魚肉冷凍すり身の
坐りおよび戻り反応に関する研究
日 本 大 学 大 学 院 生 物 資 源 科 学 研 究 科 生 物 資 源 利 用 科 学 専 攻 博 士 後 期 課 程
山 田 晃 樹
2020
I
目 次
第 1 章 緒 言 ... 1
第 2 章 各 種 冷 凍 す り 身 の 一 般 成 分 お よ び 加 熱 ゲ ル 形 成 に 及 ぼ す 坐 り 反 応 6 2. 1. 各 種 冷 凍 す り 身 の 一 般 成 分 測 定 ... 8
2. 1. 1. 試 料 お よ び 方 法 ... 8
2. 1. 2. 結 果 ... 10
2. 2. 加 熱 ゲ ル 形 成 に 及 ぼ す 坐 り 反 応 ... 14
2. 2. 1. 方 法 ... 14
2. 2. 2. 結 果 ... 16
2. 3. 考 察 ... 18
第 3 章 坐 り 反 応 を 用 い た 各 種 冷 凍 す り 身 の 品 質 評 価 ... 19
3. 1. 坐 り 反 応 ゲ ル の 破 断 強 度 測 定 ... 20
3. 1. 1. 試 料 お よ び 方 法 ... 20
3. 1. 2. 結 果 ... 21
3. 2. 坐 り 速 度 解 析 ... 29
3. 2. 1. 方 法 ... 29
3. 2. 2. 結 果 ... 29
3. 3. 坐 り 反 応 の 活 性 化 エ ネ ル ギ ー 測 定... 31
3. 3. 1. 方 法 ... 31
3. 3. 2. 結 果 ... 31
3. 4. 考 察 ... 34
第 4 章 各 種 冷 凍 す り 身 の 戻 り 反 応 に 関 与 す る プ ロ テ ア ー ゼ の 特 定 ... 35
4. 1. 戻 り 反 応 ゲ ル の 破 断 強 度 測 定 ... 36
4. 1. 1. 試 料 お よ び 方 法 ... 36
4. 1. 2. 結 果 ... 36
II
4. 2. プ ロ テ ア ー ゼ イ ン ヒ ビ タ ー 添 加 戻 り 反 応 ゲ ル の SDS-PAGE に よ る
構 成 タ ン パ ク 質 の 観 察 ... 39
4. 2. 1. 試 料 お よ び 方 法 ... 39
4. 2. 2. 結 果 ... 41
4. 3. ミ オ シ ン 率 の 解 析 に よ る 戻 り 反 応 に 関 与 す る プ ロ テ ア ー ゼ の 特 定55 4. 3. 1. 方 法 ... 55
4. 3. 2. 結 果 ... 55
4. 4. 考 察 ... 61
第 5 章 総 括 ... 62
謝 辞 ... 65
参 考 文 献 ... 66
1 第 1 章 緒 言
「 か ま ぼ こ 」 や 「 ち く わ 」 に 代 表 さ れ る 魚 肉 練 り 製 品 は 、 魚 肉 タ ン パ ク 質 の 特 性 を 活 か し た 日 本 の 伝 統 的 な 加 工 食 品 で あ る 1 )。 そ の 主 原 料 と な る 冷 凍 す り 身 は 、 変 性 し や す い 魚 肉 の 長 期 保 管 を 目 的 に 開 発 さ れ た 中 間 製 品 で 、 現 在 多 く の 魚 種 か ら 様 々 な 等 級 の 冷 凍 す り 身 が 製 造 ・ 販 売 さ れ て い る 。 冷 凍 す り 身 の 国 内 の 年 間 生 産 量 は 約 40,000 t で あ る の に 対 し 、 年 間 輸 入 量 は 約 300,000 t と 、 世 界 で 漁 獲 さ れ る 魚 種 を 原 料 に し た 冷 凍 す り 身 が 国 内 で 広 く 利 用 さ れ て い る (2016 年 )2 )。 海 外 で は 冷 凍 す り 身 の 製 造 に 留 ま ら ず 健 康 志 向 の 高 ま り に 伴 い 、 近 年 カ ニ か ま を 中 心 に し て 「 か ま ぼ こ 」 の 生 産 量 な ら び に 消 費 量 が 増 加 し て い る 。 一 方 、 日 本 国 内 の 水 産 練 り 製 品 の 生 産 量 は 減 少 傾 向 に あ る が 、 食 品 加 工 品 生 産 量 の 加 工 種 類 別 構 成 割 合 で 32.3% ( 平 成 29 年 ) と 、 未 だ に 水 産 加 工 品 の 中 で 最 も 高 い 割 合 を 占 め て お り 、 重 要 な 産 業 で あ る
3 )。
ス ケ ト ウ ダ ラ は 冷 凍 保 存 中 に 、 エ キ ス 成 分 の 1 つ で あ る ト リ メ チ ル ア ミ ン オ キ サ イ ド (TMAO) が 分 解 し て ホ ル マ リ ン を 生 成 す る 。 こ れ に よ り タ ン パ ク 質 が 著 し く 変 性 す る た め 、 魚 体 の ま ま で は 長 期 冷 凍 保 存 が 難 し い 魚 種 で あ る 。冷 凍 す り 身 は 、そ う し た ス ケ ト ウ ダ ラ 魚 肉 の 長 期 保 存 を 目 的 に 1960 年 に 開 発 さ れ た 4 - 6 )。冷 凍 す り 身 の 製 造 工 程 に は「 水 晒 し 」と い う 工 程 が あ る 。こ の 工 程 で は 、水 溶 性 の TMAO な ら び に こ れ を 分 解 す る プ ロ テ ア ー ゼ の 大 部 分 が 除 か れ る た め 、 タ ン パ ク 質 変 性 が 起 こ り に く く な る 7 )。 ま た 、 冷 凍 す り 身 に は 、 ス ク ロ ー ス や ソ ル ビ ト ー ル な ど の 糖 類 や 重 合 リ ン 酸 塩 が 冷 凍 変 性 防 止 剤 や pH 調 整 剤 と し て 添 加 さ れ て い る 。 こ れ に よ っ て 、 魚 肉 タ ン パ ク 質 を 未 変 性 の ま ま 長 期 保 存 す る こ と が 可 能 と な り 、 例 え ば 一 年 間 以 上 貯 蔵 し た 冷 凍 す り 身 で あ っ て も 、ゲ ル 物 性 に 優 れ る 魚 肉 練 り 製 品 の 製 造 が 可 能 に な っ た 8 , 9 )。
魚 肉 練 り 製 品 に は 特 有 の 弾 力 や し な や か さ が あ り 、 そ う し た 物 性 は 「 足 」
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と 呼 ば れ て い る 。 足 の 発 現 に は 、 魚 肉 の 主 要 構 成 タ ン パ ク 質 で あ る ミ オ シ ン が 必 要 不 可 欠 で あ り 、 本 タ ン パ ク 質 を 主 体 と す る 網 目 構 造 の 形 成 が 関 係 し て い る 。ま た 、魚 肉 練 り 製 品 の 物 性 は 加 熱 履 歴 に よ っ て も 大 き く 影 響 を 受 け る 。 特 に 、 魚 肉 練 り 製 品 の 物 性 発 現 に と っ て 「 坐 り 」 と 「 戻 り 」 反 応 を 把 握 す る こ と は 重 要 で あ る 。
坐 り 反 応 は 20~40oC の 温 度 域 で 生 じ る 現 象 で 、 魚 肉 中 に 存 在 す る ト ラ ン ス グ ル タ ミ ナ ー ゼ に よ り ミ オ シ ン 分 子 間 に 共 有 結 合 か ら な る 架 橋 が 生 じ 、 ゲ ル 構 造 が 増 強 す る 反 応 で あ る 1 0 - 1 2 )。こ の 反 応 の 強 弱 は 、魚 種 や 生 息 域 、 季 節 な ど に よ る ミ オ シ ン の 性 状 の 違 い や 、pH、塩 分 量 な ど に よ っ て 大 き く 左 右 さ
れ る 1 3 - 2 0 )。魚 類 の 内 在 性 ト ラ ン ス グ ル タ ミ ナ ー ゼ は 、イ ト ヨ リ ダ イ や シ ロ グ
