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陥穽漁具 の機能変化 に関する研 究 山 口 恭 弘

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(1)

山 口  恭 弘

Study On Function Changes in Trap Gear during Operation

Yasuhiro YAMAGUCHI

Trap gear such as set nets and pots are usually operated to fix on the sea bottom for several weeks. In order to be clear function changes in trap gear frameworks of this thesis were consisted of the following three steps by fishing gear constructions. 1) The netting twines consisted of the fundamental part of a fishing gear may be changed the breaking strength and elongation. 2) The nettings consisted of the minimum unit of function of capture. 3) Pot fishing gears are considered to the simplest model of an actual fishing gear. On the other hand, it is important for establishing and carrying out of environment-friendly to improve the fishing technology. In fact, trap gear are well-known as never-overfishing gear. It has never studied to be clear the function changes in trap gear during operations. In the present study, the function changes in trap gear were studied with using material engineering and hydrodynamical methods.

The results obtaind can be summarized as follows:

1. The breaking strength and elongation of netting twines after soaked in the sea more than three years were measured. Nylon and polyethylene netting twines having thickness of 220-1980 denier were used. The breaking strength and elongation were sharply decreased for the first 1 year after soaked in the sea, and became a constant during 2-3 years. The retained breaking strength and elongation after 3 years of all test netting twines were about 70% and 40-60%, respectivly.

2. An encrusted condition of marine foulings on nettings for set nets which consider influence to measure a drag on the fouled plane netting by marine foulings were measured. The test netings were soaked around a set net fishing ground during the periods from 15 to 60 days and some water depthes (1.5 to 15m). The test netting consisted of polyester multi-filaments (0.85mm in diameter and 17mm in bar length), which is commonly used for the set net fishing gear. The main marine foulings are fine attaching materials so-called "Nuta", Amphipoda, a kind of hydrozoans Tubulalia mesembryanthemum and a kind of moss animals Bugula neritina. The drag per 1m2 for each test net at the right attack angle and 0.5m/s in flow velocity was from 3.7kgw to 19.3kgw. The changing ratio of drag varied from 1.4 times to 8.5 times against the initial (unused) netting. The mean ratio of drag on each soaking period, however, peaked 6.5 times of the 30th day net and then it scarcely changed till 60th day net.

3. The drag per 1m2 for each test net at the right attack angle and 0.5m/s in flow velocity was from 3.7kgw to 19.3kgw. The changing raito of the drag varied from 1.4 times to 8.5 times against the unused net. However, the mean raito og drag on each soaking period peaked 6.5 times of 30 days in soaking periods and then it scarcely changed till 60 days. The porosity (ß) of the nettings before and after fouling changed from 76 to 16%. The drag coefficient (CD) of fouled nettings can be expressed by the following equation;

CD=35.98 (Rh)-0.43 (1.7 X 102 < Rh < 1.8 X 103),

where Rh is Reynolds number based on hydraulic mean depth of a fouled netting. However, the drag coefficient may be rather influenced the porosity for Rh < 5 X 102. The drag coefficient (CD) of a fouled netting was determined to be 1.3 at 0.6 < ß < 0.8 and 2.2 at ß < 0.5, respectively. The results suggest that the drag coefficient of a fouled netting is determined by its porosity.

4 . To evaluate the preferable fishing ground for cuttlefish basket traps from bottom condition and CPUE (kg/trap/day) at two different fishing grounds (off Ariake and off Fukae) in Shimabara sound. The Md ¢ of off Ariake and off Fukae weres -0.3 to 3.0 and 1.0 to 1.5, which were limited range against the whole Shimabara Sound (-5.4 to 5.6). CPUE of off Fukae was 2-fold greater than that of off Ariake. The significance of differences in CPUE between two fishing grounds was verified by taken together Mann-Whitney test (p< 0.05). The results suggest that the medium sandy sea

(2)

bottom is more preferable for capturing of golden cuttlefish by the cuttlefish basket trap.

5. Catches were high at water temperature between 12-14°C. Daily catches varied periodically due to the change in the lunar cycle, and it became maximum at neap tide, or ebb, and minimum at spring tide. In this region, water temperature seems to be an important long-term factor affecting the main fishing period, and tidal current seems to be an important short-term factor controlling daily catch. The amount of catch might be controlled by both water temperature and tidal current, which is therefore the important factors in the cuttlefish basket trap fishery.

陥 穽漁 具 空隙 率

trap gear, porosity,

機能変化 流水抵抗

function change, drag, コ ウ イ カ

汚損 網 地fouled nettings,

golden  cuttlefish

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物の分布・移動・再生産に影響を与えていると指摘した。坂 本8>は流れと水温が魚の摂餌場,産卵場,成育場および移動 中の諸過程において重要な役割を有するとした。これらは魚 の行動への流れや水温の影響の重要性を示したものである。

陥穽漁具の漁獲機能は受動的であり魚の行動に強く依存する ために,魚の行動生態を変化させる漁場環境の変化は間接的 に機能変化として現れる。

 さらに,陥穽漁具は海中に固定されることから,陰影を生 じさせたり流動を遮蔽する構造物としても機能する。ここで 陥穽漁具は海中にある各パーツ例えば垣網,運動場あるいは 落としや漏斗が個々に機能することから,漁具システムと表 記する。一般に生物は天然礁や人工魚礁等の構造物近傍で濃 密となることが知られる9)。陥穽漁具の遮蔽誘集機能はこの 魚礁に見られる構造物の存在自体の画集機構と類似する可能 性も高い。また,陥穽漁具は長時間の浸漬中に漁具周辺の流 れを変化させ,対象生物の自由や漁具内へ侵入させる機能と 密接に関与することが考えられる。さらに前述の様な付着物 や卵等は網地の遮蔽機能をさらに増大させることが考えられ る。これらは漁獲という漁具本来の漁獲機能に加え,漁獲す る際の誘集機能やさらには魚礁としての機能をも包含する可 能性を示している。

