• 検索結果がありません。

小学校でのプログラミング教育必修化に向けた課題

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "小学校でのプログラミング教育必修化に向けた課題"

Copied!
9
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

小学校でのプログラミング教育必修化に向けた課題

草場聡宏

(西九州大学子ども学部子ども学科)

(令和 年 月 日受理)

Issues for Compulsory Programming Education in Elementary Schools

Tokihiro KUSABA

(Accepted January 24, 2020)

Key words:Programming Education プログラミング教育 Elementary School 小学校教育

西九州大学子ども学部紀要 第 号

(2)

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!!!!!!!!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!!!!!!!!

.はじめに

年に告示された小学校学習指導要領(文部科 学省 a)の大きな特徴は,アクティブラーニ ングの視点に立ち,「主体的・対話的で深い学び」

を強調していることである。内容面では,特別の教 科道徳の導入,外国語の教科化,プログラミング教 育の必修化の三点が大きな目玉である。まさに,変 化が大きい社会への対応やグローバル化する社会に 向けて,学びの内容が変わり,それに応じて学びの 形も変わろうとしていると言える。本稿では,小学 校におけるプログラミング教育のねらいと,小学校 において 年 月からプログラミング教育が必修 化される上での課題について考察する。

.小学校におけるプログラミング教育

⑴ 学習指導要領におけるプログラミング教育

今回小学校で必修化されるプログラミング教育は 特別の教科道徳や外国語などのような新しい教科で はなく,総則の中で学習活動の内容として示されて いる。具体的には,小学校学習指導要領(文部科学 省 a,p )において,

各学校においては,児童の発達の段階を考慮し,

言語能力,情報活用能力(情報モラルを含む。),問 題発見・解決能力等の学習の基盤となる資質・能力 を育成していくことができるよう,各教科等の特質 を生かし,教科等横断的な視点から教育課程の編成 を図るものとする。(下線は筆者)

と述べてある。つまり,主体的・対話的で深い学び を支える学習の基盤となる資質・能力の一つとして,

「情報活用能力(情報モラルを含む)」が挙げられ,

教科横断的な学習を充実させることが求められてい る。中学校においても,中学校学習指導要領(文部 科 学 省 b,p )で,「児 童」を「生 徒」と 表 現を変え,全く同様の記述がある。さらに,高等学 校学習指導要領(文部科学省 a,p )におい ても,「各教科等の特質」を「各教科・科目等の特 質」と変えているものの,全く同様の記述である。

つまり,小・中・高の 年間を通して,主体的・対 話的で深い学びを支える学習の基盤となる資質・能 力としての情報活用能力の育成が重要であるとして いる。

学習指導要領改訂に関係する中央教育審議会答申

(文部科学省 ,p )に遡ると,「生きる力の 理念の具体化と教育課程の課題」において,

○ 教育課程において,各教科等において何を教え るかという内容は重要ではあるが,前述のとおり,

これまで以上に,その内容を学ぶことを通じて「何 ができるようになるか」を意識した指導が求めら れている。特に,これからの時代に求められる資 質・能力については,第 章において述べるよう に,情報活用能力や問題発見・解決能力,様々な 現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力 など,特定の教科等だけではなく,全ての教科等 のつながりの中で育まれるものも多く指摘されて いる。(下線は筆者)

とある。明治の学制発布以来の大改革と言われる今 回の学習指導要領改訂において,大きな特徴である

「学ぶ内容」以上に「何ができるようになるか」と しての資質・能力の育成を重視する必要性について 述べている。上記部分の脚注(p )では,従来の 学習指導要領で情報活用能力として示してきた内容 に加え,「プログラミング的思考や,情報モラル,

情報セキュリティ,統計等に関する資質・能力も含 まれる。」としている。「プログラミング的思考」を 従来の情報活用能力の内容に加える理由とその内容 について,

○ また,身近なものにコンピュータが内蔵され,

プログラミングの働きにより生活の便利さや豊か さがもたらされていることについて理解し,そう したプログラミングを,自分の意図した活動に活 用していけるようにすることもますます重要に なっている。将来どのような職業に就くとしても,

時代を超えて普遍的に求められる「プログラミン グ的思考」などを育むプログラミング教育の実施 を,子供たちの生活や教科等の学習と関連付けつ つ,発達の段階に応じて位置付けていくことが求 められる。その際,小・中・高等学校を見通した 学びの過程の中で, 「主体的・対話的で深い学び」

の実現に資するプログラミング教育とすることが 重要である。(p )(下線は筆者)

と述べ,「第 部各学校段階,各教科等における改

訂の具体的な方向性」(p )の 中 で,小・中・高

(3)

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

!!!!!!!!!