チ 、 マ ダ イ な ど 数 種 の 魚 類 組 織 か ら 精 製 さ れ て そ の 特 性 が 調 べ ら れ 、 魚 卵 の 卵 膜 硬 化 や 、筋 肉 タ ン パ ク 質 の 架 橋 結 合 を 促 進 す る こ と が 報 告 さ れ て い る 2 1 -
2 3 )。 本 酵 素 は 水 溶 性 タ ン パ ク 質 で あ る が 、 水 晒 し の 工 程 で 完 全 に 除 か れ る こ
と は 無 く 、 す り 身 の 坐 り 反 応 に 関 与 す る 2 4 )。
魚 肉 練 り 製 品 の 衛 生 面 で の 管 理 に は 、HACCP な ど の 衛 生 管 理 シ ス テ ム が 導 入 さ れ て い る 2 5 )。そ の 一 方 で 、冷 凍 す り 身 の 品 質 に 基 づ く 等 級 分 け の 基 準 は 明 確 に は 定 め ら お ら ず 、 品 質 面 の 管 理 は 未 だ 不 充 分 で あ る 。 現 状 で は 、 製 品 の 一 部 を 取 り 出 し て 加 熱 ゲ ル を 作 製 し 、 そ の 物 性 か ら 等 級 を 決 定 す る な ど 、 製 造 業 者 が 独 自 の 基 準 で 品 質 を 評 価 し て い る 。
そ こ で 本 研 究 で は 、 ま ず 魚 肉 冷 凍 す り 身 に 特 有 の 現 象 で あ る 坐 り 反 応 に 着 目 し 、 食 品 工 学 的 手 法 に よ る 解 析 を 試 み た 。Katoh ら は 本 手 法 を 用 い て ス ケ ト ウ ダ ラ 、 シ ロ グ チ お よ び テ ィ ラ ピ ア 冷 凍 す り 身 の 品 質 の 差 を 数 値 化 し て い
る が 2 6 )、 同 魚 種 の 等 級 間 で 差 を 示 せ る か は 不 明 で あ る 。 本 研 究 で は 、市 販 の
ス ケ ト ウ ダ ラ 、 ホ キ お よ び イ ト ヨ リ ダ イ の 異 な る 等 級 の 冷 凍 す り 身 を 比 較 対 象 と し た 。ス ケ ト ウ ダ ラ( 学 名:Gadus chalcogrammus、英 名:Alaska pollack) は タ ラ 目 タ ラ 科 に 属 し 、 北 太 平 洋 に 生 息 す る 冷 水 性 の 魚 類 で あ る 。 そ の 資 源
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量 は 非 常 に 多 く 、 す り 身 原 料 と し て 世 界 最 大 で 、 最 も す り 身 に 関 す る 研 究 が 進 ん で い る 魚 種 で も あ る 。 ス ケ ト ウ ダ ラ す り 身 の 坐 り 反 応 は 長 時 間 を 要 す る が 、20oC で 最 も 高 い 破 断 強 度 に な り 、 次 い で 30oC で 破 断 強 度 が 高 く な る と 報 告 さ れ て い る 2 7 - 3 3 )。 ホ キ ( 学 名 :Macruronus novaezelandiae、 英 名 :Blue grenadier) は 、 タ ラ 目 メ ル ル ー サ 科 に 属 す る ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド な ど の 南 半 球 に 生 息 す る 冷 水 性 の 魚 類 で あ る 。ホ キ す り 身 は 、30oC ま で は 破 断 強 度 が 増 加 す る が 、40oC 以 上 に な る と ゲ ル 構 造 が 崩 壊 し 始 め る 。ホ キ 冷 凍 す り 身 は 、ス ケ ト ウ ダ ラ す り 身 と 似 た 特 性 を 持 つ が 、 戻 り 反 応 が 起 こ り に く い と い う 特 徴 が あ る 3 4 )。イ ト ヨ リ ダ イ( 学 名:Nemipterus vigatus、英 名:Threadfin bream) は 、 ス ズ キ 目 イ ト ヨ リ 科 に 属 す る 温 熱 帯 海 域 に 生 息 す る 魚 種 で あ る 。 東 南 ア ジ ア で は 昔 か ら イ ト ヨ リ ダ イ を 原 料 に し た フ ィ ッ シ ュ ボ ー ル が 生 産 さ れ て い る 。イ ト ヨ リ ダ イ す り 身 は 、10oCだ と 坐 り 反 応 が そ れ ほ ど 起 き ず 、20oC に な っ て か ら 坐 り 反 応 が 起 き る 。 そ の 坐 り の 至 適 温 度 は 37~38oC に あ る と さ れ て い る 。 ま た 、 イ ト ヨ リ ダ イ す り 身 は 冷 水 性 の 魚 類 よ り も 、 高 温 度 加 熱 に よ る 劣 化 耐 性 が 高 い 3 5 , 3 6 )。本 研 究 で は こ れ ら 3 魚 種 の 市 販 さ れ て い る 数 種 冷 凍 す り 身 を 用 い た 。 各 冷 凍 す り 身 に つ き 、 坐 り 反 応 中 の 破 断 強 度 の 変 化 か ら 坐 り 速 度 を 求 め 、 さ ら に 坐 り 反 応 の 活 性 エ ネ ル ギ ー を 算 出 し 、 こ れ が 魚 種 間 な ら び に 等 級 間 の 品 質 の 差 を 表 す 指 標 と な る か を 検 討 し た 。
一 方 、戻 り 反 応 は 50~70oC の 温 度 域 で 、ゲ ル 構 造 が 脆 弱 化 す る 反 応 で 、複 数 の 内 在 性 プ ロ テ ア ー ゼ が 温 度 依 存 的 に 働 く た め だ と 推 察 さ れ て い る 。 こ の 反 応 が 進 む と 坐 り 反 応 に よ り 形 成 さ れ た ゲ ル が 崩 壊 す る 。 戻 り 反 応 は 、 酵 素 反 応 に 起 因 す る こ と か ら 反 応 温 度 と 時 間 に 大 き く 影 響 を 受 け 、 そ れ ら は 魚 種 や す り 身 の 等 級 に よ っ て 異 な る 3 7 - 4 4 )。 例 え ば 、 比 較 的 低 温 度 で あ る 40oC 程 度 で も 反 応 を 起 こ す 魚 種 ( ス ケ ト ウ ダ ラ 、 ホ キ な ど ) も い る 4 5 )。 戻 り 反 応 に は 、 カ テ プ シ ン Bや カ テ プ シ ン L、 カ テ プ シ ン B 様 酵 素 、 筋 原 線 維 結 合 型 セ リ ン プ ロ テ ア ー ゼ な ど 複 数 の プ ロ テ ア ー ゼ が 関 与 す る と 報 告 さ れ て お り 、 こ
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れ ら は Modori-inducing protease(MIP) と 総 称 さ れ る 4 6 - 4 8 )。
実 際 の 冷 凍 す り 身 の 製 造 工 程 で は 、 採 肉 し た ミ ン チ 肉 を 多 量 の 水 で 複 数 回 洗 浄 す る 水 晒 し 工 程 が あ り 、 筋 原 線 維 結 合 型 セ リ ン プ ロ テ ア ー ゼ 以 外 の プ ロ テ ア ー ゼ は 、 こ の 工 程 で そ の ほ と ん ど が 除 去 さ れ る 。 し た が っ て 、 戻 り 反 応 に 関 与 し て い る の は 主 と し て 筋 原 線 維 結 合 型 セ リ ン プ ロ テ ア ー ゼ と 考 え ら れ て お り 、 コ イ や シ ロ グ チ 、 ヨ ー ロ ッ パ ブ ナ 、 ワ ニ エ ソ な ど の 魚 種 で 、 そ の 構 造 や 特 性 が 研 究 さ れ て い る 4 9 - 5 2 )。一 方 、筋 原 線 維 結 合 型 セ リ ン プ ロ テ ア ー ゼ が 高 い 活 性 を 示 さ な い 魚 種 も 報 告 さ れ て い る 5 3 )。ま た 、そ の 他 の プ ロ テ ア ー ゼ に も 種 特 異 性 が 認 め ら れ て い る 。 例 え ば 、 メ タ ロ プ ロ テ ア ー ゼ は 、 魚 類 で は コ ラ ー ゲ ン を 分 解 す る の が 一 般 的 で あ る が 5 4 , 5 5 )、イ ト ヨ リ ダ イ や マ ダ イ で は 、 メ タ ロ プ ロ テ ア ー ゼ の 活 性 が 高 く 、 筋 原 線 維 タ ン パ ク 質 を 分 解 す る 戻 り 反 応 に 関 与 し て い る と 示 唆 さ れ て い る 5 6 )。魚 類 以 外 の 水 産 物 で は 、イ カ 筋 肉 で ミ オ シ ン を 分 解 す る Astacin-like squid metalloprotease(ALSM) と い う イ カ 類 に 特 異 的 な の プ ロ テ ア ー ゼ の 存 在 と 、 そ の 特 性 が 報 告 さ れ て い る 5 7 - 6 0 )。
