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加速度計による女子大学生の 身体活動量からみる女性の健康

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加速度計による女子大学生の 身体活動量からみる女性の健康

中 村 有 紀・曽 我 芳 枝・平 工 志 穂

(Received December 2, 2014)

Study of the relationships between menstrual health and levels of physical activity among female university students assessed by using an accelerometer

Yuki Nakamura, Yoshie Soga and Shiho Hiraku

Abstract

The objectives of this study were 1) to investigate the levels of physical activity, assessed by using an acceler- ometer, in female university students and 2) to investigate relationships between menstrual health and physical activity. The subjects included 107 female university students. Daily steps and moderate to vigorous physical ac- tivity with an intensity of 3METs or higher (METs・h/wk) were assessed by using a tri-axial accelerometer. The subjects answered questionnaires about menstrual conditions, menstrual cycle symptoms, and menstrual atti- tudes. The daily steps and weekly physical activity were very high (11,461±3,456 steps/d, 46.3±16.9 METs・h/

wk). The physical activity levels were not relevant to the menstrual cycle symptoms. However, the physically in- active group showed a higher prevalence of menstrual cycle irregularity and perceived that menstruation was a natural event for a woman to a lesser extent. These findings suggest that physical activity levels among the female university students were related to menstrual cycle regularity and menstrual attitude.

は じ め に

身体活動は健康づくりに欠かすことができない生活習慣であり,ライフステージにより 変化する女性のからだについて理解するとともに,女子大学生に対する健康教育としてそ の取り組みを推進していくべきものである.特に女性は男性と比べ,すべての年代にお いて身体活動量が低く,若い年代ほどその差は大きい1).厚生労働省の健康日本21(1997 年〜)では,身体活動・運動の普及・啓発活動に取り組んできたが,1日あたりの歩数は ほぼすべての性別・年代において当初より減少傾向にある.また,運動習慣者の割合は全 体としては増加傾向にあるが,特に女性の若い年代では減少していることが問題視されて いる2).女子大学生の身体活動の現状について,加速度計による客観的な指標を用いて把 握することは,女性としての将来の健康を見越した身体活動の推進教育にあたり非常に重 要なことである.

身体活動によって得られる効果は,女性の周期性すなわち月経との関連においても指摘 されている.適度な運動により月経前症候群(premenstrual syndrome: PMS)や月経痛が軽減 するとされていることから,月経に伴う症状に対するセルフケア法の一つとしてストレッ

2013

(2)

チや有酸素運動が推奨されている.Aganoff et al.3)は,少なくとも5時間/週以上のスポーツ クラブ等での運動習慣のある者は,運動習慣のない者に比べ負の感情や身体症状のスコア が低いことを報告している.我々の先行研究4)においても,ハンドボール選手は一般女性に 比べ月経に伴う症状の種類が少なく,程度も明らかに低かった.また,苫米地ら5)のよう に,一過性の運動による症状の変化を検討したものもある.しかしながら,日常生活にお ける身体活動量を客観的に把握したうえで,活動量の違いによる月経状態や月経に関連す る症状の違いを調べたものはない.

そこで本研究は,以下の2点について明らかにすることを目的として実施した.

1. 加速度計により女子大学生の身体活動量を明らかにする.

2.  日常の身体活動量の違いが月経を中心とした女性の健康に及ぼす影響を明らかにす る.

方   法 対象

東京女子大学現代教養学部において必修科目として開講された健康・運動科学基礎実習

Ⅰ,Ⅱ(2012年度)および女性のウェルネス・身体運動Ⅰ,Ⅱ(2013年度)を受講した 女子学生を対象とした.解析の対象としたのは,質問紙調査の回答に不備がなく,以下に 示す一定期間の活動量計の装着が認め ら れ た107名(年齢18.3±0.4歳,身長158.9±

5.3 cm,体重51.8±6.9 kg,body mass index: BMI 20.5±2.2)のデータである.