 これら漁具周辺に生ずる環境変化に起因する変化を間接的 な漁具の機能変化と呼ぶ。

 以上に示した通り,陥穽漁具では操業に伴い,直接的およ び間接的な機能変化が生じることが予想されこのことが漁獲 に種々の作用を及ぼすことが考えられる。

 ここで,漁具の実際の運用方法である操業特性や操業形態 を明らかにしておくことは,漁具の機能変化を検討するにあ たり参考となる。そこで,陥穽漁具の代表的事例と見なせる かごと定置網について,漁具の特性と操業形態を以下に述べ る。その他の陥穽漁具の操業特性や操業形態はこの2者に準 ずると考えて差し支えない。

1.2 陥穽漁具の特性と操業形態

1.2.1かご

 かごは構造が簡単,操業が容易,揚かご装置により大水深 でも操業が可能,漁獲物の鮮度がよい,使用できる海底地形 が他の漁具より広範である等の理由から世界各地で盛んに使 用されている。漁獲統計における分類上,かごはその他の漁 業に分類されるているため,生産量に関しては不明である。

過去に実施されたアンケート調査の結果10>から1977〜1979年 におけるかごによる我が国の総漁獲量の推計値は約85,000t であった。ここでの漁獲量は我が国の海面漁業に占める割合 が1%程度と低いが,漁獲対象種がベニズワイガニ,ッブ,

オオクリガニ,コウイカ等に代表されるような高価格魚が主 体であるため生産額では全体の2%に達する。かごはこれら 高価油魚を鮮度良くかつ選択的に漁獲する。

 かごの形状,構造および操業形態については,本論文で取 り上げる長崎県深江町漁協でのいかかごを事例として以下に 述べる。同漁協で使用されるいかかごは縦横の竹製枠を網地

(かご網)で覆い,かご側面に1ヶの漏斗が取り付けられた

構造である。形状は直径約lm,高さ約50cmの円筒形3)で ある。漏斗は開口部がほぼかご高さに等しい直径約50cm,

漏斗出口(かご内部)では直径25cm程度で,両者の距離は ほぼ底面直径の1/2に達する。いかかごの形状11)は円筒形 の他にもかまぼこ型(熊本県),立方体(大阪府),ピラミッ ド形(福井県),円錐形(イタリア),円筒形・直方体(ヨー ロッパ,アフリカ)が使用される。漏斗の数は通常1〜2ヶ である。

 かごの縦枠は底面から3〜5cm突起し海底に潜掘し,多 少の潮流でもかごは移動しない。しかし,本漁場の相次ぐ潮 汐における極大流速は100cm/s12}に達し,しばしばかごが 離証して下流へ流される。この間に漏斗は下流側に開口する

(苑田秀和,私信)。

 同漁協全体では毎年約9000か日が予めくじで割り振られた 漁場内に整然と投入設置される。実際の設置の際にはかご30 ヶを約30m間隔の延縄式とした一連が設置時の最小単位とな る。一人の漁業者は期間中12連360かごを操業する。1漁期中 での同漁協での総漁獲量はここ10年間で60〜100tである。か ごには産卵基質は取り付けられないため,かご網自体が産卵 基質となっている。

 揚かごは憩流1〜2時間前に出港し,漁場ではまず下流側 の目印から幹縄を取り上げラインホーラー(1ine hauler)

で巻取り,枝縄に達した後は手作業で漁獲物を取り出し再投 入される。揚かご中にかごが船上にある時間は数秒から10秒 程度である。操業は3日毎に6連180ヶが揚かごされるが,

時化(特に風)や山市前日が休漁となるため,操業の頻度は 概して3−7日間隔である。

 いかかごは主として産卵期のコウイカSepiαesculentαを 漁獲し,仕種の産卵習性を巧みに利用した漁具である。かご 網には本直の卵が多数産みつけられ,漁具は漁獲と同時に産 卵床機能3}を有する。操業中かご網はコウイカ卵で満たされ るが,漁業者はかご網に付着した卵の一部を剥離する。この 操作は次の産卵を誘発させるためである(苑田秀和,私信)。

かごには餌は取り付けず内部に生きたコウイカを囮として残 すことで漁獲量が増大する(川田安二郎,私信)。

 コウイカ以外のかごの対象種13)としては,ベニズワイガニ,

オオクリガニ,ズワイガニ,ガザミ,ハナサキガニ,ッブ,

バイ,イセエビ,ホッコクアカエビ,テナガエビ,アナゴ,

フグ類,ボラ,クロダイ,タコ類であり,甲殻類,魚類,頭 足類および貝類等海底付近の有用種である。かごは通常対象 種の名称で呼称され,少なくとも20種類以上に及ぶ。かごは 結果として種選択的である。

 かごは形状から円筒形,円錐台形,直方体,かまぼこ型,

半球形,横ドラム形,ざる形の8種類に分類14)される。底面 および底面と垂直な断面は半円形あるいは四辺形であり,両 者の組み合わせでのバリエーションも少ない。構造は枠と網 地(金網)あるいは枠のみから構成され形状よりさらに画一 的である。大きさは底面の一辺(直径)が40〜200cmで高さ が30〜90cm程度である。対象とする生物により大きさは異 なるが概ね一人で抱え上げることができる大きさである。

 いかかごではコウイカ1種に対して幾つかの形状のかごで漁獲

(4)

4 山口恭弘 陥穽漁具の機能変化に関する研究

されている。また,円錐台形のかごではズワイガニ,ベニズワイ ガニ,ホッコクアカエビ,ツブ・バイ,アナゴ,タコ,アイナメ 等が漁獲される。その際,漏斗の取り付け位置がツブ,バイ,

イセエビでは上面,その他が側面と異なる。これらの事実から かごの形状や構造は,かごに対する個々の生物の行動に関与す ると言うよりむしろ操業上O.問題や取り扱いの良さなどの対象 生物に起因する要件以外の部分が重要である。

 その要件としては潮流や波浪による外因で漁具として機能 を損なわないこと,投揚かご,運搬のし易さ等の操作性,漁 期以外における漁具の保管性などが総合的に勘案される。か ごはこれらの形状や構造により外縁と内部空間を分離した構 造物として機能し,内部空間との出入口に漏斗を有する構造 物であると定義される。

 また,漏斗は入りやすく出にくいことが重要であるが,積 極的な逃避がない場合にも揚かご中の漁獲物の脱落防止機能 も重要である。現在使用されている漏斗の数は1〜3ヶであ る。上面の漏斗は通常1ヶであり,側面では1および1−2ヶ が多い。漏斗数,取り付け位置およびその形状や大きさとの 組み合わせで幾つかのバリエーションが見られる。しかし,

