スイッチンググラフ問題の独立集合問題への帰着
05000653
東京工業大学*
高澤 陽太朗TAKAZAWA Yotaro
01603800
東京工業大学 水野 眞治MIZUNO Shinji
1. はじめに
S = (I ∪ J , A)
を有向二部グラフとする.J
内 の頂点にはスイッチがついており,頂点j ∈ J
上のスイッチを押すとj
に接続するすべての 有向辺の向きが反転する.本研究ではこのよ うなS
をスイッチンググラフとよぶ.J
′⊆ J
上 にあるスイッチを押したときに得られるグラ フS (J
′) = (I ∪ J , A(J
′))
とする(図1).スイッ チンググラフ問題(Switching Graph Problem,SGP
)とは,S (J
′)
上のI
の出次数または入次 数が0
となる頂点の数が最大となるJ
′⊆ J
を 見つける問題である.図
1:
スイッチンググラフSGP
はTang
ら[3]
によってVLSI
におけるビ ア最小化問題という問題のグラフ表現として 研究された.近年,Karuno and Tanaka [1, 2]
に よってSGP
の一般化に対するヒューリスティッ クアルゴリズムが与えられた.SGP
へのヒュー リスティックアルゴリズムはいくつか与えれ ている一方で,これまでに近似・厳密アルゴリズムは与えられていない.
本研究では
SGP
が独立集合問題へ帰着でき ることを示した.そして,この帰着と独立集 合問題への既存研究を利用することによって,SGP
に対する計算複雑性や近似・厳密アルゴ リズムを得た.2. 問題の分析
本研究では
SGP
の一般化である重み付きSGP
を扱う.重み付きSGP
ではi ∈ I
の入次 数または出次数が0
のときそれぞれ非負の重 みw
+i,w−i を得る.S(J
′)
における入次数また は出次数が0
のI
上の頂点を以下のように表 記する.I
+(J
′) = { i ∈ I | d
S−(J′)(i) = 0 }, I
−(J
′) = { i ∈ I | d
S+(J′)(i) = 0 }.
このとき,重み付き
SGP
は以下のように定式 化される.max ∑
i∈I+(J′)
w
+i+ ∑
i∈I−(J′)
w
−is.t. J
′⊆ J
(1)
ここで,
J
′⊆ J
を選ぶ代わりに,I
の部分集 合のペア(I
1, I
2)
に対して,I
1内の頂点の入次 数が0
かつI
2内の頂点の出次数が0
となるス イッチの押し方J
′が存在するかどうかという 視点に立って以下を定義する.定義
1. J
′⊆ J
とI
1, I
2⊆ I
に対して,I
1⊆ I
+(J
′)
かつI
2⊆ I
−(J
′)
であるとき,J
′は(I
1, I
2)
を実 現するという.また,I
1, I
2⊆ I
に対してに対 して,(I
1, I
2)
を実現するJ
′⊆ J
が存在すると き,(I
1, I
2)
はS
に対して実行可能という.以上の定義を使うと,問題
(1)
の代わりに 重み和が最大となるS
に対して実行可能な2-E-5
日本オペレーションズ・リサーチ学会2019年 春季研究発表会
(I
1, I
2)
を見つける問題を解けばよいことがわ かる.max ∑
i∈I1
w
+i+ ∑
i∈I2
w
−is.t. (I
1, I
2)
がS
に対して実行可能(2)
本研究では
(I
1, I
2)
がS
に対して実行可能で あるための必要十分条件(定理1)を導いた.定理
1. S = (I ∪ J , A)
をスイッチンググラフと する. I
1, I
2⊆ I
に対して,(I
1, I
2)
がS
に対し て実行可能であることの必要十分条件は( { i
1, i
2}, ϕ )
はS
に対して実行可能( ∀ i
1, i
2∈ I
1) , ( ϕ, { i
1, i
2} )
はS
に対して実行可能( ∀ i
1, i
2∈ I
2) , ( { i
1}, { i
2} )
はS
に対して実行可能( ∀ i
1∈ I
1, ∀ i
2∈ I
2) . (3)
3. 独立集合問題への帰着
無向グラフ
G = (V , E)
と頂点集合W ⊆ V
に 対して,W
による誘導部分グラフをG(W ) = (W , E(W))
と定める.ただし,E(W) = {{ u , v } ∈ E | u , v ∈ W }
とする.頂点集合W
がE(W ) = ϕ
を満たす時,W
をグラフG
の独立集合とよぶ.非負の重み
w
v≥ 0(v ∈ V)
が与えられたとき,重み付き独立集合問題とは重み和が最大とな る独立集合をみつける問題である.
