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地域特性に応じた介護保険事業の効率性についての 実証的研究

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地域特性に応じた介護保険事業の効率性についての 実証的研究

著者 金 吾燮

著者別名 KIM Ohseop

その他のタイトル Empirical Study on the Efficiency of Care Insurance Business Based on the Local Characteristics

ページ 1‑210

発行年 2018‑03‑24

学位授与番号 32675甲第436号 学位授与年月日 2018‑03‑24

学位名 博士(人間福祉)

学位授与機関 法政大学 (Hosei University)

URL http://doi.org/10.15002/00014643

(2)

2017 年度

指導教員 宮城 孝 教授

地域特性に応じた介護保険事業の効率性についての実証的研究

人間社会研究科 人間福祉専攻博士課程

金 吾 燮

(3)

目 次

序 章 研究の概要

第1節 研究の背景と目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 第2節 研究方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 第3節 論文の構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5

第Ⅰ部 介護保険制度の変遷と地域特性に応じた介護保険事業の現状と課題

第1章 介護保険制度の現状と介護保険制度の変遷

第1節 介護保険事業の運営状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 第2節 介護保険制度の変遷・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12

第2章 介護保険者の地域特性と課題

第1節 介護保険者の分類と地域特性・・・・・・・・・・・・・・・・・・25 第2節 介護保険者の課題分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36

第Ⅱ部 地域特性に応じた介護保険事業の効率性についての分析

第3章 DEA(Data Envelopment Analysis)による効率性の概要

第1節 効率性の概念と測定方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44 第2節 DEA による効率性の測定方法・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45

第4章 DEA による各クラスターにおける市町村介護保険者の効率性の測定

第1節 介護保険事業における DEA の適用 ・・・・・・・・・・・・・・・ 51 第2節 各クラスターの介護保険者の効率性分析・・・・・・・・・・・・・53

第5章 市町村介護保険者の効率性の改善策

第1節 各クラスターの効率的な介護保険者の介護保険事業の傾向・・・・・70 第2節 各クラスターにおける非効率的な介護保険者の改善策・・・・・・ 109

(4)

第Ⅲ部 結論

第6章 介護保険事業の効率的な経営についての考察

第1節 介護保険制度の課題と地域差 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 127 第2節 各クラスターの効率性についての考察・・・・・・・・・・・・・・131 第3節 介護保険事業の経営効率性における改善策の普及の在り方と可能性・137

終 章 本研究の限界と今後の課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 139

参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・142

資料編 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・147

(5)

序章 研究の概要

第1節 研究の背景と目的

1.研究背景

第1号被保険者の数は、介護保険制度の開始時の約 2,242 万人から増加し続け、2014 年度に 1.5 倍の 約 3,302 万人になった。第1号被保険者のうち、75 歳未満の前期高齢者の数は 1.3 倍、75 歳以上の後期 高齢者の数は 1.7 倍に増加した。また、国立社会保障・人口問題研究所の 2017 年度の推計によると、

第1号被保険者の数は 2042 年度にピークになると予想されており、今後も第1号被保険者数の増加が考 えられる。

第1号被保険者のうち介護が必要とされる要支援・要介護者の割合(以下、認定率)は、2000 年度の 10.1%から、2015 年度には 18.4%となった。これは、第1号被保険者数の増加傾向とともに認定率も上 昇していることで、第1号被保険者数の増加率より要介護者数の増加率の方が高いことを意味し、急速 に要介護者が増えていることがわかる。要支援・要介護者(以下、認定者)の数は、2000 年の約 218 万 人から、2015 年度には約 608 万人の、2.8 倍まで膨れ上がり、第1号被保険者数の増加率を上回ってい る。また、認定者の増加率の内容は、軽度(要支援1、要支援2、要介護1)が 3.4 倍、中度(要介護 2、要介護3)が 2.6 倍、重度(要介護4、要介護5)が 2.1 倍であった。軽度認定者の増加率が最も 高いが、今後、認定者の高齢化により中度・重度の認定者数の増加率が高くなることが推察される。

認定者が増えるとともに、介護保険給付額も増加し続けている。厚生労働省(2015)の推計によると、

介護保険給付額が 2000 年度の約 3.6 兆円から 2014 年度には約 10 兆円に至り、2.7 倍増加した。介護保 険給付額は、要介護者の増加や要介護度の重度化に伴い増え続けることが予想され、今後の介護保険制 度の持続可能性において大きな課題と考えられる。介護給付額の増加とともに、第1保険料も、第1期 の 2,911 円から第5期の 5,514 円へ 1.9 倍になり、厚生労働省の推計では 2025 年に 8,165 円を予測して いる。保険料の上昇は、保険料の未納に繋がっており、2000 年度の普通徴収未収額は約 25 億円だった のが、2013 年度には約 274 億円に増え、未収額が 10 倍以上増加したことを厚生労働省は報告した。こ のように、保険料の未納額が多くなっていることは、被保険者の負担が重くなっていることの表れであ り、介護保険給付額の増加は、制度の財政的な課題だけでなく、被保険者においても問題となっている。

一方、第1号被保険者の保険料の負担額が1.9 倍の増加に対し、認定者一人当たりの介護サービス利 用単位数は、2000 年度の 120,462 単位から 2014 年度の 145,552 単位に 1.2 倍増加し、介護サービス利 用の増加より保険料の負担額の方が増えていることがわかる。

認定者の増加に伴い、介護サービスの需要も増えることが見込まれ、介護サービスの提供力が今後の 介護保険事業における大きな課題になることは避けられない。介護サービスは対人サービスであり、増 える需要に対応するためには、人手の確保が必須である。しかし、介護現場において、介護職員の人手 確保は厳しい状況にある。介護労働安定センターの介護労働実態調査(2009〜2013 年)によると、2013 年度に訪問介護員の人手不足を感じる介護事業者は 42.0%、介護職員(訪問介護員以外の職員)の人手 不足を感じる事業者が 22.7%であり、2009 年度から人手不足の増加の傾向がみられる。また、介護労働 者の年齢構造も、人手不足を加重する恐れがある。訪問介護員の 27.5%が 50 代、31.6%が 60 歳以上で占 めており、高齢職員の退職はさらなる介護の人材不足を招き、介護サービスの供給に空白が生じる可能 性がある。

以上の状況から、介護保険制度には、財政的な課題と増加する介護サービスの需要に対応することが

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求められる。しかし、増加する介護サービスの需要を満たすと、介護総費用は増え続け、保険料の負担 は重くなる。また、介護保険制度は社会保険方式であるため、介護サービスの需要の増加に対し、保険 料の負担を軽減すると、制度が財政的に維持できない。つまり、介護サービス量の増加は保険料の上昇 を伴うものであり、保険料の軽減と両立させることは難しいことである。したがって、これからの介護 保険制度は、要介護者の介護サービス需要を満たしながらも保険料の負担を軽減しようとする矛盾に対 応しなければならない。

