地質情報データベースの作成と公開(その1) ─デー タベース構築および検索方法について─
著者 山本 博文, 藤井 純子
雑誌名 福井大学地域環境研究教育センター研究紀要 「日
本海地域の自然と環境」
巻 4
ページ 143‑147
発行年 1997‑11‑01
URL http://hdl.handle.net/10098/7829
福井大学積雪研究室研究紀要
「日本海地域の自然と環境」
NQ4 , 143-147 , 1 9 9 7
地質情報データベースの作成と公開(その 1 ) *
ーデータベース構築および検索方法についてー
山本博文・藤井純子 キーワード:データベース,自然災害,地質文献,福井
1 .はじめに
1995年(平成7年) 1 月 17 日,淡路島北端部を震源とするマグニチュード 7.2の都市直下型地震が発生 し,死者数6 , 000 人以上といっきわめて大きな被害を淡路島一阪神地域にもたらした。福井県でも, 1948 年(昭和 23年)の福井地震(マク、、ニチュード 7
.
1) により,死者数3 , 800 人にものぼる災害に見舞われ ている。また, 1989年(平成2年) 7 月 16 日,越前町玉川の国道305号線山側斜面の岩石が突然崩落し,マイクロパスに乗車していた 15 人が全員死亡するという災害が発生している。通常,このような自然 災害に対する研究では,最初に過去の災害についての文献調査が行われる。福井県における過去に発 生した自然災害は,市町村史などの古い資料・史料の中に断片的に記述きれているだけのことが多い。
そのため目的とするデータを得るのが大変難しし時間もかかる。そこで地学教室では所属の 2人の学 生(西村真希と西尾祐子)の卒業研究により,福井県で起こった自然災害の記録の収集を行い,デー タベース化し,その一部を福井大学積雪研究室研究紀要(服部ほか, 1996) に公表している。 しかし,
その利用には不便があった。そこで多くの人に簡便に利用してもらうために,このデータベースをイ ンターネッ ト上で公開することにし,検索システムを作成した(図 1 , 2) 。また同時に,地学教室で 作成している福井県下における地質関連の文献データベースも公表することとした(図 3 )。なお検索 プログラムの詳細については,高漬 (1997) に記されており,そちらを参照してください。またデー タベースの詳細やリストの配布などについては,福井大学教育学部地学教室まで問い合わせてくださ い。インターネット上での接続先は福井大学情報処理センターホームページ (http://www .icpc.fukui
u.ac.jp/EUC/Welcome.html) です。
2. 収録されたデータについて
2- 1.福井県自然災害データベース
福井県自然災害データベースの詳細については服部ほか (1996),服部・田中(1 997) にまとめてあ るので,詳細についてはそちらを参照していただきたい。ここではデータベースを利用する上で必要 と思われる事項を,上記に基づき記述した。
自然災害の記録は,主に福井大学附属図書館に所蔵きれている資料(文献)をもとにしている。出典 は市町村史(誌),福井新聞縮刷版,
気象年表等であり
,福井市地域防災計画や福井県大百科事典も含 まれている。収録年代は, 701年から 1996年までまたがっている。しかしこれらの市町村誌(史)のなか には,災害の記述では市町村に関するデータのみが記きれていたり,記述ミスと思われるものも含ん でいる。ここではなるべく資料に忠実で、あることを重要視したので評価に基づく修正等の処置を行って いない。なお,災害記録のうち,古い時代のものは“大洪水が起こった"という程度のものも取り入れた。最近の災害,特に戦後の災 害については資料が豊富に存在
しているので, 日常的な災害,例えば大雨 があったとか大雪が降ったなどは採録せず,人的・建築物的被害のあった重大な災害のみを選択した。'この記事は,福井大学情報処理センタ一広報誌 fNETWORKJ 第 11巻,第 1/2 号. 21-27 頁に掲載された同じタイ トルの記事を,情報処理センター及び著者の許可を得て,転載したものである.
