自我 同一 性 の発 達 的変 化 と 学 校 教 育 ・教 育 相 談 (
Ⅱ ) 1
‑大学期における同一性地位の発達‑
D e v el o p m e nt alC h a n g eo fE g o‑I d e n t i t yi nU ni v e r si t yS t u d e n t s :I d e nt i t yatu ni v e r si t ye n t r a n c ea n dt h r e ey e a r sa f t e r
弘前大学教育学部
2
豊 嶋 秋 彦Ⅰ.問題 と方法
I‑ 1.
問題の布置Ⅰ‑2.データ収集 と分析の方法
Ⅲ.
同一性の発達的変化Ⅲ‑ 1
.危機 と投入の発達的変化Ⅱ‑ 2.
同一性地位の移行Ⅲ.
総括 と総合的考察Ⅰ. 問 題 と 方 法
Ⅰ‑1
.問題の布置本稿は,対人心理学 ・発達心理学 ・性格心理学等の心理学各分科における頚末的な理論形成 ・仮 説検証を大学生被験者を使 って追求す るといった,よ くあ りがちな立場か らではな く,大学期の適 応 と発達 ・社会化の実態を大数的アプ ローチと発生類型論的事例研究のアプ ローチの双方 によって 解明 し,それをもとに大学期内部はもとより,大学期以前,および初期成人期の教育 ・学生 (教育) 相談 ・精神衛生活動の焦点や方 略を提起 してい く く大学生)学の立場か ら,大学生の 自我 同一性を 取 りあげるものである。 さて, 自我同一性達成か大学期の発達課題 として安当であるかについては,
"現代 日本では 「モラ トリアム人間」が 「社会的性格」 とな っている"とした小比木 (
1 9 7 8 )
以来,"我が国青年では,アイデ ンテ ィテ ィ形成の課題 よ りも 「親密
v s .
孤独」の解決が先行 している"とい う福島 (
1 9 9 4 )
, "我が国青年ではアイデ ンテ ィテ ィ形成 と親密性の課題 とが併存す る" との 無藤 (1 9 9 4 )
な ど,調査 と臨床の知見 との総合に拠る異論や,小比木 (1 9 7 9 )
のプ ロテウス的人間 の勧め,森岡( 1 9 8 9 )
の ̀̀単一の役割への固執はむ しろ不健康であ って,様 々な役割を適度 に交換で きるように複数の分身を内在 してお く (開かれた同一性)こそか望 まれる" とい うプロテウス的拡 散 に近似 したあ り方の推奨など,教育論ない しは価値定立 レヴェルでの異論が提出されてきている。事実,我が国の先行研究において
4
年次学生の同一性達成者は一貫 して少数 に留ま っている (無藤1
本研究の Ⅱ章の一部 は東北心理学会第4 4
回大会( 1 9 9 0 . 8 ) において発表 された0
2
学校教育講座心理学教室 ・保健管理センター非常勤カウンセラー.1 9 7 9 ,
豊嶋ほか1 9 9 0 a , b1 9 9 2 ,
豊嶋1 9 9 21 9 9 5 a , b ,
都築1 9 9 3 ) 1) 0
しか し, 「モラ トリアム社会」か総合社会の文化の‑相であるに して も,大学生が卒業後に参入 す る成人期の公 的制度的下位社会は,職業人や成人 としての役割への忠誠,その 自我 中核的定位, そこでの社会的課題の達成を要求す る。従 って 「職業人」期あるいは 「初期成人期」への円滑な移 行 にとって, 自我同一性達成か,少な くともその役割に関す る早期完了か,外的な発達課題 として 存在す ると見倣 しうる。 これに対 して親密性は,特に職業人の外的課題 としては第二義的であろう し,プ ロテウス的転変を してい くか どうかは成人期以降の問題 に過ぎない。そ して事実の レヴェル において も,
Y at e r m a ne ta l .(1 9 711 9 7 4 )
は大学 1年次内部における職業的同一性のポジテ ィブ な変化 と,1
年次か ら4
年次にかけての達成者の増大 を,X e i l m a n(1 9 7 9 )
の1 2 ‑2 4
歳の年齢集 団 に対す る横断研究は,年齢増に伴 う達成者の増大,早期完 了及び拡散者の減少,大学期以降におけ る低次地位への逆行が見 られないこと (" n ob ac k sl i di n g‑ w a se vi d e ntb e y o n dt h ec ol l e g e y e a r s ",p2 3
1)を報告 した。我が国大学生のデータにおいて も,達成者は少数であるとはいえ, 発達的にはよ り高次の地位か大学期及び学部期の間に増え,より低次の地位が減 る 「達成化への動 き」を我 々は見 出 している (豊 嶋ほか1 9 9 0 a , b1 9 9 2 ,
豊嶋1 9 9 21 9 9 5 a , b )
し,都築 (1 9 9 3 )
の 横断的資料か らも同様の動 きを看取できる。
即ち,同一性の達成は,社会的要請であると同時に, 青年期あるいは大学期における発達の,事実 としての方向性でもある。こうして <大学生 >学の観点か らは,
4
年次学生や卒業後の初期成人期における同一性達成ない し早期完 了の状況を捉えること,学校 (大学)保健管理の観点か らは拡散の状況を捉え ることと, 大学生期内部での 自我 同一性の変化 ・発達を捉え ることが重要な課題 となるが,従来の研究は少数 の対象者 に同一性地位面接法( X a r ci a 1 9 6 6 )
による追跡 と して遂行 された り( V at . e r m a ne ta l . 1 9 711 9 7 4 ,N a r c i a 1 9 7 6 ,
小沢1 9 8 61 9 8 7 .
