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視覚と筋運動感覚に依存した空間定位行動とエゴセンターの位置 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)視覚と筋運動感覚に依存した空間定位行動とエゴセンターの位置 キーワード:視覚,筋運動感覚,視覚的エゴセンター,視覚−筋運動感覚的エゴセンター,空間定位行動 行動システム専攻 西田 はじめに 方向の概念は,原点(origin)を必要とする.外界にお. 佐希子. 感覚課題は,被験者は遮蔽された手の親指でポインティ ングを行う事であった.いずれの方法でも左右の手を交. ける方向知覚の原点をエゴセンターという.これまでエ. 互に用いて反応を行った.. ゴセンターについては,ほとんどすべての研究が視覚モ. 手続き. ダリティに限定されてきた(Mapp et al. 2002).近年では,. れた.H・T 法,修正 H・T 法の視覚課題では,被験者. 他の感覚モダリティのエゴセンターに関する研究も報告. は提示された固定光点を凝視し,その位置を記憶し,次. されている(Shimono et al.2001) .しかし,実際には事物. に可動光点を点灯して,記憶した光点の位置と可動光点. の空間定位において,複数の感覚モダリティが使われて. を結ぶ想像上の線分が“自分に向かっている” ように知. いる.本研究では,視覚と筋運動感覚を用いて,クロス. 覚される位置に可動光点の位置を調整した.H・T 法で. モーダルな感覚が用いられる条件下のエゴセンターの位. は,8試行づつ,合計 32 試行,修正 H・T 法では,3. 置と空間定位行動を検討することを目的とした.. つの距離条件で8試行,合計 24 試行が行われた.H・T. 被験者の頭部はバイトボードによって固定さ. 法,修正 H・T 法の筋運動感覚課題でも視覚課題と同様 実験 1 目的. に,固定光点を凝視し,その位置を記憶し,遮蔽された. エゴセンターを測定する方法として 4 つの方法が. 提唱されている(Mitson,Ono,Barbeito :1976) .4つ の方法のうち,本実験では,. S1. 固定刺激. 固定刺激. S1. H&T 法,修正 H&T 法を視. 覚系の反応,筋運動感覚系の反応を用いてエゴセンター を測定することによって,反応モダリティの違いがエゴ センター位置測定にどのように影響を及ぼすのかを検討 した. 方法 刺激と装置. 刺激は発光ダイオード(以下 LED)で,被. 験者の眼の高さ,異なる前額並行面上に提示した.H・ T 法では4つの固定光点を被験者の角膜面から 50cm の 前額平行面上で,被験者の頭部の正中面から左右に視角 15.1°と 30.2°の位置に対照的に設置した( Figure1a) . 視覚系の反応(以下視覚課題と呼ぶ) ,1 つの可動光点を 被験者の角膜面から 25cm の距離の前額平行面上に設置. Figure1. Howard & Tempelton 法 ( a) と 修 正. Howard & Tempelton 法 ( b). した.筋運動感覚系の反応(以下筋運動感覚課題と呼ぶ). 手の先端に設置されたポインターと記憶された光点の位. 用いた場合は,固定刺激が設置されている台の裏面に,. 置を結ぶ想像上の線分が“自分に向かっている”ように. ポインターを設置し,25cm の位置でポインティング反. 知覚される位置にポインティングした.試行数は視覚課. 応を行った.修正 H・T 法では,2 つの固定光点を被験. 題と同様であった.. 者の角膜面から 50cm の前額平行面上で,正中面から左. 被 験 者 7 名が実験に参加した.. 右に視角 28.4°の位置に対照的に設置した.視覚系,筋. 結果と考察. 運動感覚系の反応共に,1つの可動刺激の位置を角膜面. 2つの方法で測定したエゴセンターの平均位置を table. から 40,30,20cm の距離の前額平行面上に設置した. 1に示す.X 軸上の+値は被験者の正中面の右側を表し,. (Figure1b).視覚課題における可動光点は,被験者自. −値は被験者の正中面の左側を表す.また,Y 軸上の+. 身がハンドルを動かす事によって左右に移動した.運動. 値は,被験者の角膜面より前方を表し,−値は被験者の. エゴセンターの位置.

