45
高齢 者 の低 所 得 世 帯 と所 得 保 障*
LowIncomesofElderlyHouseholdsandIncomeMaintenance
大 崎 洋
HiroshiOHSAKI
ヱ.は じめ に
2.低 所 得 世 帯 の 推 計 と推 移 2.1高 齢 者 の世 帯 構 造 a2生 活 扶 靭 基 準 の 算 出 2.3低 所 得 世 帯 率 の推 計 2.4低 所 得 世 帯 率 の 推 移 3.低 所 得 の 要 因 と背 景
3.1就 業 状 況 3.2健 康 状 況 3.3家 族 形 態
3.4所 得 構 成
4.所 得 保 障 の現 状 と問 題 点 4ほ 公 的 年 金 の所 得 保 障 機 能 4.2生 活 保 護 の 受 給 率 4.3老 親 扶 養 の現 状 と聞 題 点 5.所 得 保 障 提)改善 案
5.1公 的 年 金 の最 低 所 得 保 障 5.2負 の 所 得 税 と問 題 点 5.3老 人 扶 養 手 当 の 検 討 6.む す び
1、 は じ め に
高 齢 者 の 所 得 分 布 は,低 所 得 層 が 多 く所 得 隔 差 も大 きい.近 年,社 会 保 障 な らび に 税 制 面 にお い て 高 齢 者 に 対す る福 祉 予 算 が 増 加 し つ つ あ るが,そ れ で も低 所 得 層 の4割 ちか く が 高 齢 者 世 帯 に よ っ て 占め られ る もの と推 計 さ れ る1).し た が っ て 低 所 得 高 齢 者 に対 す る 福 祉 支 出 の 有 効 性 を 検 討 す る必 要 が あ ろ う.
ま た,高 齢 者 の増 加,核 家 族 化,扶 養 人 口の 減
*本 稿 は昭 和61年 度 生 活 経 済 学 会 で の 報 告 に も とつ い て い る.有 益 な コ メ ソ トを い た だ い た 藤 田晴,地 主 重 美,溝 口敏 行 の諸 撒 授 に 謝 意 を 表 した い.
1)年 金,医 療,社 会 扶 助 等 の社 会 保 障支 出 に 占 め る高 齢 者 む け の支 出割 含 は大 雑 把 に 推 計 して6割 程 度(58年)と お もわ れ る.50年 に は4割 程 度 と推 定 され るか ら近 年 増 加 傾 向 に あ る.
少 が 進 む に つ れ て,低 所 得 高 齢 者 の所 得 保 障 と扶 養 問 題 は今 後 一 層 重 要 に な る で あ ろ う。
に もか か わ らず,高 齢 者 世 帯 に 関す る家 計 な い し所 得 調 査 は 乏 し く十 分 整 備 さ れ て い な い 。 小 論 は,入 手 可 能 な 所 得 分 布 統 計 を つ か っ て 高 齢 者 の低 所 得 世 帯 を 推 計 し,低 所 得 の 要 因 と背 景 を 分 析 し,所 得 保 障 の 現状 と問題 点 を 検 討 す る こ と に あ る2).
2.低 所得世 帯 の推計 と推 移
2、1高 齢 者 の 世 箒 構 成
小 論 で は原 則 と して65歳 以 上 の 高 齢 者 を 対
2)高 齢 者 を 含 め た 貧 困 に 関 す る 研 究 は 多 い が,AtkiRS◎ 難 〔1〕,Moon〔7),Layardet
al.〔6〕,RoyalCommission〔11〕,Townsend
〔19〕,Walkeretal,〔26〕,村 上 〔8〕,高 山
〔17〕,曾 原 〔16〕等 を 参 照.
46 季刊 創 価 経 済 論 集 第1表 高齢 者(65歳 以上)の 世帯構成
Vol.XVINo.1
昭 和58年(万 人)
繍 劃 単 身 夫婦のみ 夫婦 と未 婚 の子 供 勝 調 三世 代1そ の 他
総 数
男女
1,149 484 664
105 22 83
245
×56 89
‑⊥7400FO9御 7尋ρ01りQ几δ
534 195 339
146 48 98
資 料:厚 生 省r厚 生 行政基礎調査 報告』
第2表 高齢 者が いる世 帯の構 成比の推移
(%)
騨 暑擁 者 単 身1夫婦のみ 麟 享蚕1旛綴[三 世 代1その他
昭 和47年 50 52 55 58
20.6ユ) 21.7 22.a 24.0 24.7
8.1 8.6 9.8 10.7 11.6
11.3 1s.1 14.O I6.2 工7.7
6.9 6.7
&.8 6.7 5.5
4.5 2.9 3.4 3.8 4.a
55.8 54.4 51.9 50.1 47.4
13.3 14.4 14.1 12.5 12.7
資 料:表1と 同 じ.備 考:1)全 世 帯 数 に 対 して65歳 以 上 の 者 が い る世 帯 数 の割 合.
象 にす る.厚 生 省 の 『厚 生 行 政 基 礎 調 査 』 (以 降r厚 生 行 政 』 と略 称)に よれ ぽ,昭 和 58年 に お け る65歳 以 上 の 高 齢 老 数 は1149万 人 で全 人 口 の9.7%を 占め る,ま た65歳 以 上 の 高 齢 者 が い る世 帯 数 は902万 世 帯 に の ぼ り, 全 世 帯 の お よそ1/4(24.7%)を 占 め る.高 齢 者 の い る世 帯 は,家 族 形 態 に 応 じて,(1)単
身,(2)夫 婦 の み,(3)夫 婦 と未 婚 の子,④ 片 親 と未 婚 の子,(5)老 親 と既 婚 の 子 と 孫 の 三 世 代,⑥ そ の他,等 の世 帯 類 型 に 区分 し うる.
高 齢 者 の 性 別 構i成は 男 性 が42%,女 性 が58%
と女 性 の 比 率 が 高 く,年 齢 が 高 くな る ほ ど女 性 の比 率 が 高 くな る.さ ら に,家 族 形 態 で は,夫 婦 の み,夫 婦 と未 婚 の子 等 の 世 帯 で 男 性 の比 率 が 高 く,反 対 に単 身,片 親 世 帯 で 女 性 の比 率 が 高 い.子 供 夫 婦 と 同居 す る高 齢 者 の 割 合 は7割 弱 を構 成 し,な か で も三 世 代 世 帯 が 全 体 の半 数 を 占 め る こ とか ら もわ か る よ うに,家 族 扶 養 は高 齢 者 の 生 活 保 障 に お い て 重 要 な役 割 を果 し て い る.
都 市 化,核 家 族 化 を 反 映 し て 同 居 比 率 はす う勢 と し て低 下 傾 向 に あ り,高 齢 者 の み の世 帯 の割 合 が3割 ち か くに達 し,こ の10年 間 に 50%も 大 幅 に 増 加 して い る.ま た 地 域 分 布 で は,子 供 と同 居 す る 高 齢 世 帯 の 割 合 は小 都 市 お よび 農 村 ほ ど高 く,こ れ に 対 し て 高 齢 者 の み の 世 帯 は 大 都 市 ほ ど多 い.
な お 高齢 者 世 帯 の 定 義 と して,男 性65歳 以
上,女 性60歳 以 上 の 者 のみ で 構 成 す るか また
は こ れ に18歳 未 満 の 者 が 加 わ っ た 世 帯 を 意 味
す る場 合 が あ る.こ の 定 義 に よれ ば,高 齢 者
世 帯 は302万 世 帯 に の ぼ り,全 世 帯 の7。7%を
占め る.世 帯 構 成 で み る と,高 齢 者 世 帯 は世
帯 規 模 が 小 さい の に 対 して,同 居(な か で も
三 世 代)世 帯 は 拡 大 家族 を 反 映 し て 世 帯 規 模
は 一 一層 大 き くな る.家 族 内 に お け る 地 位 で
は,世 帯 主 が43%,配 偶 者 が16%,世 帯 主
(ま た は 配 偶 者)の 父 母 が39%を 占 め る.し た
が っ て 高 齢 者 の 半 数 以 上 が 被 扶 養 者 の地 位 に
あ る.
August1986大 崎
洋:高 齢者 の低所 得世帯 と所 得保障 第3表 生 活扶助基準 の推移
47
(万 円)
陣 身 抹 婦のみ 夫婦 と未 婚 の子供 片親 と未 三 世 代 そ の 他 婚の子供
昭 和47年 50 52 55 58
16.5 27.8 35.5
..
61.3
27.S 44.9 57.4 .1・
98.4
42.8 71.5 '1 122.4 146.i
29.1 50.9
・ ::1 107.5
67.7 112.3 142.8 ユ87.7 225.2
55.1 87.0 101.7 138.4 159.9
資料:全 国社会福祉協 議会r生 活保護手 帳』
第4表 生活 扶助基準の 中位 数所得 に対す る相対 比
C%)
単 身1夫 婦の引 翻 享劃 羅 蚕 三 世 代 そ の 他
昭 和47〜49年 50^‑52 55^‑58
54.9 55.2 59.4
//̀
44.6 45.3
30.9 34.3 36.4
31.7 32.0 33.4
38.5 38.3 42.2
36.3 38.3 37.8
資料:厚 生省r国 民 生活実態調 査報 告』
2.2生 活 扶 助 基 準 の 算 出
こ の研 究 で は 生 活 扶 助 基 準 を 貧 困線(最 低 生 活 費)と み な し,そ れ と 同 等 か な い しそ れ 以 下 の所 得 を 低 所 得 と定 義 す る.最 低 生 活 基 準 は 世 帯 構 成 や 居 住 地 に よ っ て 異 な る の で 以 下 の よ うに 推 定 した.ま ず 世 帯 あ た りの 生 活 扶 助 基 準 額 は個 人 あ た りの 扶 助 基 準 額(居 宅 第1類)と 世 帯 あ た りの 扶 助 基 準 額(冬 季 加 算 を 含 め た 居 宅 第2類)と を 合 計 し,そ れ に 期 末 一 時 扶 助 費 を加 え,こ れ を 年 額 に換 算 し て 算 出 した.な お65歳 以 上 の高 齢 者 の い る世 帯 に お け る世 帯 ・年 齢 構 成 に 関 す る情 報 は厚 生 省 の 『厚 生 行 政 』,『国 民 生 活 実 態 調 査 』 (以 降r生 活 実 調 』 と略 称)等 を利 用 した.つ ぎ に,高 齢 者 世 帯 の 地 域 分 布 を も とに 各 居 住 地 区 の 基 準 額 を 加 重 平 均 して 生 活 扶 助 の全 国 平 均 額 を算 出 した.