小沢ほか1 9 8 8 a )
,横断的デザイ ンで調べ られている ( N ei l n a n1 9 7 9 ,
山田1 9 81 )
.そこで我 々は大学期 内部での移行を大数的な追跡によって調査 す るプ ロジェク トを組んで, これまで教養部 (1
年制)終了時点か ら4
年次への同一性地位移行 と 移行の予測要因,大学入学直後か ら4
年次への移行 と予測要因について報告 してきた (豊嶋ほか1 9 9 0 a , b1 9 9 2 ,
豊嶋1 9 9 21 9 9 5 a , b )
。 しか しこれ らの うち後者 (入学直後か ら4
年次)の報告 は概報 に過ぎない。か くて本稿の第‑の 目的は後者のデータを詳細に分析 して,大学期への参入時 一終期の間の 同一性の発達的変化を記述 し,さらに同一性達成 という課題にとっての大学期の意味 を考察す ることにおかれる2)
。なお,後者を捉え るための縦断的調査は, これまで弘前大学の昭和6 2
年入学 コホー ト及び,その コホー トといれかわ って入学 してきた平成3
年 コホー トに対 して完 了 済みであ り,弘前大学教養部制度の廃止を控えた平成5
年 コホー トに対 して も現在展開中であるが, 本稿では紙幅の都合上,昭和6 2
年 コホー トに限った分析が行われ る。さて,かか る同一性の発達や地位移行 に関する先行研究は,上述の通 り,大学期 における達成方 向への発達 (「達成化への動き」)の存在を示 しているか,その一方で
Y at e r m a ne tal .(1 9 71 )
は,大学1
年次の間にイデオ ロギ‑領域の同一性拡散者が増大す ると報告 し,N a r ci a
(1 9 7 6 )
は大 卒6
年後 に大学期の地位か ら低下す る層を見 出 し,豊嶋ほか (1 9 9 0 a1 9 9 2 )
も,教養部 (1
年制) 終了時点か ら4
年次への同一性地位移行の研究 において,全体的には 「達成化への動 き」か明 らか な一方で,教養部終了時点の高次の地位者が卒業年次の地位を 「拡散的」地位3)
に低下 させてい く 現象を見 出 して, "学部期における 「達成化への動き」 と 「拡散化への動き」 との併存捨玩" と総括 した。即ち,大学期あるいは青年期は二重の意味で同一性形成の "臨界期"であると考え られる。
その第一の意味は, この時期の内部で明確な 「達成化への動 き」が見 られるとい う意味であ って,
Meil man
のデータか ら 「(この時期か)最初の完全な同一性布置の形成 にとり重大な,多分に臨界 的な時期である」 と論評 した高橋( 1 9 9 1 ,4 5
頁)もこの第一の意味を重視 している。第二の意味は, 個別的には拡散化への危険を卒み地位変動を しなか ら全体 (マス)的には達成化‑ 向か うという意 味での臨界性 (豊嶋ほか1 9 9 2 ,3 0
頁)である。そ してそもそも,青年期の基本的葛藤か <同一性 達成vs拡散 >にあるとした ら,第二の臨界性の存否 と実態を捉えることか重要であろう。 こうして 本稿の第二の 目的は, "大学期 における 「達成化‑の動 き」 と 「拡散化‑の動 き」 との併存括抗"の検証 におかれる
。
上述の二つの 目的に加えて,性別 ・学部別の同一性の状況や性差 ・学部差を記述 しなが ら,派生 的な仮説を検証す ることか,本稿の副次的 目的となるか, これを 目的とす るのは以下の理由か らで ある。
Eri ks o n ( 1 9 6 8 )
は,先述 した無藤の "アイデ ンテ ィテ ィ形成 と栽密性の課題の併存"か青 年一般の特徴ではな く女子青年の特殊性であると捉えてお り,高橋 (1 9 8 6 )
ち "女子青年における 特殊性"仮説を広汎な文献展望か ら導 出 し (1 9 8 6 )
,ついで,男子学生 に見 出された同一性地位 と 栽密牲地位 との連関か女子学生では認め られない一方で,女子学生の栽密性地位か男子 よりも高い ことを見 出 して, "女子 における並行"仮説の傍証 と捉えている (1 9 8 8 )
。また, 山本( 1 9 8 8 )
は 女子青年における "女性役割獲得の課題の並存"杏,高橋 (1 9 8 6 )
は女子青年の職業的同一性か, 女性性 とではな く男性性 と関連 していることを,それぞれ文献展望によって指摘 した。 このように 女子青年おいて同一性達成の課題 と親密性の課題 とか並存 し, しかも自我同一性形成 に基軸的機能 を果たす と思われ る職業的同一性 と性的同一性 との関連性か複雑 であると した ら,女子の同一性の 状況は,男子 に比 して拡散的であ り,かつ,危模体験 も男子 よりも強いであろうし,さらには大学 期 における同一性の発達 も男子 と異なると予測 される。か くて性別の検討か必要 になる。他方,M
ar ci a
を筆頭 とす る同一性地位の研究者達か,領域別地位の第‑ に職業的同一性を挙 げ, 全体的地位( over al lst at us)の判定 に当た ってそれを基軸のひとつに しているように,職業的同
一性は全体的同一性の達成にとって有力な契機になるとした ら,職業人要請を 目的 とする 「目的学 部」 と,教養や研究志向の学部 とでは,地位分布 も移行 も異なると予想 され,事実,我 々は前 出 し た教養部終了時点か ら4
年次‑の地位移行研究において, 「達成化への動き」か教員養成学部学生 で明 らかなのに対 して,他学部4)
では不明確であることを報告 している (芳野1 9 9 0
,豊嶋ほか1 9 9 2 )
。 こう して,学部別の分析 と, ̀̀教員養成学部では他学部 よりも 「達成化への動き」か強い であろう" といケ仮説の検証 とか必要 となる。
しか しここで,同一性地位の評定を巡 って,言及すべき事項か残 っている。実は同一性地位を捉 え るために伝統的な地位面接法 に拠ることは,二つの困難をもつ。その第一は大数的データ処理 に は不適当であ ることであ り,第二は全体的同一性地位の判定法が不明確なことである。 この 2点 と も同一性地位判定尺度 (加藤
1 9 8 3 )
の採用によって克えることかできるというのか以下の論議の 結論であるか, ここでは第二の困難について詳論 したい。W ar ci a
における全体的同一性地位の判定方法は,無藤( 1 9 7 9 )
によれば "職業,宗教,政治の3
領 域 ごとに地位を判定 したのちに, 「その3
つの単純合計と して,‑‑・「全体的同一性地位』を評定 す る.
