PCIデータセキュリティ基準
SAQ のススメ
2015年8月18日
【審査機関機関(
QSA)の視点から見た
この時間の目的
PCI DSS制度およびSAQの理解
PCI DSS準拠に向けた事前準備項目の理解
PCI DSS要件の詳細理解(抜粋)
加盟店を取り巻く環境①
2015年もカード情報漏えい事件は続出
-
「LuzLlena」から3,701件流出(6月)
※OpenSSL脆弱性
-
新日本プロレスのサイトから11,155件流出(6月)
※Webアプリケーション脆弱性
-
「イタリア自動車雑貨店」から28,212件流出(6月)
※テスト環境経由でバックドア
-
村田園の通販サイトから1,959流出(6月)
※セキュリティコードも流出
-
「ONYONEベースボールギア」から72件流出(4月)
※セキュリティコードも流出
加盟店を取り巻く環境②
改正割賦販売法の施行
-
第35条の16において、イシュア・アクワイアラがクレジットカード
番号等の漏えい、滅失又はき損の防止その他のクレジットカー
ド番号等の適切な管理のために必要な措置を講じることが義務
化された。
-
イシュア・アクワイアラは、加盟店に対してカード番号漏えい防
止、発生した場合の対応および再発防止策についての指導、監
督が義務となる。
クレジットカード情報流出事件の考察①
SQLインジェクションによる事案は引き続き多い
-
ECサイトのデータベースに保管されていた会員のクレジット
カード情報が海外からSQLインジェクション攻撃された。
-
事件発生後に必要な対応
•
顧客の問い合わせ対応
•
PFIsによるフォレンジック調査
•
警察への被害届
•
広報
•
カード取扱再開のための対応
ついにSSLのPoodle脆弱性を突いた事案が出てきた
-
現時点で例は少ないものの、ツールを作られている可能性あり。
データベースコマンド入力※SQLインジェクション攻撃
クレジットカード情報流出事件の考察②
情報流出をした加盟店の責任(例)
-
情報セキュリティ対策に不備があり、クレジットカード情報を含む個人情報を
流出してしまった。
-
情報を流出させてしまった会員に対する責任(お詫びのコスト)
-
流出させてしまったカードは原則、再発行が必要である。カード発行会社に
おける再発行のコスト1枚あたり1,500円~2,000円を当該加盟店が負担す
る必要がある。
-
流出させたカード番号については不正モニタリングをして二次被害を食い止
めなければならない。不正モニタリングのコスト1カードあたり500円程度を
当該加盟店が負担する必要がある。
-
実際に不正に買い物があったものの被害についても当該加盟店が負担す
る必要がある。
クレジットカード情報流出事件の考察③
事業継続にあたって
-
クレジットカード加盟店として継続する場合
→カード会社(アクワイアラ)からPCI DSSの準拠が要請される。
→非保持形態でPCI DSSの準拠を果たし再開するケースが多い。
-
決済手段からクレジットカードを外す。
→主要な決済手段の外してビジネスが継続できるか?
-
ショッピングモールに店ごと移す。
→楽天、Yahoo!などはカード情報を取り扱わない半面、
買い物ユーザは自社の顧客ではなくなる。
(ショッピングモールの顧客となる。)
PCI DSSとは?
PCIセキュリティ基準審議会(PCI SSC)が制定し
た、事実上の基準(Payment Card Industry
Data Security Standard)
※PCI SSC:国際ペイメントブランド(VISA, MasterCard, American Express,
JCB, Discover)によって2006年9月に設立された
日本カード情報セキュリティ協議会(JCDSC)は、
改正割賦販売法第35条の16 への対応として、
PCI DSSへの準拠を策定
PCI基準とは?
