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(1)  プレイヤー全員がそれを知っている。

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Academic year: 2021

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(1)

 前回のアカデメイア(2 0 1 2年3月号)では,ゲー ム理論で推論がどのように行われるかを3人のガン マンの例で紹介した。今回は推論と知識の微妙な関 係について述べてみたい。

 ゲーム理論では、議論を展開するためにゲームの 当事者(プレイヤーと呼ぶ)がゲームの構造を良く 分かっているとしなければならない。そこで、その

「良くわかっている」状況として、 ゲームの構造が プレイヤーの間でコモンノレッジ(

common know- ledge)であると仮定する。それは次のように定義さ

れる:ゲームの構造について

(1)  プレイヤー全員がそれを知っている。

(2)  プレイヤー全員が(1)であることを知っ ている。

(3)  プレイヤー全員が(2)であることを知っ ている。

これが以下(4) 、 (5) 、 (6)……と無限につづ く。

  「何もそこまでしなくても」と思うのが普通であ ろう。しかし、単に「全員が何かを知っている」状 況や「全員が知っていることを全員が知っている」

状況とコモンノレッジの状況は、大いに異なるので ある。以下のパズルがそれを示してくれる。

 学生1 0人が何ヶ月にもわたって課外授業を受けて いた。よく勉強したので先生は全員に合格の評価を 与えた。しかし、先生はちゃめっけを出した。

「これから皆に本人以外の学生の評価を見せてやろ う。もちろん見たことは口外してはならない」

そして各学生にその学生以外の者の評価を見せた。

つまり全員が自分以外は合格であると知った。先生 は、言った。

「自分が合格と分かった者は、この課外は卒業であ

る。次の授業からは来なくて良い。いや、来てはな らない」

 皆、他の者が合格であることは知っているが自分 については分からないので、そのまま授業に来てい た。しばらく授業が続いた。そのうちに先生が言っ た。

「少なくとも1人は合格である」……(※)

その日から9回目の授業のあと、全ての学生から先 生のもとへ次のような

E

メールが届いた。

「合格の評価をありがとうございました。課外授業 を卒業します。長い間お世話になりました。 」

 この話が奇妙なのは、少なくとも1人の学生が合 格の評価を受けていることはすでに全員が知ってい たことなのに、それを先生が皆の前で言ってコモン ノレッジになったとき事態が変化する点である。な ぜそうなるのか。

 学生が2人であるとしよう。その場合は、先生の 発言の後の1回目の授業でこれが起こる。2人の学 生をA、Bと呼ぼう。Aの立場に立って考える。A は自分が不合格かもしれないと思っている。しかし、

もし不合格なら、Bはそれを知っているので、先生 の発言からBが合格であると分かり来なくなるだろ う。しかし、先生の発言の後の1回目の授業に彼は 来た。とすると自分は合格である。

 学生が3人の場合は、先生の発言の後、2回目の 授業でこれが起こる。学生3人をA、B、Cと呼ぶ。

Cの立場で考えよう。Cが不合格であるとする。A とBはそれを知っているはずだから、先生の発言が 自分たちに関することだとわかる。それなら先生の 発言の次の授業で(上で述べた理由で)自分たちが 合格であると知り、2回目の授業には来ないはずだ。

しかし、2人とも2回目の授業に来た。ならば自分 は合格だ。

―  ―1

アカデメイア

コモンノレッジ

経済学部長 

西 原   宏

(2)

 この議論を4人の場合、5人の場合、6人の場合 と繰り返すことで、1 0人の場合は9回目の授業で、

全員自分が合格であることに気づくのである。

 学生の人数が

n

のときにこの推論が成立するため には、先生の発言(※)の内容について、上のコモ ンノレッジの条件の(1)から(

n

)まで成り立た なくてはならない。一見、無駄に長いようでも、コ モンノレッジの仮定は意味があるのである。

―  ―2

参照

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