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土木学会構造工学論文集(2015.3)

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構造工学論文集Vol. 61A (2015年3月) 土木学会

プレストレス木箱桁橋の数値モデル化と剛性評価

Numerical modeling and stiffness estimation for timber stress-laminated box-beam bridges

後藤文彦,尾山龍之介∗∗,斉藤輝∗∗∗,佐々木貴信∗∗∗∗

Humihiko Gotou, Ryunosuke Oyama, Hikaru Saito, Takanobu Sasaki

博(工学)秋田大学大学院工学資源学研究科(〒010-8502秋田市手形学園町1-1)

gotougipc.akita-u.ac.jp

∗∗秋田大学大学院工学資源学研究科(〒010-8502秋田市手形学園町1-1)

∗∗∗秋田大学 大学院工学資源学研究科(〒010-8502秋田市手形学園町1-1)

∗∗∗∗博(工学)秋田県立大学木材高度加工研究所(〒016-0876能代市海詠坂11-1)

While FEM is needed to evaluate the behavior of the on-site timber stress-laminated box-beam bridges, whose shear deformation can be significantly large, it is very dif- ficult to model the detail parts such as prestressed connection, holes in plates, di- aphragms and so on. Firstly, we compare the exact FEM calculations considering the influence of the prestress by the contact problem to the simpler FEM calculations neglecting the prestress by the shared nodes at the adjacent planes between mem- bers. Secondly, we compare the simpler FEM calculations and Timoshenko’s beam theory with some trial shear coefficients to the experimental results. As a result we conclude that Timoshenko’s beam theory can be good approximation within possible cross-section range for the types of timber box-beam bridges.

Key Words: stress-laminated box-beam bridge, shear deformation, Marc, CalculiX キーワード: プレストレス木箱桁橋,せん断変形,Marc, CalculiX

1. はじめに

プレストレス木箱桁橋(オンサイト木橋)1),2),3),4)は,

角材と鋼板または合板を組み合わせて簡単に組みたて られるので,被災地の応急橋としての利用にも期待さ れ,既に数カ所に架設されてその実用性が確認されて いる5).しかし,木材を利用した箱桁構造であるため,

せん断変形の影響を受けやすく,試験体の曲げ試験をし てみないと剛性を予測するのが難しい.曲げ試験によ らずに,わかる範囲の材料定数からせん断変形等の影 響も考慮した剛性を予測しようとするなら,有限要素 法等による数値シミュレーションを用いざるを得ない.

一方で,木材は材料定数のばらつきが大きく,特に 材料定数をコントロールされていない現地製材等も積 極的に利用してこうしたオンサイト施工の木橋を設計・

架設しようとする際,木材の材料定数のばらつきも念 頭においておよその剛性を予測したいだけなのに,プ レストレスを考慮した接触解析の有限要素モデルを作 製したりするのは,材料的なばらつきに比べて過剰な 精度の有限要素解析を行うことになり,つりあいがと れていない.

とはいえ,せん断変形を無視した初等梁理論のたわ みの式を用いてプレストレス木箱桁橋の剛性を予測し たのでは,場合によっては曲げ試験の2倍など,材料

定数のばらつきの範囲を超えて明らかに剛性を過大に 評価してしまうこともわかっている4)

そこで本研究では,まずプレストレスによる部材ど うしの接触を有限要素法において厳密にモデル化した 場合と簡略化した場合とで結果にどの程度の違いが出 るのかを明らかにする.具体的には,角材と鋼板また は合板の間を接触要素としてプレストレス力によって 接触させているモデル6)と,角材と鋼板または合板の 間を節点共有してプレストレス力を無視した簡易モデ ルとを比較して,簡易モデルでも十分な精度を与える かどうか確認する.

さて,接触要素を用いない簡易モデルであっても有 限要素モデルを作成することは,十分に時間と労力と 一定の技能を必要とするため,次にプレストレス木箱 桁橋の剛性評価にティモシェンコ梁理論のたわみ式を 用いる方法について検討する.プレストレス木箱桁橋 のせん断補正係数として箱形断面に対する既存のせん 断補正係数を適用したティモシェンコ梁の式7)の予測 が,有限要素法による予測と比べて十分に実用的かど うかを確かめる.