(2) 角膜面より後方を表す.これらの平均位置について,2. 応と筋運動感覚反応で行った.. 要因分散分析[感覚モダリティ(視覚・筋運動感覚)×方. 方法. 法(H・T 法・修正 H・T 法)]を用いて分析を行った.. 手続き. Y 値について,感覚モダリティ間に有意な主効果が認め. つの条件を設けた.1つは,被験者が‘主観的’に自分. られた[F (1,6)=11.966,p<.05].多重比較の結果,. の真正面だと思う位置に可動刺激を定位する条件で(主. Y 値は筋運動感覚条件が視覚条件よりも有意に大きいこ. 観的真正面条件) , もう 1 つは正中面上に提示されている. とがわかった.結果を要約すると,視覚的エゴセンター. 基準刺激と同じ位置に可動刺激の位置を調節する条件で. の位置は,視方向原理の仮定と一致して,両眼の中点に. ある(客観的真正面条件) .いずれの条件でも観察距離は. 位置する事が示された.一方,視覚−筋運動感覚的エゴ. 50,40,30cmの距離で,各距離で 10 試行,合計 30 試行. センターの位置は正中面上,角膜面より前方に位置する. 実施した.視覚課題では,LED を可動刺激に用い,筋運. ことが明らかとなった.以上の結果は,感覚モダリティ. 動感覚課題では,ポインティングを行い,ポインターを. の違いがエゴセンターの位置の違いを生み出すことを示. 調節した.. している.. 位置同定課題. 主観的真正面課題. 主観的真正面課題では,2. この課題では,被験者は視覚的に提示さ. 方向原理の仮定と一致して,両眼の中点に位置する事. れた凝視刺激の位置を記憶し,その記憶された位置と同. が示された.一方,視覚−筋運動感覚的エゴセンターの. じ位置に可動刺激を調節する.被験者の角膜面から左右. 位置は正中面上,角膜面より前方に位置することが明ら. 視角 30°,15°の azimuth 面上に設置された LED の. かとなった.以上の結果は,感覚モダリティの違いがエ. 位置を記憶し,その位置に可動刺激を調節することであ. ゴセンターの位置の違いを生み出すことを示している. った.視覚課題,筋運動感覚課題における反応は主観的 真正面課題に準じた.. 表1 エゴセンターの平均位置 X 方法 平均 視覚課題 H&T 0.13 修正H&T 0.019 筋運動感覚課題 H&T 0.74 修正H&T 0.64. SD. Y 平均. 被験者 SD. 0.68 0.69. 0.52 0.46. 2.53 2.43. 2.07 2.93. 14.16 6.64. 4.25 10.89 単位(cm). 実験 2. 10 名が実験に参加した.全員右利きであった.. 結果と考察. 主 観 的 正 中 面 課 題 :各距離について得られ. た測定値の平均値を算出し,理論値を 0 とする母平均検 定を行った.その結果,客観的,主観的正中面条件共に, 固定刺激 可動刺激 可動刺激. 実験 1 で得られたエゴセンターの位置の妥当性を検討 する為に,観察距離を大きくした条件下( 95cm,40cm) でエゴセンターの位置を測定し,エゴセンター位置の妥 当性を検討した.結果は実験 1 で測定した視覚的エゴセ ンターの位置および視覚−筋運動感覚的エゴセンターの 位置とほぼ一致していた. (紙面の都合上,割愛.詳しく. Figure 2 主 観 的 真 正 面 課 題. は論文参照) .. 客観的正中面条件(a)と主観的正中面条件(b). tabe l2エゴセンターの位置 方法 視覚課題 筋運動感覚課題. 目的. X Y 平均 SD 平均 SD -0.75 1.23 -0.852 1.34 0.49 1.38 3.85 4.85 単位( cm) 実験 3. 実験 3 では感覚モダリティの違いが空間定位行動. に違いをもたらすのかどうかを検討する.課題として, 主観的真正面課題と位置同定課題の 2 つの課題を視覚反. 視覚課題では有意な差は得られなかったが[それぞれ, t=1.797,p<.05;t=.291, p<.05],筋運動感覚課題で有 意な差が得られた[客観的正中面条件:t=6.174,p<.05; 主観的正中面条件:t=2.476, p<.05] 位置同定課題:被験者の反応は,X,Y の座標値で表さ れた.各刺激距離における固定光点の物理的位置を理論 値として,理論値 0 とする母平均検定を行った.X 値は 刺激の物理的位置からの方向を表し,Y 値は刺激の物理 的位置からの距離を表す.視覚課題の刺激距離 40cm,.

