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(1)

道路整備による福井県奥越前地域のリダンダンシー 向上効果に関する研究

著者 宇佐美 誠史, 石川 淑子, 本多 義明

雑誌名 福井大学地域環境研究教育センター研究紀要 「日

本海地域の自然と環境」

巻 8

ページ 45‑52

発行年 2001‑11‑01

URL http://hdl.handle.net/10098/7780

(2)

福井大学地域環境研究教育センター研究紀要

「日本海地域の自然と環境」

No.8, 45-52, 2001 

道路整備による福井県奥越前地域のリダンダンシー向上効果に関する研究

A Study on the Effect of Redundancy by Road Development at Okuechizen Area, Fukui 

宇佐美誠史*

(福井大学大学院工学研究科) 石川淑子T

(福井大学大学院工学研究科) 本多義明土

(福井大学工学部)

1. はじめに

現在、地方部においては自動車交通に依存しているところが多いものの、道路網が都市部と比べ脆 弱であるため、生活利便性が平常時においても低く、災害などにより交通途絶が発生した場合には、

日常生活活動にかなりの影響を及ぼす。そこで、災害時においても日常生活活動を支えるために、活 動の拠点となる場所へのアクセスのしやすさを確保することは非常に重要である。

従来、拠点施設へのアクセシビリティに関する研究は、広域交通の拠点となる施設である空港を対 象とするものが多く行われてきたが、近年、医療施設を対象とした研究がなされるようになった。こ こで、空港へのアクセシビリティを評価した研究では、空港までの所要時間、交通手段に着目したも のが多く例えば 1)、需要者の空港アクセスの利便性を高 くするために公共交通をどのように整備すれば よいかを考察した研究が多い例えば 2)。 また、医療施設へのアクセシピリティを評価した研究では、地 方部において災害時を想定した際に、医療施設へのアクセスを保証するには最低限どの経路あるいは 施設を確保しておけば良いのかを、施設への最短経路、所要時間を用いて、平常時と経路途絶発生時 (災害時)について分析している研究 3)が行われている。他にも、高速道路整備による時間短縮効果 と施設立地点の移動による効果をカパ一人口率を指標として表すことにから地域間交流を評価してい

る研究4)がある。

そこで本研究では、災害時や降積雪時においても高速道路がどの程度「活動拠点へのアクセシビリ ティを確保する(活動の機会を確保する )J ことに対して寄与するのかをみる。その方法としては、活 動種類ごとに活動拠点を定め、そこから高速道路整備前後におけるサービス圏域のカパ一人口の変佑 をみる。災害により交通途絶が発生した場合の活動拠点から、あるサービス圏域のカパ一人口の変化 を中縦建設前後で比較することで、高速道路の建設がどの程度活動拠点へのアクセシピリティ向上に 寄与しているのかを検討する。サービス圏域は拠点へ一定時間 (30、 60 分)で到達することのできる範

(キーワード:アクセシビリティ、道路計画、交通網計画)

Se詰 iUsami 

Graduate School of Engineering, Fukui University  t Yoshiko Ishikawa 

Graduate School of Engineering, Fukui University  t Yoshiaki Honda 

Faculty of Engineering, Fukui University 

45 一

(3)

宇佐美誠史・石川 淑子 ・本多義

囲である。なお、所要時間の算出には交通 量配分シミュレーションを用いる。また、

サービス圏域は平成元年度福井都市圏総合 都市交通体系調査における B ゾーンを利用 する。研究フローを図 -1 に示す。なお調査 対象として、現在計画(一部供用)されて いる中部縦貫自動車道(福井県福井市から 大野市、岐阜県高山市を抜け長野県松本市 にいたる。以下、中縦とする)を取り上げ、

福井県の福井坂井地域、奥越地域を対象に (図-2)分析を行う。 .

