Title
表面介在物による表面ひずみ測定方法の開発と接触面への
適用の試み( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
半田, 充
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(工学) 甲第133号
Issue Date
2001-03-24
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/1854
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏名 (本籍) 学 位 の 種 類 学位記 号番 号 学位授与年月 日 専 攻 学位論文題 目 半 田 充(愛知県) 博 士(工学) 甲 第 133 号 平成13年 3 月 24 日 生産開発システム工学専攻 表面介在物による表面ひずみ測定方法の開発と接触面への 適用の試み
(Development of Measuring Method for Surface Strain Using SurfaceInclusionsand Application to Contact Surface)
学位論文審査委員 (主査) 教 授 丸 井 悦 男 (副査) 教 授 長 谷 川 典 彦 教 授 堂 田 邦 明
論文内容の要旨
試料内あるいは試料の自由表面上の変形は,実験により測定されることが多い.スクラ イブドサークル法によるプレス成型品の解析を除いては,接触面の変形を直接測定した例 は非常に少ない.工具との接触面を有する加工において,接触面の変形挙動を把握するこ とは重要である.また,微細加工のような小さな材料の変形の場合,接触状態が材料全体 の変形に大きく影響を及ぼすと考えられる.格子法,スクライブドサークル法は,材料内 の位置を示す目印の大きさに限界があり,微細加工のような小さな領域の解析には不向き である.従って新たな測定方法の開発が待たれている. そこでこの研究では,試料表面に格子線や円などのマーカーを付与することなく,材料 表面の変形を測定する方法として,材料中に含まれている微細な介在物を材料の位置を示 すマーカーとして利用し,表面変位を測定することを試みている.材料中に含まれる介在 物は非常に微細であり,表面変形に伴う介在物の変位もわずかであるため,微少量を精度 よく測定する必要がある.よって,材料表面の電子顕微鏡による観察と画像処理技術の援 用による測定方法の開発を試みている. 第1章では,新たな測定方法提案の重要性と表面変位測定方法の現状について概観し, 本研究の目的と意義を明らかにしている. 第2章では,介在物を位置マーカーとして利用し表面変位を測定する場合の観察方法, 画像処理技術の適用方法,測定すべきパラメーターについて詳細な検討を行っている.そ の結果,輝度と大きさが広範囲に異なる金属表面上の介在物を対象とする場合,輝度や大 きさによって対象物の真の領域を抽出するしきい値が異なるため,一定のしきい値で介在ー19-物を抽出することはできない.しかし介在物の重心位置はしきい値設定の影響が最も小さ く,金属中に含まれる介在物の変位を測定する際のパラメーターとして有効であることを 明らかにしている. 第3章では,球庄子をアルミニウム平板に押し込んだときのアルミニウム平板上の表面 変位を,提案した表面介在物法と汎用的な測定法である格子法を併用して測定を行い,表 面介在物法の適用可能性を検討した.その結果,表面介在物法による測定結果と格子法に よる測定結果には,定性的に類似の特性が認められるため,表面介在物法は表面変位を測 定する方法として有効であり,試験片表面に一切の加工を施さずに表面変形を測定するこ とができるので,利用価値の高い測定法であると指摘している. 第4章では,表面介在物法の測定精度を評価するため,格子法,ピッカース圧痕法,表 面介在物法を併用して,円筒庄子の押し込みによるアルミニウム平板上の表面変位測定を 行っている.ピッカース圧痕法は,格子法に比べて精度の高い測定を行うことができるが, 接触面に空隙を形成するような位置マーカーを表面変位の測定に使用することには問題が あることを示している.表面介在物法による測定結果は,全ての測定条件においてピッカ ース圧痕法による測定結果とほぼ一致しており,表面介在物法による測定結果は定量的に も有効であることを明らかにした. 第5章では,表面介在物法による測定方法の適用範囲を拡大することを目的として,ベ リリウム銅を例として他金属材種での測定に適用しうるかについて検討している.その結 果,介在物の明瞭な画像が得られる場合には,どのような金属表面においても表面介在物 法を適用しうることを明らかにしている.次いで,2方向への表面変位の測定にも表面介 在物法を適用する試みを行っている.このような場合の測定は,任意の3介在物の重心位 置変位を測定することにより可能となることを示した.さらに,表面介在物法の精度につ いて検証し,表面が粗い場合には,介在物の重心位置の検出精度が劣化する難点が生ずる が,基準となる重心間距離を変化することにより接触面全体の有意なひずみ分布を求めう ることを明らかにしている. 第6章では,圧子と試料表面間に空隙を形成する位置マーカーを使用した場合について, ピッカース圧痕法を例として,接触面の表面変形の測定に対する位置マーカーの影響を詳 細に検討している.その結果,ピッカース圧痕内部への表面の塑性流動は接触面からでは なく,ピッカース圧痕より下方の材料が圧痕内部に流入していることなどを明らかにした 上で,ビッカース圧痕法もかなりの測定精度を有していると結論し,表面介在物法の有効 性を確認するための傍証としている. 第7章では,第2章から第6章までに得られた結論を総括して述べるとともに,表面介 在物法の今後の展望について議論している.