PCI PTS
PCI
PCI DSS
PA-DSS
PCI PTS
PIN エントリー
デバイス
端末機器
製造会社
ソフトウェア
開発事業者
決済パッケージ
アプリケーション
セキュリティ環境
加盟店
サービスプロバイダ
P2PE
P2PE
加盟店
クレジットカードのトランザクション概略
カード会社
(アクワイアラ)
ペイメントブランド
のネットワーク
カード会社
(イシュア)
プロセシング
(データ処理会社)
カード提示 承認要求 承認要求 承認要求 承認要求 カード発行 外部委託 外部委託 購買許可 購買許可 購買許可 購買許可 購入ペイメント
ゲートウェイ
▽PCI DSS準拠が必要な事業体コールセンター
事業者など
コールセンター
事業者など
iDC事業者
など
外部委託PCI DSSの対象範囲
PCI DSSの対象範囲
PCI DSSの対象範囲
外部委託コールセンター
事業者など
プロセシング
(データ処理会社)
加盟店 サービスプロバイダ検査
(四半期毎)
PCI DSSにおける各プレイヤの相関
PCIセキュリティ
基準審議会(PCI SSC)
※米国組織
認定ネットワーク
スキャニングベンダー
ASV
承認
承認
加盟店
サービス
カード会社
(アクワイアラ)
監査
(年次)
自己問診表(SAQ)
脆弱性検査レポート
監査報告書(ROC)
準拠証明書(AOC)
ペイメントブランド
準拠要請
準拠要請
提出
準拠性
報告
プレイヤの責任①
アクワイアラ
-
契約先の加盟店、サービスプロバイダのカード会員データの
安全管理の責任を負う。
•
ペイメントブランドとの契約上の責任
•
改正割賦販売法上の責任
-
契約する加盟店、サービスプロバイダへの準拠要請
•
加盟店がPCI DSSに準拠していない結果として生じる、全ての責任を
負う
-
PCI DSSに準拠する責任
-
カード会員データを共有する外部委託先へのPCI DSSと同等
の情報管理の順守要請
-
ペイメントブランドへの報告義務
プレイヤの責任②
全ての加盟店はPCI DSSに準拠する責任がある。
-
準拠性の確認方法はブランド毎に若干異なる。
全てのサービスプロバイダはPCI DSSに準拠す
る責任がある。
-
取引データ、カード会員データの伝送/処理/保存に直接関わる
事業体のことを指す。
-
例)
•
クレジットカード決済代行事業者
•
プロセシング会社
•
Webホスティング会社/MSP
•
IDSサービスプロバイダ
プレイヤの責任③
QSA(認定セキュリティ監査人)
-
一定以上のレベルの加盟店、サービスプロバイダを
年次オンサイト監査により準拠性を明らかにする。
-
代替コントロールの評価
-
必要に応じて追跡評価を実施
(不適合事項のフォローアップなど)
-
監査報告書(ROC)の作成/準拠証明書(AOC)への署名
-
評価の品質の保証
-
PCI SSCに対する情報の開示義務
-
PCI SSCに対しての解釈の問い合わせ
※認定セキュリティ評価機関は
QSAs と呼ばれる
プレイヤの責任④
ASV(認定スキャニングベンダー)
-
一定以上のレベルの加盟店、サービスプロバイダを
四半期毎のネットワークスキャンにより結果を明らかにする。
-
必要に応じて追跡評価を実施
(クリーンな結果が出力されるまで再スキャンを行うなど)
-
スキャニング結果の品質の保証
-
PCI SSCに対する情報の開示義務
加盟店のレベルと取引件数
加盟店のレベルはペイメントブランドが定義する。
注)ペイメントブランド毎に異なる。
加盟店レベルは主に取引件数によって区分される。
取引件数は契約するアクワイアラが判定する。
取引件数の総数は事業体の名称またはチェーン店の
合計取引件数を基に判定する。
取引件数の総数はクレジットカード、
デビットカード、プリペイドカードの合計
加盟店のレベル①
レベル
VISA Inc.