全国的に高齢化が進んでいる一方で、その状況は地域によって差が大きい。大都市圏やその周辺は高 齢化率が比較的低く、地方では高い傾向がある。特に首都圏である東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県 の高齢化率は、全国平均を下回る約 20%であるが、秋田県・高知県・島根県の高齢化率は 30%を超えて いる。このような高齢化率の差は、介護サービスの利用内容や自治体の財政などに影響を与える。例え ば、高齢化が進む市町村では、生産年齢人口や退職による稼得収入が減少するため、住民の担税力が低 下し、市町村の財政に悪影響を及ぼす。介護保険制度では、市町村が 12.5%を負担しているため、財政 が厳しいところが介護サービス需要の増加に対応することは、さらなる重荷を背負うことであり、積極 的な対応を期待しにくいところがある。高齢者人口の地域差は、厚生労働省によると、東京都・神奈川 県・大阪府は 200 万人を超えているが、鳥取県・島根県・福井県などは高齢者人口が少なく、県によっ て約 10 倍の差がある。このような高齢者人口の差は、介護事業者の運営に影響を与え、地域の介護市場 の環境に差をもたらす。特に、高齢者が集中している地域と過疎化により高齢者が分散している地域で は、利用者の確保や訪問・通所の移動時間などに大きな差があり、これらは介護事業者の採算性に関係 する。事業者の介護市場への参入には、採算性が大事な要素でおり、高齢化の地域差は、認定者の介護 サービスの利用状況や介護市場全体の形成に影響を与える。よって、各地域の介護事業者や高齢化状況 に合わせて今後の施策が求められる。

以上のことから、今後の介護保険制度の課題に対し、全国一律的な施策で対応することには限界があ り、高齢化の進行に備え、介護サービスを十分に供給しながらも、財政的な負担を最小限にする対策が 求められており、その対策は、地域の高齢化状況に当てはまるものでなければならない。

2.研究目的

本研究の目的は、介護保険事業の課題である「介護サービス供給量の確保と財政安定の問題」につい て、被保険者の負担に比べ、認定者一人当たりに介護サービスを最大限提供できる介護保険事業のあり 方を探索することである。そのため、被保険者の負担と比較し、認定者一人当たりに対する介護サービ スを最大限提供することを効率性と定義し、その効率性が高い介護サービスの提供体制と効率性を向上 させる策を探索する。また、高齢化状況に地域差があることを踏まえ、分析は高齢化率と高齢者人口密 度によって分類したグールプごとに行い、各グループに、効率性が高い介護サービスの提供体制と効率 性を向上させる方法を提示する。

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第2節 研究方法

1.研究対象

介護保険者は、介護保険事業を運営する市町村及び特別区を示し、その役割は、要介護認定・要支援 認定に係わる事務、保険給付に係わる事務、市町村介護保険事業計画の策定に係わる事務、保険料の徴 収に係わる事務、介護保険に固有の条例の制定などである。本研究では、介護保険事業の効率性に関す る研究であるため、介護保険事業を運営する全国の 1,580 カ所の市町村介護保険者を対象とする。

2.研究方法の概要

本研究は、1)高齢化率と高齢者人口密度による地域分類で地域差の検証と、2)アンケート調査に よる地域課題の検証を行い、3)分類した地域(クラスター)ごとに効率性を算出する。そして、4)

算出された効率性を基準に非効率的な介護保険者に効率性の改善策を提示する。各番号の研究方法の概 略は以下の通りである。

1)地域特性の分析

全国の 1,580 カ所の介護保険者をグループに分類するため、高齢化率と高齢者人口密度の z 得点を用 いて、ユークリッド法による非階層的方法でクラスター分析を行う。次に、2014 年度の介護保険事業状 況報告書のデータと総務省統計局の地域別統計データベースをもとに、各クラスターの高齢者の家族構 成と地域の介護・医療資源、要介護度と要介護認定率、介護サービス利用状況を因子にし、一元配置分 散分析を行うことで地域差を検証する。解析は、統計パッケージ SPSS23.0 for windows を用いる。

2)地域課題の検証

アンケート調査は、全国の 1,580 カ所の介護保険者の課長・係長を対象に、2015 年 12 月に、郵送調 査を行う。調査では、各介護保険者の財政状態、介護サービス提供の充足・不足状況、地域の課題につ いて質問し、クラスターごとに比較することで地域差の検証や地域課題を明らかにする。

3)効率性の検証

被保険者の負担に対する要介護者の介護サービス利用量が多いことを効率性として定義したことから 入出力項目を設定する。その際、認定者が重度の要介護状態になっても住み慣れた地域で生活するため には地域の中で介護を十分に受けることが必要であることや、認定率が介護サービス量に与える影響、

要介護度によって要介護者が利用するサービスの量や種類の変化があることを考慮した。介護保険事業 の効率性分析は、DEA(BCC の出力指向モデル)を用いてクラスターごとに算出し、Cook ら(2013)が Excel-solver を用いて提示した方法に沿って行う。モデルの設定については、第4章第1節で具体的に 述べる。

4)効率性の改善策の検証

非効率的な介護保険者に提示された改善値を達成するための具体的な改善策を検証するため、以下の 方法を用いる。非効率的な介護保険者が目指すべき介護サービスの提供体制として、(1)効率的な介護 保険者の介護サービス提供の傾向を提示し、(2)効率性を達成するための優先的に提供量を増やすべき サービスを探索する。

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(1)効率的な介護保険者の介護サービス提供の傾向

効率的な介護保険者の特性を具体的に探索するため、非効率的な介護保険者との比較からの特徴、介 護サービスの提供傾向の分析を行う。効率的な介護保険者の5つの入出力項目の構成において、非効率 的な介護保険者との比較から、効率性が向上する方法を明らかにする。また、効率的な介護保険者の介 護サービスの提供傾向を分析し、非効率的な介護保険者が目指すべき介護サービス提供体制を提示する。

(2)効率性の改善策

各クラスターで、計 24 種類の介護サービスが効率性に与える影響力を相対的に分析するため、

SPSS23.0 を用いて階層的回帰分析を行う。分析は、強制投入の方法で居宅介護サービスに地域密着型介 護サービス、施設介護サービスの順で追加する。個別サービスの影響力は、居宅介護サービス、地域密 着型介護サービス、施設介護サービスで構成されているモデルを基準にする。

3.倫理的な配慮

本研究は、法政大学大学院人間社会研究科研究倫理委員会の承認を得た上で行った(2016 年 3 月 16 日付き:研倫第 150317)。また、アンケート調査についても、同委員会の承認を得た上で行った(2015 年 11 月 12 日付き:研倫第 150206)。

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第3節 論文の構成

論文の構成は以下の通りである。

序章では、論文の背景と目的、研究方法の概略について述べている。

第1章では、介護保険制度の開始からの介護保険事業の変化を分析し、介護保険事業を取り巻いてい る課題を叙述した。また、介護保険事業の課題解決のために行った介護保険制度の改正の課題を分析し、

新たな方向性を探索した。その結果、介護サービス供給量の確保と財政安定の問題が今後の介護保険制 度の改正において大きな課題となっており、都市部のみではなく地方の自治体の特性にも当てはまるそ れぞれの介護保険事業の実態の探索が求められた。

地域特性に応じた介護保険事業の実態を探索するため、まず、第2章では、都市部から地方自治体に 至るまで、全国の市町村レベルの介護保険者のデータを用いて、地域の高齢化状況(高齢化率と高齢者 人口密度)により介護保険者を類型化した。その結果、全国の介護保険者を6つのクラスターで分類し、

クラスター間を比較することで、認定率や平均要介護度、医療資源、介護サービスの利用状況などに差 があることを明らかにした。また、アンケート調査からも、各クラスターの介護サービスの充足・不足 や地域の課題などに差があることがわかり、介護保険事業の課題について、都市部から地方自治体まで 介護保険者の特性に応じた対策が必要であることを明確にした。