重み付き
SGP
を重み付き独立集合問題へ帰 着する.定理1
より(I
1, I
2)
がS
に対して実行 可能であることは,I
1, I
2内の2
頂点ペアの関 係で決まることがわかる.さらに定理1内に ある( { i
1, i
2}, ϕ )
といった2
頂点のS
に対する実 行可能性は簡単に確かめることができる.そ こで,I
内の全2
頂点ペアの関係を調べるこ とによって,S
に対して実行可能な(I
1, I
2)
と グラフの独立集合が対応するようなグラフG
S(定義2,定理2)をつくる.
定義
2. S = (I ∪ J , A
+∪ A
−)
をスイッチング グラフ,w
+i, w
−i(i ∈ I)
を重みとする.ただし,I = { i
1, . . . , i
n}
.これらに対して,無向グラフG
S= (V
1∪ V
2, E
1∪ E
2∪ E
3)
とその頂点重みw
を以下のように定義する.• V
1= { v
11, . . . , v
1n}
• V
2= { v
21, . . . , v
2n}
• E
1= {{ v
1s, v
1t} ( ∀ s < t) |
( { i
s, i
t}, ϕ )
はS
に対して実行可能}
• E
2= {{ v
2s, v
2t} ( ∀ s < t) |
( ϕ, { i
s, i
t} )
はS
に対して実行可能}
• E
3= {{ v
1s, v
2t} ( ∀ s ≤ t) |
( { i
s}, { i
t} )
はS
に対して実行可能}
• w
v1s= w
+is
(s ∈ { 1 , . . . , n } )
• w
v2s
= w
−is
(s ∈ { 1 , . . . , n } ).
定理
1
より,以下の定理を得る.定理
2.
定義1
によって得られる無向グラフと 頂点重みをG
S とw
とおく.W ⊆ V
1∪ V
2がG
S の独立集合であるとき,
以下によって定ま る(I
1, I
2)
はS
に対して実行可能.I
1= { i
s∈ I | v
1s∈ W ∩ V
1} I
2= { i
s∈ I | v
2s∈ W ∩ V
2}
逆に
, (I
1, I
2)
がS
に対して実行可能であると き,
以下によって定まるW = W
1∪ W
2はG
S の 独立集合となる.
W
1= { v
1s∈ V
1| i
s∈ I
1} W
2= { v
2s∈ V
2| i
s∈ I
2}
さらに,
どちらの場合も∑
i∈I1
w
+i+ ∑
i∈I2
w
−i=
∑
v∈W
w
vが成立.4. 応用
定理
2
より,帰着によって得られたグラフG
S では頂点数が2 | I |
で,最大次数はI
とJ
の 最大次数の積で抑えられる.独立集合問題に 対しては,グラフの頂点数や最大次数に依存 した厳密・近似アルゴリズムが存在する.こ れらを帰着によって得られたグラフG
S に利 用することによって,SGP
に対する厳密・近 似アルゴリズムを得ることができた.これら の詳細は当日発表にて報告する.参考文献
[1] Yoshiyuki Karuno and Seiya Tanaka. Cooperative item collecting problems in directed bipartite structures.Journal of Advanced Me- chanical Design, Systems, and Manufacturing, 11(2), 2017.
[2] Yoshiyuki Karuno and Seiya Tanaka. Iterative improvement ap- proaches for collecting weighted items in directed bipartite graphs.
Journal of Advanced Mechanical Design, Systems, and Manufactur- ing, 12(2), 2018.
[3] Maolin Tang, Kamran Eshraghian, and Hon Nin Cheung. An ef- ficient approach to constrained via minimization for two-layer vlsi routing. InProceedings of IEEE Asia and South Pacific Design Au- tomation Conference, pages 149–152, 1999.