歩数および身体活動量の測定

歩数と活動量の測定には,オムロンヘルスケア社製の活動量計Active Style Pro(HJA-

350IT)を用いた.本装置は腰部にクリップで装着して使用し,3軸の加速度データをもと

に歩数と活動量をそれぞれ独自のアルゴリズムで演算するものである.活動量は歩・走行 などの歩行活動と,荷物運びや掃除機かけなどの生活活動に分類される.活動量計は13 日間装着を依頼し,1日の歩数および身体活動量の指標として強度が3メッツ以上の歩行 活動量と生活活動量およびその合計値(総活動量)を算出した.対象者には,就寝時およ び入浴時や活動量計の破損の恐れのある場合を除き全ての時間に装着するように指示し た.期間終了後に活動量計を回収し,専用ソフトを用いて解析を行った. 1日あたり合計 10時間以上の加速度信号が検出された日を装着日とし,平日2日,休日1日の計3日以上 の装着日があったデータを解析に採用した6)

身体,運動,月経等の状況

身長,体重,BMI,授業以外での運動習慣,月経周期日数,月経持続日数,月経血量に ついて質問紙により回答を得た.

月経随伴症状の調査

月経周期に伴う症状は8因子,46項目の構成尺度である日本語版Menstrual Distress

Questionnaire (MDQ)を用いた回顧的方法により調査した.8つの因子は,筋肉のこりや痛

(3)

みなどを示す「痛み」,忘れっぽさや判断力の低下を示す「集中力」,遂行力や社会活動の 低下を示す「行動変化」,立ちくらみや紅潮などを示す「自律神経反応」,むくみや体重増 加を示す「水分貯留」,苛立ちや抑うつ気分の変動を示す「負の感情」,愛情や興奮などを 示す「気分の高揚」,手足のしびれや動悸などを示す「コントロール」からなる.月経前,

月経中,月経後の各期について,症状の「ない」0点から「強い」3点で得点化し各因子 の合計点を算出し,さらに46項目の合計点で評価した.月経の状態が症状の有無に影響 するため,月経周期日数が正常範囲外(24日以下,39日以上,不規則,無月経)の34名 を除外し,正常(25〜38日)であった73名について分析を行った.

月経に関する意識の調査

月経に関する意識について質問紙による調査を行った.質問紙はBrooks-Gunn et al.7)が 作成し,一般化されているMenstrual Attitude Questionnaire (MAQ)を参考に独自に作成し たものを用いた4).全22項目について,「まったくそうではない」1から「非常にそうであ る」5の5段階のスケールを用いて評価した.事前に女子大学生406名から得た回答につ いて因子分析を行い,抽出された4因子により分析を行った8).4つの因子は,月経中,普 段よりも疲れやすくなるなどの「影響を受ける」,他の時期に比べ,月経前は神経過敏に なるなどの「神経・身体症状」,月経は女性にとって自分の身体のことを気にかけるいい 機会となるなどの「女性の特質」,月経がもっと短期間で終わったらいいと思うなどの

「やっかい」からなり,各因子の回答の平均値を算出した.月経随伴症状の調査と同様,

月経状態の影響を排除するため,月経周期日数が正常であった73名を分析の対象とした.

倫理的配慮

本研究は東京女子大学研究倫理委員会の承認を得て実施した.調査にあたり対象者に目 的,利益,不利益,データの管理や公表について説明を行い,記名式の質問紙に記名の上 回答することで同意を得たこととした.データは厳重に管理し,外部に流出することがな いようにした.測定に伴う危険性はない.

統計処理

データは平均値±標準偏差で示した.解析には統計ソフトSPSS Ver. 22を用い,統計学 的有意水準は5%未満とした.歩数および身体活動量の平日と休日の比較にはWilcoxon検 定,活動量3群の比較にはKruskalWallis検定を用い,さらにペアごとの比較を行った.

活動量3群による運動習慣および月経の状態の比較にはカイ2乗検定を行った.

結   果 歩数および身体活動量

1日あたりの歩数は11,461±3,456歩/日(Min.: 平均4,653歩/日,Max.: 平均23,620歩/

日) であった.図1に歩数の分布を示した.週あたりの身体活動量は,強度が3メッツ以

上の生活活動量は5.3±3.6メッツ・時/週,強度が3メッツ以上の歩行活動量は41.0±14.1 メッツ・時/週,であった.活動量を平日と休日で比較すると,歩数,生活活動量と歩行

(4)

活動量を合計した総活動量,歩行活動量,総活動量に占める歩行活動量の割合(%歩行活 動量)は休日に比べ平日に有意に高値を示し,一方,生活活動量は平日に比べ休日に有意 に高値を示した(表1).

歩数の測定結果に基づき,低活動群(平均8,000歩/日未満)14名,中活動群(平均

8,000〜12,000歩/日)54名,高活動群(平均12,000歩/日以上)39名の3群に分け比較を

行った.各群の平均歩数および身体活動量を表2に示した.全ての項目で3群間に有意な 差が認められた.

