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住 友 章 芳

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Academic year: 2021

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児童の「書く」支援を通して言語活動の充実をめざす授業の実践 ー児童の主体的な学びを促すワークシートの作成とその活用

高度学校教育実践専攻

授業実践・カリキュラム開発コース 住 友 章 芳

I 課 題 分 析 1.課題設定の理由

小学校生活において,児童は作文指導をはじ めとするさまざまな「書く j場面に遭遇する。

国語以外でも社会や理科における観察メモや 記録,図工や音楽の鑑賞記述,日々の日記を含 めると様々な場合で「書くJことを求められて いる。その割には,なんのために,なにを書い たらいいのか,どのように書いたらいいのかな どの目的意識や内容についての指導は不十分 で,具体性に欠けることが多い。

従来の書くことの指導,いわゆる作文指導の 多くは,表現方法の習得と習熟をねらいとして いる。どのような「書く」力を身につけさせる かということであり,学習指導要領にある書く ことの力をつけるために,どの教員も苦心して いるo しかし,目の前の児童を見ていると,問 題はもっと前の段階にあるという思いがあった。

「書けないj ことには各自異なる理由がある。

「何を書いたらいいかわからないJ

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どのように 書いたらいいかわからなしリといったような書 き方の問題で、困っている児童もいれば,書く目 的そのものが見いだせない児童もいる。そうい った児童に対する支援の方法はそれぞれ異なる はずである。そこに着目した具体的で、かっ的確 な支援があれば,児童が本来もつ学習への好奇 心や意欲が活動に結ひみつくことができると考え た。一人一人の「なにを書いたらいいのか」と

実 習 責 任 教 員 村 川

雅 弘

実 習 指 導 教 員 前 田 洋

いうつまずきに,応えるだけの支援の必要があ る。書くことの支援ではなく,

r

書く」支援とし たのにはそのような経緯からである。

学習で学び得た知識や答え,そう考えた思考 の過程を表現する方法の中で,児童にとって最 も困難なのが「書く」ことである。咳きや単語 でも会話が成立する話しことばに比べ,形とし て残る「書くj ことは,手間暇がかかる。その ために敬遠されがちである。いざ書こうとして もどのように書いたらいいのか,書きたい気持 ちはあるのにうまく書くことができないといっ た煩わしさ,もどかしさを解消する方法がある とすれば,本来児童のもつ好奇心や学習に対す る意欲を学習に生かすことができるo

こうした問題意識に立って置籍校の実態を分 析し,本研究の方向性を明らかにしていきたい。

2.学校の課題

置籍校は徳島県西部吉野川中流域北岸に位置 する児童数300名程度の中規模校である。 6学 年2クラスずつ, 2支援学級を含む 14学級から なる。 1学級は 30名前後である。児童数・学級 数ともに年々減少傾向がみられ,それに伴い教 職員数も減少傾向にある。教職大学院にもいち 早く理解を示し,既に3名の修了生が生まれて いる。これまでも生徒指導やいじめなどの諸問 題が生まれた時には,教員間や保護者との連携 協力を核にしたかかわりによって一定の成果を 上げつつある。

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各院生は,課題を見いだすために校内におい てアセスメントやワークショップを行い,研究 の中心となって課題解決に取り組んでいた。そ の結果,学校の抱える課題が明らかになり,そ の解決に向けた様々な取り組みを行ってきた。

それぞれに,学校改善・向上へ成果を見いだす ことができている。加えて,教員の意識の面に おいても,ユニバーサルデ、ザインを取り入れた ことで,児童自身が学校の環境向上に努めよう とする意識に目が向き始めているように思う。

これまでの研究に関する教員聞の連携や課題解 決の方法の共有など教職大学院から学ぶ方法論 や実践的知識は,学校における意識改善に多い に役立っている。

本研究においては,これまでの教職大学院修 了生3人が重ねてきた研究やアセスメントの成 果を承ける形で進めていくこととした。「書く」

ことへの対応は基礎基本の定着と並んで本校の 課題の一つであると考えられている。

その結果,学力向上への取り組みこそが,次 なる課題として明らかになろうとしている。先 行実践による積み重ねを大事にしたこれまでの 当校の改革の流れを踏まえることによってより いっそう学校の課題に継続的・発展的に取り組 むことができると考えた。