2. 解析手法

まず,図–1∼3 に示すような両側面に設けた鋼板に よって上下の角材をプレストレスで固定したプレスト

(2)

図–1 試験体側面図(鋼板タイプ)

図–2 試験体正面図(鋼板タイプ)

図–3 試験体(鋼板タイプ)

レス木箱桁橋(以下「鋼板タイプ」)の試験体4)の諸元 を参考にして,解析モデルを設定する.今回は実験と の比較は目的ではなく,有限要素モデルにプレストレ スを考慮したかどうかの違いをはっきりさせたいので,

拘束部や載荷部が線拘束,線載荷となって応力集中を 生じたり,下部拘束,上部載荷により中立軸上下の対 称性が乱れたりすることを避けるため,固定端の全節 点を拘束した片持ち梁の自由端に等分布荷重を載荷す ることにした.梁の長さは試験体の半分程度の3mと する.

木材の軸方向ヤング率Ezzは,試験体の角材を縦振 動数により測定した平均値6.92GPaを用い,これをも とに木材要素を以下のように直交異方性材料でモデル 化する.軸直角方向のヤング率はExx = Eyy = Ezz/25

x

z y

図–4 解析モデル(鋼板タイプ)

とし,ポアソン比は,応力–ひずみ関係が対称行列で関 係づけられるように,νxy=0.4, , νxzyz=0.016とす る.せん断弾性係数はGxy=Gyz=Gzx=Ezz/15とする.

鋼板のヤング率は206GPa,せん断弾性係数は79GPaと する.

2.1 解析ツールの比較

本研究では,有限要素解析ツールとして,目的に 応じてMSC Marc/MentatとCalculiXを用いる.MSC

Marc/Mentatは,接触解析等の各種の解析をグラフィッ

クインターフェースから行える点で便利であるが,入 出力データをプログラムで加工しながら利用するには,

あまり向いていない.また,オープンソースライセンス ではないので,複数のクライアントパソコンに自由に インストールして利用したりすることはできない.一 方,GPLライセンスのCalculiXは,プリ・ポストプロ

セッサー(CGX)は必ずしも高機能ではないが,複数の

クライアントパソコンに自由にインストールして利用 することができ,テキスト形式の入出力ファイルを加 工しやすいといった特徴がある.

ここでは,鋼板タイプのプレストレス木箱桁橋の解 析モデルを,MSC Marc/MentatとCalculiXとで解析し,

両者に特に精度の違いがないことを確認しておく.図

(3)

–4のような鋼板タイプの片持ち梁モデルの固定端の全 節点を固定し,下向き等分布荷重を自由端の全節点に 等分配した集中荷重として載荷する.梁の長さは3m,

桁高は50cm,鋼板の板厚は9mm(三角孔は無視),木

材部分は1本12cm×12cmの角材が上下に7本ずつとす る.鋼板部は等方性材料,木材部は直交異方性材料の 直方体要素(Marc:hex8, CalculiX:C3D8)を用いる.要 素分割は,幅,高さ,軸方向の分割を何通りか変化さ せて,およそ有効数字3桁の収束性が得られることを 目安に,軸方向は512分割,角材は1本当たり幅2分 割×高さ5分割,鋼板は1枚当たり幅2分割×高さ14 分割とした.MarcとCalculiXのそれぞれで解析した片 持ち梁先端部下端のたわみを図–5に示す.この解析条 件では,MarcとCalculiXの結果は,ほぼ一致すること を確認した.