年間の見通しの中での「プログラミング教育」に ついて述べている。

中央教育審議会答申を受けて作成された学習指導 要領をみると,小学校学習指導要領(文部科学省

a,p. )では総則で「⑶コンピュータ等や教 材・教具の活用,コンピュータの基本的な操作やプ ログラミングの体験」として項目を立て,

⑶第 の の⑴に示す情報活用能力の育成を図るた め,各学校において,コンピュータや情報通信ネッ トワークなどの情報手段を活用するために必要な環 境を整え,これらを適切に活用した学習活動の充実 を図ること。また,各種の統計資料や新聞,視聴覚 教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用を図 ること。

あわせて,各教科等の特質に応じて,次の学習活 動を計画的に実施すること。

ア 児童がコンピュータで文字を入力するなどの学 習の基盤として必要となる情報手段の基本的な操 作を習得するための学習活動

イ 児童がプログラミングを体験しながら,コン ピュータに意図した処理を行わせるために必要な 論理的思考力を身に付けるための学習活動

と述べている。これが「小学校におけるプログラミ ング教育の必修化」とされる部分であり,各学校で のプログラミング教育の実践を求めている。また,

前段ではプログラミング教育を支えるために必要な 環境の整備を学校の設置者に対して求めている。

⑵ 小学校における「プログラミング教育」のねら

小学校における「プログラミング教育」のねらい として,小学校学習指導要領解説総則編(文部科学 省 c,p )では,

「プログラミング言語を覚えたり,プログラミング の技能を習得したりといったことではなく,論理的 思考力を育むとともに,プログラムの働きやよさ,

情報社会がコンピュータをはじめとする情報技術に よって支えられていることなどに気付き,身近な問 題の解決に主体的に取り組む態度やコンピュータ等 を上手に活用してよりよい社会を築いていこうとす る態度などを育むこと,さらに,教科等で学ぶ知識 及び技能等をより確実に身に付けさせることにあ

る。」(下線は筆者)

と述べている。「プログラミング言語を覚えたり,

プログラミングの技能を育むことではない。」と明 記していることは今後の各学校での実践で忘れては いけない重要なことである。プログラミング教育必 修化を直前に控えても,いまだに「プログラミング 教育=プログラムを作ること,プログラムの言語を 教えること」と誤解し,「全ての子どもがプログラ マーになるわけではないので,プログラミングに興 味を持った一部の子どもに対して,一部のプログラ ミングが得意な先生が指導すれば良い」と考えてい る先生方や保護者,関係者が多い。

では,プログラムを教えないプログラミング教育 があるかというとそうではない。「プログラミング を体験」することによって,「プログラミングのよ さ」に気付いたり,社会がコンピュータによって支 えられたりしていることに気付くことも大切である。

「プログラムを作成する」ことは目的ではないが,

「プログラムを体験」しなければ,「プログラムの よさ」や「プログラムの仕組み」,「(利用しようと する)プログラムのもつ意味」を理解することはで きない。この点が小学校で必修化され,全ての先生 方が全ての子ども達に,教科等横断的に指導してい く上での難しい点と考えられる。

ひと言で言うと,「プログラミング教育はプログ ラムを教えることだけではなく,プログラミング的 思考を育てることである。」とまとめられることも 多いが,次に難しいのは「プログラミング的思考」

とは何かである。小学校学習指導要領解説総則編(文 部科学省 c,p. )では,プログラミング的 思考について,次のように述べている。( )内の 改行及び箇条書きは筆者

子供たちが将来どのような職業に就くとしても時 代を越えて普遍的に求められる「プログラミング的 思考」(

(ア)自分が意図する一連の活動を実現するために,

(イ)どのような動きの組合せが必要であり,

(ウ)一つ一つの動きに対応した記号を,

(エ)どのように組み合わせたらいいのか,

(オ)記号の組合せをどのように改善していけば,

(カ)より意図した活動に近づくのか,

(キ)といったことを論理的に考えていく力 )

を育むため,小学校においては,児童がプログラミ

(4)

ングを体験しながら・・(後略)