大村はま (1991)は

r

書き表すことの練習は,

書くことをもたせてから,書くことはあるとい う状態で展開しなければ,成立しない」と述べ ている。大村のいう「練習Jは,単に練習のた めの練習ではなく,その書くことが学習生活の なかで価値も意義もあるものである。そのため に,目的に応じた「学習の手引き」を提案し,

そこで培った「書くJ力が,授業における児童 の主体的な学びへの意欲を喚起するような「書 くJための支援を研究の主体におく。

本研究にあたって「児童が学校生活における 授業をはじめとする『書く』ことを求められる 場面において,適切な支援を得ることにより,

自分の考えに自信をもって表現することができ る」という仮説を立てた。

ここでいう「適切な支援」が,筆者の考える

「学習の手引きJである。手引きとは,ワーク シートだけを指すのではなく,発問や声かけ,

場の設定など必要に応じてさまざまな形を含ん でいる。ただし r児童の書く『支援 ~J である ことや児童自らが学習に対して意欲的に向かい 合うことができる支援を考えた場合,ワークシ ートによる思考の深まりや拡がりをねらいとし たものを考えているo

具体的な実践に入るにあたり,先行研究とし て田中宏幸の「インベンション指導J,大村はま の「学習の手引きJ,世羅博昭の「目標の二重構 造化Jから学ぶことによって,より確かな理論 を踏まえた実践研究として取り組むこととした。

筆者が,担任と連携を密にした上で「学習の 手引きJを作成することによって生まれる利点 が二つある。一つは児童の個別の実態に応じた 支援ができること,もう一つが教師問の指導資 料の共有化をはかることができることであるo

児童の実態に合わせて作成される「学習の手 引き」は,授業ごとに担任が作成するため,学 級の実態や教員の授業観,経験値のちがいなど により手引きをそのまま共有するのは難しい。

本研究において「学習の手引き」をうまく活 用することは,教員の実践や経験知の差により 生まれてくる授業力の差を解消するためだけで なく,教員聞の連携や授業の質の向上に役立つ

と考える。

本研究は,

r

書くJ意欲やカを育むための支援 をねらったさまざまな実践を通して,児童が学

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習に対して主体的な姿を実態から明らかにする ことを本研究のゴールに据える。

3 .課題の解決一実習期の取り組みー (1)各学級への支援

1年生保護者宛の「音読との上手なかかわり かたJ,2年生用の視写用紙, 5年生用の1分間 スピーチなど,担任が必要と思われるさまざま なワークシート等を提案した。

(2) 5年生への作文指導

5年生全体に対しての書くことの資質向上を ねらって,作文指導に携った。同世代の児童の 作文を読むことや,自分の作文を『作文読本』

に投稿し,他の学校の児童にも読んでもらうこ とを児童の目標に掲げて,月 1回作文を書くこ とをつたえた。書く内容を充実させるために,

月ごとの学校行事や学年毎のイベントを題材に 用いることで,児童に「書く内容」を設定した。

提出された作文にはコメントを朱書きし,次へ の意欲が高まるように手引きした。いずれの朱 書きも,その児童のその作文だけに向けられた コメントであることが今回の研究の特徴の一つ である。同じような内容のコメントが何人にも 与えられていると児童の心に響かないように思 う。「先生からたくさんの(手間がかかったと思 われる),自分の文章だけのコメントが返ってき たJという意識こそが,その児童に次の作文へ 向かう意欲の醸成に繋がる。

一人一人が作文に取り組むための支援として,

「学習の手引き」の存在は本研究の基盤となる。

作文指導のための手引きをはじめ,授業におい ても 1時間ごとに作成し,その成果について検 証した。作文指導においては書き出しゃ語集を 例示し,児童が思ったことを書きやすいように 導く役割を果たした。

作文用紙の裏面にはその時の作文課題に対す

る書き出し例や語集・表現の手引きを加え,児 童が作文を書く上で困らないような配慮を施し た。特に,

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何を書いたらいし、かわからないJ

r

う表現したらいいかわからない」といった書く ことに対して苦手意識に対する解決策の提案と して実施に至った。

手引きに際して,

r

次のような書き出しを使っ てみてはどうでしょうJや「次のような表現も 使えますね」という具体的な例を示す言い方を 用いた。押しつけにならないように自分で選択 することができるように配慮することで,作文 を書く主体が児童自身にあることへの自覚を促 す効果をねらった。また,書くこと自体に困っ ている児童には,筆者がそばにいって話をしな がら「これなんかいいんじゃない」と会話の中 から書く内容を取り上げて書くことができるよ うにした。書くことが苦手な児童にとっては,

