなく,その特 性にまで触れさせ,その運動を通して、楽しさや喜びを味わわせることにより,学習者が

自発的に運動を行い,健康生活に役立てることができる人間の育成を目指している。

 よって今後の教科体育では,指導計画や学習計画またはその過程で学習者が「どのよう に運動特性をとらえ,それに触れるか」,「特性に触れることにより,いかに楽しさや喜び を味わうか」が重要な課題となった。

 したがって,これからの授業研究では,指導活動や学習活動での特性への触れ方を把握 することが重要なポイントとなり,その記録方法の検討が必要となった。

 そこで本研究では,現行の量(時間)的W・F・C2〉を基に,質的視点で分析できるW・F・

Cの開発を目指し,今回はその第一歩として集団的スポーツのバレーボールにおけるゲー ム分析記録表を試作し,実践記録によりその妥当性を検討した。

II研究方法

本研究は表1のステップで行った。

ステップ1 各運動の特性が領域の指導活動や学習活動に影響し,活動要素の発現に特徴

*長崎大学教育学部保健体育科教室

(2)

66

長崎大学教育学部教科教育学研究報告 第6号

が発現すると考え,1979年10月S市立中学校6校の体育授業41時間,学習者123名,指導 者延41名を対象に現行W・F・Cによる量的記録を行った。

ステップ 1 現行W・F・Cにより,領域による特性をとらえ,質 的分析の必要性を検討する。

ステップ 2 集団的スポーツの特性をとらえ,学習段階中の特性 のとらえ方を検討する。

ステップ 3 集団的スポーツにおける質的分析の視点を定め,そ の記録方法を検討し表2を作成した。

ステップ 4W・F・Cの実証記録による集計および解釈を行う。

ステップ 5W・F・C作成の手順は次のステップによる。

      (1)      (2)     (3)

     W・F・C=二二⇒整理集計一〉解  釈   改 

(解釈不可能部分修正) 視牡 介・㈲に  ^よ 点る

表1 研究のステップ

50

20

10 min

/\

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     ニ \−N︑一 ヤ  ト 

らへ

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ヤち

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       し   /∠/八\誌

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房く\\\

   砺 ノ ・ \、

4, 、

  7\7

一一 一一 人的スポーツ

。噂麟韓 一 一 団的スポーツ

 +  格技

一一 一離 ンス

 ー▲一 体操 一=複合領域

 も\1べ緊

ヒニー錦

      因子    a     b    C    d     e    f

カテゴリー

   亀導入・発問・反省 軌説明・示範・指導 c.号令・指示・注意・刺激語 ¢観察(巡回)

   e。補助活動 f.準備・整理・連絡

         図1 領域による教師の活動要素別時間

(3)

50

20

10

m i算

領域は図1による

◎      ロ

、         /\

も       

、 /泌/\ /一図

…杢茅〉蓉織邊ミ毫

▲、..      !

  一一_/       ×

因子

カテゴリー ア。主運動・補助運動 イ.準備運動・整理運動・補強運動 ウ.指導を受ける・説明を   聞く・見学 工.待機・移動 オ.集合・整列・挨拶・出席点呼・まとめ カ.話し合い・記録・

  補助活動・質問・発表 キ.遊び・私語・空白

        図2 領域による生徒の活動要素別時間

 この結果は図1,図2のようであり,次のことが明らかとなった。

 1.運動領域と授業形態の関係で,体育クラスの参加態度に相違が見られ,学習者の活   動要素時間にも相違が見られる。

 2.運動領域により指導者と学習者の活動要素時間がパターン化される。

  このことから運動領域の特性が指導活動や学習活動に影響を与えていると考えられ,

各活動における運動特性への触れ方を記録するW・F・Cが必要であることがわかった。

  しかし,運動特性といっても各領域やスポーツで大きな相違があり,今回は特に集団  的スポーツについて研究した。

ステップ2 集団的スポーツの特性を技能と態度の特性に分類し,技能の特性は個人的技  能と集団的技能に分類し,個人的技能を集団的技能を構成する要素と考えた。

  またそのゲーム特性を,集団的技能を中心に技能を駆使し,集団対集団でゲームする  スポーツととらえ,態度については後の研究へ譲ることとした。

ステップ3 表2のように特性への触れ方に対する観察視点を定め,さらにその視点に  添った記録方法を検討し整理した。

  この表が本研究の基盤を成すもので後述の手順で実証して行くことが本研究の目的で  あり,この表から実験用記録紙を作成した。

(4)