このように箇条書きすると,プログラミング的思 考が日々の生活の場面や様々な教科の学習場面で必 要となることがわかり,「プログラミングの時間」

として特設するのではなく,日々の教科等の授業の 中で計画的・継続的に取り組む必要性が見えてくる。

この「プログラミング的思考」こそが予測困難で 変化が激しいと言われるこれからの時代において,

課題の発見→課題の分析→課題解決法の検討→課題 の解決→振り返りによる改善といった一連の流れを 可能とする資質・能力の中心になると思われる。 「プ ログラミング的思考」の育成を意識して,各教科で の学習や教科等横断的な学習活動を行っていくこと が求められていると言える。さらにいうと,これは 小学校に限定したことではなく,小・中・高の 年 間,あるいはその後の高等教育や社会人においても 重視される資質・能力である。

⑶ 教育委員会や各学校における「プログラミング 教育」に向けた準備状況

文部科学省は 年 月に小・中学校の新しい学 習指導要領を告示し,小学校では 年度から,中 学校では 年度からの完全実施に向けて移行措置 が現在実施されている。「プログラミング教育」と ともに小学校学習指導要領改訂の大きな柱の一つ

「特別な教科道徳」は 年度から完全実施された。

また,教科としての「外国語」は従来の「外国語活 動」実践を基盤として各学校で準備が着々と進んで いる。その一方,プログラミング教育については,

内容面で新しいことに加え,学習用 PC の購入や ネットワーク環境整備など大きな予算が必要であり,

準備の遅れが心配されるところである。

文部科学省は公立小学校を管轄する市町村教育委 員会に対して「『プログラミング教育』に向けた教 育委員会の取組状況調査」を 年(文部科学省

b)と 年(文部科学省 a)に実施した。

同調査ではプログラミング教育必修化に向けた教育 委員会の取組内容から取組状況を のステージに分 類している。ステージ分類と取組状況・取組内容を Table に,調査結果を Table に示す。

年の調査は平成 ( )年度末の 年 月時点での市町村教育委員会の取組状況,同じく

年の調査は平成 ( )年度末の 年 月

時点での取組状況を表している。 年の調査で

「ステージ :特に取り組みをしていない」が半数 以上であり,その理由を「何をすれば良いかわから ない」や「そもそも学習用 PC やネットワーク環境 が整備されていない」と回答するなど,教育委員会 としての取組が不充分であることが明らかになった。

その後 年間で着実に取組が進んでいると思われる。

完全実施まで 年となった 年 月現在, 「ステー ジ :特に取り組みをしていない」は .%と激減 し た が,「ス テ ー ジ :授 業 を 実 施 し て い る」は

.%である。なお, 年連続で実施されたこの調

Table ステージ分類と取組状況・取組内容

ステージ ;特に取組をしていない。

① プログラミング教育の情報を収集しているが,

情報収集以外の取組をしていない。

② 担当を決めてはいるが,情報収集以外の取組を していない。

ステージ ;担当を決めて取り組んでいる。

③ 教育委員会内で,プログラミング教育の担当を 決めて取り組んでいるが,研修・研究会,あるい は,授業の実施はしていない。

ステージ ;研究会や研修を行っている。

④ 教育委員会主導で,プログラミング教育の研究 会などを行っている。

⑤ 所管する小学校教員に対して,プログラミング 教育の研修を行っている。

⑥ 教育委員会主導の取組は実施していないが,一 部の教員がプログラミング教育の研究会などを 行っている。

ステージ ;授業を実施している。

⑦ 教育委員会が主体となって,小学校でプログラ ミング教育の授業を実施している。

⑧ 管内の小学校単位で,独自にプログラミング教 育の授業を実施している。

⑨ 一部の教員が独自に,小学校でプログラミング 教育の授業を実施している。

(文部科学省 a)

Table プログラミング教育に向け た教育委員会の取組状況

ステージ .% .%

ステージ .% .%

ステージ .% .%

ステージ .% .%

(文部科学省 b, a をもとに筆者作成)

(5)

Table 『プログラミング教育』に向けた取組状 況調査項目

問 :各学校が行う校内研修等を除いた,研修会の 実施状況・実施予定

① 教育委員会が行うプログラミング教育に関す る実践的な研修

② 教育委員会以外(NPO,大学,民間企業等)