2. 意識からみた災害に対する評価

アンケート調査

道路整備による災害時のリダンダンシ一 向上効果に関して、地域の住民がどのよう に意識しているのか調査を行った。この調 査対象として奥越前地域の大野市、勝山市、

和泉村をとりあげ、市役所や村役場職員、

商工会議所職員などに調査票を 2000 年 8 月 24 日に 130票配布し、 2 週間後に 125 票

回収した。図3 をみると道路整備の方向性 図 -1 研究フロー

c>福井坂井地域 奥越地主賓

圃・圃園中部縦貫自動車道

図 -2 対象地域

46 ‑

国道 158号線

(4)

道路整備による福井県奥越前地域 ダンダンシ一向上効果に関す

として、雪に対する強さが圧倒的に多く、災害に対する強さは真ん中ぐらいに位置付けられている。

しかしながら、和泉村の結果(図 -4)では、災害に対する強さが一番高くなっている。これは、和泉村 の道路網の整備の遅れを表しているものと考えられる。このように、道路整備の遅れは地域住民に対

して、災害に対する不安を与えていることがわかる。

災害に対する強さ 雲に対する強さ 沿道地域聞の交流・連機 服部

観光客の増加 医療施設の相互利用 地場産業の振興 沿道自然環境の活用・保全 公共交通の整備 道路の整備 歴史・文化を生かした町並み整備

3市村合計 10 

11 

10 

13 

13 

13 

15  20 

図 -3 道路の果たす役割に対する不満 (3 町村合計) 和泉村

災害に対する強さ 雪に対する強さ 沿道地域聞の交流・連携 観光客の増加 医療施設の相互利用 地場産業の振興 沿道自然環境の活用・保全 公共交通の整備 道路の整備 歴史・文化を生かした町並み整備紛

図 -4 道路の果たす役割に対する不満(和泉村)

3. アクセシビリティの算出の方法 1)活動拠点の設定

25  30 (人)

(人)

主要な日常生活活動拠点として、福井、勝山、大野市役所など、救急医療活動拠点として、国立福 井医科大学附属病院、福井県立済生会病院など、観光活動拠点として、主要観光地である大本山永平 寺、スキージャム勝山などを取り上げる(図 -5、表-1)。

2) 対象ネットワークの設定

配分対象道路ネットワークは、福井県内については高速自動車国道、一般国道、主要地方道、一般 県道、および主要な市町村道・農道からなる道路ネットワークとし、県外はネットワーク上必要と考 えられる高速自動車国道および一般国道を対象とする。道路ネットワークの設定にあたり、平成 11

‑47 ‑

(5)

宇佐美誠史・石川 '淑子 -本多 義明

年の現況道路ネットワーク、この現況道路ネットワークに中部縦貫自動車道の県内全線供用を加えた ケースの計 2 ケースを設定する。積雪時のネットワークについては、冬期通行止め箇所を含んだリン クを除いたものとする。

表 -1 活動拠点

活動の種類 No  活動拠点 日常生活活動 福井市役所

2 勝山市役所

3 大野市役所

4 松岡町役場

永平寺町役場

6 美山町役場

上志比村役場

8 和泉村役場 救急・医療活動 福井県立病院

2 県立済生会病院

3 国立福井医科大病院

4 社会保険勝山病院 観光活動 越前竹人形の里

2 一乗谷朝倉氏遺跡

3 大本山永平寺

4 スキージャム勝山

大野市まちなか観光

6 九頭竜湖

3) 変通途絶箇所の設定

災害時における交通途絶箇所については、

平成 10 年度における異常気象時通行規制 区間、平成 8 年度の防災点検における要対 策斜面、平成 5 年から 11 年に災害による 通行止めの履歴、平成 9 年度におけるセン サス交通量を調査し、交通途絶が発生しや すい、また、途絶が発生した場合、広域的 な移動にかなり影響を及ぼすと考えられる 箇所について設定する(図 -6)。

4) サービス圏域

平成 11 年 7 月 ""'8 月に行われた福井県民を 対象としたアンケート調査 5) によると、日 常生活活動や救急医療活動を行うにあたり、

その拠点までの許容できる所要時間は 8 割 以上の人々が概ね 30 分以内、また、ほぼ 全ての人々が 60 分以内と回答しているこ とから(図 -7) 、活動拠点からのサービス圏 域を 30 分圏、 60 分圏域として分析を行う。

48 一

、一、句、与

,、

"、,;

図 -5

図 -6

〈ご〉齢斜地峨

奥証基地減 聞闘鯛中部毒症貫自動車道

日常生活活動鎚点

国道 158号線

救急 e 医療活動拠点 観光活動拠点

活動拠点

<:::>福井制地域 奥鐙地域 -・・中部縦貫自動車道

)(  切断儀所

交通途絶箇所

国道 158号線

(6)

道路整備による福井県奥越前地域のリダンダンシ一向上効果に関する研究

(覧)100.0 

.-MJ司h,~.。

90.0  80.0  70.0  60.0  50.0  40.0  30.0  20.0  10.0 

。。

~10 分 -20分 -30分 -40 分 -50分 -60分 60分~

一寸骨一日常生活活動 →・-救急医療活動

一.... 日常生活活動(積雪跨) ・+・救急医療活動(積宮崎)

