4. 1 緒言
前章ではモル タル内の腐食環境 を非破壊で評価できる磁性腐食プ ローブを提案 し、鉄 めっき膜が有望であることを明 らかに した。本章では、磁性腐食プローブの性能 を向上 させ るために更なる改良を試み る。前章では鉄 めっき膜の厚 さを1〝mとしたが、この 厚 さでは比較的短期間の間にプローブの腐食が進行 して しまい、よ り長期的な腐食環境 変化 に対応できない問題がある。まためっき厚 さが薄い と腐食環境 に対す る感度 は高 く なるが、残留磁化 の絶対値 も小 さいため、SQUID計測において環境 ノイズ対策が必要
となる可能性がある。めっき厚 を厚 くす ると、腐食 に伴 う残留磁化の変化率は小 さくな るが、残留磁化の絶対値は大き くな り、計測 も容易になる。 しか しなが らめっき厚 を大 きくす るとめっき内の歪み も大きくな り、残留磁化の安定性 な ど、新たに検討 しなけれ ばな らない問題 も生 じて くる可能性 がある。本章では 10〃mの鉄めっき膜 について、
残留磁化の安定性 とモル タル内の腐食環境 に対す る応答性 について検討 した。
4. 2 実験方法
4. 2. 1 磁性腐食 プロー ブ
4.1. 2で述べたの と同様 に、¢10×50mmの銅棒 をェメ リー紙#6/0番 まで研磨 後、アセ トン中で超音波洗浄 した。次に銅棒の側面40mm (12.6cm2)を厚 さ10〃mにな るよ うに鉄 めっきを施 した。3.2.1で行 っためっきをさらに改良す るため、Table4‑1 に示す よ うに添加剤 としてチオ尿素お よびサ ッカ リンを用いた。
4. 2. 2 モルタル供試体
3. 2. 3で述べた方法 と同様 に して調製 した。
4. 2. 3 磁気計測
3. 2. 4で述べた方法 と同様 に して供試体の残留磁化 を計測 した。
4. 2. 4 腐食試験
3. 2. 5で述べた方法 と同様 に して腐食試験 を行 った。
4. 2. 5 鉄筋腐食の評価
3. 2. 6で述べた方法 と同様 に して鉄筋の腐食評価 を行った。
4. 3 結果および考察 4. 3. 1 残留磁化の安定性
3.2.1で述べた方法で鉄 めっき厚 さ10LLmのプローブを調製 し、その残留磁化の 安定性 について検討 したoその結果 をFig.4‑1に示すoFig.3112の場合 と同様、めっき 直後のプローブは比較的大きな残留磁化を示すが、錆が生 じないよ うに真空デシケータ
28
1.0
0.8
05 0・6
<
0
.
40.2
0 . 0
0
5 10 15 20 25 30Time
( d a y )
Fig,4‑1Thestabilityofresidualmagnetizationofthe10LIm iron probeplatedconventionally.
1.0 0.8
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40.2
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0 10 20 30 40 50
Time
( d a y )
Fig・412Thestabilityofresidualmagnetizationofthe10LLm ironprobe platedwiththiourea.
