情報の学び方
山本昌志
∗2007 年 10 月 12 日
概 要
授業のガ イダンスを行う.この講義で学ぶ内容を簡単に説明する.
1 本日の学習内容
本日は,教科書 [1] の第 1 章「情報の学び方」について学習する.そこでは,情報とは何か? 情報はなぜ 重要なのか?—を学ぶ.あわせて,この講義の概要を説明する.
情報の重要性
計算の機構
その他,この講義の概要
2 情報の重要性
情報伝達の重要性について,二〜三の話をする.ここで説明する情報は,エンジニアーが扱う情報とは異 なるが,その重要性は分かるだろう.エンジニアーは情報の内容そのものよりも,それを扱う手段や方法を 問題とする場合が多い.一般の人は,情報がもつ内容の方が重要である.
2.1 ワーテルローの戦いとロスチャイルド 家
これは真実でないとも言われることもあるが,情報伝達の重要性がよくわかる逸話なので,講義で話して おく.教養として,この程度の話は知っておいてもよい内容である.
時は 1815 年のことである.その 2 月,ナポレオンはエルバ島から脱出し ,再び皇帝になった.6 月,ナ ポレオンは 12 万の兵を率いて連合軍に戦いを挑むべくベルギーへ向かった.7 万の兵はナポレオンが率い てブリュッセルを目指した.その途中,ワーテルローで 6 万 8,000 のウェリントン公率いるイギリス・オラ ンダ連合軍と対峙した.激戦の後,ナポレオンは敗退し ,いわゆる百日天下が終わった.
この戦いには多くの人が注視していた.ロンドンの投資家もそのひとつである.イギリスが勝てば,国債 があがりボロもうけをするが,負ければ国債は紙くず同然となる.従って,イギリスが勝てば国債は「買
∗独立行政法人 秋田工業高等専門学校 電気情報工学科
い」だし,負ければ「売り」である.問題は,誰よりも早くその「売り」と「買い」を決めなくてはならい.
遅ければ,一文無しになってしまう可能性がある.
この相場を勝つためには,誰よりも早く,このワーテルローの戦いの結果を手に入れる必要がある.ロン ドンでもっとも迅速な情報網を持っていたのは,ロスチャイルド 家三男ネイサンである.多くの投資家は,
ネイサンの動向を注目した.ネイサンは「売り」を出した.それを見た他の投資家は,ナポレオンが勝った と思い,一斉に「売り」にはしり,国債は暴落した.それを見たネイサンは,一気に「買い」にはしり,た だ同然で大量の国債を手に入れた.翌日,ナポレオンの敗北が報じられると国債は一気に上昇し,ネイサン は巨万の富を得たのである.
この勝負は,正確な情報をいち早く得たネイサン・ロスチャイルド の一人勝ちであった.ビジネスの世界 では,正確な情報を誰よりも早く手に入れることが重要である.
当時,ロスチャイルド 家はヨーロッパ全体に情報網を持っていた.通信手段は,人 (馬),伝書鳩,高速 船などである.また,ヨーロッパの主要都市,フランクフルト,ウィーン,ナポリ,パリ,ロンドンにロス チャイルド 家の兄弟が散らばり,情報を交換していた.
2.2 私の体験
今から,10 年以上前の話である.当時,私は民間企業に勤めており,オフィスのある東京と自宅の船橋
市 (千葉県) を電車で往復していた.ある日の帰りの電車で,隣に座った人がなにやら英文らしきものを読
んでいたので,それをのぞいて見た.アルファベットが書かれた紙の余白に, 「○○○○」と商社名が書か れていた.さすが,商社の人は英文を普通に使ってビジネスをする—と関心をしていたが,何かおかしい.
英文ではなく,ローマ字だったのである.
そのローマ字を盗み見すると,トウモロコシだったか小麦だったかは忘れたが,それの作況の報告書で あった.現地の駐在員が日本に,作物の収穫量の見積もりを送っていたのである.日本では,その報告書を 見て,作物の買い付けを行う.最終的な収穫量が分かる前に,買い付けを終えて,有利にビジネスを進める 必要があるため,その報告書は大事な情報となる.
私が大変驚いたのは,その報告書の内容である.分析が非常に細かく,農場毎の作況と収穫量の予想が書 かれていた.農場毎に作物のでき具合を調べていたのである.地方毎ではなく農場毎に調べていたのには 心底びっくりした.商社の情報網のすごさを初めて垣間見た.これを見た瞬間,素人の先物取引では勝負に ならないと,確信した.
2.3 諸君は情報を得るために,どれだけ費用を使っているだろうか?
たとえば,費用をかけて,以下のようにして情報を得ている.
新聞,TV,ラジオなどのマスメデ ィア
書籍,雑誌
インターネット (web, 電子メール他)
電話
学校の授業
3 情報の性質ととらえ方
教科書に沿って説明.教科書を読めば分かる内容である.
4 情報の多面性
教科書に沿って説明.教科書を読めば分かる内容である.
5 情報活動の諸要素
教科書に沿って説明.教科書を読めば分かる内容である.
6 計算の機構
6.1 コンピューターの発明の歴史の概観
6.1.1
発明以前コンピューターが発明される以前,情報処理は手作業で行われるtことが多かった.良くて,専用の機械
が使われる程度であった.ここで,コンピュータが発明される前の時代,どのような機械があったか眺める
のも良いだろう.ここでは,コンピューターの発明につながる大事なものについて,紹介する.
あまり,コンピューターの発明に寄与しないが,そろばんとか機械式の計算機があった.そろばんは,か なり古くから使われていたようで,現存する最古のものは紀元前 300 年くらいのものらしい.このことか らも人類が活動する上で,計算 (情報処理のひとつ) は重要な行為であることが分かる.