68

長崎大学教育学部教科教育学研究報告 第6号

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噸       駆 輝快聴冊幻駈︑駆e聴中溜甑ゆb鵯想勢−寝K溜囹蘇  N照

(5)

ステップ4 表2に添って考案した記録紙および集計票の妥当性を実証するため1981年6  月,T・K中高等学校の高校3年バレーボール1時間,高校2年バスケットボール1時間  の授業を対象に,第1次実験記録を行った。

  その結果各スポーツ特性への触れ方には,そのスポーツに適合する専用の記録紙と集  計票が必要であることが明らかとなった。

  そこで,第1実験での課題解決へ向けて,第2次実験では集団的スポーツ中特にバレー  ボール単元に限定し,ゲーム経過の記録のために表3,表4のランニングスコアカード  を作成した。

 表3 ランニングスコアカード

12/1 高3−A  ゲーム用 ランニ・ングスコアカード

 表4 ランニングスコアカード

12/3  中2−B  ゲーム用 ランニングスコアカード

チーム A チーム D チーム 6 チーム 4

得点サーブ 1 2 3 45 6 得点 サーブ 12 3 4 5 6 得点サーブ 12 3 4 5 6 得占 サーブ 1 2 3 4 5 6

1 1

◎3 V

1 ◎2 03 V」

2 ◎3 0303 03 2 3 ◎B 3

◎P V

×3 2 V

03 03 3 ●2 V

×3 4 V

X3 5 4

◎3 5 O X3

4 ◎3 03 6

5 ◎B 03 7

6 V

7 O ×3 V

V 8 xp

6 ◎1 V

03 7 ◎P V

◎3 9

8

      9 − 0

濁 ランニングスコア記録の使用記号

◎一得点  ◎一得権

O一集団的技能による返球・サーブ成功

×一失点  V一失権

●一個人的技能による返球 技能の記号

P一パス  H一ホールディング

D一ドリブル  0.T一オーバータイムズ R一レシーブ   0.N一オーバーネット U.N一アンダーネット

T.N一タッチネット J.M一ジャッジミス 0.P一アウトオブポジション P.L一パッシングザセンターライン

9人制の場合◎,V,0.P,P.Lは使用しない。

9 ◎3 03

O 03 ●1 ◎置

V3

10

11 12

◎3

◎3

V

13

14

02 ×3

◎3

8 ◎3

◎3

03 ◎B

◎3

O V3

×3

◎3

V

×T 11

03 12 O ◎B

vp

15

9 0

(濁 ランニングスコア記録の使用記号  ◎一得点  ◎一得権

 O一集団的技能による返球・サーブ成功  ×一失点  V一失権

 ●一個人的技能による返球  技能の記号

 P一パス  H一ホールディング

D一ドリブル  0.T一オーバータイムズ  R一レシーブ  0.N一オーバーネット

U.N一アンダーネット T.N一タッチネット  J.M一ジャッジミス

0.P一アウトオブポジション  P.L一パッシングザセンターライン

※9人制の場合◎,V,0.P,P.Lは使用しない。

15 − 12

(6)

70

長崎大学教育学部教科教育学研究報告 第6号

 第2次実験は1981年11月〜12月,T・K中高等学校の高校3年の2グループ各4時間3  試合,中学2年2班各3時間の6人制バレーボールの授業をV.T.Rで録画し記録した。

ステップ5 本研究のW・F・C作成の手順を示すが,本研究ではステップ中の(2)〜(4)にっ  いて実験結果とその考察から記録紙と集計方法の妥当性を検討した。

m 結果と考察

 研究方法ステップ3より第2次実験の観察視点を明確にするには,まずバレーボールの 一般的特性を明らかにしなければならない。

 そこでバレーボールの基本的特性を「自チームヘ飛来したボールを仲間と協力して返球 するスポーツ」ととらえ,さらに「出来れば相手チームがボールを返球できないよう,強 力なあるいは相手の予想に反した返球により自チームの得点を重ねるスポーツである」と

とらえた。

 したがって,各々のチームはより有利なゲーム展開ができるよう,個人的技能を基盤と して集団的技能を協力して創り出す態度が必要となり,「集団的技能を駆使したラリーの継 続」がバレーボールの本質的特性であると考えた。