中に保管 してお くだけで残留磁化 は徐 々に減少 していった。めっき時の歪みが関係 して い ると考え、めっき時に硫黄系化合物 を添加す ることを試みた。チオ尿素を添加 してめ っき したプ ローブの残留磁化の安定性 を調べた結果 をFig.4‑2に示す。チオ尿素添加 は
29
8765432」0000000000
olrJJr
20 40 60 80 100 120 140
Time(day)
Fig.4‑3 ThestabilityofresidualmagnetizationofthelOトImiron probeplatedwithsaccharh・
1.0
0.8
く つ 0 . 6 5 ち 0 . 4
0.2
0.0
9◆
‑aSPlatedHeattreatat100oC
̲ t ̲ ■
■ ■■ t ■
・
▲
」 一 ▲ ▲▲
0 5 10 15 20 25
Time(day)
Fig.4‑4E飴ctofheattreatmentonthestabilityofresidualmagnetization ofironprobeplatedwithsaccharin・
残留磁化の安定性 にほ とん ど影響 しなかった。次にサ ッカ リンを添加 したプ ローブの残 留磁化の安定性 を調べた結果 をFig.4‑3に示す。サ ッカ リンを添加 してめっき したプ ロ
■ 1<
30
‑ブは、添加 しない場合 よ りも残留磁化が安定 していた。しか しなが らこれだけでは長 期間にわたる安定性 を十分維持できなかった。そ こで、サ ッカ リンを添加 してめっき し たプローブを熱処理す ることとした。Fig.414は熱処理 したプ ローブの残留磁化 を、熱 処理前の値 と比較 して調べた結果 を示 している。熱処理 によってプ ローブの残留磁化は 低下す るが、150℃ と 200℃ではほ とん ど差がなかった。100℃で熱処理 したプ ローブ も残留磁化が安定 していたが、高温で さらに残留磁化が低下 しうることを考 えると、腐 食以外の変動因子 を抱 えていることになる。結局、以後の実験では150℃で熱処理 した プ ローブを採用す ることとした。
▲ #1
●
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I0 20 40 60 80 100 120 140
Time,t/day
Fig・4‑5Timevariationofrelativeresidualmagnetization(J/Jro)ofthreemortar specimenswithmagneticcVorrrosionprobeembedded.
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Fig.4‑6Surfaceappearancesofthreeprobesa洗er134dayscorrosiontest. Left:asstriped,right:a丑erscrape
4. 3. 2 プロー ブを埋設 したモルタルに対する腐食試験結果
は じめにモル タル 自体の残留磁化 と腐食前のプ ローブの残留磁化の大き さを比較 し た ところ、モル タルの残留磁化 はプ ローブの残留磁化の24%にあたることがわかった。
めっき厚が lLtmの ときはモル タルの残留磁化の寄与が 200%であったことか ら、めっ き厚 を10Ltmに したことによってプ ローブの残留磁化の絶対値が大きくな り、相対的に モル タルの影響 を小 さくできた ことになる。そのためここでは、モル タルに起因す る残 留磁化の補正 を特に行わなかった。
厚 さ 10LLm の鉄 めっきを施 した磁性腐食プ ローブを埋設 したモル タル供試体 を3体 調製 し、腐食試験を行 った。相対残留磁化の経時変化 を■ Fig.4‑5に示す。3つの供 グラ
1/
32
フは同一条件での実験結果であるが、供試体#1と#2では残留磁化の減少が穏やかであ ったのに対 し、#3では他 の2つに比べてやや大きな減少速度 を示 した。134日経過後 に全ての供試体 を破壊 して内部 を観察 した。その様子 をFig.416に示す。いずれ も表面 は腐食生成物で覆 われ変色 していたが、さらに錆層 を丁寧に掻 き落 としてみると供試体
#1と2ではかな り金属鉄屑が残存 していたのに対 し、供試体#3では金属鉄屑があま り 残存 していなかった。このよ うに、腐食 の進行度にば らつきがでたが、残留磁化の減少 傾 向 と腐食の進行度 との間には良好 な相関が認 め られた。
4. 3. 3 鉄筋 を埋設 したモルタルに対する腐食試験結果
鉄筋 を埋設 したモルタル供帯体に対す る腐食試験は、3.3.5ですでに検討 したが、