表3は,そ の推 計 結 果 を最 近 の10年 間(昭 和47〜58年)に つ い て示 した も の で あ る.生 活 扶 助 基 準 額 は こ の10年 間 に単 身 世 帯 で3,7
倍,夫 婦 の み の 世 帯 で3.5倍,三 世 代 世 帯 で 3.5倍 にそ れ ぞ れ 増 加 し た.生 活 保 護 基 準 が この よ うに 改 善 され た の は,格 差 縮 小 方 式, す な わ ち 一 般 国 民 の消 費 水 準 の伸 び率 以 上 に 生 活 扶 助 基 準 を 引 き上 げ る こ とに よ っ て 一 般 国 民 と要 保 護 世 帯 の 間 の 消 費 水 準 の格 差 縮 小 を 図 るた め に 毎 年 引 き上 げ られ て きた た め で あ る.こ れ に 対 して,高 齢 者 の い る世 帯 全 体 の所 得 中 位 数 は2.8倍 の 増 加 に と ど ま る.そ の 結 果,所 得 中 位 数 に 対 す る生 活 扶 助 額 の 相 対 比 はす べ て の 世 帯 に お い て 上 昇 して お り, な か で も単 身 と三 世 代 世 帯 の 上 昇 が 目立 つ.
各 世 帯 ご と に み た 所 得 中 位 数 に 対 す る最 低 所
得 水 準 は 単 身 が60%,夫 婦 の み が45%,片 親
が33%,三 世 代 が42%と4〜6割 程 度 に相 当
す る.ま た 世 帯 所 得 の 中 位 数 で み るか ぎ り,
高 齢 者 の い る世 帯 とそ うで な い 世 帯 との あい
だ で は 目立 った 差 が み られ な い.た だ し,世
帯 構 成 を 調 整 した 等 価 尺 度 で 比 較 す れ ば,世
帯 規 模 が 大 きい 高 齢 者 の い る世 帯 は 高 齢 者 の
い な い 世 帯 に 対 して8割 の 水 準 に と ど ま る.
48
季 刊 創 価 経 済 論 集 第5表 低所得世 帯率の推計
Vol.XVINo.1
昭 和58年(0)
1単 身 夫堅1翻 享蚕 騰 鱗 三 世 代[そ の 他 全 世 帯
高 齢 世 帯 非高齢世 帯 世 帯 計
27.9 5.5 1.1.3
..
4.8 6.3
■⊥OQりQ
り自55
15.2 13.1 13.7
6.8 6.9 6.8
16.2 10.0 13.7
ユ1.3 5.8
7.3
資 料:表4に 同 じ.
第6表 低所 得世帯の 構成比
昭和58年(0)
単 身1夫 婦のみ1翻 享蚕 麟 鱗 三 世 代 そ の 他 世 帯 計 高 齢 世 帯
非 高齢 世帯 世 帯 計
X2.3 6.8 19.1
5.7 6.6 12.3
1.5 31.8 32.4
2.3 5.9 8.1
11.9 4.2 16.1
7.8 3.2 1.1.0
41.5 59.5 zoo.o
資 料:表4に 同 じ.
生 活 扶 助 基 準 は住 宅 扶 助 や 医 療 扶 助 そ れ に 老 齢加 算 も含 ん で お らず,衣 食 等 の基 礎 的 な 必 要 を 充 足 す る 最低 生 活 費 を定 め た もの で あ る,し た が って,住 宅 扶 助 を 加}る と生 活 扶 助 の1割 増,ま た 老 齢 加 算 を 加 え れ ば2割 強 増 とな り,上 記 の扶 助 と加 算 を 含 め た 最 低 生 活 費 は 生 活 扶 助 額 の2〜4割 増 ほ ど高 目に 算 定 され ね ば な らな い の で あ ろ う3),そ うな れ ば,最 低 生 活 費 は各 世 帯 所 得 の 中位 数 に 対 し て6〜8割 程 度 ま で上 昇 す るで あ ろ う.
,z.3低 所 得 世 帯 率 の 推 計
最 低 所 得 水 準 が 世 帯 類 型 別 に算 定 され た の で,つ ぎ に世 帯 類 型 別 の 所 得 分 布 統 計 を も ち い て貧 困 線 以 下 の低 所 得 世 帯 の 割 合(低 所 得 率 また は 貧 困 比 率)を 推 計 す る.使 用 し た 統 計 は 『生 活 実 調 』 で あ るが,こ の資 料 を利 用 し て推 計 を 行 な う場 合,以 下 の点 に 注 意 す る
3)厚 生 省 のr生 活 保 護 動 態 調 査 』(57年)に よ れ ば,保 護 世 帯 が 支 払 っ た 家 賃 ・地 代 の 平 均 額 は 月 額16,000円 程 度 で あ り,57年 の 生 活 扶 助 額 の25.2%に 相 当す る.
必 要 が あ ろ う.第1に は,標 本 数 が 少 な く, 低 所 得 層 は 年 に よ っ て 安 定 して い な い 場 合 も み られ る の で,標 本 誤 差 に 注 意 す る必 要 が あ る.第2に は,す で に拙 稿 〔9〕で 指 摘 した よ うにr生 活 実 調 』 はr家 計 調 査 』 等 の分 布 統 計 に比 し て低 所 得 層 に 偏 した 分 布 を 示 す4).
こ の点 で 低 所 得 率 を過 大 に評 価 す るお そ れ が あ る.
表5は,全 世 帯 を65歳 以上 の 者 の 有 無 に応 じて 高 齢 者 と非 高 齢 者 と の2つ の グル ー プ に 区 分 し,各 世 帯 類 型 ご と に低 所 得 世 帯 が 占 め る比 率 を 求 め 比 較 した も の で あ る.58年 に お け る低 所 得 世 帯 は全 世 帯 の7.3%,r厚 生 行 政 』 に よれ ば266万 世 帯 と 推 計 さ れ る.他 方,高 齢 者 の い る世 帯 で は11.3%(102万 世 帯)と 推 計 さ れ る.し た が っ て,高 齢 者 の い る世 帯 は 低 所 得 世 帯 の4割 を構 成 す る も の と み て よい.低 所 得 率 を 世 帯 類 型 別 に 比 較 す る と,単 身,片 親(お も に母 子),そ の他,等 の
4)ち な み に 曾 原 〔16〕は 『生 活 実 調 』 の所 得 額 が 『国 民 経 済 計 算 年 報 』 の計 数 に 比 較 して20
0近 く過 小 で あ る と推 定 し て い る.
August1986大 崎
洋:高 齢者 の低所得世 帯 と所得保 障 第7表 低所得 世帯 率の推 移
49
(%)
陣 身 夫婦のみ 翻 鱗 甥 鰯 三世代1その他烈 鹸 者
昭 和47年1
50 52 55 58
22.2 26.6 17.3 14.2 27.9
22.2 14.1 5.5 9.0 9.9
7.1 7.6 5.7 1.8 5.5
9.9 12.8 13.5 10.6 15.2
11.5 7.1 6.0 8.4 6.8
10.6 14.0 15.3 11.1 16.2
12.9 1 8.2 9.0 11.3
資 料:表4に 同 じ.
世 帯 が と くに高 く,構 成 比 が 最 も 多 い夫 婦 と 子 供 の い る 世 帯 は低 所 得 率 が 最 も低 い.ま た 高 齢 者 の 有 無 別 に み る と,高 齢 者 のい る世 帯 の 低 所 得 率 は単 身 が27.9%と 目立 っ て 高 く, 片 親 とそ の他 等 の世 帯 も 高 い.こ れ に対 し て,
高 齢 者 の い な い 世 帯 で は片 親 とそ の他 等 の 世 帯 が や や 高 い,さ らに 他 の 家 族 との 同居 の 有 無 別 にみ る と,高 齢 者 の み の 別 居 世 帯 が17.7
%,同 居 世 帯 が7.6%と 前 者 の 別 居 世 帯 の 低 所 得 率 が 目立 っ て 高 い.た だ し,同 居 世 帯 の 大 半 を 占 め る三 世 代 世 帯 は低 所 得 率 で は6.8
%と 低 い が,高 齢 者 の い る世 帯 全 体 に 占め る 割 合 が50%と 最 も大 き な グ ル ー プ を構 成 す る の で,低 所 得 世 帯 数 でみ る と単 身 世 帯 と並 ん で1/3を 構 成 す る事 実 に注 目す る必 要 が あ ろ
う.
2.4低 所 得 世 帯 率 の 推 移
最 近10年 間 に お け る低 所 得 世 帯 率 の推 移 を 世 帯 類 型 別 に示 した の が 表7で あ る.高 齢 者 世 帯 の低 所 得 率 は47年 が12.9%と 最 も高 か っ た が,50年 に は10.8%,52年 に は8.2%へ と 1/3ほ ど低 下 した.低 所 得 率 の低 下 は す べ て の 世 帯 類 型 に つ い て 観 察 され た が,な か で も 夫 婦 の み と三 世 代 世 帯 の低 下 傾 向 が 目立 つ.