図–5 有限要素ツール比較

3. プレストレスモデルの比較

3.1 鋼板タイプ

図–4のような鋼板を用いたプレストレス木箱桁橋に ついて,次の3つのモデルを作成し有限要素解析を行 う.(1)非一体化モデル:鋼板部と木材部が一体化され ておらず,木材と接触している範囲の鋼板にプレスト レス力相当の分布外力を与えて箱断面を形成している モデル,(2)一体化モデル(プレストレスなし):鋼板部 と木材部の節点が共有されて全部材が一体化されてい るモデル,(3)一体化モデル(プレストレスあり):(2) の一体化モデルに(1)と同様の分布外力を与えたモデ ル.解析には,MSC Marc/Mentat(要素は3-D, SOLID hex8)を用いる. すべてのモデルについて,片持ち梁 先端部に50kNの荷重を受けた場合のたわみを幅員に 対してプロットしたものを図–6に示す.一体化モデル でプレストレスのあるものとないものとでは,大きな 違いは認められない.非一体化モデルは,鋼板部と木

図–6 プレストレスモデルの比較

図–7 摩擦係数の比較

材部の境界ですべりが発生してたわみがずれているが,

平行移動すれば,木材部のたわみ形自体は,一体化モ デルとほぼ重なる形である.

一体化モデルでは,便宜上,すべての要素に0.4の 摩擦係数を与えているが,この数値に特に大きな根拠 があるわけではない.プレストレスが作用していない 状態で接触する2種材料間の摩擦係数は,鋼材,木材 の組合せでは0.2 ∼ 0.6なので,その範囲で摩擦係数 を変化させて比較した結果を図–7に示す.摩擦係数が 小さくなっていくと,鋼板部と木材部の接触面のずれ が大きくなっていき,摩擦係数がある程度 大きくなれ ば,このずれがほとんどなくなることがわかる.実際 の載荷試験2)では,破壊するまで載荷を行っても鋼板 部と木材部が目に見えてずれることはなく,プレスト レス下での実際の摩擦力は十分に大きいことがうかが え,プレストレスを無視して節点を共有した一体化モ デルでも,十分な精度の解析ができると考えられる.

(4)

3.2 合板タイプ

図–8 試験体(合板タイプ)

図–9 試験体正面図(合板タイプ)

架設に重機を使えない山間部や被災地での応急橋と しての用途に特化して,図–8, 9のように,角材と合板 とを交互に並べたプレストレス木箱桁橋(合板タイプ)

についても,前節と同様にプレストレスの影響を比較す る.前節と同様の12cm角の角材6本の間に厚さ24mm の合板が5枚挟まれている.角材と合板は,前節と同 じ材料定数の直交異方性材料でモデル化し,合板は1 枚当たり幅2分割×高さ14分割とした.スパン5mの 曲げ試験との比較のため,長さ2.5mの片持ち梁とし,

その他の条件は,前節と同様とした.前節と同様の3 種のモデルについて,片持ち梁先端部に40kNの荷重 を受けた場合の自由端下端のたわみを幅員に対してプ ロットしたものを図–10に示す.

前節の鋼板タイプの場合と同様に,合板タイプの場 合も,プレストレスを考慮した非一体化モデルとして 解いた結果と,プレストレスを無視した一体化モデル として解いた結果は大きくは変わらない.参考までに,

曲げ試験3)の実験値も同じ図にプロットしたが,実験 では,スパン中央部で梁断面が全体的にねじれるよう な変形をしていたらしく,左端よりも右端がやや大き く右回りに断面が傾いていたものと思われる.たわみ

測定点は,角材6本の中央部なので,このプロットか らは角材と合板とのずれは判断できないが,目視の限 りでは,200kNまで載荷した破壊試験3)においても角 材部と合板部とのずれは特に認められない.

図–10 プレストレスモデルの比較

4. ティモシェンコ梁による近似

この章では,プレストレス木箱桁橋の剛性評価に,

ティモシェンコ梁理論によるたわみの式を近似的に適 用する方法4)について述べる.中央集中載荷を受ける 単純梁の中央のたわみ,先端に集中載荷を受ける片持 ち梁の先端のたわみに対するティモシェンコ梁のたわ みの式はそれぞれ以下のように表される.

v単純= P3

48EI + P

4kGA (1)

v片持ち= P3 3EI + P

kGA (2)

ここで,Pは荷重,ℓは梁の長さ,Eはヤング率,I は断面2次モーメント,Gはせん断弾性係数,Aは断 面積である.kはせん断補正係数で,等方性材料の薄肉 箱形断面では,Cowper8)が以下の式を導いている.