鉄 めっき厚 10rLmのプ ローブを開発す るに当たって、その腐食試験 と同時に改めて鉄筋 の腐食試験を行 った。試験期間は3. 3. 5で行 った期 間の約2倍 に当たる 128日間 まで とした。FigA‑7お よび Fig.4‑8にはそれぞれ腐食面積率 と断面積減少率の経時変 化 を示す。また、Fig.4‑9にはそれぞれ腐食試験開始後41日、58日、79日お よび126
日目に取 り出 した鉄筋の外観 を示す。腐食試験開始か ら約30日経過までほ とん ど腐食 は観察 されなかったが、その後腐食面積率お よび断面積減少率 とも急激な増加 を示 した。
このことか ら、は じめの30日程度は誘導期 と位置づ けられ、その後進展期 に移行 した と考 えられ る。特に100日以降の腐食進展が著 しいのは、ある程度腐食が進行す ると、
微細なクラックの成長な どによって塩化物イオン、水お よび酸素の侵入が容易 になって い くため と推定 され る。
ところでFig.4‑5に示 した3体のモル タル供試体の残留磁化の経時変化の うち、#1 と#2はほぼ同様の変化 を示 したが,,#3のプ ローブでは残留磁化の低下が他の2つに 比べて大きかった。そ こで鉄筋の腐食挙動 と残留磁化 の変化 との関係 は、# 1と#3の 2つのプローブについて解析す ることに した.また、3. 3. 3で述べた厚 さ1LLmの プローブに対す る結果 も併せて、残留磁化の変化 と鉄筋の腐食挙動 (平均断面積減少率、
お よび腐食面積率)との関係 をFig.4‑10お よびFig.4‑11にま とめた。めっき厚 さが1LLm のプ ローブ と10LLm のプ ローブ とを比較す ると、残留磁化の減少率が等 しい場合二め っき厚が大きい方が鉄筋の腐食進展度はよ り高い といえる。しか し、特に#3のプ ロー ブの事例のよ うに、異常に早 く残留磁化が減少 した例 もあ り、プ ローブの残留磁化の変 化率 と腐食進行度 を定量的に関連づ けるには至 らなかった。実際の評価 は安全側 に用い るべ きであるか ら、# 1や#2での態 果 を重視 し、プ ローブの残留磁化の減少率が例 え ば0.2であって も、鉄筋の腐食面積率では16%、断面積減少率では0.35%程度 に達 して いる可能性があるとみ るべきであろ う。
33
(%)eaJePaPOヒ03(%)eaJeleuO!)9aS・SSOL9u!uO葛nPaJluaJeddv
0
05
4 0032 0■■ll042186100 420000 20 40 60
8 0
100 120 140T i me ,I / d a y
Fig.4‑7Increaseincorrodedareaf♭rironbarwithtime・
0 20 40 60 80 100 120 140
T i me ,∫ / d a y
Fig.4‑8Increaseinapparentreductioninareafb∫ironbarwithtime.
34
‑ .l t ‑ ‑
W ‑‑Fig.419Surfaceappearancesofironbarsa洗erdifferentperiodsofcorrosiontest.
35
000642
(%)e
a
Lt2PaPOLLOO0.0 02 04 06 08 1.0
1‑J/LP
Fig.4‑10Therelationbetween(1一項 o)andratioof corrodedareaf♭rironbar.
505000
(%)EZaLerE2uO!1DaS‑SSOLDu!uO!)DnPaJluaJCddv
0.0 0.2 0.4 06 08 10
1‑J/Jo
Fig・4‑11Therelationbetween(1一項 o)andapparent reductionincross‑sectionalareaf♭rironbar.
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4. 4 まとめ
めっき したままのプ ローブは、時間 とともに腐食 とは無関係 に急速 に残留磁化が減少 し、安定まで約2週間を要 したが、150℃で熱処理す ることによ り残留磁化 は速やかに 安定性 した。このプ ローブをモル タルに埋設 して腐食加速試験 を行 った結果鉄 めっきを 厚 1〃.m とした以前の結果 と比べ、めっき厚 さを10〃m としたことで残留磁化の減少 速度が遅 くな り、Jr/Jroと鉄筋の腐食進展度 との対応範囲を広 げることができた. しか し、供試体 ごとに残留磁化 の減少挙動 にかな りのば らつきがあったことが課題 として挙 げ られ る。
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