(3) 30cm の X 値は,各角度における物理的位置と統計的に. の前額平行面上に設置した.筋運動感覚課題では,視覚. 有意な差は認められず,Y 値についても刺激距離 40cm. 課題で用いた可動光点の裏面にポインターを設置し,被. の右 30°[t=4.4142, p<.05]を除き統計的に有意な差は認. 験者はそのポインターを握り,その距離は視覚課題と同. められなかった[t=1.78,p<.05].筋運動感覚課題の刺激. 様,40cmの位置でポインティング反応を行った.. 距離 40cm の X 値において,左 30°,左 15°で統計的な. 凝視刺激. 有意な差が認められ[左 30°;t=-2.774, p<.05;左 15°; t=-3.202, p<.05],物理的位置より左側に位置した.右 30,. 可動刺激. 15°では統計的に有意な差は認められなかった.Y 値に. 110cm. ついては,右 30°のみが統計的に有意な差が認められ 40cm. [t=3.34, p<.05],物理的位置より前方に位置していた.ま た,刺激距離 30°の X 値,Y 値ではいずれの角度でも統 計的に有意な差が認められた.X 値の左 30°,15°では 物理的位置より左側に位置していた[それぞれ,t=-3.604, p<.05;t=-3.12, p<.05].右 30°,15°では,物理的位置 より右側に位置していた [それぞれ,t=2.788, p<.05; t=2.681, p<.05].Y 値では,左右すべての角度で物理的位 置より前方に位置していることがわかった [左 30: t=3.400,左 15:t=5.031,右 30:t=4.398,右 15:t=3.026,. Figure4 頭 部 角 度 実 験 の 概 要 図 頭部角度を左右 10°∼40°のいずれかに固定し,被 験 者は正中面上にある刺激方向を判断する.. すべて p<.05].以上の結果を要約すると,感覚モダリテ. 手続き. ィの違いは空間定位行動に違いをもたらし,筋運動感覚. にシートベルトで固定された.頭部位置を正確に保持す. を用いた反応では,手のバイアス効果(Haggard,2000). るために,被験者はレーザーポインタが設置されたヘル. が影響したと考えられる.. メットを装着した.頭部角度は,被験者自身の角膜面か. 15°. ら左右 40°∼10°まで 8 つの頭部角度位置のいずれか. 15°. 30°. 実験は完全暗室下で,被験者の胴部は正中面上. 30°. に,このヘルメットのレーザーポインタをあわせた後に ヘルメットが固定し得られた.視覚課題では LED を調 節し, 筋運動感覚課題ではポインティング反応を行った. 被験者の課題はいずれも,頭部位置が固定された後,前. 40cm. 額平行面上,正中面に提示された固定光点を凝視し,そ の位置を記憶し,次に可動刺激を,記憶した固定光点の. 30cm. 位置と結ぶ想像上の線分が “自分に向かってくるように” 知覚される位置に調整した.試行は各角度について 5 試 行,計 40 試行が行われた. 被 験 者 6 名が実験に参加した.全員右利きであった. 分析 Figure3 位置同定課題. 頭部回転軸の中心の座標を原点としたデカルト. 座標を用いて,実験1,2 で得られた視覚的エゴセンタ ーと,視覚−筋運動感覚エゴセンター位置から知覚され る事物の方向を予測した.頭部回転角度に依存して各エ. 実験 4 目的. 本実験では頭部の位置と身体角度を変化させた. ゴセンターが移動すると仮定し,知覚される可動刺激の 位置を予測した.分析は予測値を理論値とし,母平均検. 時のエゴセンター位置の測定を行い,頭部位置とエゴセ. 定を行った.. ンターの位置との関係を検討することを目的とした.. 結果と考察. 各エゴセンターから予測された値を理論. 刺激は LED で,被験者の目の高さ,異なる前額. 値0とし,母平均検定を行った.いずれの角度条件も視. 平行面上に提示した.固定光点は被験者の正中面上,角. 覚的エゴセンターの予測値と視覚課題で得られた実測値. 膜面から 110cm の距離に設置した(Figure3) .視覚課題. にとの差は統計的に有意ではなかった.しかし,筋運動. では,1 つの可動光点を被験者の角膜面から 40cm の距離. 感覚課題における母平均検定の結果,左空間では位置角. 方法.

