問題
10
フランスの石の花濁 沸 石 は 天 然 の ゼ オ ラ イ ト で 、 (CaO)x(A)y(B)z∙yH2O の化学式をもつカルシウ ムアルミノシリカの水和物である。ここで A と B は酸化物である。濁沸石 は乾燥空気中で脱水 して、非常にもろくなる。この性質から、最初は zéolithe efflorescente (石の花)と呼ばれた。しか し、のちにこの鉱物は1785年にこの鉱物を発見 したフランス人の鉱物学者F. Gillet de Laumont にちなんで濁沸石(訳者注:Laumontite, ローモ ンタイト)と名付けられた。
濁沸石 は以下のようなパラメーターを持つ単斜 晶系の結晶で ある。a = 1.49 nm, b = 1.37 nm, c = 0.76 nm, α = γ = 90°, β = 112°, Z = 4。その密 度は ρ = 2.17 g cm‒3である。乾燥空気中で加熱
すると、鉱物の質量は15.3 %減少し、それ以降さらなる質量変化は観測されない。
1. 濁沸石中の水和水の化学量論係数yを計算せよ。
ヒント1: 単斜晶の単位格子の体積はV = abc × sin βである。
ヒント2: 一つの単位格子中の4 (CaO)x(A)y(B)z∙yH2O の質量mはm = 4 M/NA(M は鉱物 のモル質量でNA はアボガドロ定数)であり、また、m = ρV(ρ は密度でV は単位格子の体積)
である。
この鉱物の組成を決めるため、0.500 gの濁沸石をるつぼに入れ、2 mLの濃塩酸を加え、90 ºCまで加熱した。その後試料を蒸留水で洗い、120 ºCで数時間乾燥させた。得られた不溶 性残留物を別のるつぼ(るつぼの重さ m0 = 14.375 g)に入れた。それを質量が変化しなくな るまで 900 ºC で煆焼(訳者注:灰状になるまで加熱すること)させた。るつぼと内容物の最終 的な重さはm1 = 14.630 gであった。残留物は純粋な二元化合物(二種類の原子から構成さ れる化合物)であり、塩素原子を含んでいなかった。
2. A 、Bおよびxと zの値を決定せよ。
濁沸石のいくつかのサンプルはオレンジ色であった。この呈色は、カルシウムの一部が元素 Eに置き換わった不純物の存在によって起こり、その化合物の化学式は以下のようになる。
(EiCa(1‒i)O)x(A)y(B)z∙yH2O
0.500 g の試料を硝酸に溶解させると前と同じ沈殿物を与えた。沈殿物を分別後のろ液に、
NH4SCN を数滴加えると、溶液は鮮やかな赤色になった。そこに過剰の濃アンモニア水 (NH3)を沈殿が完全に生成するまで加えた。その沈殿物をろ集し、水で洗浄した後、
1 mol L‒1 の硫酸(H2SO4)に再溶解させてから、過剰の亜鉛粉末を加えた。余分な金属亜鉛
はろ過によって除去し、得られたろ液を 100.0 mL のメスフラスコに移し、蒸留水を加えて 100.0 mLに定容した。
フランスの Espira-de-l’Agly鉱床からの濁沸石 (© Christian Berbain)
51st IChO – Preparatory problems 2
そのうち 20.0 mL を滴定用フラスコに移し、Ce(SO4)2 の濃度が 2.00 mmol L‒1となるように 1 mol L‒1 の H2SO4に溶かした溶液を用いて電位差滴定(飽和カロメル電極(SCE)を参照電 極として用いた)を行ったところ、等量点に到達するのにCe(SO4)2溶液を5.15 mL要した。
3. 不純物Eを特定せよ。
4. 被滴定溶液の調製の際に起きたすべての化学反応式と、滴定の反応式を書け。
5. 不純物Eの量を決定せよ。(Caに対するmol. %で表すこと) 6. 当量点での電位Ee.p.が以下の式で表されることを示せ。
𝐸𝐸e.p. = 1
2 (𝐸𝐸°(𝐄𝐄3+/𝐄𝐄2+) + 𝐸𝐸°(Ce4+/Ce3+))
7. 以下の表に従って、どの 2 つの化合物がこの滴定の指示薬としてふさわしいか決定せ よ。
指示薬 Eo (V /SCE) 色
酸化型 還元型
ジフェニルアミン-4-スルホン酸ナトリウム 0.60 青 無色
5,6-ジメチル-1,10-フェナントロリン 0.73 黄色 赤
3,3’-ジメトキシベンジジン 0.54 赤 無色
サフラニンT 0.00 紫 無色
4-エトキシクリソイジン塩酸塩 0.76 赤 黄色
1,2-ベンズアントラセン 1.00 無色 無色
ゼオライトは、特異的で広い表面領域や組織化された骨格、数多くの酸性サイトを有するこ とから、不均一触媒として広く用いられている。ゼオライトの組織化された細孔系は分子ふる い効果を示す。この効果により、反応物や生成物がゼオライトの細孔の大きさに近い動力学 径(分子が障害物と衝突する際の一般的な長さ)を持つ反応において選択性の向上がみら れるときがある。濁沸石の場合、最も大きい細孔の直径は dmax = 0.604 nmである。ちなみに、
ベンゼン、1,4-ジメチルベンゼン、トルエンの動力学径は0.585 nmで、1,2-ジメチルベンゼン の動力学径はd = 0.680 nmである。
次の反応について考えよう。
CH3
F + G
Cl O
AlCl3
8. 2種類の主生成物FとGを描け。
9. 濁沸石もこの反応の触媒として使用できる。濁沸石の細孔系での反応において、F と G のどちらが主に生成するか答えよ。
51st IChO – Preparatory problems 3
298 Kでのデータ:
Eo(E3+/E2+) = 0.53 V /SCE Eo(NO3‒/NO2) = 0.56 V /SCE Eo(Zn2+/Zn) = ‒1.00 V /SCE Eo(Ce4+/Ce3+) = 1.09 V /SCE E(SCE) = 0.24 V
Eo(Ox/Red) (V /SCE) = Eo(Ox/Red)(V /SHE) ‒ E(SCE)(V)