第1章で指摘したように、介護保険事業の課題である「介護サービス供給量の確保と財政安定の問題」

について、被保険者の負担に比べ、認定者一人当たりに最大限介護サービスを提供できる介護保険事業 の姿を探索することを研究目的とした。そのため、被保険者の負担と比較し、認定者一人当たりに対す る介護サービスを最大限提供することを効率性として定義し、その効率性を高くする介護サービスの提 供体制を探索した。これの研究方法について、効率性の分析方法を第3章で説明し、第4章で、DEA を 介護保険事業の効率性に応用した。本研究では、定義した効率性の視点から入出力項目を設定した。さ らに、認定者が重度の要介護状態になっても住み慣れた地域で生活するためには、各自治体で介護を十 分に受ける必要があることや、自治体の認定率や要介護度によって要介護者が利用するサービス量や種 類に変化があることを考慮し分析を行った。分析は、各クラスターで効率的な介護保険者を算出し、非 効率的な介護保険者に効率性の改善のための改善値を提示した。

しかし、DEA は、非効率的な対象が効率性を改善する際、改善値に達成するための具体的な方法を提 示するには限界がある。本研究においても、各クラスターで効率的な介護保険者を検出し、非効率的な 介護保険者に改善値と改善するための具体的な策を提示するには限界があったが、第5章で、効率性を 向上させる方法を提示している。まず、改善策として、効率的な介護保険者の介護サービス提供の傾向 を分析し、非効率的な介護保険者が目指すべき介護サービスの具体的な提供体制を探索した。また、DEA から算出した出力項目の改善値を満たす方法として、計 24 種類の介護サービスのうち優先的に提供量を 増加させるべきサービスを明らかにし、効率性の改善策として提示した。

以上の DEA の結果と改善策をまとめ、第6章でクラスターごとに整理し、効率的な介護保険事業の運 営について対策を提案した。最後に「終章」に、本研究の限界と課題について述べた。

資料編では、アンケートの質問紙と、DEA の結果から算出された全国の介護保険者の効率性と改善値 を添付している。

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第Ⅰ部 介護保険制度の変遷と地域特性に応じた介護保険事業の現状と課題 第1章 介護保険事業の現状と介護保険制度の変遷

本章では、介護保険制度の開始からの介護保険事業の変化を分析し、介護保険事業が巻き込まれてい る課題を探索する。また、介護保険事業の課題解決のために行った介護保険制度の改正の課題を分析し 新たな方向性を探索する。

第1節 介護保険事業の運営状況

1.第1号被保険者の状況

第1号被保険者の数は、介護保険制度の開始時の約2,242万人から増加し続け、2014年度で約3,302 万人(1.5倍増加)に至っている(表1)。そのうち、前期高齢者の数(65歳以上〜75歳未満)は約1,716 万人(2014年度)で、2000年度から1.3倍増えた。それに比べ、後期高齢者は約1,585万人(2014年 度)で、制度の開始時より1.7倍が増加した。介護保険制度の第1号被保険者は、高齢化が進んでいる とともに人数の規模が大きくなる状況である。

また、第1号被保険者の数は、今後も増加しつづけ2042 年にピークになると予想される。国立社会 保障・人口問題研究所(平成29 年推計)によると、老年(65歳以上)人口は2015年の約3,387 万人

から、2020年には約3,619 万人へと増加し、その後は緩やかな増加期となるが、2030年に約3,716 万

人となった後、第二次ベビーブーム世代が老年人口に入る2042年に約3,935 万人でピークを迎えると 予測している。

表 1 第1号被保険者の推移

単位:千人 年度 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 65〜75

歳未満 13,192 13,424 13,709 13,736 13,871 14,125 14,501 14,708 15,037 15,144 14,827 15,055 15,737 16,524 17,164 75 歳

以上 9,231 9,744 10,225 10,758 11,240 11,753 12,262 12,804 13,280 13,773 14,283 14,724 15,201 15,494 15,856 22,422 23,168 23,934 24,494 25,111 25,878 26,763 27,512 28,317 28,917 29,110 29,779 30,938 32,018 33,021

*数値は、千人未満は四捨五入しているため、計に一致しない場合がある。

出 典) 厚 生 労 働 省(2015)「『 平 成 26 年 度 介 護 保 険 事 業 状 況 報 告 ( 年 報 )』 報 告 書 の 概 要 」 (http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/jigyo/14/dl/h26_gaiyou.pdf,2016.12.01).

2.要介護認定者

表2は、要介護・要支援認定者(以下、認定者)の数とそのうちの軽度・中度・重度の要介護者の割 合、平均要介護度の推移を表している。

認定者は、2000年度の約218万人から増え続け、2015年度には約608万人に至り、2.8倍増加した。

そのうち、軽度(要支援1、要支援2、要介護1)の増加が3.4倍、中度(要介護2、要介護3)の増 加が2.6倍、重度(要介護4、要介護5)の増加が2.1倍である。要介護度の構成からみると、認定者 における軽度の認定者の割合は、2000 年度で39.93%から47.52%に増加した一方、中・重度の認定者 の割合は減少した。介護保険制度の改正(2006年度)以降も、軽度認定者の割合の増加傾向や、中・重

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度認定者の割合の減少傾向がみられる(表2)。

要介護・要支援の認定率(以下、認定率)も増加し続け、2000年度の認定率は10.1%から、2015年

度には18.4%となった。軽度要介護者の増加が、認定率の上昇の大きな要因となっていることがわかる。

また、認定率は、第1号被保険者を母数としており(認定率=(要介護者数÷第1号被保険者数)×100)、 認定率の上昇傾向は、第1号被保険者数の増加率より要介護者数の増加率が高いことを意味する。つま り、第1号被保険者数の増加傾向がある際に認定率の上昇は、急速な要介護者の増加を示す。

表 2 認定者状況の推移 認定者数

(万人) 認定率 重度(%) 中度(%) 軽度(%) 平均要介護度

2000年度 218 10.07 27.32 32.75 39.93 2.29

2001年度 258 11.09 25.68 32.87 42.41 2.22

2002年度 303 12.58 24.03 30.72 45.14 2.13

2003年度 349 14.02 24.09 28.18 47.73 2.09

2004年度 387 15.24 23.40 27.73 48.87 2.06

2005年度 411 15.76 22.80 27.68 49.51 2.03

2006年度 435 16.19 23.41 31.70 44.89 1.93

2007年度 441 15.87 23.71 33.27 43.01 1.93

2008年度 455 15.95 23.54 33.32 43.14 1.92

2009年度 469 16.00 24.45 32.23 43.31 1.94

2010年度 487 16.31 24.27 31.50 44.22 1.90

2011年度 508 16.92 23.98 31.46 44.56 1.89

2012年度 533 17.84 23.22 30.87 45.91 1.84

2013年度 564 18.18 22.51 30.70 46.80 1.80

2014年度 586 18.25 21.94 30.54 47.52 1.77

注1)各年度4月時点のデータである。

注2)平均要介護度は、経過的要介護は含まない。

注3)2006年以降は、要介護度が6段階から7段階に変更され、以前との単純比較はできない。

注4) 平均要介護指標要支援1×1+要支援2×2+要介護1×3+⋯+要介護5×7 認定者数

出典)介護保険事業状況報告月報から作成

3.介護保険給付額と第1号被保険者の保険料

認定者が増えるとともに、介護保険給付額も 2000 年度以降、増加し続けている。厚生労働省(2015)

は、介護保険給付額が 2000 年度には約 3.6 兆円だったのが 2014 年度には約 10 兆円に至り、2.7 倍増加 したことを報告している(図1)。介護保険給付額は、要介護者の増加に比例して増え続けることが予想 され、今後の介護保険制度の持続可能性において大きな課題となっている。

