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<2 実践事例>

実践事例1

1 題材名 “Let’s Create a Great and Cute Robot” (第1学年)

-想像するわくわくを,発信するワクワクへつなげよう-

2 題材観

(1) 英語で伝える喜び

ほんの一言や,その場で思ったことなどを英語 で伝えられたとき,私たちはコミュニケーション を図ることができた喜びを感じます。例えば,買 い物や電話をするときのような日常生活における 場面でも, 英語でやりとりすることで「伝わった」

という喜びや,言いたいことを英語で言えた達成 感が得られることはよくあります。

説明する,質問する,依頼する,紹介するなど 人が生まれてから言葉を獲得してきた過程をたど るようにして, 新しい言葉を習得していく中で「伝 わった」喜びを感じられることは,英語を学ぶこ との大きな特長でしょう。

(2) 自分の思いや考えを伝える喜び

他の人が発信した英語をまねして言ってみたり,

例文を言うことができたりすると,そこに自分の 思いや考えを込めたくなるでしょう。例えば,

“What food do you like?” “I like apples.”

のよう な会話で終始していたものが,

“What food do you like?” “I like apples. I eat apples every day.”

“What food do you like?” “I like apples. How about you?” “I like apples, too. And I like grapes the best.”のように,会話の内容が詳しくなってい

きます。発話の量にも質にも変容が見られるとい うことです。

そして,例文をそのまま伝えることに成功した 時よりも,自分の思いや考えを相手に伝えられた ときのほうが,より豊かなコミュニケーションが とれたと感じられるのではないでしょうか。自分 の思いや考えを誰かに伝えることに喜びを感じる としたら,自分の思いや考えをふんだんに盛り込 むことができる話題であれば,人は積極的に他者 とかかわろうとするのではないでしょうか。

そのような話題であれば,英語で日常会話をす ることにとどまらず,英語でプレゼンテーション することもスピーチをすることも,ディベートを することも,ディスカッションすることも喜びを 感じながら取り組むことができるでしょう。

(3) 子どもとロボット

人と会話ができるロボット,感情を表すロボッ ト,失敗から学ぶロボットなど,現代のロボット 技術の進歩には目覚ましいものがあり, 「ロボット に何ができるだろう」という問いに対する答えは,

驚くほど多様です。

先日,囲碁の世界チャンピオンに人工知能を搭 載した囲碁ロボットが勝利したことをニュースで 見ました。携帯電話のショップでは,ペッパー君 が私を出迎えてくれまし た。ロボットの進歩には 限界がないと思えば思う ほど,ロボットについて 想像するということにわ くわくを感じずにはいら れません。

本題材で子どもたちは,想像したことを英語で 伝え合いながら,理想のロボットを創っていきま す。子どもたちがロボットについて考えるとき,

家庭用ロボットや,産業用ロボットが思い浮かぶ かもしれません。しかし,本題材では「人型ロボ ット」にイメージを置いて考えていきたいと思い ます。なぜなら,一つのロボットに子どもたちの 考えが多く反映されるようにしたいからです。日 本を代表する鉄腕アトムやドラえもんなどのキャ ラクターを越える,個性的で,機能的な,でもそ れでいて人間らしさも感じられるような究極のロ ボットを開発するとなれば,子どもたちはきっと 想像することにわくわくしながら意欲的に学習に 臨むのではないでしょうか。

(4) 想像を英語に

子どもたちは,三人称単数現在形や助動詞

can

を用いることで,自分や友だち,有名人などにつ

いて様々な動詞を使って説明することを経験しま

した。自分の考えたロボットについて説明すると

き,speak, play, sing のようななじみのある動詞

をもとに英文をつくり始める子どもがいるでしょ

う。また,

fly

drive

などの未習の動詞を自発的

に求めたり,encourage や

cheer

といった動詞を

(2)

辞書で調べて用いたりする子どももいるでしょう。

動詞だけでなく,外見や性格を表す語句も用いら れるでしょう。子どもたちは幅広い表現を用いて,

自分たちの思いや考えがたくさん詰まったロボッ トを生き生きと創りあげていくでしょう。表現し たいという子どもたちの気持ちを大切にしながら,

新しい語句を学ぶきっかけとし,表現の幅を広げ ていきたいと考えています。そして,自分の思い が込められた表現をまとめていくことで,自分の

理想とするロボットにより近づいていくことでし ょう。

自分の思いや考えがふんだんに盛り込められた 英語でロボットを表現するとしたら,子どもたち は誰かに「伝えたい」と思うでしょう。英語で発 信するワクワクを,仲間とともに味わいながら活 動している子どもたちの姿が見られることを期待 しています。

参考文献:三宅なほみ・東京大学

CoREF・河合塾 編著(2016)

『協調学習とは-対話を通して理解を深めるアクティブラーニング型授業』 北大路書房

『CNN ENGLISH EXPRESS』 朝日出版社

ヨシタケシンスケ(2014) 『ぼくのニセモノをつくるには』 ブロンズ新社 参考資料: 「Robotics: Facts」http://idahoptv.org/sciencetrek/topics/robots/facts.cfm 「61 Incredible Things Robots Can Now Do」

http://www.popularmechanics.com/technology/robots/1872/what-robots-can-do-now/

3 学習指導要領との関連 (1) 言語活動

イ 話すこと

(イ)自分の考えや気持ち,事実などを聞き手に正しく伝えること。

4 授業実践

(1) What’s the image for robots?

授業者はアニメや漫画で登場するロボットの写 真をいくつか用意し,知っているロボットについ て英語で紹介してみようとなげかけました。子ど もたちは三人称単数現在形や助動詞

can,さらに

肯定文だけではなく,否定文などの既習事項を駆 使して表現していきました。 話題が 「ドラえもん」

に移行してくると,より詳細な説明が子どもたち から出されました。

ドラえもんについての説明

次に,できることや長所を表す紹介文を

great

な部分,欠点や人間らしさを表す紹介文を

cute

な部分という設定を共有した後で“Doraemon is

not perfect, but Doraemon is a great robot.

Doraemon is great and cute. We love him. Let’s

make a great and cute robot.”となげかけました。

子どもが考えたロボット

(2) Thinking about a great and cute robot.