(AIS)
MasterCard
(SDP)
JCB
(JCBデータセキュ
リティプログラム)
American
Express
(DSOP)
1
当該ブランドの年間の取引件数が600万件以上、 または地域のVISAがレ ベル1と判断したグロー バルな加盟店 ・当該ブランドの年間の取 引件数が600万件以上 ・ 過 去 に カ ー ド 情 報 の 漏洩事件を起こした加盟店 ・ MasterCardがレベル1と 判断した加盟店 ・Visaがレベル1と判断した 加盟店 当該ブランドの年間の取 引件数が100万件以上 当該ブランドの年間の取 引件数が250万件以上 ま た は American Expressがレベル1と判 断 し た 加 盟 店2
当該ブランドの年間の取引 件 数 が 100 万 ~ 600 万件 ・当該ブランドの年間の取 引件数が100万~600万件 以上 ・Visaがレベル2と判断した 加盟店 当該ブランドの年間の取 引件数が100万件未満 当該ブランドの年間の取 引件数が5万~250万件 ま た は American Expressがレベル2と判 断 し た 加 盟 店加盟店のレベル②
レベル
VISA Inc.
(AIS)
MasterCard
(SDP)
JCB
(JCBデータセキュ
リティプログラム)
American
Express
(DSOP)
3
当該ブランドの年間の電子商取引における取引件 数が2万~100万件 ・当該ブランドの年間の 電子商取引における取 引件数が2万~100万件 ・Visaがレベル3と判断 した加盟店N/A
当該ブランドの年間の 取引件数が5万件未満4
・当該ブランドの年間の電子商取引における取引 件数が2万件未満 ・当該ブランドの年間の 取引件数が100万件未満 レベル1~3以外のすべ ての加盟店N/A
N/A
加盟店の検証要件①
レベル
VISA Inc.
(AIS)
MasterCard
(SDP)
JCB
(JCBデータセキュ
リティプログラム)
American
Express
(DSOP)
1
・QSAまたはISA(内部監査人)による年1回の 監査報告書(ROC) ※ISAによる場合は役 員 (CEO/CFO/CTO な ど)が署名 ・ASVによる四半期毎 の脆弱性スキャン ・準拠証明書(AOC) ・ISAまたはQSAによる 年1回のオンサイト監査 ・ASVによる四半期毎の ネットワークスキャン ・ QSA に よ る 年 1 回 の オンサイト監査 ・ASVによる四半期毎の ネ ッ ト ワ ー ク ス キ ャ ン (インターネットを介した 取引がない場合は不要) ・ QSAまたは最高経営 責任者、最高財務責任 者、情報セキュリティ最 高責任者、または加盟 店の責任者が認証して いる場合は加盟店が実 施 し た 年 1 回 の オンサイト監査 ・ASVによる四半期毎の ネットワークスキャン2
・年1回の自己問診・ASVによる四半期毎 のネットワークスキャン ・準拠証明書(AOC) ・ISAによる年1回の自己 問診、またはQSAによる 年1回のオンサイト監査 ・ASVによる四半期毎の ネットワークスキャン ・年1回の自己問診 ・ASVによる四半期毎の ネットワークスキャン(イ ンターネットを介した取 引がない場合は不要) ・ASVによる四半期毎の ネットワークスキャン加盟店の検証要件②
レベル
VISA Inc.
