教員の資質・能力に関する評価基準表
Ⅱ
1 教員 の資質 ・能力 に ついて の基 本 的な考 え方 (1) 教員 の資質 ・能力 のとらえ 方
教員 の資質 ・能力 についての基本的な 考え方 をまとめるにあたり 、教員 の資質 ・能力のとら え方を 明確にする必 要があると考 えた。 その理 由は、 文 献 研 究に よ り、教 員の資 質・能力 につ いて述 べ て い る論 文 等の内 容が、 ともすれば抽象論に 終始し て い た り、あるいは 経験を基 にし
。 、 、
た単なる 羅列に 終わったりしている例 が多いことが分 かったからである そこで 本研究では 教員の資 質・能 力のとらえ方は 、次の 三つの 条件を満 たしている必 要が あ る と考え た。
①教員に 求められる資 質・能力 として 取り上 げる基準 が明確 であり 、かつ妥当性があること
②教員 に求められる 資質・ 能力として取 り上げ た内容 が、客 観 的 事 実と し て観察 が可能である こと
③取り上 げた資 質・能 力が、教 員の職 務の範囲内にあること
この 三つの 条件を 満たす 視点について 述べている文 献を探 したところ、 次の2 点を見つける ことができた。
・ 教師 の力量形成』 岸 本幸次 郎、久高喜行編著『 ぎ ょ う せ い(1986)
・ 教育職員の 人事考課制度について 』東京都教育庁人事部勤労課編(1999)『
この両 者に共 通しているのは 、教員 の資質 ・能力を 「学習指導 「生活指導」 といった 「場、 」 面」にあたる 要素と 、発揮 される 「能 力 等の種 類」にあたる 要素の 二つからとらえようとして いる点 である 。本 研 究も、 こ れ ら を参考 に、教 員の資 質・能 力を「 能力の 種類」 と「場面 」の 二つ か ら と ら え、教 員の資 質・能 力を二次元の 表の形 で表現 す る こ と に よ り、上 記の三つ の条 件を満た す こ と を目指 すこととした。
表の 縦横の 軸に な る項目 については、 東京都 の人 事 考 課 制 度が評価基準 を記述 する際に 用い て い る「 学 習 指 導 「生 活 指 導・ 進路指導 「 学校運営 「特 別 活 動・ その他 」の 四つ の項 目が」 」 」
、 。
教職の範 囲を適 切に表 現し て お り 二 つの軸 のうちの 一つとして用 いることができると考 えた
、 「 」「 」
もう一 つの軸 としては やはり東京都の人事考課制度が 評価項目 としている 能力 情 意
「実績 」の三 つを考 えたが 、このうち「 実績」 は業績評価を 強く意 識した 項目であり、教 員に 求め ら れ る 資 質・ 能 力を 構 成す る 一つ の 要素 と し て は 無理 が あ る の で 「 能 力 「 情意 」の 二、 」 つを使うこととした。
(2) 教員 の資質 ・能力 に関する 理論的枠組み の必要性 とその 考え方
研究授業後の 協議会 では、しばしば 教員の 資質・能 力にかかわる 内容が話 題に な る。
「○○先 生はとても発問 が上手 である 」。
「○○の 場面で 、先生が と っ さ に△△ の対応を し た の は、とても効 果 的だ っ た 」 等。
し か し、 ど う い う点 で「 発問 が上 手」 だ っ た の か 「とても 効 果 的だった 」の は な ぜ か に つ、
、 。 、「 」
いて 論議が 深ま る こ と は まれで あ る 多 くの場 合 子ど も が生き 生きと活 動し て い た か ら とか 「 ○○さんの顔 が輝いて 見えたから」 といった 印象論 で終わることになる。、
このような 授業後 の協 議 会の場 面に限 らず、 教員の 資質・ 能力に つ い て の教員同士の論 議は
かみ 合わ な い こ と が多 い。 その 理由 は、 教員 の資 質・ 能力 の幅 は広 く、 論議 の中 で 「愛 情・、 あ た た か さ 「 公平 さ」 といった 資質 や 「教 科 指 導のための 知識 ・技 能 「学級経営 に関 する」 、 」
」 、 。
専門知識 といった 能力が同 時に取 り上げられ 整理されないまま話が 進められるからである こ う し た論議 が実を 上げ る た め に は、コミュニケーションが 成り立 つ た め の教員 の資質・ 能力 に関する 理論的枠組み が必要となる。