但 し,r
全体 的同一性地位』の評定にあた っては,勘や臨床的判 断か必要 なこともある」"
( 1 7 8
頁) とされるが,実はN a r c i a( 1 9 6 6 )
には,領域別の地位判定法は示 されている一方で,全 体的同一性に関 しては "文章完成法への反応に与えた得点の総和を 「同一性達成の全体的測度に し たs e r v e da sa no v e r a l lm e a r s u r eo fi d e n t i t ya c h i e v e m e n t 」 (p5 5
1),それが 「全体的自我 同一性o v e r al le g oi 血mt i t y 」 ( p 5 5 3 )
である" との記載 しかな く,領域別の地位判定か全体 的地位判定に どう関係するのかか不分明なのであるo先の無藤の引用は,X a r c i a
の方法そのもの と い うよ りもむ しろ 「無藤による理解」 と見倣 され るのである机 いずれにせ よ,唆味,総和主義の 讃 りを免れまいoそれを避けるべ くY a t e r m a ne ta l .( 1 9 711 9 7 4 )
は,領域別地位のみに絞 った縦 断的調査を行 っている. ところか E r i k s o n( 1 9 5 9 )
において 自我 同一性 とは, "すべての各同一性 の漸進的な統合か ら発達す る,‑‑ 部分の総和以上の独 自の特質を獲得 したもの" (エ リクソン1 9 7 3 ,1 1 3
頁,1 4 7 ‑ 1 4 9
頁等)であ り,同一性形成 とは, "子 ども時代を通 して身につけ られる同一化 群の 中か ら有意義なものを選択的に強調 し,・‑‑1
個の同一性ai d e nt i t y
に向か って統合 して い く課題''( 1 9 5 ‑ 1 9 6
頁) と規定 され る。要す るに 自我 同一性 とは,領域別地位の総和や予め外 的 に設定 した諸領域における個 々の地位を越えたゲ シュタル トと して,かつ我 々の用語法でいえば 自 我 中核 的な領域 ・役割を中心に構造化 され る,極めて個性的な構造体 と して想定 されたのである。
従 って
Y a t e r m a n
は,総和主義を排 した点で評価できるものの,全体に関す る不可知論への逆行 と位 置づけることかできよう。一方,近年,無藤は "副評定 も含む3
領域の評定結果の うち,複数か一 致 したものを全体的地位 とする,但 し,面接での 印象,臨床的判断も重視''との方法によっている5 )。
全体 的同一性にとって重要な領域か 3
つである保証 も勿論な く,依然,総和主義的残蔭 と外的 領域設定 とい う難は残 るものの,無藤の方法は次の二点で有効 と言えよう。
第一点は, 「面接での 印象,臨床的判断」か外的な領域設定 という枠を越えて 「個性的構造体」に触れ うる点であ り,第 二点は,山本(1 9 8 8 )
の大数的な実証研究の知見 によれば, 「複数か一致 したものを全体的地位 と す る」方法か総和主義を越える可能性をもつか らである。
即ち山本 は,性の領域,母親 との相互性 の領域な ど4
つの領域別地位を求めたのち,各地位変数 と他の変数 とに数量化 Ⅲ類を施 し,領域別 の対処 ・関与 ・地位か "通領域的にまとまり,パ ター ンをなす" ことを見 出 して, 「全体的同一性 は 1つのゲ シュタル ト的性質を持つ」 ( 2 4 6
頁)と総括 した。要す るに複数の領域別地位か重なる とき,それが全体 的同一性地位 に一致す る確率が高いのである。
しか し厳密には,予め研究者が外 的に設定 した諸領域 における地位群の重合か らではな く,あ くまでも個性的で トータルな生き方あ り方や 自我中核 的領域における危機 と傾倒の評定 によって全体的地位を求めるべきであろう。
そ こ で, 「一般的な (領域を特定 しない)危機 と傾倒 (投入)」
を測定 した加藤( 1 9 8 32 9 3
頁)は,方 法 と しての難点はある6)とはいえ,方法論( m e t h o d o l o g y)
的には理論的妥当性に優れると結論で きるのである。
以上,本章では大数的データによって大学期の参入時か ら終期 に至る全体的同一性の発達的変化 杏,学生層全体,性別, 「目的学部
」
(教員養成学部) とそれ以外の別で記述す るという本稿の 目 的の意味 と,地位判定を巡る方法論的問題を論 じ,併せて,検証 されるべき3
つの仮説を示 した。仮説 1.大学期における 「達成化への動き」 と 「拡散化への動 き」 との併存措玩 仮説
2.
女子における強い危機体験 と,達成地位への移行の困難仮説
3.
教員養成学部における明確な 「達成化への動き」I‑2.データ収集 と分析の方法
弘前大学昭和6
2
年度入学 コホー トの全学部の入学生を対象 に,入学直後 と4年次調査か ら構成 さ れた,中層接近的な適応状況追跡調査プ ロジェク トによってデータを収集 した。入学直後調査は, 週5
コマ開講 された教養課程心理学の第1
講(4
月 中旬)の時間中に,我 々か従来か ら実施 してい る適応状況調査票に同一性地位判定尺度 (加藤1 9 8 3 )を組み込んで記入を求めたが,その際, 4
年次に再調査を行 うこと,追跡のために学籍番号を記入 して欲 しいこと,学生相談や保健管理 とい っ た個別指導 の資料 には しないことを周知 させた。有効票提出者は全入学者11 78
名 中70 .4%である。
4
年次調査 は平成2
年度の4
年次学生定期健康診断 (4
月下旬か ら5月下旬 まで学部学科 ごとに期 日を違えて実施)において,健診受付で同様の調査票を同様の教示で配布 し,健診終了時あるいは 1週間後 までの提 出を求めた。今 回の分析においては,大学期への参入時 と終期の同一性を捉え る 目的か ら,医学部学生 と卒業遅延決定者の資料が除外 された。 2回の調査それぞれにおける同一性 地位判定尺度の有効資料数 と,分析の標的 とな る "両調査で ともに有効資料 を提 出 した者(以下,「分析対象者」 と表記)"の数は蓑 1の通 りである。分析対象者は健診受診,教官か らの提出依頼, ス トレー ト卒業の期待等,大学生活 における外的諸課題に対する社会一文化適応への志向が相対的 に強い層であ ると見倣 しうる
7 ) Q
表
1 .
同一性地位判定尺度の有効資料数性 別 学 甲 別 有効資料計
男 女
教育学部 他 学 部入 学 直 後 調 査
4 3 3( 5 9 .2) 29 9( 40 .8) 3 1 5( 4 3 .0) 41 7( 5 7 .0) 73 2 ≪ 6 9
.23
卒 業 年 次 調 査
3 4 3( 5 7 .7 ) 2 48( 41 .8) 2 49( 41 .9) 3 45( 5 8 .0) 59 4 電 5
6. 1≫
(
)
は有効資料計への%。≪
≫は4
年制学部の全入学者への%。分析では同一性地位判定尺度の
3
つの下位尺度得点 と,義2
に従 って決定 され る6
つの同一性地 位 とのそれぞれについて,入学直後時点及び卒業年次における状況 と時点間移行が,分析対象者全 体 ・性別 ・学部別 (但 し,教育学部 と他学部 に二分)に調べ られた。なお3
下位尺度 とは表3
に掲 げたが,いずれ も4‑24
点,高得点ほ ど同一性達成方 向にある (「過去の危機」 においては "迷 い と模索''の体験を明確 に持つ) ことを意味す る。蓑 2 .
「自我同一性地位」の分類基準 (加藤1 9 8 3 . p 2 3 より作成)
自我 同一性地位 分 榎 基 準
同一性達成
(A)
‑‑‑イ 現在 の 自己投入」の値が20
以上で 「過去の危磯」の値が20
以上の場合。A‑ F中間 (AIF) ‑・・・r現在の 自己投入」の値が2
0
以上で 「過去の危畿」の値が19‑1 5
の場合.早 期 完 了
(F) 積 極
的( M ) モ ラ トリア ム
D‑M中間
( D‑ 〜)
同一性拡散(D)
「現在 の自己投入」の値が2
0
以上で 「過去の危畿」の値が14
以下の場合。「現在の 自己投入」の値が1
9
以下で 「将来の 自己投入の希求」の値が20
以上の場合。「現在の 自己投入」 と 「将来の 自己投入の希求」の値が共に1
9
以下の場 合で,次の同一拡張地位 の条件に当てはまらない場合。「現在の 自己投入」の値が1
2
以下で 「将来の 自己投入の希求」の値が14
以下の場合。以下本稿 では 「現在の 自己投入」は 「現在の投入」, 「将来の 自己投入の希求」は 「将来の希求」
と略記 される。また加藤 (
1 9 8 3)
の術語法ではF
は権威受容地位 とされるが,我が国の伝統的な訳 語に従 って 「早期完了」 と呼ぶ ことに したい。なお,下位尺度得点と地位 という二つの観点か ら同一性を捉え るのは,第一に,例えば,
2
時点 で同 じ地位 に分類 されても下位尺度得点は上昇 しているといった得点 レヴェルの変化が,地位の分 析では見落 とされて しまうな ど,連続変量である下位尺度得点の もつ情報量か地位 という名儀尺度 への置換 によって低下す ること,第二に,各地位 は3
下位尺度の うち 1下位尺度を使用せずに判定され るために,それが持つ情報か捨て られて しま うこと, という二つの理 由か らである。
Ⅱ.