印刷の都合,体裁は変更されているが,内容は原文のままである.本記事の転載を許可していただし、た福井大学情報 処理センターに感謝する(福井大学積雪研究室長)
1 4 3‑
山本博文・藤井純子
データベースは,発生年月日,災害の種類,被災地,倒壊家屋数,死者・行方不明者数,災害の記 載,文献といった項目から構成きれている。発生年月日の項では,明治5年 12 月からは太陽暦,それ以 前は太陰暦を使用した。後者の場合でも,特に太陽暦の日付けの記載があれば,記載の所でカッコ書 きで示した。災害発生の月日が不詳のものは月日の項を‘? ?'とした。災害の種類は「地震j , ,風 雨 j , ,崖崩れj , ,高波 j , '雪j , '雷」に区分し,そのうち該当する 1 つ,あるいはいくつかを記入し た。「崖崩れ」には,地すべり,落石などを,「雪」には電,霞などを含め,詳細は記載で示した。災 害が発生した場所については現在の市・郡の名を記した。場所が不明なもの,範囲がもっと広い地域 に及ぶものは福井県とした。場所が不明で, 1 つの文献だけに記載があるものはその文献を作成した 市郡名を記入した。倒壊家屋数については全壊,半壊,流失家屋の合計戸数とした。しかし資料に示 きれている数値は実際の災害の一部しか表現していない場合が多いと思われる。死者・行方不明者数 は死者,行方不明者の合計数としたが,死者ありとしか記きれていないものは“+"とした。文献に 記述のないものや判断できない場合は空白とした。災害の内容は文献の記載をそのまま記した。基本 的には原記述に従ったが,一部は簡略化・修正した部分もある。なお文献欄において“ 1996/07/15"
のように記されているのは,福井新聞縮刷版からの引用を示している。
2-2. 福井県地質文献データベース
福井県地質文献データベースは福井県の地質に関連する文献を収集し,データベース化したもので ある。
データベースは,著者名,発行年,論文名,雑誌名,発行所・発行者,巻,号,ページ,キーワー ドといった項目から構成されており,最も古いものは 1911年の福井勝三方郡誌から,最新のものまで 収録している。キーワードについては,論文に添付きれているもののみ記しており,古い論文につい てはほとんど付されていない。また論文名等は和文, もしくは英文のみとなっており,検索の際には 注意を要する。
3. 検索方法
地質情報データベースを公開するにあたり,検索は容易で誰でもすぐに使えるようにということを 目標にした。福井県自然災害データベースは作成時には Microsoft Access上で,福井県地質文献デー タベースは Microsoft Excel上で、構築きれている。これらのデータベースファイルはそのままインター ネット上で公開し,ファイル転送し使うことも可能ではあるが,使う側がソフトの取り扱いに慣れて いないと,思うように使いたいデータは得られない。またデータベースの更新ということを考えても 得策ではない。そこで, www上で,誰でも使いやすい選択ボタンや選択メニューを使用し,キーワ ードを入力するだけで検索可能のシステムにした。
3-1. 福井県自然災害データベースの検索
福井県自然災害データベースでは発生年代,災害名に選択メニューを取り入れた(図 2 )。発生年で は「西暦 1700年以前 j , '1701-1800年j , '1801-1900年 j , '1901-1950年 j , '1951 以降」といった区 分を行い,選択メニューで選べるようにした。例えば1700年以前の記録一覧を見るには,発生年代で
[ ‑1700J
を選択し,検索ボタンを押すだけで良い。また災害名では「地震j , '風雨 j , '崖崩れj ,「高波 j , '雪j , ,雷」の何れかを選択メニューから選択するだけである。キーワードについては,
3
つまで指定でき,キーワードの結合は選択ボタンで、AND" かれOR" を選べるようにした。検索で は選択メニューで示された範囲内で,キーワードと一致する語句,数値等が含まれるデータを表示す る
。
キーワードが指定きれていない場合には,メニューで示きれた範囲内のすべてのデータが表示さ れることになる。例えば福井地震について検索したい場合にはキーワードに「福井地震」と入れ,検 索ボタンを押すだけでも可能であり,この場合 7 件のデータが表示きれる(図 4)。実際の福井地震の データは 1件だけであるが,記載中に「… 6 月の福井地震後間もない時の豪雨であり…」と書かれたい わば福井地震の 2 次災害も検索されて出てくる。キーワードに「福井地震 j ,災害名として「地震」を地質情報データベースの作成と公開(その 1
