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磁気計測に基づ くモルタル中の 腐食環境評価技術の開発

16560623

平成 16年度〜平成 18年度科学研究費補助金 (基盤(C))研究成果報告書

平成 19 5

研究代表者 八代 岩手大学工学部教授

(2)

目次

1.は じめに ・・・・・・・・

研究組織 ・・・・・・・・

研究発表 ・・・・・・・・

2.研究成果の概要 ・・・・・

3.磁性腐食プローブの開発 ・ 3. 1 緒言 ・・・・・・

3. 2 実験方法 ・・・・

3.2. 1 3. 2. 2 3.2.3 3. 2. 4 3. 2. 5 3. 2. 6

磁性腐食プローブA ・ 磁性腐食 プロー ブB ・ モルタル供試体 ・・・

磁気計測 ・・・・・・

腐食試験 ・・・・・・

鉄筋腐食の評価 ・・・

3.3 結果 と考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

3. 3. 1 プローブA ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

3.3.2 プローブB・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

3. 3. 3 磁性粒子 を含有するモル タルの影響 ・・・・・・・・

3. 3. 4 鉄筋の腐食挙動 との関係 ・・・・・・・・・・・・ 3・ 4 まとめ ・‑ ‑ ‑ し‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ・‑ 4.磁性腐食プローブの改良とモルタイル内の腐食環境評価 ・・・・・

4. 1 緒言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

4. 2 実験方法 ・・・・∴ ・・・・・・・・・・・・・・・・・

4. 3 結果 と考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

4. 3. 1 残留磁化の安定性 ・・・・・・・・・・・・・・・・

4. 3. 2 プローブを埋設 したモル タルに対す る腐食試験結果 ・ 4. 3. 3 鉄筋を埋設 したモル タルに対す る腐食試験結果 ・・・

4.4 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

5.おわ りに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

6.謝辞 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1 7 7 9 10 10 10 10 10 10 ll 14 14 14 14 18 22 24 27 28 28 28 28 28 32 33 37 38 38

(3)

1.は じめに

鉄筋 コンク リー ト構造物 中の鉄筋の腐食 によるかぶ りコンク リー トの剥落や耐荷力 低下が大きな社会問題 となっている 1,2)。 このよ うな鉄筋の腐食 は、二酸化炭素や二酸 化硫黄のような酸性物質によるコンク リー トの中性化、あるいはコンクリー ト内‑の塩 化物イオンや硫酸イオンのよ うな鉄 に対す る腐食性の高いイオンと酸素の侵入 によっ て加速 される。鉄筋が腐食す るとコンク リー トとの密着性が低下す るばか りでな く、体 積膨張によって周囲のコンクリー トに歪みを与え、ひいては割れを発生 させ る。このよ うに して発生 した割れは さらなる腐食性物質の侵入 を加速す るとともにコンク リー ト の機械的強度を低下 させ る。このような現象を通 して耐震強度が低下 した り、自然剥落 の危険性が高 くなっているコンク リー ト構造物はすでに少なか らず存在 してい ると考 えられている。したがって、既存のコンク リー ト構造物に対 しては、鉄筋の健全性を評 価す る非被壊検査法が強 く望まれている。あるいはこれか ら建築 され る構造物について は、鉄筋の健全性に対 して適切なモニタ リングが可能なシステムを備 えることも考慮 さ れ るべきであろ う。

これまで鉄筋の腐食 を診断す るために以下のような方法が提案 されている。

1) 打音法

ハ ンマーな どを用いてモル タルを叩 くことにより、腐食の際には音の振動が鈍 く響 くことを利用 した方法であ り、簡易かつ迅速な方法であるが、それを実施す る作業員 の技量によって大きく結果が異な り、モルタル中の鉄筋の位置を同定す ることはほと ん どできず、内部の腐食 を確認す ることはできない。また、表面に近いほど検出はで きるが、十分な信頼性 を持った検出をす る際にはモルタル中に何 らかの損傷を与えて いるために、非破壊的な計測法 として用いることは不可能である。

2) 超音波法

モルタルに超音波を当て、骨材か らの散乱波を除去す ることによってモル タル 中の 鉄筋の形状を割 り出す方法である。これにより鉄筋の腐食割合か らおおよそのコンク リー トの寿命 を割 り出す こともできる。さらに、打音法 と同様の測定を行 うこともで きるが、形状を割 り出すために計測回数が非常に多 く時間がかか り、一般的にコンク リー トのクラックがある場合 にはクラックによって音波の散乱が起 こるためこの補 正を行 う必要があ り非常に手間がかかる。