子どもたちは自分が考えたロボットについて発 表していきました。それぞれのロボットの特徴を おおよそ次の四つのカテゴリーに分類しながら板 書 し ま し た 。 ①

can/can’t

likes/dislikes

③profile ④special skill

その後四人班をつくり,班で一人一つのカテゴ

(3)

リーを担当しそれについての英文をつくるよう促 しました。そして,次の時間で担当した内容につ いて班のメンバーと伝え合いながら一つのロボッ トをつくろうと授業者からなげかけました。

子どもたちは,担当した内容について英語でワ ークシートに書き始めました。

・My robot can fly. ①

・My robot likes singing. ②

・The robot is 2 heads tall. ③

・The robot has a pocket. ④

など 英語で表現したいことがうまく思い浮かばなか ったり,何を書けばよいのかというアイデアを求 めようとしたりする子どもには,ヨシタケシンス ケさんの『ぼくのニセモノをつくるには』という 本を参考にした英語の資料を提示しました。子ど もたちは,資料の絵や英文から自分にはない新た な視点を得て,創造力をかきたてられていきまし た。その後,同じカテゴリーを担当している子ど も同士でグループをつくり,意見が交換できるよ うにしました。

子どもたちのワークシートや「追求の記録」に は,次のようなことが書かれました。

カテゴリーに分かれて考えた記録

(3) Sharing the idea in the group.

担当したカテゴリーについての情報を班のメン バーと英語で共有しました。ホワイトボードに班

のメンバーが伝えたアイディアを書きながら共有 していくことで,話したことがきちんと伝わった かどうかをリアルタイムで確認しながら進めまし た。ロボットの

great

な部分を赤で,cute な部分 を青で書くようにして,great and cute なロボッ トを創造していきました。はじめは授業者が各班 の話し合いに参加しましたが,次第に子どもたち 同士で,互いに話された英語について真意を確認 したり,伝わらなかった部分については言い換え たりしていく姿が見られました。子どもたちは英 語で伝え合うことで,それまで思いつかなかった 表現や新しい考えに出会い,英語表現の幅を広げ ていきました。また,班でロボットに関するおも しろいアイディアを創りあげていくなかで,より 魅力的なロボットになっていくことを実感したよ うです。新しいアイディアが出たときに,それも 書き加えながら,班で創るロボットのオリジナリ ティはどんどん増していきました。

A: OK. My turn. He uses the laser beam.

B: Please say that again.

A: Laser beam.

B: That’s cool! OK. How do you spell laser beam?

A: L.A.S.E.R. B.E.A.M.

B: OK. (Writing…) He can use?

A: Ahh, Yes. He can use the laser beam.

C: Where is the laser beam from?

A: The laser beam is from eyes.

B: Wow! Very nice. He is strong? Is he strong?

A: What is strong?

B: Strong…(Gesture) …強い!

A: Oh, yes. He is strong!

B: *But he doesn’t like mouse, right?

D: *He doesn’t like mouse.

B: He is great and cute!

・ ・

以下は子どもたちのつくったロボットの例です。

The robot shoots laser beam. He can fly. He can eat eggplants. He is from space. He can stretch his arm. Very smart. He can eat many humans.

But he can’t use a smart phone. He doesn’t like mice. He likes croquettes.

(4)

班で創ったロボットをプレゼンする

班のプレゼンが終わった後,授業者は “Let’s

make the No.1 great and cute robot in this class!”となげかけて,改めて自分の考える究極の

ロボットについて書きました。班での話し合いの 前に書いたものよりも,すごくてかわいい,そし ておもしろいロボットがそこに書かれました。

子どもが題材の終わりに創ったロボット

・自分の考えたロボットについて伝えることが できてうれしかった

・ロボットについてどんどん工夫を盛り込めて おもしろかった

・他の班ではレーザー光線を出していて,自分 では考えつかなかったおもしろい発想が聞け た

・班での話し合いやクラスの発表会でたくさん 英語を話したら,自分の英語に具体性が出て きたことを実感した

・今度の題材も,自分の思いや考えが込められ た英語をどんどん伝えていきたい

など

自分の想像をふくらめることができたという開

放的な気持ちと,それを英語にして,友だちに伝

えられたという達成感に浸る子どもたちは,上記

のような感想をもちました。仲間と共に活動しな

がら「次は,他の人が思いつかない考えを伝えて

みんなを驚かせよう」と目を輝かせる子どもたち

は,近い将来自分の思いや考えを世界にむけて発

信していくのではないでしょうか。

(5)

実践事例2

1 題材名 “Important Things to Communicate with People Who Have Different Cultures”

(第3学年)

-雑談だって,議論だって,英語でできる!-

2 題材観

(1) ことばを学ぶこと

雑誌を読んだりテレビを観たり,友だちや家族 と話したりすることで,私たちは新しい情報や異 なる考えに出会い,日々多くのことを学んでいま す。また,そのやりとりの中で「ことばそのもの」

も学んでいます。言い換えれば,ことばを使い,

ある文脈において自分が意図する機能が果たせた ときにはじめて「ことばを学んだ」と言えるでし ょう。つまり,他の誰かと思いや考えを伝え合う 中で,伝わったり伝わらなかったりした経験を繰 り返しながら,自ら適切なことばを選んで使って いくことが,ことばを学ぶことであるとも言えま す。

英語で伝え合うことに関して言えば,多くの人 が苦手意識を感じては誤解や失敗を怖れ,ことば を学ぶ機会や新しい考え,多くの人の思いを知る 機会さえも失っているのかもしれません。しかし,

英語を用いたやりとりにおいて, 「伝えたいことが 実際に伝わった」 「相手の言いたいことが理解でき た」というような実感が積み重なれば,さらに多 くの人々の思いや考えにふれ,主体的にことばを 学ぶ機会につながっていくでしょう。

母語でない英語でやりとりをする際,時にはう まく意図が伝わらなかったり,誤解を招いてしま ったりする経験をすることがあります。また,相 手の意図していることが理解できず,不安になっ たり戸惑ったりする場面もあるでしょう。そのよ うな経験の中で,伝え方を工夫したり,語句を選 んで用いたり,あるいは,相手との微妙な解釈(ニ ュアンス)の違いを調整したり,相手が本当に伝 えたいことを推し測ったりする必要があります。

なんとかコミュニケーションが成立するようなや りとりの経験は,英語を「使えることば」として 学ぶことにつながると言えるはずです。このよう に,英語で思いや考えを伝え合うことは,英語と いうことばそのものを学びながら,新しい考えや 発想などを学ぶ機会につながっていると言えるの でしょう。

(2) 母語ではない英語で考えを伝え合うために 友だちや職場の仲間など,異言語・異文化をも つ人々に自分の思いや考えを伝えるためには,英 語で相手に伝わるような工夫が必要でしょう。わ かりやすく伝えるための,英語ならではの工夫が いくつか考えられます。

①結論を先に伝える

英語を話すときに母語の影響を受けることがよ くあります。例えば,日本の文化では,相手に敬 意を払うことから婉

えん

曲的に伝えたり,間接的に断 ったりする傾向がありますが,英語ではそうする ことで,相手の意図がつかめず,誤解につながる こともあります。

A: Are you free tomorrow? It’s my brother’s birthday. We’ll have a party. Can you come?