図ー7 各活動における許容移動時間 5) 計算方法

平成元年度福井都市圏総合都市交通体系調査における OD 交通量を (1) で設定した配分対象道路ネ ットワークに配分し、前述の 2 ケースについて配分自動車交通量を推計する。なお、配分対象道路ネ ットワークへの自動車交通量配分にあたっては、容量制限付分割配分法により配分を行う。

分割配分法とは、配分すべき OD 交通量を分劃して数回に分けて最短経路探索法(ダイアクストラ 法)による配分作業を行うことによって、前提交通量の変佑による最短経路の変動をシミュレートす るものである。毎回の最短経路探索においては、各リンクの交通量はそれ以前の段階までに配分され た交通量に固定されるため、図 -8、表 -2 に示す交通量と速度の関係を表した Q-V 曲線を用いて、リ ンク評価値(リンク通過所要時間)が一意的に決定される。

また、分割配分において、その分割比率は 30% 、 30% 、 20% 、 10% 、 10% とし、 5 段階に分けて 順次配分を行う。降積雪時には交通容量はほぼ 10% 程度減少し、走行速度は 10---40%程度低下する ことが既往研究で示されている。そのため、積雪時の交通量配分を行うにあたって、交通容量は 10% 、 走行速度は 30% 低下するものとして設定する。

表-2 Q-V 曲線諸元

V(km/h)  QV番号|道樹町IJ

~片Vn1

/十世

〔金Q/1日) l 

lkvmJzh i 

~台Q

/

Z日)

fhV3 A) 

11-般i 60  38,αJO 30  57.5∞ 10  2 一般i 1 2.瓜淘 30  20 日JO 10  1 2.αm 25  1&瓜JO 10  4 一世i 40  1 2.αJO 20  18 以lO 10  5 一世i 30  1 1.α珂 15  1 6.5∞ 10 

I  ~

8 一般J‑I!!   4500   30 はお10 飢JO10 脱却 222505    43.αlO 16.1 5,以加脱却 111000   

9 一般j 60  24.αm 30  35 脱却 10  10  -般】 40  24.αJO 20  35.α犯 10  11  一般j 50  9 ぽ淘 25  1 3.瓜lO 10  12 一般 40  9.収JO 20  1 3.脱却 10  13 一般 30  9.似JO 15  13αm 10  14 |型車外i[路 50  10αm 1 ∞ αm

15 i 減外i 30  10 似却 30  1 ∞ α犯 30  16 一般i 19.5∞ 25  30.5∞ 10  17 lCランプ 20  10 瓜淘 20  100αlO 20 

18 |不通 10αm H岡町却

01  QO  Vl:自由速度 00 基準交通量 V2il適速度 02:交通容量 V3 渋滞速度

02  O(台/日) 19 |域内高速 1∞ 62.αJO ω 82. 5∞ 10  20 均車外高速 1∞ 1 0.αm 100  1 ∞ α却 1 ∞ 21 lCランプ 40  10.以刃 40  1 ∞ αlO 40  22 有料道路 30  11 可αJO 15  16.5∞ 10 

QV番号 14、 15、 17、 18.20は、7ミーリンク

図 -8 Q-V 曲線

49 ‑

(7)

宇佐美誠史・石川 淑子・本多

4. 活動拠点へのアクセシビリティ

活動拠点へのアクセシビリティを無雪時と積雪時に災害が起こった場合ついて、サービス圏域、そ れに含まれるカバー人口をみることにより分析を行う。

1 )平常時におけるアクセシビリティ

災害時にサービス圏域がどのように変化するのをみる前に、平常時の大野市役所を拠点、とした場合 の中部縦貫自動車道の供用によるサービス圏域の変化を:30 分、 60 分圏域それぞれについてみる。図 9 をみると、東西方向に大野市役所からアクセスできる範囲が増加していることがわかる。また、北 陸自動車道を利用することで、 60 分以内でアクセスできる地域がほぼ嶺北全体に及ぶことがわかる。

カパ一人口 整備前 整備後 伸び率

77 千人 164 千人 2.13 倍

30 分圏

にコ 整備前 -整備後

園田園中縦 。 活動拠点

カパ一人口

整備前 508 千人 整備後 596 千人 伸び率 1.1 7 倍

60 分圏

図 -9 中縦整備前後における大野市役所からの 30 , 60 分圏域の変化(平常時)