 さらに表3イー2一(2)の技能分析法を,バレーボールの授業で具体化するために記録に 必要な要素を検討した。

 即ち,より深い特性へ触れ,より深い楽しさや喜びを味わう授業とは,「より高度な技能 を駆使し,精神的にも高まりがある充実したゲームを経験させる授業である」と考え,そ の条件と技能との関係から表5の記録要素を検出した。

良いゲームの条件 記録要素

1.お互いのチームが力を発揮し,白熱した競い

      ○得失点の記録  合い(力と力のぶつかりあい)がある。

 a 得点,得権が多くミスが少ない(集団的技     ○得失権の記録   能が多い)。      ○返球の記録  b 連続した得失点が少ない。       ○技能別結果の記録 2.ラリーが継続し,しかも集団的技能を多く駆    Oラリーの記録(平均,

 使するh      度数,最大値等)

  良いチームの条件      ○ゲーム中の連続得失点        個所の記録

1.自チームの力による得点,得権が多く,ミス

      ○個人の参加度の記録  が少なくしかも集団的技能を多く駆使する。

2.全員がゲームヘ参加し,チームワークが良く,

 好不調の波が小さい。

        表5 ゲーム(チーム)の条件と記録要素

 この記録要素のデーターはゲーム過程を記録した表3,表4のランニングスコアカード であり,次にこのカードについて述べることにする。

 表3,表4はその凡例によりゲーム中に発現した技能を記録した例である。

(7)

 表3は比較的特性の発現が多かったセットであり,表4は特性の発現がほとんどなかっ たセットを例として挙げた。

 即ち,表3では集団的技能を多用し,ラリーも多く,特に波線に代表されるように集団 的技能を駆使したラリーが多く見られる。

 競い合い(得点や得権の奪い合い)も多く見られ,精神的にも充実し運動特性に触れる 楽しさを深く味わっているものと考えられる。

 一方表4では,サーブ中心のセットで6班では自チームヘ2回しかボールが飛来せず,

また4班では4回飛来したボールを3回ミス返球し,サーブ5回中4回は失権であり,特 性へ触れるには程遠い状態と推測される。

 以上よりこのカードからもゲームの概略をとらえることができるがこのままでは客観性 に乏しい。

 そこで表5の記録要素の視点から技能と結果の関連を明らかにすべく,表6の数量的集 計票を作成した。(この表は表3を集計したものである)

表6 ゲーム別・チーム別技能集計表 高3−A組 ゲーム名(A対D)

チーム A D

     結 果技 能 点  数 権  利 返球技能 点  数 権  利 返球技能△…套

得占 失占 得権 成立不成ム合計 得占 失占 オ日

成立不成立口 口

サ    ー    ブ 10 9 47 66 6 6 52 64

   ○  撃○ 3 段 12 9 18 4 16 59 3 4 11 1 12 31

2 段 1 1 1 3 1 1 2

1 段 2 1 1 4 8 1 1 1 3

   ○ブロツク

2 枚 1 1 2

1 枚 2 2 4 3 3 1 7

   ○ト   ス

コンビ 1 1

その他 1 1

ノぐ       ス 1 35 36 2 2 6 46 56

レシーブ(0.T) 1 1 1 1 2

NT・O N・UNH・D 1 1 1 1

P.L 1 1

見合い ・ J.MO P

合        計 27 13 19 16 105 0 180 18 6 17 14 114 0 169        15−12

       スコアー A班3313−1531D班        5−4

 さらに技能の種類とゲームヘの影響力をとらえるために表7のチーム別技能集計表を作 成した。(この表は表5Aチームを集計したものである)

力云ゴリ_ 口 ラリー口

得 占 失 点 得 権 失 権 返 球 ラリー 合 計 回 数 度数%

技能 フ『、夕数

n% n% n % n % n% n% n 0 35(34)

集団的技能 人的技能

13(48)

(15)

10(77)

(23)

19(100)

( ) 4(25)

(19)

17(16)

1(39)

49(52)

5(48)

63

1 1 47(80)

2 13(93)

技能小計 17 13 19 7 58 94 114 3 7(100)

サ  ー  ブ 10(37) 9(56) 47(45) 66 4 ( )