同一性 の発達 的変化Ⅱ‑ 1
.危横 と投入の発達的変化分析対象者全体 ・性別 ・学部別のすべてで,入学直後 と卒業年次の各下位尺度得点は,有意で, かつ
‥ 3 0 0
を越える相関係数を もつ (蓑3)
。入学直後における投入‑の強い構え と入学以前 にお ける危機 の体験 とが,卒業年次の投入 と卒業年次 までの危機 "体験化''の構え (も しくは受容度) とを準備す ると言えよう。表
3 .
下 位 尺度 値 の状 況全 体 男 女 性 差
教
育学 部 他学部 学部差豆 SD 貢 SD 貢 SD
t烹 SD 亨 SD t
.
現在投入の 入学直後1 6 . 4 0 3 . 3 3 1 6 . 4 8 3 . 3 8 1 6 . 3 1 3 . 3 2 nS 1 6 . 5 5 3 . 5 0 1 6 . 2 4 3 . 1 4 nS
卒業年次1 7 . 3 5 3 . 4 6 1 7. 4 7 3 . 6 8 1
7.2 23 . 2 0 nS 1 7 . 6 0 3 . 3 3 1 7 , 1 1 3 . 5 8 nS
隻 r. 3 8 5 事 ♯ . 5 0 3 榊 * . 2 2 4 * . / . 3 8 5 * ♯ . 3 8 5 +#
吹
差
I 5 . 2 7 糊 4 . 2 9 書*寺 3 . 2 0 * 4 ̲ 0 3
♯柑3 . 4 2 ヰ手書
過去の
危機 入学直後
1 6 . 7 9 3 . 4 2 1 6 . 4 6 3 . 2 6 1 7 . 1 7 3 . 5 6 2 , 1 3 # 1 6 . 7 4 3 . 5 3 1 6 . 8 4 3 ̲ 3 1 nS
卒業年次1 7 , 2 4 3 . 3 6 1 6 . 9 0 3 , 3 7 1 7 . 6 3 3 . 3 1 2 . 1 3 * 1 7 . 3 9 3 . 3 7 1 7 . 0 9 3 . 3 5 nS
午 吹
差 r
I 2 . 3 . 5 4 1 1 事 **事 1 . 3 . 3 7 9 2 0 * ♯ i . . 3 5 6 0 8 0 * ♯ 2 . 3 . 4 4 0 1 半稗 * 0 . 3 . 6 9 6 6 * #
将来希求の 入学直後
1 7 . 1 3 3 . 2 0 1 6 . 8 7 3 . 4 4 1 7 . 4 3 2 . 8 9 1 . 8 5 0 1 7 . 1 8 3 . 2 8 1 7 . 1 3 3 . 2 0 n S
卒業年次
1 7 . 1 7 2 . 9 5 1 6 . 8 5 2 . 9 8 1 7 . 5 4 2 . 8 8 2 . 4 ㌔ 1 7 . 2 5 2 . 8 4 1 7 . 0 9 3 . 0 7 nS
午 吹
差 r
.4( 炉 耕 . 4 43 # * . 3 4 2 * 鞘 . 4 2 8 8 桝 . 3 8 7#* /
・年次差 の
t
は ,対応 のあ るt
値・op (0 . 1 0 , *p (0 . 0 5
,軸
P(0 . 0 1 , 榊
P(0 . 0 0 1。
しか し,下位尺度得点の入学直後か ら卒業年次にかけての増減 ([卒業年次得点一入学直後得点]) と入学直後得点 との間には殆 ど負の関連性かみ られる (表
4
,r
列参照)。そこで,入学直後得点 と下位尺度の得点増減 との関係 を重回帰分析によって調べた。表 4の通 り, 3下位尺度の全てで,表
4 ・ 下位尺度得点の増減 と,入学直後得点および他 下位尺度 における増減 との関連性( 重 回帰分析)
目 的 変 数
説 明 変 数 現在の投入の増減
rst d.B 過去の危故の増減
rst d.B 将来の希求の減増
rst d.B
入学直後 現在の投入 ‑. 5 2 9 ♯ * ‑. 5 7 0 * 耕 ‑. 0 3 8 . l o o♯ ‑. 3 0 1 書林 . 1 2 5 * の 過去の危機 . 0 5 5 . 2 2
㌢‑. 5 8 0 書林 ‑. 6 4 5 *♯ ‑. 1 3 6 * . 1 7 5 手書
得 点 将来の希求 ‑. 1 8 8 ** * . 1 9 1 * * ‑. 0 8 9 * . 2 3 9 * * * ‑. 5 9 6 ♯ * ‑. 6 4 9 *耕 卒業年次 現在の投入 / / . 1 3 7 # . 1 9 5 ♯ * . 3 1 8 * * . 2 2 2 耕 *
における 過去の危機 . 1 3 7 # . 2 4 6 *♯ / / . 2 1 3 *輪 . 2 2 8 * '
増 減 将来の希求 . 3 1 8 ** . 2 0 9 * * . 2 1 3 ♯ * . 2 3 5 ♯ * / . /
F 値 5 3 . 0 8 *軸 6 2 . 9 9 * * * 6 8 . 0 4 * *
・ 「 増減」値‑卒業年次得点一入学直後得点。
・数字は s t d.B 値。マイナスは入学直後得点が高いほど,卒業年次得点が入学直後 より も低下することを意味する。
・ O
+p(0 .0 5 ,
頼 p(0 .0 1, 耕
*p(0 . 0 0 1。
下位尺度得点 の増加か,入学直後 におけ る低 い当該尺度得点 と,入学直後 における高 い他 2 尺度得 点及 び他 2 尺度得 点の卒業年次 にか けての増加 とに依存す ることか知 られ る 。 入学直後得点か高 い ほ ど当該尺度 の卒業年次得 点は抑制 され,低 いほ ど高水準 にな るのであ る。 もちろん下位尺度得 点 は上 限値 と下 限値かあ るので,一般 に高得点者 は上昇 しに くく低得 点者 は下 降 しに くくな る 。 そ こ で入学直後の各下位尺度得点の平均値 を分割点 と して高 一低 2 群 を構成 し,卒業年次 にか けての増 減 を見 た。 蓑 5 の通 り,入学 直
後 の低 得 点群 にお いて卒 業年 次 の得 点増加 者 が 多 いだ けで は な く, 「過去 の危 機 」 と 「将来 の 希 求」 の
2つ で は ,入 学直後 の 高得 点群 で得 点減 少者 か多 い こ と も確認 され た。 即 ち, マス と して見 れ ば下 位 尺 度得 点 か上 昇 す る 「達成 化 へ の動 き」 が あ る 一 方 で ,入 学直 後 の高得 点者 で は低下 してい く 「拡散化の動 き」
か 並 存 す るの で あ る 。
仮 説 1(大 学期 にお け る 「達 成 化 へ の
表 5 . 入学直後得点の高一低 2 群 に おける卒業年次得点の増減
秤 卒 業 年 次得 点 x 2 ( df ‑1) 増 加 著 減 少 著
入学直後 の
現在 の投 入 豆 ‑1 6 . 4 0 高 低
((∩ ∩ ‑2 ‑2 2 0 6 5) 1 ) 9 7 2 6 名 名 ( ( 4 7 4 8 . . 7 2 %)1 %) 1 4 4 9 ( ( 5 2 5 1 . ̲ 3 8) 7 ) 2 1 . . 3 6 5 8 ♯ *
入学直後 の
過去 の危機 豆 ‑1 6 . 7 9 l 低 高
((∩ ∩ ‑2 ‑1 3 9 2) 9 9) 1 4 3 1 名 名 ( ( 3 7 9 1 . . 2 9 %) %) 1 4 5 1 6 ( ( 6 2 0 9 . . 8 1) ) 1 3 0 8 . , 7 0 8 4 * *耕 * *
入学直後 の
将来 の希求 豆 ‑1 7 . 1 3 高
(∩ ‑1 9 2 ) 4 9 名 ( 2 5 ̲ 5 %)1 4 3 ( 7 4 . 5 ) 4 6 . 0 2 *柑
入学直後 と卒業年次が 同得点 の著 は皆無。
o +
+p(0 . 0
1. ***
p(0 ̲ 0 0 1 .