給付額の増加に伴い、第1号被保険者の保険料(以下、第1保険料)も、第1期の 2,911 円から第5 期の 5,514 円へ 1.9 倍増加しており、厚生労働省の推計では、2025 年度に 8,165 円を予測している。保

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険料の上昇は、被保険者に負担を重くし、保険料の未納に繋がっている。厚生労働省は、2000 年度の普 通徴収未収額が約 25 億円だったのが、2013 年度には約 274 億円になり、未収額が約 10 倍以上に増加し たことを報告した(表3)。制度の開始から第1号被保険者数の増加分(1.5 倍増加)と介護保険料の増 加分(1.9 倍増加)を考慮しても、未収額の増加率は高く、介護保険料の負担の限界を表しているとも 考えられる。

図 1 介護保険の給付額と保険料の推移

出典)厚生労働省(2015)「公的介護保険制度の現状と今後の役割」(http://www.mhlw.go.jp/file/

06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/201602kaigohokenntoha_2.pdf,2016.12.01)

表 3 保険料未収額

単位:千円 2000 年度 2001 年度 2002 年度 2003 年度 2004 年度 2005 年度 2006 年度 普通徴収未収額 2,517,306 8,373,112 12,917,969 1,609,229 17,107,076 18,297,681 23,140,729

2007 年度 2008 年度 2009 年度 2010 年度 2011 年度 2012 年度 2013 年度 普通徴収未収額 22,825,478 23,778,153 23,309,888 21,840,360 21,145,193 27,166,250 27,428,594

出典)介護保険事業報告から作成

4.認定者一人当たりの介護サービスの利用状況

表4は、2000 年度からの認定者一人当たりの介護サービス利用単位数を表している。認定者一人当た りの介護サービス利用単位数は、2000 年度の 120,462 単位から 2014 年度の 145,552 単位に 1.2 倍増加 した。制度開始以来、平均要介護度の低下による介護サービス利用の減少は見られず、認定者一人当た りの利用量は増加している。サービス別に見ると、居宅介護サービスの認定者一人当たりの利用単位数 は、2006 年度には一時的に減少したが、全体的には増加傾向で 2000 年度の 43,760 単位から 2014 年度 の 77,962 単位で、1.8 倍増加した。地域密着型介護サービスは、2006 年度から実施され、認定者一人あ たり利用単位数は、開始時の 8,586 単位から 2014 年度には 16,987 単位数で 2.0 倍増加した。施設介護

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サービスの一人当たり利用単位数は、2000 年度の 76,701 単位から 2014 年の 50,640 単位に約3割が減 少した。以上のサービス利用の状況から、居宅介護サービスと地域密着型介護サービスの利用は増える 傾向があり、施設介護サービスの利用は減少する傾向が見られる。

表 4 認定者一人当たりの介護サービス利用単位数の推移

単位:1 単位、年間

居宅介護サービス 地域密着型介護サービス 施設介護サービス 合計

2000 年度 43,760 - 76,701 120,462

2001 年度 54,359 - 76,966 131,325

2002 年度 58,177 - 71,016 129,192

2003 年度 62,588 - 64,678 127,266

2004 年度 67,767 - 63,195 130,962

2005 年度 69,645 - 61,473 131,117

2006 年度 57,838 8,586 55,442 121,866

2007 年度 64,727 10,650 60,182 135,560

2008 年度 66,369 11,794 58,713 136,875

2009 年度 69,687 12,730 59,058 141,475

2010 年度 71,859 13,376 56,857 142,092

2011 年度 73,217 14,322 55,016 142,556

2012 年度 74,591 15,457 53,032 143,080

2013 年度 76,365 16,038 51,853 144,255

2014 年度 77,926 16,987 50,640 145,552

出典)介護保険事業状況報告から作成

5.介護人材

要介護者の増加に伴い、介護サービスの需要も増えることも必至である。介護サービスは対人サービ スであり、増える需要に対応するためには、人手の確保が必須であり、介護保険制度における大きな課 題の一つである。

介護職員数は、介護サービスの需要とともに増加し、2012 年度は約 149 万人であり、2025 年には約 237~249 万人が必要であると推計されている(厚生労働省:2013)。しかし、介護現場において、介護 職員の人手不足は厳しい状況にある。介護労働安定センターの介護労働実態調査による(2009〜2013年)、 2013 年度では訪問介護員の人手不足を感じる事業者は 42.0%、介護職員(訪問介護員以外の職員)につ いては、22.7%であり、2009 年度から増加の傾向がみられる。また、介護人材が不足している理由とし て、約7割が採用の難しさをあげており、約2割は事業拡大をしたくても人材不足でできない状況とな っていた(図2)。介護人材の不足は、居宅介護の需要が増えるこの先、深刻な居宅介護サービスの不足 を招くと考えられる。

また、介護労働者の年齢構造も、人手不足を加重する恐れがある。訪問介護員のうち、50 代が 27.5%、

60 歳以上が 31.6%を占めており、高齢職員の退職はさらなる介護の人手不足をまたらし、介護サービス の供給に空白が生じる可能性がある。

(14)

さらに、介護職員一人当たりが担当している要介護者数からも、人手不足の実態が読み取れる。表5 は、制度の開始からの介護職員一人当たりの要介護者数の推移を表している。2000 年度の介護職員一人 当たりの担当要介護者数が 3.97 人だったのが 2012 年度には 3.16 人となり、介護職員のキャパシティが 減少している。入所系職員の割合が減り、訪問・通所系職員の割合が増えるなどの介護職員の構成の変 化による影響とみられるが、介護職員の受け入れ人数が減少するということはより多くの介護人材を必 要とする。

図 2介護人材の不足の状況

出典)厚生労働省第1回社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会(2014)「介護人材の確保について」

表 5 要介護者数と介護職員数 年度 要介護者数

(万人)

介護職員数

(万人)

介護職員 一人当たりの 要介護者数(人)

年度 要介護者数

(万人)

介護職員数

(万人)

一人当たりの 介護職員 要介護者数(人)

2000 218 54.9 3.97 2007 441 124.2 3.55

2001 258 66.2 3.90 2008 455 128.0 3.55

2002 303 75.6 4.01 2009 469 141.3 3.32

2003 349 88.5 3.94 2010 487 147.9 3.29

2004 387 100.2 3.86 2011 508 156.2 3.25

2005 411 112.5 3.65 2012 533 168.6 3.16

2006 435 118.6 3.67

出典)厚生労働省第1回社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会(2014)「介護人材の確保につい て」から算出

(15)

6.小括

介護保険制度が開始される時、サービスの需要に対してサービス提供能力が対応できるかが大きな課 題であった。制度が整備されていてもサービスが利用できない、いわゆる「保険ありサービスなし」の 状態になる恐れがあった。そのため、行政は民間事業者などが介護市場に参入することを積極的に受け 入れ、市場の規模を拡大することでサービスの供給能力を確保する政策を行った。その結果、民間事業 者などにより介護市場は拡大し、要介護者の介護サービスの利用量も増え、介護保険制度は高齢者の介 護を支える制度として定着してきた。