が実施する実践的な研修への小学校教員の参加 状況

③ ①,②を合わせた場合の研修実施状況・実施 予定

問 :各学校が行う校内研修,研修資料を用いた個 人研修の実施状況・実施予定

問 :プログラミング教育の授業の実践,または模 擬授業の実施状況・実施予定

問 :問 ③及び,問 ,問 の回答内容を含めて,

プログラミング教育に関する実践的な研修,また は,授業の実践や模擬授業の実施状況・予定

(文部科学省

査は教育委員会を対象とした調査であり,その指導 下に置かれる各小学校において,どのくらいの割合 で授業を実施しているかは明らかになっていない。

文部科学省は,完全実施まで半年と迫った 年 月 日現在で各教育委員会が所管する「各学校」

の取組状況について,調査項目を若干変更した上で,

同様の調査(文部科学省 a)を実施した。調 査項目は,大問が つで,その中の問 はさらに つの小問に分かれていて,全体で以下の 項目であ る。さらに問 として教育委員会の取り組みとして 特記事項を自由記述で求めている。具体的な調査項 目を Table に,調査結果を Table に示す。

これらの問いに対して,次の四段階で回答する。

⑴ 実践的な研修を行っていない。年度末までに実 施予定はない。

⑵ 一部の学校の教員に実施済又は年度末までに実 施予定。

⑶ 年度末までに各校 人以上の教員に実施予定。

⑷ 各校 人以上の教員が実施済。

この調査は,「単にプログラミング教育の必要性 などを座学等で学ぶことのみを内容とするもの」は

「実践的な研修」に当たらないとした。また「教育 委員会としての取組状況」ではなく,「(所管する)

各学校の取組状況」として調査を実施した点が,

年, 年の調査とは異なる。さらに「調査結 果については,全国,都道府県別の集計に加えて,

市区町村教育委員会の個別の状況についても公表す る予定です。また,未回答の市区町村教育委員会に ついては,市区町村教育委員会名とともに未回答で ある旨を公表いたします。」とやや強い調子で明記 した上で,全国の市町村教育委員会に対して回答を 求め,実際に全国の全市町村教育委員会の回答結果 を個別に Web 上で公表している。この時期にこの 調査を実施した文部科学省の「本気度」と「危機感」

が感じられる。本調査の問 に対して「⑴実践的な 研修を行っていない。年度末までに実施予定はな い。」との回答は 年, 年調査の「ステージ

:特に取組をしていない。」に相当するとすると,

全国ほぼ全ての教育委員会で「プログラミング教 育」に対する取組が行われていると言える。

一方,「プログラムを体験する」に欠かせない学 習用 PC の整備状況についてはどうであろうか。文 部科学省は毎年「教育の情報化の実態等に関する調 査」として,年度末の 月 日時点での学習用 PC や大型提示装置の台数,普通教室へのインターネッ ト接続の可否等について調査を行っている。 年 月に公表された「平成 年度学校における教育の 情報化の実態等に関する調査」(文部科学省 b)によると, 年 月 日現在で,全国の小学 校における学習用 PC の保有台数は .人/台とい う。この結果を見ても,プログラミング教育」を実 施する前提となる「一人 台(せめて三人に 台)

の学習用 PC」という整備状況にはほど遠い状態で,

各学校への環境整備は喫緊の課題である。文部科学 省は従来から学校の情報化に関して ICT 環境整備 経費として地方交付税措置を行ってきたが,プログ ラミング教育必修化を直前に控え 年度政府予算 請求に向けて, 年 月 日に「児童生徒 人 台コンピュータ」の実現を見据えた施策パッケージ

(通 称 GIGA ス ク ー ル 構 想)」(文 部 科 学 省 b)を発表し,各学校への学習用 PC の導入が速や かに進むようアピールしている。最終的に各学校へ

Table 教育委員会の取組況調査結果

調査項目

.% .% .% .%

.% .% .% .%

.% .% .% .%

.% .% .% .%

.% .% .% .%

.% .% .% .%

(文部科学省 a をもとに筆者作成)

(6)

の学習用 PC の導入が進むかどうかは,学校の設置 者である各市町村が地方交付税措置された ICT 環 境整備経費をどのように使うかである。

⑷ 「プログラミング教育」をめぐる関係団体等の 動向

年に中央教育審議会答申(文部科学省 ) で,小学校教育への「プログラミング教育」導入の 方針が示されて以来,書店には多くの関連書籍が並 んだ。例えば,教員向けには「プログラミング教育 の考え方とすぐに使える教材集」(赤堀侃司 ) が出版され,「プログラミング教育」が学校教育に 取り入れられるようになった背景から詳しく解説し,

各教科等における教材も数多く紹介してある。同書 で紹介された教材は,MIT メディアラボ(Massa- chusetts Institute of Technology Media Lab)が開 発したビジュアル型プログラミング言語 Scratch を 使用している。Scratch は,プログラミング初学者 にもわかりやすく,ブロックを重ねるようにしてプ ログラムの構文を考え,まずは動かして,うまく動 かなければ,その場で修正することも簡単である。