2 )災害時におけるアクセシビリティ

ここでは、前章で抽出した各活動の拠点から、日常生活活動拠点として大野市役所、救急医療活動 拠点として福井県立病院、観光活動拠点としてスキージャム勝山を取り上げる。それぞれの活動拠点 のサービス圏域(30,60 分圏)内のカパ一人口を表 -3 に、大野市役所を活動拠点として場合のサービス 圏域の範囲を図-10 に示す。

表-:3をみると、 福井勝山間切断の場合、どの活動拠点に対してもサービス圏域内のカバ一人口がか なり増加していることがわかる。また、それは図 -10 をみればわかるように、中縦供用により東西方 向のサービス圏域の大幅な広がりによるものである。福井県奥越地域に住んでいる人々は東西方向で

の移動が多く、そのため、中縦は災害時においても、人々の生活活動を支えるための重要な役割を担 うことが期待される。

50 一

(8)

道路整備に福井県奥越前地域のリダンダンシ一向上効る研究

測.-鍵設ïiiï 露翠塁 建設後

園田圏 中部縦貫自動車道

大野市役所

図ー 10 サービス圏域の変化

;大野市役所 (ケース(%;・ 30分園』 大野市役所[ケース③・ 6ωf 瞳}

サービス圏域内のカパ一人口の変化

スキージャム

噺断防着7t

CDf百井大野説断 1 381 

⑫耕勝山間医断 I 38 

③大里勝山聞広断 I 38  持喋間呪断 I 34 

県、 己才

戸hdphU4BA4EA必必州知品切羽一

tiη11iiwhJV門,aFhUFupnurupnuρnυ

2 )積雪災害時におけるアクセシビリティ

ここでは、 前節において一番影響の多くみられた大野市役所を拠点として、 積雪のある状態で、福 井勝山聞が切断された場合について示す。

中縦供用によるサービス圏域の変化をみると、 福井勝山聞の一般道が切断されたとしても大野市役

5

(9)

宇佐美誠史・石川 淑子-本多 義明

所からの 60 分圏域はかなりの範囲で確保されることがわかる(図 -11) 。また、カバ一人口の変化をみ ると、:30,60 分圏域のどちらのカパ一人口も約 3 倍の伸びを示しており、無積雪時ほどではないもの の、かなり拠点へのアクセシビリティが向上していることがわかる(表 -4) 。

大野市役所 大野市役所

ケース②・ 30 分圏 ケース②・ 60 分圏

図 -12 積雪時のサービス圏域の変化

表-4 積雪時のサービス圏域内の力パ一人口の変化(単位:千人)

4. おわりに

本研究では、高速道路建設による災害時のアクセシビリティ向上効果について、現在計画されている 中縦を取り上げ、活動種類ごとに拠点のサービス圏域カパ一人口を分析することにより検討を行った。

その結果、福井県奥越地域の東西方向の移動に対して、アクセシビリティが大きく向上していること から、中縦がかなり寄与していることがわかった。

今後の課題としては、各活動別にサービス圏域を設定することや、ここで利用した指標以外に利用で きる指標、例えば鉄道、パスなど公共交通をいかに取り込むかが挙げられる。

なお、本研究を進める過程で、国土交通省福井工事事務所及び福井県土木部の方々に適切な助言を いただいた。ここに感謝の意を表する。

【参考文献】

1) 角知憲・木村邦久・島崎敏一 (1986) ・松本嘉司:空港アクセス交通の一般化出発時刻と交通行動 の経験依存性3土木学会論文集 IV,pp.115...124

2) 石川千恵・和田かおる・山本幸司 (1993) :名古屋空港へのアクセス手段改善効果および旅客ターミ ナル施設移動の利便性評価土木学会年次学術講演会講演概要集第 4 部,pp.546...547

3) 南正昭・高野伸栄・加賀屋誠一 ・佐藤馨 (1997) :拠点的医療施設へのアクセスを 2 系統で保証する 道路ネットワーク構造土木計画学研究・論文集No.14,pp679...685

4) 朝倉康夫 (1998) :高速自動車道整備による支流・連携効果の評価に関する研究,土木計画学研究・

講演集.No.21(2),pp407...4 1O

5) 福井県総務部広報課県民相談室(1999) :平成 11 年度県政アンケート結果報告書 移動所要時間 男 女共同参画社会

52 ‑

参照

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