B: I think it’s nice.

But I have a lot of things to do tomorrow.

A: So, you can come or you can’t come?

下線部の例では,最終的に断っているのかどう か,紛らわしく思われる状況が考えられます。 「来 たいんだよね?忙しいのはわかったよ。で,遅れ てでも来るの?来ないの?」と尋ねたくなるので しょう。英語では,はっきりと結論を示した後に,

感謝の気持ちや新しい提案を伝えることが誤解を なくし,明確に意図や思いが伝わることだと考え られます。上の例で言えば,

“Sorry, but I can’t come. I have lots of things to do. I’ll give him a present next time we meet. Thanks for inviting

me anyway. ”

のような応え方が英語流でしょう。

このように,自分の思いや考えをわかりやすく伝

えるためには,はじめに「賛成か反対か」のよう

な結論,あるいはいちばん伝えたいことを示すこ

とが欠かせません。議論したり意見を伝え合った

りする場面でも,理由を述べたり詳しく説明した

りする前に,結論を示すことでわかりやすく伝え

られるでしょう。以下の下線部は,わかりやすく

伝えるための一例です。

(6)

【相手の考えに賛成する】

I think so, too.

I like your idea.

I have the same idea.

Your idea is very nice.

【相手の考えに反論する】

I don’t think so. You said “…,” but I don’t….

I disagree with John. We really have to….

It’s hard to ….

【新しく提案する】

I have an idea.

I agree with you, but it’s not easy. So….

How about…?

結論が明確でないときであっても,聞き手が話 し手の意図や思いを推し測って理解しようとした り,聞き返しや質問をすることで相手の真意を知 ろうとしたりすることも欠かせないでしょう。ま た ,

“I understand your point, but I have a different idea.”のように,相手の意見や考えなどを

一度認めてから,自分の考えを伝えていくような 方法も,実際の議論の場面ではコミュニケーショ ンの一つとして考えられます。

②やりとりの中で意味内容に焦点をあてる 母語ではない英語で思いや考えを伝え合うとき には,うまく表現できないことや途中でことばに つまってしまうこともあります。外国語として英 語を用いるすべての人に共通する障害として,語 句や文法などの形式が伝えたい内容に追いつかな いことが挙げられます。相手との英語によるやり とりの中において,語句や文法が適切かどうか気 にするあまり,思いや考えを伝えることをあきら めてしまったり,

“Yes, yes.”とあいづちだけで対話

を終わらせてしまったりすることもあります。

形式にこだわりすぎず,とにかく単語や短文を 重ねていくことで,ある程度意味のあるやりとり は可能です。自分の考えを述べ,他の人と意見を 交換し,自分とは異なる考えに気づくことが議論 においては優先されるべきでしょう。正しく伝え るための形式は,伝え合う経験ややりとりの中で 少しずつ習得していきます。伝え合う経験をする 前に形式の習得を待っていては,その機会を逃し てしまうのです。英語で考えを伝え合うやりとり の中では,ことばを使いながら新しい情報や考え との出会いを楽しむ姿勢が大切なのでしょう。以 下はやりとりの中で意味内容を確認している会話 の一例です。

A: You look so sleepy today.

B: Yeah, I had to stay up late last night.

A: What brought you stay up so late?

B: Well,…my computer.

A: What do you mean?

Did you work at home until late?

B: I mean, I tried to fix my computer.

It’s too old. I gave up fixing it finally.

A: Oh, I just got a new computer yesterday.

You should go to a new shop near my house.

下線部では夜更かしした理由として「パソコン がね」と答えています。「どういうこと?」「遅く までパソコンで仕事をしていたの?」 「いや,パソ コンを直していたんだよ」というやりとりから,

「昨日ちょうどパソコンを買ったんだけど,その お店に行ってみてはどうか」という話題になり,

互いの真意を確認しているようすがうかがえます。

③言い換えたり例を示したりする

異文化をもつ人々と思いや考えを伝え合うため には,相手の言語や文化をふまえた伝え方が必要 でしょう。また異文化をもつ人々とは,誤解が生 じることや話が通らないことも少なくないでしょ う。英語を母語としない人同士であれば,なおさ ら,ことばとしての壁は大きいものになり得るか らです。相手の文化にないものを伝えるときや相 手に理解されにくいと判断した際に,話し手が相 手の文化をふまえて伝えていくことは,円滑なコ ミュニケ-ションには欠かせません。以下の下線 部は,言い換えと例を示す表現の一例です。

I think students should work part time. They can learn about the value of money. They should

→聞き手には難しいのではないか?

know that money is important. They should

→the value of money の言い換え

know how to make money and use money, too.

→They should know about the value of money.の具体例

聞き手のもつ言語や文化背景などをすべて考え て伝える工夫をすることは不可能でしょう。しか し,言い換えたり具体例を示したりすることで,

なるべく多くの人にとって分かりやすく伝えてい

くことが可能です。

(7)

(3) 異文化をトピックとすること

異文化をもつ人々との考えの違いによって起こ る問題は,度々ニュースに取りあげられ,実際に そのことについて議論することが今後考えられま す。また,そういった問題は簡単には解決できな いことが多くあります。考えを伝え合うことで互 いの文化に対する思いを知ることができ,文化の 違いに理解を深めていくこともできるでしょう。

①温泉施設をめぐる文化間問題

2013 年9月,アイヌ語講師として北海道を訪れ ていたマオリ族の女性が,温泉施設にてタトゥー を理由に入浴を断られたことをきっかけに,異文 化をもつ人々とのかかわりが大きな議論となって います。伝統的な言語に関

する会合に参加していたに もかかわらず,マオリの伝 統であるタトゥーを理由に 入浴を断られたことで,日 本とマオリ側の両方の立場 から異文化を見つめ直す声 があがっています。 「他国の 文化が理解されないことは 悲しいこと」という意見が

ある一方で, 「他の客に安心して温泉を楽しんでい ただくためには仕方のないこと」という意見もあ ります。この女性はそれぞ れの文化の違いを認めつつ も ,

“Our tattoos mean where we’re from, and who we are.”