本 研 究 で は 、 魚 肉 冷 凍 す り 身 に 特 有 の 現 象 で あ る 戻 り 反 応 に も 着 目 し 、 従 来 か ら 報 告 さ れ て い る 魚 種 間 の 違 い に 加 え 、 等 級 間 で の 戻 り 反 応 の 違 い と プ ロ テ ア ー ゼ の 関 係 を 明 ら か に す る こ と を 試 み た 。 こ こ で は 戻 り 反 応 を 生 じ 易 い と さ れ る ス ケ ト ウ ダ ラ お よ び ホ キ の 冷 凍 す り 身 を 対 象 と し た 。 こ れ ら の 冷 凍 す り 身 に 対 し 、メ タ ロ プ ロ テ ア ー ゼ イ ン ヒ ビ タ ー で あ る EDTA お よ び 1,10- Phenanthroline monohydrate(Phenanthroline)、セ リ ン プ ロ テ ア ー ゼ イ ン ヒ ビ タ ー で あ る Aprotinin お よ び Phenylmethyl Sulfonyl Fluoride(PMSF)、 シ ス テ イ ン プ ロ テ ア ー ゼ イ ン ヒ ビ タ ー で あ る E-64 を そ れ ぞ れ 添 加 し 、40、50 お よ び 60oC の 各 温 度 で 戻 り 反 応 を 行 い 、そ れ ぞ れ の 温 度 で 活 性 を 示 す プ ロ テ ア ー ゼ を 魚 種 や 等 級 ご と に 特 定 す る こ と を 試 み た 。
な お 、 本 研 究 で 得 ら れ た 成 果 の 一 部 は 下 記 の 学 術 雑 誌 で 発 表 済 み で あ る 。
①. Ymada, K., Kajita, T., Matsumiya , M., & Fukushima, H. (2018). Evaluation of
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the quality of frozen surimi using suwari reaction speed and activation energy.
CyTA-Journal of Food, 16(1), 723-729.
②. Yamada, K., Matsumiya, M., & Fukushima, H. (2020). Modori reaction in blue grenadier and Al aska pollock frozen surimi and myosin degradation behavior upon addition of protease inhibitors. CyTA-Journal of Food, 18(1), 451-460.
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第 2 章 各 種 冷 凍 す り 身 の 一 般 成 分 お よ び 加 熱 ゲ ル 形 成 に 及 ぼ す 坐 り 反 応
冷 凍 す り 身 は 、 資 源 量 は 多 い も の の 魚 肉 が 変 性 し や す い ス ケ ト ウ ダ ラ の 長 期 保 存 を 目 的 に 開 発 さ れ た 製 品 で あ る 。 そ の 製 造 は 、 ま ず 漁 獲 し た 魚 体 を よ く 洗 浄 し 、 鱗 を 取 り 除 く 。 そ の 後 、 ヘ ッ ド カ ッ タ ー や 、 フ ィ レ ー マ シ ー ン に よ り 魚 体 を フ ィ レ ー の 状 態 と し 、 採 肉 機 に よ り 骨 や 皮 と 肉 を 分 離 す る 。 こ こ で 得 ら れ る 魚 肉 は 金 属 板 に 空 い た 孔 を 通 る 為 、 ミ ン チ 肉 と な る 。 採 肉 さ れ た ミ ン チ 肉 の 数 倍 ~ 数 十 倍 の 水 を 加 え 、 穏 や か に 攪 拌 す る 「 水 晒 し 」 工 程 で 、 ミ ン チ 肉 に 含 ま れ る 骨 や 皮 、 脂 質 や 血 液 な ど の 、 夾 雑 物 を 取 り 除 く 。 同 時 に 水 溶 性 タ ン パ ク 質 も 除 か れ 、 筋 原 線 維 タ ン パ ク 質 の 割 合 が 高 ま る 。 通 常 、 水 晒 し 肉 は 軽 く 脱 水 し た 後 、 複 数 回 水 晒 し さ れ る 。 脱 水 後 、 リ フ ァ イ ナ ー で 裏 ご し し て 、筋 な ど の 不 溶 性 タ ン パ ク 質 を 取 り 除 く 。裏 ご し 肉 に 対 し て 、4~10%
の ス ク ロ ー ス 、ソ ル ビ ト ー ル な ど の 糖 類 、な ら び に 0.3%の 重 合 リ ン 酸 塩 を 加 え 、 リ ボ ン ミ キ サ ー で よ く 混 合 す る 。 各 種 の 糖 類 は 、 魚 肉 タ ン パ ク 質 の 冷 凍 変 性 防 止 を 、 重 合 リ ン 酸 塩 は す り 身 の pH 調 整 を 目 的 に 添 加 さ れ る 。 最 終 的 に コ ン タ ク ト フ リ ー ザ ー で 一 枚 10 kg の 板 状 の 形 状 で 、芯 温 が-25oC以 下 ま で 急 速 に 凍 結 さ れ 完 成 す る 。
冷 凍 す り 身 の 品 質 は 、 原 料 鮮 度 や 水 晒 し の 回 数 、 脱 水 強 度 、 夾 雑 物 の 量 、 タ ン パ ク 質 の 組 成 や 濃 度 、 添 加 物 の 量 、 凍 結 条 件 な ど 多 く の 因 子 に 影 響 さ れ る 。 そ の た め 、 冷 凍 す り 身 の 品 質 を 評 価 す る こ と は 安 易 で は な い 。 ま た 現 在 で は 、 ス ケ ト ウ ダ ラ 以 外 の 多 く の 魚 種 で も 冷 凍 す り 身 が 製 造 さ れ る よ う に な り 、 ホ キ や イ ト ヨ リ ダ イ 、 シ ロ グ チ な ど の 白 身 魚 や 、 イ ワ シ や サ バ な ど の 赤 身 魚 、 サ メ 類 な ど の 軟 骨 魚 類 な ど が 利 用 さ れ て い る 。 冷 凍 す り 身 は 、 等 級 の 高 い も の よ り SA>FA>AA>A>KA>B>BK>RA>RB の 順 に 分 類 さ れ て い る 。
本 章 で は 、 ス ケ ト ウ ダ ラ (SA お よ び RA 級 )、 ホ キ (FA お よ び KA 級 ) お
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よ び イ ト ヨ リ ダ イ(SA お よ び KA 級 )の 3 魚 種 か ら 計 6 種 類 の 冷 凍 す り 身 を 用 い て 、 一 般 成 分 お よ び 加 熱 ゲ ル 形 成 能 が 等 級 間 で ど の よ う に 異 な る か を 分 析 し た 。
8 2. 1. 各 種 冷 凍 す り 身 の 一 般 成 分 測 定
2. 1. 1. 試 料 お よ び 方 法
2. 1. 1. 1. 試 料 お よ び 方 法