動 き」 と 「拡 散化 への動 き」 との併存括抗 )は下位尺度 におけ る得点変化の レヴ ェル で も確認 され
た 。
他方 ,表 3 よ り,マス と しての下位尺度得 点変 化 は 「現在 の投入」で は明確であ る一方で, 「過
去の危機」では教育学部で明確なのに他学部 (教育学部以外)では不明確であ り, 「将来の希求」
では男子 と他学部において標本値 レヴェルでの減少 さえ見 られるなど,有意な得点増加はなか った。
これ らか ら
2
つの考察かえ られ る。第‑に,教育学部で見出された 「過去の危機」得点の増大が, "教員養成学部では他学部 と比べ
「達成化への動 き」が明確であろう" という仮説
3
を間接的に支持す ることである。
「過去の危機」の得点増か直 ちに達成化を意味す るものではないが,危磯体験が達成の必要条件であることを考え ると,仮説
3
の予想に沿 った結果 と見倣 しうる。
しか し仮説は, 目的学部であることか職業的同一 性達成を容易 にす るという論脈か ら導かれたものであ って, 「過去の危機」得点の増大は予想外で あ り,これには別の説明仮説が必要である。即ち,教育学部か教員養成の 目的学部 として設置 され 授業カ リキ ュラムも教員免許取得 に焦点づけて組 まれ3
年次で既に教育実習を蓮験 させ るなど, 教職進路 に強 く指向 した刺激 システムが制度的に構造化 されているがために,それに順応 しきれな い学生 における規準的進路 (教職)と個人的な進路展望の葛藤の機会や,教育実習に伴 って体験 さ れる教職適性観 ・教職展望の動揺 と修正8)な どが, "迷いと模索"の危機体験をもた らしやすいと 解 される。それに対 して他学部では,規準的進路か存在 しないために却 って,模索を促す,あるい は強いる,制度的構造的刺激に乏 しくなるであろ う。
我 々の一連の大学生研究における地位分布の データによれば大学生の圧倒的な主流派はつねにDIN中間地位であ って,彼等が形成す る拡散 的な 学生文化の下では,模索を促す制度的構造的な刺激かないと大学期における危機体験は促 されに く いのか も知れない.D川中間地位が圧倒的であるのは,加藤の分類方法が必然的に挙むバ イアスに よる恐れ もある6)が,昭和5 2
年 コホー ト以来我 々が展開 してきた大学生の適応実態経年調査によ っ て,昭和5 4
年 コホー ト以降,学生文化の早期完了化ない し拡散化の動向か見出されてお り( T o y o ‑ s h i m ae ta l .1 9 8 4
,豊嶋ほか1 9 8 5 )
, しか もかかる特徴が昭和6 2
年コホー トまで引き継がれてい る (豊嶋1 9 9 1 b )
か ら,学生の基本的文化が拡散的であることは事実と して捉えてよい。 ここか ら.仮説
3
は "教員養成学部では,危機体験が促進 されることを媒介 に,他学部 と比べ 「達成化への動 き」が明確化する" と修正 されねばなるまい。第二は, 「将来の希求」の得点増がみ られないことについての考察である
。
本節の冒頭でふれた 通 り, 「将来の希求」 も入学直後に高水準なほど卒業年次 も高水準を維持 しやす く,また, 「現在 の投入」 と 「過去の危機」が入学直後 よりも強ま っている場合には卒業年次の 「将来の希求」得点 も上昇 しやす い (表4)
のではあるが, しか し, 「現在の投入」 も 「過去の危磯」 も発達的得点増 が認め られるにもかかわ らず, 「将来の希求」の得点増かえ られていない事実か らは,次の考察を 導 きうる。
即 ち, 「現在の投入」 と他学部以外の 「過去の危機」 に大学生活の進展 につれた強ま り が見 られるとい う意味では,大学期は新たな危機体験を提供す る時期であ り,かつ,模索の中で選 択 された活動や生 き方‑の投入 を促進 させてい く時期であると見倣 しうるのであるか, しか し,強 くな った投入の構えは,まだその時点現在の諸活動 に対する投入 に限定 されやす く,今後の学生生 活や卒業後の諸活動 に向けた投入意欲 ・投入展望 には結び付きに くいと示唆される。最後 に,入学直後 と卒業年次それぞれの時点における下位尺度得点の性差 ・学部差 にふれたい。
入学直後 ・卒業年次 ともに下位尺度得点に学部差は見 出されない一方で,性別では,入学直後 と卒 業年次の双方で 「過去の危機」が女子で高得点をえた (表
3) 。
仮説2
(女子 における強い危機体 験 と,達成地位‑の移行の困難)の "女子 における強い危機体験''は支持 された。 さらに 「将来の希求」得点 も女子で高い。女子は男子 に比 して高水準の危磯体験をもち,かつ将来の投入を男子 よ りも強 く展望 しているという意味で,入学直後においても卒業年次においても一貫 して,男子 より も積極的モラ トリアムの指向を強 くもつ と括 ることができる。但 し前述の通 り,両尺度 とも卒業年 次 にかけての得点増大は明瞭とは言 い難いか ら,大学期の中で積極的モラ トリアム体験が強まって
い くわけではない。
Ⅱ‑2.
同一性地位の全体的変化 と移行 (1)同一性地位の全体的変化入学直後 と卒業年次それぞれの地位分布を図 1に示す。
同一性
達 成 (A)
A‑F
早 期 黄極的
D一社 同一性中 間 完 了 モラトリアム 中 間 拡 散
(F) (M ) 図 1.同一性地位の発達的変化
対象者全体 においては,卒業年次 には達成 と
A ‑ F
中間の両地位か入学直後 よ りも増え る一方で, D‑X中間と拡散地位が減少す る 「達成化への動き」が明 らかである (図 1)O
性別 ・学部別に検討姦6.