なおかつ,効果音や背景と組み合わせて本格的な ゲームなどの制作にも対応できる。このような特徴 を持つことから,プログラミング教育関連の書籍に は,Scratch を使用したものが多い。例えば,松下 孝太郎・山本光( )の「親子でかんたんスクラッ チプログラミングの図鑑【Scratch .対応版】」や 竹林暁・澤田千代子( )の「できるキッズ 子 どもと学ぶ Scratch プログラミング入門」などが挙 げられる。

また,一般家庭向けではあるが,「親子で始める プログラミング教育」(株式会社バンダン 未来の 仕事研究所 )では,「プログラミング的思考っ て何だろう」という解説や,プログラミング的思考 が日常の家事や様々な業務で生かせることを解説し ている。具体的なプログラミングの技術ではなく,

学習指導要領が目指している「学びの基礎となる資 質・能力」をわかりやすく解説していて,小学校教 員の研修用図書としても適切である。

書籍だけに留まらず,子どもを対象とした「プロ グラミング塾」も都市部を中心に数多く開設されて いる。さらに,非営利のボランティアによって運営 される一般社団法人 Coder Dojo も全国各地で活動 を行っている。Coder Dojo の web サイトによると,

「 年 月現在で,世界 カ国・ の道場,

日本には 以上の道場」があるという。コンピュー タを利活用した教育関連の学会等で Coder Dojo の 実践が報告される機会も多い。例えば, 年 月 に開催された教育システム情報学会第 回全国大会 で,谷岡ら( )は徳島でのワークショップの様 子を報告している。

.小学校教員の養成

⑴ 教職課程における情報活用能力に関する授業科

現在,全国の小学校ではプログラミング教育必修 化に向け,模擬授業を含めた校内研修等が実施され ている。では,これから小学校教員になろうとして いる大学生に対する教職課程の状況はどうであろう か。筆者が勤務する大学の教職課程において,小学 校教諭一種免許状を取得する学生は,国語,算数,

社会等の各教科の「教科指導法」(各 単位)を必 修単位としている。これらの科目の中で「情報機器 及び教材の活用を含む」内容を学修する。(幼稚園 教諭一種免許状に関しては「保育内容指導法」にお いて同様)。筆者が担当する「算数科指導法」を例 にすると,講義室に備え付けられた電子黒板と指導 者用デジタル教科書を利用した授業の指導案作成や 模擬授業を実施している。学習指導要領を用いて,

プログラミング教育のねらいや,小学校 年の「正 多角形」のところでプログラミングを体験するよう 例示されていることなど,内容面について講義の中 で触れているが,大人数での講義であり,プログラ ミングそのものについては実践的な指導ができる環 境にない。他の「教科指導法」についても,「情報 機器及び教材の活用」について触れるレベルで,プ ログラミングの体験やプログラミング教育を意図し た指導案の作成や模擬授業は行っていないのが現状 である。

また,教員免許法の「情報機器の操作」に関する 科目として,「情報基礎入門」「情報処理基礎」(各 単位)を共通教育科目で設定し,卒業必修単位と している。これらの科目の内容は word や excel の 操作法,データの集計・分析等のアカデミックスキ ルに関する内容が主であり,直接プログラミング教 育に関する内容は含まれていない。

直接的に「プログラミング教育」に関係する教職

課程の授業科目として「教育の方法と技術」( 単

位)がある。この科目は「情報機器及び教材の活用」

(7)

Table 大学生のプログラム作成経験 未経験 授業で少し 行未満 行以上

全体 .% .% .% .%

.% .% .% .%

.% .% .% .%

.% .% .% .%

として,「情報機器を活用した効果的な学習や情報 活用能力の育成を視野に入れた適切な教材の作成・

活用に関する基礎的な能力を身につける」ことをね らいとしている。

⑵ 高校までの情報活用能力に関する教育内容

では,現在の大学生が大学入学までに受けてきた 教育内容はどうであろうか。現在の大学生は基本的 に平成 年に告示(高等学校は平成 年告示)され た現行の学習指導要領に沿った授業を受けてきてい る(小学校まではさらにその前の学習指導要領の内 容)。現行の小学校学習指導要領(文部科学省 a)では,プログラミングについての学習内容はな いが,情報活用能力については取り上げてある。情 報活用能力を育成するために,

