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Fig. 6−15 Temporal changes in catch and water temperature at off Fukae (A) and off Ariake (B) for 2 fishing periods.
O:catch, 一. water temperature.
水温と漁獲量をFig.6−15Aに深江沖, Fig.6−15Bに有明沖 として示した。水温や漁獲量の変動パタ1一ンは漁場により両 年共にほぼ一定の傾向を示した。漁獲量は1996年が両漁場と もに多かった。また,漁獲量のピークの時期は1996より1997
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1/Days
Fig. 6−16 Comparison of power spectrum calculated for temperature change in each fishing ground. A:off Fukae, B:off Ariake.
深江沖と有明町の1996年分の水温のスペクトル解析をFig.6−
16に示した。両漁場とも太陰半月周期(14日)に当たる箇所 にパワーのピークを示した。すなわち,両漁場の水温は基本的 には約14日周期で変動する太陰半月周期の潮汐にともなう日変 動が合成された振動パタンを繰り返しながら上昇すると解釈さ れた。漁場の水温変動は大潮時に大きく,小潮時に小さいこと が理解される。有明沖(Fig.6−16B)では,複数の周期成分が 現われ,パワーが深江沖(Fig.6−16A)より大きい。
6.3.3 考 察
深江沖と有明沖での漁獲量を比較検討する。前者は後者の 約半分の使用かご数である。使用されるかごは大きさ,構造 ともに大差はない。一方,両漁場の漁獲i量は2年間共に両者 でほぼ同じ水準で変動している(Fig,6−15)。すなわち,前 者のCPUE(1日1かご当たり漁獲量)は後者より大きい。
かごの漁獲能力は一定であることを仮定すれば,深江沖では 漁期を通して,時間・空間当たりのコウイカ個体群量は有明 沖より多くなっている可能性が伺える。個体群の分布量の偏 りの原因については明確ではないものの,コウイカは海底近 くを主な生息場149}にしていること,また海底の物体に卵を 付着させる習性がある14 〕ことから,個体の産卵場所選択に 関係する種の習性といった生物的な要因が偏りを生じさせる 重要な因子の一つになっている可能性を結果は示唆する。
次に,深江沖そして有明沖の漁期について検討する。両漁 場では,漁場水温が漁場最低水温付近から漁獲が開始され,
34 山口恭弘 陥穽漁具の機能変化に関する研究
18℃内外で漁期は終了することを示した(Fig.6−15)。コウ イカかご漁業は他地域の内湾においても本種の繁殖期にもっ ぱら操業される。漁期は三河湾144)では3月上,中旬から7 月中旬(水温範囲;約10〜24℃,盛漁期;4月〜5月,水温 範囲15〜16℃),東京湾161}では盛漁期は4月下旬から5月下 旬および山口県瀬戸内海145[では,4月中旬から5月下旬で ある。漁場ヘコウイカ漁獲対象個体群が集中し始める時期は 漁場水温が10℃を超えるとみて差支えないだろう。
一方,前記漁場と比較すると,有明沖ではおよそ2ケ月,
深江沖では1ケ月早く漁期が始まる。さらに盛漁期は3月初 旬から4月初旬と推測されることから,島原湾漁場では,漁 期は前記3漁場とは約1ケ月早く,かつ漁場水温は低い。漁 場水温が唯一記載されている三河湾漁場144)での水温は連続 して測定されていないことから,厳密な比較はできないもの の,コウイカが漁場に集中する温度範囲は島原湾漁場の方が 狭く,終漁時の温度は低い。さらに,盛漁期がコウイカの産 卵最盛期だとすると,島原湾では,三河湾漁場144}と比較し て,それは1ケ月早くかつ水温は約4℃低い。コウイカの産 卵行動におよぼす水温の影響については不明だが,同一の湾 内で行われるいかかご漁場における水温と漁獲変動の比較か らほぼ同一水温以下では漁獲が減少傾向となり,高水等時に おける漁獲量低下傾向が示唆された。水生生物の産卵には代
謝水温が主動的に作用することを考慮すると,産卵習性を巧 みに利用するいかかごの漁獲は産卵という生理状態を規定す る水温の高低に左右される可能性が考えられる。
本章での水温および漁獲量の検討(Fig.6−15)結果からは,