一方で、介護保険制度の開始以降、高齢化の進展や家族構成の変化など制度を取り巻く社会環境は変 わり続けてきた。その変化について、第1節では、第1号被保険者や、認定者の状況、介護給付額、介 護サービスの利用状況、第1保険料、介護人材から介護保険制度の現状をみてきた。高齢化の進展によ る高齢者数の増加と認定率の上昇は、要介護者数を急増させ、介護サービスの総利用量と保険料の負担 を増大させてきた。しかし、保険料の上昇(1.9倍)は、認定者一人当たりの介護サービス利用単位数の 増加(1.2倍)よりも度合いが大きく、認定者は介護サービスの利用に比べ重い負担を担っている。また、

保険料の普通徴収未収納額が制度の開始時より約10倍多くなったことは、第1号被保険者に保険料負担 が加重されていることの証といえる。

一方、介護サービスは、対人サービスであり、需要の増加に対応するため介護人材の確保は必須であ る。しかし、介護サービスの需要は増加しているが、現場では介護人材の人手不足が続いている。また、

介護人材の高齢化が進んでいることや介護人材のキャパシティの変化によって、現場での人手不足は深 刻化し、今後の介護市場における介護サービス供給能力に限界がくることが予想できる。

本節で介護保険制度の状況の推移を分析した結果、介護サービス需要の増加、介護保険料の増加と負 担感、介護サービス供給の不足が予想される。これらの3つの課題から、将来的に要介護高齢者は保険 料負担が加重されても、以前と同水準の介護サービス量を利用しにくくなる可能性が高い。現在の介護 保険制度は、高負担の保険料、増える続けうるサービスの需要と供給などの環境の中で、新たな「保険 ありサービスなし」に直面している。このままの介護保険制度では、サービス需要を十分に満たせない 高負担の社会保険になる恐れがある。

以上の状況から、介護保険制度には、認定者に低負担で十分な介護サービスを提供することが求めら れるが、介護サービスの提供量の増加と保険料の軽減は矛盾する関係である。介護サービスの提供能力 を増進させ、増加する介護サービス需要を満たすと、介護総費用は膨れ上がり、保険料の負担が重くの しかかる。また、介護保険制度は社会保険方式であるため、保険料の負担を軽減すると、介護サービス の需要が増えることに対して制度が財政的に維持できない。つまり、介護サービス利用量の増加は保険 料の上昇を当然伴うものであり、介護サービス利用量の増加と保険料の軽減を両立させることは難しい ことである。しかし、今後介護サービス需要の増加や介護保険料の上昇不可避であり、サービス需要に ついての対応と保険料負担の軽減は、要介護者の円滑な介護サービス利用のために解決すべきものであ る。したがって、これからの介護保険制度は、要介護者の介護サービス需要を満たしながらも保険料負 担を軽減しようとする矛盾がある状況に対応しなければならない。

(16)

第2節 介護保険制度の変遷

介護保険法附則第二条によると、介護保険制度は、要介護者等に係る保健医療サービス及び福祉サー ビスを提供する体制の状況、保険給付に要する費用の状況、国民負担の推移、社会経済の情勢等を勘案 し、並びに障害者の福祉に係る施策、医療保険制度等との整合性及び市町村が行う介護保険事業の円滑 な実施に配意し、被保険者及び保険給付を受けられる者の範囲、保険給付の内容及び水準並びに保険料 及び納付金の負担の在り方を含め、この法律の施行後五年を目途としてその全般に関して検討が加えら れ、その結果に基づき、必要な見直し等の措置が講ぜられるべきものとされている。つまり、介護保険 制度の改正は、社会全般の状況から、他制度との関係などを考慮し、制度全般を検討した上に、行われ るものとなっている。よって、介護保険制度の改正を分析することで、介護保険制度を実施する上での 課題やその課題を解決するための今後の制度の方向性がみられると考えられる。本節では、介護保険制 度の改正から、今日まで介護保険制度を実施する上での課題と、その課題を解決するための制度の方向 性を分析し、新たな方向性を探索する。

1.介護保険制度の改正の背景

1)2005 年の介護保険制度の改正の背景

介護保険制度は、2000 年度に開始した以来、在宅サービスを中心にサービス利用が急速に拡大すると ともに介護保険の総費用も急速に増加した。在宅サービスの利用者数が、97 万人から 251 万人に 2.6 倍 増加、施設サービスの利用者数が 52 万人から 78 万人に 1.5 倍増加した。介護サービスを利用する要介 護者は、149 万人から 329 万人に 2.2 倍増加した。介護保険の総費用は、2000 年度に約 3.6 兆円から 2005 年度には約 6.4 兆円に増加し、当時の制度のままでは、保険料の大幅な上昇が見込まれた。

介護保険制度の改正において、当時の2015 年度の高齢者像の将来展望では、独居世帯が約570 万世帯、

高齢者夫婦のみ世帯が約 610 万世帯になると見込まれていた。また、認知症高齢者については、要介護 認定者の2人に1人が認知症の影響がみられ、2015 年度には約 140 万人まで増加することが予測された。

このような将来展望を踏まえ、家族の同居をある程度想定した「家族同居」モデルは「家族同居+独 居」モデルへ、脳卒中などにより身体的障害を有する高齢者を主な対象にした「身体ケア」モデルは「身 体ケア+認知症ケア」モデルへの転換が求められた。

2)2011 年の介護保険制度の改正の背景

介護保険制度が開始してから 10 年が経ち、地域の高齢者像の変化について、介護保険制度の対応が求 められた。特に都市部を中心にした高齢化の進展は、地域社会の変化や家族関係が変容している中で、

単身・高齢者のみの世帯の急増をもたらし、、高齢者尊敬の保持や自立支援についての課題が明らかにな ってきた。特に、医療ニーズが高い高齢者や重度要介護者は、専門的ケア及び随時対応が必要であるが、

在宅での介護では対応できず、施設の入所を選択せざるを得ない状況であった。また、高齢者が高齢者 を介護する老老介護や介護者も要介護者も認知症である認認介護、孤独死など、単身・高齢者のみの世 帯について、地域での支えが十分とはいえない問題が浮き彫りとなった。さらに、高齢者が要介護状態 になった場合に、住宅のバリア解除や緊急時の見守りなど、要介護者に配慮した住宅の整備が課題とな った。

要介護者の増加に伴い、サービスの需要が大幅に増える中、質の高い介護職員の確保も課題となった。

(17)

そのため、介護人材の確保策として、介護職員の介護報酬を3%プラスする介護職員処遇改善交付金制 度が 2009 年度に創設された。しかし、この制度は 2011 年度に終了し、2012 年度からは、処遇改善の財 源確保が緊急課題となった。

また、介護保険制度では、介護サービスの需要の増加に対応しながらも、給付と負担のバランスを確 保も求められた。介護保険制度は、給付と負担の関係が明確な社会保険方式であるため、介護費用の増 大とともに保険料も上がる。2010 年度の介護費用は、介護保険制度が開始された時より約2倍急増して おり、2012 年度の保険料は5千円を超えると見込まれており、将来の上昇も予測された。このようによ り状況で制度の改正では、社会保険制度による利点を活かしながらも被保険者の負担能力を考慮する必 要があった。

3)2015 年の介護保険制度の改正の背景

第1号被保険者や介護サービスの利用者が全体的に増加する一方、2015 年から 2025 年に、75 歳以上 の高齢者が急速に増えることが予測された。特に、埼玉県、千葉県、神奈川県、大阪府、愛知県、東京 都などの大都市部で、後期高齢者の増加に関する対応が大きな課題であった。

また、介護保険の保険料を負担している 40 歳以上の人口が減り始まることも予測され、制度の財政的 な安定にも対策が必要であった。加えて、2025 年度の介護給付(総費用額)は約 21 兆円になると推計 されるとともに全国平均の保険料が 8,200 円まで上がると予測され、被保険者の負担軽減のための方策 が求められた。