ス ケ ト ウ ダ ラ (SA 級 お よ び RA 級 )、 ホ キ (FA 級 お よ び KA 級 ) お よ び イ ト ヨ リ ダ イ(SA 級 お よ び KA 級 )冷 凍 す り 身 を ニ チ モ ウ 株 式 会 社( 東 京 )よ り 購 入 し た 。 購 入 し た 冷 凍 す り 身 は 1 kg 前 後 に 小 分 け に し て 、-25oC で 保 管 し た 。 本 研 究 で は 、 ス ケ ト ウ ダ ラ SA 級 、 ホ キ FA 級 お よ び イ ト ヨ リ ダ イ SA 級 を 等 級 が 高 い も の 、 ス ケ ト ウ ダ ラ RA 級 、 ホ キ KA 級 お よ び イ ト ヨ リ ダ イ KA 級 を 等 級 が 低 い も の と し て 使 用 し た 。 試 料 の 成 分 測 定 は 「 日 本 食 品 標 準 成 分 表 2015 年 版 」 に 記 載 の 方 法 に 基 づ い て 行 っ た 6 1 )。
2. 1. 1. 2. 水 分 測 定
各 冷 凍 す り 身 の 水 分 測 定 は 常 圧 加 熱 乾 燥 法 ( 乾 燥 助 剤 法 ) で 行 っ た 。 水 分 測 定 乾 燥 条 件 は 、105oC、5 時 間 と し た 。
2. 1. 1. 3. タ ン パ ク 質 測 定
各 冷 凍 す り 身 の タ ン パ ク 質 測 定 は 、 燃 焼 法 ( 改 良 デ ュ マ 法 ) で 行 っ た 。
2. 1. 1. 4. 脂 質 測 定
各 冷 凍 す り 身 の 脂 質 測 定 は 、 エ ー テ ル 抽 出 法 ( ソ ッ ク ス レ ー 抽 出 法 ) で 行
9 っ た 。
2. 1. 1. 5. 炭 水 化 物 測 定
各 冷 凍 す り 身 の 炭 水 化 物 測 定 は 、 全 体 量 か ら 水 分 、 タ ン パ ク 質 、 脂 質 、 灰 分 の 合 計 (g) を 差 し 引 い て 算 出 し た 。
2. 1. 1. 6. 灰 分 測 定
各 冷 凍 す り 身 の 灰 分 測 定 は 、 直 接 灰 化 法 で 行 っ た 。
2. 1. 1. 7. ナ ト リ ウ ム 測 定
各 冷 凍 す り 身 の ナ ト リ ウ ム 測 定 は 、 原 子 吸 光 光 度 法 ( 灰 化 法 ) で 行 っ た 。
2. 1. 1. 8. 食 塩 相 当 量 測 定
各 冷 凍 す り 身 の 食 塩 相 当 量 測 定 は 、 ナ ト リ ウ ム 量 よ り 算 出 し た 。
2. 1. 1. 9. 熱 量 測 定
各 冷 凍 す り 身 の 熱 量 測 定 は 、 修 正 ア ト ウ ォ ー タ ー 法 で 行 っ た 。
10 2. 1. 2. 結 果
2. 1. 2. 1. 水 分
ス ケ ト ウ ダ ラ の 水 分 は 、SA 級 が 74.0 g/100 g、RA 級 が 74.6 g/100 g で あ っ た (Table1)。 ホ キ は 、FA 級 が 74.4 g/100 g、KA 級 が 75.1 g/100 g で あ っ た 。 イ ト ヨ リ ダ イ は 、SA 級 が 73.5 g/100 g、KA 級 が 77.1 g/100 g で あ り 、 イ ト ヨ リ ダ イ の 等 級 間 で 水 分 の 差 が 認 め ら れ た も の の 、 他 の 2 魚 種 で は 等 級 間 に 顕 著 な 差 は 認 め ら れ な か っ た 。
2. 1. 2. 2. タ ン パ ク 質 含 量
ス ケ ト ウ ダ ラ は 、SA 級 が 19.0 g/100 g、RA 級 が 17.4 g/100 g で あ っ た(Table 1)。 ホ キ は 、FA 級 が 17.0 g/100 g、KA 級 が 16.5 g/100 g で あ っ た 。 イ ト ヨ リ ダ イ は 、SA級 が 17.6 g/100 g、KA 級 が 16.9 g/100 g で あ り 、 い ず れ の 魚 種 に お い て も 等 級 の 高 い す り 身 で タ ン パ ク 質 含 量 が 高 か っ た 。
2. 1. 2. 3. 脂 質 含 量
ス ケ ト ウ ダ ラ は 、SA 級 が 0.6 g/100 g、RA 級 が 0.4 g/100 g で あ っ た (Table 1)。 ホ キ は 、FA 級 が 0.7 g/100 g、KA 級 が 0.3 g/100 g で あ っ た 。 イ ト ヨ リ ダ イ は 、SA 級 が 0.1 g/100 g、KA 級 が 0.1 g/100 g で あ り 、 い ず れ の 魚 種 、 等 級 に お い て も 1%以 下 の 含 量 で あ っ た 。
11 2. 1. 2. 4. 炭 水 化 物 含 量
ス ケ ト ウ ダ ラ は 、SA 級 が 5.9 g/100 g、RA 級 が 7.2 g/100 g で あ っ た (Table 1)。 ホ キ は 、FA 級 が 7.3 g/100 g、KA 級 が 7.6 g/100 g で あ っ た 。 イ ト ヨ リ ダ イ は 、SA 吸 が 8.4 g/100 g、KA 級 が 5.4 g/100 g で あ っ た 。 こ こ で の 炭 水 化 物 は 、 冷 凍 す り 身 に 添 加 さ れ た 数 種 の 糖 を 測 定 し て い る と 推 定 さ れ る が 、 ス ケ ト ウ ダ ラ で は 等 級 が 高 い す り 身 が 少 な く 、 ホ キ で は ほ ぼ 等 量 、 イ ト ヨ リ ダ イ で は 等 級 が 高 い す り 身 で 多 か っ た 。
2. 1. 2. 5. 灰 分
ス ケ ト ウ ダ ラ は 、SA 級 が 0.5 g/100 g、RA 級 が 0.4 g/100 g で あ っ た (Table 1)。 ホ キ は 、FA 級 が 0.6 g/100 g、KA 級 が 0.5 g/100 g で あ っ た 。 イ ト ヨ リ ダ イ は 、SA 級 が 0.4 g/100 g、KA 級 が 0.5 g/100 g で あ り 、 い ず れ の 魚 種 お よ び 等 級 に お い て も 1%以 下 の 含 量 で あ っ た 。
2. 1. 2. 6. ナ ト リ ウ ム 含 量
ス ケ ト ウ ダ ラ は 、SA 級 が 151 mg/100 g、RA 級 が 158 mg/100 g で あ っ た
(Table 1)。ホ キ は 、FA 級 が 170 mg/100 g、KA 級 が 138 mg/100 g で あ っ た 。 イ ト ヨ リ ダ イ は 、SA 級 が 161 mg/100 g、KA 級 が 96 mg/100 g で あ っ た 。
2. 1. 2. 7. 食 塩 相 当 量
ス ケ ト ウ ダ ラ は 、SA 級 が 0.384 g/100 g、RA 級 が 0.401 g/100 g で あ っ た
(Table 1)。ホ キ は 、FA 級 が 0.432 g/100 g、KA 級 が 0.351 g/100 g で あ っ た 。
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イ ト ヨ リ ダ イ は 、SA 級 が 0.409 g/100 g、KA 級 が 0.244 g/100 g と ご く 微 量 に 含 ま れ て い た 。
2. 1. 2. 8. 熱 量
ス ケ ト ウ ダ ラ は 、SA 級 が 105 kcal/100 g、RA 級 が 102 kcal/100 g で あ っ た
(Table 1)。ホ キ は 、FA級 が 104 kcal/100 g、KA 級 が 99 kcal/100 g で あ っ た 。 イ ト ヨ リ ダ イ は 、SA 級 が 105 kcal/100 g、KA 級 が 90 kcal/100 g で あ っ た 。