3) 電磁波法

モル タル 中に電磁波を与 えることによ り電磁波の減衰 によってモル タル 中の塩化 物量を推定す る方法であるが、モルタルの水/セメン ト比の違いやモル タル 中の空気 量が塩化物量に非常に左右 され るな ど種々の問題があ り、まだ確立 された方法になっ ていない。

1

(4)

4) 電気化学的方法

腐食 は電気化学的反応であることか ら、これ を電気化学的に検出す る方法 も考 えられ る。最 も単純な方法は、鉄筋の腐食電位 を測定す る方法である3)。参照極 には硫酸銅() が用い られ ることが多い。この方法では リー ドを とるために鉄筋の一部 を露出 させ る必 要があ り、完全 な非破壊検査 とはいえない。また腐食 の開始 をある程度検知す ることが できるが、腐食深 さや腐食速度 に関 しては十分な情報 を与 えない。一方、分極抵抗 47) や交流インピーダンス 8)を測定す る方法 も提案 されてい る。イ ンピーダンス法は腐食速 度 に関す る情報 を与 えるが、得 られ るデータは瞬間値であ り、ある程度腐食が進行 した あ とで も、測定時に乾燥 しているな どして大きなイ ンピーダンスを与 える場合 も考 えら れ る。また電位計測 と同様、 リー ドをとり対極 を設置す る必要がある0

以上述べた測定法が、鉄筋の腐食状態 を直接評価す ることを 目指 しているのに対 し、

モル タル内の環境の変化 を何 らかの方法で計測す ることによって、腐食 の危険性 を察知 しよ うとす る考 え方がある。環境の危険性が疑われれば、破壊試験を含 めた よ り詳細な 検査‑ と移行す ることができるであろ う。具体的な例 として鉄細線が腐食す るにつれて 電気抵抗が大 きくなることを利用す る抵抗変化測定910)や塩化物イオン1112)または酸素 セ ンサ 13)をコンク リー ト中に埋設す る方法な どが提案 されている。 しか しなが らいず れ も配線が必要である うえ、抵抗法では温度の影響 を受 けやすいな どの問題点がある。

本研究が提案す る方法 も、基本的な考 え方はモル タル 内に埋設 したプ ローブの腐食 を非 破壊的に評価す ることで、間接的に鉄筋 を とりま く環境 の腐食性 を評価 しよ うとす るも のである。 しか し本研究の特徴 は、 これを完全 に非破壊 ・非接触 にて行 うことであ り、

この 目的の実現のために磁気計測に着 目した1415)0

近年磁気計測技術の進歩 によって極微弱磁場の計測が容易になってきている。なかで も高温型の超伝導量子干渉素子(SQUID)磁束計は液体窒素温度で作動す るため、産業利 用‑の期待が高まっている。図 11に示す よ うにSQUID磁束計 を用いると、nTか ら pT レベルの磁気計測 を比較的容易に行 うことができる。腐食現象 を磁気的に計測す る には、表 1‑1に示す よ うにい くつかの考 え方がある。腐食電流に伴 って発生す る磁気 を 計測す る試みは、1986年 に初 めて発表 16)されて以来、数々の報告例1718)があるが、非 常に特殊 な状況下での計測であった り、磁気信号に合理的な解釈がな されないな ど、実 用的な レベル には到達 していない。実用 に際 して予想 され る環境 ノイズも大きな問題 で ある。渦電流 を利用す る方法は、導電性の材料 中に比較的大きな欠陥が存在す ると、渦 電流がつ くる磁場 に乱れが生 じることをSQUID磁束計で検 出す る方法である。しか し

なが らこの方法をモル タル内に埋設 された鉄筋に適用す ることは困難である。被検査材 が磁性材料である場合、その材料の残留磁化が腐食 と共に変化す ることが期待 され る。

このような原理 に基づ く腐食評価 は薄膜材料 に有効であるが、鉄筋のような大きな鉄塊

2

(5)