図1 歩数の分布

1 加速度計による身体活動量

(n=107) 全日 平日 休日

歩数(歩/日) 11,461±3,456 11,704±3,326 10,720±5,407*

総活動量(メッツ・時/週) 46.3±15.9 48.2±16.4 40.8±24.0*

生活活動量(メッツ・時/週) 5.3±3.6 4.7±3.2 6.6±5.9*

歩行活動量(メッツ・時/週) 41.0±14.1 43.6±14.9 34.2±21.8*

%歩行活動量(%) 88.6±5.6 90.0±6.0 80.2±16.7*

平均値±標準偏差

*: p<0.05 vs 平日

表2 活動量3群の身体活動量

低活動群(n=14) 中活動群(n=54) 高活動群(n=39)

歩数(歩/日) 6,633±964 10,027±969* 15,189±2,435*# 総活動量(メッツ・時/週) 26.5±5.6 39.5±6.7* 62.8±12.0*# 生活活動量(メッツ・時/週) 3.5±0.9 4.5±2.5 6.9±4.8*# 歩行活動量(メッツ・時/週) 22.9±5.3 35.0±6.2* 55.8±10.1*#

%歩行活動量(%) 86.0±3.7 88.8±5.7 89.3±5.9*

平均値±標準偏差

*: p<0.05 vs 低活動群,#: p<0.05 vs 中活動群

(5)

身体活動量とBMI,運動習慣,月経状態の関連

BMIは低活動群が20.2±2.6,中活動群が20.7±2.5, 高活動群が20.3±1.6で3群間に有意 な差は認められなかった.表3に各群の運動習慣および月経状態について示した.授業以 外での運動習慣は3群間に有意な差は認められなかった.月経周期日数は25〜38日を正常 月経周期とし,24日以下,39日以上,不規則,無月経を正常範囲外としてまとめて示し た.ただし,無月経の者はいなかった.カイ2乗検定の結果,月経周期日数は3群間に有 意な差が認められた.月経持続日数は3〜7日を正常とし,2日以下および8日以上を正常 範囲外として示した.ただし,2日以下の者はいなかった.月経持続日数および月経血量 は3群間に有意な差は認められなかった.

身体活動量と月経随伴症状

MDQ8因子それぞれの合計点およびすべての合計点を表4に示した.いずれの項目に も3群間に有意な差は認められなかった.

身体活動量と月経に関する意識

月経に関する意識の4因子の回答の平均値を表4に示した.月経は「女性の特質」であ るという意識は中活動群および高活動群に比べ低活動群で有意に低かった.月経による

「神経・身体症状」があるという意識はKruskal‒Wallis検定により3群間に有意な差が認め られたが,多重比較の結果,各群間の有意差は認められなかった.

考   察 1. 加速度計による女子大学生の身体活動量

本研究の身体活動量の計測は,歩数の他に3メッツ以上の身体活動について歩行と歩行 以外の身体活動(生活活動)を分離した計測が可能な加速度計を用いたという点に特徴が

表3 活動量3群の運動習慣および月経状態 低活動群

(n=14) 中活動群

(n=54) 高活動群

(n=39) 授業以外での運動習慣 なし 9 (64.3) 23 (42.6) 13 (33.3)

週1日 3 (21.4) 16 (29.6) 17 (43.6)

週2〜3日 2 (14.3) 11 (20.4) 6 (15.4) 週4〜7日 0 (0.0) 4 (7.4) 3 (7.7) 月経周期日数* 正常(25〜38日) 6 (42.9) 42 (77.8) 25 (64.1)

正常範囲外 8 (57.1) 12 (22.2) 14 (35.9) 月経持続日数 正常(3〜7日) 13 (92.9) 53 (98.1) 38 (97.4) 正常範囲外 1 (7.1) 1 (1.9) 1 (2.6)

月経血量 少ない 0 (0.0) 2 (3.7) 3 (7.7)

普通 11 (78.6) 45 (83.3) 31 (79.5)

多い 3 (21.4) 7 (13.0) 5 (12.8)

*: p<0.05 人 (%)

(6)

ある.測定の結果,1日当たりの歩数は11,461±3,456歩/日,週当たりの身体活動量

46.3±16.9メッツ・時/週であった.平成23年度国民健康・栄養調査9)の15〜19歳女性の

1日の歩数は9,015±4,747歩/日であり,また,厚生労働省の健康づくりのための身体活 動基準20132)では,強度が 3 メッツ以上の身体活動を23メッツ・時/週,歩数で 1 日あた り約 8,000〜10,000 歩を目標値としている.本研究の結果は,若い年代の女性の身体活動 量が少ないという仮説に反し,高い身体活動量を示した.