k=10(1+ν)(1+3m)2/{(12+72m+150m2+90m3) +ν(11+66m+135m2+90m3)+10(3m+3m2)} (3)

t2 t1

h

b

図–11 せん断補正係数算定断面(合板タイプ)

(5)

m= bt1

ht2, n= b h

ここでb,t1,t2,hは,図–11のせん断補正係数算定断面 に示される諸量である.プレストレス木箱桁橋は,角 材と合板が交互に並んでいるが,上下1本ずつの角材 とその両脇の2枚の合板の半分の板厚部分で囲まれる 箱桁が並んでいると見なせる部分(図–9の赤線部)が 多いので,この箱断面に対してCowperのせん断補正係 数を求め,箱桁橋断面全体の剛性に対してティモシェン コ梁のたわみの式(2)を適用してみる.木材のみで箱断 面が構成されている合板タイプのプレストレス木箱桁 橋の場合,厳密には木材は異方性材料ではあるが,ポ アソン比νを便宜的に0にするなどして,このCowper のせん断補正係数を近似的に利用できる.式(1), (2)の せん断たわみ項のkGAGについては,木材の曲げ面 内のせん断に対する平均的なせん断弾性係数を用いる こととする.

一方,木材と鋼部材で箱断面が構成されている鋼板 タイプのプレストレス木箱桁橋の場合,このCowperの せん断補正係数は利用できない.このような2種類の 材料からなる薄肉箱形断面に対しては,Bank9)が,以 下のような修正せん断補正係数を導いている.

k=20(α+3m)2/{ E1

G1(60m2n2+60αmn2) + E1

G2

(180m3+300αm2+144α2m+24α3) +ν1(−30m2n2−50αmn2)

2(30m2+6αm−4α2)}

(4)

m=bt1

ht2, n=b

h, n=b

h, α= E2 E1

ここでb,t1,t2,h,E1,E2,G1,G2, ν1, ν2は,図–12のせ ん断補正係数算定断面に示される諸量である.Bankの 修正せん断補正係数kは,単純梁の場合,式(1)のせ ん断たわみ項のkGAkEAに換えて用いる.そこで,

このせん断項のEAについては,軸方向の伸び剛性の異 なる木部材と鋼部材の2種類のバネの合成と考え,合 成伸び剛性EA+EAを用いることとする.

h t1

t2

b E2,G2, ν2

E1,G1, ν1

図–12 せん断補正係数算定断面(鋼板タイプ)

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9

0 5 10 15 20 25 30 35 40

桁高/桁幅

せん断補正係数

Cowper Bank

1 1

10 1

1 40

図–13 箱断面のせん断補正係数(鋼材)

0 0.4 0.6 0.8 1 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 0.1 0

0.2 0.3 0.4 0.5

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

0.2

せん断弾性係数比 ヤング率比

図–14 Bankのせん断補正係数(合成断面)

Bankの修正せん断補正係数k, Cowperのせん断補正 係数k,よく用いられる長方形断面のせん断補正係数 56 との間の関係を把握しておくため,いくつかの試算をす る.まず,1種類の等方性材料(具体的にはE=206GPa,

G=79GPaの鋼材)からなる箱形断面に対して,桁高/

桁幅の比を0.02から40まで変化させた場合のBankと

Cowperのせん断補正係数の変化を図–13に示す.Bank

のせん断補正係数は,せん断項の中でkGAで表され

るCowperのせん断補正係数と比較できるように,E

Gk の値をプロットしている.Bankのせん断補正係数は

Cowperのせん断補正係数よりも2.5%程度高めではあ

るが,桁高/桁幅の比の増加とともに同じように単調に 増加し,極端に縦に長い断面では長方形断面のせん断 補正係数5

6 ≃0.833に収束している.このように,1種 類の等方性材料に対しては,Bankのせん断補正係数は

Cowperのせん断補正係数とほぼ同じ値をとる.