かご漁具の基本的な構造や形状はいかかごと大差ないと見な

される。

1.2.2定置網

 定置網は海水浴場や磯釣応徳の沿岸近くに張り建てられて おり,浮子(あば)の配列により設計段階における平面形状 を視認することができる。かごと異なり水中の立体的な形状 は伺い知ることができない。かごが比較的地域的な重要漁業 であるとすれば,定置網は我が国の漁業において最も重要な 漁業種類の一つである。因に,定置網での総漁獲量15)は68万 t(平成8年度)であり,海面漁業での国内総漁獲量の11.3

%に達する。定置網での漁獲量は単一の漁業種類としては大 中型および小型旋網を含む旋網類に次いで第2位である。

 定置網はその形状から台網,落網,ます網,張網,建干網 に分類16)される。落網は昭和初期から全国的に普及が始まり 7}

現存する網型としての歴史が長く,大型および小型定置網と しても広く普及していることから,本研究では落網を定置網 として取り扱う。落:網には一段落し,二段落し,中底層定置 があり,それぞれに片端口,両端口がある。近年では,両端 口の一方が通常の落し式で,他方が中底層の網も見られるが,

ここではこれら全てを落網と表記する。

 定置網の構造は垣網,運動場,落し(昇り)あるいは漏斗 および箱網から構成され,特に浮魚を滞留させるのに好都合 な金庫を有する場合もある。大別して誘導(垣網)と滞留部 分(身網=運動場,箱網)から成る。規模は,垣網全長が数 10m〜数km,身網全長が数!0m〜数100mである。垣網は通 常陸岸から設置されるので,漁場は極めて近い。

 定置網の網地は表層から海底まで及び,網地底部は沈子が 取り付けられるが,海底には固定されていない。網地はいわ ば水面からカーテン状に海中に垂下された構造となっている。

この構造は操業を容易にしている反面流れによる網成り保持 を困難にしている。

 網起こしは一段箱あるいは二段箱(一段落しでは一段箱)

の内昇りから行われ,魚捕まで漁獲物を追い込み,タモ網を 使用あるいは魚捕ごと船上に引き上げることで行われる。定 置網の面起こしは揚かごと同様海面まで引き上げた網を順次 後方へ送りながら再設置するため,網起こし完了呼には網起 こし前の設置状態となる。操業に要する時間は通常1〜2時 間程度と他の漁業と比較して短い。近年,揚正時に底幅に取

り付けたりングを機械により巻き上げる方法が採用され,ま たクレーン等の荷役機械が普及しており,操業は省力化およ び簡素化が進んでいる。

 定置網では網地清掃のために2週間〜2ヶ月程度の間隔で 定期的な網替えが行われている。葉替え作業は通常の操業と 比較して丸2日を要する長時間に及ぶ重労働であり,操業時 の2倍以上の人手を要する場合もある。実際の網替えの効果 について検討された例は少ないが,網替えからの経過日数の 増大と共に漁獲量が低下する種があることが報告正8}されてい

る。前述した通り定置網の網地はカーテーン状であるので,

潮流により容易に網成りが変化する。この時の吹かれについ ては垣網19・20)や亀卜と類似の養殖網21)および模型の定置 網22・23}について検討され流れによる変形が示された。しかし,

何れの場合も模型網地の網糸剛性や水中での付加物の影響に ついては考慮されていないため,実際の漁具の使用状態を反 映したものとはなっていない。

1.3 本研究の目的と関連する既往の知見

 漁獲技術に関連する研究は漁具と対象生物との相互関係を 取り扱う漁獲過程を解明することが,生産効率と同時に管理手 法の両者にとって重要である。漁具と生物との相互関係につい ては観察が有効な手段の一つであるが,その手法としては潜水 や水中TV等および魚群探知機やスキャンニングソナー等が使 用されている。しかし,前二者が視野が狭いこと,後二者が解 像度が低いことから,漁場における漁獲過程の観察が十分行え ないのが現状である。そのため,これまでは陸上水槽での網地 に対する生物の行動実験や漁獲量資料の解析から漁獲過程の 予測により漁場へのフィードバックが試みられてきた。

 その際,陥穽漁具では前述した海中への長期浸漬に起因す る機能変化を考慮した漁獲過程の解明がほとんど行われてい ない。過去に行われた水槽実験や来遊量評価の精度向上にお いて本研究で新たに定義した機能変化という概念を漁獲過程 の解明に加味することで,安定的な漁業生産や来遊量評価に おいて重要な指標を与えることが期待される。さらに,機能 変化を加味した漁獲過程の解明は,漁獲量変動を未然に予測 しその防止に努めてきた漁業者の経験的な操作に,科学的な 知見として加味できる可能性も期待できる。

 漁具の機能を考慮する際,漁具は資材,漁網および漁具と なった場合にそれぞれで要求される機能が異なると考え,本 研究ではこれらを漁具を構成する階層とし,それぞれの階層

において機能変化を考慮する必要があると考えた。

 そこで,本研究では,陥穽漁具の機能変化を網糸,網地お よび陥穽漁具の機能を具備したモデルと考えることができる かごをそれぞれの階層と考え,各階層における機能変化を検

(5)

些し,変化の要因やその定量的評価から陥穽漁具の機能を総 括して検討することを目的とした。

 本論文の構成は,まず漁具の最も基本構成要素である網糸 の階層について海水中での強度および伸度変化について実際 の海域での長期海水浸漬実験から強伸度測定を行い材料工学 的検討を行った。次に定置網の網成りに関与する付着物が付 加された場合の網地階層について流体力学的検討を行い空隙 率というパラメータにより付着物による網地の機能変化を定 量的に捉え,その結果をモデル漁具としたいかかごに応用し て流水特性の把握とその機能変化への影響を検討した。さら に,実際の漁場での環境要因として選定した流動,底質およ び水温のそれぞれが漁獲に及ぼす影響について漁場学的視点 から機能変化について検討を行った。最後に以上の結果を総 括して陥穽漁具の漁獲過程の解明においては機能変化を加味 することの重要性について検討した。