身体活動の内容について,本研究と同じ加速度計を用いた大島ら6)の報告では,40歳未 満の女性の週あたりの身体活動量は生活活動量が9.0±6.1メッツ・時/週,歩行活動量が

4 活動量3群のMDQ得点および月経に関する意識

低活動群(n=6) 中活動群(n=42) 高活動群(n=25)

MDQⅠ.痛み 月経前 5.5±6.0 5.7±3.9 5.7±4.5

月経中 7.5±6.3 8.0±4.5 7.9±5.2

月経後 1.5±2.3 0.9±1.7 0.8±1.6

Ⅱ.集中力 月経前 3.3±5.3 3.0±3.8 5.6±5.3

月経中 5.7±8.2 4.3±4.8 6.1±5.4

月経後 2.3±3.6 0.4±1.0 1.2±2.3

Ⅲ.行動変化 月経前 4.5±6.0 4.4±3.6 5.7±4.2

月経中 6.7±6.7 5.4±3.9 6.6±4.1

  月経後 2.0±3.3 0.6±1.0 1.4±2.4

Ⅳ.自律神経反応 月経前 2.3±3.8 1.1±1.6 1.4±2.5

月経中 3.2±4.0 2.0±2.7 1.6±2.2

月経後 0.8±1.6 0.2±0.8 0.1±0.4

Ⅴ.水分貯留 月経前 3.0±3.9 3.3±3.6 4.6±2.9

月経中 2.7±3.6 3.5±3.4 4.2±2.2

月経後 0.8±1.6 0.7±1.3 0.8±1.0

Ⅵ.負の感情 月経前 6.0±9.0 4.7±5.4 6.9±6.2

月経中 6.0±7.8 4.7±4.3 6.0±5.8

月経後 2.7±4.1 0.4±0.9 1.2±2.6

Ⅶ.気分の高揚 月経前 0.2±0.4 0.8±1.4 0.6±1.0

月経中 0.2±0.4 0.6±1.2 0.6±1.0

月経後 0.2±0.4 1.2±2.2 1.7±3.1

Ⅷ.コントロール 月経前 1.8±2.9 0.9±1.6 0.8±1.2

月経中 2.2±3.4 1.1±1.9 0.7±0.9

月経後 1.2±1.8 0.1±0.3 0.1±0.3

合計点 月経前 26.7±35.7 23.9±19.2 31.3±21.1

月経中 34.0±38.5 29.5±21.3 33.6±20.4

月経後 11.5±17.2 4.5±6.2 7.4±9.1

月経に関する意識

Ⅰ.影響を受ける 3.3±1.3 3.5±0.9 3.6±0.8

Ⅱ.神経・身体症状 2.6±1.3 3.0±0.9 3.5±0.7

Ⅲ.女性の特質 2.2±0.8* 3.3±0.7 3.3±1.0

Ⅳ.やっかい 3.9±1.2 4.1±0.8 4.2±0.9 平均値±標準偏差

*: p<0.05 vs 中活動群,高活動群

(7)

16.3±8.7メッツ・時/週,%歩行活動量は63.1±18.5%であり,女性の総活動量は男性に 比べて低いが,生活活動量は女性が有意に高値を示している.一方,本研究での生活活動 量は5.3±3.6メッツ・時/週と低く,歩行活動量が41.0±14.1メッツ・時/週,%歩行活 動量は88.6±5.6%と先行研究の値を大きく上回っており,歩行活動が量・割合とも高いこ とが特徴であるといえる.鍋倉ら10)は,大学生の歩行量を占める大きな要素が通学であ ると指摘しており,本研究を行った東京女子大学が都市部に立地しバスや電車などの公共 交通機関を利用して通学する者が多いことが結果に関連していると考えられる.また,休 日に比べ平日の歩行活動が量・割合ともに高いのもこのことと関連しているといえよう.