(AIS)
MasterCard
(SDP)
JCB
(JCBデータセキュ
リティプログラム)
American
Express
(DSOP)
3
・年1回の自己問診・ASVによる四半期毎 のネットワークスキャン ・準拠証明書(AOC) ・年1回の自己問診 ・ASVによる四半期毎の ネットワークスキャンN/A
・ASVによる四半期毎の ネ ッ ト ワ ー ク ス キ ャ ン (強く推奨)4
・年1回の自己問診(推奨) ・ASVによる四半期毎 のネットワークスキャン (適合する場合) ・アクワイアラが定める 準拠要件 ・年1回の自己問診 ・ASVによる四半期毎の ネットワークスキャン ※準拠承認はアクワイア ラの裁量N/A
N/A
加盟店のPCI DSS準拠状況の報告方法
QSAによるオンサイト監査
-
監査報告書(ROC:Report of Compliance)
自己問診
-
自己問診(SAQ:Self-Assessment Questionnaire)
•
タイプA, A-EP, B, B-IP, C-VT, C, D, P2PE-HW の8種類
ASVによるネットワークスキャン
-
“Pass” とされた結果が出力されたスキャニングレポート
準拠証明書(AOC)
-
加盟店の責任者が署名
-
オンサイト監査を実施した場合は、監査責任者(QSA)が署名
-
自己問診結果を監査員が確認した場合は、監査責任者(QSA)
オンサイト監査(評価)の概要
毎年全項目の適合性を確認する必要がある。
監査サイクルは12ヶ月に1回。
拠点及びシステムコンポーネントについてはサンプリング
により実施する。
-
QSAはサンプリングの根拠を明確に記載する必要あり。
-
PCI DSSの要件自体のサンプリングは認められない。
項目毎に適合/不適合を判別する。
オリジナルの要件で適用できない場合、代替コントロール
の適用可否について判断する。
不順守への対処を行う。
-
目標期日を明確にする。
-
不順守の内容によっては、フォローアップ監査を実施する。
自己問診の概要(V3.1)①
SAQ
説明
項目数
A
カード会員データの取り扱いはすべて認証済みのサードパーティに外部委託しており、店内 にはカード会員データの紙の計算書または領収書だけを保管している加盟店(対面式の加 盟店には適用されない)14
A-EP
電子商取引の支払チャネルを PCI DSS 認定の第三者に部分的に外部委託している電子商取引加盟店(システムや店内ではカード会員データを電子的に保存、処理、伝送すること がない)139
B
インプリンタまたはスタンドアロン型ダイアルアップ端末のみによって、カード会員データを処理する加盟店(電子商取引チャネルには適用されない)41
B-IP
ペイメントプロセサーにIP接続される、スタンドアロン型PTS認定の加盟店端末装置のみによって、カード会員データを処理する加盟店(電子商取引チャネルには適用されない)83
C-VT
インターネットに接続されたパーソナルコンピュータ上にある隔離された仮想端末のみによってカード会員データを処理する加盟店(電子商取引チャネルには適用されない)74
C
ペイメントアプリケーションシステム(POS システムなど)がインターネットに接続されているが、カード会員データをコンピュータシステムに保存しない加盟店(電子商取引チャネルに は適用されない)140
D
ペイメントブランドによりSAQ対象として定義されたすべてのサービスプロバイダ 上記SAQタイプの基準を満たさないSAQ対象加盟店330
自己問診の概要(V3.1)②
PCI DSSへの準拠について、加盟店自らが次のこ
とを行う。
-
必要なポリシー文書・手順を整備する。
-
要件に従った情報セキュリティ対策を実施する。
-
ポリシー・手順に従ったシステム運用・業務運用を行い、必要な
記録(変更管理、コードレビュー、定期レビュー等)を維持する。
-
定期的な検査(無線LAN, 内部・外部脆弱性, ペネトレーション)
を実施する。
-
これらの実施状況を年次でチェックし、「自己問診および準拠証
明書」に記入し、経営責任者がサインする。
-
場合によっては、QSA(認定監査員)もサインする。
ECサイトのSAQ①