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14 2. 2. 加 熱 ゲ ル 形 成 に 及 ぼ す 坐 り 反 応
2. 2. 1. 方 法
2. 2. 1. 1. 直 加 熱 お よ び 二 段 加 熱 ゲ ル の 作 製
直 加 熱 お よ び 二 段 加 熱 ゲ ル の 作 製 工 程 を Fig.1 に 示 す 。ま ず 、-25oC で 保 存 し て あ っ た 冷 凍 す り 身 を 4oCの 冷 蔵 庫 内 で 一 晩 解 凍 し た 。 解 凍 し た す り 身 を フ ー ド プ ロ セ ッ サ ー (MK-K48P, Panasonic, 大 阪 ) ま た は 高 速 真 空 攪 拌 機
(UMC-5, Stephan, 千 葉 ) を 用 い て 約 1 分 間 、「 粗 ず り 」 を 行 っ た 。 次 に 、 水 を す り 身 に 対 し 30%加 え て 約 1 分 間 、「 水 伸 ば し 」を 行 っ た 。最 後 に 、食 塩 を 水 伸 ば し 肉 に 対 し て 2.5%加 え て 約 1 分 間「 塩 ず り 」を 行 い 、肉 糊 を 調 製 し た 。 以 上 の 攪 拌 は 全 て 10oC 以 下 で 行 っ た 。 調 製 し た 肉 糊 を ケ ー シ ン グ フ ィ ル ム
(Φ23 mm)( 株 式 会 社 ク レ ハ 社 製, 東 京 ) に 充 填 し 、 恒 温 水 槽 (THERMO MINDER SM-05R, TAITEC, 埼 玉 )で 直 加 熱(85oC、30分)お よ び 二 段 加 熱(30oC で 20分加 熱 後 85oC で 30分) で 加 熱 ゲ ル を 作 製 し た 。 作 製 し た 加 熱 ゲ ル を レ オ メ ー タ ー(NRM-3002D, Rheotech, 東 京 )を 用 い て 破 断 強 度 お よ び 凹 み を 測 定 し た 。レ オ メ ー タ ー は 、球 形 の プ ラ ン ジ ャ ー( 直 径 5 mm)を 用 い て 、ス テ ー ジ 速 度 を 6.0 cm/min に 設 定 し た 。
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16 2. 2. 2. 結 果
2. 2. 2. 1. 加 熱 ゲ ル 物 性 測 定
各 加 熱 ゲ ル の 物 性 測 定 の 結 果 を Fig.2 に 示 す 。 直 加 熱 と 二 段 加 熱 を 比 較 す る と 、 二 段 加 熱 が 破 断 強 度 お よ び 破 断 凹 み と も に 高 い 数 値 を 示 し 、 い ず れ の 魚 種 、 等 級 に お い て も 坐 り 反 応 の 効 果 が 認 め ら れ た 。 同 魚 種 の 等 級 間 で 比 較 す る と 、 ど の 魚 種 に お い て も 等 級 が 高 い す り 身 の 破 断 強 度 お よ び 破 断 凹 み が 等 級 が 低 い す り 身 の 値 よ り も 大 き く な っ た 。 特 に ホ キ で は 、 直 加 熱 と 二 段 加 熱 ゲ ル は と も に 等 級 間 の 破 断 強 度 に 大 き な 差 が 認 め ら れ 、 加 熱 ゲ ル 物 性 に 及 ぼ す 坐 り 反 応 の 効 果 が 顕 著 で あ っ た (Fig.2a)。 破 断 凹 み も 同 様 の 傾 向 が 認 め ら れ(Fig.2b)、坐 り 反 応 に よ り 、加 熱 ゲ ル の し な や か さ の 向 上 が 確 認 さ れ た 。
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18 2. 3. 考 察
各 冷 凍 す り 身 の 一 般 成 分 測 定 の 結 果 か ら 、 等 級 が 高 い す り 身 は 等 級 が 低 い す り 身 よ り も 水 分 が 少 な く 、 タ ン パ ク 質 量 が 多 い 傾 向 が 認 め ら れ た 。 こ う し た 違 い は 、 加 熱 ゲ ル 物 性 に も 表 れ て お り 、3 魚 種 い ず れ に お い て も 等 級 が 高 い す り 身 の 方 が 高 い ゲ ル 物 性 を 示 し た 。 し か し 、 糖 量 を 表 す 炭 水 化 物 は 、 ス ケ ト ウ ダ ラ で は 等 級 の 高 い す り 身 で は 少 な か っ た の に 対 し 、 イ ト ヨ リ ダ イ で は 反 対 に 多 く 、 成 分 と 等 級 が 逆 転 し て い る も の も あ っ た 。 し た が っ て 、 一 般 成 分 の 差 だ け で 等 級 間 の 品 質 差 を 示 す の は 困 難 で あ っ た 。
本 章 で 用 い た 3 魚 種 6 種 類 の 冷 凍 す り 身 は 、 い ず れ も 二 段 加 熱 で 破 断 強 度 お よ び 凹 み が 向 上 し て お り 、「 坐 り 」反 応 を 起 こ す 性 状 を 示 し た 。そ こ で 次 章 で は 坐 り 反 応 に 着 目 し 、 そ の 反 応 が 等 級 間 で 異 な る か を 明 ら か に す る こ と と し た 。
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第 3 章 坐 り 反 応 を 用 い た 各 種 冷 凍 す り 身 の 品 質 評 価
坐 り と は 魚 肉 す り 身 に 特 有 の 現 象 で 、 家 畜 肉 で は こ う し た 現 象 は み ら れ な い 。 塩 ず り し た 魚 肉 を 20~40oC の 温 度 域 で し ば ら く 加 温 す る と 坐 り 反 応 が 進 行 し 、 透 明 感 の あ る ゲ ル を 形 成 す る 。 こ れ は 、 魚 肉 中 に 存 在 す る ト ラ ン ス グ ル タ ミ ナ ー ゼ に よ る ミ オ シ ン 分 子 間 の 架 橋 結 合 に よ っ て 生 じ る 現 象 で あ る
1 0 - 1 2 )。
坐 り 反 応 は 魚 種 特 異 性 を 示 す 。ス ケ ト ウ ダ ラ は 、20oC で 最 も 高 い 破 断 強 度 に な り 、 次 い で 30oC で 破 断 強 度 が 高 く な る 2 7 - 3 3 )。 同 様 に 冷 水 性 の 魚 類 で あ る ホ キ は ス ケ ト ウ ダ ラ と 似 た 反 応 を 示 す 3 2 )。一 方 、ミ ナ ミ ダ ラ は 冷 水 性 の 魚 類 だ が 、30oC で 非 常 に 強 い ゲ ル を 形 成 す る 1 5 )。ま た 、亜 熱 帯 海 域 に 生 息 す る イ ト ヨ リ ダ イ や グ チ は 、20oC 以 下 で は そ れ ほ ど 坐 り 反 応 は 起 こ さ ず 、坐 り の 至 適 温 度 は 35~38oC と 高 温 度 域 に あ る 1 6 , 1 9 , 3 5 , 3 6 )。 淡 水 魚 で あ る コ イ は 、 ど の 温 度 に お い て も 、坐 り 反 応 を そ れ ほ ど 起 こ さ な い 11 )。季 節 に よ っ て も 坐 り 反 応 の 挙 動 は 異 な る 。 こ れ は 、 季 節 に よ っ て 魚 種 の 成 熟 度 が 異 な り タ ン パ ク 質 量 に 差 が 生 じ る た め で あ る 1 8 )。 ま た 、pH は ト ラ ン ス グ ル タ ミ ナ ー ゼ の 至 適 域 か つ 魚 肉 の 等 電 点 で あ る 中 性 で 最 も 反 応 が 進 む 。ま た 、塩 分 量 が 10% ま で は 坐 り ゲ ル の 破 断 強 度 が 高 く な り 物 性 が 向 上 す る が 、 そ れ 以 上 添 加 し て し ま う と 破 断 強 度 が 低 く な り 物 性 が 低 下 す る 1 9 , 2 0 )。こ の よ う に 、坐 り 反 応 は 魚 種 や 生 息 域 、 季 節 な ど に よ る 違 い や 、pH、 塩 分 量 な ど に よ っ て そ の 挙 動 は 大 き く 影 響 さ れ る 。