性別 ・学部別の地位変化A‑F 以上 (「達成的 達 同一一任 成 .A‑F 」) 中 間 完 早 m 了 l 漁 獲 的 モラトリアム D‑ N以下 中 D‑M ( 「拡 散的 間 」) 同一性 拡 散
性
別 男 ト 入学 直後 4 0( 1 7 .3) 1 7(7 .4) 2 3( 1 0 .0) 1 0( 4 .3) 2 5( 1 0 .8) 1 5 6( 6 7 .5) 1 4 3( 619) 1 3( 5 .6) 千 I ̲卒業年次 71 ( 3 0 ̲7 ) 3 6( 1 5 .6) 3 5( 1 5 ̲2) 9( 3 .9) 1 9(乱2) 1 3 2( 5 7 ̲1 ) 1 21 ( 5 乙3) l l ( 4 .8)
t l 2 = 3 ー ̲ 年 同地位 次 差 + 1 2 3( 4 .7 l uO) 6(乙6) 8 jt j t X ‑十&8 0 粁 十 6(2 3 .1 3 .6) 1 0 ( 0 .4) M 1 . 7 ) 1 ‑ 7 0 4( .2 4 5 .0) 8 0 # ‑55 8( 3 8 .1 0 * ) 3( 13) 女 I ̲入学 直後 2 5 ( 1 2 .5) 1 5(7 .5) 1 0(5 .u) 9( 4 .5) 3 0 ( 1 5 .0) l 3 6( 6 8 .0) 1 2 7( 6 3 ̲5) 9( 4 .5ー 千 I.卒業年次 4 0( 2 0 .0) 2 4 ( l a0) 1 6(8 .u) 6( 3 .0) 3 3 ( 1 6 ,5) 1 21 ( 6 0 ̲5) 1 2 0( 6 0 .0) 1 ( 0 .5) n; 2 ≡ 0 0 年 同地位 次 産 十 4 6(4 . 5 9 * .0) 3(L5)) 2(LO) 0( 0 . 0) 6(3 ̲0) 8 ‑乙71 7( 4 3 .5) 81 0 ( 4 0 .5) ‑ 6.4 0( 0 .u) 0 j Ot
辛 部 数 I . 入学 直後 3 7( 1 7 .2 ) 1 7(7 .9) 2 0(9 . 3) 1 2( 5 ̲6) 2 2 ( 1 0 .2) 1 4 4( 6 7 .0) 1 3 3( 6 1 ̲9) l l ( 5 . 】) 学 育 I̲卒業年次 5 2( 2 4 .2) 3 4( 1 5 .8) 1 8(8 .4 ) 9( 4 .2) 2 6 ( l a l ) 1 2 8( 5 9 .5) 1 2 3( 5 7 .2) 5( ヱ3)
n= 部 21 5 年 同地位 次 差 十 1 6(7 3 ̲9 5 J .4) 6(2 X ‑ 十 7 .4 . 1 枚 8) 5 (之3) 1 ( 0 .5) 3(I .4) 9 ‑2 3( .9 4 3 .3) 8 8 0 3( 3 8 .6) 2( 0 、1 ) 也 I . 入学 直後 2 8( 1 3 .0) 1 5(&9) 1 3(6 .0) 7( 3 .2) 3 3( 1 5 .3) 1 4 8( 6 8 .5) 1 3 7( 6 3 ̲4) l l ( 5 .]) 別 辛 I . 卒業年次 5 9( 2 7 .3) 2 6 ( l an) 3 3 ( 1 53) 6( 之8) 2 6 ( l a0) 1 2 5( 5 7 .9) 1 1 8( 5 4 .6) 7( ' iZ)
「同地位」とは
,
Ⅰとtで同じ地位だった薯の数.( )内は有効資料教に対す る%.
「年次差」行は
McNemar
のXl値. p 〈0 .10
の場合のみ表示.十は増.‑は滅.o p 〈 0 ,10
,号 p (0 .05
,耕 p 〈 0 . 0 1. 耕 p 〈 0 ・00 1 .
す ると表
6
の通 り であるか,性別 ・ 学部別 にす ると全 体か 2分割され る ために,そもそ も 少度数の地位では 検定力か低下す る 難かあること,A‑F
中間 とD
IK中間の 2つの中間地位は, 少度数であ った地 位連続帯の両端を 中間地位 と一括す ることによって大 数的状況か鳥放 し やす くな る こ と,という 2つの理 由 で,達成地位 とA‑F中間地位の両地位を一括 した 「達成的」地位 と,D‑X中間地位 と拡散地位を一括 した 「拡散的」地位を設け,その変化 も示 した。なお,
2
つの合成地位 における 「同地位」 につ い ては,例えば 「達成的」地位の場合,入学直後 に達成地位あるいはA‑F中間地位であ った者か卒業 年次 に達成地位かA‑F中間地位のいずれかであれば同地位 と してカウン トしてある。男子 ・女子, 教育学部 ・他学部のいずれでも 「達成的」地位か増え, 「拡散的」地位か減 っており, 「達成化へ の動き」か検 出された。しか し他方,全体,性別 ・学部別のいずれでも,入学直後 と卒業年次の双方で
D ‑
N中間地位が過 半を占め,前節で触れた学生文化か基本的に拡散的であるとの指摘は, ここでも確かめ られた。 し か も,相対 的に高次の地位 にある者 は卒業年次で さえ少な く,「達成化への動 き」か明 らかである にも関わ らず,達成者は全体で1 3 . 9 %
,早期完了以上の地位を併せても2 9 . 2 % (1 2 6
名)に留 ま った。
性別 ・学部別の地位変化を詳細に見 ると, 「達成化への動 き」は女子 と教育学部 にあ っては特 に 拡散地位の減少 として,男子 と他学部では特に
D ‑
仲 間地位の減少 と して現れ さ らに男子 と教育 学部では,達成地位の増大 も明瞭であるという,変化の違いも認 め られる。
これ らか ら3
つの考察 か導かれる。
第‑は, "女子における強い危機体験 と,達成地位への移行の困難"という仮説
2
の検証である。
女子で も拡散地位の有意な減少を伴 う 「達成化への動き」か認め られもものの,達成地位の増加は 有意に達せず,また,男子に比 して 「拡散的」地位の減 と 「達成的」地位の増 とか不明確であって, 達成地位 に変化 しに くいことか示 された。仮説 2の後半部か支持 されたことになる。
第二は, ̀̀教具養成学部では他学部 と比べ 「達成化‑の動き」か明確であろう" との仮説
3
の検 証であるか,教育学部 においては達成地位の増大 と, その対極である拡散地位 の減少 とによって「達成化への動 き」か明確であ るとはいえ,他学部で も
,A ‑ F
中間地位の増加 とD ‑
X中間地位の減少 とによって特徴づ け られ る 「達成化への動 き」か 明確であ り, しか も, 「達成 的」 と 「拡散 的」の 2つの合成地位の増減 に関 しては,他学部の方か 明確である。従 って,仮説 3は支持 されない。 と はいえ,教育学部 においては同一性地位連続体の両極 に 「達成化への動 き」か認 め られ,それに対 して,他学部では中間地位の増減 による 「達成化」に過 ぎない点で,仮説3