書き出しを例示されることは,見通しをもって 書くことの契機となる。

手引きの例文は,書く内容に合わせてその都 度作成した。例文は,使うことが予想される児 童を想定しながら書き加えた。そのまま使用す る児童もいれば,自分なりにうまく表現を変え て活用する児童も現れた。この書き出しの手引 きは,児童にとって自分なりに語葉や表現を選 択し,書くためのガイドとして上手に活用する ことができていた。例示した語葉や書き方を,

継続的に繰り返し使用することで,その書き方 そのものを自分の文章表現として身につけるこ

とができるようにまで成長した。

全教科の指導に携る学級担任にとって,作文 だけに費やす時間はそう多くない。この実践そ のものが教員の授業に付加価値が生まれるよう な提案になるよう配慮して臨んだ。本研究では,

①抽出児童の作文から見る変化,②月ごとの支

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援と児童全体の変化に関するコメントや手引き の考察を加えている。

「学習の手引き」は授業においても活用でき る。 5年生両クラスで単元「物語の構成に気を つけて読もう一世界で一番やかましい音ー」を 担当し,全時間のワークシートと「学習の手引 きJを作成した。単元

r w

山猫軒』へょうこそ」

ではワークシートと「学習の手引きJを提案し た。この単元では,筆者が授業を行うのではな く,筆者が作成したワークシートを各学級担任 が使って授業を行った。作成者の意図を理解し ながらも担任が使いやすいように,担任用の「手 引き」も提案し十分な成果を得た。

4.実 践 全 体 の 総 括 成 果 と 課 題 (1)実践の成果ー児童の実態からー

本研究で紹介したさまざまな支援により,対 象とする5年生全児童に書く意欲と力を育むこ とができた。書ける自信は,児童の学習意欲を 促し,新しい学びへと児童を誘う要因となり得 た。全員がコンクーノレで入賞するほど作文カが 飛躍的に向上したというわけではない。一人一 人の書く意欲を促し,自分の思いや考えを文字 で表現できるように支援した。各児童の精一杯 の力で「書く」ことへの取り組みを生み出すこ とができたという意味でこの実践そのものの成 果を見いだすことができる。

「学習の手引きJによる書き方の支援は,児 童の書く意欲を育むことを通して授業における 児童の主体的な学習意欲を高めることの一助と なり得た。また「学習の手引きj によって,児 童は自身の書こうとすることを書き表すことが 容易になった。一人一人が優劣にとらわれるこ となく,自分のカを精一杯に発揮し,その上で 徐々にカを付けていくための「書くということJ

の指導ができた。児童一人一人にとって,これ

からの「書く」活動への自信となり,作文をは じめとする書くことが得意になるきっかけにな ればと考えているo

(2)今後の課題

「書くJ支援としてできること・考えられる ことはやり尽くした。十分の成果を得ることも できたように思われる。逆に言えばそこまでし ないと成果はでないのかという物理的・汎用的 な問題は生じる。

「学習の手引き」の有用性を証明するには,

自分自身の授業カ・実践力の向上だけでなく,

「学習の手引き」をどのように作成すればいい のか,作文に対するコメントをどう書けばいい のかなど,教員のための「学習の手引き」作成 の手引きについても研究が必要である。いつま でも学ぶ姿勢をもって食欲に実践に取り組んで いくことで「学習の手引きJの質の向上を図っ ていきたい。

E  省 察

入学時の自分と,教職大学院で過ごした 2年 間,修了時の自分と三つに分けて省察した。自 分だけの実践にとどまらず,他の教員と共有し ながら研究を進めていくことができる素地を構 築できたことも大きい。人から学ぶ,人に繋ぐ ことの大切さや難しさも,教職大学院で学んだ。

2年間の足跡として,提出したレポート課題を もとに学びひたった日々を振り返った。自分の 成長を総括し,学び続ける大切さをあらためて 実感した。

I

引用・参考文献

1

・大村はま(1991)

W

大村はま国語教室5一書く ことの計画と指導の方法』筑摩書房

‑世羅博昭(2004)

r

第三章 国語科授業構築の 原理と方法」倉津栄吉・野地潤家監修『朝倉 国 語 教 育 講 座5授 業 と 学 力 評 価 』 朝 倉 書 庖

参照

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