チーム合計 27 13 19 16 105 180 5 ( )

6 ( )

合 計 102( )

平 均 0.92

S.D 0,860

表7 チーム別技能集計表 高3−A組A班

(8)

72

長崎大学教育学部教科教育学研究報告 第6号

 表7の作成にあたっては,集団的技能を個人的技能を組み合せ成立した技能と 1っの技能を複数人数で協力して成立した技能と定義し,表6中○印をそれに該当させた。

 サーブについては①相手チームの影響を受けないでプレーできる②他の技能と比 較し得点や失権に,より直接的でゲーム内容を大きく左右する ③ ゲーム開始のプレー でラリーに含まない等の特性から別途集計することとした。

 さらに表6,表7を比率分析し,多目的な比較が可能なよう表8の公式を作成した。

 1〜3は勝敗・順位決定用,4〜10はゲーム概要分析用,11〜13は発現技能分析用であ

る。

用語について

ラリー……相手チームより飛来したボールを,再び相手チームヘ返球する。

ラリー数……得点+得権+返球で表わされる。

返  球……得点にも得権にもならない相手チームヘの返球。

サイドアウト数……得権+相手の失権で表わされる。

勝敗について

1勝率一饗:禦または{灘 2セット率一讐:響または臨1

3得失点率一叢:鞍または無

 (公式1,2,3は勝敗や順位の決定に利用し,日本バレーボール協会ルールによる。)

ゲームの概要

4全体の概要一佃 曼犠100:(失喬+失差100:(返球吉サーブ馨×100

      (ゲーム中の決定,ミス,返球の比)※プレー総数=ラリー数+失点+失権+サーブ総打数        旨佃点+技旨佃 )×100   (技能失点+技能失 )×100.返球×100

5 技能の概要一ラリ_数‡技能失点+技能失権:  同    左   ・ 同 左       (4を技能について比較)

6サーブ分析一」 =讐:蕎纐嬰

      (ゲーム中のサーブの働き)

7得点分析一讐響:響00二」警響

      (得点内容の分析)  ※全得点=得点+相手の失点

8得権分析一讐讐響:讐

      (得権内要の分析)  ※全得権二得権+相手の失権

9失権分析一製:響

      (失権内要の分析)

10 ラリー継続度=ラリー平均値,ラリー度数,ラリー最大値の比較 技能の発現について

11技能発現率響響×llO:讐

      (ゲームに駆使した技能の比較)  ※全技能=集団的技能+個人的技能     ム    侶占+!日 ×100 . (失点+失 )×100 .返球×100

12 集団的技能分析一 集専団的技能  ・ 同亀   左  ・ 同 左       (集団的技能による決定,ミス,返球の比)

13個人鰍能分析一轍灘lool(替+失)馨00=響×繋0

      (個人的技能による決定,ミス,返球の比)

 その他目的に応じ算出式を設ける。

        表8 バレーボールゲーム分析公式集

(9)

 9人制のゲームについては,得権・失権を除けばそのまま上記の表群で記録可能である。

 以下前述の記録方法および集計方法を使用し,「バレーボール単元の進行に伴うゲーム内 容の変容」について考察を加え,妥当性を検討したので報告する。

 なお有意差の検定にはκ2一検定とt一検定を用いた。

8

高校5年

2

  Oムロ Aチーム

  ●▲■ Bチーム

噌−

一/

蜜、

1   5   10 試合

ao

 6    4

高校3年

20

8

 6    些中学2年

20

O△口 6班

●▲■ 4班

声≦︑︑\

 1       4 試合

一〇一一●一 鴛点・得権 一ム・一一☆一一 失点0失権

・昏一一層一 返球

図3 ゲームの概要

    4

     口

14

.6

1   5   10 試合

      8

高校3年

2

ユ00 %

中学2年

2

▲r一一_一}、岬一一一一略一一▲

     △回

    戸   ./

r一 レメ

L4

06

 1       4 試合

一〇一一●一 築団的按能 一壱一馬★一 個人的技能 一+一+。 ラリー平均回数

       謁

中学2年

4

2

1   5   10 試合

▲\}

△・〆

,一△

\/

へ〆

図4 ラリーの概要

 1       4 試合 一〇一→一 技能による得点 一合…・去一 サーブによる得点

・心一+・ 相手チームの失点

図5 得失点の概要

 図3はゲーム中に発現した 技能の概要をグラフ化したも のである。

 高校3年に見られるように ゲーム経験の増加に伴って,

ミスが減少し得点・得権およ び返球の向上が見られる。

 また中学2年の2チームで は,得点・得権の向上が見ら れない。

 特に6班については全く向 上していない。

40

3 30

 20 A

10

︐︑艇〜

1   5   10 試 合     集団的技能     個人的技能

5

 4

3  3

B 2

 \  ノ

  \  ,/

   ¥Y!