では、その表面にわずかな腐食 が生 じても外部か ら磁気的な信号の変化 をとらえること は困難である。一方、磁性薄膜 をある環境 中に設置 し、腐食の進行 によってその残留磁 化が変化すれば、その環境が腐食性環境であると評価す ることができる。これは、コン ク リー ト内のよ うに容易にはアクセスできない環境 を評価す るのに適 している。このよ うな非接触腐食環境評価法は世界で も報告例がな く、著者 はこのよ うな腐食 によって残 留磁化が敏感 に変化す る材料 を、 「磁性腐食 プローブ」 と名付 けた。本研究の第 1の課 題 は、このよ うな磁性腐食プ ローブ として適切 な鉄 の形状 を模索す ることである。開発 すべき磁性腐食プ ローブは、鉄筋の腐食が軽微である段階において、‑検 出可能な磁気的 な信号を発す ることを 目指 して設計 された。次に開発 された磁性腐食 プローブを実際に プ ローブをモル タル 中に埋設 して腐食加速試験を行い、その腐食 の進行が磁気的な信号 変化 として検 出可能なことを実証す ることを第2の課題 とした。

参考文献

[1]C.L.Page,K.W.J.Treadaway,Nature297(1982)1091115・

[2]G.S.DuffO,W.Morris,I.Raspini,C.Saragovi,Corros.Sci.,46(2004)2143‑2158・

[3]J.A.Gonzalez,J.M.Miranda,S.Feliu,Corros.Sci.,46(2004)246712486.

[4]N.Birbilis,B.W.Cherry,MaterialsandCoITOSion,56(2005)237243・

[5]B.EIsener,Corros.Sci.,47(2005)3019‑3033.

[6]S.Feliu,J.A.Gonzalez,J.M.Miranda,V.Feliu,Corros.Sci.,47(2005)217‑238・

[7]H.Wojtas,Corrosion,60(2004)414‑423.

[8]J.A.Gonzalez,J.M.Miranda,N.Birbilis,S.Feliu,Corrosion,61(2005)37150.

[9]R.A.Royer,R.F.Unz,Corrosion,58(2002)863‑870.

[10]H.S.Lee,S.Shin,J.M.Alm,Y.Kim,Y.T.Kho,MaterialsandCorrosion,54(2003) 229‑234.

[11]M.F.Montemor,J.H.AIves,A.M.Simoes,J.C.S.Femandes,Z.Lourenco,A.J.S.Costa, A.J.Appleton,M.G.S.Ferreira,Cement&CncreteComposites,28(2006)233‑236.

[12]B.EIsener,L.Zimmermann,H.B6lmi,MaterialsandCorrosion,54(2003)440446.

[13]M.J.Correia,E.V.Pereira,I.T.E.Fonseca,Cement&ConcreteComposites,28(2006),

3

(6)

226‑232.

[14]B.Hillemeier,H.Scheel,MaterialsandCorrosion,49(1998)7991804.

[15]M.Ridha,K.Am aya,S.Aoki,Corrosion,61(2005)7841791.

[16]J.E.Bellingham,M.L.A.MacVicar,M.Niesenoff,P.C.Searson,J.Electrochem.Soc., 133(1986)1753.

[17]Y.P.Ma,J.P.Wikswo,E.Juzeliunas,Corros.Sci.,47(2005)621633.

[18]H.Yashiro,M.Yoshizawa,N.Kumagai,J.H.Hinken,JElectrochem.Soc.,49(2002) B65‑B69.

4

(7)

SQUID磁束計

光ポンピング磁束計

ホール効果磁束計

10l15 10「12 17 9 17 6 17‑3 T IP3

心磁界 地磁気 Ma====g=n==eEt

磁場強度 (T)

脳磁界

腐食磁界

.1‑1 SQUID磁束計 との磁場強度の比較

5

(8)

表 1 磁気計測に基づ く腐食モニタ リングの考 え方

磁気の ソース 測定領域 適用 荷考

肉食電流 空間 全面腐食局部腐食 腐食電流は通常時間で変化現場‑の適用はかな り困難空間分解能が低い吐気が微弱 (発生 しない ?)