 本研究に関連する過去の知見は本研究を位置づける際に重 要である。以下に,本研究に関連する既往の知見について列 挙する。

 網糸の海水浸漬による強伸度変化については,マニラトワ インと絹糸の抗張力24>,ナイロンとクレモナの強伸度の温度

依存25・26),ナイロン網糸の紫外線照射実験:27・28)が行われた。

 平面網地の流水抵抗については未使用の網地については,

寺田ら29),田内ら30),Tauchi3i)により世界に先駆けて行われ,

その後結節方法の違い32),縮結の違い33>,網糸の種類の違 い34)が,また抵抗係数とhydraulic mean depthを代表長さ としたレイノルズ数3 )や迎角の違い36),目合・太さ・迎角・

縮結の違いによる抗力・揚力係数37>,大目網の抗力および揚 力成分を表す実験式38>,抵抗係数と縮雨量の関係39),各種迎 角時の結節の違いと抵抗係数40>,無結節網地41)と蛙又結節網 地42)の投影面積の実験式等が検討された。

 一方,網地への付着物については,付着生物の生態学的研 究43),フジツボが着生した平面網地の流水抵抗44),海水浸漬 後のホタテ養殖籠の流水抵抗45>が検討されたに過ぎない。

 定置網の漁獲iについては,定置網虚血での標識放流46−47),

実際の漁場での魚群行動解析48−56),水槽でのギンブナの昇り 勾配に対する行動57)やブル一議ルとウグイの昇りに対する行 動58・59),トラップモデルの確率論的モデル60 67),魚群行動の 決定論的モデル68 72),魚群の入網時刻73),漁獲特性74−79),魚 探による網内での行動解析80),ブリの資源変動解析81・82),混 獲投棄83),定置網での選択性84−87)が検討された。環境要因と 漁業の関係では,水温と漁獲量88−92),流れと魚群行動の制限 要因47・50・80)や定置網の高網の吹かれと居残り93)について検討

されたがこれらに関する知見は極めて少ない。

 かごの漁獲については,入り・脱かご行動実験94−96>,かご 大きさ97一1Dユ),餌の有無ユ02・103),かご形状と構成種104),漏斗に

よる漁獲効率105),選択性106−109),ゴーストフィッシング110・111),

日本のコウイカ漁業のレビュ・一一 6),漁獲過程の行動生理学的 解明11>,漁場での水中TVによる漁獲過程の詳細な観察112・113)

等が行われた。一方,かごの漁獲iと環境要因との関係につい ては水温 4,115),流れの場での生物の応答116)が報告されてい るに過ぎない。

 以上の既往の知見に見られるように,陥穽漁具特に定置網 ついては古来より沿岸漁業の主幹的役割を担ってきたという 経緯からも漁具や漁法に関する研究は比較的古くから行われ,

多くの有用な現象や漁具に関する定量的な知見が明らかにさ れ,集積されるに至っている。現在ではこれらの一部が数値 シミュレーションにより漁具への出入りが数値化されモデル として確立されるに至っている。しかし,陥穽漁具の操業特 性である海中での長期間の浸漬期間に起因する漁具の機能変 化に関しては散見されるものの,一連の総括的な検討は皆無 である。

第2章 長期海水浸漬による漁網用網糸の強伸度変化117)

 網糸は漁具の主要部分をなす網地の基本要素であり,漁具 の最も基本単位と位置づけることができる。一般に,網糸に は操業中の海底や生物との摩擦・衝突に対する耐久性および 最終的な漁獲時における魚群の保持機能が要求される。その 際網糸の物性としては重量物を支える強度と衝撃に耐える弾 性を有する材質であることが最も重要である。

 現在漁網の材質は一部天然繊維が使用されているが,99%

が合成繊維である。網糸用原料は現在ポリアミド系(ナイロ ン),ポリエチレン系(ハイゼックス)をはじめ7種類が知 られている。各原料により強度,伸度,比重,弾性等がやや 異なり,使用する漁具の使用条件の違いから原料が適宜使い 分けられている。一般に,合成繊維は微生物による腐朽がな く,また種々の薬品,一般溶剤および酸塩基に対しても極め て良好な耐性を有する。しかし,漁具が使用される条件にお いては網糸の強伸度低下が生ずることが知られている。さら に,陥穽漁具は長期間に亙る海中での使用条件から水中で連 続使用された場合の物性の変化について把握しておく必要が

ある。

 過去に海中での網糸の強伸度低下については,宮本ら24),

下崎25・26>により検討され,過去最長の浸漬期間は730日であ り,その際強伸度が時間経過と同時に徐々に減少すると結論 された。しかし,例えば定置網の網地はしばしば5年以上使 用されることや,ゴーストフィッシングでは残存強度がしば

しば問題となる事例からも強伸度が減少し続けるとの結論に は疑問がある。そこで本章では,過去の研究で行われなかっ た3年以上に亙る実海域への浸漬実験から海中での網糸の強 伸度変化について検討した。

2.1 試料および方法

2.1.1供試糸

 供試糸の仕様をTable 1−1に示した、。供試糸の材質には 陥穽漁具の網地やロープ類をはじめ種々の漁具への使用頻度 が高く,吸水性の違いによりナイロン(吸水有り)およびポ リエチレン(吸水無し)を選定した。供試糸は1期間の試料 数が各13本となるようアクリル樹脂板に負荷がかからない程 度に張った状態で取り付け浸漬実験に供した。

(6)

6 山口恭弘 陥穽漁具の機能変化に関する研究

Table 2−1. Specifications of each test pieces for soaking experiment

Test Piece

       Construction

 No. Material Thickness B︵  % E︶ S D D

S

  SW gBK ︵

12345678901234567         1111■1ーユー1 Monofilament Monofilament Monofilament Monofilament Monofilament Monofilament Monofilament Monofilament Monofilament Monofilament Monofilament Monofilament Multifilament Multifilament Multifilament Multifilament Multifilament

Nylon 6 Polyethylene Nylon 6 Polyethylene Nylon 6 Polyethylene Nylon 6 Polyethylene Nylon 6 Polyethylene Nylon 6 Nylon 6 Nylon 6 Nylon 6 Nylon 6 Nylon 6 Nylon 6

