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Academic year: 2021

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Title 現代韓国における「貧困の女性化」 [論文内容及び審査の要旨]

Author(s) 金, 仁子

Citation 北海道大学. 博士(経済学) 甲第12973号

Issue Date 2018-03-22

Doc URL http://hdl.handle.net/2115/70451

Rights(URL) https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/

Type theses (doctoral - abstract and summary of review)

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File Information Inja̲Kim̲review.pdf (審査の要旨)

Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

(2)

[ 1 ]

様式9

学位論文審査の要旨

博士の専攻分野の名称:博士(経済学) 氏名:金 仁子

主査 教授 橋本 努 審査委員 副査 教授 岡部 洋實 副査 教授 佐々木 憲介 副査 教授

(法政大学)

原 伸子

学位論文題名

現代韓国における「貧困の女性化」

本論文の目的は、1970 年代に提起され、近年のジェンダー格差分析において注目されて いる「貧困の女性化(feminization of poverty)」論を、1990 年代以降の韓国におけるジ ェンダー格差分析へと拡張することにある。研究は、ジェンダー・エクイティの観点から 女性の貧困を、家族、市場(雇用)、国家(社会保障)の三領域で捉えるとともに、「貧困」

概念を、所得のみならず、時間などの非物質的なものをも含む資源の欠如、資源へのアク セス制限と捉え、各領域の構造変化から女性の貧困を分析するという方法をとっている。

第 1 章は、「貧困の女性化」論とそれが提起された背景とについての、先行研究の世界的 潮流の概観にあてられている。第2章から第4章までは、現代韓国の女性の貧困ついての、

家族、市場(雇用)、国家(社会保障)の三領域にわたる実証分析である。第2章では、近 年の韓国における家族形態および家計収入の構造変化の分析と、性別所得および時間貧困 の分析とに基づき、1990 年代以降の韓国における「貧困の女性化」現象が確認されている。

第3章では、1997 年末の経済危機の前後からの韓国の労働市場における女性労働者の状況 が分析されている。就業上の地位、職種、賃金等の雇用条件などにおける性や年齢による 格差、女性の経済活動と家族周期との関係などが、女性の経済的地位に対してもたらして いる影響が明らかにされている。第4章では、韓国の福祉レジームとされる「生産的福祉」

の特徴やその背景、政策が今後もたらしうる問題が、「ジェンダー化した貧困」とどのよう に結びついているのかが検討されている。第5章は、エスピン‐アンデルセンの福祉国家 類型論に対するジェンダー視点からの諸批判を検討し、新たなジェンダーレジーム論を、

韓国の福祉レジームに照らして展開することにあてられている。

本論文の成果を集約すると、次の4点となる。

第 1 に、1990 年代から韓国では家族形態が急速に多様化し、世帯規模の縮小および女性 稼ぎ主世帯の増加が顕著となるなかで、「貧困の女性化」現象が、貨幣所得だけではなく、

「時間の貧困」としても観察されたことである。

第2に、1990 年代から産業構造のサービス化と労働力の女性化とが同時に進み、女性は、

男性に比べて相対的に低い賃金の不安定雇用の下にあることが確認された。多くの女性は、

(3)

[ 2 ]

家族周期(family cycle)、なかでも出産・育児のために就業の中断を余儀なくされている。

この中断は、女性のキャリア開発および労働市場における地位に対し不利に作用し、女性 が経済活動に再び参加する際に、不安定で低賃金の仕事に従事する可能性を高め、女性の 経済的独立をより困難にしている。

第3に、1990 年代末以降の韓国政府による「生産的福祉」は雇用と強く連携したワーク フェア政策であり、その狙いは、女性の雇用創出・拡大を通しての、社会福祉サービスの 拡充と経済成長との同時達成にあった。しかし、結果として多くの女性を貧困に追い込む こととなった。また、就労を通した脱貧困・自活を掲げる「基礎生活保障制度」は、多く の女性をワーキングプア状態に留め、女性だけを支援対象とする「仕事・家庭の両立支援」

は、女性に、稼ぎ手と育児などの家庭内ケアの担い手という二重負担を課すことになった。

比較的低賃金の不安定雇用の下にある女性は、雇用条件に基づく社会保険から排除される 可能性が高く、公的年金のカバー率や受給額などでジェンダー非対称性が生じている。

第4に、1990年代末以降の韓国福祉国家レジームには、無償のケア労働の担い手は誰か、

それを現に担っている女性の雇用の質をどうするかなど、ジェンダー視点が欠けていた。

そのため女性は、ミクロレベルでは、経済活動と家庭内ケア労働との二重の責任・負担を 負わされ、マクロレベルでは、有償のケア労働を劣悪な労働条件の下で担わせられている。

これらは、エスピン-アンデルセンらの福祉国家論に欠ける、ジェンダーレジームの視点 によってこそ明確にされうる問題といえる。

本論文は、従前の福祉国家類型では東アジア・レジームとされていた韓国福祉国家を、

「貧困の女性化」の視点から分析し、新自由主義的なワークフェア政策の構造的な矛盾が ジェンダー不平等に深化・集約されていることを明らかにした点で、韓国研究への新たな 貢献と評価できる。韓国における女性の脆弱な地位について、1987 年民主化以降の動向と 1997 年経済危機以降の労働市場との関連や、女性が担っているケア労働の質の検討などの ほか、福祉国家類型における韓国レジームの位置付けなど、検討課題は残されてはいる。

しかし、本論文は、人々が担うべき日々の役割・責任の配分と、それらの社会的評価とに 関わる諸問題をジェンダー・エクイティの視点から具体的に明らかにする研究成果として、

審査委員は全員一致で、博士(経済学)の学位を授与するに値すると判断した。

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