時間 非定常的な腐食 (局部腐食) 特 にれ る食場所が予想で きる場合 に限 ら

渦電流 空間 腐食孔な ど 空間分解能が低い

6

(9)

研究組織

研究代表者 :八代 仁 (岩手大学工学部教授)

交付決定額 (配分額)

直接経費 間接経費 合計

平成 16年度 2,600,000 0 2,600,000 平成17年度 500,000 0 500,000 平成 18年度 .600,000 0 60.0,000

研究発表

(1)学会誌等

1)D.He,M.Yoshizawa,H.Yashiro,班.Nakamura,High‑Tc dc SQUID Cooledby Pulse‑Tube Cooler and Corrosion Measurements, ZEEE Traps. AjPll'ed SupercoDductlvlty,15(1),pp.4043(2005).

(2) 口頭発表

1)八代 仁 ・浅井貴弘 ・影 山輝 明 ・小山田哲也 ・藤原忠司 磁性腐食 プ ローブに よるモル タル 内腐食環境評価

腐食防食協会東北支部講演会, (2007)3/6(東北大学)

2)影 山輝 明,小 山田哲也,藤原忠司,八代 仁,赤川和虞 SQUIDに よる鉄筋腐食 の検知 に関す る基礎 的研 究

シンポジ ウム コンク リー ト構造物‑の非破壊検査の展 開論文集 (日本非破壊検査協 会)pp.133‑140(2006)

3)八代 仁,川又祐介,影 山輝 明,石川茂幸,辻村祐哉,藤原忠司 磁気計測 に基づ くモル タル 中の腐食環境評価 法 の開発

52回材料 と環境討論会講演集,pp.417‑420(2005)9/14札幌 (北海道大学) 4)八代

磁気計測 に基づ くモル タル 内腐食環境評価 の試 み「

7

(10)

8SQUID研究会 12/14(2005)盛 岡 (岩手大学)

5)八代

腐食環境 のその場評価法

21回表面技術セ ミナー 11/ll(2005)盛 岡 (岩手大学)

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2.研究成果の概要

コンク リー ト中の鉄筋の腐食 問題 に関連 し、磁気計測 に基づいてモル タル内の腐食環 境 を非接触で評価す る新 しい方法の開発 をめざした。本法の原理 は、鉄製の腐食プロー ブ (磁性腐食 プローブ)をモル タル 中に埋設 し、その腐食開始 を残留磁化の変化 として 検出す ることである。

磁性腐食 プローブの候補 として鉄細線 と鉄 めっき膜 を取 り上げた。鉄線 (◎0.1mm) お よび鉄 めっき(厚 さ1,10pm)した銅棒(◎10mm、長 さ50mm)をモル タル 内(40Ⅹ40Ⅹ160mm) に埋設 し、モル タル試験片の外部 よ り鉄プ ローブを磁化 した後、残留磁化 をSQUID磁束 計で評価 した。鉄プローブを埋設 したモル タル試験片 に対 し、60℃のNaCl溶液 に3日 浸漬後60℃の乾燥器 中で4日乾燥 させ る腐食加速試験 を行 った。

モル タル 中に埋設 した鉄細線 は腐食試験170日後 も腐食 しなかった。鉄細線 とモル タ ル との密着性が高 く、周辺 に ミクロクラックが発生 しなかったため と考 えられた。また、

鉄線ではモル タルの湿潤 ・乾燥 に伴 う収縮 によって "逆磁歪効果"が起 こり、腐食 と無 関係 に残留磁化が周期的に変動 した。

鉄 めっき膜 をプローブ として使用 した場合、腐食試験 21日後 には残留磁化が約 1/4 に減少 した。破壊 して内部 を観察 した結果、プ ローブの鉄 めっき部が腐食 していた。同 様の腐食試験 を行 った鉄筋入 りモル タルで も21日後 に鉄筋に錆が発生 していた。鉄 め っきの膜厚 を10pmに して同様 の試験 を行 った ところ、残留磁化の絶対値が1pmの場合 に比べて大きくな り、モル タル 中の磁性不純物の影響が小 さくできた。一方、腐食試験 に対す る残留磁化の変化速度は小 さくなった。

以上の結果か ら、鉄筋の腐食環境 をモニタす るために鉄 めっき膜が適切であること、

めっき厚 さを変 えることによって、腐食環境 に対す る感度 を任意 に制御できる可能性が 示 された。

9

(12)

