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雑誌名 静岡大学大学院電子科学研究科研究報告

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Academic year: 2021

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有機金属気相成長法によるAlCaAs/GaAs極薄膜ヘテ ロ構造の作製と評価

著者 河合 弘治

雑誌名 静岡大学大学院電子科学研究科研究報告

巻 14

ページ 145‑149

発行年 1993‑03‑25

出版者 静岡大学大学院電子科学研究科

URL http://hdl.handle.net/10297/1725

(2)

氏名。

(本

籍 )  河    合        (神 奈川県 )

学 位 の 種 類 工 学 博 士 学 位 記 番 号    工博乙第   35  

学位授与の日付   平 成 3年 6月 17日 学位授与の要件    学位規則第 4条 2項 該当

学位論文題目    有機金属気相成長法による AlCaAs/GaAs極 薄膜ヘテロ構造の 作製 と評価

論文審査委員   (委 員長 )

教 授   助 ′ │1徳 三

教 授 小 林 純 一   教 授 稲 垣 訓 宏 教 授 畑 中 義 式   教 授 福 家 俊 郎

論 文 内 容 の 要 旨

本研究は原子 レベルで成長制御される AlGaAs系 化合物半導体の MOCVD(有 機金属気相成長 )

技術開発に関するものである。半導体 レーザはその活性層を量子丼戸とすることで高性能化

(低

しき い値 ,高 出力 ,単 一モー ド )が 可能となる。 GaAs FETの 高性能化には HEMT構 造が提案され

,

bipolar transistorの

高性能化には HBT'が 研究されている。又 ,極 薄膜ヘテロ構造による量子化デ バイスが種々提案されている。これらの素子では AlGaAs/GaAsヘ テロ界面を原子 レベルで制御す

ることが必要となる。

AlGaAs/GaAs MOCVD技 術は一部実用 レベルに達 してはいるものの上記のような原子 レベルで 構造制御する技術はこれまで開発されていなかった。このような状況に鑑みて ,本 研究では次の三つ の目的を達成するために行われた。

1.従 来 MOCVDで は疑問視されていた ,原 子 レベルの組成制御が可能な MOCVD装 置を開発す ること

,

2.そ の装置によって AlGaAs/GaAs極 薄膜を作製 し ,そ のヘテロ構造を解明すること

,

3.そ のようなヘテロ接合作製技術を光デバイスや電子デバイスに適用 し ,MOCVDの 有用性を 実証すること。

以下に二つの項目についての要旨を述べる。

〔 原子レベル組成制御 MOCVD技 術〕

‑145‑

(3)

1原子層の成長制御を可能とするためには , 1原 子層の成長時間よりも ,気 相中のガスの滞留時間 が進かに短いことが必要条件である。そのため本研究では対流 ,渦 流 ,淀 み層をなくした独自の反応 菅を設計試作 した。一方 ,配 管に於て従来見過 ごされてきた点はバルプのスイッチング時の圧力変動 であり ,こ れが原料 ラインでの push―

pull動

作を引き起 こし ,原 子 レベルの極薄膜形成を阻害 して き た。本装置では

,

18 RUN/VENTの 差圧を 0。 lTorr以 下に自動制御 した 6

2.RUNラ インの総流量をスイッチング時に一定 とするカウンタラインを各チャネルに設置 した。

,

3.コ ンピュータによる層構造入力の簡易化および自動運転を実現 した。

この装置の基本性能として 2"基 板上で AlGaAsの 膜厚均一性 1%を 得た。 GaAsの 結晶品質 は報 告されている トップデータと同一 レベルであることを確認 した。

〔 AIGaAs/CaAs極 薄多層膜の作製と解析評価〕

1.透 過電子顕微鏡 (TEM)に よる超格子断面の解析

(AIAs)17‑(GaAs)Hお よび (AIAs)5‑(GaAs)2の 原子層超格子の TEM測 定に於て ,明 瞭な AlAs/

GaAsコ ントラス トをもった格子像が得 られ ,そ のヘテロ界面は原子 レベルで組成遷移 していること が示された。また ,後 者の超格子では明瞭な暗視野ス トライプが観察されるとともに超格子雨 〕ヾター ンは 7原 子層周期である事を示 していた。成長温度は

750℃

であり ,  これは MBE成 長では 600℃ 以下 でなければ形成できないことを参照すると何故・ 高温で原子層超格子が壊れないのかと云う新たな問 題を生み出した。

2.AlGaAs/GaAs量 子丼戸の作製と P馴 定による解析

井戸巾として 3nm, 4, 7お よび 10■ mの AlGaAs/GaAs単 一量子丼戸 (SQW)を 形成 し最低準 位電子―正孔間の発光スペクトルを解析 した。各々の SQWの ピークエネルギは Dingle則 に基づ く 計算値と一致 した。スペクトル半値中の井戸巾依存性は従来 MBEに よる報告値よ り小 さかった。 こ の結果は MOCVDの ヘテロ界面のポテンシャルステップの横方向広がりがエキシトン半径よりもか なリイヽさいとすることで説明された。