このような背景から、2015 年度の介護保険制度の改正では、2011 年度の改正の延長線上で、かつ 2025 年に向けた長期的な視点から、地域包括ケアシステムの構築と持続可能性の確保のための費用負担の公 平化が大きな課題となった。

2.改正の基本的考え方

過去3回の介護保険制度の改正の背景では、地域での支え合い、要介護者の増加による財政的な課題 が共通点であった。地域的には、大都市部が課題となっており、これらの課題を解決するため、社会保 障審議会介護保険部会の制度の改正の基本的考え方として、地域包括ケアシステムと制度の持続可能性 を共通的にあげた。

表6は、社会保障審議会介護保険部会(2005、2011、2015)による介護保険制度の見直しに関する意 見書で、介護保険制度の改正における基本的考え方をまとめたものである。まず、2005 年度では、制度 の持続可能性、明るく活力ある超高齢社会の構築、社会保障の総合化を基本的考え方としてあげていた。

地域包括ケアシステムというものはみられないが、明るく活力ある超高齢社会の構築という考え方は、

予防重視システムへの変換、地域密着型サービスの創設などの新たなサービス体系の確立することで、

実現しようとし、2011 年度以降の基本的考え方である地域包括ケアシステムの構築に繋がっていたと考 えられる。

制度の持続可能性という基本的考えは、公平・効率的な制度の運営の観点から、給付を効率化・重点 化することで、実現を目指した。2005 年度の改正では、「必要な人に適切な給付が行われ、真に役立っ ているのか」、「制度運営に無駄はないのか」という視点から検証することで、給付の効率化・重点化を 目指した。2011 年度の改正では、給付と負担のバランスをとる視点から、2015 年度の改正では被保険者 の負担軽減の視点から給付の効率化・重点化などを進め、制度の持続可能性を高めようとした。

(18)

表 6 介護保険制度の改正の基本的な考え方

基本的考え方 2005 年度の改正 制度の持続可能性

明るく活力ある超高齢社会の構築 社会保障の総合化

2011 年度の改正 日常生活圏域内において、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが 切れ目なく、有機的かつ一体的に提供される「地域包括ケアシステム」の実 現に向けた取り組みを進めること

給付と負担のバランスを図ることで、将来にわたって安定した持続可能な介 護保険制度を構築すること

2015 年度の改正 地域包括ケアシステムの構築

制度の持続可能性の確保のための費用負担の公平化

出典)社会保障審議会介護保険部会(2005、2011、2015)「介護保険制度の見直しに関する意見」から加筆

3.介護保険制度の改正の内容

以上の介護保険制度の改正の背景から、制度の改正の基本的考え方は、高齢者が住み慣れた地域で自 立した生活ができるような地域包括ケアシステムの構築と、財政的な安定を目指した制度の持続可能性 であった。ここでは、基本的考え方に基づいて行った改正の内容について述べる。

1)2005(平成 17)年の介護保険制度の改正

(1)予防重視型システムへの変換

介護保険制度の開始(2000 年度)から 2005(平成 17)年の介護保険改正以前(2004 年度)まで、要 介護認定者数の増加の特徴は、軽度の認定者(要支援・要介護1)数が大幅に増えたことである。2000 年度と 2004 年度を比較してみると、要介護認定者は約 256 万人から約 409 万人へ、1.6 倍増加した。そ のうち、軽度の認定者数は 102 万人から 200 万人へ 2.0 倍増加しており、中度(要介護2・要介護3)

の認定者数は 1.4 倍、重度(要介護4・要介護5)の認定者数は 1.4 倍上昇した。つまり、軽度の認定 者の増加率が中・重度認定者の増加率より高いことがわかる。

このような軽度の認定者の増加について、高齢者介護研究会(2003)は、「要介護2以上の中・重度に 比べて、要支援・要介護1の者は要支援が「改善」した割合が少ない状況にある。特に要支援は、介護 保険制度上、「介護が必要となるおそれのある状態」と位置付けられ、保険給付の対象とすることにより、

介護が必要となる状態になることを予防することを目指しているが、所期の効果が得られていない状況 にある」と述べた。このことからもわかるように、軽度の認定者に対する介護予防が非効果的であり、

これが介護給付額を増加させていることと分析できる。

このような認定者の状況から、2005 年度の改正では、予防重視型システムを目指し、新予防給付と 地域支援事業が創設された。

新予防給付では、自立支援の観点から、既存の予防給付について、対象者の範囲、サービス内容、ケ

(19)

アマネジメントの見直しを行われた。まず、対象者の範囲について、既存の要介護状態区分は要支援・

要介護1〜5だあったが、要支援・要介護1を要支援1・要支援2・要介護1の3段階に新しく区分す ることで6段階から7段階への変更が行われた。改正前の要支援の認定者が要支援1に、要介護1の認 定者のうち、状態の維持・改善の可能性が高い者は要支援2の対象となった。

ケアマネジメントの見直しは、市町村の責任のもと、地域包括支援センターにおいて、利用者の状態 に応じた目標の設定や、利用者を含めた様々な専門家が協力して利用者の自立に資するサービスプラン の作成、サービス利用の効果などを定期的にチェックし、介護予防マネジメントを行うこととした。新 介護予防サービスの内容は、介護予防通所介護、介護予防通所リハビリテーション、介護予防訪問介護、

介護予防福祉用具貸与などの 15 種類のサービスで構成されている。

また、高齢者が要支援・要介護状態にならないように包括的・継続的なマネジメント機能を強化する 観点から、市町村が行う地域支援事業が創設された。主な事業として、介護予防事業、包括的支援事業、

任意事業があげられる。介護予防事業は、地域の高齢者のうち要支援・要介護になる恐れがある高齢者 を対象に運動器官の機能向上、閉じこもり予防・支援、認知症予防・支援、うつ予防・支援を実施する ことである。包括的支援事業では、総合相談事業、権利擁護事業、包括的継続的ケアマネジメント支援 事業、介護予防ケアマネジメント事業を行う。任意事業としては、介護給付等費用適正化事業、家族介 護支援事業などを実施する。

(2)施設給付の見直し

施設給付の見直しは、社会保障制度間(年金制度と介護保険制度)の機能の明確化と調整、在宅と施 設の利用者負担の公平性などの観点から行われた。従来は、施設に入所している認定者の居住費・食費 が保険給付の対象であった。しかし、居住費・食費は、基礎的な生活費として年金制度で対応されてい る上に、介護保険制度でも給付対象となっていた。そのため、両制度からの居住費・食費の重複給付で、

在宅で生活する認定者と施設に入所している認定者では、同じ要介護状態でも費用負担の差が生じるこ とが問題視された。このことを受けて、2005 年度の介護保険制度の改正では、制度間の給付の調整や居 宅介護・施設介護の利用者負担の不平衡を是正する視点から、施設給付における居宅費・食費が保険給 付対象外とされた。

(3)新たなサービス体系の確立

介護保険制度の改正の背景には、当時の将来展望で、独居世帯と高齢者夫婦のみの世帯が増えると見 込まれていた。また、認知症高齢者についても、要介護認定者の半数が認知症を併せ持つようになり、

その数も増加すると予測した。このような推計により、従来の「家族同居」、「身体ケア」モデルから「家 族同居+独居」「身体ケア+認知症ケア」モデルへの転換が求められた。そのため、認知症高齢者や独居 高齢者などが住み慣れた地域で生活できるように、地域密着型サービスや地域包括支援センターの創設 などが行われた。