身体活動量の計測に関しては,用いる歩数計および活動量計の機種によって計測アルゴ リズムが異なるため,結果も異なる可能性があることに留意する必要がある.本研究で用 いた加速度計は歩行以外にも掃除機かけや洗濯などの低強度で意識されない活動も高精度 で評価可能な3次元加速度計である.それに対し,従来の加速度計は歩行以外の生活活動 を過小評価するとされている11, 12).本研究と同じく女子大学生を対象に加速度計を用いて 歩数を検討した研究では,野口13)の8,167±2,438歩,間瀬ら14)の8,368±2,467歩〜8,622±

2,636歩,吉川ら15)の8,907±2,293など本研究の結果と比べ低いものが多い.12,044±4,148 歩と高い歩数を報告した赤井ら16)は,その理由について運動部加入者が多いことと,通 学による歩行量が多いことが影響しているとしている.本研究では,授業以外の運動習慣 のない者の割合は42.1%(45名)であり,間瀬ら14)の73.2%〜77.2%や赤井ら16)の54.5%

と比べても低く,運動習慣者の割合が低いとされる女子大学生の中では比較的運動習慣を 有する集団であるともいえる.また,すべての対象者が週1回の運動実技を含む授業を受 講していることが全体の身体活動量の多さと関連している可能性が考えられる.

BMIは活動量の異なる3群の比較において有意な差は認められなかった.これは,体脂 肪率の異なるグループ間で身体活動量や運動習慣に差異を認めなかった間瀬ら14)の結果 とも一致している.本研究において週2日以上の運動習慣のある者の割合は24.3%であ り,多くの者は日常生活の中で例えば通学時の歩行活動のような低強度の身体活動を積み 重ねていると考えられる.健康な若い女性において,このような低強度の身体活動の効果 はすぐに体格や体組成に現れない可能性が高い.健康づくりのための身体活動基準20132) では,18〜64歳の青壮年者はスポーツや体力づくりとして3メッツ以上の強度の運動を4 メッツ・時/週行うことを推奨している.しかしながら,国民健康・栄養調査9)でも報告 されているように,20代から50代の労働世代において運動習慣のある者の割合が低く,

特に若い女性でその傾向が顕著であることから,学生に対する教育においては,身体活動 量を増やす意義について学ばせることに加え,より強度の高い運動やスポーツ活動を意識 的に取り入れ,将来の運動に対する好意的態度を育てることを意識した教育も重視すべき である.また,加速度計などを用いて手軽かつ客観的に現在の身体活動量を知ることは,

個人のライフスタイルを見直し日常生活の中に運動を取り入れて適度な活動量を維持する ために大変有用な方法であろう.

2. 身体活動量と女性(月経)の健康

本研究では,日常生活における身体活動量が月経に関する健康状態にどのように関連し

(8)

ているか明らかにすることを2つめの目的とした.適度な運動が月経随伴症状を緩和する とされていることから,適度な身体活動量を維持している者は月経随伴症状が軽いという 仮説について検証を行った.その結果,身体活動量の違いはMDQの各因子の得点に影響 しなかった.一方,低活動群は正常月経周期の者の割合が明らかに低いだけでなく,正常 月経周期の者のみの比較においても月経は「女性の特質」であるという意識が低いことが 明らかとなった.

これまで,月経随伴症状に対する身体活動の有益性について佐久間ら17)は定期的な運 動や車を使う頻度の低さや意図的な歩行といった日常の活動も月経前期および月経期症状 が軽度であることと関連すると報告している.松本ら18)も同様に日常生活で運動習慣の ある者は月経痛が少ないことを報告しているが,これらの報告における運動習慣はいずれ も自己記入式の質問紙調査によって申告されたものであり,実際に活動量を計測して検討 したものはこれまでにない.本研究では先行研究の結果と異なり,身体活動量の違いは MDQの各因子の得点に影響せず,月経随伴症状と身体活動量の関連は認められなかっ た.これには対象とした女子学生の身体活動量が全体として比較的高く,低活動群の学生 であっても6,632±963歩/日の歩行量や26.5±5.6メッツ・時/週の活動量があったことが 関連しているかもしれない.また,苫米地ら5)は月経前の「負の感情」と月経中の「水分 貯留」の得点が有酸素運動の実施により減少したとしているが,本研究の対象者の両得点 は苫米地らの報告よりも低かったことが影響しているかもしれない.これまで月経随伴症 状に対する運動の効果に関して,身体活動量のような客観的指標を用いて検討した研究は ほとんどなく,運動の有効性や適切な運動量などを明確にするためにも今後さらに検証し ていく必要がある.