先に 述べた 教員の 資質・ 能力を 二次元 でとらえる考 え方は 、その 理論的枠組みとなるもので ある。 そして 、この 考え方 に基づいて作 成した 表は、 教員に 求められる資 質・能 力がもれなく 示さ れ る こ と に よ っ て、評価基準 にふさわしい 内容となり、 教員の 資質・ 能力についての 基本 的考え 方を構 築する 上での 基礎になると 考えられる。 しかしながら 、作成 する表 の一つの 軸で ある 「能 力 「情 意」 と い う項 目は あ ま り に も抽象度 が高 い た め、 そ れ ぞ れ に つ い て さ ら に具」 体的な下位項目 を設定 する必要 が あ る と考え た。
と こ ろ で、 ア メ リ カ の教 育 学 者 で あ る ブ ル ー ム(Bloom,B.S.) は、 仲 間と と も に 学習指導 の 基になる 教 育 目 標 を分 類 する 研 究に 取り 組 み、1956 年に 「 教育目標 の 分 類 学」 を 刊行 した 。 そのような研 究に取 り組ん だ動機 は、教育評価 を行う 教 育 者 間で、 教 育 目 標やテストの内 容に ついて コミュニケーション を行うための 共通の 理論的枠組みがないために 、しばしば論議 があ いまいになったり、誤 解が生じたりしている 状況を改 善することであった。
ブルームら が取り 組んだのは教育評価 で あ っ て教員評価で は な い が、彼 らが研 究を行っ た背 景は、 現在の 教 員 評 価をめぐる状 況に通 じるものがあると考 えた。 そこで 、本 研 究では、 ブル
、 「 」
ームが教育目標 を分類 した方法 を参考 にして 先に 述べた 二次元 の表の一 つの軸 となる 能力
「情意」 の下位項目を 考え る こ と と し た。
ブルームら は、教育目標 を、認 知、情 意、精 神・運 動の三 つの領 域に分 類し、 認知領域 をさ らに次の 六つの 基本的目標に分 類した 。
知識 理 解 応 用 分析 統合 評価
これらは 階層 を 成し て お り 「知 識」 は他 の す べ て のレベル の基 礎であり 、知 識を 記憶 し再、 生することなしには 、理解 し、応 用し、 分析し 、統合 あ る い は評価 することはできないという 関係が あ る。
、 ( )
情意領域に つ い て は やはりブルーム と同じ グループ である クラスウォール Krathwohl,D.R.
らにより 、次のように 階層化された。
受け 入れ 反応 価値 づけ 組織化 個性化
こ れ ら五 つの 目 標は 物事 への 打ち 込み 方を 表し て お り 「個性化 」が 最も 打ち 込ん で い る段、 階を表すというように 、傾倒の 程度を 表している。
本 研 究では 、ブルームら が分類 の対象 とした 教 育 目 標を、 研修を 通して 育てるべき教員 の資 質・ 能力 に置 き換 え、 教員 の職 務の 特性 を考 慮し て、 新た な基 本 的目 標 と し て「 技能 「 実施」
・対応 」を加 えて、 次ペ ー ジの表 の よ う に整理 した。 なお、 こ こ で の「認知領域 」という 表現 は、東 京 都の人事考課制度における評価基準 を参考に 「能力 」と い う表現に 置き換 えた。
(3) 評価基準表 の作成 と教員の 資質・ 能力についての 基本的 な考え 方
教員 の資 質・ 能 力を 、次 ペ ー ジの 表中 に示 した 「能 力」 に属 する 五つ のカ テ ゴリ ー と 「情、
意」に属 する三 つのカテゴリー を合わせた八 つのカテゴリー に分け て と ら え た。
さ ら に、そ れ ぞ れ のカテゴリー に属す る資質 ・能力 が発揮 される 具体的 な場面 として、 先に 述べ た よ う に 「 学 習 指 導 「 生活指導 ・ 進 路 指 導 「 特別活動 ・ その 他 「 学 校 運 営」 の四 つ、 」 」 」 を考え、10〜 11ページ に示したような 二次元 の表で 評価基準 を表し た。
資質 ・能力評価基準表か ら、教 員の資 質・能 力についての 基本的 な考え 方を、 次のようにと らえることができる。
教員 の資質 ・能力 は八つ のカテゴリー から構 成されており 、それらの資 質・能 力は別々 にで はなく、 同時にしかも 関連し合 って発 揮さ れ る。
「 」 「 」 、
指導と 評価が 一体化 した授業 では 実施・ 対応 と 評価 を観察 することも可能 で あ る が 授 業 観 察 等で 実 際 に 観 察 で き る の は 「 実 施 ・ 対応 」のみのことが 多い。