と ころ が,統 計 が 公 表 さ れ て い な い53年 と54 年 を 除 くと,低 所 得 率 は55年 が9.0%,56年
が10.8%と 再 び10%台 に 上 昇 し,57,58年 の 両 年 は11.3%と 高 水 準 に 推 移 して い る.と く に,単 身 世 帯 の 低 所 得 率 が55年 の14.2%か ら 58年 の27.9%へ とわ ず か3年 た らず で2倍 ち か く上 昇 して い る の が 目を ひ く.こ の急 上 昇 の 背 景 は理 解 しが た い が,56年 以 降 の標 本 が 以 前 に比 し て低 所 得 層 に偏 った 分 布 を 示 す こ と は確 か で あ ろ う.た だ し,高 齢 単 身 世 帯 の 場 合,10年 間 に お け る低 所 得 率 の 平 均 値 は 22.8%と も と も と高 い 水 準 に あ り,最 近 の数 字 は 異 常 で あ る と は断 定 で き な い5).低 所 得 層 の標 本 が 少 な く年 々変 動 す る こ と を考}れ ば,長 期 間 に わ た る動 向 に 注 目す る必 要 が あ ろ う.
夫 婦 のみ の 世 帯 は低 所 得 率 が40年 代 後 半 か ら50年 代 前 半 に か け て 急 激 に 減 少 した あ とほ ぼ10%台 と横 ば い で推 移 して い る.年hの 変 動 が よ り大 きい 片 親 世 帯 もほ ぼ 同様 とみ て よ い で あ ろ う.こ れ に対 し て,三 世 代 世 帯 の低 所 得 率 は50年 代 後 半 も減 少 す る傾 向 に あ り, 他 の 世 帯 と異 な る動 き を示 す.た だ,そ の他 世 帯 は 世 帯 構 成 が 年 々変 動 す るた め に低 所 得
5)た とえ ば57年 のr就 業 構 造 基 本 調 査 』 をこよれ ば,単 身 高 齢 世 帯 の低 所 得 率 は27.2%で あ る.ま た 日本 民 医 連 の 『ひ と り ぐ らし老 人 実 態 調 査 』(57年)で も低 所 得 率 は24.0%と 推 定 され る。 し た が っ て,『 生 活 実 調 』 の こ の 数 字 は か な らず し も異 常yY高 い と は い え な
い.
5̀)
季刊 創 価 経 済 論 集 第8表 低所 得世帯の構成 比の推移
Vol.XVINo.1
(%)
陣 身瞬 のみ庵 騒 騰 鱗 三世代その他票繰 鮮
昭 和47年 50 52 55 58
13.OI17.2 19.8117.8
・ ・
16.2115.2 29.713.7
4.4 5.4 4.3 1.0 3.7
2.9 3.0 3.i 3.7 5.5
51.3 35.1 40.2
.・
..
11.1
..
23.8 15.7 18.7
100.0 100.0 100.O loa.0 10a.o
資 料:表4に 同 じ.
率 の動 き も不 安 定 で あ るが,最 近 で は増 加 す る傾 向 に あ る.し た が っ て,最 近 に お け る低 所 得率 の 増 加 は お も に三 世 代 世 帯 の 減 少 を 単 身 とそ の他 世 帯 の増 加 が 上 回 った 結 果 とみ て
よ い で あ ろ う.
と こ ろ で,低 所 得 率 の 推 移 を み る場 合,最 低 所 得 水 準 の推 移 と世 帯 構 成 の 変 化 の 影 響 を 検 討 す る 必 要 が あ る.す で に み た よ うに,生
活 扶 助 基 準 は 各 世 帯 所 得 の 中 位 数 に 対 して こ の10年 間 でわ ず か な が ら も改 善 され て きた.
と くに 単 身 世 帯 に お け る改 善 は 目立 つ.し た が って,最 低 所 得 水 準 が 相 対 的 に 改 善 され れ ば そ れ と同 等 か そ れ 以下 の 低 所 得 層 の 比 率 は 当 然 増 加 す る こ とが 予 想 さ れ る.貧 困 の相 対 尺 度 を も ち い るか ぎ りこ うした 影 響 はつ ね に と も な う6).さ らに,高 齢 者 の い る世 帯 の構 成 も こ の10年 間 に 大 き く変 化 した.47年 に お い て は,同 居 世 帯 が81.6%と 大 部 分 を 構 成 し て い た.し か し,三 世 代 世 帯 が 年h減 少 す る か わ りに 別 居 高 齢 者世 帯 が しだ い に増 加 し, 59年 に は30%を こ}る に 至 った.別 居 世 帯 の
な か で は老 夫 婦 の み の世 帯 の増 加 が 目立 つ.
6)生 活 扶助基準 を使 った貧 困比 率 の計測上 の 問題 点にっ いては最近 の英 国の社会保 障改革 に関す る グ リー ソペ ーパ ーDHSS〔2〕 で も指 摘 され ている.ち なみ に,中 位数所得 に対 す る生活扶助 基準額 の相対比 を仮 に47年に固定 した場合,低 所得率 は実 際値 よ りも2%ほ ど 低下す る ものと推定 され る.
低 所 得 率 は別 居 世 帯 の ほ うが 同居 世 帯 に比 し て2倍 ほ ど高 い.そ れ ゆ え 別 居 高 齢 世 帯 の 増 加 傾 向 は低 所 得 率 を 引 き上 げ る 要 因 に な る。
ち な み に,世 帯 構 成 比 を47年 に 固 定 した 場 合, 58年 にお け る低 所 得 率 は 実 際 値 の11.3%か ら 10.2%へ と10%ほ ど低 下 す る.ま た タ イ ル係 数 で はか った 所 得 不 平 等 度 は 世 帯 グル ー プ 内
で は低 下 した が,世 帯 グ ル ー プ 間 で は増 加 す る傾 向 に あ る7).
『生 活 実 調 』 は全 国 の 高 齢 者 世 帯 の 所 得 分 布 を 調 査 して い る が,標 本 規 模 が 小 さ く標 本 誤 差 に 注 意す る 必 要 が あ る.そ こ で対 象 者 が 東 京 都 の 高齢 者 に 限 定 され るが,よ り標 本 が 多 いr東 京 都 老 人 生 活 実 態 調 査 』(以 隆 『都 老 実 調 』 と略 称)を 利 用 して 生 活 扶 助 基 準(一 級 地)以 下 の低 所 得 世 帯 を 推 計 し,r生 活 実 調 』 の 結 果 と比 較 して み る.た だ し 『都 老 実 調 』
の所 得 年 次 は54年 を,r生 活 実 調 』 は55年 を と る.低 所 得 率 はr都 老 実 調 』 が5.9%で あ るの に 対 して 『生 活 実 調 』 は9%と 高 い.世 帯 類 型 で は,単 身 とそ の他 世 帯 の低 所 得 率 は
r都 老 実 調 』 の ほ うが 高 い.し か し,三 世 代 世 帯 は1.8%とr生 活 実調 』 の8.4%の1/4以 下 の 低 い 水 準 で あ る.世 帯 類 型 の定 義 は両 統
7)グ ル ープ全体 の不平等度(T)に 対 す るサ
ブ ・グル ープ間の不平等度(7アβ)の相対的な
寄 与率(TB/T)は46年 の25.0%か ら58年の
30.1%へ と上昇 してい る.
August1986 大崎 洋:高 齢者 の低 所得世帯 と所 得保障
第9表 高齢者 世帯 における有業 ・無業 と所得 の関係
5i
単 身
男 女 夫 婦 の み 高齢 者世帯
世 帯 数(万 世帯) 30.0 97.9 125.3 253.2
有 業 世 帯 率(0) 無 業 世 帯 率
m 侮
得 帯 帯
所 世 世
均 業 業
平 有 無
紛(率帯帯帯世世世得業業所低有無27.0 73.0 138.5 235.6 1as.7 24.7 9.9 30.1
17.2 82.8 102.1 147.9 92.0 28.0 16.7 30.3
43.1 56.9 230.1 317.9 is1.s 15.7 10.0 20.1
31.2 sii 172.5 267.8 133.3 21.5 11.4 26.1
資料=総 理 府r就 業 構造基本調査 報告』(昭和57年) 計 で異 な るか ら正 確 に比 較 で きな い が,低 所
得 率 は 『都 老 実 調 』 の ほ うが は るか に低 い こ と は 明 らか で あ ろ う.
3.低 所得 の要 因 と背景
世 帯 所 得 は稼 得 者 の人 数,健 康,年 齢,性 別,職 業,家 族 形 態,所 有 財 産,社 会 保 障 給 付 等 の要 因 に依 存 す る.高 齢 者 世 帯 に 低 所 得 層 が 多 い 理 由 と して は,稼 得 者 が 少 な く,有 病 率 が 高 い 等 の た め に 稼 得 能 力 が 低 い こ と, ま た そ の た め に 社 会 保 障 給 付 に依 存 す る度 合 い が 高 い こ とが あ げ られ る .高 齢 者 の低所 得 を 究 明す るた め に は,世 帯 所 得 の み な らず, 稼 得 者 や 高 齢 者 の属 性 や 収 入 に 関す る情 報 を 必 要 とす る.だ が,r生 活 実 調 』 で は この 点 の 情 報 が 入 手 で き な い.そ こで,『 都 老 実 調 』 やr就 業 構造 基 本 調 査 』(以 降 『就 業 構 造 』と 略 称)を お もに 利 用 して 高 齢 者 の低 所 得 の 原 因 を究 明 す る こ と にす る.