3. 磁性腐食 プロー ブの開発

3. 1 緒言

鉄は強磁性体であることか ら、キュ リー温度以下では比較的大きな残留磁化 を有 して いる。腐食 は金属鉄が酸化水酸化物 に転化す る反応 であるか ら、これが進行すれば磁気 的な性質 も変化す るはずである。磁気的な性質の変化は非接触で評価す ることができる ので、鉄の腐食 の進行度は磁気的に非接触で評価可能であると考 えられ る。 しか し、鉄 筋のよ うな肉厚材料 の場合 はその表面が多少腐食 しても、全体 としての残留磁化 に大 き な変化 は期待できない。鉄筋 コンク リー ト構造物では、直径 10mm以上ある鉄筋にお いても減肉率が 0.2%程度でかな り危険な状態 になると考え られているので、侵食深 さ に して 10‑20〃mに至 る前 に危険を察知できるシステムが必要である。以上のことを 鑑み、腐食 によって鉄部が容易に消失す るよ うな材料 として、鉄細線や鉄薄膜 を腐食 プ ローブの候補 として発案 した。これ らのプローブをモル タル 中に埋設すれば、その腐食 とともに外部か ら非接触でその進行 を評価 できる可能性がある。プローブを鉄筋 コンク リー トのかぶ り部 に埋設 しておけば、鉄筋の腐食 に先立ってかぶ り内部の環境劣化 を磁 気的に知 ることができると期待 され る。また、鉄細線 ではその周囲に形成 され る拡散層 の厚 さが小 さくなって、太い鉄筋 に比べて表面‑の酸素の拡散がよ ういになる効果 も期 待できる。ここでは、このよ うな磁性腐食プ ローブ として適切 な形状 を模索す るととも に、実際にモル タル 中に埋設 して腐食試験を行い、その腐食 とともに磁気的な性質が変 化す ることを、非接触で評価 できることを実証す ることを 目的 とした。

3. 2 実験方法

3. 2. 1 磁性腐食 プロー ブA

市販 の¢0.1mm鉄線(ニ ラコ製,99.5%)を100mmに切断 しそのまま用いた。

3. 2. 2 磁性腐食 プロー ブB

¢10×50mmの銅棒 をエ メ リ一紙#6/0番 まで研磨後、アセ トン中で超音波洗浄 した/. 次に銅棒の側面40mm (12.6cm2)を厚 さlpmになるよ うに鉄 めっきを施 したoめっき条 件 は以下の通 りである。323Kの0.9moldml3FeSO4+0.1moldm‑3FeC12+0.43moldm3

NH4Cl溶液 中、鉄線 を対極 として 0.1Acm2 秒間通電 した。銅棒の非 めっき部(4.7 cm2)は、腐食性環境 に さらされた際、ガルパニ ック効果 によって鉄 めっき部の腐食 を促 進す る可能性がある。このことは、このプローブの腐食環境 に対す る感度 を高めると期 待 され るので、あえて被覆 しなかった。プ ローブの外観 をFig.31に示す。

3. 早. 3 モルタル供試体

モル タルには、早強ポル トラン ドセメン ト (密度 :3.14g/cm3)お よび盛岡市黒川産 砕砂 (表乾密度 :2.86g/cm3) を使用 した。 これ らの混合割合 は、質量比でC:S=1:3 あるo鉄筋腐食 の促進 を意囲,.!Lて、練混ぜ水 には3・Omass%のNaCl溶液 を使用 し、水

10

(13)

Fig.3‑1 TheappearanceofprobeB

/ 40

/ /

⊂)

TD ⊂)⊂)

(a) (b)

Fig.3‑2Theconfigurationofthemagneticcorrosionprobeinmortar specimens・(a)probeA(ironwire),(b)probeB(ironplatedcopperrod).

セメン ト比を60%とした。モル タル供試体の寸法は4×4×16cmであ り、4×4cm 面か ら1cmの深 さの位置 に、Fig.3‑2のよ うに腐食 プ ローブお よび丸鋼 を埋設 した。

比較 として、鉄筋を腐食 させ ない場合の腐食プローブの残留磁化の変化を把握す るた め、NaClを添加 しない水 を用い、同一配合でモル タル供試体 を作製 した。供試体作製 後材齢 1日で脱型 し、その後 13日間、20℃の水 中で養生 して実験に供 した。

3. 2. 4 磁気計測

エナメル被覆導線(o5Jnm)Vを用いて直径 76mm、有効長 さ300mm、巻数 1800

ll

(14)

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II

Fig.3‑3Themeasurementsystem ofresidualmagnetizationofamagnetic corrosionprobeembeddedinmortaruslngaSQU旧 magnetometer.