論文審査結果の要旨
試料内あるいは試料の自由表面上の変形は,実験により測定されることが多い.スクラ イブドサークル法によるプレス成型品の解析を除いては,接触面の変形を直接測定した例は非常に少ない.工具との接触面を有する加工において,接触面の変形挙動を把握するこ とは重要である.また,微細加工のような小さな材料の変形の場合,接触状態が材料全体 の変形に大きく影響を及ぼすと考えられる.格子法,スクライブドサークル法は,材料内 の位置を示す目印の大きさに限界があり,微細加工のような小さな領域の解析には不向き である.従って新たな測定方法の開発が待たれている. そこでこの研究では,試料表面に格子線や円などのマーカーを付与することなく,材料 表面の変形を測定する方法として,材料中に含まれている微細な介在物を材料の位置を示 すマ一声-として利用し,表面変位を測定する新しい測定方法を提案している・得られた 成果は以下のようヤある. 第1章では,新たな測定方法提案の重要性と表面変位測定方法の現状について概観し, 本研究の目的と意義を明らかにしている. 第2章では,介在物を位置マーカーとして利用し表面変位を測定する場合の観察方法, 画像処理技術の適用方法,測定すべきパラメーターについて詳細な検討を行っている.そ の結果,輝度と大きさが広範囲に異なる金属表面上の介在物を対象とする場合,輝度や大 きさによって対象物の真の領域を抽出するしきい値が異なるため,一定のしきい値で介在 物を抽出することはできない.介在物の重心位置はしきい値設定の影響が最も小さく,金 属中に含まれる介在物の変位を測定する際のパラメーターとして有効であることを明らか にしている. 第3章では,球圧子をアルミニウム平板に押し込んだときのアルミニウム平板上の表面 変位を,提案した表面介在物法と汎用的な測定法である格子法を併用して測定を行い,表 面介在物法の適用可能性を検討した.その結果,表面介在物法による測定結果と格子法に よる測定結果には,定性的に類似の特性が認められるため,表面介在物法は表面変位を測 定する方法として有効であり,試験片表面に一切の加工を施さずに表面変形を測定するこ とができるので,利用価値の高い測定法であると指摘している. 第4章では,表面介在物法の測定精度を評価するため,格子法,ピッカース圧痕法,表 面介在物法を併用して,円筒庄子の押し込みによるアルミニウム平板上の表面変位測定を 行っている.ピッカース圧痕法は,格子法に比べて精度の高い測定を行うことができるが, 接触面に空隙を形成するような位置マーカーを表面変位の測定に使用することには問題が あることを示している.表面介在物法による測定結果は,全ての測定条件においてピッカ ース圧痕法による測定結果とほぼ一致しており,表面介在物法による測定結果は定量的に も有効であることを明らかにした. 第5章では,表面介在物法による測定方法の適用範囲を拡大することを目的として,ペ リリウム銅を例として他金属材種での測定に適用しうるかについて検討している.その結 果,介在物の明瞭な画像が得られる場合には,どのような金属表面においても表面介在物 法を適用しうることを明らかにしている.次いで,2方向への表面変位の測定にも表面介 在物法を適用する試みを行っている.このような場合の測定は,任意の3介在物の重心位 置変位を測定することにより可能となることを示した.さらに,表面介在物法の精度につ
-21-いて検証し,表面が粗い場合には,介在物の重心位置の検出精度が劣化する難点が生ずる が,基準となる重心間距離を変化することにより接触面全体の有意なひずみ分布を求めう ることを明らかにしている. 第6章では,庄子と試料表面間に空隙を形成する位置マーカーを使用した場合について, ビッカース圧痕法を例として,接触面の表面変形の測定に対する位置マーカーの影響を詳 細に検討している.その結果,ピッカース圧痕内部への表面の塑性流動は接触面からでは なく,ピッカース圧痕より下方の材料が圧痕内部に流入していることなどを明らかにした 上で,ピッカース圧痕法もかなりの測定精度を有していると結論し,表面介在物法の有効 性を確認するための傍証としている. このように本論文では,接触面の表面変形を測定に対して外乱となりうる何らの位置マ ーカーを付与することなく,表面変位を測定する画期的な方法を提案し,その有用性をい くつかの実例について示したものであり,学位論文審査委員会では学術上あるいは工業上 寄与することが大であると結論した. よって本論文は博士(工学)の学術論文として価値あるものと認める.