3.1就 業 状 況
稼得者の人数は世帯所得を左右す る最 も重
要 な 要 因 で あ る.高 齢 者 世 帯 で も稼 得 者 が い
る有 業 世 帯 とい な い 無 業 世 帯 とで は低 所 得率
は大 き く異 な る.『 就 業 構 造 』(57年)に よれ
ぽ,高 齢 者 世 帯 の うち 有 業 世 帯 は31.2%を 構
成 す るが,低 所 得 率 は11.4%と 低 い.こ れ に
対 して,無 業i世帯 は68.8%と2/3ち か くを構
成 し,そ の 低 所 得 率 は2aユ0と 有 業 世 帯 の
2倍 ほ ど と高 い.ち な み に,高 齢 者 世 帯 の世
帯 主 につ い て所 得 階 級 別 に有 業 率 を み る と,
100万 円 未 満 で は15.2%,300〜399万 円 で は
57.1%,500万 円 以 上 で85.0%と な って お り,
有 業 率 が 高 くな る ほ ど所 得 が 高 くな る関 係 が
み とめ られ る.高 齢 者 の み の世 帯 は 同 居 世 帯
に比 して低 所 得 率 が 高 い が,こ れ も両 グル ー
プ間 の有 業 率 の差 を 反 映 し て い る.『 厚 生行
政 』 に よれ ば,同 居 世 帯 の有 業 率 は97%と 高
く,ほ とん どの 世 帯 に稼 得 者 が い るが,別 居
世 帯 の有 業 率 は41%と 低 く,半 数 以上 が 稼 得
者 の い な い 無 業 世 帯 で 占め られ て い る.な か
で も単 身 世 帯 の 有 業 率 は25.5%と 低 い が,高
齢 者 の 有 業 率 が26%で あ る こ とを 考 え る と特
に低 い わ け で は な い.し た が って,同 居 世 帯
の 有 業 率 が 高 い の は若 い稼 得 者 が い る た め で
72
季刊 創 価 経 済 論 集 第10表 性 ・年齢別 にみ た低所得率
Vol.XVINo.1
総 数165‑69劇7・‑74
75^‑79
:t有 業
(%) 率 本 人 所 得
(万 円)
低 所 得 率
C%)
男女男女男女((((((
50.6 17.1 292.4
82.5 12.7 45.5
69.2 1 363.8
82.7 6.0
,..
48.6 16.1 298.7
...
12.3 53.2
35.2 s.x 198.9
79.7 17.8 53.7
24.7 4.1 187.2
72.9 25.5 61.7
資 料:東 京 都 民 生 局r東 京 都 老 人 生 活実 態 調 査 報 告 書 』(55年)備 考:1)本 人 所 得 は 年 間所 得(万 円).
2)低 所 得 率 は 年 収50万 円 以 下 の 割 合 を い う.
あ る.
高 齢 者 の 有 業 率 は,性 別,年 齢,業 種,健 康,学 歴 等 に よ っ て異 な る.男 性 の 有 業 率 は 40f.5%で あ る の に対 して 女 性 は15.4%と 低 い.表10はr都 老 実 調 』(55年)か ら 年 齢 ・ 性 別 の 有 業 率 と低 所 得 率 との 関 係 を示 した も の で あ る.有 業 率 は年 齢 が 高 ま る に つ れ て低 下 し,そ れ に応 じて 本 人 所 得 も減 少 す る.た だ し,本 人 所 得 の減 少 は女 性 の場 合 目立 って み られ な い が,こ れ は 就 労 以 外 の要 因 に よ っ て 規 定 され て い るか らで あ ろ う.し か し,そ れ で も女 性 の 本 人 所 得 は男 性 の1/4強 に と ど ま り,年 齢 が 高 ま る に つ れ て そ の隔 差 が 縮 小 す る とは い え 高 齢 者 の 男 女 別 の所 得 隔 差 は依 然 と して 大 き い.そ の 結 果,本 人 所 得 で は か った 低 所 得 率 は 男 性 が12.7%,女 性 が45.5%
と男 性 の4倍 ほ どの 高 さ に な る.ま た 無 業 に よ る所 得 の減 少 は男 性 の ほ うが よ り顕 著 な の で低 所 得 率 の増 加 は 男 性 の ほ うが 目立 つ.
さ らに,就 労 と学 歴 との 関 係 を み る と,学 歴 が 高 くな るに つ れ て 就 労 者 の割 合 が 高 くな
り,所 得 も高 くな る.ま た就 労 者 で も,男 女 な らび に 業 種 に よっ て 低 所 得 率 に差 が み られ る.す な わ ち,男 性 に 比 して 女 性 の 有 業 者 は 低 所 得 層 が 多 く,雇 用 者 に比 して 自営 業 者 の 低 所 得 率 は 高 い.こ れ は女 性 が お も に家 族 従
業 者,内 職,臨 時 ・日雇 等 の 低 収 入 労 働 に 従 事 して い る割 合 が 高 い た め で あ る.
高 齢 者 の有 業 率 は しだ い に 減 少 す る傾 向 に あ る.た だ し,女 性 の 有 業 率 は49年 以 降 上 昇 す る傾 向 に あ るが,男 性 は どの 年 齢 層 も低 下 傾 向 を示 し て い る.な か で も農 林 業 従 事 者 の 有 業 率 が 目立 って 減 少す る傾 向 に あ り,そ れ が 有 業 率 低 下 の背 景 を な し て い る.
3.2健 康 状 況
健 康 状 況 は高 齢 者 の就 労 機 会 を 左 右 す る の み な らず,傷 病 に よ る経 済 的 な 負 担 は 生 活 困 窮 の 大 きな 要 因 とな る.表11は,健 康 状 態 と 低 所 得 との 関 連 を 示 した も の で あ る.就 労 率
は健 康 状 態 が 悪 くな る ほ ど減 少 し,所 得 もそ
れ に 応 じて 減 少 す る.有 病 率 は 高 齢 に な る に
つ れ て 高 ま るか ら,高 齢 か つ 有病 者 ほ ど低 所
得 率 が 高 くな る.r厚 生 行 政 』(58年)に よ れ
ば,高 齢 者 の有 病 率 は53.8%と 高 い が,有 業
者 が43.3%,無 業 者 が57.5%と 無 業 者 に 傷 病
者 の 割 合 が 高 い.ま た 世 帯 類 型別 に み れ ば単
身 世 帯 の 有 病 率 が60.3%と 最 も高 い.ち なみ
に,全 日本 民 医連 の 『ひ と り ぐ ら し老 人 実 態
調 査 』(以降 『独 居 老 人 実 調 』 と略 称)に よれ
ば,無 業 者 の38%が 「 仕 事 を した い が 体 が だ
め 」 と回答 し て お り,そ の割 合 は低 所 得 層 ほ
August1986大 崎 洋:高 齢 者 の低 所 得 世 帯 と所 得 保 障 第11表 健 康 状 況 と 低 所 得 率
53
非 常に健康 普 通 弱
い 床 に つ き き り㈱ 珊 伽 ( 率 収 率 歳
ジ ン月得67
労 均 所 〜 =
657080就平低
56.2 5.1 42.4 32,4 45.9 .:
III
4.2 51.S 43.2 57.0
・.・
23.9 2.7 62.2 57.2 64.4 71.6
9.3 1.9 73.4 66.7 69.4 87.8
資 料:東 京 都 民 生 局r東 京 都 老 人 福 祉 基 礎 調 査 』(昭 和46年)備 考:1)低 所 得 率 とは 月 収2万 円以 下 の 本 人 所 得 の 割 合 を い う.
第12表 性 別 ・同 居 の 有 無 別 に み た 高 齢 者 の 所 得
世 帯 所 得(万 円) 本 人 所 得(万 円) 本 人 所 得 比(0) 低 所 得 率(A)
CB)
男 女
別居剛 同居世帯 総 数 別居世劃 同居世帯 総 数
291 264 90.1
8.6 6.0
597 310 51.9 3.3 1.7.3
516 299 57.9 6.4 15.6
:1 124 45.7 10.9 41.4
5661467 73190
、2.引19.3 4.416.4 72.5153.5
資料:第10表 と同 じ
備 考:1)(A)は 世 帯所得,
ど高 い.し た が っ て,退 職 者 で あ っ て も,年 金 等 の 所 得 に よ っ て就 労 す る必 要 が な くな り 自 発 的 に引 退 す る者 と生 活 の た め に 就 労 を 希 望
して い る が 健 康 上 の理 由 か ら引 退 せ ざ るを}
な い 者 とで は大 分 状 況 が 異 な るとみ て よい8>.
高 齢 者 の 傷 病 率 は40年 代 後 半 か ら50年 代 の 前 半 にか け て上 昇 した あ と横 ば い な い しゆ る や か な上 昇 を示 し て い る.こ れ に対 して 若 年 層(20〜40歳)は 減 少 な い し 目立 った 変 化 は み られ な い.な お,65歳 以 上 の ね た き り老 人 は59年 で49.5万 人 と推 定 さ れ,高 齢 者 の4.2
0を 占 め る.『 独 居 老 人 実 調 』 に よれ ば,老 人 の 本 人 所 得(配 偶 者 の 所 得 を 含 む)で はか っ た 低 所 得 率 は43.5%と 高 い.ま た 世 帯 所 得 で は か っ た 低 所 得 率 は22.5%と 『生 活 実 調 』 の 高 齢 者 の い る 世 帯 の11.3%に 比 して2倍 ほ ど
(B)は 本 人 所 得 で は か っ た低 所 得 率(0).
8)こ の 点 に 関 し て は 山 崎 〔23〕 を 参 照,
高 い.世 帯 類 型 別 で は,単 身 な らび に夫 婦 か ら な る高 齢 者 の み の 世 帯 は低 所 得 率 が33%と 同居 世 帯 に 比 し て2倍 ほ ど高 い.高 齢 者 のみ の世 帯 は稼 得 者 が 少 な く,同 居 の 介 護 援 助 者 が い な い とい う点 で,脆 弱 な家 庭 基 盤 とい え る.ま た 大 半 を 構 成 す る三 世 代 世 帯 で も低 所 得 率 が19%と 高 く,ね た き り老 人 を か か}る 世 帯 に 低 所 得 層 が 多 い 、 医 療 費 の負 担増 は低 所 得 の 大 きな 要 因 で あ るが,十 分 な資 料 が 利 用 で き な か った の で,今 後 の課 題 に した い.