鋼板タイプのプレストレス木箱桁橋のように,2種 類の材料の場合,Cowperのせん断補正係数は適用でき ず,Bankのせん断補正係数を適用することになるが,

1種類の等方性材料に対してはCowperのせん断補正係 数とほぼ近い値をとるBankのせん断補正係数が,材料 のヤング率比,せん断弾性係数比が離れるにしたがっ て,どの程度Cowperの値から変化するかを示したの が図–14である.水平面2軸のヤング率比,せん断弾 性係数比がともに1となっている点が1種類の鋼材の

(6)

みの断面に対応し,その対角線上の端にあるヤング率

比が0.03,せん断弾性係数が0.005の点が鋼板と木材か

らなる断面に対応している.鋼板タイプの場合,幅が 広い箱形断面のため,せん断補正係数はかなり小さい 値となるが,1種類の等方性材料に対するCowperのせ ん断補正係数0.03よりも2倍以上大きく0.07程度の 値になる.

4.1 合板タイプ

角材と合板を用いたオンサイト応急橋について,3点 曲げ載荷に対する中央部たわみの実験値,ティモシェ ンコ梁理論,初等梁理論のたわみ,有限要素法による 解析値を図–15に示す.図中に赤で示した「FEM単純」

は,単純梁を全体解析したモデルを,図中に紫で示した

「FEM片持ち」は,単純梁の半解析とみなした片持ち 梁のモデルを有限要素解析ツールCalculiXの直方体要

素(C3D8)で解析した結果である.合板部分の要素と角

材部分の要素はE=5.69GPaの同一の材料で,接合面 では節点を共有しているものとし,プレストレスは考 慮していない.3点曲げ載荷によるたわみの実験値は,

2500 2500

P

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45

0

ティモシェンコ梁 実験値 初等梁

たわみ(mm)

荷重(kN)

FEM単純 FEM片持ち

1.0 3.0 5.0 7.0

図–15 荷重–たわみ(合板,3点曲げ)

せん断変形を無視した初等梁のたわみよりは2倍程度 も大きくなるが,ティモシェンコ梁理論に対する誤差 は-5%程度,FEMに対する誤差は片持ち梁,単純梁モ デルともに9%程度となり,せん断変形を考慮したティ モシェンコ梁理論やFEMと十分に近い値となった.

このモデルに関しては,ティモシェンコ梁理論でも 十分に実用範囲の近似ができていると思われるが,図 –9の箱断面が十分に薄肉と見なせない範囲では,精度 が悪くなると思われるので,どの程度の断面まで適用 できるかを確認するため,断面の幅は変えずに断面の 高さを変えて比較してみる.FEMで得られたたわみと ティモシェンコ梁理論のたわみを,初等梁理論のたわ みで無次元化したものを図–16に示す.桁高が極端に 小さい場合はティモシェンコ梁理論の近似精度は落ち てくるが,実橋モデルとして実用的な桁高/桁幅の比と 考えられる0.6前後の領域では,ティモシェンコ梁理

2500 2500 P

1 1.5 2 2.5 3 3.5 4

0.3 0.5 0.7 0.9 1.1

ティモシェンコ梁

FEM

桁高/桁幅

たわみ/初等梁理論値

図–16 ティモシェンコ梁の近似精度(合板,3点曲げ)

論で十分に近似できるものと考えられる.

4.2 鋼板タイプ

図–3に示すような鋼板タイプのプレストレス木箱桁 橋では,合板タイプほど顕著ではないものの,曲げ試 験により得られる剛性は,初等梁理論より4割程度 低 くなる.そこで,鋼板タイプについても前節と同様の 考察を行う.前節と同様に3点曲げ載荷の結果と各理 論値を図–17 に示す.図中に青で示す「ティモシェン コ梁」は P3

48EI + P

4kEAで表されるたわみの式に,式 (4)で与えられる修正せん断補正係数kを適用した.今 回の断面の場合,具体的には,図–12のせん断補正係 数算定断面に示す2種類の材料からなる箱形合成断面 に対して,E1 =E =6.921GPa,E2 =E =206GPa, G1 = G = E/15 = 461MPa,G2 = G = 79GPa, ν1 =0, ν2 =0.3,b =849mm,h=380mm,t1 =120mm, t2 =9mmを代入すると得られるk =0.02996を用い た.また,せん断たわみ項の中でkがかけられる伸び 剛性EAについては,2種のバネの並列合成と考え,木 材部と鋼材部の合成伸び剛性EA+EAを用いた.

