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個別分散水熱源ヒートポンプシステムの 過去・現在・未来

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個別分散水熱源ヒートポンプシステムの 過去・現在・未来

1. はじめに

 最近,空調の省エネルギーに関する 種々の試みが実践され,効果を上げて いる. 一例として,水熱源の個別分散水熱 源ヒートポンプシステムでは地中熱あ るいは地下水利用による再生可能エネ ルギー利用システムがあり,空気熱源 のビルマルチ空調システムでは潜熱・

顕熱分離方式の空調システムがある.

熱源ごと,空調システムごとに種々の 方式が開発され製品化されている.昨 今の空調技術の開発スピードには目を 見張るばかりであるが,振り返ってそ の発展史を調べてみると意外な事実が わかり,先人の知恵と発想力には敬服 させられる.

2. 個別分散水熱源ヒートポンプ システムの誕生

 話はかなり古くなるが,「個別分散 水熱源ヒートポンプシステム」の誕生 について紹介する.1930 年柳町政之 助氏が開発した「高砂荏原式ターボ冷 凍機」の試作時にヒートポンプとして の性能試験を行い,ヒートポンプ式暖 房での使用を確信している.これがわ が国のヒートポンプの誕生であろう.

「高砂荏原式ターボ冷凍機」は現在,

本会の「機械遺産」(1)に認定されている.

 1969 年 4 月号の空気調和・衛生工 学会誌(2)の論説に,柳町政之助氏の

「MY 式熱ポンプ暖冷房装置」の記述 がある.図 1は「MY 式熱ポンプ暖冷 房装置」の基本説明図である.記述に よると「MY 式熱ポンプ暖冷房装置の 主点とするところは建物の各室ごとに 必要に応じた数の空調機を配置し,こ れらの空調機を並列にあるいは直列に 一連の水配管系統により連絡し,循環 水ポンプによって系統内の水を各空調 機を通じ循環するようにしたもので,

設置する空調機は現今市販されている ルームクーラまたはパッケージ式空調 機のように小型冷凍装置を具備し,そ の冷凍装置によって冷房運転と暖房運 転とのできるいわゆる熱ポンプ式空調 機で,しかも水―空気熱ポンプ形式

(Water to Air Heat Pump)すなわち 冷凍装置の二つの熱交換機の一つは水 と冷媒との熱交換機構,ほかの一つは 空気と冷媒との熱交換機構で,冷房運 転の際は一方が水冷式凝縮機となり,

他方が空気冷却機となり,暖房運転の 際は一方が水冷却機,他方が空気加熱 機となる」(原文のまま)と説明して いる.これが現在の「個別分散水熱源 ヒートポンプシステム」の誕生である.

1971 年日本ピーマック(株)(以下,

当社)は PMAC カセットとして「個 別分散水熱源ヒートポンプユニット」

を上市した.本システムは現在も健在 でさらに進化発展し続けている.

3. 日本ピーマック社における現 在の個別分散水熱源ヒートポ ンプシステム

 本システムの特長を生かし,当社で 開発した応用例を以下に示す.

 まず,水の効率の良さを示す空調機 の性能の推移であるが,1979 年当時 の T752 という機種では,冷房 COP 3.05(冷却水温 32℃)であった.最新 の個別分散水熱源ヒートポンプ対応機 種 WTP25BA(3)では冷房 COP5.56 (冷 却水温 32℃),再生可能エネルギー対 応機種 WDX25AA(3)では冷房 COP8.93

(冷却水温 20℃)である.昔に比べ格 段に性能が向上している.

 図 2は個別放射空調のフロー図で ある.通常,放射空調は,除湿機を別 に設置する必要があったが,図 2に 示 す 個 別 放 射 空 調 対 応 機 種 WX- P25A(3)では 1 台で放射と除湿が同時 にできる.個室の設置スペースでは,

両機能を一体化し設置しやすくなっ た.また,各個人の好みで自動冷房除 湿運転,暖房運転を行うので非常に快 適な空調となっている.

 図 3は地中熱と地下水のシステム 概要を示すシステム概要図である.通 常,当社の水熱源ヒートポンプの水温 範囲は 15℃~45℃であるが,再生可 能エネルギー対応機種 WDX25AA/50 AA(3)では冷房 7℃~50℃,暖房 5℃~

45℃と再生可能エネルギー用に水温範 囲を広くした.冷却水温低下で凝縮温 度が低下し冷房効率はよくなる.冷却

水温 20℃の冷房 COP は 8.93(WDX25 AA)であるが,部分負荷運転時,運 転周波数が低下すれば,冷房 COP は 10 以上となる.年間運転では部分負 荷運転の割合が大きいので年間システ ム効率を考えた場合,非常に有利なシ ステムとなる.

4. おわりに

 水は空気に比べ比熱が約 4 倍,熱伝 導率が約 26 倍で熱交換効率がよいの で,小型で高効率な水熱源ヒートポン プを開発できる.この特性を利用した 未来の「個別分散水熱ヒートポンプシ ステム」を考えた.たとえば搬送動力

(ポンプ,送風機)の低減,潜熱・顕 熱分離によるシステム効率向上,地中 熱採用による冷房 COP 向上,太陽熱 利用による暖房運転時の補助熱源の不 要化,蓄熱利用による熱源水温度の適 正化等,開発余地は非常に大きい.

 先人の知恵を基礎とし最新の先端技 術を取り入れた,よりよい「個別分散 水熱源ヒートポンプシステム」が新た に生まれると確信する.

(原稿受付 2013 年 6 月 6 日)

〔齋藤敏明 日本ピーマック(株)〕

●文 献

( 1 )日本機械学会 HP「機械遺産」

http://www.jsme.or.jp/kikaiisan

( 2 )柳町政之助,今後の空気調和装置について

(第 1 報),空気調和・衛生工学会誌,43-4

(1969),309-311.

( 3 )日本ピーマック(株)HP「製品情報」

http://www.pmac.co.jp/products/pmac/

catalog.html 図 1 MY 式熱ポンプ暖冷房装置の基本説

明図

②b

②b

②a ②c

① 水一空気熱ポンプ式空調機

②a 〜②c 水配管系統

③ 水循環ポンプ

④ 熱源供給装置

⑤ 水冷却装置

⑥ 膨張水槽

②c

②c

① ① ① ①

③ ④

⑥ ⑤

図 2 個別放射空調のフロー図

フィルタ 送風機

圧縮機 熱源水

ドレン

空気熱交換器

送水ポンプ

膨張タンク

給水

各放射パネル

放射パネル

︵客先手配︶

放射側水熱交換器 水熱交換器

操作スイッチ

〈天井面〉

RA SA

吹出ダクト

図 3 システム概要図

PMAC PMAC PMAC PMAC

冷房

夏期は放熱 冬期は吸熱

地中熱 地下水

排熱回収

(ヒートリカバリー)

排熱回収

(ヒートリカバリー)

20℃

地中熱交換井

水−水熱交換器 20℃

18℃

15℃

揚水井 還元井

蓄熱槽

【地中熱】 17℃

採熱温度:年間約 17℃

(循環水温 約 20℃)

【地下水】

採熱温度:年間約 15℃

(循環水温 約 20℃)

【注記】

地下水(井水)や河川水を使用して いる場合は,「水−水熱交換器」を 使用し,熱源水回路を分けてください。

暖房

冷房

冷房 暖房

冷房

スイッチ スイッチ スイッチ

PMAC PMAC PMAC PMAC

スイッチ スイッチ スイッチ

─46─

日本機械学会誌 2013.9 Vol.116No.1138 660

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