「 実 施 ・ 対 応 」 の 能 力 の 背 景 に は 「 知 識 ・ 理 解 ・ 技 能 「 分 析 「 統 合 」 の 能 力 が 働 い て」 」 お り 、 教 員 の 資 質 ・ 能 力 を 正 し く と ら え る に は 、 行 動 内 容 の つ な が り や 、 そ の 時 の 状 況 を 総 合 的 に 判 断 し 、 潜 在 的 に 働 い て い る 能 力 に つ い て も 、 そ れ ぞ れ が ど れ だ け発 揮 さ れ て い た か を把握す る必要 がある 。
さ ら に 「 実 施・ 対 応」 等 の能 力 発 揮 の背 景、 に は 、 教 員 が 学 習 指 導 に ど の よ う な 構 え で 臨
ブルームらの分類 教員の資質・能力の分類 カテゴリー の着眼点
知 識 専 門 的 知 識 や 技 能 を も
理 解 +技能 知識・理解・技能 ち、それを 使うことがで
認 応 用 きる。
知
領 情報の中から必要な事実
域 分 析 分 析 や関係を見つけることが
↓ できる。
必要な要素を組み合わせ
能 統 合 統 合 て、新たなものをつくり
力 出すことができる。
実施したことの 価値判断
評 価 評 価 をすることができる 。
相手と対応しながら、計
実施・対応 画を実施することができ
る。
受け入れ 感受性をはたらかせて 状
情 感受性 況を感じ取り、積極的 に
意 反 応 対応しようとする。
領
域 対 象 に 意 義 や 価 値 を 感
価値づけ 価値づけ じ、改善向上のため意欲
↓ 的に取り組もうとする。
情 組織化 自己の役割を自覚し、そ
意 自 覚 れを果たそうとする 。
個性化
「 」 。 、 んでいるかという 情意 が重 要な要 素と し て関係している 児 童・生 徒の様子 に注意 を払い 状況 を 感じ 取 り、 積極的 に 対応 し よ う と す る 「 感 受 性 」を は じ め 「 価値 づ け 「 自覚 」と い、 」 った要 素についても 、行動内容の つ な が り や そ の時の 状況を 総合的 に判断 して把 握することが 求め ら れ る。
資質・ 能 力 評 価 基 準 表
領 資 質 職務遂行上
・ の場面 学 習 指 導 生活指導・進路指導
域 能 力 着眼点
能 知 ・ ・専門的知識や技能 ☆学習指導に必要な知識や技能をもち、使 ☆生活指導・進路指導に必要な知識や技能 識 技 をもち、それを使う うことができる。 をもち、使うことができる。
力 ・ 能 ことができる。
理 解
分 ・情報の中から必要 ☆分析により、教材の構成要素や構造を把 ☆児童・生徒の言動や学校生活の様子等を 析 な事実や関係を見つ 握したり、児童・生徒の発言、表情、行 分析し、生活指導・進路指導上の課題を けることができる。 動から、学習に関する興味・関心や理解 把握したり、自らの指導に関する改善の
の程度を推測したりできる。 可能性を推測したりできる。
統 ・必要な要素を組み ☆児童・生徒、教師、教材等のかかわりを ☆児童・生徒の発達段階や個性に応じて、
合 合わせて新たなもの 考えて学習指導に必要な要素を組み合わ 生活指導・進路指導に必要な要素を組み をつくり出すことが せ、指導内容や教材を創意工夫すること 合わせ、指導方針や計画を作成すること
できる。 ができる。 ができる。
実 ・相手と対応しなが ☆授業において、教師のはたらきかけに対 ☆児童・生徒の意識や行動の変化を把握し 施 ら、計画を実施する する児童・生徒の反応を把握しながら、 ながら、それに応じて、生活指導・進路
・ ことができる。 それに応じて、学習指導を行うことがで 指導を行うことができる。
対 きる。
応
評 ・実施したことの価 ☆学習指導の成果について評価を行い、児 ☆生活指導・進路指導の成果について評価 価 値判断をすることが 童・生徒の達成状況や自らの指導の改善 を行い、児童・生徒の達成状況や自らの できる。 点を判断することができる。 指導の改善点を判断することができる。
情 感 ・感受性をはたらか ☆児童・生徒の発言、表情、行動から、学 ☆児童・生徒の言動や学校生活の様子等か 受 せて 状況 を感じ 取 習への興味・関心や理解の程度等を積極 ら、生活指導・進路指導上の課題や、自 意 性 り、積極的に対応し 的に感じ取り、対応しようとする。 らの指導に関する改善の可能性を積極的
ようとする。 に感じ取り、対応しようとする。