SAQ A
-
カードを提示しない(電子商取引または通信販売による注文)取引のみを
扱う。
-
全ての支払承認および処理
を PCI DSS 認定の第三者サービスプロバイダ
に
全面的に外部委託
している。
-
カード会員データのキャプチャ、処理、伝送、保管方法を
直接制御しない
。
-
システムまたは敷地内でカード会員データを電子的に保管、処理、伝送する
ことなく、これらの機能を
第三者に全面的に委託
している。
-
消費者のブラウザに配信される支払ページは
全て
PCI DSS 認定の第三者
サービスプロバイダから直接送信される。
⇒いわゆるモール加盟店、決済代行事業者の支払
機能をiFrameで提供するECサイトが該当する。
ECサイトのSAQ②
SAQ A-EP
-
電子商取引のみを扱い、カード会員データの
全ての処理
を PCI DSS 認定の
第三者支払プロセサーに外部委託している。
-
Web サイトは
カード会員データを受信しない
が、消費者または消費者のカー
ド会員データが PCI DSS 認定の第三者支払プロセサーに
リダイレクトされる
方法を制御する。
-
決済アプリケーション/インターネットデバイスが、環境内の他のシステムには
接続されていない。(ネットワークセグメンテーションによって実現可。)
-
消費者のブラウザに表示される支払ページの全要素は加盟店の Web サイ
トまたは PCI DSS 準拠のサービスプロバイダからのものとする。
-
システムまたは敷地内でカード会員データを電子的に保管、処理、伝送する
ことなく
、これらの機能を
第三者に全面的に委託
している。
⇒画面リンク型決済のECサイト、支払処理機能を
ECサイトのSAQ③
SAQ D
-
カード会員データを
自社の Web サイトで承認する
電子商取引加盟店。
-
カード会員データを電子形式で
保存する
加盟店。
-
カード会員データを電子形式で
保存しない
が、
他の SAQ タイプの基準を満
たさない
加盟店。
-
他の SAQ タイプの基準を満たす環境にあるが、自社の環境に他の PCI
DSS 要件が適用されるような加盟店。
⇒次のようなECサイトが該当する。
・自社でCAFISに接続し、決済処理を行っている。
・カード番号をDBやファイルに保存している。
・カード番号をWebサーバのモジュールで受け、インター
SAQの記載事項①
SAQには、次の事項を記載する。
-
加盟店の情報(組織名、商号、担当者、住所、URL等)
-
監査機関の情報(SAQの確認を外部監査機関が行った場合)
-
加盟店のビジネス
•
業種、支払方法
•
カード会員データの取扱方法(伝送・処理・保存)
•
カード会員データを取扱う場所(事業所名・住所)
•
決済アプリケーション(名称・バージョン・ベンダ・PA-DSS準拠状況)
•
カード会員データ環境(CDE)の概要
•
サービスプロバイダの一覧と役割
SAQの記載事項②
続き
-
各要件(SAQでは「PCI DSS質問」)の準拠状況(後述)
-
代替コントロールワークシート
-
「該当なし」(N/A)とした要件の、適用されない理由の説明
-
「未テスト」(Not Tested)とした要件の、未テスト部分と理由の
説明
-
PCI DSS検証(準拠状況)の証明
•
準拠を確認した日、非準拠の場合は準拠目標日
•
準拠状態の確認(正しく確認したことの宣言)
-
責任者(担当役員)のサイン、(該当する場合)QSAのサイン
実際のSAQ(英語版の要件部分)
最新のV3.1は、英語版のSAQしかない。
実際のSAQ(日本語版:参考)
各要件への回答①
各要件に対し、次の回答をチェックしていく。
-
Yes(はい)
•
要件に合致した文書・手順があり、情報システムが構成・設定されてお
り、正しく運用できており、担当者の認識も正しく、一連の活動の記録も
維持されている。
※オンサイト監査では確認した証跡をROC(監査レポート)に記録する
が、SAQではその要求はない。(別途メモを取っておくとよい。)
-
Yes with CCW(はい、CCW付)
•
要件に記載されている対策が実施できていないが、代わりの方法(代替
コントロール:CCW)を定義・運用することで、要件が求めるセキュリティ