 1980 11.8  1980 11.9  1980 8.7   220 2.0  1980 9.8   220 2.6  1870 9.5   220 6.7  1980 8.3   220 2.0  1980 9.6  1980 9.4

210 d−96 F 3.6 420 d−96 F 7.6 840 d−96 F 14.4 840 d−96 F 13.7 840 d−96 F 12.7

O.52 64.5 0.30 22.3 0.34 55.7 0.07 44.2 0.24 47.6 0.04 34.8 0.34 49.9 0.22 23.7 0.44 53.4 0.08 48.3 0.34 44.5 0.29 53.O O.06 28.4 0. 14 35.5 0.44 38.7 0.55 39.4 0.44 30.3

000000000000000006536947894710275231341221242211131

2.1.2 海水浸漬

 浸漬海域はFig.2−1に示した本学附属子々川臨海研修所地 先(32.一51.7 N,190−48.6「E)とし,供試糸の回収には施設の ローボートを使用した。供試糸の海中への浸漬方法は3点係 留により固定した3号フロート(余剰浮力260kgw)直下に 垂下した。供試糸の浸漬深度は実験用アクリル板上端が深度 約50cmであった。

 浸漬期間はモノフィラメントが1988年8月〜1991年12月の 延べ1217日およびマルチフィラメントが1988年10月〜1991年 12月の延べ1156日であり,3年以上に及ぶ。供試糸の回収は 当初1年間が1ヶ月毎,それ以降2ヶ月毎とした。回収した・

供試糸はほぼ24時間清水中に浸潤させた後の湿潤状態で破断 実験に供した。

34N

33e n

Naga

 032  129覧

Saga Fukuoka

Ktmambto YZKyusyu

131 o

2.1.3 破断実験

 破断実験は自作のまき付け式引っ張り試験機118)を用いて 強伸度測定を行った。測定装置は破断張力をロードセル(共 和電業社製,LT−50KG),破断伸度をワイヤー式変位計(共 和電業社製,DTP−05MDS)により検出した。検出された電 圧値は,ストレーンアンプ(共和電業社製,DPM−120A)

を介しペンレコーダ(グラフテック社製,SR−6511)に2ch に分けて記録して,後ほど直読して荷重および伸び量を算出 した。データは結節部分以外で切断した場合の平均および標 準偏差を算出し,この時の平均値を供試糸の代表値とした。

なお,破断伸度(E)の算出には次式を使用した。

      AL       × 100       E=

      (2.1)

       」

 ここに,AL:切断直前までの試料の伸び       五:無負荷時の試料長

N

導・一Bay

M>eshima ls.

O 500 1000m

L・一一一e一一・一i一一一i一

Takashima ls.

Togitsu Port

Fig. 2 1 Lacation of the soaking site (rk) in southern      coast of Omura Bay.

(7)

破断実験時の測定条件としては,引っ張り速度が約50cm/

minであり,室温下で行った。なお,破断張力と破断伸度の 初期値は常温保存下における乾燥状態に試料各10本ずつを測 定し,これらを初期張力および初期伸度とした。

2.2 結  果

 各供試糸の測定値は破断張力(T)および破断伸度(E)

を初期張力および初期伸度をそれぞれ71。およびE。とし,こ れらを100%とした時の変化率をそれぞれR,および況Eとし て次式で与えた。

      T       × 100       R,=

      (2.2)

      To       × 100       R.==

      (2,3)

      Eo

2.2.1 ナイロン

100 90 80

00月1!0

︵ま︶鵯起

50 40 30  0

 ヨ リブ+‡+ 一∈ト9

一一一11

−e一 12

365 730 1095

  Elapsed time (day)

Fig. 2−3 Relationship between the elapsed time and the     change rate of the breaking elongation (RE) in     case of the nylon mono−filament.

100 90   80 豊7・

  60 50 40  0

   一一一9一D−1    一一一11+3

. 一一ty一 5

   一〈〉一一 12 一一一7

120 110 100 trx 90

× 80   70 60 50

365 730 1095

  Elapsed time (day)

一〇一一 13

一●一14

+16t15

一一モe一 1 7

Fig. 2−2 Relationship between the elapsed time and the     change rate of the breaking strength (R7t) in     case of the nylon mono−filament.

 ナイロンモノフィラメントの島の経時変化をFig2−2に示 した。同図よりナイロンモノフィラメントの破断張力は浸漬 7ヶ月後(1989年3月)に極大値となり,14ヶ月(1989年10 月)までは全ての供試糸で減少傾向であった。その後,浸漬 16ヶ月後からは10−15%程度の変動が認められ,その変動パ ターとしては極小値が8月前後,極大値が2月前後であった。

何れの供試糸においても浸漬14ヶ月以降明瞭な低下傾向は認 められなかった。

 ナイロンモノフィラメントのR.の経時変化をFig.2−3に示 した。同門よりナイロンモノフィラメントの破断伸度は浸漬 5ヶ月後迄に初期伸度の50−65%迄一度低下した後,10%程 度の上昇の後再び減少した。減少傾向はほぼ浸漬16ヶ月迄で 停止し,その2ヶ月後に若干上昇したが,何れの供試糸にお いてもほぼ一定値となった。

 ナイロンマルチフィラメントのR,の経時変化をFig,2−4に 示した。同図よりナイロンマルチフィラメントの破断張力は 浸漬6ヶ月後(1989年4月)と8ヶ月後に極大値となったが,

浸漬14ヶ月後までは全ての供試網で減少傾向であった。その

  40   0 365 730 1095

      E}apsed time (day)

Fig. 2−4 Relationship between the elapsed time and the     change rate of the breaking strength (RT) in     case of the nylon multi−filament.

