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同族会社における課税問題の再検討

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Academic year: 2021

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(1)

本論文において研究するのは、同族会社の租税 回避についてである。同族会社とは、上位3人の 株主によって、その法人の発行済株式等の50%超 を保有されている法人をいう。つまり、実質的に 特定の関係者によって支配されている法人である。

そのため同族会社は、株式等が多数の株主に分散 している一般的な会社のように、株主や経営者と の利害対立により、恣意的な経営が抑制される危 険性が極めて少なく、裁量的な益金処理を行いや すい。すなわち同族会社は、経営者個の有利なよ うに経営を行うことが可能であり、この同族会社 を利用して租税の負担を免れようとするケースも 多いのである。

同族会社が租税負担を回避しようとする方法は 多岐にわたり、いわゆる脱税は論外としても、違 法とならない節税をしようとすれば、その方法は 枚挙に暇がない。なかでも問題なのが、他の納税 者との公平を害してまで税負担を回避しようとす る不当な租税回避である。本論文でいう租税回避 とは、裁量的な経営が容易にできるために、通常

用いられないような異常な取引を行うことで租税 負担を減少させることである。

租税原則を思い返すまでもなく、租税の上で最 も重要なのは公平性の確保である。したがってこ の不当な租税回避は、何としても阻止せねばなら ない。同族会社ということで、不当な租税回避を しうる可能性が増えているとすれば、その状態を 放置することはできないのである。かくして法律 の上で用意されているのが、次の2つの規定であ る。

すなわち、1つは同族会社において過大になり がちな留保金に対して特別な課税を行う「留保金 課税制度」(法人税法第67条)であり、いま1つは 同族会社の行った取引が異常と認められる際にそ の行為を否認し、正常な取引に改めて課税を行う

「同族会社の否認規定」(法人税法第132条他)であ る。

この2規定が立法時に想定されていたように効 果を上げているのであれば問題はないが、本当に そうなのだろうか。

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■ 修士論文要旨

同族会社における課税問題の再検討

―裁量的な租税回避への対応を中心に―

Reexamination of Problems about Taxation for The Family Partnership

-Emphasizing on the Measures for Discretionary Tax Avoidance-

■キーワード

「同族会社」「租税回避」「留保金課税」「行為計算否認規定」

神奈川大学大学院 経営学研究科 国際経営専攻 博士前期課程

渡 部 えりか

WATANABE, Erika

神奈川大学大学院経営学研究科『研究年報』第17号 2013年3月

(2)

まず「留保金課税」については、次のような問 題点が指摘されている。留保金課税は、裁量的な 経営のまかり通る同族会社において生じがちな

「過大留保」を抑止するために設けられた制度で あるが、近年、中小企業に対する不適用措置が設 けられたことによって、同族会社のほとんどが適 用対象外となり、この規定が形骸化したという問 題である。

他方の「行為否認規定」については、否認すべ き行為を具体的に示さない抽象的な条文であるこ とから、会社経営者からみると何が否認される行 為なのか予見することができず、解釈に苦慮する ケースが非常に多い。解釈するのは課税庁である ため、むしろ課税庁に裁量の余地が大きく残され、

行為否認される同族企業からみて不当な判断と思 われる場合も少なくないという問題である。この ように問題が2つに分かれていることから、結論 についても2つに分かれることが予想されたため、

第1章において同族会社の概要を述べた上、第2 章および第3章では留保金課税制度、第4章およ び第5章では行為計算の否認規定について区別し それぞれに検討を行うことにした。

第2章においては留保金課税の不適用措置によ る形骸化の問題について、不適用措置を撤廃し、

すべての同族会社を平等に扱うべきであるという 結論となった。具体的には、制度の立法趣旨及び 沿革を考察したうえ、第3章で、現行制度の構造 について確認した結果、課税の公平性を図るとい う趣旨が明確であったことから、資本金基準の不 適用措置というものはむしろ公平性を阻害してい ると考えられることから、このような結論が導き 出されたのである。

第4章では、行為計算の否認規定について検討 を行った。この規定に関する問題は、効率性と明 瞭性のせめぎ合いであり、現在ではやや効率性が 重視されているようである。しかし、課税制度と いうものは明瞭性についても不可欠であることか ら、この両方を備えた制度として「個別否認規定」

に注目したのである。第5章では、実際に否認規 定が適用された判例をもとに個別規定の適用を検 討した結果、個別否認規定を増やせば行為否認規 定の適用を待たずして、同族会社の租税回避を否 認できるという結論に至ったのである。

82 神奈川大学大学院経営学研究科『研究年報』第17号 2013年3月

参照

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