は確保できている。
※別途「代替コントロールワークシート」を作成し、代替コントロールの
妥当性を評価しなければならない。
各要件への回答②
続き
-
No(いいえ)
•
要件に合致した文書・手順がない、正しく運用できていない、記録が維
持されていない。
※1件でもあると、PCI DSS準拠にならない(非準拠状態)。
-
N/A(該当なし)
•
ワイヤレスネットワークがない、カード会員データを保存するDBがない、
アプリケーション開発を外部委託している等要件を適用するシステムや
運用がない。
※N/Aの妥当性を評価する必要がある。また、ワイヤレスネットワーク
がなくても要件11.1(不正ワイヤレスAPの検査)はN/Aにできない。
-
Not Tested(未テスト)
Part2:
PCI DSSの対象範囲①
PCI DSS のセキュリティ要件は、カード会員データ環境
に含まれる、または接続されるすべてのシステムコン
ポーネントに適用されます。
カード会員データ環境(CDE)は、カード会員データまた
は機密認証データを保存、処理、または送信する人、処
理、およびテクノロジで構成されます。「システムコンポー
ネント」には、ネットワークデバイス、サーバ、コンピュー
タ、アプリケーションが含まれます。システムコンポーネ
ントの例には、次のものが含まれますが、これらに限定
PCI DSSの対象範囲②
対象範囲の定義がPCI DSS準拠の初段階として
最も重要な要素のひとつです。
QSAからオンサイト監査を受ける場合に事前に合意して
おく、もっとも重要な事項のひとつです。
理由
-
対象範囲の漏れは結果的に大きなコストとリスクの増大に
つながります。
-
CDEを限定することはリスクの低減につながります。
-
オンサイト監査時に対象の範囲の違いがある場合には、
監査が中断したり、一度ですまないケースが想定されます。
PCI DSSの対象範囲③
対象範囲確定に必要なこと
-
CDEにある全てのカード会員データフローの文書化
-
対象範囲外にカード会員データが存在(伝送・処理・保管)しな
いことを確実にする。
-
ネットワーク構成図とデータフロー図を作成する。
-
評価対象外でカード会員データが発見された場合には、
•
当該カード会員データを完全に削除する。
•
対象範囲内のシステムに移行する。
•
対象範囲を見直す。
-
評価対象範囲のどのように決定したかを文書化する。評価者
PCI DSSの対象範囲④
ネットワークセグメンテーション
-
CDEと接続されるフラットネットワークはPCI DSSの対象範囲
となる。
-
PCI DSSの対象範囲を狭めるためにファイアウォールなどで
ネットワークセグメンテーションを実施することが可能である。
ネットワークセグメンテーションはカード会員データにアクセス
する範囲を狭めることにつながり、リスクを低くすることが可能
である。
-
セグメント=分離=通信できない
注:ネットワークセグメンテーションはPCI DSSの
要件ではありません。
PCI DSSの対象範囲⑤
セグメンテーションに関するPCI SSCの見解
-
2013年11月20日のCommunity Meetingでは、セグメンテーシ
ョンについて次の説明がなされている。
•
Segmentation =
isolation
= no access
•
Controlled access ≠
isolation
•
Controlled access is a DSS requirement and in scope
•
If it can impact the security of the CDE, it is in scope
•
Remember non-CHD systems may be in scope too
-
isolation(≒絶縁)がセグメンテーションの基本である。物理的
な方法の他、ファイアウォールやルータを使用して絶縁するこ
とも可能であるが、通信があってはならない。
ネットワークセグメンテーションの例
PCI DSSの対象範囲⑥
Internet
FireWall
DMZセグメント
INTセグメント
Web
AP
DB