まず、地域密着型サービスは、指定権限が市町村に移譲され、地域の実情に応じた指定基準、介護報 酬の設定を市町村が行う。指定(拒否)、指定基準、報酬の設定には、地域住民、高齢者、経営者、保健・

医療・福祉関係者などが関与し、公平・公正透明な仕組みである。また、市町村をさらに細かく分けた 圏域単位で必要整備量を定め、地域のニーズに応じたバランスの取れた整備を促進することで、地域単 位で適正なサービス基盤整備を行う。地域密着型サービスの利用には、基本的に当市町村の住民 のみが利用可能である。具体的なサービスは、①小規模多機能型居宅介護、②夜間対応型訪問介護、③

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認知症対応型通所介護、④認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、⑤地域密着型特定施設入居者 生活介護、⑥地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護の6つである。

地域包括支援センターは、高齢者が住み慣れた地域で要介護状態になっても、必要なサービスが切れ 目なく提供されるように支える地域の中核機関として設置が行われた。職員体制は、保健師、主任ケア マネジャー、社会福祉士の3つの専門職が配置される。市町村が運営主体で事務局となり、地域のサー ビス事業者、関係団体、被保険者の代表などにより構成される地域包括支援センター運営協議会が地域 包括支援センターの運営に関与する。地域包括支援センターの機能は、①総合相談支援、②虐待の早期 発見・防止などの権利擁護、③包括的・継続的ケアマネジメント支援、④介護予防ケアマネジメントの 4つである。

(4)サービスの質の確保・向上

サービスの質の確保・向上のため、介護サービス情報の公表とケアマネジメントの見直しによる改正 が行われた。

まず、介護サービス情報の公表は、要介護認定者のサービス選択を実効性のにあるものとする観点や 介護サービスを提供する事業者の競争によりサービスの質を向上させるため、事業者に義務付けられた ものである。これは、全ての介護サービス事業者のサービス内容や運営状況に関する情報が、都道府県 知事や都道府県知事が指定した指定情報公表センターに公開されるものである。この制度は、要介護認 定者が公開された情報から自らの権利や価値観等に基づき、介護サービスや事業所・施設を比較・検討 してより良いサービス提供者を選択する仕組みである。また、要介護認定者の選択が多様な事業者間の 競争を促し、各介護サービス事業者はもとより介護サービス全体の質の向上が期待される制度である。

ケアマネジメントの見直しは、包括的・継続的マネジメントの推進、ケアマネジャーの資質・専門性 の向上、公正・中立の確保などの視点から行われた。具体的には、包括的・継続的マネジメントの推進 ため、地域包括ケアセンターの設置や、ケアマネジャーと主治医の連携強化、退院・退所時におけるケ アマネジメントの強化を図った。ケアマネジャーの資質・専門性の向上のためには、ケアマネジャーの 資格の更新制(5年間)、介護支援専門員ごとにケアプランをチェックできる二重指定制の導入、ケアマ ネジャー研修の義務化・体系化、主任ケアマネジャーの創設が行われた。公正・中立の確保などの視点 からは、ケアマネジャー標準担当件数の引き下げ(50 件から 30 件へ)や多数担当ケースに係る報酬逓 減制、不適切な事業運営に関する報酬減算の強化などが盛り込まれた。

(5)負担のあり方・制度運営の見直し

これまでの第1号被保険者の保険料は、所得による5段階設定となっていたが、2005 年度から、6段 階設定への変更が行われた。これは、従来の第2段階を負担能力に応じて新しく2段階に細分化し、負 担能力が低い第1号被保険者には、より低い保険料率を設定した。併せて、特別徴収については、徴収 対象を遺族年金、障害年金まで広げる一方、対象者の把握期間を年1回から複数回とした。

また、市町村の保険者機能の強化のため、市町村の事業所へ直接立ち入り権限の付与、地域密着型介 護サービスについての指定・指導監督権限の付与などが行われた。さらに、市町村の事務負担の軽減や 効率化の視点から、事務委託法人に認定調査などの業務を委託することができるようになった。

さらに、施設など給付費の負担割合が見直し改正された。施設など給付費とは、都道府県知事が指定 権限を有する介護老人福祉施設、介護老人保険施設、介護養老型医療施設、特定施設に係る給付費を示 す。この給付の負担の割合は、「保険料:国:都道府県:市町村」の比率が「50:25:12.5:12.5」だっ

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たのを、「50:20:17.5:12.5」に変更した。国の負担を減らす一方で都道府県の負担を増やした。

2)2011(平成 23)年の介護保険制度の改正

(1) 医療と介護の連携の強化等

① 医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが連携した要介護者等への包括的な支援(地域包括 ケア)を推進。

高齢者の日常生活圏域で①医療サービス、②介護サービス、③介護予防、④見守り・配食・買い 物などの生活支援、⑤住まいを、要介護者のニーズに応じて包括的に組み合わせ、入院・退院・在 宅復帰に切れ目がないように継続的に支援を行うこととした。

② 日常生活圏域ごとに地域のニーズや課題の把握を踏まえた介護保険事業計画を策定。

介護保険事業計画の策定において、既存の記載事項に加え、日常生活圏域ごとにニーズ調査を実 施・分析したものを基に、認知症がある被保険者の地域における自立した日常生活の支援に関する 事項、医療との連携に関する事項、高齢者の居住に関する事項について定めることとなった。

③ 単身・重度の要介護者等に対応できるよう、24 時間対応の定期巡回・随時対応サービスや複合型サ ービスを創設。

単身・重度の要介護者などの在宅生活を支えるため、訪問看護と訪問介護の連携の下で、短時間 の定期巡回と利用者のコールなどの通報システムによる随時対応を行う定期巡回・随時対応サービ スが創設された。また、高齢者の要介護度の進行に伴い、看護サービス・医療サービスのニーズが 高まることから、小規模多機能型居宅介護と訪問看護など、複数のサービスを一体化して提供する 複合型サービスが創設された。

④ 保険者の判断による予防給付と生活支援サービスの総合的な実施

高齢者の状態像や意向に応じて、保険者(市町村)の判断により、要支援者・介護予防事業対象 者向けの介護予防・日常生活支援のためのサービスを総合的に実施できる介護予防・日常生活支援 総合事業が創設された。当制度により、高齢者の状態像に合わせ、介護予防(訪問、通所)、配食、

見守りなどの多様なサービスを総合的に提供する。

介護予防・日常生活支援総合事業は、市町村の判断により導入され、高齢者の状態像や意向に応 じて、予防給付で対応するか、新たに創設された介護予防・日常生活支援総合事業で対応するかを、

市町村または地域包括支援センターが判断する。

⑤ 介護療養病床の廃止期限(平成 24 年 3 月末)を猶予。(新たな指定は行わない)

介護療養病床は、平成 24 年(2012 年)3月 31 日までに、老人保険施設や特別養護老人ホームな どの介護施設等に転換し、制度は廃止されることとなった。しかし、転換が進んでない状況に対し、

転換期間を 2018 年3月末まで猶予する一方、介護療養病床の新設は認めないとされた。

(2) 介護人材の確保とサービスの質の向上

① 介護福祉士や一定の教育を受けた介護職員等によるたんの吸引等の実施を可能とする。

たんの吸引や経管栄養は、介護現場のニーズが高いが、医療行為であるため、医者・看護職員 のみが実施可能であった。そこで、社会福祉士法及び介護福祉士法の一部改正により、介護福祉 士及び一定の研修を受けた介護職員なども、一定の条件の下にたんの吸引などの行為ができるこ ととなった。