3.3家 族 形 態
高 齢 者 の 場 合,家 族 と の結 び つ きは 所 得 な
らび に 生 活 状 況 を 左 右 す る大 きな 要 因 で あ
る.表12は,『 都 老 実 調 』 をつ か っ て 家 族 形
態 別 に 世 帯 所 得 と本 人 所 得 との 関 連 を示 した
もの で あ る.世 帯 収 入 の 低 さか ら もわ か る よ
うに,稼 得 能 力 が 劣 る高 齢 者 が 生 計 中 心 者 と
54季 刊 創 価 な る場 合,低 所 得 率 は若 い 稼 得 者 が い る 同 居 世 帯 に比 して 高 くな る.と くに 低 所 得 層 は, 単 身(と くに 女 子),高 齢 母 子,そ の 他,等
の 世 帯 で 多 い.世 帯 主 が 女 性 で あ る 場 合,就 労 率 が 低 く,年 齢 も高 く,年 金 も低 い た め に 低 所 得 層 が 多 くな るか らで あ る.こ れ に 対 し て,高 齢 者 の み の 世帯 で も,単 身 に くらべ て 夫 婦 の み の 世 帯 の 低 所 得 率 が 相 対 的 に低 い の は,世 帯 主(お もに 男 性)が70歳 台 で,稼 得 能 力 を 有 す る高 齢 者 が か な りい る た め で あ る,し か し,夫 婦 の み の 世 帯 も世 帯 主 が80歳 に な る と減 少 し,単 身 ま た は三 世 代 世 帯 に分 化 して い くと お もわ れ る.い ず れ に して も, 単 身,夫 婦 の み,片 親 世 帯 とい った 家 族 基4 が 脆 弱 な グル ー プに低 所 得 層 が 多 い.
同居 世 帯 で は勤 労 収 入 へ の依 存 度 が 低 下 し,被 扶 養 者 の割 合 が 高 ま るか ら,本 人 所 得 で は か った 低 所 得 率 は別 居 世 帯 よ りも一 層 高 くな る.と くに 男 女 に よ る差 異 が 顕 著 で あ り,女 性 の 場 合 の低 所 得 者 は2人 に1人 で あ る,女 性 は 男 性 に比 し て結 婚 年 齢 が 若 く平 均 寿 命 も長 い の で,有 配 偶 者 率 は 男 性 の83%に 対 して,女 性 は36%と 格 段 に 低 い.有 配偶 者 率 は年 齢 が 高 ま るに つ れ て 低 下 し て ゆ く か ら,子 供 との 同居 率 は 男子 よ りも女 子 の ほ う が 高 く,そ の 傾 向 は 年 齢 が 高 ま る につ れ て 一・
層 強 ま る.ま た 当 然 な が ら収 入 が 低 く,有 病 者 に な る ほ ど 同居 比 率 は 高 くな る.
老 親 と同 居 す る三 世 代 世 帯 で は,高 齢 者 の 就 労 が 及 ぼ す 影 響 度 が 低 下 し,か わ って 若 い 家 族 の稼 得 収 入 が 世 帯 の 所 得 水 準 を 左 右 す る.た だ し,世 帯 所 得 は 主 な稼 得 者 の 業 種 に よ って 異 な る.『 生 活 実調 』 に よれ ぽ,30人 以 下 の小 企 業 の雇 用 者,零 細 自営 業 者,零 細 専 業 農 家 に 低 所 得 層 が 多 い.す で に 拙稿 〔10〕
経 済 論 集Vo1.XVINo.1
で も指 摘 した よ うに,自 営 業 所 得 は過 小 申告 の 可 能 性 が あ り,そ の結 果 低 所 得 率 を過 大 に 評 価 す る お そ れ が あ る.こ の点 は税 務 統 計 に よ って も確 認 し うる.す な わ ち,『 民 間 給 与 実 態 調 査 』(以 降 『民 間 給 与 』 と 略 称)YTよ れ ば,老 親 を 扶 養 す る者 の 所 得 が 年 収150万
円 以 下 の割 合 は雇 用 者 が2.9%で あ る.こ れ に 対 して,r申 告 納 税 所 得 調 査 』(以 降r申 告 所 得 』 と略 称)に よ れ ば,150万 以 下 の 自営 業 者 の比 率 は9.8%と3倍 も高 い.し た が っ て,自 営 業 者(と くに専 業 農 家)の 構 成 比 が 高 い三 世 代 や そ の 他 等 の世 帯 の低 所 得 率 を 推 計 す る さ い,過 小 申 告 の影 響 を 考 慮 に 入 れ る 必 要 が あ ろ う.9)
3.4所 得 構 成
低 所 得 率 は 収 入 の種 類 な い し源 泉 に よ って も大 き く異 な る.r就 業 構 造 』(57年)に よれ ば 高 齢 者 世 帯 は 非 高 齢 世 帯 に比 較 し て賃 金 ・ 給 料 の 比 率 が低 く,財 産,恩 給 ・年 金,生 活 保 護 等 へ の依 存 率 が 高 い.ま た 高 齢 者 世 帯 で も,有 業 世 帯 と無 業 世 帯 とで は所 得 構 成 が 大 分 異 な る.有 業 世 帯 で は 当 然 な が ら勤 労 収 入 が 大 部 分 を 占 め,年 金 の依 存 率 は18%と 低 い.こ れ に対 して 無 業 世 帯 で は恩 給 ・年 金 が 74%と2/3を 占め,仕 送 り ・生 活 保 護,財 産 収 入等 が 残 りを 構 成 す る.さ らに 表13は,主 な 収 入 源 ご とに 低 所 得 世 帯 の 割 合 を 比 較 した
も の で あ る.そ れ に よ る と低 所 得 率 が 高 い の は,仕 送 り等 の そ の 他 収 入,恩 給 ・年 金 な ら び に農 業 収 入 で あ る10).こ れ に 対 し て,賃 金
9)す で に表4で み た よ うに,三 世 代 世 帯 の よ うな 多人 数 世 帯 に 関 して は 生 活 扶 助 基 準 が や や 高 目に 設 定 され て い る可 能 性 が あ る.こ の 点 か らも 三 世 代 世 帯 の低 所 得 率 が 過 大 に 評 価
さ れ る点 を 斜 酌 す る必 要 が あ ろ う.
August1986大 崎 洋:高 齢 者 の 低 所 得 世 帯 と所 得 保 障
第13表 収 入 源 別 に み た 高 齢 者 世 帯 の 低 所 得 率
55
(%)
賃農事財恩 給収収収年
金業業産給 料入入入金
そ の 他(仕 送 り等)
計
(( AB ))単 身
男 女
7.1
・
10.5
!2.5 26.2 46.7 22.3 27.2
15.0 35.0 14.6 8.7 29.2 32.5 25.6 sa.6
夫 婦 の み
4.1 25.0 10.1 7.3 18.2 31.3 14.3 15.4
高齢者世 帯
6.1 25.0 10.6 7.8 23.2 33.9 Y9.1 22.1
低所得世 帯
3.8 1, 4.0 1.6
・1・
10.2 (x5.s) 100.0
資 料:表9と 同 じ.
備 考:1)計(A)は 生 活 保 護 を 収 入 源 とす る世 帯 を 除 い た 計 数
2)(B)は 含 め た 計 数,又()内 は 生 活 保 護 の低 所 得 世 帯 構 成 比.
・給 料 と財 産 収 入 は低 所 得 率 が低 い .ま た世 帯 類 型 別 で は,す べ て の 収 入 源 に お い て,単 身 の ほ うが 夫 婦 の み よ り,ま た 単 身 で も 男 性
よ り女 性 の ほ うが よ り低 所 得 率 が 高 い.低 所 得 高 齢 者 世 帯 の うち6割 は 恩 給 ・年 金 を 主 な 収 入 源 とす る世 帯 で 占 め られ,つ ぎ に 生 活 保 護 に 依 存 す る世 帯 が16%を 占め る.
財 産 収 入 は お も に 家 賃 ・地 代 か ら構 成 され そ の重 要 度 は 高 齢 者 世 帯 に お い て 高 ま る.と
くに 無 業 世 帯 で は勤 労 収 入 へ の依 存 率 が低 下 す る の で そ の 重 要 度 は一 層 高 ま る.財 産 収 入 は 過 去 に蓄 積 した 資 産 に 依 るが,資 産 の 保 有 額 を 正 確 に 把 握 す る こ と は 困 難 で あ る.ま た 金 融 資 産 に 関す る統 計 しか 利 用 す る こ とが で きな い.ち な み に,r生 活 実 調 』(58年)に よ れ ば,高 齢 者 世 帯 の 平 均 貯 蓄 額 は436万 円,中 位 数 は222万 円 とか な り低 い.の み な ら ず 貯 蓄 な しが14%も あ る11).さ らに100万 円以 下
10)と くに農 業 収 入 の低 所 得 率 が 高 い 理 由 と し て は,自 家 消 費 分 が 算 入 され てい な い た め に 農 業 所 得 が 過 小 に 報 告 され て い るた め とお も わ れ る.
11)す で に拙 稿 〔9〕で 指 摘 した よ うに,『 生 活 実 調 』 の貯 蓄 額 はか な り過 小 に 報 告 され てお
り,こ の 点 を 勘 酌 す る必 要 が あ る.
の 層 が41%も あ る一 方 で500万 円 以上 の層 は 24%も み られ,保 有 額 の隔 差 は 所 得 以 上 に著 しい.貯 蓄 額 は 所 得 階 層 と密 接 な相 関 が み ら れ る.高 齢 者 世 帯 は低 所 得 層 が 多 い こ と もあ っ て貯 蓄 額 も大 半 が200万 円 以下 と低 い.同 様 の 傾 向 は 住 宅 の保 有 に つ い て もみ られ,低 所 得 階 層 ほ ど持 ち 家 の比 率 が 低 下 し,民 間 の 賃 貸 住 宅,公 団,公 営 住 宅 の比 率 が 高 ま る.
高 齢 者 世 帯 の 所 得構 成 は こ の10年 間 で 大 き く変 化 し て きた.『 生 活 実 調 』 に よれ ば,勤 労 所 得 が50年 代 の前 半 で56%を 占 め て い た が, 就 労 率 の低 下 を反 映 して58年 に は35%へ と40
0も 減 少 した.そ れ に か わ って 年 金 ・恩 給 の 構 成 比 が50年 の26%か ら58年 の50%へ と増 加 して 主 要 な 収 入 源 に な った.ま た 他 の財 産 収 入 と社 会 保 障 給 付 は わ ず か な が ら も減 少す る 傾 向 に あ る.