と説明し,タトゥ ーはアイデンティティそのものであることを強調 しました。日本では,多くの施設で体にタトゥー がある人の入浴は禁止されています。 「郷に入って は郷に従え」「個室温泉に行けばよい」「外国文化 への理解が薄い」 「外国人には寛容になるべき」な ど多くの意見が世界中で聞かれます。どちらにも それなりの理由

があり,大切に している文化が あることに間違 いありません。

観光庁のアンケ ート結果によれ

ば,56%の施設で国籍に関係なくタトゥーがある 人の利用は断られているそうです。来日した人た ちとの考え方の違いは温泉施設だけでなく,あら ゆる場所で見られることでしょう。店,温泉施設,

駅,学校,ホームステイ先となり得る自宅で,実 際にかかわる私たち一人一人が異文化をもつ人と どのようにかかわっていくかについて,問われて いくことになりそうです。

②異文化をもつ人々とのかかわり

オリンピックを契機にさらなる国際化に向け動 き出している日本では,これまでにないほど,異 文化をもつ人々とのかかわりが増えていくことに なるでしょう。日本を訪れる外国人観光客数は 1300 万人を越えました。CNN では,日本での「民 泊」がニュースとして世界に向けて放送され,日 本文化がすぐ近くで体験できることや現地の人

(日本人)と交流できることに賛同しながらも,

日本人が異文化に慣れていないことや英語による コミュニケ-ションを苦手とすることも伝えてい ます。

これまで,私たち日本人が異文化をもつ人々と かかわった経験は決して多くありません。そのよ うな中で,苦労しながらも英語を用いて思いを伝 えていくことは,異文化をもつ人々とのかかわり について考える大きなきっかけとなるはずです。

異文化をもつ人々とのかかわりについて,自分の ことばで伝え合い,共に考えていくこと自体が,

これからかかわるであろう,異文化をもつ人々に 思いを寄せ,将来の日本の姿を考えることにもつ ながるかもしれません。

(4) 子どもたちが英語で伝え合うこと

雑誌を読んでいて好みの服があれば,売ってい る場所や値段が気になり更に読み進めて,情報を 集めようとします。ニュースでどこかの国の不思 議な文化を扱っていれば,それを話題として誰か と話したくなります。それが異言語や異文化に由 来するものであれば,今までにない新しい発想や 情報に必ず出会うでしょう。

子どもたちが数少ない語句や文法で思いや考え を伝えていくことには限界があります。それでも,

伝え合おうとすることには,価値があります。互 いの意見が影響し合い,共通の考え方を見いだし ていくこともあるでしょう。互いに理解できず,

苦しみながらも単語やジェスチャーだけで思いや 考えを伝えようとする子どももいるかもしれませ ん。しかし,その過程そのものが,英語を実際に 使いながらことばを学んでいくこと,ひいては英 語を媒体として人の思いや考えを学ぶことにつな がります。伝え合う中でうまくいかないときには,

ジェスチャーやアイコンタクト,表情の変化,こ

とばの言い直し,言い換えなど,これまで学んだ

方略を講じるでしょう。自分の英語がどれだけ伝

わるのか,絶えず確認できるということです。自

分の考えを必死に伝え合おうとする子どもたちの

姿に,将来,異文化をもつ人々と議論しながら平

和や幸せを追い求めている姿を重ね合わせていき

たいと思います。

(8)

参考文献:大下邦幸(2009)『コミュニカティブクラスのすすめ~コミュニケーション能力養成の新たな展望~』 東京書籍 笹島茂(2011)『CLIL 新しい発想の授業~理科や歴史を外国語で教える!?~』 三修社

村野井仁(2006)『第二言語習得研究から見た効果的な英語学習法・指導法』 大修館書店 和泉伸一(2016)『フォーカス・オン・フォームと

CLIL

の英語授業』 アルク

Zoltan Dornyei(2005)(米山朝二・関昭典 訳)

『動機づけを高める英語指導ストラテジー35』 大修館書店 柏木政隆(2016)『CNN

ENGLISH EXPRESS』 朝日出版社

3 学習指導要領との関連 (1) 言語活動

ア 聞くこと

(エ)話し手に聞き返すなどして内容を確認しながら理解すること。

イ 話すこと

(イ)自分の考えや気持ち,事実などを聞き手に正しく伝えること。

(エ)つなぎ言葉を用いるなどのいろいろな工夫をして話を続けること。

4 題材構想

(1) 異文化をもつ人とのかかわりを思い描く 授 業 者 は 子 ど も た ち に

“What Japanese culture do you want foreign people to enjoy?”と

尋 ね ま し た 。 子 ど も た ち は ,

sushi, kimono, kabuki, miso ramen, oshogatsu(New Year’s Day)など,体験してもらいたい日本文化を次々と

挙げていきました。そこで,授業者は,日本の大 学生がアメリカ人の友達に日本文化を紹介してい る動画を子どもたちと観ることにしました。

(https://www.youtube.com/watch?v=tzytitiRQTc) Eric

というアメリカ人が,Yuki と

Kei

という大 学生2人と温泉施設を訪れ,初めての温泉に大喜 びしている様子を, 子どもたちは 「温泉いいよね!」

「浴衣似合ってる!」とつぶやきながら楽しみま し た 。 ま た , 日 本 の 大 学 生 二 人 が

Yukata is clothes after taking a bath. We can choose the size and the color.” “This is fish therapy. I felt comfortable.” “Dagashi is a traditional snack.”

Ramune, this is a special bottle. I’ll show you how to open it.”

というような英語を用いて,温 泉施設にある様々な日本文化を紹介していく姿を 観て,子どもたちは「英語上手!」 「伝統的って話 してる!」 「special bottle と言えばいいんだ」と 言いながら,これまで取り組んだ,日本文化を紹 介する活動を思い起こした子どももいたようです。

動画を見た後,ペアで自由に感想を述べ合うよう に伝えました。子どもたちは以下のような思いを 伝え合っていました。

・Onsen is a good idea. I like it, too.

・I know “Ooedo-onsen.” It’s in Shizuoka, too.

・外国人も一緒に楽しめるからよい

・They enjoyed Japanese food, too. Nice!

・I went to Hakone last year. I saw American.