価 ・対象に意義や価値 ☆学習指導のねらいや内容の価値がわか ☆生活指導・進路指導のねらいや内容の価 値 を感じ、改善向上の り、その効果を高めるため、意欲的に研 値がわかり、その効果を高めるため、意 づ ため意欲的に取り組 修や研究に取り組んだり、家庭との連携 欲的に研修や研究に取り組んだり、家庭 け もうとする。 や教員間の連携を図る等の工夫をしたり ・関係機関との連携や教員間の連携を図
しようとする。 る等の工夫をしたりしようとする。
自 ・自己の役割を自覚 ☆学習指導を通して児童・生徒の学力を育 ☆生活指導・進路指導を通して児童・生徒 覚 し、それを果たそう てるという自己の責任の重さを自覚し、 の自己実現を図るという自己の責任の重 とする。 誇りをもって指導に取り組もうとする。 さを自覚し、誇りをもって指導に取り組
もうとする。
、 、 教員の 資質・ 能力の 向上を図 るためには 単に実績 か ら の み資質 ・能力をとらえるのでなく 八つの カテゴリーそ れ ぞ れ の資質 ・能力 についての長 所や課 題を把 握して 研 修 課 題を発見 し、
長期的 に取り 組む課 題と短期的に 取り組 む課題 に整理 して研修計画 を作成 することが重要 にな る。
特別活動・その他 学 校 運 営
☆特別活動・部活動の指導に必要な知識や技 ☆学校運営の仕組みや意義、背景に関する知識 能をもち、使うことができる。 をもち、使うことができる。
☆児童・生徒の言動や学校生活の様子等を分 ☆児童・生徒の学校生活の様子や学校組織の運 析し、特別活動・部活動指導上の課題を把 営状況を分析し、学校運営上の課題を把握し
、 。
握したり、自らの指導に関する改善の可能 たり 運営改善の可能性を推測したりできる 性を推測したりできる。
☆児童・生徒の発達段階や集団の実態に応じ ☆学校教育目標や児童・生徒の実態を踏まえて て、特別活動・部活動に必要な要素を組み 学校運営に必要な要素を組み合わせ、学級経 合わせ 実施内容を計画することができる、 。 営案等、学校運営にかかわる経営案や実施計
画を作成することができる。
☆児童・生徒の思いや集団活動の実態を把握 ☆管理職への連絡体制、職員間の協力関係、家 しながら、それに応じて、特別活動・部活 庭・地域との信頼関係、服務の適正等を確保
、 、
動の指導を行うことができる。 しつつ事態に対応し 学校組織の一員として 業務を遂行することができる。
☆特別活動・部活動の成果について評価を行 ☆学級経営等、学校運営にかかわる自らの取り い、児童・生徒の達成状況や自らの指導の 組みについて評価を行い、学校経営方針の具 改善点を判断することができる。 体化に向けての達成状況や学校運営の改善点
を判断することができる。
☆児童・生徒の言動や学校生活の様子等から、 ☆児童・生徒の学校生活の様子や学校組織の運 特別活動・部活動指導上の課題や自らの指 営状況から、学校運営上の課題や改善の可能 導に関する改善の可能性を積極的に感じ取 性を積極的に感じ取り、対応しようとする。
り、対応しようとする。
☆特別活動・部活動のねらいや指導内容の価 ☆学校運営のねらいや内容の価値がわかり、そ 値がわかり、その効果を高めるため、意欲 の効果を高めるため、意欲的に研修や研究に 的に研修や研究に取り組んだり、活動内容 取り組んだり、家庭や地域との連携を図る等 や活動の場等を工夫したりしようとする。 の工夫をしたりしようとする。
☆望ましい集団活動を通して児童・生徒の人 ☆学校運営における自己の責任の重さ、さらに 間形成を図るという自己の責任の重さを自 教育者としての自己の責任の重さを自覚し、
覚し、誇りをもって特別活動・部活動の指 誇りをもってそれを果たそうとする。
導に取り組もうとする。
2 教員 の資質 ・能力 に関する 現状と 課題〜 ア ンケー ト調査結果か ら〜
前項 で示し た よ う に、本研究で は、教員研修 の成果 を的確 に把握 することを目 的に「教 員の 資質 ・能 力に 関す る評 価 基 準 (以 下「 評価基準 」と 略す )を 作成 した 。以 下、 この 「評価基」 準」に基 づいて 実施し た校 長 対 象のア ン ケ ー ト調査の 結果を 示す。
この アンケート調 査のねらいは 、大き く次の 2点である。 第一は 、本 研 究で示 した「評価基 準」が 、主 として 教職経験 10 年前後 の教 員において 、実際 に ど の程 度 満たされている( 資質