本 章 で は 、前 章 で 坐 り 反 応 が 確 認 さ れ た ス ケ ト ウ ダ ラ(SA お よ び RA 級 )、
ホ キ (FA お よ び KA 級 ) お よ び イ ト ヨ リ ダ イ (SA お よ び KA 級 ) の 冷 凍 す り 身 を 対 象 に 、 坐 り 反 応 中 の 破 断 強 度 変 化 か ら 坐 り 速 度 を 求 め 、 さ ら に 坐 り 反 応 の 活 性 化 エ ネ ル ギ ー を 算 出 し 、 こ う し た 数 値 が 魚 種 間 な ら び に 等 級 間 の 品 質 の 差 を 表 す 指 標 と な る か を 検 討 し た 。
20 3. 1. 坐 り 反 応 ゲ ル の 破 断 強 度 測 定
3. 1. 1. 試 料 お よ び 方 法
3. 1. 1. 1. 試 料
試 料 は 、2. 1. 1. 1.と 同 様 の も の を 使 用 し た 。
3. 1. 1. 2. 坐 り 反 応 ゲ ル の 作 製
2. 2. 1. 1.と 同 様 の 方 法 で 肉 糊 を 調 製 し 、20、25 お よ び 30oC( イ ト ヨ リ ダ イ の み 23oC で の 反 応 も 行 っ た ) で 反 応 を 行 い 、 坐 り 反 応 ゲ ル を 作 製 し た 。
3. 1. 1. 3. 破 断 強 度 測 定
2. 2. 1. 1.と 同 様 の 方 法 で 測 定 し た 。
3. 1. 1. 4. SDS-PAGE
12.5%の ポ リ ア ク リ ル ア ミ ド ゲ ル(e-PAGEL, ATTO Corporation, 東 京 )を 用 い て Laemmli の 方 法 で SDS-PAGEを 行 っ た 6 2 )。サ ン プ ル(0.2 g)と タ ン パ ク 質 溶 解 液(20 mM Tris-HCL(pH 8.0), 2% SDS, 8 M urea, 2% β-mercaptoethanol) を 試 験 管 内 で 混 合 し 、2 分 間 沸 騰 水 中 で 加 熱 し た 。 試 験 管 内 に ス タ ー ラ ー を 入 れ 試 料 と 溶 解 液 を 一 晩 攪 拌 し た 。 完 全 に 溶 解 し た こ と が 確 認 で き た ら 、 サ ン プ ル を 1.5 ml の エ ッ ペ ン ド ル フ チ ュ ー ブ に 移 し 卓 上 遠 心 機(Force Mini, BM Bio, 東 京 )で 遠 心 分 離 を 行 っ た 。そ の 後 、中 層 か ら サ ン プ ル を 200 μl抽 出 し 、
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サ ン プ ル 調 整 液 (0.5 M Tris-HCL, 2% SDS, 0.45 M グ リ セ ロ ー ル, 2% β- mercaptoethanol) を 50 μl 加 え 、1 分 間 沸 騰 水 中 で 加 熱 し 、 こ れ を サ ン プ ル と し た 。 分 子 量 マ ー カ ー と し て Prestained molecular weight markers(Bio-Rad) を 用 い た 。電 気 泳 動 し た ゲ ル は 、Comassie Brilliant Blue(CBB)R-250 を 含 む 染 色 液 で 1.5 時 間 染 色 し 、 そ の 後 脱 色 液 (30% methanol, 10% acetic acid) で 背 景 が 透 明 に な る ま で 脱 色 し た 。
3. 1. 2. 結 果
3. 1. 2. 1. 坐 り 反 応 ゲ ル の 破 断 強 度 の 経 時 変 化
各 冷 凍 す り 身 の 破 断 強 度 の 変 化 と 近 似 曲 線 を Fig.3-9 に 示 し た 。 い ず れ の 魚 種 お よ び 等 級 の す り 身 で あ っ て も 、 各 反 応 温 度 に お い て 時 間 経 過 に 伴 っ て 破 断 強 度 が 増 加 し 、 坐 り 反 応 ゲ ル を 形 成 す る こ と が 示 さ れ た 。 ス ケ ト ウ ダ ラ SA 級 お よ び RA 級 の 挙 動 は 良 く 似 て お り 、20、25 お よ び 30oC の 反 応 温 度 で そ れ ぞ れ 48、24 お よ び 3 時 間 で 最 大 破 断 強 度 に 達 し た(Fig.3-5)。ホ キ FA 級 は 、 反 応 の 温 度 帯 に 関 わ ら ず 24 時 間 で 最 大 破 断 強 度 に 達 し た (Fig.6)。 反 応 温 度 20、25 お よ び 30oC で そ れ ぞ れ 1,308、1,790 お よ び 1,464 g で あ っ た 。 ホ キ KA 級 も ホ キ FA 級 と 同 様 に 変 化 し 最 大 破 断 強 度 は 、 反 応 温 度 20、25 お よ び 30oC で そ れ ぞ れ 1,140、1,322 お よ び 1,140 g で あ っ た (Fig.7)。 ス ケ ト ウ ダ ラ は ホ キ と は 異 な り 、 反 応 温 度 に よ っ て 最 大 破 断 強 度 に 達 す る ま で の 時 間 に 大 き な 差 が 認 め ら れ た 。 イ ト ヨ リ ダ イ で は 、KA 級 30oCの 結 果 を 除 け ば SA 級 お よ び KA 級 で 最 大 破 断 強 度 に 達 す る ま で の 時 間 は 同 じ く 、20、25 お よ び 30oC で そ れ ぞ れ 24、24 お よ び 48 時 間 で あ っ た (Fig.8,9)。 ど の 魚 種 に お い て も 、 等 級 が 高 い す り 身 の 方 が 等 級 が 低 い す り 身 の 値 よ り も 坐 り 反 応 ゲ ル の 最 大 破 断 強 度 は 高 く な っ た 。 ス ケ ト ウ ダ ラ と イ ト ヨ リ ダ イ は 、 等 級 が 高
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い す り 身 が 低 い す り 身 の お お よ そ 2 倍 以 上 の 数 値 を 示 し た の に 対 し 、 ホ キ で は 、1.1~1.3 倍 で あ っ た 。 イ ト ヨ リ ダ イ KA 級 の 30oC の 反 応 で は 、 短 時 間 で 最 大 破 断 強 度 に 達 し て お り 、 そ の 値 も 25oC の 反 応 と 比 較 し て 著 し く 低 か っ た こ と か ら 、 戻 り 反 応 が 関 与 し て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。 以 後 の 測 定 に イ ト ヨ リ ダ イ KA 級 の 結 果 を 加 え る と 、 結 果 に 大 き な 影 響 が あ る と 推 測 さ れ た た め 、30oC の デ ー タ は 用 い ず に 新 た に 23oCで の 挙 動 を 調 べ た 。23oCで は 、48 時 間 で 最 大 破 断 強 度 に 達 し 、 そ の 値 は 357 g と な っ た 。