後若干増減したが,供試糸13の26ヶ月以降の減少傾向を除け ば4供試糸で明瞭な減少傾向は認められなかった。モノフィ ラメントほど顕著ではないが,マルチフィラメントにおいて も1年周期の増減傾向が認められ,夏季に極小,冬季に極大 となった。

 ナイロンマルチフィラメントのREの経時変化をFig.2−5に 示した。丁丁よりナイロンマルチフィラメントの破断伸度は 当初2ヶ月で80%まで低下したが,9ヶ月後まではほぼ一定 値となり,全体としては14ヶ月後までの減少傾向となった。

その後は供試糸13の斬減傾向を除けば4供試糸でほぼ一定値 であった。

 ナイロン網糸の破断張力および破断伸度はモノフィラメン トとマルチフィラメントで若干変化傾向が異なった。しかし,

破断張力の周期的な変動を除けば浸漬後730日以降ナイロン 網糸の強伸度は一定値に収束すると見なせた。

2.2.2 ポリエチレン

 ポリエチレンモノフィラメントのR,の経時変化をFig.2−6

(8)

8 山口恭弘 陥穽漁具の機能変化に関する研究

120 110 10

90

t一 N

  80

  706543 00000

一〇一 13 一●一P4

+15+16

一目一17

100 90 80

A 70

墨60

  50 40 30

365 730 1095

 Elapsed time (day)

20  0

一〇一 2

−e一 4

+6一歯一8

−e一一 10

Fig. 2−5 Relationship between the elapsed time and the     change rate of the breaking elongation (RE) in     case of the nylon multi−filament.

365 730 1095

 Elapsed time (day)

Fig. 2−7 Relationship between the elapsed time and the     change rate of the breaking elongation (RE) in     case of the polyethylene mono−filament.

130 120 110

g. loo

営9・

80 70

60 6

POLYETHYLENE MONO−FIIAMENT 一〇一 2

−e一 4

+6+8

.10

 100

  90   80

ま70v.60

起50

  40   30   20   10    0

365 730 1095

 Elapsed time (day)

Fig. 2−6 Relationship between the elapsed time and the     change rate of the breaking strengh (RT) in     case of the polyethylene mono−filament.

に示した。同図よりポリエチレンモノフィラメントの破断張 力は浸漬3〜7ヶ月後において,120%前後まで一度増大後,

11ヶ月後には80−87%程度まで低下した。変化率はナイロン 繊維同様ほぼ1年周期で増減傾向が認められた。破断張力は 当初1年間で減少した後,明瞭な低下傾向が認められなかっ

た。

 ポリ「エチレンモノフィラメントのR.の経時変化をFig.2−7 に示した。同図よりポリエチレンモノフィラメントの破断伸 度は試料番号2,8と4,6,10の2群に分けられた。前者 は後者より当初5ヶ月間での低下率が少ないが,その後の変 化の傾向は類似した。両者ともに浸漬20ヶ月間にほぼ低下傾 向であるが,その後はほぼ1年周期での増減したが,明瞭な 低下傾向は認められなかった。周期的な変動は夏季に極大,

冬季に極小となった。

 R,の初期値,1年後,2年後および3年後における平均 値および標準偏差をFig.2−8に示した。初期値から2年後に は,標準偏差が縮小した。ナイロンモノフィラメント,ナイ ロンマルチフィラメントおよびポリエチレンモノフィラメン

m。謝温ent mu1厘臨,nt翻詔忌階器t

Materials−shape

Fig.2−8 Mean change rate of the breaking strength      (RT) after 1, 2 and 3 years. Each values are     mean as the same soaking periods and vertical     bar means standard deviation.

    蕊:lnitial value,國:After l year,

    團:After 2 years,灘:Afetr 3 years.

トの3年後の平均値はそれぞれ70.1,76.2および84.3%であ り標準偏差0.02〜0.04とバラツキも小さい。また,それぞれ の群間で分散分析を行ったところ,ナイロンでは両形状とも に有意差は認められなかった(p〈0.05)。しかし,ポリエチ レンモノフィラメントでは分散分析で有意差が見られたため,

さらに6検定による平均値の差を検定したところ1年後と2

年後において有意差が見られた(.ρ<0.05)。

 島の初期値,1年後,2年後および3年後における平均 値および標準偏差をFig.2−9に示した。同図より,各期にお ける供試糸間での標準偏差は破断張力よりやや大きいが相対 的に小さいことから,太さやメーカーの違いは無視できる。

ナイロンモノフィラメント,ナイロンマルチフィラメントお よびポリエチレンモノフィラメントの3年後の平均値はそれ ぞれ44.4,57.9および46.8%であり標準偏差0.03〜0.12とバラ ツキも小さい。破断伸度についても破断張力と同様有意差の

(9)

︵卓︶

100 90 80710くゾ4τ32ーム 00000000

m。識島,nt mul甚濫,nt蓋8器盟盤亀 Materials−shape

Fig. 2−9 Mean change rate of the breaking elongation      (RE) after 1, 2 and 3 years. Each values are     mean as the same soaking periods and vertical     bar means standard deviation.

    ss :lnitial value, [lll] :After 1 year,

    團:After 2 years,騰:Afetr 3 years.

検定を行った。ナイロンマルチおよびポリエチレンモノフィ ラメントにおいては二間に有意差が見られなかった。しかし,

ナイロンモノフィラメントにおいては1990年と1991年の組み 合わせ以外で有意差が認められた。

2.3 考  察

 合成繊維網糸の海中での強伸度変化を実際の海水に浸漬後 の破断張力と破断伸度の測定から検討する。

 破断張力は太さや形状には関係なく浸漬後1年で減少する が,その後明瞭な減少が見られず,この傾向は両材質で同等 と見なせる。材質の違いで比較するとナイロンがポリエチレ ンより低下率が大きい。ナイロンは一般に吸水により5〜16

%の強度低下が知られている。したがって,両者の低下率の 差は初期値が乾燥状態であったための差違であると考えられ,

それを考慮すれば両者の初期値からの低下率は大差ないもの と考えられる。

 また,2年後と3年後では各平均値は検定の結果からほぼ

同程度であったと見なされ(Fig.2−2, Fig.2−4, Fig。2−6),

すべての供試体で一致した傾向である。一定量低下した2年 後の破断張力がそのまま3年後まで継続することから,2年 後に一定の収束値が得られたと考えられる。過去最長の浸漬 期間730日すなわちほぼ2年間では減少傾向と結論されたが,

本研究においても2年間では一定値への収束とは断言できな

い。

 一方,破断張力は両材質ともに1年周期で増減した。破断 時の網糸の温度と破断張力および破断伸度への影響は下崎25)

によれば,破断張力が10〜40℃の範囲での実験:式の係数一〇.056 と切片14.4を用いれば10℃あたり4%の減少率である。この 実験式を今回の実験結果に適用して検討した結果は次の通り である。

 まず,実験時の網糸自体の温度は不明であるが,実験時の

40

30@  20   10

︵⇔︶︒﹄ε二巴目8﹄嘱く

  ︐

o

88 89

Year

90 91

Fig.2−10 Variance of the mean air temperature and      ranges, from August  88 to Dec.  91 observed      at Nagasaki Marine Meteorogical Observatory.