・能 力が 身に 付い て い る) かを 明ら か に す る こ と で あ る。 この 作業 を通 して 「 評価基準 」に、 示した 項目のうち、 どの項 目が よ く達成 されており、 反対にどの項 目が達 成されていないかに つ い て の現状 がとらえられ 、こ の こ と か ら今後 の教員研修において 、特に 力を入 れて伸ばすべ き教員の 資質・ 能力が 明示さ れ る。
第二 は、本研究で と ら え た「評価基準 」が、 教員を 評価す る校長 の意識 (身に 付けさせたい という 意識) としてどのようにとらえられているかを 明らかにすることである。 この作業 を通 して 「 評価基準 」の 項目 の う ち、 管 理 職として 、ま た学 校 現 場として 実 際 的に 求め る項 目が、 明らかとなり 、第一 の点と 合わ せ て、今 後の教員研修 に お い て伸ばすべき 教員の 資質・能 力が 明示さ れ る。
さ ら に、ここで明 らかとなった 校長の 意識を 統計的 な手法 (因子分析法 )を用 いて分析 する ことにより、 回答者 の意識 が「評価基準 」に沿 ったものであるかどうかを 確か め る と と も に、
「評価基準」 に示し た項目以外に 、校長自身が 評価の 基準としてとらえている事 柄が存在 する かど う かを確認 することとした 。調査 の概要 は下記の 通りである (調査表 は巻末参照)。
〔質 問 項 目と集計方法 〕
a教職経験 10年 前 後の教員 の資質 ・能力 に関する 現状( 能力20問・情 意12問)
( )
b教職経験 10年 前 後の教員 に身に 付けさせたいと 考える 資質・ 能力 能力20問・情意 12問 c教員 に求められる 豊かな人間性に か か わ る資質・ 能力
※a bは、 教員の 「資質・ 能 力 評 価 基 準 表」を基 に、設 問を作 成した。
※a は 「よ く身 に付 いている」 =4 点 「わりと身 に付 いている 」= 3点 「あまり 身、 、 、 に付 い て い な い」 =2 点 「ほ と ん ど身 に付 い て い な い」 =1 点と し、 設問 ご と の『 平、 均点 『標準偏差 』を集計 した。』
※b は 「と て も そ う 思う 」=4 点 「わ りとそ う思 う」 =3 点 「そう 思う 」= 2点 、、 、 、
「あまりそう思 わない」 =1点 とし、 設問ご と の『平均点 『標 準 偏 差』を 集計し た。』
〔調 査 対 象〕
都内公立小学校(200 校 、都内公立中学校() 100校)、都立高等学校(100校)、都立盲・ろう 養護学校 (56校)を 無作為 に抽出 し、回 答 者を校 長と し た。
〔回収率 〕 配布数 回 収 数 回収率 (%)
小 学 校 200 1 9 1 96 .0
中 学 校 100 1 0 0 100 .0
高等学校 100 8 2 82 .0
盲・ ろう・養護学校 56 4 8 85 .7
合計 456 4 2 1 92 .3
① 教員 の資質 ・能力 に関する 現状
ア 学習指導場面における知 識・理 解・技 能の平 均 点が、 他と比 べて低い
下 表は、 教職経験 10 年前後 の教 員の資 質・ 能力( 能 力 面)に つ い て、回答者 が「実 際に どの 程度身 に付い て い る と感じ て い る か」を 、校種 ごとに 平均点 の下位 5位ま で表したもの で あ る( 平 均 点の 差の 検定 」結 果か ら順位間 には 、明 ら か な違 いが 認め ら れ て い る。 全体「 の集計結果は 巻 末 参 照。以下同様 。)
ここから 読み取 れる特 徴としては、 まず、 す べ て の校種 に お い て、学習指導場面における 知 識 ・理 解 ・技 能 ( 専門的 な 知識 や 技能 をもち 、 そ れ を 使う こ と が で き る ) の平均点 が「 」 他 項 目と比 べて低 いということである 。2位以下に 関し て は、校 種ご と に多少 の違いはみら れるも のの 、能力面 では 、知 識・ 理解 ・技能及 び実 施・ 対応 ( 相手 と対 応し な が ら、 計画「 を 実施 することができる ) に関 する 項目 が、 場面 に つ い て は、 学 習 指 導 場 面 及び 特別活動」
・その 他の場 面(盲 ・ろう・ 養 護 学 校を除 く)が下 位に示 されている。
表 「身に付 いていると感じ て い る 」資質・能 力(能力面)の 下位5項目
第1位 第 2位 第3 位 第4位 第5位