など ここで授業者から,北海道の温泉施設で入浴を 断られたマオリ族の女性の写真を見せました。見 た子どもたちはすぐ,あごのタトゥーに注目しま した。 「怖い」 「民族だよね?」とつぶやく子ども たちに,“She is Maori, and obviously she has a

tattoo. She wanted to enjoy hot springs, onsen, but the clerks working there said no. Finally, she gave up. She was sad and angry.”と紹介し

た後に,日本を訪れた彼女が,入浴を断られた現 地ニュースを紹介しました。

(http://www.maoritelevision.com/news/latest- news/woman-refused-entry-japanesebathhouse -because-traditional-maori-tattoo)

この動画は現地マオリ語のニュースですが,英 語で字幕が付けられています。

ALT

がニュースの 内容を簡単にまとめて英語で伝えていく中で,日 本の対応に疑問を投げかけられていることにショ ックを隠せない子どもや「この話聞いたことあ る!」 「タトゥーは温泉禁止なんだよね」と考えを 述べ合う子どもたちもいました。

ここで授業者から“People who have tattoos

can’t enjoy hot springs in Japan. Have you ever seen this signboard?”と言いながら,授業者はあ

る1枚の写真を見せました。 「お断り,彫り物・タ

(9)

Affirmative Negative

①I think “hot spring”

is the best of Japanese cultures. “Hot” is not only “warmth.”

Actually it means

“omoiyari.”

④Foreign people who

have tattoos look scary.

②Maori tattoos mean

“Who are they?” and

“Who are they from?”

If we refuse tattoos, we will break their characters.

Foreign people should understand Japanese cultures and tradition before coming to Japan.

We want every person to know and enjoy Japanese cultures. It is “happy”

for everyone.

⑥If we go to America,

we must keep

American rules/

Foreign people must keep Japanese rules.

など トゥー」という看板の写真を見た子どもたちは,

「知ってる!」 「やっぱりね」とつぶやく子どもた ちの姿が見られました。そこで,授業者から,

“Do you think it’s good for Japanese people?”

“Do you think we need this?”のようなやりとり

をすると,子どもたちは,近くの人と伝統や文化 をふまえたり,外国人の気持ちを考えたりしなが ら,自分の考えを述べ合いました。授業後,子ど もたちは以下のような感想を書きました。

I want many people to enjoy it. Tattoos are not scary in the world.

Foreign people’s tattoo is fashion, but Japanese people’s tattoo is threat.(脅威)

・Most of many Japanese people don’t have

tattoos. If a few people who have tattoos go to hot springs, other many people don’t enjoy it.

・I want everyone to enjoy Japanese onsen.

Understanding other country’s traditional is important.

Japanese people think people who have tattoos are scary. We can make hot springs for people who have tattoos.

・Cultures are changing. Many people have

tattoos in other countries now.

・タトゥーに意味がある人もいる。 何も考えずに,

全ての人がお風呂に入れなくなるのはちがう

・Tattoo is Maori culture. But Japanese culture

is “tattoo people can’t take hot springs.” I think they should protect Japanese rules.

など

「タトゥーがあっても日本文化を楽しむべきだ」

「日本のルールを尊重するべきだ」などの両方の 意見があることを確認した授業者は,両方の立場 から,この温泉問題を話し合ってみようとなげか けました。 子どもたちは難しいとは思いながらも,

実際に起きている問題であることを実感して準備 に入っていきました。

(2) ディべートで意見を伝え合おう

温泉施設はタトゥーがあっても楽しむべき(賛 成派) ・タトゥーはお断り(反対派)にグループを 分けてディベートに挑戦しました。子どもたちの 意志とは関係なく,ランダムに賛成派と反対派に 分け,賛成派には資料として,英語で書かれたマ オリ族のタトゥーの意味(タトゥーには意味があ り,部族であることを示していること)を渡しま した。反対派には,黒人差別について英語で書か れた記事(トイレが三つに分けられ,男性用・女

性用・黒人用となっていたこと)を渡しました。

「タトゥーの人専用温泉をつくればいい」という 考えが理由もなく書かれていたからです。まず,

それぞれの思いを英語で表現するために,グルー プの中で考えを出し合い,英語で考えを記しまし た。その後,紙上

ディベートという 形で,全てのグル ープの主な意見を 1枚にまとめ,配 付しました。賛成 派・反対派からの,

それぞれの意見を 確認した子どもた ちは,反論や予想 される質問などを 検討し,英語でど

のように答えていくか,アイディアを出し合う姿 が見られました。以下は子どもたちが実際に書い た意見の一部です。

このあと,1時間の準備時間の中で,紙上ディベ

ートをもとに主張を立論し,反論まで予想してい きました。その後,子どもたちは賛成派と反対派 1グループずつがチームとなり,全グループが同 時にディベートを行いました。明確な理由を的確 なタイミングで伝えられた側にカウンターポイン トを加算していく 「カウンターディベート」 とし,

自分たちでポイントを加算しながら,それぞれの チームの考えを共有し合うことを楽しみました。

賛成派は外国人の立場で日本文化に敬意を示した

(10)

り,日本人としてもてなす心に言及したりしてい ました。反対派は日本文化や伝統を守っていくこ との大切さ,異文化に理解は示しつつも,タトゥ ーをもつ人々は日本では危険だと考えられている ことなどを英

語で伝えてい く姿が見られ ました。以下 は,実際に子 どもたちが行 ったディベー トの一部です。

※下線部は自分の主張を明確に伝える英語表現 点線下線部は言い換えや例示の例

つい立ち上がり,夢中で意見を伝える場面

(英語ディベートにて)

ディベートを終えた子どもたちは,ディベート で話題に挙がった内容について,次のような感想 を述べました。

・It’s very difficult to think about it. Japanese

people are kind, but we must keep rules.

People who have tattoos want to enjoy Japanese cultures. We must understand our rules.

・What is “Omotenashi”? I don’t know now.

・Japan is a safe country. Because we have

Japanese rules.

・タトゥーにはいろいろな意味がある。日本のタ トゥーとは意味が違うから,認めてあげてもよ いと思う

・タトゥーがなくても悪い人はいる。見た目や外 見で判断するのはおかしい

We should change rules. Everyone has to enjoy hot springs now.

など

子どもたちの感想は日本語・英語にかかわらず,

教室の中で仲間と共有しました。さらに自分と同 じ思いや考えを発見したり,反論してみたい考え を見つけたりすることで,多様な考えに思いをめ ぐらし,英語で考えを伝え合うことにつながって いくことを期待しながら次時に入っていきました。

(3) 実際にどのようにかかわるか考えよう 子どもたちは前時での意見交換を経て,外国人 としての立場,日本の文化を貫きたい側の立場,

両者の立場を知り,互いの主張を理解しました。

そこで,実際に温泉を訪れた外国人役,タトゥー がある人は入場を制限するという温泉施設のスタ ッフ役,そこに居合わせた日本人役の3役に分か れ,英語を用いて実際に対話をすることで解決に つなげていく活動に挑戦しました。子どもたちは,

ディベートでやりとりした英語を用いながら,そ れぞれの立場で,実際に感じたことや思ったこと を伝えていきました。ただ “No, you can’t.”だけ ではなく,

“I’m sorry, but you have tattoo. People who have tattoos can’t enjoy here. But you can enjoy Japanese food near here.”や“My tattoos have a special meaning. Not bad.” “If you cover tattoos, you can enjoy hot springs.”