が棄却 された とも言 い 難 い。仮説3
は異 なるコホー トによる再検証 まで保管 したい。第三 は,教 育学部 と女子 における拡散地位の減少 に関 してであ る。教育学部につ いては 「目的学 部」であ るために,教職志望の有無 を問わず教育実習への投入が求め られ る し,卒業年次 に近づ く と,教職志望者では教員採用試験準備への投入か,教職を志望 しない者であ って も,多数派たる教 職志望者の形成す る<就職試験準備 に投入す る雰囲気 >の 中で,就職の準備 に投入す る規範か作 ら れ る, とい った機制が,拡散者 を減少 させ るのか も知れない。 しか しかか る投入の構えは,いずれ も外発 的に過 ぎない。それゆえ に前述の, "「達成的」地位者増加の他学部 に比 した不 明確 さ"が もた らされ た との解釈 も可能であろ う。女子の場合は,菅野
( 1 9 8
1),豊嶋( 1 9 9 1 a )
か女子学生 の適応 に関 して指摘 した "学業への強迫 とそれに よる大学適応の支え と自我支持''仮説 に依拠 した 解釈が可能で あろう。学業への投入 による拡散か らの脱 出である。 もちろんそれは,研究者要請大 学ではない弘前大学の, しか も卒業年次の学生 にあ っては,将来展望 とは無縁の当面の投入に過 ぎ ない。か くて,女子 における 「達成的」地位者増加の不 明瞭 さが もた らされたか も知れない。Ⅱ‑
2節で述べた通 り本稿の分析対象者は "大学生活 における外的諸課題 に対す る社会 一文化適応への 志 向か相対 的に強い層" と見倣 しうるか,要す るに,教育学部 と女子では,かか る社会 一文化適応 志 向が一層強 く,それか拡散地位の減少を もた ら した と総括できよう。
最後 に, 入 学 直 後
と卒 業 年 次 の 地 位 分 布 の 性 差 と学 部 差 (
去 7)
に ふ れ て お く。
先 ず , 性 差 に 関 して は , 両 時表 7 .
地 位 分布 の性 差 と学部 差A‑F以上 (「達成的達 成 A‑F
」)
早完 期了 積極的モ ラ ト リア ム
D‑K以下 (「D‑K拡散的拡」)
張性 差 直後入学
m 3 . 7 )f 2 0
卒業年次
m )f 6 . 4 6* m )f 5 . 2 5 * m )f 6 . 9 2 特 m )f 5 . 7 0 +
不等号は大小 ,数値 は
df ‑
1のx2値o入学直後 では学部差はない。op ( 0 . 1 0
,* p く 0 ̲ 0 5 ,* 3 tp ( 0 . 0 1。
(空欄はns)
点で共 に
A ‑ F
中間地位か女子 よ りも男子 に多 い。特 に卒業年次の地位分布 は,全体 と して性差 が認 め られ( x2‑2 0 .06 . p< 0 . 01 . df‑5 )
, 「達成 的」地位 も男子の方か多 いか ら,女子 には男子 に比 したA ‑ F
中間地位の一貫 した多 さと,達成化の 困難かあ ると括 ることがで きる。
仮 説2
(女子 にお ける強 い危機体験 と,達成地位への移行の 困難) における "女子の達成化 困難性''は,地位分布 に おけ る性差の レヴェルで も支持 された。 さ らに,卒業年次 には女子 において積極 的モ ラ トリアム地 位か男子 よ りも多 くな るか ら,仮説2の "女子 にお ける強い危横体験" も支持 されて い る。なお,卒業年次女子では拡散地位が男子 よりも少ないが,これについては,卒業年次女子 における 「達成 的」地位の男子 に比 した少なさとも併せて,性別の移行を検討す る次の (
2)
中のg項 において, 統合 した考察がなされるので, ここでは事実の指摘 に留める。学部差に関 しては,卒業年次のA‑ F
中間地位が,教育学部よりも他学部に多いだけであった。 しか しこれ以外の学部差が見出せないこ と, 中間地位の意味が両義的であること, もう一つの 中間地位であるDIN中間地位の ような圧倒 的 主流派であるかための解釈 ・意味づけの容易 さが,A‑ F
中間地位 にはないこと, とい う二つの理 由 か ら,やは り事実を指摘するに留めてお く。( 2)
同一性地位の移行入学直後地位か らの移行を対象者全体 について見ると,入学直後地位の維持者 は20
0
名( 46 .4%),
入学直後地位 か らの移行者が231名(53.7%)であ り,維持者 よ りも移行者か多 い とは言えない
( x2‑2 .2 3,p>0 .1 0.df
‑1)か,過半数が移行す る事実は,大学期の地位は移行 しやすいことを 示 しているO
特 に,入学直後 にDIX中間地位以外であれば,維持者 よりも移行者か有意に多 くなる (図2,
右端のx 2
列を参照)O維持 一移行,および,移行す る場合それか達成方 向への移行か拡 散方向か, とい う視点で図2
をえた9 )0
入学直後地箆
A:
酔一也達成(N‑3 2 )
A‑F
中間(N‑3 3)
F:
早 期 完●丁(N‑ コ1 9 ) M: 稀 医的 モ ラ
ト リ ア ム(N ‑5 5) D‑
K中間(N‑2 7 0
)D:
匡ト・ 性
拡散(N‑2 2
)%
01 0 2 0 3 0
40
50
607 0 8 0 部 1 0 0
A
A‑F F MDI N D
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寧 :.,
モ ' : i ̲ ¥ 、 辛 苦 拝顎 S ‑ < 讃 . 乾 軟 禁買貰 琴執筆 畢 J l
A
A‑ FF M D ‑A
Dx 2 =
6. 12*x
2=8
.7 6Fx2=1
5 .
2f船x2 ‑2 2 . 2 7 j Ce X‑
x2 ‑1 7 , 1 3 j W
x2 =
ll.由柵0 1 0 2 0 3 0 4 0 5 0 6 0 7 0 8 0 9 0 1 0 0 %
図
2 .
入学直後 にお ける地位が卒業年次 にはど う展開 したかIE璽 …団 入学直後 と同 じ地位 , ⊂=コ 入学直後 よ りも達成方 向に展開 ,
,E≡≡ヨー.入学直後 よ りも拡散方 向に展間。
・ 「x2」は
,
入学直後 と同地位 (維 持)者 vs移行書 に2
分割 した ときのdf‑1 の x2 。 キp く 0 . 0 5 , i t X ‑ p( 0 . 0 1 , 斗米 粋p( 0 . 0 0
1。義8.