学 習 指 導 の知 識・ 学 習 指 導 の実 施・ 特 別 活 動・ その 他 生 活 指 導 ・ 進 路 指 生 活 指 導 ・進 路 指 理 解・技能 対応 の知 識 ・理 解・ 技 導の 知識 ・ 理解 ・ 導の 実施・対応 小学校
能 技能
学 習 指 導 の知 識・ 特 別 活 動 ・そ の他 学 習 指 導の 実施 ・ 生 活 指 導 ・ 進 路 指 特 別 活 動 ・そ の他 理 解・技能 の 知識 ・ 理解 ・技 対応 導の 知識 ・ 理解 ・ の実 施・対応 中学校
能 技能
学 習 指 導 の知 識・ 特 別 活 動 ・そ の他 学 習 指 導の 実施 ・ 特 別 活 動 ・ その 他 学 習 指 導 の分析 高 等 学 校 理 解・技能 の 知識 ・ 理解 ・技 対応 の実施・対応 生 活 指 導 ・進 路 指
能 導の 実施・対応
盲 ・ろう ・ 学 習 指 導 の知 識・ 生 活 指 導 ・進 路 指 学 習 指 導の 実施 ・ 生 活 指 導 ・ 進 路 指 特 別 活 動 ・そ の他 養 護 学 校 理 解・技能 導の実 施・対応 対応 導の 知識 ・ 理解 ・ の実 施・対応
技能
イ 学習指導場面における感受性の 平均点 が、他と 比べて 低い
下 表は、 教職経験 10 年前後 の教 員の資 質・ 能力( 情 意 面)に つ い て、回答者 が「実 際に どの程度身に 付いていると感 じているか」 を、平 均 点の下 位3位 まで表したものである。
ここから 読み取 れる特 徴としては、 す べ て の校種 に お い て、学習指導場面における感受性
( 感 受 性 を は た ら か せ て状 況 を感 じ 取り 、 積 極 的 に対 応 し よ う と す る )の 平均点 が最 も「 」 低 く な っ て い る こ と で あ る。 次い で、 学習指導場面 における 自覚 ( 自己 の役 割を 自覚 し、「
」) 、 。
それを 果たそう とす る と特別活動場面での 感受性 の平 均 点が 他に 比べ低 くなっている 表 「身に 付いていると感 じている」資質 ・能力(情意面) の下位3項目
第 1位 第2 位 第3位
学 習 指 導 の感受性 学 習 指 導 の価値づけ 学習指導の 自覚 小学校
学 習 指 導 の感受性 学 習 指 導 の自覚 特別活動・ その他の感受性 中学校
高 等 学 校 学 習 指 導 の感受性 学 習 指 導 の自覚 特別活動・ その他の感受性 盲 ・ろう ・
養 護 学 校 学 習 指 導 の感受性 生 活 指 導 ・進路指導 の感受性 特別活動・ その他の感受性
以上 の結果 から、 現状として達 成さ れ て い な い資質 ・能力 に着目 し、今 後の教員研修につい て考え て み る と、学習指導場面における 知識・ 理解・ 技能や 実施・ 対応の 能力及 び感受性 を高
、 。
める視点 から研 修を見 直し て み る こ と も 研 修の評価 を充実 させる 一方策であると 考えられる
② ぜひ 伸ばしたいと 考える資 質・能 力
ア 特別活動 ・その 他の場面 に お け る統合 に関する 資質・ 能力が 期待されている
下 表は 、教職経験 10 年 前 後の教 員の 資質・ 能力 (能 力 面) に つ い て、回答者 が「ぜ ひ伸 ばしたいと考 えているか」を 、校種 ごとに 平均点の 上位5 位まで 表し た も の で あ る。
ここから 読み 取れ る特 徴と し て は、 まず 、特 別 活 動・ その 他の 場面 における 統合 ( 必要「 な要 素を 組み 合 わ せ て新 たなものをつくり 出す こ と が で き る ) に関 する 資質 ・能 力が 、す」 べ て の校種 で1位 となっていることである。 2位 以 下を見 ても、 総じて 、特別活動・そ の他 の場面 に お け る資質 ・能力の 向上を 求める 割合が高 いといえる。
ま た、小 ・中 学 校においては 、学校運営の 場面における 分析や 統合の 資質・ 能力が、 都立 学校に お い て は、生活指導・ 進路指導場面 における 統合の 資質・ 能力が期 待されている。
表 「ぜひ 伸ばしたいと考 える」資質・能 力(能力面)の上 位5項目
第1位 第 2位 第3 位 第4位 第5位
特 別 活 動 ・そ の他 特 別 活 動 ・そ の他 特 別 活 動・ その 他 特 別 活 動 ・ その 他 学 校 運 営 の分析
の 統合 の分析 の知 識 ・理 解・ 技 の評価
小学校
能
特 別 活 動 ・そ の他 特 別 活 動 ・そ の他 学校運営の 分析 学校運営の統合 特 別 活 動 ・そ の他