論、

図6

    1   5   10 試 合

一 一   一一一述r一  轄十一 十   一rOr一一  願一昏一  びギ り    ヰ    

 技能の内容

(10)

74

長崎大学教育学部教科教育学研究報告 第6号

 4班は6班に比較し有意にミスが減少し,返球が増加している。

 しかし,この4班も高校3年と比較すると有意に高校3年のゲーム変容が大きいことが 明らかである。

 図5では勝敗に直結する得点,失点およびサーブを分析した。

 高校3年では第5試合〜第10試合にかけて両チームともに失点が急激に減少し,逆に自 チームの技能による得点が急激に増加する。

 中学2年では両チームともに80%前後がサーブによる得点であり,逆に技能を駆使した 得点は0を示し,バレーボールの特性への触れ方が乏しかったことを意味している。

 以上より初歩的技能レベルのゲームでは,サーブに勝敗を左右され,次に相手チームの ミスによる勝敗の決定等,技能特性が現われないゲームであることがわかる。

 これに比較し高校3年では,、図4のようにゲーム経験に比例してラリー数が増加し,図 3のゲームの変容から,バレーボールの技能特性への触れ方も漸増していると考えられ,

さらに第5試合〜第10試合へかけての変容は,高等学校におけるバレーボール単元の拡大 の必要性を,ひいては選択性の必要性をも意味していると考えられる。

 次に,発現した技能を集団的スポーツの中核である集団的技能と,その基礎となる個人 的技能に分類し,その効用を考察した。

 図4から中学2年がラリーに使用した技能は80%以上が個人的技能であり,今回の資料 ではゲーム経過に伴う集団的技能の増加も見られなかった。

 ラリー継続数でも勝率の良い4班が向上した程度で中学2年では特性へ触れる以前の段 階であり,授業経営に工夫が必要であることを示唆している。

 高校3年については,AチームとBチーム間にやや相違が見られる。

 即ち,勝率の高いAでは,ラリー回数に正比例的な進歩が見られる。

 特に第1試合と第10試合では5%の有意な伸びが見られ,集団的技能の使用率もゲーム 経験に比例して向上している。

 さらに図6から集団的技能の使用率の向上に伴って集団的技能による決定率も向上し,

集団的技能の質的向上も伴っていることを意味している。

 また相手チームの実力もゲーム経過に伴い向上していると考えられ,個人的技能による 決定力は低下し,返球が増加することから,飛来するボールも難球が多く,集団的技能を 成立させることが困難で,個人的技能で返球する回数が増加し,決定力が落ちるものと考

えられる。

 したがって高校3年Aでは比較的高度な技能を駆使し,精神的にも緊張度の高い,バレ!一 ボールの特性へ深く触れ,深い喜びを味わっていることが推測される。

 勝率の悪いBでは,図4よりラリー数の増加は見られるが,技能の使用率でAより個人 的技能をより多く使用し,ゲーム経験による進歩が見られない。

 また図6より集団的技能による決定率が低下し,個人的技能の決定率が増加している。

 しかしこの決定率もAと比較すると低く,個人的技能での返球が40%を越すことからも 明らかである。

 以上の技能分析から「単元の進行に伴うゲーム内容の変容」についてまとめると次のよ うに考えられる。

 ゲームの概要は,相手のミスによる他力中心ゲームから自チームの技能の駆使による自

(11)