3000 3000

P

0 20 40 60 80 100

0

FEM単純

FEM片持ち 実験値

ティモシェンコ梁 初等梁

たわみ(mm)

荷重(kN)

1.0 3.0 5.0 7.0

図–17 荷重–たわみ(鋼板,3点曲げ)

(7)

3点曲げ載荷によるたわみの実験値は,初等梁理論よ り4割程度 大きくなるが,ティモシェンコ梁理論に対 する誤差は7%程度,FEMに対する誤差は片持ち梁モ デルで9%程度,単純梁モデルで24%程度となり,せ ん断変形を考慮したティモシェンコ梁理論やFEMと比 較的 近い値となった.「FEM片持ち」モデルでは,単純 梁の半解析とみなした片持ち梁の固定端を面拘束,自 由端に面載荷して解析しているため,支点部線拘束・中 央上部線載荷の「FEM単純」モデルよりも応力分布が きれいな三角形分布となり,ティモシェンコ梁理論に 近くなるものと考えられる.

鋼板タイプのプレストレス木箱桁橋は,角材タイプ に比べるとせん断変形の影響は小さいが,ティモシェン コ梁のたわみが「FEM単純」の解析結果よりも16%程 度 大きいいので,前節と同様に,断面の高さを変えて ティモシェンコ梁のたわみとFEMのたわみを比較し,

ティモシェンコ梁理論の適用範囲を考察してみる.FEM で得られたたわみとティモシェンコ梁理論のたわみを,

初等梁理論のたわみで無次元化したものを3点曲げモ デルについて図–18に示す.

合板タイプの場合と比べると,桁高が極端に低いまた

3000 3000

P

1 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 1.7 1.8 1.9

0.3 0.4 0.6 0.8 1 1.2

FEM

ティモシェンコ梁

たわみ/初等梁理論値

桁高/桁幅

図–18 ティモシェンコ梁の近似精度(鋼板,3点曲げ)

は高い場合,ティモシェンコ梁理論の近似精度はかな り落ちてくるが,0.4∼0.8m程度の実橋モデルとして実 用的な桁高の領域では,ティモシェンコ梁理論でも実 用上十分な近似ができるものと考えられる.

5. 詳細部分のモデル化の影響

前章の鋼板タイプの有限要素モデルは,鋼板に設け た三角孔や,試験体中央部および支点部に設けた対傾 構を無視した簡易モデルで解析している.このような 構造の詳細部分は,曲げ剛性にはそれほど大きな影響 を与えないが,せん断変形や,荷重伝達には一定の影 響があるので,こうした詳細部分もモデル化した解析 を行う.

図–19 孔あきモデル

3000 1/2P

実験

対傾構あり 孔あり

対傾構あり 孔なし 対傾構なし 孔なし

対傾構なし 孔あり

たわみ(mm)

荷重(kN)

00 1 2 3 4 5 6 7

80

60

40

20 100

図–20 各種解析モデルの比較

三角孔部は,図–19のように曲線部を含めてモデル 化する.試験体モデルの対傾構は,支点部とスパン中 央の載荷部に厚さ6mmの長方形板が,プレストレス緊 張による左右の縮みを横長のボルト孔の遊びで吸収し ながら,長方形断面に収まるように取り付けられてい る.今回の有限要素解析では,三角孔のモデル化によ りメッシュが複雑化したため,対称条件から半解析を 行うこととする.支点部では,対傾構の影響は少ない ので,スパン中央部の半解析の対称面に厚さ3mmの対 傾構を取り付けたモデルも解析する.