社内LAN
通信がないこと
PCI DSSの対象範囲⑦
付録Dのセグメンテーションのためのフローチャート
-
評価者(QSA)はAを起点に設備とビジネスコンポーネ
ントについてサンプリングを行う。
評価担当者は、 セグメンテーションの効果を 評価したか? ネットワーク セグメーションによる対象 範囲縮小が可能か? PCI DSSの対象範囲縮小を目的と し た ネ ッ ト ワ ー ク セ グ メ ン テ ー ションを利用するために、カード 会員データを保存、処理、伝送す る シ ス テ ム を 、 そ の 他 の ネ ッ ト ワークから分離しなければならな い。 A YES YE S NO NO 対象範囲決定 A カ ー ド 会 員 デ ー タ を 保存・処理・伝送する領域を 分離するために、対象範囲が 限定できている ネ ッ ト ワ ー ク セ グ メ ン テ ー ションの実施とその効果につ いて評価担当者が報告書に記 載する す べ て のネ ッ トワ ー クが PCI DSSレビューの対象範囲内で ある 評価担当者はPCI DSSの対象範 囲と、その対象範囲の有効性を どのように確認したか文書化し なければならない。PCI DSSの対象範囲⑧
誤った見解の例
-
メインフレームは評価対象に含まれない ×
カード会員データが伝送/処理/保存される場合は含まれます。
-
コールセンターは評価対象に含まれない ×
カード会員データを取り扱うコールセンターのシステムコンポーネント
(ネットワーク、サーバ・PC、DB等)、業務プロセス、人物、施設は対象
となります。
-
CDE内に配置された、カード会員データを扱わないサーバは評価対
象に含まれない ×
CDE内に配置されたシステムコンポーネントは、カード会員データの
取扱いに関係なく評価対象になります。
-
全ての決済システムをセグメンテーションしなければならない ×
セグメンテーションは必須ではありません。全ての情報システムにPCI
DDS要件を適用することも検討すべきです。
PCI DSSの対象範囲⑨
究極のリスク低減は「カード会員データを持たない」
-
非対面加盟店は決済代行事業者の非保持(画面遷移型)サービスを利用する
ことによりSAQ A(要求される要件が14項目)またはSAQ A-EP(同139項目)に
区分される。
-
最終的に上記の状態を確認するのは契約するアクワイアラである。
商品選択 ログイン ※事前に入力し た個人情報の中 にカード情報は 含まれていない 決済方法 選択画面に よりクレジッ トカードを選 択 決済に必要 なクレジット カード情報 入力(伝送) 売上情報の 送信 ※ここにカー ド情報は含 認証/決済 (処理) 決済完了 画面 自社の ECサイト 決済代行 事業者PCI DSSの対象範囲⑩
対象範囲としての委託先の考慮
-
多くの加盟店やサービスプロバイダは、委託先(サービスプロ
バイダ)とカード会員データの責任を共有している。
-
委託先サービスプロバイダもPCI DSSの準拠責任を負う。
-
詳細は要件12.8で解説
クレジットカードの磁気ストライプまたはチップ内の
データをさす。
カード会員データ(CHD)
-
プライマリアカウント番号(PAN:一般に16桁)
-
カード会員名
-
サービスコード
-
有効期限
機密認証データ(SAD)
-
全磁気ストライプ/チップ上の
磁気ストライプイメージ
-
CVC2/CVV2/CID/CAV2
カード会員データ
4000 0012 1111 2222 12/10 ICMS Taro カード会員名 PAN 有効期限 CVV2 磁気ストライプ チップ• PCI DSS 要件3.3と3.4はPANのみに適用します。カード会員名、サービスコード、有効期限とPANを共に保存する場合は、 PCI DSS 要件3.4に従い、読み取り不能にする必要があります。 ※1 機密認証データはオーソリ(承認)処理の後、(たとえ暗号化していても)保存してはなりません。これはPANが保存されて いない環境にも当てはまります。 ※2 磁気ストライプの全てのトラックデータ、チップ上の同等のデータなど ※3 ペイメントカードの前面または裏面に印字された 3 桁または 4 桁の数字