力中心ゲームヘと変容する。

授業経過に伴うゲーム内容の変容

 1.他力(ミス)中心ゲームニニ⇒自力中心ゲーム

 2.サーブ中心ゲーム⇒個人的技能中心ゲーム⇒集団的技能中心ゲーム

     妙     /  u

低レベルではゲーム方法 集団的技能を多用するが 集団的技能の使用率

の検討必要あり ミスが多く,個人的技能 高二=〉得点(権)・勝率 高 多用に敗ける段階あり, 低二⇒   〃   低

ルールの工夫が必要 の傾向あり

第1段階 第2段階 第3段階

 即ち第1段階のゲームは中学2年に見られたサーブ依存のゲームであり,正規のルール によるゲームではラリーの継続や集団的技能の発現等のバレーボールの特性へのかかわり が危ぶまれる段階で,施設・用具やルールの工夫を最も必要とする段階である。

 第2段階はラリーが継続し始めるが,個人個人の技能に頼る,または高校3年Bのよう に集団的技能の必要性は理解してるが未完成で,勝つためには個人的技能に逆戻りする段 階である。

 この段階から進歩させるには,集団的技能のミスは讐めず,逆にその使用を価値づける ようなルールの工夫が必要な段階である。

 第3段階は高校3年Aのように集団的技能を互いに多用し,その使用率や質が勝敗を左 右する段階である。

 即ち,バレーボールのゲーム特性が最高に発揮される段階である。

今回の資料による技能分析では,上述の3段階のゲームをとらえることができた。

また各段階に応じて教師の工夫も施されなければならないことも明らかとなった。

IV ま と め

 本研究で作成した表3〜表8の技能分析の方法により,上述の技能およびゲーム分析が 可能であった。

 その他視点を変えた技能分析も可能と考えられ,今回実験の質的W・F・Cの妥当性は証 明できたと考えられる。

 さらに簡素化した記入法により現場で手軽に利用できるよう改良したい。

 今後は表2から課題が山積しているが,以下の項目を挙げておく。

 1.練習活動の記録方法の検討

 2.学習活動や指導活動中の話し合いの記録方法の検討  3.ゲームや練習中の感動表現の記録方法の検討

 4.ゲーム中のプレーへ個人がいかに参加しているかの記録方法の検討

なおこの研究は昭和56年度文部省内地研究員派遣時の研究の集約であり,筑波大学宇土

(12)

76

長崎大学教育学部教科教育学研究報告 第6号

教授,八代助教授,畑準研究員に多大なご助力をいただき深謝する。この一部は第32回,

第33回日本体育学会で発表した。

参 考 文 献

1.文部省「中学校指導書保健体育編」 東山書房,1980.

2.東京教育大学体育管理学研究室「Work Factor Card(授業分析票)」1975.より試作 3.宇土正彦,松田岩男,「体育科教育法」 大修館,1944.

4.宇土正彦,「体育管理学」 大修館,1936.

5.江尻容,宇土正彦,「学校体育の経営管理」 光生館.1936.

6.松田岩男,宇土正彦,「現代学校体育大事典」 大修館 1981.

7.井上一男,「学校体育制度史増補版」 大修館 1942.

8.宇土正彦,「体育学習評価ハンドブック」 大修館 1981,

9.細江文利,青木真,「研究資料の取り方・生かし方」 学校体育,日本体育社,voL34−7,P45 10.作野史朗,「体育授業の分析的研究の進め方」 学校体育,日本体育社,VoL34−7,P36

11.永田靖章,「運動の特性による指導と学習の活動パターンに関する研究」 東海保健体育科学,1980.

  VoL2 Pp19〜28

12.大鋸順,宇土正彦,八代勉,「体育学習における活動要素と運動量について」 電気通信大学学報,

  VoL28−1,Ppl59〜167

13.宇土正彦,「体育授業分析の視点」 体育科教育,大修館,VoL26−5,P6 14.宇土正彦,「体育授業を分析する視点と技法」 学校体育,日本体育社,VoL2−12 15.宇土正彦,「学校体育経営ハンドブック」 大修館,1982.

16.小林篤,「体育の授業研究」 大修館,1979.

17.高田典衛,「体育授業入門」 大修館,1977.

18.小鹿野友平,栃堀申二,「楽しくできるバレーボールの指導」 日本体育社,1978.

19.日本バレーボール協会,「6人制ルールブック」 日本バレーボール協会,1982.

20.松田岩男,宇土正彦,「体育実技指導法ハンドブック」 大修館,1980.

21.竹之下休蔵,「プレイ・スポーツ・体育論」 大修館,1974.

22.学校体育研究同志会,「体育の授業記録」 べ一スボールマガジン社,1977.

参照

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