コンピュータに慣れ親しませることから始め,

キーボードなどによる文字の入力,電子ファイルの 保存・整理,インターネットの閲覧や電子メールの 送受信などの基本的な操作を確実に身に付けさせる とともに,文章を編集したり図表を作成したりする 学習活動,様々な方法で文字や画像などの情報を収 集して調べたり比較したりする学習活動,情報手段 を使って交流する学習活動,調べたものをまとめた り発表したりする学習活動など,情報手段を適切に 活用できるようにするための学習活動を充実するこ とが必要である。

とされている。「言語活動の充実の部分」で論理的 思考の重要性には触れているが,当然プログラミン グ的思考についての記述もない。

中学校学習指導要領(文部科学省 b)では,

技術・家庭科[技術分野]の内容「D情報に関する 技術」で計測・制御に関連して,「情報処理の手順 を考え,簡単なプログラムが作成」が内容として触 れてある。

さ ら に,高 等 学 校 学 習 指 導 要 領(文 部 科 学 省

)では,「情報」科目は「社会と情報」「情報の 科学」の 科目が設定され,どちらかの科目を選択 としている学校が多いが,「社会と情報」ではプロ グラミングに関する内容の取り扱いはない。「情報 の科学」では,内容に「⑵問題解決とコンピュータ の活用」として,「問題の解決をアルゴリズムを用 いて表現する方法を習得」させることを目的として いる。

ただし,中央教育審議会教育課程部会情報 WG の資料(文部科学省 )によると,教科情報に おける各科目の履修率は,「社会と情報」が .%,

「情報の科学」が .%である(教科書の需要数か ら算出したものであり,学校数・学級数では無いも のの実生徒数に近いと考えられる)ことから,高校 時代に「情報の科学」を履修し,さらにプログラミ ングを経験している大学生は多くないと考えられる。

⑶ 小学校教員志望学生のプログラム作成経験

筆者が担当する科目の受講学生を対象に,「プロ グラムの作成経験」について 年 〜 月に調査 を行った。対象は「算数科指導法」(主に 年生 有効回答 名),「教育の方法と技術」(主に 年生 有効回答 名),「保育・教職実践演習」( 年生 有効回答 名)の受講者である。いずれも小学校教 員免許必修科目である。調査結果を Table に示す。

年生で 行以上のプログラムを作成した経験者 が .%であったことは驚きであった。また,授業 に関係して少し経験があるとした学生も .%と多 かった。大学入学後の必修科目「情報基礎入門」「情 報処理基礎」ではプログラミング演習は行っていな いので,高校での授業もしくは独学でのプログラミ ング経験と考えられる。

⑷ Code Studio を利用したプログラミング演習

今年度より筆者が「教育の方法と技術」を担当す るようになり,「プログラミング教育」に関する内 容を取り扱うこととした。授業は コマ 分× コ マであるが,他の内容についても取り扱うので,

コマの全てをプログラミング演習には使えない。前 任者が PC 演習を行っていた コマをそのまま利用 してプログラミング演習を行うこととする。⑶で述 べたように授業対象の 年生は「プログラム未経験 者」が %近く,他の学生も「授業で少し」経験し ただけであり,ほぼ初学者と見なすことができる。

本来ならば,採用後の小学校での実践を考えると

Scratch を 利 用 す る の が 適 切 と も 思 わ れ る が,

(8)

Scratch は自由度が高く「何でもできる」が,言い 換えれば,初学者の大学生にとっては「何をすれば いいかわからない」ことが予想できたので,今回は,

Scratch と同じく,ビジュアル型プログラミング言 語で,チュートリアルも充実し,小学校低学年から 全ての年齢に対応している Code Studio を利用した。

大学生とはいえプログラミング初学者なので「コー ス 」を利用した。「コース 」は小学校 〜 年 生が主な対象とはいえ,順次実行やループ,条件文 のチュートリアルがあり,デバッグのためのレッス ンも含まれている。チュートリアルの中で,ビデオ 教材があるが日本語化されていないので,飛ばして 良いこととした。

Code Studio に関しては,今回のプログラミング 演習に先立ち,佐賀大学理工学部掛下哲郎が 月に 佐賀大学附属中学校の生徒を対象に実施したプログ ラミング講座に筆者も指導補助として参加し多くの 示唆を得た。この講座を通して得たプログラミング 教育に関する多くの示唆は,「コンピュータ・プロ グラムを書こう:中学生を対象としたプログラミン グ講座」(掛下哲郎・草場聡宏・杉町信行( ))