4.所 得 保 障 の 現 状 と 問 題 点
老 齢 な い し退 職 に よ る所 得 の 減 少 な い し喪
失 に対 す る所 得 保 障 の 方 式 と し て,(1)公 的 年
金,(2)公 的 扶 助,③ 家 族 に よ る扶 養 の3つ が
56
季 刊 創 価 経 済 論 集第14表 老 齢 ・遺 族 年 金 ・恩 給 の 平 均 受 給 額 の 推 移
Vol.XVINo.1
(万 円)
1厚生年金[国 民年金i福 祉年金 舩 共測 民間共渕 恩 給 遺族年金
昭 和46年 48 50 52 55 58
19.3 45.8 66.7 91.3 120.8 135.9
5.2
13.0 16.9 21.7
・
31.1
2.8 6.0 14.4 f 23.4 30.2
42.6 63.5 109.9 ].40.2 168.6 197.].
24.9 46.7 75.4 101.1 111.9 135.4
26.6 40.2 75.4 95.8 113.7
1a9 24.6 35.0 47.2 62.4 69.1
資 料1総 理 府 社 会 保 障 制 度 審 議 会 編r社 会 保 障 統 計 年 報 』備 考:1)表15を 参 照.
2)遺 族 年 金 は 厚 生 年 金 のみ.
第15表 年 金 ・恩 給 の 制 度 別 受 給 者 の 構 成 比
C%)
1馳 年金 国民年金 醜 年金}舩 共済 院 間畑 恩 給 受 給 率
昭 和46年 48 50 52 55 58
XO.9 1a.2 10.9 13.4 16.5 20.5
4.2 10.4 29.0 36.6 43.4 47.2
66.4 67.0 49.0 39.0
..
20.5
7 9 3 FO 3 3 3 & & & 9 α ‑ ⊥ ‑ ←
o.7 0.7 0.7 1 0.9
1.Y
4.2 2.7 2.1 1.7 1.2
48。0 62.0 7!.6 76.9 81.2
資 料:表14と 同 じ.
備 考:1)官 公 共 済 は 国 家 公 務 員,地 方 公 務 員,公 共 企 業 体 職 員 の 合 計.
2)民 間 共 済 は 私 学 教 職 員,農 林 漁 業 団 体 職 員,船 員 の合 計.
3)恩 給 は 文 官 と都 道 府 県 知 事 裁 定 の合 計.
4)受 給 率 は60歳 以 上 人 口に 対 す る受 給 権 者 の比 率.
考 え られ る.も ち ろ ん,就 労 な ら び に過 去 の 蓄 積 とい った 高 齢 者 の 自助 努 力 も老 後 の 生 活 保 障 と し て欠 か せ な い 要 素 で あ る.し か し, 本 研 究 で は高 齢 者 の 最 低 所 得 を い か に保 障 す べ きか を お もに 問 題 に し て い る の で,自 助 努 力 を前 提 に しな が ら も高 齢 者 の 社 会 的 な らび に 私 的 な 扶 養 の あ り方 を お もに 検 討 した い.
4.1公 的 年 金 の 所 得 保 障 機 能
公 的 年 金 の所 得 保 障機 能 は こ の10年 間 に 大 き く拡 大 した.『 厚 生 行 政 』 に よれ ば 高 齢 者 の 年金 受 給 率 は46年 の40%台 か ら58年 の95%
へ と大 幅 に 増 加 した.年 金 の平 均 受 給 額 も こ ず か い 程 度 か ら十 分 食 べ られ る水 準 ま で 引 上
げ られ た.そ の 結 果,世 帯 所 得 に 占 め る年 金
・恩 給 の比 率 が50%を こ}る に 至 った .ま た r生 活 実 調 』 に よれ ば 年 金 ・恩 給 を 主 な 収 入 源(収 入 の80%以 上)と す る高 齢 者 世 帯 の割 合 は54年 の31.2%か ら58年 の50.1%へ と増 加
した.
こ の よ うに 年 金 の受 給 額 が 短 期 間 に 引 き上
げ られ,年 金 に 対 す る 依 存 度 が 高 ま った が,
表14か ら もわ か る よ うに,制 度 間 に お け る年
金 受 給 額 の 隔 差 は 依 然 と し て解 消 さ れ て い な
い.と くに 拠 出制 の 国民 年 金 と無 拠 出 制 の老
齢 福 祉 年 金 の 給 付 水 準 の低 さが 目立 つ.国 民
年 金 は厚 生 ・共 済 年 金 等 に 比 較 して1/3の 給
付 水 準 に あ る.国 民 年 金 は 無 業 者 や 自 営 業
August1986大 崎
洋:高 齢者 の低所 得世帯 と所得 保障 第16表 年金所得 の分布
57
昭 和57年
媚 珊 伽(((得得得数率
断所所係得
分数四位均二所ユ第中平ジ低
高 齢 者 世 帯
r就 業 構 造 』 『生 活 実 調 』
単 身 又 は 個 人
r独 居 老 調 』r厚 生 年 金 』67.2
111.7 140.4 0.3429 31.3
69.5 122.5 137.4 0.3252 28.3
53.6 73.3 90.2 0.3344
28.3
96.0 128.0
134.4 0.2037 1
資 料:r独 居 老 調 』 は 全 日本 民 医 連rひ と りぐ らし老 人 実 態 調 査 報 告 書 』r厚 生 年 金 』 は 社 会 保 険 庁r事 業 年 報 』
備 考:1)年 金 ・恩 給 を 主 な収 入 源 とす る高 齢 者 世 帯.
者,小 企 業 雇 用 者 等 の 負 担 能 力 の乏 しい 低 所 得 層 が 多 い た め に,保 険 料 も均 一 で 他 の年 金 に比 較 して 低 い.し た が っ て 給 付 水 準 も所 得 比 例 部 分 の 上 積 み が な い 定 額 部 分 か ら な り, 拠 出期 間 が 短 い経 過 年 金 の 占め る割 合 が 高 い
こ と も あ って 低 くな ら ざ る を え ない.無 拠 出 制 の 老 齢 福 祉 年 金 は70歳 以上 の 低 所 得 高 齢 者 に 対 し て 支 給 され る が,拠 出制 の 国 民 年 金 と の均 衡 上 の 理 由 か ら も低 額 に な ら ざ るを え な い.た だ し,老 齢 福 祉 年 金 の 受 給 者 は48年 が ピ ー クで そ れ 以 降 年 々減 少 し,そ れ に か わ っ て 国 民 年 金 と厚 生 年 金 の 受 給 者 が 増 加 しつ つ あ る12).
年 金 の 所 得 保 障 機 能 を と りあ げ るた め に は 年 金 を 主 な 収 入源 とす る高 齢 者 世 帯(い わ ゆ る 無 業 の年 金 生 活 者)を 調 査 す る必 要 が あ ろ う.年 金 生 活 者 に 関 す る統 計 は 整 備 さ れ て い な い が,高 齢 者 世 帯 の な か で 年 金 を 主 な 収 入 源 とす る世 帯 の所 得 分 布 統 計 がr生 活 実 調 』 と 『就 業 構 造 』 な ら び に 『 独 居 老 人 実 調 』 に お い て 公表 さ れ て い るの で そ れ ら を 利 用 す る.表16は57年 に お け る年 金 の所 得 分 布 と低 所 得 の 関 連 を比 較 した も の で あ る.高 齢 者 世
12)公 的 年 金 制 度 の推 移 と問 題 点 に っ い て は 山崎 〔22〕,山崎 〔24〕等 を 参 照.
帯 の 平 均 年 金 額 は140万 円 程 度 で 中 位 数 は 112〜123万 円 とみ られ る.57年 に お け る 最低 所 得 水 準 は 高齢 者 世 帯 で は76.1万 円 と算 出 さ れ る の で,そ れ 以 下 の低 所 得世 帯 は 『就 業構 造 』 が31.3%,r生 活 実 調 』 が28%を 占 め る
もの と推 定 さ れ る.同 様 に 『独 居 老 人 実 調 』 を 利 用 して も年 金 生 活 者 の低 所 得 率 は28%で
3割 程 度 と推 定 され る13》.ただ し,低 所 得 率 は 世 帯 類 型 に よ って 異 な る.『 就 業 構 造 』に よ れ ば 夫 婦 の み の世 帯 で は低 所 得 率 は18.7%で
あ る の に 対 して,単 身 で は32.2%と 高 い.な お,単 身 世 帯 で も世 帯 主 が 女 性 の場 合,低 所 得 率 は 男 性 よ り一 層 高 くな る.女 性 の 年 金 受 給 者 に低 所 得 層 が 多 い理 由 は,遺 族 年 金 と国 民 年 金 の 受 給 者 が 多 い た め で あ る.表14か ら もわ か る よ うに,遺 族 年 金 は老 齢 年 金 の 半 分 程 度 の 低 い水 準 に お か れ て い る.さ らに 女 性 は 拠 出 期 間 が 短 い うえ に 従 前 の 報 酬 も男 性 の 6割 弱 と低 い た め に 年 金 の 給 付 額 は相 対 的 に 低 い.ち なみ に,厚 生 年 金 の57年 分 を 例 に と る と,平 均 受 給 額 は 男 性 が 月 額12.8万 円 な の に 対 して,女 性 は7,4万 円 と男 性 の6割 弱 の 低 水 準 に あ る.ま た 年 金 受 給 額 は年 齢 が 高 ま
13)し か し,厚 生 年 金 の場 合,低 所 得 率 は1割 程 度 と推 定 され る.