② 介護福祉士の資格取得方法の見直し(平成 24 年 4 月実施予定)を延期。

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③ 介護事業所における労働法規の遵守を徹底、事業所指定の欠格要件及び取消要件に労働基準法等 違反者を追加。

④ 公表前の調査実施の義務付け廃止など介護サービス情報公表制度の見直しを実施。

事業者の負担軽減の視点から、年1回の調査の義務を廃止し、都道府県知事が必要であると認めた場 合に調査を行えるとした。

(3) 高齢者の住まいの整備等(有料老人ホーム等における前払金の返還に関する利用者保護規定を 追加)※厚生労働省と国土交通省の連携によるサービス付き高齢者向け住宅の供給を促進(高齢者住まい 法の改正)

有料老人ホーム及びグループホームへの入居後の契約解除の際、家賃、サービス費用などの実費を除 いて、前払金の全額を返還する契約を締結する義務が付けられた。また、高齢者の居住の安定確保に関 する法律(高齢者住まい法)の改正により、サービス付高齢者向け住宅の登録制度が創設された。

(4) 認知症対策の推進

① 市民後見人の育成及び活用など、市町村における高齢者の権利擁護を推進。

親族などによる成年後見の困難な者の増加が見込まれ、市町村は、介護サービス利用契約の支援など を中心に市民後見人を育成し、高齢者の権利養護を推進することとした。

② 市町村の介護保険事業計画において地域の実情に応じた認知症支援策を盛り込む。

(5) 保険者による主体的な取組の推進

① 介護保険事業計画と医療サービス、住まいに関する計画との調和を確保。

② 地域密着型サービスについて、公募・選考による指定を可能とする。

(6) 保険料の上昇の緩和(各都道府県の財政安定化基金を取り崩し、介護保険料の軽減等に活用)

財政安定化基金は、介護保険の財政に不足が生じた際、市町村に貸付・交付されるものである。都道 府県に設置されており、基金の負担比率は、国、都道府県、市町村で3分の1ずつである。制度の改正 では、第1号保険料の上昇の緩和のために、平成 24 年に限って、都道府県に財政安定化基金を一部取り 崩し、活用できるようにした。加えて、市町村準備基金についても、保険料軽減の目的で取り崩すこと とした。

3)2015(平成 27)年の介護保険制度の改正

(1) 地域包括ケアシステムの構築に向けた地域支援事業の充実 ① 在宅医療・介護連携の推進

75 歳以上の高齢者には、慢性疾患や複数の疾病にかかりやすいことや、要介護・認知症の発生率が高 いことなどの特徴があり、介護と医療の両方が必要である。また、地域包括ケアシステムの構築におい て、急性期医療から早期かつ円滑な在宅への復帰を可能とする体制整備や在宅サービスの充実のために も、介護と医療の連携は必須である。そのため、制度の改正では、在宅医療と介護の連携を全国で行う よう介護保険法の地域支援事業で位置付ける一方、小規模市町村では、都道府県の支援を受けながら、

群市区医師会と連携して取り組むこととした。

具体的な内容は、ⅰ)地域の医療・介護サービス資源の把握、ⅱ)在宅医療・介護連携の課題の抽出と 対応策の検討、ⅲ)切れ目のない在宅医療と介護サービスの提供体制の構築と推進、ⅳ)医療・介護関 係者の情報共有の支援、ⅴ)在宅医療・介護連携に関する相談支援、ⅵ)医療・介護関係者の研修、ⅶ)

地域住民への普及啓発、ⅷ)在宅医療・介護連携に関する関係市町村の連携である。

(23)

図 3 地域包括ケアシステムの姿

出典)厚生労働省(2015)「地域包括ケア研究会報告書」

② 認知症施策の推進

今後の認知症高齢者について、2025 年に予想される 65 歳以上の援認定者のうち認知症高齢者の日常 生活自立度Ⅱ以上の者は、約6割になると推計されている。このように今後増える認知症の高齢者に対 応するため、認知症初期集中支援チームと認知症地域支援推進員の設置に取り組んだ。認知症初期集中 支援チームは、複数の専門職が、認知症が疑われる人、認知症の人とその家族を訪問(アウトリーチ)

し、認知症の専門医による鑑別診断等を踏まえて、観察・評価を行い、本人や家族支援などの初期の支 援を包括的・集中的に行い、自立生活を支援する。認知症地域支援推進員は、認知症の人ができる限り 住み慣れた良い環境で暮らし続けることができるよう、地域の実情に応じて医療機関、介護サ所や地域 の支援機関を繋ぐ連携支援や認知症の人やその家族を支援する相談業務等を行う。

③ 地域ケア会議の推進

地域ケア会議は、多職種協働による専門的視点を交えて個別事例を検討・分析するなどを積み重ねる ことにより、地域課題の発見、資源の開発、地域づくり、介護保険事業計画への反映などに繋げること を目的に行うものである。地域ケア会議には、市町村レベルで地域づくりや政策形成などを目的とした 会議である地域ケア推進会議と圏域レベルで地域包括支援センターが個別ケースを検討する個別ケア会 議の2つがある。また、地域ケア会議の推進のため、2015 年により、地域ケア会議に参加する関係者の 協力や守秘義務など、制度的(介護保険法第 115 条の 48)な枠組みが設けられた。

④ 生活支援サービスの充実・強化

単身高齢者世帯や夫婦のみの高齢者世帯等が増加する中、高齢者が地域で生活するためには、多様な

図  4  保険給付と要介護状態のイメージ  出典)厚生労働省老健局「介護保険制度改革関連法案-参考資料−」 (www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/  houritu/dl/sankou.pdf)    既存の要介護1の区分を要支援2と要介護1への2段階に変更し、要介護1の対象者を減らした。実 際、図4をみると、改正前の 2006 年度の場合、要介護1の対象者が約 1,448 千人であったのが、改正し たことで要介護1を約508千人減らすこととなった。 改正前の2005年度の要介護1の対
表  17  不足していると思う介護サービス n=478、複数回答  項目          クラスター  1  2  3  4  5  6  合計  訪問介護  n  0  1  3  30  35  13  82  %  0.0%  4.2%  6.1%  17.4%  18.9%  34.2%  17.2%  訪問入浴介護  n  0  1  4  23  36  11  75  %  0.0%  4.2%  8.2%  13.4%  19.5%  28.9%  15.7%  通所介護  n  0
表  18  充足していると思う介護サービス n=439、複数回答   項目         クラスター  1  2  3  4  5  6  合計  訪問介護  n  5  14  17  46  65  7  154  %  45.5%  56.0%  36.2%  29.3%  38.7%  22.6%  35.1%  訪問入浴介護  n  1  3  9  21  25  9  68  %  9.1%  12.0%  19.1%  13.4%  14.9%  29.0%  15.5%  通所介護
表  24    第1クラスターの DEA 結果    No  介護保険者  効率値  (θ)  出力項目の改善値  入力項目の改善値 認定者一 人 当 た り の介護サービス利用 単位数(年、千単位) 認定者一人当たりの居宅・地域密着型介護サービス利用単位数(年、千単位) 平均要介護度指標 認定率 第1号被保険者介護給付負担単位数(年、千単位) 1  渋谷区  1.0000  0.0000  0.0000  0.0000  0.0000  0.0000  2  蕨市  1.0000  0.0000  0.
+7

参照

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