というよう な会話が生まれました。また,日本人役の子ども からは,“Please say Ok to him. He wants to

enjoy hot springs. He has a tattoo, but he is not bad.”のように,異文化をもつ人に敬意を示した言

動を英語で表現したり,新しい提案をしたりする

People who have tattoos should enjoy

hot springs in Japan. Hot spring is a traditional Japanese culture. They should enjoy it and know about our culture.

I don’t think so. Japanese people think tattoos are bad. It’s our traditional.

They should know it. It is our traditional culture.

Can you say “All people who have tattoos are bad?” I don’t think so. Some people who have tattoos are not bad.

Japan said, “We’re waiting for foreign people with an omotenashi heart.

Most Japanese people who have tattoos are bad people. If they come to hot springs, it will be dangerous.

(11)

子どもの姿もありました。日本語でそのような子 どもたちの思いを確認すると, 「タトゥーを隠せば 入れることを伝えたかった」 「どうしても温泉に入 りたくて,何度もお願いした」 「タトゥーのある人 は入れないというルールは守ってもらわないとい けない」と述べた通り,それぞれの立場で強い思 いが英語で表現できつつある実感をもったようで した。

子どもたちは,様々な人の立場を考え,実際に 三者の立場を体験して感じた「日本の文化を大切 にしているだけ」 「ルールは守らないといけない」

「日本を楽しんでもらいたい気持ちはみんなもっ ている」 「異文化をもつ人を相手にするのは難しい」

という思いを大切にしながら,次時に入っていき ました。

(4) みんなで議論しようⅠ(キーワードづくり)

子どもたちは,前時にそれぞれの立場で経験し たときの思いをもって,議論をしていきます。ま ず

“Important Things to Communicate with People Who Have Different Cultures”

(異文化を もつ人々とかかわるために,大切なこと)という テーマで自分の意見メモをつくります。 「これは難 しい!」とつぶやく子どもたちは,じっくり考え 込んだり,仲間に「大切なことだよね?」と確認 したりしていました。授業者は,パラグラフや賛 成反対にこだわらず,単語や思いついたまま自由 に書いていくことを勧めました。ここまでディベ ートや三人でのロールプレイングの中で即興的に 伝えていくことや,伝えたいことが上手に表現で きなくても,互いに推し測ることで伝え合うこと ができる実感をもっている子どもたちは,英文で 書く子どもだけでなく,メモをもとにその場で即 興的に話そうと考えている子どももいるようでし た。また, 「文にならなくても,とにかく分かる範 囲の単語で話す」というような,これまでの3年 間の英語の授業で仲間と共有してきた視点を大切 にしている様子も見られました。子どもたちには 伝えたいことに追いつくような形式(言語材料)

が不足しているかもしれません。表現されたシン プルな英語から,その子どもが本当に伝えたいこ とを推し測り,伝えたいことにさらに近づけるよ うな形式に関するフィードバックは惜しみなく伝 え て い きま し た。 以 下は 子 ど もた ち の考 え る

“Important things to communicate with people who have different cultures”の内容の一例です。

・Smile, kind, tell my idea (強めに言わない)

・try to understand your idea

・We should understand each other’s culture

・Don’t want people who have different cultures

to do something like our cultures

・Talking the most carefully not to make him

feel bad.

・Greeting is important to start talking with

everyone.

・Look their eyes.

・Don’t be afraid of people

・Accept that there are different cultures in the

world.

・We should experience much.

・Say “Hello” , say good points of your country

・We are on the earth, human. We are SAME.

・Don’t judge people by their first contact

・Have a courage. Brave. Try to talk.

など その後,“Important Things to Communicate

with People Who Have Different Cultures”とい

うテーマで自分の意見を書いた子どもたちに,キ ーワードをカードに書くように勧めました。その 子どもの思いや考えの核になる部分であり,これ からの議論において,即興的に伝えていくときの 足場かけになり得ると考えられます。キーワード についてどのような語句を書こうか,自然と仲間 に相談する子どもがいたり,英英辞典で語を調べ たりする子どもの姿も見られました。子どもたち は,互いにどのようなキーワードを書いたのか気 になり,キーワードを何度も書き直す子どもや早 速近くの仲間と伝え合おうとする子どもも見られ ました。

(5) みんなで議論しようⅡ

子どもたちは 前時において考

え た

“Important Things to Communicate with People

Who Have

Different Cultures”についてのキーワードカード

を持って授業に臨みました。まず授業者は,学級 全員のキーワードを表にして配付しました。互い のキーワードが気になっていた子どもたちからは,

仲間のキーワードを見て, 「なるほど」 「どういう

(12)

意味?」 「同じ!」 というような声が聞かれました。

そこで,互いのキーワードカードを持ち,話して みたい仲間のところへ行き,意見交換をするよう に伝えました。自分と同じキーワードを書いた仲 間と話す子ども,自分とは反対の意見を書いた仲 間と話す子ども,初めてみた語句をキーワードと して選んだ仲間と話す子ども,それぞれペアを替 えたり,ペアから3人4人へとグループを編成し たりしながら,英語でそれぞれのキーワードと選 んだ理由を伝え合いました。前時までの英語ディ ベートで用いた“I think so, too.”や“Really? Why

can you say that?”などのような自分の主張を明

確に伝えたり,相手の意見を聞き出す英語表現を 用いたりする子ども,“For example,…” や“It’s

very important to understand each other, I mean, we need to ...”のように例示したり言い換

えたりする子どもも見られました。

子どもたちは,それぞれの意見や考えを「伝わ っているかどうか」 「理解してもらえているかどう か」確認しながら会話を進めていくことで,自分 の思いや考えが伝わっている経験をしながら,少 しずつ“Important things to communicate with

people who have different cultures”というトピ

ックに対して,英語で伝えていくことに自信をも ち始めることができました。最初はキーワードと 選んだ理由から始まった会話も,子どもたちが複 数の仲間と即興的に意見交換をしていく中で,自 由に例を示したり,キーワードだけでは推し量れ ない相手の経験を聞き出そうとしたりするような,

英語表現を駆使してトピックそのものを楽しむ姿 が見られていたからです。英語を話すことに不安 を感じたり抵抗を感じていた子どもも,相手が理 解していることを感じ取ったり,相手も「伝わっ ているかどうか」不安な気持ちを抱えていること を知ることで,表情やジェスチャーなどを効果的 に用いることで,会話を通した意見交換を楽しむ ことができたと言えるでしょう。

英語で表現することに自信をもった子どもたち に,授業者から,仲間みんなで意見交換をするこ とを提案しました。黒板に“Important things to

communicate with people who have different cultures”とだけ書き,子どもたちの伝え合いを促

しました。やや不安そうな子どもたちの表情も見 られましたが,“My keyword is ‘Each other.’ I

think we need to know each other’s culture to understand. It’s difficult, but I want to do it.”