として 年 月の情報処理学会研究会(CE‐ ) において報告した。

月の講座でもコース を利用したが,中学生は 分の講座で平均 のパズルを完成させた。コース のパズルは全部で約 なので,大学生を対象に 実施する場合にも, 分× コマで全部のパズルを 完成させることができるだろうと予想し,プログラ ミング講座に コマ当てることとし, コマ目は演 習予備で,早く演習が終わった学生は発表会で発表 する「自由課題」作成の時間,または科目全体のレ ポート作成の時間とした。 コマ目は,小学校教員 としてプログラミングの授業の実践を想定し,小学 校現場の PC 教室に多く導入され,本学の PC 演習 室 に も 導 入 さ れ て い る 学 習 活 動 支 援 ソ フ ト

「SKYMENU」を利用して,各自の画面を他の学 習端末に画面転送した。作成した自由課題のねらい や工夫した点などについて発表し相互評価を行った。

プログラミング演習を実施した コマ(各 分)

の内容は次の通りである。

① Code Studio へのサインインの方法とコース 概要の説明と演習

② 各自で演習

③ 各自で演習

④ 演習予備及び自由課題の作成

⑤ 自由課題発表会

Code Studio は ID 登録しなくても利用できるが,

継続的に利用すること,指導者が受講者の状況をモ ニターすることを考え,筆者が教員として登録を行 い,受講者を つのクラスに分けて登録した。受講 者は全体で 名だが,演習室の関係からプログラム 作成経験者(ほとんどが「授業で少しだけ」状態)

を中心の 名(Aクラス)とプログラム未経験者を 中心の 名(Bクラス)に分けた。プログラム作成 経験者には「自分が進んだら,周りを助けてあげて」

と教職科目ならではの形で演習を進めることができ,

学生にとっては,完成させたプログラム以上の効果 があったものと思われる。

実質 分× コマでプログラム作成演習を行った が,Aクラス 名中 名,Bクラス 名中 名が全 パズルを完成させることができた。平均パズル数は Aクラスが .,Bクラスが .であった。受講 者の感想等については今後分析を進めていきたい。

.まとめ

世紀になり早くも 年が過ぎようとしている。

ICT 関連分野をはじめ様々な分野での技術の進歩,

発達は急速である。 年後はおろか, 年先, 年 先のことを予想することも難しい。こうした時代に 対応し,更なる進歩を支える人材を育てるためにも,

小学校において「プログラムング教育」が必修化さ れることは必然と言える。学習用 PC をはじめとし た様々な機器の整備には多額の予算を必要とするが 交付税措置もあり,充実が進むであろう。それ以上 に課題となるのが指導する教員の養成・研修と考え る。筆者は佐賀大学の教員とも協力し,今後も教育 委員会や各学校での教員の研修を実施していく計画 である。

また,大学生に対しても,時代に対応できる情報 活用能力を高める必要性を実感するとともに,プロ グラミング教育を支える小学校教員を養成するため に教職課程をはじめとした各科目の内容に工夫・改 善を継続的に進めていきたいと考えている。

引用文献等

赤堀侃司( )「プログラミング教育の考え方と すぐに使える教材集」ジャムハウス

一般社団法人 Coder Dojo Japan 子どものためのプ

(9)

ログラミング道場 https://coderdojo.jp/(最終 閲覧日 / / )

株式会社バンダン未来の仕事研究所( )「親子 で始めるプログラミング教育 子供の論理的思 考 力 と 問 題 解 決 力 を 高 め る 育 て 方」

KADOKAWA

CODE STUDIO https://studio.code.org/(最 終 閲 覧日 / / )

掛下哲郎・草場聡宏・杉町信行( )「コンピュー タ・プログラムを書こう:中学生を対象とした プログラミング講座」情報処理学会研究報告 CE‐ No.

松下孝太郎・山本 光( )「親子でかんたんス クラッチプログラミングの図鑑【Scratch .対 応版】」技術評論社

文部科学省( a)小学校学習指導要領(平成 年告示)東京書籍

文部科学省( b)中学校学習指導要領(平成 年告示)東山書房

文部科学省( )高等学校学習指導要領(平成 年告示)東山書房

文部科学省( )中央教育審議会教育課程部会情 報ワーキンググループ資料 https://www.mext.

go.jp/b̲menu/ shingi / chukyo / chukyo3 / 059 / siryo/̲̲icsFiles/afieldfile/2015/11/11/1363276

̲08̲1.pdf(最終閲覧日 / / )

文部科学省( )幼稚園,小学校,中学校,高等 学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善 及び必要な方策等について(答申)平成 年 月 日 中 央 教 育 審 議 会 https://www.mext.