3,次 に ,共 鳴二重量子丼戸 (AlGaAs/GaAs(3nm)/AlGaAs(anm)/GaAs(3nm)/

AlGaAs;α =1.2,1.6,2。 0,4.0)を 作製 し ,間 に置かれた AlGaAs障 壁の構造を解析 した。

低温に於ける発光は単一 ピークが得 られ ,  この発光は理論計算による結合性電子一結合性言正孔‐ 間の 遷移 と二致 した。障壁の組成不均―を示す新たな長波長バンド 1現 られず ,従 来云われてきた MOCVD

の疑念を払拭 した。測定温度の上昇に伴い 3つ のショルダが ピニクの高エネルギ側に出現 した。これ

らは計算による ,結 合性電子―結合性軽正孔 ,反 結合性電子―反結合性重正孔および―反結合性軽正

孔間の遷移と一致 した。また ,軽 い正孔に対する E― k分 散関係を明 らかにした。

(4)

ドを作製 した。 AL.4GaQ6As障 壁 は77Kで 0。 4Vの 耐圧を示 し ,ま A10′ Gれ3As障壁では室温にて も

2

b耐 圧を示 した。理論解析の結果これ らの I一 V特 性 は thermionicemission電 流 と トンネル電流 とによって定量的に記述できる事が示された。 AIGaAs/GaAs間 の 4aと して 0.654島 が得 られた。

〔 極薄膜 MOCVDの 光電子デバイスヘの応用〕

1.活 性層に AlGaAsを 用いた可視光量子丼戸 レーザを作製 した。発振 しきい値 は低下 し ,  自然 放出光成分が減少 した。更に単一モー ド発振 し ,明 瞭な量子サイズ効果を示 した b

2.従 来型 HBTと 高速性に優れるコレクタアップ型 HBTと を試作 した。

10"cn‑3の

ベース濃度 と エ ミッタ組成傾斜により MBE tt HBTと 同等の性能が得 られた。 しきい値電圧の分散 σ ỳ力 は0.4m

吃 高均―であった。

3.Npn― 及び Pnp・ GalnP/GaAsHBT,更 に InP/GalnAS HBTを 試作 し ,増 幅率 400以 上が得 られた。従来不明であった GalttP/GaAsの バ ンド接続を明 らかにした。

以上により原子層 レベルで成長制御されるⅢ一 V族 半導体 MOCVD技 術を確立 し ,MOCVDが 量 子効果ヘテロ構造光電子素子の実現に重要な技術であることを実証 した。

論 文 審 査 結 果 の 要 旨

近年 ,GaAsを 中心 とするⅢ一 V族 化合物半導体を原子的尺度で多層構造にした超格子や量子効果 デバイスが出現するに及んで ,こ れ らデバイスを工業的な規模で生産可能な極薄膜結晶の成長技術の 開発が緊急課題 となっている。 MOCVD(有 機金属気相成長 )技 術は原子的尺度の構造制御性の面で は ,先 行技術である MBE(分 子線エピタキシー )法 に較べて未開拓であったが ,一 方 MBE法 の ご とく超高真空を必要 とせず常圧で成長が可能であり ,ま た開管系であるために原料の供給および基板 の出入れが簡単にできるなどの特長をもつ。さらに実験的には成長層の表面欠陥が皆無に近いなどが 報告されており ,原 子的尺度での成長が可能となれば ,工 業的には本技術は MBE法 よりも利点が多 いと考えられる。本論文はこのような背景のもとでおこなった原子的尺度の制御を可能とする MOCVD

技術の開発 と応用に関する研究をまとめたものである。       

本論文は 7章 か らなる。第 1章 は序論で ,本 研究の背景と目的 ,お よび本論文の構成について述べ ている。

第 2章 では ,AlGaAstt MOCVD法 の原理について説明 した後に ,本 研究で開発 した原子層 レベ ルの極薄多層膜を成長可能な MOCVD装 置の構築の思想 と ,そ の装置を用いて成長 した結果 につ い て述べている。 1原子層 レバルで成長の制御をおこなうには , 1原 子層の成長時間に較べて反応管内 での供給ガスの滞留時間が進かに短 くできること ,お ょび供給ガスが基板表面に対 して層流となるこ とが必要条件である。そのため ,層 流が維持でき ,か つデッドスペースをできる限 り小さくした独自 の反応管を考案 した ,一 方反応ガスの供給 ラインとして RUN/VENT方 式を採用 し ,か つカウンタ