身体活動量と月経に関する検討の中で,低活動群において正常月経周期の者の割合が低 く,そのうち正常月経周期の者でも月経は「女性の特質」であるという意識が低かったこ とは本研究で初めて明らかとなった.月経周期に影響する因子として初経後年齢,エネル ギー不足,ストレス,過度の運動などがあげられる.Yamamoto et al.19)は,大学生を対象 にした研究で,心理社会的ストレスの高い者は月経異常の経験がある者が多かったと報告 している.本研究では栄養やストレス状態などの調査をしていないため限界があるが,初 経後年齢や過度の運動といった因子の影響は否定されるため,低活動群は低活動であるこ とも含めてライフスタイルに何らかの問題がある可能性がある.また,「女性の特質」と いった月経に対する積極的な肯定感の低さには,年齢の若さや知識レベルの低さが影響す ることが報告されているが20),本研究ではさらに身体活動量の低さが関連することが明ら かとなった.大滝ら21)は,月経に対する肯定感の高い者は月経痛に対して「ストレス軽 減法」や「リラクゼーション法」などを実施していたことから,月経は女性特有のもので あると捉えることにより,自分自身のからだに目を向け,からだを大切にケアする気持ち につながっているとしている.このように,低活動群は身体活動量の低さと月経異常率の 高さ,月経に関する肯定的感情の低さなど女性としての身体的・精神的健康に関わる問題 を併せ持つことから,生活習慣や精神的健康度の面からも配慮すべき可能性があることが 示唆された.

(9)

本研究の限界と課題

本研究の対象者は1大学に所属する1年生を中心としており,生活パターンは極めて類 似しているといえる.そのため身体活動量はその集団に特有の傾向を強く示しており,一 般的な女子大学生の傾向を把握するにはさらに対象者の範囲を広げる必要がある.

また,身体活動量と月経の関連について,本研究での月経随伴症状の調査は回顧的方法 によるものであり,実態とは異なる可能性がある.より正確に月経随伴症状の変化を捉え るためには,即時的方法により検討する必要がある.また,月経による「神経・身体症 状」があるという意識において3群の比較では有意差が認められたが,多重比較の結果,

各群間の有意差は認められないなど,被験者数の不足が問題点として考えられる.一般の 女性を対象とした身体活動と月経の関連に関する詳細な検討はこれまでほとんどされてい ないことから,今後,被験者数を増やしてさらなる検討を行っていく必要がある.

ま と め

加速度計により女子大学生の身体活動量を計測した結果,1日あたりの歩数は11,461±

3,456歩/日,週当たりの身体活動量は46.3±16.9メッツ・時/週と高い身体活動量を示し

た.この活動量の大部分は日常生活での歩行活動によるものであり,学生に対する教育に おいては,高い身体活動量を維持することに加え,運動やスポーツ活動に対する好意的態 度を育てることで将来の運動習慣につなげることを意識すべきであるといえる.

身体活動量と月経に関して検討した結果,身体活動量の違いは月経随伴症状に影響しな かった.しかしながら,低活動群は中活動群や高活動群に比べ正常月経周期の者の割合が 低く,月経に関して「女性の特質」意識が低いことが明らかとなった.身体活動量の低さ は,生活習慣の問題のみならず月経異常率の高さや月経に関する肯定的感情の低さなど女 性としての身体的・精神的健康に関わる問題を併せ持つ可能性があることが示唆された.

付   記

本研究は,2012年度〜2014年度東京女子大学女性学研究所プロジェクト研究「女性に おけるスポーツ・運動実践の意義」によって実施した.

文   献

1) Caspersen CJ, Pereira MA, Curran KM: Changes in physical activity patterns in the United States, by sex and cross-sectional age. Med Sci Sports Exerc 32(9), 16011609, 2000.

2) 厚生労働省 運動基準・運動指針の改定に関する検討会:健康づくりのための身体活動基準 2013.

3) Aganoff JA, Boyle GJ: Aerobic exercise, mood states and menstrual cycle symptoms. J Psychosom Res 38(3), 183192, 1994.

4) 橋本有紀,目崎 登,村井文江:運動が月経周期および月経に関する意識に及ぼす影響.女性 心身医学8(2), 161‒168, 2003.

5) 苫米地真弓,黒田 緑,野村紀子:月経随伴症状に対する有酸素運動の有効性についての検 討.母性衛生49(2), 374‒381, 2008.