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図 3. 福井県地質文献データ ベースの検索ページ
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自然災害データベース検索
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地質文献データベース検索結果
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地質情報データベースの作成と公開(その 1
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選択すると 2 件のみの表示となる。また発生年代として í1900-1950年J ,災害名として「地震」を選 択し,キーワードを指定せずに検索すると,福井地震を含む 11件のデータが表示きれる。このように,
選択メニュー,キーワードの使い方を工夫すると, 目的とするデータがすばやく得られる。 3-2. 福井県地質文献データベースの検索
福井県地質文献データベースでは,キーワードを 3 つまで指定でき,その結合をホAND" か、OR"
の選択ボタンで選べるようにした(図 3 )。例えば「福井地震」をキーワードにして検索ボタンを押せ ば13件の論文がリストアップきれる。しかし例えば「越前海岸」ホAND" í 海成段丘」では「条件に該 当するデータは見つかりませんでした」と表示きれてしまう。著者の知る限りにおいて 2 件以上,論 文は出ているはずで、ある。これは検索が主に著者名,発行年,論文名,雑誌名,発行所・発行者,巻,
号,ページを対象に行われ,一致する事項が無ければ,該当なしになってしまうこと,キーワードが 記きれている論文が少ないこと等が原因として考えられる。実際,「越前海岸」、ANDグ「海成段丘」の 場合だと,ある論文では「海成段丘」ではなく「海成中位段丘」と記されており,またもう一つの論 文では「越前海岸」ではなく「丹生山地西縁」となっているために,該当なしになっている。該当な しの場合には,キーワードを工夫する必要がある。例えば「越前海岸J
" OR"
í海成段丘」とキーワー ドの結合方法を変えると, 目的の論文を含む 7件のデータが表示される(図 5)。このようにキーワー ドや結合方法を工夫することにより,目的とするデータを取得することができる。4. 終わりに
今回,福井大学情報処理センターホームページに地質情報データベースを公開したが,その過程で データベースとして不十分な点,また検索上,改善すべき点など,今後の課題がいくつ明らかになっ た。
福井県自然災害データベースでは,掲載しているデータの信頼性を高めるとともに,画像や付図を 取り込み,災害の実態をより分かりやすく示す工夫が必要で、あろっ。自然災害ではやはり写真や図が ある と,災害の様子がより分かりやすく,また言葉では表現しにくい分布や被災状況を的確に伝える ことができる。しかし画像データは,収集が難ししまたファイルの大きさもテキストデータに比べ ると非常に大きい。そのため画像データについてはテキストデータ以上に取捨選択をしっかり行う必 要がある。
福井県地質文献データベースでは,各論文のキーワードの項の充実,さらに類似語検索など検索方 法の改善も今後の課題である。
またどのデータベースにも言えることではあるが,データベースの更新,維持・管理はデータベー スのもっとも重要な点であり,今後も努力を続けてゆく必要があろう
。
[引用文献]
服部 勇 ・西村真希・西尾祐子 í福井県における自然災害リ ス トJ,福井大学積雪研究室研究紀要日本海地域の自然 と環境,
nO.3 , p . 9 1 ‑ 1 3 6 ( 1 9 9 6 )
服部 勇 ・田中和子 í地域自然災害データリストおよびその役割iJJ,災害科学研究通信,印刷中 (1997)
高 j賓微行 :地質情報データベースの作成と公開(その 2 )一検索フ。ログラムについて一.
NETWORK , vol. ll , nO.1&
2 , p . 2 8 ‑ 3 6 ( 1 9 9 7 )
(やまもと ひろふみ:教育学部地学)
[email protected]‑edu . f u k u i ‑ u . a c . j p
(ふじい じゅんこ:教育学部地学)