環境温度として長崎海洋気象台における月別気温変動を示し た(Fig.2−10)。気温の年較差は30℃程度であることから,

気温依存による変化は12%と見積もられる。実際の海中での 強伸度に与える温度依存は海水温の年較差を15℃と見積もれ ば,6%程度の増減が水温変化に伴って生ずることが考えら れる。したがって,長期海水浸漬による海中における破断張 力は2年後にはナイロンが初期値(乾時)の約70〜75%,ポ

リエチレンが同じく初期値の84%程度に収束する。

 破断伸度はナイロンではモノフィラメントとマルチフィラ メントで変化傾向がやや異なり,後者の残存伸度がやや大き い傾向が見られた。これはマルチフィラメントの場合個々の 単糸が同時に切断しなかったためであると考えられる。また,

温度依存性はモノフィラメントでは見られなかった(Fig.2−5)

のに対してマルチフィラメントでは明瞭であった(Fig.2−7)。

しかし,両者の変化率は3年後以降明瞭な低下傾向は認めら れなかった。モノフィラメントでは当初5ヶ月間で変化率の 平均で57.4%となり,その後15%程度増加した後2年後まで 変動しながら徐々に減少傾向が認められ900日後以降では低 下傾向は認められなかった。

 一方,ポリエチレンで見られた2群化については試料番号 4,6および10の初期伸度がポリエチレンとしては過大であっ たことが考えられる。これらの検討は今後の課題とし,従来 の破断伸度とほぼ等しい試料番号2および8から検討する。

破断伸度は2年後以降の明瞭な減少傾向がないことから,ポ リエチレンの破断伸度は初期値の55%程度に低下すると考え

られる。

 以上のことから,網糸は海中でのみ使用されることを考慮 した場合,強度では初期値の70%程度,伸度では初期値の50

%程度に低下することが明かとなった。強度と比較して伸度

(10)

10 山口恭弘 陥穽漁具の機能変化に関する研究

低下が大きいが,ナイロンとポリエチレン製網糸は3年以上 の長期海水浸漬に十分耐えることを実証するものである。し かし,強伸度が当初1〜2年間にのみ減少し,その後収束し た原因は明らかとはならなかった。これは海中からの回収時 に付着物の除去を必要としたが,その際網糸が付着物に被覆 されることと関連があるのかも知れないが,これは現在保存 中の試料や電子顕微鏡による切断面を撮影した写真の解析か ら明らかにしたい。

 直射日光下の陸上での強伸度低下が紫外線により単調減 少27・28}することを考慮すると海中での網糸の長期浸漬では強 伸度低下は陸上での紫外線劣化と比較して小さい。陥穽漁具 の操業形態を考慮すると,網替えや保管時の日光暴露による 直接的な紫外線の影響も使用中に生ずることから,紫外線か らの漁具の保護が網地の長期使用においては重要である。今 後は陸上での日光暴露や紫外線定量照射試験と海中浸漬を操 業形態に即した実験を行う必要がある。

第3章 一定期間海水浸漬後の平面網地の流水抵抗変化と     付着物の付着特性119)

 網糸の強伸度は海水浸漬により一定値まで低下するが,そ の後低下しないことが前章により明らかにされた。網糸の集 合体である網地においても,海中浸漬における強伸度変化に ついては同様に考えて差し支えない。一方,網糸の浸漬実験 中には供試糸やアクリル板が付着物に覆われるのが観察され 網糸直径の数倍に達する大型の付着生物も着生した。海中浸 漬は材料の物性を変化させると同時に,付着物の増大による 網地の構造変化を意味する。網地ではこの時の付着物による 変化が漁具の機能に影響を与えることが考えられた。

 網地は一定の網目空隙を有する有孔物体である。漁具とし て仕立てられる際には海中での力学的釣り合いにより浮子や沈 子の量が決定される。しかし,網地が付着物に覆われると,網 目空隙は減少し力学的釣り合いが変化する。一方,定置網で は通常全体の一部に相当する箱網のみが日々揚網され,他の 部分は海中に設置状態にある。漁獲過程における各部の機能 は魚群を誘導・遮蔽する垣網,陥穽する昇り網および漁獲物 を収容する神璽等で構成される。これらは前述の通り初期の網 地の流水特性を考慮して全体の漁具システムとして設計され,

実際の漁場に設置される。しかし,海中に長期間固定して操 業される定置網の網地は付着物に覆われ,設計段階とは流水 抵抗および水中重量等の力学特性が異なると考えられる。特に 漁獲物を最終的に収容する箱網は,流水抵抗の増大による漁 獲効率の低下および必要固定力の増大に深く関与する。

 例えば,漁業者は定期的な網替えにより漁獲量増大を図っ ており,このことは付着物による漁獲効率の低下を示す好例 である。定置網の漁獲量は箱網容積に規定され120),また箱網 容積は流水抵抗と水中重量で決定される121)網地の吹かれに 深く関与している。付着物に覆われた網地は流水抵抗の増大 により吹かれが大きくなり,箱網容積が小さくなることで魚 の入網野の散逸が生ずると考えられる。

 従来,漁具と付着物については,網地への付着生物の生態

学的研究43),実海域での浮魚礁122),フジツボ類が付着した網 地44}およびホタテ養殖施設45)等に関する抵抗および抵抗係数 が検討された。これらは力学的評価がなされていないか,ま たは数ヶ月以上海水浸漬された基盤が使用された。しかし,

陥穽漁具の操業形態を考慮すると連続して最も長く海中に浸 漬される定置網でも2週間〜2ヶ月程度であることから,当 該漁具の操業特性に対して十分な検討がなされているとはい えない。また,同様な期間における網地という有孔物体への 付着物の付着形態については不明な点が多い。