性別 ・学務別の地位移行卒 業 年 次 同 一 性 A ‑ F 早 期 群 棲 的 D ‑ l 同 一 性 計 x 2 入 学 直 後 達 成 中 間 完 了 モ リ ア フ ム ト 中 間 拡 散
同一‑ 也 女 子 男子 3( 6 ( 3 2 5 0 .3) .0) 5( 1 (6 29 .7) .4) 1 1 (6 (5 ー9) .7) 2 3(
(2
l0 l .8) .0) 3( 6 ( 4 1 7 0 ,0 .6) 0(0 ) ) 1 (6 ̲7) 1 1 7 5 nS ★
達 成 教 育 6 ( 3 5 .3) 0 ( 0 ) 2( l L8) 3 (1 7 .6) 6 ( 2 5 ̲3 ) 0(0 ) 1 7 nS 他 3 ( 2 0 .0) 6 ( 4 0 . 0) 0 (0 ) 2( 1 3 ー3) 3( 2 0 ̲0) I (6 . 7) 1 5 ★
A‑F 女 子 男子 6 2 ( ( 2 2 6 0 ̲1) .0) 6 2( ( 2 2 6 0 .1 ̲0) 0 ) 1 (4 (0 ) .3) 1 0 (0 )
(4̲3) 9( 6( 3 6 9 0 . .0) 0(0 ) 1) 0 (0 ) 2 1 3 0 ‑ i ○
中 間 教育 5 ( 2 5 ,0) 5( 2 5 .0) 0(0 ) 0(0 ) l O( 5 0 .0) 0 (0 ) 2 0 ★
他 3( 2 3 ̲1) 3( 2 3 . 1) 1 (7 .7) 1 (7 ー 7 ) 5 ( 3 8 ̲5) 0(0 ) 1 3 0
早 期 女 子 男子 2( 1 ( 1 2 0 2 .0) .2) 2( 3( 2 3 0 3 .0) 1 .3) 0 ( ( 1 0 0 ) .0) 0(0 ) 0(0 ) 6 4( ( 6 4 0 4 .0) 0 .4) 0 ( ( 0 ) 0 ) 1 0 9 ★汁 ★
完 了 教育 2( 1 6 . 7) 2 く 1 6 . 7) 1 (8 . 3) 0 ( 0 ) 7( 5 8 .3) 0 ( 0 ) 1 2 耕 一
他 1 ( 1 4 .3) 3 ( 4 2 .9) 0 ( 0 ) 0 ( 0 ) 3 ( 4 2 ̲9) 0 ( 0 ) 7 ★汁
積極的 男子 5( 2 0 .0) 4 ( 1 6 . 0 ) 2 (8 .0) 4(1 6 .0) 1 0( 4 0 .0) 0 ( 0 ) 2 5 料 女子 7( 2 3 .3) 0 (0 ) 0 ( 0 ) 6( 2 0 .0) 1 7( 5 6 . 7) 0 ( 0 ) 3 0 東栄
モ ラ ト リア ム 教育 5( 2 2 . 7) 2 (9 . 1) 0 ( 0 ) 3( 1 3 .6) 1 2( 5 4 .5) 0 ( 0 ) 2 2 ★★★
他 7 ( 21 .2) 2(6 . 1) 2 (6 . i) 7( 21 .2) 1 5 . ( 4 5 .5) 0 ( 0 ) 3 3 棉
D‑ 姐 女 子 男 子 1 6 9
((7
ll .2) 1 .1 ) 1 7( 0(7 1 ⊥9) 3 .9) 5(3 (2 ̲1) .9) 2 l l 2( (7. T 7. 7 3) ) 8 81 8( ( 61 6 3 .5) 8 .8)
0(5 ( 0 ) . 6 ) 1 1 4 2 3 7 ★汁 ★汁
E l l 間 教 育 5
(ll .3) 9 (6 . 8 ) 5(3 .8) 1 8( 1 3 .5) 8 3( 6 2 .4) 3 (2 ̲3) 1 3 3 i t *
他 1 0 (7 .3) 1 8 ( 1 3 . 1 ) 3 (2 .2) 1 5(1 0 ー9) 8 6( 6 2 ̲8) 5 (3 ̲6) 1 3 7 ★汁
同一性 女 子 男子 2 1
((1l5 l ,4) .1) 1 0 (77 (0 ) 0(0 ) ) I (7 .7 ) 2( 1 (7 2 2 .2) .7 ) 5 6( ( 3 6 8 6 .7) 0 ̲5) 3( (0 ) 2 3 .1 ) 1 3 9 ★汁 ○ 拡 張 教育 1 (9 . 1) 0 (0 ) 1 (9 . 1) 2( 1 8 .2) 5 ( 4 5 .5) 2( 1 8 .2) l l i
ゴジ ッタのセルでのみ p ( 0 . 1 0 の差が あ る (df‑1 の x 2 検定 )
「 t n J は,入学直後 と同地位 ( 維 持)老 ys移行書 に 2 分割 した ときの d f‑ ‑1 の x ‑2値 。入学直後 の
D‑M 中間においては維持者が多 いほかは ,有意 な行 は全て移行者 が多 くな る。
o P〈 O . 1 0 , ★p ( 0 . 0 5 , 淋 p ( 0 . 0 1 , ‑ 淋 p ( 0
:0
01
。表 9 ・
入学直後の 「達成的」
「拡散的」両群 における性別 ・学部別の地位移行入 学 直 後
達 成 的 完早
期了
漬 極 的モラトリアム 拡 散 的計 x2
逮
女子 男子 23(57.5) 8(32 .0) 2(2.0) 1(4.0) 3(12.0) 3( 7.5) 12(30 13(52 ̲0) .0) 40 25 nS ○
成
的 性差
教育 4 16(43.2) .01 * 2(5.4) nS 3( 8.1 nS ) 3 .15 16(43
0,2) / 37 nS
他
15(53.6) 1(3 .6) 3(10 ̲7) 9(32. 1) 28 nS
拡敬的
男子 36(23 . 1) 4(2 .6) 12( 7 .7) 101(64.7) 156 女子 20(14 .7) 5(3 .7) 27(19.9) 87(64 .0) 136
性差3 .28
0nS 9 .28
♯nS /
/教育 25(17 .4) 6(4 .2) 20(13 .9) 93(64 .6) 144
性差は
d f‑1
の x2値。学部差はない。「x2
」列は維持v
s移行 の度数比較.
op ( 0 .01 , * p ( 0 .0 5 , ♯ p く 0 .01 0
図よ り,入学直 後の達成地位者 も
A ‑ F
中間地 位 者 も,その過半 が早期完了以下 に低下 していき, 早期完了地位 と モラ トリアム地 位 も,卒業年次 には低下 してい く 「拡散化への 動き」か認め ら れた。先に指摘したマスと して の 「達成化への 動 き」 と併せ る と,仮説
1 ( 大
学 期 に お け る「達成化への 動
き」 と 「拡散化 への動 き」 との 併 存括抗 ) は,
ここでも明確 に 支持 されたこと にな る。他方 , 入 学直後 のD‑N 中間地位 にあ っ ては,移行者 よ りも維持者か有 意 に多 く,D‑N 中間地位か変化
しに くいことも 示 された。
性別 ・学部別 に地位移行を調 べて も,