様式8の2の1 別紙1
論文の内容の要旨
氏 名 中崎良太
(2,000字程度とし,1行43文字で記入)
近年の騒音制御技術の発展に伴い, 自動車におけるロードノイズ,エンジン騒音,
空力騒音は大きく低減され,自動車車室内の静粛性は飛躍的に向上している.その結 果,自動車空調音が車室内騒音の主要因の一つとして注目されてきており,空調騒音 低減に対する要求が高まってきている.また,自動車は,現在,ガソリン車からハイ ブリッド車,電気自動車,及び燃料電池自動車に移行しつつあり,これらの車両の発 達は著しい.このような次世代車両はエンジンが不要時は停止する,またはエンジン 音の発生そのものがないため,従来のガソリン車両よりも車室内暗騒音が大きく低減 していることは周知の事実である.これらの車両の普及により,今後,ますます自動 車空調音の低減に対する要求が高まってくることが予想される. 自動車空調音は主にA 特性騒音レベルで評価される場合が多く,これを指標とした騒音の低減は従来から様 々な対策がなされている.しかし,車室内という限られた空間で空調性能を満足させ ながら,かつ騒音低減を行うことは困難であり,限界が ある.また,A特性騒音レベル と聴感評価は必ずしも一致しておらず,騒音レベルが大きくてもユーザーが不快に感 じない場合もある.そこで,騒音レベルを低減するだけではなく,空調音をより快適 な音にするといった音質の改善が必要となっている.
本研究では,自動車空調音の音質に関する評価手法を確立することを目的とし, 自 動車空調音の主観評価実験を行い,空調音の印象とその物理量及び心理音響評価量の 関係について調査している.これによって得られた結果は,人にとって心地よい自動 車空調音の設計の礎となると考えられる.
本論文は全6章から構成されており,各章の概要は以下の通りである.
第1章では本研究の背景と目的を述べている.
第2章では,まず,自動車空調音の表現に相応しい評価語の選定実験を行った結果に ついて述べている.「おとなしい」,「爽快な」,「厚みのある」,「広がりのある」,「濁っ た」,「激しい」,及び「かさかさした」の7語が空調音を表現するのに相応しい評価語 として選定された.次に,この7語の評価語を用いた主観評価実験を実施し,空調音は
「粗野因子」,「空間因子」,及び「爽快感因子」の3因子によって表現できることを明 らかにした.また,抽出された因子と騒音レベルの関係を調査 し,「粗野因子」は騒音 レベルと強い相関を持ち,「空間因子」及び「爽快感因子」は騒音レベルと相関が弱い,
もしくはほとんどないことを明らかにした.これは,「空間因子」及び「爽快感因子」
が騒音レベルとは異なる観点で空調音の音質評価の要素となる可能性があることを示 している.
第3章では騒音レベルとは異なる観点での音質の評価指標として,心理音響評価量で あるラウドネス及びシャープネスを用いた自動車空調音の主観評価実験ついて述べて いる.そして,心理音響評価量を用いた自動車空調音評価の有効性を示した.
第4章では,第3章で自動車空調音に対する評価の有効性が確認された,ラウドネス 及びシャープネスを用いた主観評価について述べている.自動車用空調の主たる要求 性能は車室内の温度を快適な状態にすることであり,この冷暖房性能と空調音の関係 を調査することは,自動車空調音として望ましい音質を創り出す上で必要不可欠であ るといえるため,ここでは第2章で選定された評価語7語に,「暖かみのある」及び「涼 しげな」という温感を示す評価語2語を加えた主観評価を実施した.そして,第2章で 騒音レベルとの相関が弱かった「空間因子」及び「爽快感因子」はシャープネスとの 相関が高く,また,追加した温感評価語2語についても共にシャープネスとの相関が高 いことを示した.これらの結果は,空調音の音質改善によって冷暖房感を付加できる 可能性があることを示唆している.
第5章では幅広い年代における自動車空調音の印象の相違について述べている.まず,
主観評価実験に参加する20代~50代の被験者全員の聴力検査を実施し,年代別による 聴力特性を把握した.年代別に自動車空調音の主観評価を実施した結果,高周波数側 での聴力の低下が見られた高年代では空調音のシャープネスを評価し難くなっている のに対し,低年代はシャープネスによる温感評価の感度が高いことを示した.また,
因子分析により,低年代ほどシャープネスを重視して空調音を評価しているのに対し,
高年代になるとラウドネスを重視する割合が増加することを示した.
第6章では「結論」として本研究で行った実験内容や結果,分析,考察について統括 し,今後の課題について述べている.