 そこで本章では,定置網における付着物による箱網容積の 変化やかご網地の付着物による流水抵抗変化に関する基礎的 資料を得るために,平面網地への付着物の付着特性および設 計段階の網地との流水抵抗の変化について検討することを目 的とした。

3.1 試料および方法

 実験は浸漬期間を15日毎の4期間,計60日間とし,敷設深 度を1.5〜15mの3深度として,12枚の供試網を実験に用い た。操業中の定置網漁場に浸漬し,付着物の付着形態の観察 および各供試網の流水抵抗を設定流速3段階,迎角4段階と

して測定し,浸漬前の網地の流水抵抗と比較検討した。

3.1.1試 料

 実験に使用した網地は当該漁場の箱網と同等の仕様とし,

テトロン200D,18本,10節で,最小目盛り0.01mmのディジ タルノギス(MITSUTOYO社製, CD−20C)により任意に 選んだ網目100点を実測した結果,脚長17.1mmおよび網糸 直径0.85mmであった。実験に用いた網地を海水浸漬および 流水抵抗測定実験に供するために直径6mmの円柱型ステン

レススティール製で内寸400mm x 400mm(0.16m2)の枠

(以下実験枠とする)に仕付け糸を用いて取り付けた。取り 付け方法は縮結が0.293となるよう目撃を縦横16.5目とし,

これを供試網として浸漬実験および回収後流水抵抗測定に供

した。

3.1.2実験方法

3.1.2.1 海水浸漬実験

 供試網はFig.3−1に示す長崎県西彼杵郡野母崎町地先源代 漁場小型定置網の台浮子の張り綱からFig.3−2に示した垂下 方法により実施した。当漁場は東シナ海に南に凹の開放湾で ある橘湾の南西端湾口部に位置し,狭水道である樺島水道に 近接し急潮漁場である。当定置網は二段落し(片落し)式で,

身網水深25m,垣網長300m,身網最大幅45mおよび身網全 長240mである。主な漁獲物はイカ類(主としてアオリイカ Sepioteuthis lessoniαnα),マダイPαgrUS mOjor,マアジ Trαchuru8」 αponiCUS,タチウオTrichiurUS IepturUSおよ びブリSeriolαquinquerαdiαtα等である。

 当該漁場では梅雨期前後に頻繁に網替えが行われるので,

浸漬時期として1995年5月8日〜1995年7月10日を選定した。

浸漬期間は当漁場の網替え間隔の基本単位である15日間隔を 基準として15,30,45および60日間の計4期間(以下それぞ

(11)

幽︐

130E

,,,,t

omoza

Kyusyu

      33N

t

N4T一

振9鰍紛

O 1 2 3km

Experimental

site

Fig.3−1 Location of the soaking experiment at the     actual set net Fishing Ground in Nomozaki,

    Nagasaki Prefecture.

気させながら研究室へ持ち帰り,付着物の観察と流水抵抗測定 実験の時以外は変色・劣化がないよう爆気海水中に保存した。

 付着生物は供試網の網糸直径0.85mmを規準として,これ より大きい場合に限り高次分類群により分類を行い,卓越種 については種の同定を行った。すなわち,本研究では流水抵 抗への影響を重視したため,網糸直径を尺度として付着生物 の大きさを分類した。またdetritusを主体とする泥状の付着 物は梶原43)に従い付着性ヌタ(以下では単にヌタと表記)と

して分類した。

 付着量については付着物により閉塞された心肝の計数,付 着生物,特に移動性の端脚類の計数および30日網と60日網の 水中重量計測値から推定した。

3.1.2.2 流水抵抗測定

供試網の流水抵抗測定実験:は長崎大学水産学部水平循環式

Float

Buoy

SETNET

     1.5 m Test net   噌噂………

Test net ww.7.r5..m..

Water

     15 m

Test net

5 kg weight

Buoy MSea surface

   Anclior rope

epth: 22 m

Traverser

且︒ ree components

рモ?撃戟@      ▽

Test net

Front view

Current

奄獅р奄モ≠狽盾

Three components

撃盾≠п@ce匪1 Digital multi・

@ recorder Strain

≠高吹E

⇒Flow  Current        Test net 高?狽?

       言

ride view CIRCUL,4TING WATER CILtlNNEL

Sa4d bag Sea bed

1

Fig. 3−3 Schematic drawing of the experimental     apparatus for the measurements of the     drag.

Fig. 3−2 Schematic drawing of a soaking experiment.

れ15日網,30日網,45日網および60日網と略記)とした。浸 漬深度は1.5,7,5および15mの3層である。供試網については 浸漬下問一深度を併記して類別することとし,15日網一1.5m を15−L5の様に表記した。

 なお,浸漬海域の期間中の水温はIC記憶式水温計(アレッ ク電子一門,AT−32K)により深度7.5mにおいて20分毎に連 続測定した。その結果水温は2ヶ月間で17.2℃〜21.8℃と4.6

℃の上昇が見られ,供試網の回収間隔の15日問毎ではそれぞ れ1.0〜1.5℃の上昇であった。

 供試網の回収は通常の網起こしの際に操業船に同乗して行 い,付着物が脱落しないよう注意深く取り上げた。回収した 供試網は現場海水で満たしたプラスティック製コンテナー

(540×380×300mm)中に入れて,エアレーションにより曝

回流水槽中で実施した。本回流水槽の観測流路直線部分は,

長さ5m,幅0。9m,規定水深0.65mであり,最大流速は約O.8 m/sである。予め行った流路断面の流速分布測定結果から,

測定部分における流速分布の誤差は10%未満であった。流水 抵抗測定はFig.3−3に示した通りで,観測流路直線部分の中 心に3分力検出器(日章電気社製,LMC−3520)をトラバー サを用いて取り付け,抗力(X方向成分)のみを測定した。

抗力は3分力検出器の出力を動歪増幅器(共和電業社製,

DPM−613A)で増幅して検出させ,ディジタルマルチレコー ダ(グラフテック粗製,MC−1000)に設定流速に達した後 約1分間記録させた。

 水槽中の設定流速は今回浸漬実験を行った同一漁場におけ る,1993年11月25日〜1993年12月25日半31日間に電磁流速計

(アレック電子社製ACM−8M)を用いた測定結果を参考

参照

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