Fig.3‑4AnexampleofFLLoutput.

(6000/m)の空芯 コイル を作 り、磁性腐食 プ ローブあるいは磁性腐食 プ ローブを埋設 したモル タル供試体 を磁化 した。供試体 を磁化 した直後、SQUID磁束計 を用いて供試 体の残留磁化 を測定 した。測声 装置の概要 をFig・3‑3に示す。磁性腐食 プ ローブあるい

12

(15)

は磁性腐食プローブを埋設 したモル タル供試体 を振幅 40mm、周期 1秒で振動 させ、

プ ローブか らでる Z軸方向の磁界を測定 した.FLLか ら出力 され る信号をオシロスコ ープで測定 した例 をFig.3‑4に示す。オシロスコープで観察 され るピークーピー ク電圧 は残留磁化に比例す ることか ら、この電圧 を残留磁化の相対評価 に用いた。なお左右振 幅装置の供試体 を置 く台の下に標準 コイル を取 り付 け、測定毎に標準 コイルか らの磁場 を測定 しSQUIDを校正 した。標準 コイル には、¢7mmX長 さ 100mmのガラス管に

¢0.5mmのエナメル被覆導線 を200回巻 き したものを用い、0.5Aの印加電流 を流 した。

モル タルに埋設 した位置や鉄 めっきの厚 さの違いによ り、残留磁化の絶対値 には、個 体差が生 じるoそ こで腐食環境 を与 えた供試体の残留磁化の値 (Jr) を、腐食環境に晒 す前の残留磁化 (J,o)で除 して、これ を相対残留磁化 (J/J,o)と称 し、これ を評価の対 象 とす ることに した。

Fig.315にプローブ Aお よびBに対す る印加磁化の大きさ(H)と残留磁化(i)の相対的 な大きさの関係 を示す.残留磁化はある基準値 (J,o)に対す る相対値で表 してお り、プ ローブ Aに対す る基準値は残留磁化がほぼ飽和す る5×103A m‑1で磁化 した ときの値 とした。一方、プ ローブ Bについては本装置で印加可能 な最大値である2.4×104Am'1 で磁化 した ときの値 を基準値 とした。これ らのデータに基づき、以後プローブ A は4.2

×103Am・1、プ ローブ Bは2.4×104Am‑1で磁化す ることとした。

uo!1t2Z!1auBelenP!SaJa^!tela 08641000 2000

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

Appliedfield,〃×104/Am1

Fi9.3‑5Therelationbetweenrelativeresidual

ma9netizationofmagneticcorrosionprobesandapplied fiek】onmagnetization.

13

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3. 2. 5 腐食試験

モル タル供試体 を、60℃の乾燥機 中で4日間、60℃の3%NaCl水溶液 中で3日間を 1サイ クル として、腐食環境 を与えた。浸演は、腐食 プローブまたは丸鋼 に最 も近い4

×4cm の面 とし、供試体 を縦置 きに した。開放面以外の 5面はポ リ塩化 ビニ リデ ン製 フイル ムで覆 った上に粘着テープで被覆 し、水分の逸散 を防いだ。乾燥機 内で もこのコ ーテ ィングを取 らず に、1面のみか ら乾燥 を与 え、ひび割れの発生を極力防いだ。ただ

し、一部の実験では全面か ら乾燥、塩水吸収 を行わせた。

3. 2. 6 鉄筋腐食の評価

鉄筋の腐食 は、鉄筋腐食面積率お よび鉄筋断面減少率によ り評価 した。鉄筋腐食面積 率 とは、鉄筋の表面積 に占める錆の面積割合であ り、腐食試験が終了 した供試体 を破壊 し、腐食鉄筋 を取 り出 した後、直ちに丸鋼表面の発錆部 を トレーシングペーパーに写 し 取 り、プラニメー ターを用いて測定 した。鉄筋断面減少率 とは、この腐食 した丸鋼 を1% の‑キサメチ レンラ トラミンを含む 3M HCl水溶液 中に浸漬 して腐食生成物 を完全 に 除去 して質量を測定 し、供試体に入れ る前の錆びていない丸鋼の値で除 して求めたもの である。

3. 3 結果および考察

3. 3. 1 プロー ブA (鉄細線)