‑147‑

(5)

ラインを各チャネルに設置 して ,原 料ガスのオン・ オフ切換時に差圧が生 じないよう厳密に制御した。

さらに ,入 力の容易な成長プログラムを開発 し ,コ ンピュータ制御方式を用いて任意に層構造を成長 し得るようにした。その結果原子層 レベルの成長ができるようになり, 2イ ンチ基板上への AlGaAs 層の成長で ,膜 厚および組成の面内分布が 2%以 内と良好な結果を得た。また組成分布の制御性につ いては ,10数 nmの 極薄膜 AlGaAs層 内で AlAsの 組成で 0か ら100%ま で組成勾配 をつけることが できた。

第 3章 では MOCVD法 で成長 した単層の AlGaAs薄 膜結晶の評価について述べている。まず不純 物無添加で成長 した GaAsお よび AlGaAsの 残留不純物に関 して , 4.2Kに おける PL(フ ォ トル ミ

ネセンス )お よび導電型 とキャリア濃度との V/Ⅲ 比 (〔

AsH3〕

と 〔 TMAttTMG〕 との供給比 )に

対する依存性の測定から評価 した。その結果 ,PL測 定の評価から成長 した GaAsお よび AlGaAsの 品質は従来の報告の最高水準にあることがわかった。そ して検討の結果原料の純度が成長結晶の品質 を決める因子であることが示唆された。また AlGaAs中 への炭素が不純物 として取 り込まれる量が Al濃 度の 3乗 に比例する関係が見出された。 GaAs,AlGaAsへ の

Siお

よび Seの n型 不純物の添加 に対 しては ,Siと Seの 添加の挙動は際立 った違いを示 した。この違いは

Siは

Ⅲ族サイ トを― 占め

Siの

再蒸発がないとし ,一 方 Seは v族 サイ トを占めかつ Seの再蒸発があるとした反応速度論的観点か ら 定性的に説明することができた。

第 4章 はAlGttAs成 長層中におけるその場観察の手法について述べている。本研究で開発 した方 法はレーザ光を基板に垂直にあて ,基 板 と成長層界面ならびに成長層表面それぞれからの反射光の干 渉をモニタする方法を用いている。この方法により膜厚および AlGaAsの 組成を数 nm膜 厚まで決定 することができた。そして本方法によってこれ らのパ ラメータを実時間で制御できることがわかった。

さらに ,本 方法により 600〜

800℃

における AlGaAsの 屈折率 と禁制帯幅Egを求めることができた。

第 5章 は AlGaAs/GaAsヘ テロ接合の形成と評価である。 3nm級 の AlAs/GaAs超 格子を製作 し ,ス パッタリング AES(オ ージェ電子分光法 )で 評価をおこなった結果 ,ヘ テロ界面の組成遷移 層として1.9nmを得た。この値はこの測定条件では理論的空間分解能とほぼ等しいものであり ,従 っ て1,9nmは 真の遷移層の厚みではなく ,実 際にはもっと小さな値であると推測できる。つぎに透過電 子顕微鏡を用いて (AlAs)17 (GaAs).お よび (AlAs)5‑(GaAs)2原 子層超格子を観察 した結果 ,明

瞭な格子像が得られ ,そ のヘテロ界面が原子 レベルで組成遷移 していることが示された。さらに ,井 戸幅が 3,4,7お よび10nmの AlGaAs/GaAs単 一量子丼戸 (SQW)を 形成して発光スペクトルを 解析 した結果 ,そ れぞれの発光 ピークエネルギが Dingle則 に基づく計算値と一致 し ,良 好な量子丼 戸が形成できたことがわかった。同様に単一量子丼戸構造および共鳴二重量子丼戸の PL測 定による 評価から AlGaAs/GaAsヘ テロ界面のバンドオフセット ,ヘ テロ界面の構造 ,軽 い正孔の有効質量 等の重要な知見を得た。また単一量子障壁を作製 し,  トンネル電子伝導を測定 した。

第 6章 は本研究で開発した MOCVD技 術のヘテロ接合デバイスヘの応用について述べている。結 晶成長技術の最良の評価法はデバイス製作に適用 して ,所 期のデバイス特性が得られるか否かである。

本研究で開発された MOCVb技 術を用いて ,量 子丼戸 レーザ ,HBTお よび HEMTを 試作 して良好

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な結果が得 られた。

第 7章 は結論であり ,本 研究の成果を総括するとともに今後の展望について述べている。

以上を要約すると ,本 研究によって ,原 子的尺度で成長を制御で きる m=V族 化合物の MOCVD

技術が確立 し ,工 業的に量子効果ヘテロ構造光電子素子が生産できるようになったことは画期的な成 果である。審査の結果 ,本 論文は工学博士に相当する内容があるものと認定する。

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参照

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