という意見が一人の子どもから伝えられると,

次々と意見を伝えようとする姿が見られました。

以下は議論の場面で子どもたちの話した一例です。

・My keyword is “Try to communicate” because

we have to talk to people, umm,…first people? New people? Yes, we should talk first to understand.

I want to say, “Love foreign countries” is important. We have to see different cultures to understand. And we should learn the language, too. When you go to Spain, you have to speak Spanish. If you speak Spanish, you can enjoy and understand people and cultures.

・I wrote “Don’t judge.” I sometimes think he or

she is very bad when I talk to them. Now I think it’s not good. To know him or her, we have to talk a lot.

・“Break the wall” is my keyword.

To understand, we have to talk. But sometimes we are too shy. We should be friendly not to be shy.”

など 子どもたちは,発表された意見に少し意見を加 え た り , 関 連 性 を 見 い だ し た り し な が ら

“Important things to communicate with people who have different cultures”について自分たち

の思いを語っていきました。途中,うまく英語に できず,言い間違えたり間が空いたりする子ども もいましたが,黒板にある既出の仲間の意見を使 ったり,仲間から “each other?”と語句を加えて もらったりする場面もありました。 英語を通して,

仲間の思いや考えを感じ取った子どもたちからは,

異文化をもつ人々との関係だけでなく,人と人と がつながる手がかりを見いだした時間となったこ とでしょう。

英語での議論を終えた子どもたちは,自分のキ ーワードだけでなく,仲間のキーワードや体験談,

思いなどをふまえて,異文化をもつ人々とのコミ ュニケーションについて新しい考えに出会ったり,

自分の考えに少し変化があったりしたことを感じ

たようでした。また,トピックそのものだけでな

く,英語で意見を伝え合うことの難しさを感じな

(13)

がらも,英語で伝え合う中での「伝わらないもど かしさ」は,異文化に対する理解の難しさと重ね 合わさり,伝え合い続けることが必要だと感じた 子どももいたようです。以下は議論のあとに,子 ど も た ち が 書 い た

“Important things to communicate with people who have different cultures”に対する思いや考えの一例です。

・ 「伝わらない」とあきらめてはいけない

・例をあげたり難しい言葉に意味を説明したりし ている人がいたりして,話が理解しやすかった

・I knew there are many different cultures all

over the world.

今後自分やこの国の人々の密 接にかかわる問題だから,異文化への考え方を 根本から考え直さないといけない

・We need to know about people who have

different cultures.

自分たちの常識が他の人の 常識とは限らない。自分たちのことばかり理解 してもらうのではなく,相手のことも理解した い

・We have to realize their ideas and feelings. If

we do this, we can enjoy communicating with people who have different cultures.

・We should do many things to communicate

with people who have different cultures, but we can do it, for example, smile and try to understand. It is needed for people all over the world. It’s important. We are the same people, so we can understand each other. We can change the world!

・“speak friendly” and “Don’t be nervous” are

important, but we should know about the world before we communicate with people who have different cultures.

・Everyone says, “Understand others’ cultures.”

I think so, too. This word is necessary for us.

Japanese people are shy, so we should try to communicate with people.

・I learned we have many ways to communicate

with people who have different cultures. We can make the world which has no discrimination, I think. This discussion is very important to make the world better.

・Change our ideas is important. I want to

change my idea, too. I want more cooperative attitude.

・I’m looking forward to seeing how Japan will

be changing to 2020.

など

子どもたちの中には,

2020

年に日本や日本人が どのようにあってほしいか語ったり「異文化を理 解するためには,その文化をもつ人々と話してみ ないと本当の意味で理解したとは言えない」とい うような内容を英語で表現しようとする子どもも いました。また,英語での議論の中において,仲 間の多様な考えや意見を知ることで,異文化をも つ人々や異文化そのものに対する考え方が変わっ た子どももいました。また,異文化をもつ人々と の関係を考えることで,日本人のコミュニケーシ ョンの図り方や自分自身のふるまいについても見 直す必要性を感じた子どももいたようです。以下 のように,“Important things to communicate

with people who have different cultures”に対す

る思いや考えが,議論を経験することで,さらに 深い考えにつながったようです。

子どもたちの英語は,伝えたいことにまだまだ 届かず,もどかしい思いをしたり,自分の考えが

「しっくりくる」英語に表現できない戸惑いも感 じたことでしょう。しかし,それでも自分の中に ある英語表現を駆使して思いを伝え合う姿は,私 たちが今後,異文化・異言語をもつ人々と共に生 きていく姿そのものだと言えます。英語をことば として用い,伝え合う経験の中で,子どもたちが ことばを通して人々の思いや考えを知り,平和や 幸せを共に追い求めていく姿を願っています。

We should understand foreign culture.

International cooperation.

It’s very important to understand different cultures, but it’s difficult for me. If I meet foreign people or culture, I’ll respect it and I’ll consider their ideas as nice.

To like foreign countries is the most important. Friendly. To try other cultures.

There are so many kinds of people. We should love, know and understand them.

It’s a trigger to talk with foreign people.

If we communicate, we can know and understand their culture deeply. I’d like to go to foreign countries!!

(14)

実践事例3

1 題材名 “Enjoy Shopping in English!”(第1学年)

-買物表現~英語で買物できる喜びを~-

2 題材観

(1) 英語で買物する喜び

海外へ行くと, 買物の機会は必ずあるものです。

その際,日本で普段当たり前に行っている買物と は,まったく違う感覚をもちます。それは,他の 言語を使って買物ができるかどうか不安や緊張を 感じることもあれば,異国で買物ができたことへ の喜びを感じることがあるのではないでしょうか。

普段当たり前にする買物でさえも, 「英語」なら ば,世界中で買物が楽しめるのではないでしょう か。

(2) 買物で使われる表現

海外で買物をする際,なんとか買いたいものが 買えるのは,短いフレーズでも相手に伝わる点に あります。例えば,“This, this. Please.” “Money.