は じめに鉄線 (¢0.1mm、長 さ100mm)を大気 中で 自然腐食 させ、適 当な侵食度 に 至った ものを複数選び、電気抵抗 と残留磁化 を評価 した。腐食 していない鉄線 と腐食 し た鉄線の外観 の例 を Fig.3‑6に示す。腐食 させていない鉄線 に対す る残留磁化扶o)と電 気抵抗(Ro)の測定値 に対す る相対値 (それぞれJ,/J,oお よびR/Ro)を示 した.腐食が均 一に進行す ると仮定す ると、鉄線の腐食進行率(vcr,/V)は次式で表 され る。

≡∃

100Im

Fig.3‑6Opticalmicroscopic・picturesforprobeAbefore(le什)anda冊ercorrosion.

14

(17)

α: iiq i=:α: ii;

1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0

+

.

.

.

+

, i ‑ : ; f a i l e d p r o b e s

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

1‑Ro/R

Fig.3‑7TherelationbetweenJr/Jroandl尺o/尺brthe magneticcorrosionprobeAwithprogressofcorrosion underatmosphericcondition.

vcr,/V‑1‑Ro/R (31)

そ こで、Jr/J,Oを1Ro/Rの関数 として整理 した結果 をFig.37に示すoこのプロッ トは 期待 した とお りの直線関係 にはな らなかったが、鉄線の腐食 の進行度 と残留磁化 の減少 挙動 には明 らかな相関が認 め られた。これ らの関係 が明確 な直線 とな らなかった理 由は、

腐食が必ず しも一様 に進行せず、局部的に進行 していた ことが挙げ られ る。特に一部の 鉄線 は腐食が一部 に集 中 して破 断にいた り、電気抵抗が無限大 となったにもかかわ らず、

明 らかに金属鉄部が残存 Lr,残留磁化 を与 えていたo

次 に、このプ ローブA3%NaCl水溶液 を練 り水 として作成 したモル タル に埋設 し、

2週間養生 した。 この時点でプローブを含むモルタル供試体 を5×103Am.1で磁化 し、

残留磁化 を測定 した。 この値 を初期値 (Jro)とした。Fig.3‑8には乾湿繰 り返 しによる 腐食加速試験に伴 うプローブ埋設モル タル供試体の残留磁化 の経時変化 を示す。データ にば らつきが大きいのは、後述す るよ うにモル タルの含水量によって歪みが異なるため であると考 えられ る。腐食サイ クル試験においてモル タル供試体が乾燥状態 にあるとき に測定 した点を白抜 きで、湿潤状態にあるときに測定 した点を塗 りつぶ しのプ ロッ トで 示 した。明 らかにモル タルが湿潤状態 にあるときに残留磁化が大き くなっている。一方、

湿潤状態で測定 した ときの残留磁化は、湿潤状態に比べて半分程度であった。このよ う に、プローブAの残留磁化は腐食 の進行 とい うよ りもモル タルが乾燥状態にあるか湿潤 状態にあるかによって大き く変化 した。60日間の腐食試験後 にモル タル供試体 を切断

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(18)

0 20 40 60 80 100 120 Time,t/day

Fi9.3‑8Changeinresidualma9netization(Jr/Jro)ofthemagnetic corrosionprobeAembeddedinmortar.Themortarspecimenwas subjectedtocorrosiontestthatconsistedofsoakingin3% NaCIsolution at333Kfor3daysanddryinglnairat333Kfor4days.

0.1mm

Fig.3‑9CrosssectionoftheprobeAembeddedin mortarafter60daysofcorrosiontest.

<

/

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0.8 0 0・6

、∝)

1 0.4

0.2 0

0 100 200 300

Apph'edstress,J/Nmm‑2

Fig.3110ThedecreaseinresidualmagnetizationoftheprobeA embeddedinmortarwithcompression.