5$
季刊 創 価 経 済 論 集 第17表 年金 の種 類別 にみ た低所得率
Vol.XVINo.1
恩 細 焔 年金暁 年金[国 民年金廊 年金睡 給 繍
謂 伽
((収位率月分得四均所ユ平第低
12.1
・
7.7
12.5 7.3 5.1
9.3 5.7 9.5
7.2 4.0 33.4
5.4 3.3 40.8
11.2 6.6 14.7
8.9 5.1 22.6
資 料:全 日本 民 医 連rひ と り ぐ らし老 人 実 態 調 査 報 告 書 』(昭 和57年)第18表 高 齢 者 が い る世 帯 の 生 活 保護 受 給 率
(%)
「 単 身 夫婦のみ 藩 鱗 片親 と未 婚 の子 供 三 世 代 そ の 礁 醒 櫨 者
昭 和50年 52 55 58 50^‑58
14.4 16.5 11.7
・ ・
12.7
4.4 3.6 3.0 2.4 3.3
1.5 1 1.2 0.9 1.1
4.9 4.7 3.8 1.8 3.9
o.5 0.4 0.5 0.3 0.4
1.7 Y.4 1.7 0.9 ユ.5
2.6 2.8 2.4 2.0 2.4
資料:表1と 表4と 同 じ.
る につ れ て低 下 す る が,女 性 の場 合 に述 べ た 理 由 の ほ か に 高 齢 者 ほ ど低 額 の老 齢 福 祉 年 金 を 受 給 す る 者 の 割 合 が 高 くな るか らで あ る.
ち な み に,『 独 居 老 人 実 調 』 に よれ ば,国 民 年 金 と福 祉 年 金 の受 給 者 に低 所 得 層 が 多 く3
〜4割 程 度 を 占 め る が ,厚 生年金 は1割 弱, 共 済 年 金 は5%程 度 と低 所 得 層 が 少 な く な
る.今 回 の 年 金 改 正 に よ っ て 基 礎 年 金 が 国 民 年 金 と して 全 国 民 共 通 に 給 付 され る仕 組 み に な った.し か し,そ の 年 金 額 は 最 低 生 活 費 の うち の基 礎 的 な 必 要 を 賄 うに と ど ま っ て お り,そ の 十 全 の給 付 も保 険 料 を 一・ 定 期 間 拠 出 す る こ とを 要 件 に し て い る.し た が って,新 制 度 の も と で も,自 助 努 力 が 困 難 な 者 や 保 険 料 の負 担 能 力 が 乏 し く拠 出期 間 が 足 りな い低 所 得 層 に 対 して 最 低 所 得 が は た し て 保 障 され
うるか の 問 題 が 残 る14>.
4.2生 活 保 護 の 受 給 率
生活保護は拠 出を要件 とす る年金等の社会
14)今 回 の 年 金 改 正 に 関 す る 問 題 点 に つ い て は,山 崎 〔25〕,坂 口 〔12〕,等 を 参 照.
保 険 と は異 な り,資 力 調 査 を 要 件 に租 税 を 財 源 に して 生 活 困 窮 の 個 別 ニ ー ズ に 応 じて 最 低 生 活 を 保 障 す る仕 組 み で あ る.し た が って, 公 的 扶 助 は社 会 保 険 の 安 全 網 か ら もれ た 貧 困 者 の 最 後 の 拠 り所 と考 え られ て い る.そ れ に もか か わ らず,低 所 得 高 齢 者 の生 活 保 護 受 給 率 は1/4と 低 く,公 的 扶 助 の 最 低 所 得 保 障 は 十 分 機 能 して い る と は お もわ れ な い.
表18は 生 活 保 護 の 受 給 率 を 高 齢 者 の い る世 帯 に つ い て み た もの で あ る.保 護 受 給 率 は単 身 世 帯 が 最 も高 く,夫 婦 の み と片 親 等 の 世 帯 もつ づ い て 高 い.こ れ に 対 し て,同 居世 帯 の 受 給 率 は低 く,な か で も三 世 代 世 帯 の 受 給 率 は 目立 って低 い.保 護 受 給 率 の 推 移 を み る と 50年 代 前 半 の横 ば い 傾 向 か ら低 下 す る傾 向 に あ る.こ れ は低 所 得 率 が 最 近 横 ば い 傾 向 に あ るの と は 対 照 的 で あ る.受 給 率 が 低 下 した 背 景 と して は,老 人 医 療 制 度 の 充 実,年 金 所 得 の増 加,施 設 入 所 者 の増 加 等 が あ げ られ る.
傷 病 は保 護 開 始 理 由 の2/3を 占め,受 給 世 帯 の7割 ちか くは 医 療 扶 助 の受 給 者 で も あ る.
近 年,生 活 保 護 受 給 者 の 患 者 比 率 が 減 少 傾 向
August1986大 崎 洋:高 齢 者 の低 所 得 世 帯 と所 得 保 障
第19表 低 所 得 世 帯 の 生 活 保護 受 給 率(捕 捉 率)
59
(%)
陣 身 夫婦のみ薦 享蚕麟 鱗 三世代 その他騨 馳 繕
昭 和50年 52 55 58 50^‑58
54.1 95.4 82.4 35.1 1
31.2 65.5 33.3 24.2 35.0
19.7 15.S 15.2 16.4 17.d
38.3 .・
35.8 43.5 40.9
7.0 6.7 5.9 4.4 5.4
12.1 9.2 15.3 5.6 11.2
23.8 33.7 26.7
..
.・
に あ り,老 人 医 療 費 の公 費 負 担 制 度 の導 入 に よ っ て 従 来 大 き な割 合 を 占め て い た 傷 病 が 原 因 で 生 活 保 護 を 受 給 す る 高 齢 者 が や や 少 な く な って き て い る15>.し か し,そ の 反 面 で 傷 病 治 ゆ を 理 由 と した 保 護 廃 止 世 帯 の割 合 も減 少 傾 向 に あ り,そ の 結 果 就 労 率 の低 下 もあ っ て 受 給期 間 は 長 期 化 す る傾 向 に あ る.ま た 保 護 受 給 者 の 入 所 ・入 院 率 は2割 程 度 と 推 定 さ れ,そ の比 率 は増 加 す る傾 向 に あ る.老 人 ホ ー ム入 所 者 は年h増 加 しつ つ あ るが ,な か で も特別 養 護 老 人 ホ ー ム の伸 び が 著 しい.
保 護 受 給 率 の低 下 を もた ら した も うひ とつ の 大 き な背 景 は年 金 所 得 の増 加 で あ る.す で に み た よ うに,年 金 給 付 額 は制 度 間 で か な り の 隔 差 が み られ るが,い ず れ の 制 度 と も給 付 額 は 大 幅 に 改 善 され た,そ の な か で も給 付 水 準 が 最 も低 水 準 に あ った福 祉 年 金 の 改 善 は顕 著 で あ る.実 際,40年 代 の後 半 か ら50年 代 の 前 半 にか け て 年 金 の増 加 が 著 し く,そ れ に 対 応 し て年 金 所 得 の増 加 に よ る保 護 廃 止 の 割 合 が こ の時 期 に と くに 増 加 し て い る.た だ し, 年 金 受 給 率 の 増 加 は お もに 給 付 水 準 が 低 い 国 民 年 金 の受 給 率 の増 加 に よ っ て もた ら され た 効 果 が 大 き く,低 所 得 率 の 減 少 に か な らず し
もつ な が らな い 面 が あ る.
公 的 扶 助 の 最 低 所 得 保 障 が どの 程 度 有 効 に
15)こ の 点 に 関 し て は,曾 原 〔14〕を 参 照.
機 能 して い るか は低 所 得 層 が 生 活 保 護 を 実 際 に ど の程 度 ま で受 給 し て い る か の 割 合(捕 捉 率)に よ って 知 る こ とが で き る.表19は 低 所 得 世 帯 の保 護 受 給 率 を 推 計 しそ の 結 果 を 示 し た も の で あ る.保 護 受 給 率 は 年 次 に よ って も 家 族 形 態 に よ っ て もか な り異 な るが,高 齢 者 の い る世 帯 に つ い て は1/4程 度 と 推 定 さ れ る.ち な み に,村 上 〔8〕は高 齢 者 を 含 め た 全 世 帯 に つ い て 同 じ よ うな 推 計 結 果 を 得 て い る.受 給 率 を 家 族 形 態 別 に み る と,単 身 世 帯 が 平 均 して60%と 目立 って 高 く,低 所 得 者 の 半 数 以 上 が 受 給 した こ とに な る.つ づ い て受 給 率 が 高 い グ ル ー プ は,片 親(40.9%),夫 婦 の み(35,0%)等 の世 帯 で あ る,な お 夫 婦 と 未 婚 の子 が い る世 帯 の受 給 率 が25.5%と 高 く で て い るが,こ れ は低 所 得 世 帯 率 が 異 常 に低 下 した 結 果 に よ る も の で,こ れ を 除 け ぽ17.2
%と な る.受 給 率 が 最 も低 い グル ー プ は三 世 代 世 帯 で約5%程 度 で あ る.以 上 か ら もわ か よ うに,低 所 得 者 の 保 護 受 給 率 は 高 齢 者 のみ の 世 帯 が5割 程 度 と高 い の に 対 して,同 居 世 帯 は1割 程 度 と低 い.保 護 受 給 率 が 家 族 形 態 に よ って 大 き く異 な る の は,各 世 帯 の稼 得 能 力 と扶 養 状 況 を 反 映 した もの と お もわ れ る.
現 行 制 度 の も と で は,た と}低 所 得 で あ って
も稼 得 能 力 の あ る扶 養 義 務 者 が い る場 合 生 活
保 護 を 受 給 す る こ と は容 易 で は な い.こ れ は
生 活 保 護 受 給 世 帯 の大 部 分 が 稼 得 者 のい な い
60季 刊 創 価 傷 病 な い し無 業 世 帯 で 占め られ て い る事 実 か
ら も うか が え る で あ ろ う.も ち ろ ん,働 け る か ぎ りな ん とか暮 ら して い け る とい った 意 識 が 依 然 と して 根 強 い の み な らず,資 力 調 査 を 要 件 とす る保 護 受 給 に は 汚 名 な い し恥 辱 が と も な うこ と も受 給 率 を 低 く して い る大 きな 要 因 で あ ろ う16).