6) 大島秀武,引原有輝,大河原一憲,高田和子,三宅理江子,海老根直之,田畑 泉,田中茂

(10)

穂:加速度計で求めた「健康づくりのための運動基準2006」における身体活動の目標値(23 メッツ・時/週)に相当する歩数.体力科學61(2), 193‒199, 2012.

7) Brooks-Gunn J, Ruble DN: The menstrual attitude questionnaire. Psychosom Med 42(2), 503512, 1980.

8) 中村有紀,曽我芳枝,平工志穂:女子大学生の月経の現状と月経随伴症状および月経に関する 意識の関連.第33回日本思春期学会総会・学術集会抄録集,67, 2014.

9) 厚生労働省:平成23年国民健康・栄養調査報告.

10) 鍋倉賢治,尾嶋希実子,吉岡利貢,中垣浩平:歩行量からみた筑波大学生の身体活動量:

「学・食・住」隣接で歩かない筑波大生.大学体育研究27, 3‒10, 2005.

11) Hikihara Y, Tanaka S, Ohkawara K, Ishikawa-Takata K, Tabata I: Validation and comparison of 3 acceler- ometers for measuring physical activity intensity during nonlocomotive activities and locomotive move- ments. J Phys Act Health 9(7), 935943, 2012.

12) Matthew CE: Calibration of accelerometer output for adults. Med Sci Sports Exerc 37(11), S512‒S522, 2005.

13) 野口祥子:女子短大生の身体活動量について:23メッツ・時/週に相当する歩数は?.医療

保健学研究5, 117‒127, 2014.

14) 間瀬知紀,宮脇千惠美,甲田勝康,藤田裕規,沖田善光,小原久未子,見正富美子,中村晴

信:女子学生における正常体重肥満と食行動との関連性.日本公衆衛生雑誌59(6), 371380, 2012.

15) 吉川 綾,江川舞由,岡見雪子,北岡かおり,猿渡綾子,小谷清子,青井 渉,和田小依里,

尾崎悦子,渡邊能行,東あかね:食事摂取基準[2010年版]による管理栄養士養成課程の女 子学生の栄養・身体活動評価.京都府立大学学術報告.生命環境学65, 53‒57, 2013.

16) 赤井クリ子,山川正信:女子大生における身体活動量と生活習慣および健康度の関連,園田学

園女子大学論文集 48, 1‒11, 2014.

17) 佐久間夕美子,叶谷由佳,石光芙美子,細名水生,望月好子,佐藤千史:若年女性の月経前期

および月経期症状に影響を及ぼす要因―看護学生と専門学生における生活習慣・保健行動の比 較―.日本看護研究学会雑誌31(2), 25‒36, 2008.

18) 松本可愛,戸田寛子,肥後綾子,齋藤圭美,田中由紀子,辻岡三南子,齊藤郁夫:女子大学生

の月経痛とライフスタイル・対処能力に関する調査.慶応保健研究22(1), 99‒104, 2004.

19) Yamamoto K, Okazaki A, Sakamoto Y, Funatsu M: The relationship between premenstrual symptoms, menstrual pain, irregular menstrual cycles, and psychosocial stress among Japanese college students. J Physiol Anthropol 28(3), 129136, 2009.

20) 松本清一:日本女性の月経,フリープレス,東京,1999.

21) 大滝千智,鈴木幸子,大月恵理子:女性看護職者の月経観と月経痛に対するセルフケアとの関

連.日本母性看護学会誌13(1), 1‒8, 2013. 

キーワード

女性,加速度計,身体活動量,月経

概   要

本研究の目的は,1) 加速度計により女子大学生の身体活動量を明らかにすること,2) 日常の身体 活動量の違いが月経を中心とした女性の健康に及ぼす影響を明らかにすることである.女子学生107 名を対象に,加速度計による身体活動量の計測および質問紙による月経の状態,月経随伴症状,月経 に関する意識の調査を実施し分析を行った.その結果,1日あたりの歩数は11,461±3,456歩/日,週 当たりの身体活動量は46.3±16.9メッツ・時/週であり,若い年代の女性の身体活動量が少ないとい う仮説に反し,高い身体活動量を示した.また,低活動群は中活動群や高活動群に比べ正常月経周期 の者の割合が低く,月経に関して「女性の特質」意識が低いことが明らかとなった.このことから,

女子学生における身体活動レベルは月経の状態や月経の受容態度とも関連していることが示唆され た.

参照

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