の 統合 の評価 の分 析
中学校
特 別 活 動 ・そ の他 特 別 活 動 ・そ の他 生 活 指 導・ 進 路 指 特 別 活 動 ・ その 他 特 別 活 動 ・そ の他
高 等 学 校 の 統合 の分析 導の統合 の評価 の実 施・対応
盲 ・ろう ・ 特 別 活 動 ・そ の他 特 別 活 動 ・そ の他 特 別 活 動・ その 他 生 活 指 導 ・ 進 路 指 特 別 活 動 ・そ の他
養 護 学 校 の 統合 の分析 の実施・対 応 導の統合 の 知 識・ 理解 ・技
能
イ 特別活動 ・その 他の場面 に お け る価値 づけに関 する資 質・能 力が期待 されている
下 表は 、教職経験 10 年 前 後の教 員の 資質・ 能力 (情 意 面) に つ い て、回答者 が「ぜ ひ伸 ばしたいと考 えているか」を 、校種 ごとに 平均点の 上位3 位まで 表し た も の で あ る。
表 「ぜひ伸 ばしたいと考え る」資質・能力( 情意面)の上位 3項目
第1位 第 2位 第3 位
特 別 活 動 ・その他 の価値づけ 特別活動・その 他の感受性 学 校 運 営の感受性 小学校
特 別 活 動 ・その他 の価値づけ 特別活動・その 他の感受性 学 校 運 営の感受性 中学校
高 等 学 校 特 別 活 動 ・その他 の価値づけ 特別活動・その 他の感受性 学 校 運 営の価値づけ 盲・ろう・
養 護 学 校 特 別 活 動 ・その他 の価値づけ 特別活動・その 他の感受性 特 別 活 動・その他の自 覚
ここから 読み取 れる特 徴としては、 す べ て の校種 に お い て、特別活動 ・その 他の場面 にお け る 価値 づ け( 対象 に 意義 や 価値 を 感じ 、 改 善 向 上の た め意 欲 的 に取 り 組も う と す る )「 」
と感受性が 、それぞれ1 位と2 位になっていることである 。また 、小・ 中・高等学校で は、
学 校 運 営の場 面における感受性及び 価値づけが上位 に見られる。
以 上の結 果から 、管 理 職と し て、ま た学校現場として、 実際的 にその 向上を 求める資 質・
能力 に着目 し、今 後の教員研修 に つ い て考え て み る と、特別活動 ・その 他の場面及び学校運 営の 場面における 統合や 分析、 価値づけや感受性を 高めていく視 点から 、研修 の在り方 を見 直してみることも研 修の評価 を充実 させる 一方策であると 考えられる。
教員 の「資 質・能力評価基準表 」に基 づいて 実施し た校長対象ア ン ケ ー トの結 果から、 今後 の教員研修 (とりわけ 教職経験 10 年前後 の教員 の研 修)に お い て、特 に力を 入れ て伸ばして いくべき 資質・ 能力として、次 の よ う な こ と が考えられる。
第一 は、学習指導場面における 知識・ 理解・ 技能や 実施・ 対応の 能力及 び感 受 性を高めてい くことである 。これらは、 教員の 資質・ 能力として十 分に満 た さ れて い ない と い う現状の 中か ら求められる課 題で あ る。
第二 は、特別活動 ・その 他の場 面、学校運営 の場面 に お け る統合 や分析 、価値 づけや感受性 を高めていくことである。 こ れ ら は、管理職として、 また学校現場 に お い て、実際的に向 上が 求められている 課題である。
教員 の資質 ・能力 にあっては、 も ち ろ ん、先 に示し た「評価基準 」のすべての 項目にわたっ て、そ の向上 を目指 す こ と が望ましい。 このことは、 校 内 研 修においても 、また 研修センター 等で実 施さ れ る研修 においても同 様で あ る。とはいえ 、と り わ け ど の項目 に重点 をおいて 研修 を行うことが 効率的 であるのか、 また、 どの項 目を重 視して 研修の 評価を 実施していくことが 効果的 な の か を考え て み る と、今 回のア ン ケ ー ト調査 からは 、上記 の二つ の結論 を得ることが できた。
今後 の教員研修に お い て は、研修内容 の編成 、研修 の評価 にあたって、 以上のような視 点を 重視していく 必要がある。 また、 教員一人一人 が自己 の研修課題を 把握していく 際にも、 参考 になると 思わ れ る。
③ 豊か な人 間 性にかかわる資 質
本 研 究では 、教員研修の 評価を 確実なものとするために、 教員の 資質・ 能力の 「評 価 基 準」