How much?”など単語を並べても買物を成功させ

ることができます。しかし,ここで単語だけでの やりとりで終わらず,買物特有の表現を使って店 員とやりとりし,買物ができたのなら,買物が英 語でできたことに加え,自分の思いがより丁寧な 言い方で伝えられたことの喜びを噛みしめること となるでしょう。同時に,買物を楽しめる場面に も幅が出てくるのではないでしょうか。

一言に「買物」といっても,スーパーマーケッ トで食材を買ったり,アパレルショップでお気に 入りの服や靴を買ったり,レストランやファスト フードなどで食事をしたり, その場面は様々です。

それぞれの買物のシチュエーションで特有の表 現があります。Sunshine1 の「POWER-UP10

Speaking

買物①(T シャツを買う) (P.106) 」で は, 洋品店でのやりとりが取り上げられています。

その中で登場する買物の場面で使われる特有の表 現は以下のようなものです。

Clerk

・May I help you? ・How about …?

・What color do you want?

Customer

・Yes, please. ・I’m looking for ….

・How much is it?

など

買物の表現としてはオーソドックスで,非常に 頻度の高いフレーズであり,様々な場面で思いを 表現できるものです。これらの表現を様々な状況 の中で使用する機会をつくり,慣れ親しんでいく 活動を授業の中で取り入れていく必要があるでし ょう。

(3) タスクで買物表現

様 々 な 状 況 を 設 定 す る 際 ,

Task-Based Language Teaching (以下 TBLT)の考え方を元

に授業を構成していきたいと思います。TBLT と は,学習者にタスクと呼ばれる課題を与え,その 課題を達成するために,外国語でコミュニケーシ ョンをすることを通して学習者の外国語運用力の 育成をねらいとしたアプローチです。このタスク には以下の4つが欠かせません。

① 英語で話す目的がある

② 決まりきったドリルでない

③ 互いがもっている情報に違いがある

④ 語彙や文法を使う必要がある

タスクで活動を行う際,言語を使って,他の対 話者と情報のやり取りなどの意思伝達をすること が大切です。それは人と人とをつなぐ点で大切で あるからです。このことをふまえ,他者とのやり 取りを十分に可能とするタスクで活動を行い,子 どもたちにタスクの中で実用的な表現を学ぶとと もに,人と対話することでかかわり合うことを大 切にしてほしいと考えました。

また,そのやりとりを行った後,実際にどのよ うな表現で相手に伝えられたのか,または, 「言い たい表現があるけど,言えない」 「途中までは言え るけど,本当にこれでよいのか」などという気づ きを共有する時間を設けていきます。ペアや班,

学級内全体で, どのような表現が適しているのか,

別の表現方法はないかなど,共有する際,JTE と

して子どもたちが語彙・文法に目を向けるように

し,また,

ALT

には子どもたちが考えた表現がネ

イティブの視点からも自然なものとなっているか

などを助言してもらい,自分の思いをより正しく

(15)

伝える表現習得につなげていきたいと思います。

(4) 本題材を通して子どもたちに願うこと このように様々なタスクで活動に取り組むこと で, 「言いたい」 と思った表現を学級全体で共有し,

実際の場面で使える表現を習得していくでしょう。

そのことにより,子どもたちは,実際の場面でも 活用してみたいという気持ちになるのではないで しょうか。

子どもたちはこの題材を通して,買物表現を習 得するでしょう。タスクを通して,自分の好みや 要望など,自分の思いを伝えようとします。同時 に,相手が何を伝えようとしているのかを聞き取 り,考え, それに応じるための表現を模索します。

そのような経験を重ねる中で,私たち英語科が主 張する「世界の人々とつながる人」の素地を養う ことにつながっていくことでしょう。

参考文献: 『文法項目別英語のタスク活動とタスク 34 の実践と評価』 髙島英幸,大修館書店

『ヒューマンな英語授業がしたい!』 三浦孝・中嶋洋一・池岡慎,研究社

『第二言語習得研究から見た効果的な英語学習法・指導法』 村野井仁,大修館書店 3 学習指導要領との関連

(1) 言語活動 ア 聞くこと

(ウ) 質問や依頼などを聞いて適切に応じること。

(エ) 話し手に聞き返すなどして内容を確認しながら理解すること。

イ 話すこと

(イ) 自分の考えや気持ち,事実などを聞き手に正しく伝えること。

4 題材構想(全3時間)

(1) Know phrases about shopping.

ウォームアップとして,自分の誕生日に何がほ しいか子どもたちと話をしていきました。子ども たちは,自分がほしいものについて友だちと楽し そうに話していました。尋ねてみると, “Many

books. I want many books.”と答える子どもや,

“I want a lot of money.”などと答える子どもの姿

が見られました。

そこで,授業者は店員役と客役にわかれ,買物 の場面でやりとりしているようすを子どもたちに 見せました。そのやりとりはうまくコミュニケー ションが成立していない,ちぐはぐな会話です。

なぜなら,たった1,2語だけで行われ,相手に 誤解を与えている会話だからです。1,2語では 会話の意図が伝わらないばかりではなく,相手を 不快な思いにさせてしまうことがあります。つま り,正確さと丁寧さに欠けているのです。このや りとりを見た子どもたちは「単語だけの会話で,

お互いに失礼だ」 「表情がよくない。二人ともイラ イラしているようだ」 「命令口調になっている。頼 むときから丁寧にいうべきだ」などの感想を口に しました。そこで,次のような会話が書かれたワ ークシートを配付しました。

One Word Conversation

授業者から,店員と客との会話が,場面に応じ た適切なやりとりとなるように会話を付け加えた り,修正したりして,子どもたちにペアで会話を することを提案しました。子どもたちは,自分た ちなりに考えた表現で会話をしていきました。ペ アで会話をした子どもたちに,どのような工夫が できたか尋ねると,子どもたちから次のような意 見が聞かれました。

・“Help?”ではなく,“Can I help you?”と言っ た方がよい

・“T-shirt, please”にしたほうがよいだろう ・You can say, “I want a T-shirt.”

A: Help?

B: T-shirt.

A: Color?

B: ( ) A: Size?

B: ( ) Price?

A: 15 dollars.

B: Money.

A: Thanks.

A⇒ ( ) B⇒ ( )

参照

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