最 大 破 断 強 度 に 達 す る ま で の 反 応 時 間 を 魚 種 間 で 比 較 す る と 、 イ ト ヨ リ ダ イ が 48 時 間 と 他 の 2 種 よ り も 多 く の 時 間 を 要 し た 。 こ れ は 生 息 温 度 に 起 因 す る ト ラ ン ス グ ル タ ミ ナ ー ゼ 活 性 の 温 度 依 存 性 を 反 映 す る も の と 考 え ら れ た 。 ま た 、 ス ケ ト ウ ダ ラ と イ ト ヨ リ ダ イ は 、 等 級 の 違 い に よ っ て 破 断 強 度 の 経 時 変 化 に 大 き な 差 が 生 じ た が 、 ホ キ の 場 合 で は 大 き な 差 が 生 じ な か っ た こ と か ら 、魚 種 に よ り 等 級 間 の 坐 り 反 応 に お け る 品 質 差 が 異 な る こ と が 示 唆 さ れ た 。
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27 3. 1. 2. 2. SDS-PAGE
イ ト ヨ リ ダ イ KA 級 で は 30oC の 反 応 温 度 に お い て 20 お よ び 25oC に 比 べ 著 し い 破 断 強 度 の 低 下 が 確 認 さ れ た 。 本 結 果 に 戻 り 反 応 が 関 与 し て い る か を 確 認 す る た め に 、 イ ト ヨ リ ダ イ KA 級 の 肉 糊 を 20、25 お よ び 30oC で 反 応 さ せ た 際 の タ ン パ ク 質 組 成 の 変 化 を SDS-PAGEで 確 認 し た(Fig.10)。そ の 結 果 、 反 応 温 度 が 20 お よ び 25oC の 場 合 は ミ オ シ ン 単 量 体 を 示 す 200 kDa の バ ン ド 強 度 に 大 き な 変 化 が 無 く 、 さ ら に ミ オ シ ン 単 量 体 よ り 低 分 子 量 の バ ン ド は 出 現 し な か っ た 。こ れ に 対 し 、30oC の 場 合 は 時 間 の 経 過 と と も に ミ オ シ ン 単 量 体 の バ ン ド 強 度 が 低 下 し て い る こ と が 確 認 で き た 。30oC の 反 応 で は 、ミ オ シ ン 単 量 体 よ り 低 分 子 量 の バ ン ド が 新 た に 確 認 さ れ た こ と か ら 、 イ ト ヨ リ ダ イ KA 級 を 30℃で 反 応 さ せ た 際 に は 、 坐 り 反 応 と 同 時 に 戻 り 反 応 も 起 こ り 、 ミ オ シ ン 分 子 が 分 解 さ れ る こ と で ゲ ル 物 性 が 低 下 す る こ と が 示 唆 さ れ た 。 冷 凍 す り 身 の 等 級 は 原 料 に 用 い た 魚 肉 部 位 の 鮮 度 や 、 水 晒 し の 回 数 な ど に よ っ て 分 け ら れ る 6 1 , 6 2 )。し た が っ て 、鮮 度 低 下 に 伴 う 反 応 生 成 物 や 水 晒 し に よ っ て 除 か れ る 水 溶 性 物 質 や タ ン パ ク 質 の 多 寡 が 影 響 し て い る と 考 え ら れ る 。ま た 、 過 去 の 報 告 で は 、 二 段 加 熱 ゲ ル の 物 性 は 、 イ ト ヨ リ ダ イ な ど の 温 暖 な 水 域 に 生 息 し て い る 魚 の す り 身 の 方 が 、 冷 た い 水 域 に 生 息 し て い る 魚 よ り も 破 断 強 度 が 高 く な る 傾 向 に あ る 1 4 , 1 7 , 3 3 , 3 4 )。 一 方 、 今 回 の 結 果 で は 冷 た い 水 域 に 生 息 し て い る ホ キ の す り 身 が 最 も 高 い 値 を 示 し た よ う に 、 坐 り 反 応 ゲ ル は 二 段 加 熱 ゲ ル と は 異 な る 傾 向 を 示 し た 。
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29 3. 2. 坐 り 速 度 解 析
3. 2. 1. 方 法
3. 2. 1. 1. 坐 り 速 度 解 析
片 対 数 グ ラ フ の Y 軸 に 3. 1. 1. 3.で 測 定 し た 破 断 強 度 を 、X 軸 に 坐 り 加 熱 時 間 を プ ロ ッ ト し て 、各 点 を 通 る 近 似 曲 線 を 引 い た 。最 大 破 断 強 度(BSmax) の 半 分 の 値 (1/2BSmax) に 達 す る ま で の 時 間 (T1/2) を 求 め 、 そ の 逆 数 の 値 を 坐 り 速 度 K(s- 1) と し た 。
3. 2. 2. 結 果
3. 2. 2. 1. 坐 り 速 度 解 析
同 魚 種 の 等 級 間 で 坐 り 速 度 を 比 較 し た と こ ろ 、 ス ケ ト ウ ダ ラ お よ び ホ キ で は 、 坐 り 反 応 ゲ ル の 最 大 破 断 強 度 で み ら れ た 明 確 な 差 は 認 め ら れ な か っ た
(Table 2)。 同 様 に イ ト ヨ リ ダ イ は 、 戻 り 反 応 の 影 響 が み ら れ た 30oC を 除 い た 反 応 温 度 で の 坐 り 速 度 も 等 級 間 で 明 確 な 傾 向 は 見 ら れ な か っ た 。
次 に 魚 種 間 で 坐 り 速 度 を 比 較 し た 。 等 級 が 高 い も の で は 、20 お よ び 25oC で は 、速 い も の か ら ホ キ > ス ケ ト ウ ダ ラ > イ ト ヨ リ ダ イ の 順 に な り 、30oC で は ス ケ ト ウ ダ ラ > ホ キ > イ ト ヨ リ ダ イ の 順 に な っ た 。等 級 が 低 い も の だ と 20、 25 お よ び 30oC の 反 応 温 度 に お い て ホ キ > ス ケ ト ウ ダ ラ > イ ト ヨ リ ダ イ の 順 に な っ た が 、30oC の イ ト ヨ リ ダ イ KA 級 す り 身 に つ い て は 戻 り 反 応 が 生 じ て い る 可 能 性 を 考 慮 す る 必 要 が あ る 。
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31 3. 3. 坐 り 反 応 の 活 性 化 エ ネ ル ギ ー 測 定
3. 3. 1. 方 法
3. 3. 1. 1. 活 性 化 エ ネ ル ギ ー 測 定
片 対 数 グ ラ フ の Y 軸 に 坐 り 速 度 の 対 数 値 を 、温 度( 絶 対 温 度 )の 逆 数 値(1/T) を X 軸 に 取 り 、3. 2. 2. 1.の 結 果 を プ ロ ッ ト し て 近 似 線 を 引 い た (Arrhenius plot)。 そ の 結 果 よ り 次 式 を 用 い て 活 性 化 エ ネ ル ギ ー を 算 出 し た 。
Ea=-2.303 × Rd (logK)/d R: Gas constant (1.98 cal/deg)
3. 3. 2. 結 果
3. 3. 2. 1. 活 性 化 エ ネ ル ギ ー 測 定
3 温 度 域 で 得 た 坐 り 速 度 を 片 対 数 グ ラ フ の Y 軸 に 、絶 対 温 度 の 逆 数 を X 軸 に 取 り 、3 点 を プ ロ ッ ト し て 各 点 を 通 る 直 線 を 引 い た (Fig.11)。 ス ケ ト ウ ダ ラ SA、RA 級 、 ホ キ FA、KA 級 お よ び イ ト ヨ リ ダ イ SA 級 は 20、25 お よ び 30oC の 反 応 温 度 を 用 い て 3 点 を 通 る 直 線 を 引 く こ と が で き た 。一 方 、イ ト ヨ リ ダ イ KA 級 は 、先 述 の 様 に 30oC の 反 応 温 度 を 用 い る と 20 お よ び 25oC の 3 点 を 通 る 直 線 が 引 け ず 、 こ の 結 果 か ら も 30oC で の 戻 り 反 応 の 影 響 が 確 認 さ れ た 。 そ こ で イ ト ヨ リ ダ イ KA 級 で は 、20、23 お よ び 25oC の 反 応 温 度 を 用 い て 3 点 を 通 る 直 線 を 引 き 、 活 性 化 エ ネ ル ギ ー を 求 め た (Fig.11c)。