し、断面を観察 した結果(Fig.3‑9)、プローブに腐食 の跡 は認 め られなかった。またプ ロ ーブである鉄細線 の周囲には全 くクラックや剥離部が認 め られ なかった。一方、後述す るよ うに同様 に腐食試験 を行 った鉄棒では、60日程度で明瞭な腐食 が認 め られた。鉄 細線ではモル タル との密着性が高いために、その周辺 に酸素や塩化物の侵入経路が形成

されず、ほ とん ど腐食が進行 しなかったもの と推定 され る。

残留磁化がプ ローブの腐食ではな く、モル タル の乾燥度 に依存 していた理 由 として、

乾燥 に伴 うモル タルの収縮 によってプ ローブが歪んだ ことが考 えられたため、歪みの影 響 について検討 した。すなわち、湿潤状態 にあるモル タル供試体に対 して磁化操作を行 った後、プローブの軸 と同 じ方 向に圧縮応力 を印加 した。応力 を解放 してか ら直ちに残 留磁化 を評価 した。このよ うに して測定 した残留磁化 を圧縮応力の関数 としてFig.3‑10 に示す。モル タルが湿潤状態であるにも関わ らず、圧縮 され ることで残留磁化 は明 らか に減少 した。モル タルの弾性係数 を2Ⅹ105N mm.2と仮定す ると、応力100N mm‑2 5Ⅹ104程度の歪みが生 じていると推定 され る。

次 にプローブ A を埋設 したモル タル供試体を乾燥器 中で乾燥 させ、質量の減少割合 と残留磁化の変化の関係 を調べた。結果 をFig.3111に示す.残留磁化は乾燥 による質 量減少 とともに減少 した。乾燥 によるモル タル内に歪みは一様ではない と推測 され るが、

みかけの歪みは、50gの質量減少 に対 して 1Ⅹ104以上 (プ ローブの長軸方向)である ことが確認 された。 このよう,匿、Fig.3‑8において残留磁化が大き く変動 したのは腐食

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0 10 20 30 40 50 Am /g

Fig.3111ThedecreaseinresidualmagnetizationoftheprobeA embeddedinmoharwithmassLossbydrying.

によるのではなく、湿潤 と乾燥に伴 うモル タルの歪みに起因す る、いわゆる逆磁歪効果 によることが明 らか となった。

このよ うにプローブ Aには実用上二つの問題点がある。ひ とつはこのプローブのモ ルタル‑の密着性が高 く、鉄棒では発鏡 している腐食条件下でも腐食が生 じていなかっ たことである。もうひ とつは、このプローブの残留磁化がモルタルの含水量の変化に伴

う歪みに大きく影響 されることである。

3. 3. 2 プローブB

上述 したプローブAの課題 を克服す るため、鉄薄膜型のプローブ Bを考案 した。本プ ローブは銅棒の周 りに鉄めっきしたものなので、太 さが鉄筋 と同等である。したがって、

モルタル との界面の条件が鉄筋に近いもの と期待 され る。しか しなが ら、鉄 めっきした 銅棒の残留磁化は非常に不安定であ り、めっき後約2週間にわたって残留磁化が減少 し ていったo この様子をFig.3‑12に示す。 この理由は明確でないが、めっき時に生 じた 歪みが徐々に緩和 されてい くためと推定 され る。そこで、今後の実験ではめっきしてか ら2週間以上放置 したプローブの残留磁化を初期値̲(Jro)として採用 し、それ以降に腐食 試験を行 うこととした。なお、2週間以上放置 して残留磁化が安定 したプローブについ て、歪みの影響を調べた結果、104程度歪ませてもほ とん ど残留磁化は変化 しないこと

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uo!Tez!1au6eLu一enP!SaJa^!tela 086100 420000

0 5 10 15 20 25 30 35 40 Time,t/day

Fig.3‑12TheinitialchangeinresidualmagnetizationofprobeB.

Fig.3‑13TheappearancesoftheprobeBsufferedfromatmosphericcorrosion.

を確認 した。

プローブBに対す る最初の腐食試験は大気 中で行 った。腐食 したプ ローブ Bの例 を Fig.3113に示すo プ ローブの腐食 に伴 う質量増加Am と残留磁化(JT /Jro)の関係 を Fig.3‑14に示す。腐食の進行 とともに残留磁化は減少 した。腐食生成物 をFeOOHと仮 定す ると、腐食率は次式で表 され る。

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表 1 磁気計測に基づ く腐食モニタ リングの考 え方 磁気の ソース 測定領域 適用 荷考 肉食電流 空間 全面腐食局部腐食 腐食電流は通常時間で変化現場‑の適用はかな り困難空間分解能が低い吐気が微弱 ( 発生 しない ?) 時間 非定常的な腐食 (局部腐食) 特 に れ る 食場所が予想で きる場合 に限 ら 渦電流 空間 腐食孔な ど 空間分解能が低い 6

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