コンピューターの発明に寄与したもので最初のものは,1881 年にジョゼフ・マリー・ジャカールにより 発明されたジャカード 織機 (Jacquard loom)
1と言われている.これは自動織機で,絵柄のパターンはパン チカード に書かれている.パンチカード に書かれたとおりに機械が縦糸と横糸を織る機械で,パンチカー ド のパターンを変えことにより図柄を変えることができる.丁度,パンチカードがプログラムの役割を果
たすのである.
ジャカード 織機はパンチカード に従い自動的に図柄を織る機械であるが,これに目をつけ,チャールズ バベッジ (Charles Babbage:1791–1871) は自動的に計算する機械を作ろうとした.バベッジが作ろうとした 計算機は,階差機関 (difference engine)
2と呼ばれるもので,自動的に多項式の値を計算し ,印刷する機械 を目指した.残念ながら,当時の技術水準ではそれを作ることはできなかったが,コンピューターにつなが るアイデ ィアがあったことは確かであろう.
次に登場するものはハーマン ホレリス (Herman Hollerith:1860–1929) の発明した統計機械 (tabulating machine)
3で,1890 年の米国の国勢調査に使われた.この機械は穿孔機
4により空けられたパンチカード の 穴が国税調査の情報を表す.その穴を電気的に検出し,データを集計する仕組みであった.バベッジの階差 機械とは異なり,この機械は大成功を収め,後の IBM 社につながる.
6.1.2
発明ホレリスの統計機械は,情報の処理はできるがコンピュータにはほど 遠い.特定の処理しかできず,プロ グラムにより様々な処理ができるコンピュータとは大きく異なる.
プログラムにより広範囲の計算ができる電子計算機は,ENIAC(Electronic Numerical Integrator And
Computer)
5が最初である.それまでにも,プログラムを使ったリレー式の計算機はあったが,電子計算機
は ENIAC が最初である.リレー式の計算機に比べ圧倒的な処理速度があった. ENIAC を見たノイマンは,
「これで世界で二番目に計算が速いヤツ決まったな」と言ったとか.一番目はノイマンあるいは ENIAC?
ENIAC はプログラムを変えることで,様々な計算が出来たことが画期的であった.大砲の弾道の軌道計
算もおこなったし,70 時間かけて円周率を 2037 桁まで求めた.ただ,ENIAC には致命的な欠点があった.
プログラムは配線により行っていたのである.プログラムを変更するためには,いちいち電線の接続を変え なくてはならない.
次の EDVAC(Electronic Discrete Variable Automatic Computer)
6というコンピューターの開発では,プ ログラムを配線ではなく,メモリーの中に入れることが議論された.こうすることにより,プログラムの変 更が容易でかつ高速で計算するコンピューターが可能となる.このコンピューターを実現するためのメモ リーの開発は大変だった.
1http://en.wikipedia.org/wiki/Jacquard loom
2http://en.wikipedia.org/wiki/Difference engine
3http://www.kasuga-jhs.menet.ed.jp/kyouka/computer/manual/history/history4.htm
4http://www.geocities.jp/kyo oomiya/hollerith.html
5http://en.wikipedia.org/wiki/ENIAC
6http://en.wikipedia.org/wiki/EDVAC
この EDVAC が現在のコンピューターの原型と言ってもよいだろう.この後は,CPU のスピード アップ とメモリーの大容量化に向かって,突き進むことになる.
余談ではあるが, ENIAC の開発で真空管の寿命が問題となった.真空管の寿命は大体 2000 時間で, ENIAC には 17,468 本の真空管が使われていた.平均的に,ENIAC は
2000 時間
17468 = 0.11 時間 (1)
に 1 回故障することになる
7.6 分に 1 回,故障することになる.円周率 2037 桁の計算に 37 時間も要する ことからすると,6 分ではほとんど 何も計算できない.エンジニアは猛烈な努力を行い,故障する真空管を 2〜3 本/週に抑えたようである.
6.2 2 進数モデル
6.2.1 2
進数を使う理由コンピューターが扱えるのは,数値だけである.世の中の様々な情報を数値化して,コンピューターは計 算により,処理を行う.たとえば,音楽が録音された CD が典型的な例である.空気振動である音をマイク により電気信号に変え AD 変換器を使い,音の情報を数値化し,CD-ROM に記録している.これから音を 取り出すときには,DA 変換器を通して,電気信号にして,スピーカーを使って空気の振動に変えている.
数値化された音の情報は,コンピューターにより,如何様にも加工できる.
コンピューターで数値を扱う場合,2 進数がもっとも適している.ノイズに強いとかブール代数が使える とかがその理由である.また,2 進数の場合,コンピューターを構成する素子が単純になるという利点も ある.
ENIAC は 10 進数のコンピューターであったが,発明者のエッカートとモークリーは 2 進数の方が有利
であると気がついていたようである.そのため,彼らの 2 号機となる EDVAC では 2 進数を採用した.
6.2.2
ブール代数(
復習)
ブール代数は,つぎの特徴がある.
2 項演算子 +, · と単項演算子¯が定義されている.それぞれ加法と乗法,および補元の演算子となって いる.
使われる変数は,0 と 1 のみである.
0 と 1 だけからなる代数系であり,これはコンピューター内部で行われている演算そのものである.演算子 もコンピューター内部の回路と一致している.
ブール代数の公理は次のとおりである.
7この辺の詳しい話は,http://www.akita-nct.jp/yamamoto/lecture/2003/5M Exp/lecture 5M Exp/transistor/node5.html
公理