(4) 度 10°を除いて,有意な差が認められた[左 40°:. 置の関係を検討したが,筋運動感覚反応を用いた場合に. t=-8.8141;左 30°:t=-4.63;左 20°:t=-4.50274;いず. は,視覚−筋運動感覚エゴセンターから判断されないこ. れも p<.05].更に,右空間も左空間同様,頭部位置角度. とがしめされた.日常空間で頭部と身体角度が異なる場. 10°を除いて,有意な差が認められた[右 40°:t=-9.55;. 合の,筋運動感覚を用いた事物の空間定位行動には相対. 右 30°:t=-5.75;右 20°:t=-3.892;いずれも p<.05].. 方向の手がかり( excentric cue)が位置の補正を行ってい. この結果は左右の頭部位置 10°を除いて,すべての頭部. る可能性がある.このような相対方向の手がかりがどの. 位置で視覚−筋運動感覚的エゴセンターから得られた予. ように事物定位に関連しているのかについて検討を行う. 測値よりも,凝視刺激位置方向に偏位して方向が知覚さ. 必要があると思われる.. れたことを示している.. 本研究は,クロスモーダルな感覚を用いた事物の空間. 結果を要約すると,視覚系の反応の場合,頭部角度に. 定位におけるエゴセンターの役割について示唆をあたえ. 依存せず, 視覚的エゴセンターから方向判断がなされる.. るものである.近年,視覚以外の感覚モダリティに関す. 一方,筋運動感覚反応の場合には,頭部角度と胴部角度. る研究が報告されているが,これらの感覚が同時並行的. の差が大きいと視覚−筋運動感覚エゴセンターから方向. に用いられる事態におけるエゴセンターの役割を検討し. 判断がなされないことが明らかとなった.更に,筋運動. た研究は報告されていない.日常空間では,単独の感覚. 感覚反応における方向判断は,頭部角度左右 10°をのぞ. モダリティを用いて空間定位を行う状況は少ない.複数. き,一貫して凝視刺激方向に偏位して知覚されていた.. の感覚モダリティを用いて空間定位行動を行っていると. この結果は,視覚的エゴセンターは頭部角度に伴って移. 考えられる.このような事態において,エゴセンターの. 動する事を示し,視覚システムは頭部位置をあらかじめ. 位置やその機能的役割を検討する事は,人間の空間表象. 計算して方向判断を行っていることが示唆される. メカニズムの解明に 1 つの間接的な示唆を与えるものと. (Mendrop et al. 2002) .一方,視覚−筋運動感覚的エゴ. 考えられる.今後は,視覚と聴覚が用いられる事態のエ. センターは頭部角度と身体角度の差に依存することが示. ゴセンター位置や,頭部が運動している際の視方向を検. された.. 討する事で,日常空間でどのように人間が事物の方向定 位を行っているかを更に明らかにする事が可能になると 結論と将来の展望. 考える.. 感覚モダリティの違いがエゴセンター位置に違いを及 ぼすことが実験 1, 2 の結果から明らかとなった. これは,. 主要引用文献. 方向処理システムが視覚表象システムと視覚−筋運動感. A. P. Mapp, H. Ono, & I. P. Howard : Binocular visual. 覚表象システムに分かれていることを示唆するものであ. direction. In I. P. Howard & B. J. Rogers, Seeing in depth: 2,. る.しかしながら,エゴセンター位置の違いは実験室環. Depth perception. (pp. 85-99). Toronto: I. Porteous. 2002. 境下の視覚的手がかりが少ない状況で得られたエゴセン. W. P. Mendendorp, S. A. Smith, D.B. Tweed, and J. D.Crawford :. ターであり,日常環境下における視覚的−筋運動感覚的. Rotational Remapping in Human Spatial Memory during Eye and. 方向判断はこのような位置に依存しない可能性も考えら. Head Motion. The Journal of Neuroscience, 22, RC196, 2002. れる.日常環境下における筋運動感覚を用いた事物の空. L. Mitson, R. Barbeito and H. Ono. Three method of. 間定位には,感覚の違いを反映せず,視覚的エゴセンタ. measuring the location of the egocenter: their reliability,. ーのみが用いられている可能性も否定できない. これは,. comparative locations and intercorrlations. Canadian Journal. 視覚が遠隔受容器であるのに対して,筋運動感覚は接触. of Psychology, 30,1-8,1976. 受容器であり,視覚的制御を強く受けるという特性をも. P. Haggard, C.Newman, J.Blundell and H.Andrew : The. つためである.. perceived position of the hand in space, Perception and. また,これまでエゴセンター研究は,自己身体と事物. Psychophysics, 68, 363-377, 2000. の絶対的方向に関する研究が主として行われてきた.し. K. Shimono, A. Higashiyama, W. J. Tam : Location of. かし,我々が日常知覚している環境では事物と事物間の. the Egocenter in Kinesthetic Space, Journal of. 方向(相対方向処理)も処理しており,これらの事物間. Experimental Psychology: Human Perception and. の関係の処理にエゴセンターがどのようなかかわりを持. Performance, 27, 848-461, 2001. っているのかについては検討が行われてない.本研究で は,頭部角度と身体角度が異なる場合のエゴセンター位.

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