水温は島原湾産コウイカの個体群の漁場への集中・分散に関 与したと解釈される。すなわち漁場水温は当該漁場でのコウ
イカ個体群の時間・空間的分布状況に対する主な制限要因,
つまり当該漁場で操業するかご漁業の漁期を決める重要な要 因であると言えよう。
次いで,漁獲量の時系列解析について検討する。漁獲量の スペクトル解析結果(Fig.6−16)に現われた3日,6日周期 は大潮と小潮の中間潮時で,漁業者が大潮とともに留意する 潮時(漁業者の表現では中潮)に大略対応している。深江沖 の北東端(深度20m)で1993年に測定された最強流時の流速 は潮差約400cmで60cm/s以上162}になることから,潮差が約 500cmになる大潮の頃には,漁場内の流速が上記を超えるこ
とが予想される。一方,シミュレーションによる有明海の流 動解析結果163)によれば残差流は深江沖が有明沖より大きく なることを示す。また,深江沖の潮差は有明沖より大きいこ とから,総合的にみれば,前者は潮流の影響を後者より強く 受けると言えよう。両漁場での漁獲量は潮汐の影響を強く受 け日々大きく変動することが推察される。
両漁場では,コウイカの漁獲開始水温にはあまり差はない が,有明沖では,低水温期(2月初旬〜4月中旬)では,水 温の日変動範囲は深江沖より大きい。一方,4月中旬以降に なると有明沖の水温日変動は小さくなる。潮汐による流速は 深江沖が大きいとすれば,有明沖において低温期(2月〜4 月初旬)に水温変動が大きく現われたのは,漁場が湾口に近 いこと,さらに水深が浅いことから,潮汐にともない進入し
た湾外の暖水が地形により短期的にトラップされたことに起 因する可能性が伺える。有明町の複雑な流動と密接に関わっ て,低温期に大きく日変動する水温がコウイカ個体群の当該 場における分布状況にどのような影響をおよぼすかについて は不明であるが,有明沖では深江沖よりコウイカ個体群の産 卵適水温に早く達している可能性を示唆する。
また,水温はほぼ6時間の周期的間隔で変動したことから,
潮流が水温変動に関与することは明かである。漁期は等温期 にある水温のトレンドに規定されると言えるが,流れは短期 的な水温変動にも関与することが同時に明かとなった。この 際の短期的な水温変動がコウイカの移動集散にどの様に関与 するかは不明であるが,年毎に変動する絶対水温の影響と同 時に現在も継続して測定中の漁場水温からさらに詳細に検討 する予定である。
第7章 総合考察
7.1 総 括
本研究では長期海中浸漬型の陥穽漁具の操業中に生ずる資 材の物性変化,網地の構造変化および漁獲量変動について,
これらを漁具を構成する3つの階層として捉え諸階層におけ る機能変化について材料工学的,流体力学的および漁場学的 手法を用いて明らかにし総括することが目的であった。また,
ここで得られた機能変化を今日の漁獲技術分野の研究の主体 的領域である漁獲過程の解明に加味することは漁獲過程研究 の精度向上に資すると考えそのための基礎研究と位置づけて 行ったものである。
あらためて本研究で得られた主な結果を示すと以下の通り である。
まず,資材の階層における機能変化として,ここでは漁具 の基本要素である網糸の3年以上に亙る長期海水浸漬後の残 存強伸度についてナイロンとポリエチレンを供試材料として 検討した。ナイロンとポリエチレンでは強伸度の時系列変化 に相違が見られたが,これらは吸水性の有無に起因すると考 えられたため両者を同様に取り扱った。両材質共に浸漬2年 後における残存強伸度は,最低値においても強度約70%,伸 度40〜60%であったが以後低下傾向が認められなかったこと から,合成繊維網糸の強伸度は一定値に収束することが示唆 された。海水中でのみ網地が使用された場合の使用限界に関 する重要な知見が得られた。ここでの強伸度低下は一般に種々 の薬品やバクテリア等に対して優れた耐性を有するとされる 合成繊維網糸の海中浸漬による一定の機能低下と考えられる。
次に,陥穽漁具の代表漁具である定置網での網替え間隔を 考慮して,一定期問漁場に浸漬した網地への付着物の特性と 浸漬前後の網地の流水抵抗変化を検討した。付着物はヌタと 小型付着動物のヒドロ虫類であり,これらは網目の空隙の減 少や閉塞という平面構造変化をもたらした。初期網地との流 水抵抗変化の比(抵抗比)は,浸漬15日後で1.8倍であった が,浸漬30日後には5.6倍と著しく増大し,それ以降浸漬60 日後までは明瞭な増大傾向が認められなかった。網地は30日 程度の海中浸漬により初期の網地より5.6倍の流水抵抗とな