三角孔,対傾構を考慮した場合,無視した場合など,

各種の組み合わせについて解析した結果を図–20に示 す.対傾構がない場合もある場合も,孔を考慮した場 合の方が,たわみが大きくなることがわかる.三角孔 は曲げ剛性にはほとんど影響を与えないが,せん断変 形をしやすくするのだと考えられる.対傾構について は,対傾構を無視した場合のたわみが小さくなってい るが,これは,上面載荷で下面のたわみを測定する場 合,対傾構を無視すると荷重を断面全体に伝達できな いことで,上面の木材部分に変形が集中してしまうた めである.

このように,鋼板部の孔や対傾構といった詳細部分 をモデルに考慮するかどうかは,解析結果に一定の影 響を与えることがわかった.

(8)

6. 結論

プレストレス木箱桁橋の数値モデル化と剛性評価に ついて,以下の結論を得た.

• プレストレス木箱桁橋について,接触問題として プレストレスを考慮した非一体化モデルとプレス トレスを無視した一体化モデルを比較してみたが,

摩擦係数が十分に大きければ,非一体化モデルも 一体化モデルも同様の結果を与えることがわかっ た.破壊試験結果から摩擦面でのすべりはほとん どないので,プレストレス木箱桁橋の剛性評価は 簡単な一体化モデルでも十分に有効であると考え られる.

• 箱断面や二種材料に対するせん断補正係数を用い ることで,ティモシェンコ梁理論によるたわみの 式は,プレストレス木箱桁橋の剛性評価に近似的 に用いることができる.特に木材の単一材料とし てモデル化できる合板タイプでは,誤差も小さく 有効である.

• プレストレス木箱桁橋の剛性評価をより正確に行 うには,有限要素法による解析が望ましいが,鋼 板部に設けた三角孔や,載荷部の対傾構といった 構造の詳細部分をモデルに考慮するか無視するか も解析結果に一定の差を与えることがわかった.

謝辞

試験体の図面作成・曲げ試験の実施等にご協力いた だいた秋田県立大学木材高度化高研究所の清水光弘さ ん,解析プログラムや解析モデルの作成等にご協力い ただいた第一建設工業株式会社の滝田拓史さん,上村 哲範さんに感謝の意を表します.

参考文献

1) 後藤 文彦,薄木 征三,佐々木 貴信,安部 隆一,川 村 修: プレストレス木床版と鋼トラスを組み合わ せた新しいタイプの木橋, 木材利用研究論文報告集 9, pp. 108-111, (2010).

2) ブイ ジュ ハイ, 後藤 文彦,薄木 征三,佐々木 貴 信,安部 隆一: プレストレス木床版と鋼トラスを 用いたハイブリッド木橋, 木材利用研究論文報告集 10, pp. 19-24, (2011).

3) ブイ ジュ ハイ, 後藤 文彦,佐々木 貴信,山内 秀 文,中村 昇,薄木 征三: 角材と合板で組み立てる 応急木製歩道橋, 木材利用研究論文報告集11, pp.

51-54, (2012).

4) 滝田 拓史, 後藤 文彦,佐々木 貴信,清水 光弘,安 部 隆一: 角材を用いたオンサイト応急橋のせん断 挙動, 木材利用研究論文報告集12, pp. 41-46, 2013.

5) 佐々木 貴信,後藤 文彦,安部 隆一,熊谷 誠喜: 秋 田スギの角材を利用した組立・解体が容易な木橋の 開発, 秋田県立大学ウェブジャーナルA/2013,Vol.

1, pp. 10-18, 2014.

6) 尾山 龍之介,上村 哲範,滝田 拓史,後藤 文彦,佐々 木 貴信:プレストレス木箱桁橋の数値モデル,木材 利用研究論文報告集13, pp. 40-41, 2014.

7) 斉藤 輝,滝田 拓史,後藤 文彦,佐々木 貴信:プレ ストレス木箱桁橋の剛性挙動,木材利用研究論文報 告集13, pp. 72-73, 2014.

8) Cowper, G. R.:The shear coefficient in Timoshenko’s beam theory, J. Appl. Mech., Vol. 33, pp. 335-340, 1966.

9) Lawrence C.Bank, Shear Coefficients for Thin-Walled Composite Beams, Comoposite Structures 8, pp. 47- 61, 1987.

(2014年9月24日 受付)

(2015年2月1日受理)

参照

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