go.jp/b̲menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin /̲̲icsFiles/afieldfile/2017/01/10/1380902̲0.

pdf(最終閲覧日 / / )

文部科学省( a)小学校学習指導要領(平成 年告示)東洋館出版社

文部科学省( b)中学校学習指導要領(平成 年告示)東山書房

文部科学省( c)小学校学習指導要領(平成 年告示)解説総則編 東山書房

文部科学省( d)中学校学習指導要領(平成 年告示)解説総則編 東洋館出版社

文部科学省( a)高等学校学習指導要領(平成 年告示)東山書房

文部科学省( b)文部科学省委託事業「平成 年度次世代の教育情報化推進事業『教育コンテ

ンツの開発促進のために必要な要件等に関する 調査研究』報告書『教育委員会等における小学 校プログラミング教育に関する取組状況等につ いて』」 (㈱政策研究所受託)https://www.mext.

go.jp/ component / a ̲ menu / education / micro ̲ detail/̲̲icsFiles/afieldfile/2018/11/12/1411018

̲1.pdf(最終閲覧日 / / )

文部科学省( a)「文部科学省委託事業次世代 の教育情報化推進事業『平成 年度教育委員会 等における小学校プログラミング教育に関する 取組状況等について』の調査」(NTT ラーニ ングシステムズ株式会社受託)https://www.

mext. go. jp / component / a ̲ menu / education / micro̲detail/̲̲icsFiles/afieldfile/2019/05/28/

1417283̲002.pdf CoderDojo(最終閲覧日

/ / )

文部科学省( b)平成 年度学校における教育 の情報化の実態等に関する調査結果(概要)

https://www.mext.go.jp/content/20191224-mxt

̲jogai 01-100013287̲048.pdf(最終閲覧日

/ / )

文部科学省( a)「市町村教育委員会における 小学校プログラミング教育に関する取組状況等 調査」https://www.mext.go.jp/content/202001 07-mxt̲jogai 02-000003715̲002.pdf(最 終 閲 覧 日 / / )

文部科学省( b)「GIGA スクール構想の実現に ついて」https://www.mext.go.jp/a̲menu/ other/

index̲00001.htm(最終閲覧日 / / ) 谷岡広樹・矢野里奈・松浦健二・佐野雅彦・上田哲

史( )「ワークショップ形式によるプログ ラミング教育実践」第 回教育システム情報学 会第 回全国大会論文集B ‐

竹林 暁・澤田千代子( )「できるキッズ子ど

もと学ぶ Scratch プログラミング入門」インプ

レス

Table 大学生のプログラム作成経験 未経験 授業で少し 行未満 行以上 全体 .% .% .% .% 年 .% .% .% .% 年 .% .% .% .% 年 .% .% .% .%として,「情報機器を活用した効果的な学習や情報活用能力の育成を視野に入れた適切な教材の作成・活用に関する基礎的な能力を身につける」ことをねらいとしている。⑵ 高校までの情報活用能力に関する教育内容では,現在の大学生が大学入学までに受けてきた教育内容はどうであろうか。現在の大学生は基本的に平成 年に告示(高等学校は平成 年告

参照

関連したドキュメント

エクアドルでの小学校教育 横 山 か お り (小学校教諭・浦安市立北部小学校教諭) 昨年、ある日の天声人語で協力隊が紹介されていました。その中に、人類学者、中根千枝 さんが出した本の中の、「がんばりすぎると、落胆や不満も大きくなる」という一節が出てい ました。私たち、現職教員の多くがこの言葉に納得してしまうのではないでしょうか。

関連研究 近々の事例紹介としては、茨城県石岡市立高浜小 学校で行いました micro:bit の授業事例がある。詳し い活動ならびに参考サイトを下記に記述させていた だく。 < 2018

戦後の日本の公立小学校における外国語(英語)を取り入れた国際理解教育課程研究は、平 成 4

教育用に設計された言語を用いることにより、 「プロ

1 プログラム 小学校中学年 いじめを傍観しない基盤づくり 2 領域・単元 学級活動(2)-ウ 望ましい人間関係の形成. いじめのない、楽しいクラスをつくろう 3

Coburg Primary School は,1853 年に設立された文化的,社 会的多様性が豊かな公立の小学校である[18].修学準備学 年から 6

Keywords : Programming education, Web conferencing system, Information education (2020年10月30日受理)

考察 本研究では,小学校6年理科「電気の働き」において,