各 冷 凍 す り 身 の 活 性 化 エ ネ ル ギ ー を 算 出 し 、そ れ ら を Table 3 に 示 し た 。活 性 化 エ ネ ル ギ ー は 、 反 応 の 出 発 物 質 の 基 底 状 態 か ら 遷 移 状 態 に 励 起 す る の に 必 要 な エ ネ ル ギ ー に あ た り 、 こ こ で 算 出 さ れ た 活 性 化 エ ネ ル ギ ー を 坐 り 能 力
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の 指 標 と し た 。 す な わ ち 、 こ の 数 値 が 高 い と 坐 り に く く 、 低 い と 坐 り 易 い す り 身 で あ る と 推 定 し た 。
同 魚 種 の 等 級 間 で 比 較 す る と 、ス ケ ト ウ ダ ラ が 1.3 倍 、ホ キ が 2.2 倍 、イ ト ヨ リ ダ イ が 2.5 倍 等 級 が 低 い も の の 活 性 化 エ ネ ル ギ ー が 高 く 、 そ の 差 は 明 確 で あ っ た 。 魚 種 間 で 比 較 す る と 、 等 級 の 高 い も の は 活 性 化 エ ネ ル ギ ー の 数 値 が 高 い 順 に ス ケ ト ウ ダ ラ > イ ト ヨ リ ダ イ > ホ キ と な っ た 。 ま た 、 等 級 の 低 い も の は ス ケ ト ウ ダ ラ > イ ト ヨ リ ダ イ > ホ キ の 順 に な っ た 。 こ の 結 果 か ら 、 ホ キ が こ の 3 種 の 中 で は 最 も 坐 り 能 力 が 高 い こ と が 示 唆 さ れ た 。
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34 3. 4. 考 察
坐 り 反 応 ゲ ル の 破 断 強 度(Fig. 3-9)と 、二 段 加 熱 の 破 断 強 度(Fig. 2)を 魚 種 間 お よ び 等 級 間 で 比 較 す る と 、 両 者 は 異 な る 傾 向 を 示 し た 。 例 え ば 、 坐 り 反 応 ゲ ル の 破 断 強 度 を 魚 種 間 で 比 較 す る と 、 反 応 時 間 の 長 さ に 比 例 し て 破 断 強 度 が 高 く な る の で は な く 、 魚 種 に よ っ て 大 き く 変 わ る こ と が 分 か っ た 。 こ の こ と か ら 、 冷 凍 す り 身 の 等 級 分 け に 坐 り 反 応 の 特 徴 を 加 味 す る こ と は 有 効 で あ る と 考 え ら れ た 。 ま た 坐 り 速 度 測 定 の 結 果 (Table 2) か ら 、 全 て の 魚 種 で 等 級 が 低 い す り 身 の 方 が 等 級 が 高 い す り 身 よ り も 速 い 坐 り 速 度 を 示 し た 。 こ の 原 因 は 、 等 級 が 低 い す り 身 の 坐 り 能 力 が 等 級 が 高 い す り 身 に 比 べ 低 く 、 結 果 的 に 早 く 最 大 破 断 強 度 に 達 す る た め だ と 考 え ら れ た 。 魚 種 間 で の 比 較 か ら 、 冷 た い 水 域 に 生 息 し て い る ス ケ ト ウ ダ ラ や ホ キ が 坐 り 速 度 が 速 く 、 温 暖 な 水 域 に 生 息 し て い る イ ト ヨ リ ダ イ が 坐 り 速 度 が 遅 い 傾 向 が 認 め ら れ た 。 以 上 の 結 果 か ら 、 坐 り 速 度 で は 等 級 間 な ら び に 魚 種 間 の 品 質 を 判 断 す る の は 困 難 で あ る と 考 え ら れ た 。そ れ に 対 し 、活 性 化 エ ネ ル ギ ー 測 定 の 結 果(Table 3) は 、 等 級 間 お よ び 魚 種 間 で 明 確 な 差 を 示 し た 。 す な わ ち 、 ど の 魚 種 に お い て も 等 級 の 高 い す り 身 で は 坐 り の 活 性 化 エ ネ ル ギ ー が 低 い 数 値 を 示 し 、 よ り 坐 り 易 い と 判 断 さ れ た 。 こ の こ と か ら 活 性 化 エ ネ ル ギ ー は 冷 凍 す り 身 の 品 質 の 1 つ で あ る 坐 り 反 応 の 差 を よ く 表 す 指 標 と し て 用 い る こ と が で き る と 考 え ら れ た 。
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第 4 章 各 種 冷 凍 す り 身 の 戻 り 反 応 に 関 与 す る プ ロ テ ア ー ゼ の 特 定
前 章 に お い て 魚 肉 の 坐 り 反 応 に 着 目 し 、 坐 り 反 応 の 活 性 化 エ ネ ル ギ ー が 等 級 間 の 品 質 差 を 表 す 指 標 と し て 有 効 で あ る こ と が 示 さ れ た 。 次 に 魚 肉 す り 身 に 特 有 の 反 応 で 、 よ り 高 温 度 域 で 生 じ る 戻 り 反 応 に 着 目 し た 。 戻 り 反 応 は 、 一 般 的 に は 50~70oC の 温 度 域 で ゲ ル 構 造 が 脆 弱 化 し 、 反 応 が 進 む と ゲ ル が 崩 壊 す る 現 象 だ と 言 わ れ て い る 。し か し 、40oC 程 度 で も 戻 り 反 応 を 引 き 起 こ す 魚 種 や 、 反 応 温 度 を 上 げ て も 戻 り 反 応 が 起 こ ら な い 魚 種 あ る な ど 、 本 反 応 も 原 料 魚 種 に よ り 反 応 が 大 き く 異 な る 。 な お 、 ス ケ ト ウ ダ ラ や ホ キ 、 イ ト ヨ リ ダ イ な ど は 、40oC の 反 応 で 戻 り 反 応 が 起 き る 魚 種 で 、サ メ や コ イ な ど は 高 温 度 で 反 応 を 続 け て も 戻 り 反 応 が そ れ ほ ど 起 こ ら な い 魚 種 で あ る 3 7 - 4 5 )。
戻 り 反 応 に 関 与 す る プ ロ テ ア ー ゼ は 、Modori-inducing protease(MIP)と 総 称 さ れ 、 具 体 的 に は カ テ プ シ ン B や カ テ プ シ ン L、 カ テ プ シ ン B 様 酵 素 、 筋 原 線 維 結 合 型 セ リ ン プ ロ テ ア ー ゼ な ど が 報 告 さ れ て い る 4 6 - 4 8 )。冷 凍 す り 身 の 製 造 工 程 に あ る 、 水 晒 し 工 程 に お い て 、 筋 原 線 維 結 合 型 セ リ ン プ ロ テ ア ー ゼ 以 外 の プ ロ テ ア ー ゼ は ほ と ん ど が 除 去 さ れ る と 考 え ら れ る が 、 実 際 に は 戻 り 反 応 に は 多 く の プ ロ テ ア ー ゼ が 関 与 し 、 そ の 詳 細 は 不 明 な 点 が 多 く 残 さ れ て い る 4 9 - 6 0 )。
ま た 、 戻 り 反 応 に 関 与 す る プ ロ テ ア ー ゼ の 至 適 温 度 や 温 度 安 定 性 が 異 な る こ と も 示 唆 さ れ る こ と か ら 、本 章 で は 、魚 肉 冷 凍 す り 身 の 戻 り 反 応 に つ い て 、 従 来 か ら 報 告 さ れ て い る 魚 種 間 の 違 い に 加 え 、等 級 間 で の 戻 り 反 応 の 違 い と 、 ど の プ ロ テ ア ー ゼ が す り 身 タ ン パ ク 質 を 分 解 し て い る か を 反 応 温 度 ご と に 特 定 す る こ と を 目 的 と し た 。