低 所 得 者 の 保 護 受 給 率 は50年 代 の 前 半 の横 ば い 傾 向 か ら最 近 低 下 す る傾 向 に あ る.こ れ は低 所 得 世 帯 率 が 横 ぽ い 状 態 に あ るに もか か わ らず 保 護 受 給 率 が 減 少 傾 向 に あ るか らで あ る.低 所 得 高 齢 者 の保 護 受 給 率 が 低 く,最 近 低 下 す る傾 向 に あ る事 実 を ど う解 釈 す るか は 今 後 検 討 す べ き重 要 な 課 題 で あ る.
4.3老 親 扶 養 の 現 状 と問 題 点
子 供 と同 居 す る高 齢 者 の割 合 は7割 弱 を 構 成 す る.65歳 以 上 の高 齢 者 の うち で,生 計 の 中 心 者 は3割,補 助 者 が1割,残 りの6割 は 被 扶 養 者 で あ る.た だ し,男 性 の54%は 生 計 の 中 心 者 で あ るの に 対 して,女 性 は17%と 低 く,被 扶 養 者 が73%と 大 部 分 を 占め る.当 然 な が ら,本 人 所 得 が 低 く有 病 者 ほ ど子 供 の世 話 に頼 る割 合 が 高 ま る.都 市 化 ・核 家族 化 を 反 映 して 同 居 比 率 は 低 下 傾 向 に あ るが,三 世 代 世 帯 が 半 数 近 くを 占 め る こ とか らも わ か る よ うに,家 族 に よ る老 親 の 扶 養 は依 然 と して 大 きな 役 割 を 担 って い る.
老 親 の扶 養 に 対 す る 税 制 面 か ら の施 策 と し て老 人 扶 養 控 除 の 制 度 が 設 け られ て い る.こ の制 度 は扶 養 控 除 の 一 種 で あ るが,70歳 以 上 の扶 養 親 族 が い る場 合 所 得 か ら通 常 の 扶 養 控 16>我 が 国 の生活保護 の低受給 率に関 して,小
沼 〔5〕 は権利意識が 稀薄な こと,劣 等処遇 的 差別,適 用条件 の厳 酷 さ,財 政至 上主義,医 療 保障 の不 備等 の理 由をあ げてい る.
経 済 論 集Vo1.XVINo.1
除 よ り多 い 定 額(39万 円)を 控 除 す る も の で あ り,さ らに 同居 老 親 を 扶 養 す る場 合 に は控 除 額 は46万 円 と一層 大 き くな る.こ の 所 得 控 除 制 度 は一 定 の所 得 に 対す る 課 税 所 得 を 減 ら
し 可 処 分 所 得 を 増 加 させ る こ とを 意 図 して い る.し た が って,控 除 に よ る税 の 軽 減 額 は所 得 税 の 限 界 税 率 の い か ん に 依 存 し,累 進 税 率 の も とで は所 得 が 高 くな るに つ れ て 大 き くな る,そ の 結 果,最 低 所 得 以 下 の非 納 税 者 や そ れ を や や 上 回 る ボ ー ダ ー ラ イ ン層 に は控 除 の 恩 恵 は ほ と ん どな い か あ っ て もわ ず か な額 に と ど ま る17).そ の意 味 で所 得 控 除 に よ る福 祉 施 策 は逆 進 的 な 性 格 を も っ て お り,所 得再 分 配 効 果 は期 待 で きな い.
そ こ で,老 親 を 扶 養 す る稼 得 者 の うち で 最 低 所 得 以 下 の低 所 得 層 が どの 程 度 い るか を 税 務 統 計 を つ か って 推 計 して み る.老 人 被 扶 養 者 は世 帯 類 型 別 に 区 分 され て い な い の で,こ
こで は57年 に お け る給 与 所 得 の 課 税 最 低 限 (夫婦 と子 供2人 の4人 世 帯)を 参 照 した う
}で 最 低 所 得 を200万 円 と設 定 し低 所 得 率 を 算 出 した.『 民 間 給 与 』 に よれ ば,民 間 の 給 与 所 得 者 に 扶 養 され る老 人 の8.3%が 低 給 与 者 に よ っ て 扶 養 され,そ の2/3は 非 納 税 者 と み られ る.他 方 『申 告 所 得』に よれ ば,老 人 を 扶 養 す る 者 の24.9%は200万 以 下 の低 所 得 者 で 占め られ て い る.ま たr生 活 実 調 』 に よれ ば,三 世 代 世 帯 の8%ほ どが 低 所 得 層 と推 定 さ れ る.も ち ろ ん 自営 業 所 得 は過 小 申告 の 可 能 性 が あ り,自 営 業 比 率 が 高 い 三 世 代 世 帯 の 低 所 得 率 を過 大 に 評 価 す る問 題 が あ る.し か し三 世 代 世帯 は老 親 の扶 養 で依 然 と して 大 ぎ な役 割 を果 し て い る に もか か わ らず,低 所 得
17)こ の 点 に 関 し て は,都 村 〔21〕を 参 照.
August1986大 崎
層 の 保 護 受 給 率 が 非 常 に低 く,老 親 の 扶 養 に 関す る税 制 面 か らの 恩 恵 を 十 分 受 け られ な い 事 態 は 問 題 で あ ろ う.
洋:高 齢 者の低所得世 帯 と所得保 障
5.所 得保 障 の改善 案 の検討
高 齢 者 の 所 得 保 障 に は い くつ か の方 式 が 考 え られ る が,以 下 の原 則 に た って 運 営 され る べ きで あ ろ う.
(1)最 低 所 得 の 保 障 す べ て の 高齢 者 に対 して 基 礎 的 な 生 活 の必 要 を 保 障 す る こ とを め ざす べ き で あ ろ う.
(2)応 能 原 則 基 礎 的 な 必 要 を こえ る部 分 に 関 して は 所 得(ま た は 拠 出)に 応 じた 給 付 を 支 給 す ぺ き で あ ろ う.ま た 費 用 は資 力 に応 じ て 負 担 され るべ き で あ ろ う.
(3)効 率 の原 則 最 低 所 得 の 保 障 は 少 な い 予 算 で よ り効 果 的 に行 わ れ るべ き で あ ろ う.
以 上 の原 則 に た っ て,所 得保 障 の あ り方 と 改 善 案 につ い て 検 討 して み た い.
5.1公 的 年 金 の 最 低 所 得 保 障
公 的年 金 制 度 に は,社 会 保 険 方 式 と租 税 方 式 と の2つ が あ る.前 者 は応 能 原 則 に よ る従 前 所 得 の 保 障 に 重 点 を お き,後 者 は 必 要 原 則 に よ る 最低 所 得 の 保 障 に 重 点 を お い て い る . わ が 国 の 年 金 制 度 は社 会 保 険 方 式 を 原 則 に
し,租 税 を 財 源 とす る無 拠 出 の 福 祉 年 金 は補 完 的 ・経 過 的 な 措 置 と して 位 置 づ け られ て い る.た だ し社 会 保 険 とい っ て も,制 度 に よ っ て比 率 に差 が あ れ,国 庫 か らの 補 助 が 支 出 さ れ て い る.拠 出 を 要 件 とす る社 会 保 険 方 式 で は給 付 水 準 は 拠 出期 間 と拠 出額(保 険 料)に 応 じて 決 ま って く る.た だ し,年 金 に は 報 酬
比 例 の み な らず 受 給 要 件 を み た して い る か ぎ
6s
り所 得 にか か わ りな く一 定 額 を 保 障 す る 定 額 部 分 が あ る.今 回 の 年 金 改 正 で は,厚 生 年 金 等 の被 用 者 年 金 の 定 額 部 分 と国 民 年 金 が 共 通 の 基 礎 年 金 とな り,各 被 用 者 年 金 は報 酬 比 例 部 分 を 基 礎 年 金 に上 乗 せ す る制 度 とな った.
基 礎 年 金 は 自助 努 力 を 前 提 とす るか ぎ り老 後 の 生 活 費 の 基 礎 的 な 部 分 を 賄 う水 準 に と ど ま る で あ ろ う.し た が って 自助 努 力 が 困 難 で 年 金 以 外 の 補 足 的 な 所 得 が な い 者 は公 的 扶 助 に頼 ら ざ るを え な い.ま た 受 給 要 件 に足 りな い 者 は基 礎 年 金 以下 の低 額 年 金 受 給 者 に な ら ざ るを え な い.被 用 者 年 金 はす で に最 低 所 得 を 十 分 こ え る水 準 に 達 した が,福 祉 年 金 や 国 民 年 金 は経 過 年 金 の 比 率 が 高 い こ と もあ っ て 依 然 と し て 最 低 所 得 の1/2程 度 の 低 水 準 に あ り,老 後 の 最 低 生 活 を 十 分 保 障 し え な い.年 金 制 度 が 今 後 成 熟 化 し て ゆ け ば拠 出期 間 が 足
りな い 低 額 年 金 の割 合 は しだ い に 低 下 して ゆ くで あ ろ う.し か しそ れ まで に は か な りの期 間 を 要 す る。 す で に み た よ うに年 金 受 給 者 の 3割 ほ どが 低 所 得 層 で 占 め られ,お もに 遺 族 年 金 や 国 民 年 金,福 祉 年 金 の受 給 者 に低 所 得 層 が 多 い.今 回 の基 礎 年 金 の導 入 は最 低 所 得 を 強 化 した 点 で は評 価 で き るが,受 給 条 件 が 足 りな い 低 所 得 層 に 対 して 十 分 な 配 慮 が な さ れ た と は お もわ れ な い.低 所 得 層 の保 護 受 給 率 が 低 い こ とを 考 え る と,基 礎 年 金 の 最 低 所 得 保 障 を 補 完 す る もの と して,無 拠 出制 の老 齢 福 祉 年 金 の 存 続 を 検 討 す る必 要 が あ ろ う.
こ の福 祉 年 金 は 資 力 調 査 を 要 件 に 基 礎 年 金 を 下 回 る低 額 年 金 受 給 者 に対 す る補 足 年 金 と し て の役 割 を担 って い る18).基 礎 年 金 で カ パ ー
18)こ の意 味 で従 来 の経 過 的 な 老 齢 福 祉 年 金 と は 性 格 が 異 な る ので,「 補 足 年 金 」 と い うほ
うが 適 当か も しれ な い.