修 士 論 文 の 和 文 要 旨
大学院 電気通信学研究科 博士前期課程 量子・物質工学専攻
氏 名
中野 諭人
学籍番号 0333029
論 文 題 目
低次元電子系における多体論的アプローチによる 超伝導転移温度の評価
本研究は2次 元電子系を扱った2つの研究から構成 される。1つは実際の擬2次 元超伝導物 質を 扱った研究であり、もう1つは次元性そのものを対象にした基礎論的 な研究である。
1. 2バンドFLEXによるにおける超 伝導の圧力 相図
有機物質β’-(BEDT-TTF)2ICl2(以下β’-ET)は8GPa以上の圧力 印加により、圧力‑温度相図 上で反強磁 性絶縁体(AFI)相に隣接 してET層内で伝導する超伝 導(SC)相を持ち、AF的スピン 揺らぎに起因 する超伝導であると考えられている。理論 的には木野、紺谷らにより単位胞に分 子が 2個あるこの物質がダイマー化している事から、その極限である1バンドHubbard模型でFLEX近似 を使用しTcを調べ、実験よりも高圧側で定性的によく似た圧力相 図が得られた。しかし高圧側で はダイマー化は強くない。そこで本研究では2バンドHubbard模型においてFLEX近 似を展開しTcを 求めた(図1)。その結果1バンド近似とほぼ同じ圧力で実験よりやや低温の領域にdxy波的ギャップ を持つSC相が得られた。ギャップの対称性そのものは変化しないが圧力によるギャップ関数の連続 的変化が見られた。
2.2次 元引力Hubbard模 型におけるKosterliz-Thouless(KT)型超 伝導転移 温度の量子モ ンテカルロ法における評価
1.の研 究 のように擬 2次 元 系 を理 論 的 に扱 う際 、多 くの場 合 2次 元 模 型 を使 用 するが本 来 純 2 次元系では長距離秩序 は存在せずKT転移による準長距離秩 序のみ存在する。多くの理 論的研 究で有 限の転 移温度が得られる原 因は平 均場近 似の使用にある。2次元 模型 上で平 均場 理論 を展 開した結 果を擬2次 元 系の結 果とみなす事 の妥 当 性を議論するには、まず純 2次元 系 での厳 密 な 計 算 結 果 が 必 要 に な る 。 そ こ で 引 力Hubbard模 型 に お い て 補 助 場 量 子 モ ン テ カ ル ロ 法 (AFQMC)を使 用 し、超 伝 導 相 関 関 数 を求 めKT転 移 温 度T0を解 析 した。過 去 にも同 様 の研 究 が行 われているが、いずれもサイズが小 さく(82site程 度)その影 響 が考 えられるため、本 研 究 では 122siteまで増 やした。T0の解 析 には有 限 サイズスケーリング(FSS)と熱 力 学 的 極 限 への外 挿 によ る方 法 を採 用 し解 析 手 法 の比 較 も行 った。その結 果 、特 に三 角 格 子 において過 去 の研 究 とは異 なりhalf filling以 降 でT0が一 定 になり、この結 果 がエネルギースケールを別 にすれば平 均 場 理 論 (BCS弱 結合 理論)の結果 によく似 ている事がわかった。この類 似性 の起源 についてはまだよくわかっ ていない。またFSSは有限サイズ効果を受けやすく、外挿法はその影響を受けにくい事 もわかった。
図 1. 2バ ン ド FLEXに よ るβ’-ETのTcの 圧 力 依 存 図 2. AFQMCに よ る 三 角 格 子 に お け るT0