を示し 、そ れ に よ っ て と ら え よ う と試み た。今回作成 した「 評 価 基 準」は 、主として職務 を遂 行していく上 で必要 となる 資質・ 能力を 取り上 げたものであるが、 教員の 資質・ 能力を こ の基 準に よ っ て す べ て 示し 得る も の で は な い 。ア ンケー ト 調査 では 、こ の点 を補 うために 「 教員、 に求められる 豊かな 人間性 にかかわる資 質」に 関する 設問を 設け、 校長が 重要であると思 うも のを複数選択してもらった。そ の結果 を示したのが 16ペ ー ジの図 である。
こ こ か ら読 み取 れる 特徴 と し て、 まず 、 すべての 校種 に わ た っ て、 ( )の 「愛 情・ あたたか2 さ 、 ( )の 「社 会 性や 協調性 、( )の「 公 平・ 公 正な 態 度 、( )の 「素 直 さ・ 誠 実さ 」の 順」 6 」 3 」 9 に、 大切 な資 質が あ げ ら れ て い る。 とりわけ 上位 の二 つ( 愛 情・ あ た た か さ」 及び 「社会性「 や協調性 )は 、いずれも半数 を超え る回答 となっている。」
校 種 別の特 徴としては、 小学校 に お い て、( )の 「明る さ」が1 25.9 %で 、他の 校種と 比べ重
視されている 。中 学 校では 、( )の「 愛情・ あたたかさ」 が2 85.0 % の数値 を示しているととも に、 ( )の 「素 直さ ・誠 実さ 」が 他の 校種 に比 べて 重 視さ れ てい る 。高 等 学 校に お いて は 、他9
1 10 19.8 8 16.0
の校種に 比べ、( )の「明るさ」よ り も ( )の「情緒の安 定」 %、 ( )の「礼儀正し さ」
%が重視 されている。
「豊 かな人間性に か か わ る資質 」の項 目は、 教員の 「資質 ・能力評価基準表」 において 、明 確に表 現されてはいない。 なぜならそれらを評 価することは 、至難 だからである 。しかし 、ど の校 種に お い て も 「 愛 情・ あ たたか さ 「社 会 性や 協調性 「 公 平・ 公 正な 態度 「素 直さ ・、 」 」 」 誠実さ 」等が 、教員 に求められる 資質として重 視されていることは 、今後 の研修 において 直接 のテ ー マに な る こ と は少ないものであっても、 教員を 育成す る上で 重要な 視点として、あらた めて確認 し て お く必要 がある。
④ 多変量集計 による 分析
、 ( )
調査で は a教職経験 10年前後 の教員の 資質・ 能力に 関する現 状 能力 20問・情 意12問
10 20 12
及びb教職経験 年前後の 教員に 身に付 けさせたいと考 える資質 ・能力 (能力 問 ・情意 問)について、 教員の 「資質・ 能 力 評 価 基 準 表」で示 した分 類( 知識・理 解・技 能 「 分析」「 」
「統合 「 実施 ・対 応 「評価 」及 び「 感 受 性 「 価値 づけ 「自 覚 )が適 切であるかどうかを」 」 」 」 」 考察するために 、因子分析を行 った。
その 結果、 お お む ね上記 の項目 を因子 とする 結果を 得る こ と が で き、ま た、新 たな因子 は発 見さ れ な か っ た。 これらの 結果 から 「 評価基準 」の 考え 方と し て の資 質・ 能力 の分 類は 、回、 答者においても 、おおむね妥当 で あ る と考えることができる 。
豊かな人間性に関わる資質
(2) 75.1
(2) 85.0
(2) 67.9
(2) 80.4
(6) 63.0 (6) 63.0
(6) 59.4
(6) 57.0
(3) 47.8 (3) 49.4
(3) 51.0 (3) 39.1
(9) 37.0 (9) 34.6
(9) 41.0 (9) 36.0
(5) 30.4 (5) 23.5
(5) 25.0 (5) 26.9
(1) 25.9
(10) 19.8
0 . 0 5 0 . 0 100.0 1 5 0 . 0 2 0 0 . 0 2 5 0 . 0 3 0 0 . 0 小学校
中学校
高等学校
盲・ろう・養護学校
( 2) 愛情・あたたかさ ( 6) 社会性 や協調性 ( 3) 公平・公正な態度 ( 9) 素直さ・誠実さ ( 5) 健康・体力 ( 1) 明るさ ( 10) 情緒の安定 ( 8) 礼儀正 しさ ( 7) ユーモア ( 4) 世話好 き・親切 ( 11) その他