• 検索結果がありません。

地域特性に応じた介護保険事業の効率性についての分析 第3章 DEA(Data Envelopment Analysis)による効率性の概要

第1節 効率性の概念と測定方法

効率性とは、限られた資源をいかに効率よく配分するかという視点であり(小塩 2012:2)、資源・

財の配分について無駄のないことを意味する。また、効率性は、インプットとアウトプットの関係の問 題であり、効率性を求める際、インプット面とアウトプット面から無駄のない資源の配分が考えられる。

よって効率性には、求められるアウトプットに対して、どのようにインプットを抑えられるかという入 力指向(input oriented)の面と、与えられたインプットのもとで、どのようにアウトプットを大きく するかという出力指向(output oriented)の面がある(中井 2005:190)。

効率性を測定する方法としては、比率分析(ratio analysis)、回帰分析(regression analysis)、生 産性指標法(productivity index)などがある。これらはいずれも重要な分析方法であるが、多数の入 力項目と出力項目の評価や金額ではない項目の評価には適用しにくいことが指摘される。それに対し、

多数の入力項目と出力項目の評価が可能であり、異なる測定単位にも対応する包絡分析(data envelopment analysis,以下 DEA)がある DEA には、経験に基づいた指向性を表せたり事前の仮定が不要 であったりすることから、非営利組織や規制のある組織、民間組織などにおける効率的あるいはベスト プラクティスフロンティアを推定する多くの研究に用いられてきた(森田、2014)。上田(2010)は DEA の特徴について以下のように述べている。

1.母集団平均ではなく、個々の観測に的を当てている。

2.望んでいる出力量(従属変数)を生産するための入力因子(独立変数)の利用量に関して、各 DMU について単一の総合的尺度をつくる。

3.それぞれが異なる測定単位で記述されている複数の出力と複数の入力を同時に利用できる。

4.外生変数に対して調整できる。

5.カテゴリー(ダミー)変数を含むことができる。

6.値は自由であり、入力や出力に対する事前のウェイトや価額に関する知識を必要としない。

7.生産関係を表す関数形に関する制約はおかない。

8.必要なときには判断を取り込める。

9.効率的フロンティアよりも下にある DMU を、効率的フロンティア上に射影するための、望ましい入 力や出力での変化量を推定することができる。

10.パレート最適である。

11.平均的傾向としてのフロンティアの特徴よりは、むしろ顕在された最良の実践を示すフロンティア に的を当てている。

12.各 DMU の相対的評価において、厳密な公正基準を満足する。

第 2 節 DEA による効率性の測定方法

(1)DEA 分析の概要

DEA 分析とは、事業体等対象となる意思決定主体(Decision Making Unit、以下 DMU)の効率性を相対 的に測定・評価する手法のことであり、効率的フロンティアを基準として非効率な事業体の改善案等を 具体的に提言できる分析法をいう(刀根、1993)。また、DEA の特徴として、入出力項目の数が多くても、

DMU 間の相対的効率性が測定可能である。

まず、1入力1出力モデルを想定した場合の効率的フロンティアや非効率な事業体の改善案など DEA の流れを説明する。図 6 は、DMU である A、B、C、D、E の出力/入力を表している。5 つの DMU の中で、

出力/入力の効率性が相対的に最も高いのが A である。BCDE は、A と比べ、相対的に非効率的であるこ とがわかる。最も効率性が高い A と原点を結ぶ線を効率的フロンティアと呼び、この線が B、C、D、E の 効率性の改善案の基準になる。DEA 分析では、効率的フロンティアを効率値が最も高い「1」と定め、

非効率的な B、C、D、E を相対的に測定する。

図 6 DEA の説明図 1 入力 1 出力

次に、2 入力 1 出力モデルについて説明する。1入力1出力モデルは、2 つの変数であるため、2 次元 で表したが、2 入力 1 出力モデルは 3 つの変数であることから 3 次元で表す。しかし、複雑な 3 次元の 図を 2 次元で表すために、各 DMU の出力を同じ出力に揃え、変化した出力の比率分、各 DMU の入力を再 構成する。表 21 は、表 20 を再構成した 2 入力 1 出力モデルである。

表 20 2 入力 1 出力モデル

DMU A B C D E 入力1 18 35 18 2 2 入力2 12 100 12 3 20

出力 6 10 4 1 2

表 21 再構成した 2 入力 1 出力モデル DMU A B C D E 入力1 3 3.5 4.5 2 1 入力2 2 10 3 3 10

出力 1 1 1 1 1

図 7 は、表 21 を 2 次元で表したものである。表 12 のデータを DEA により分析すると、効率性が高い のは、ADE である。A は、入力 2 を最小化した効率的 DMU といえ、E は、入力1を最小化した効率的な DMU といえる。D は、入力1と入力 2 を効率的に投入した DMU といえる。A、D、E(効率性=1)が効率的な DMU であることから、線を結ぶことで効率的フロンティアが作られ、非効率的な DMU のベンチマーキン グの基準となる。非効率的 DMU である B の効率性の値は、B と原点を結ぶ線 OB と線分 OB`の比率で測定 する。

図 7 再構成した 2 入力 1 出力モデル

(2)生産可能集合

入力項目が M 個、出力項目が N 個で構成されている J ヶ所の DMU があると仮定する。その際、生産可 能集合 P(x,y)は以下のように示される。

式1)

𝑃(𝑥, 𝑦) = {(𝑥1, 𝑥2, … 𝑥𝑀, 𝑦1, … 𝑦𝑁)|𝑥𝑚≥ 𝑥𝑚𝐽(𝑚 = 1,2, … , 𝑀); 𝑦𝑛 ≤ 𝑦𝑛𝐽(𝑛 = 1,2, … , 𝑁); (𝑗 = 1,2, … , 𝐽)}

𝑃(𝑥, 𝑦) = {(𝑥1, 𝑥2, … 𝑥𝑀, 𝑦1, … 𝑦𝑁)|𝑥𝑚≥ ∑𝐽𝑗=1𝜆𝑗𝑥𝑚𝐽(𝑚 = 1,2, … , 𝑀);

𝑦𝑛 ≤ ∑𝐽𝑗=1𝜆𝑗𝑦𝑛𝐽(𝑛 = 1,2, … , 𝑁);

𝜆𝑗 ≥ (𝑗 = 1,2, … , 𝐽)}

図8~図 10 は、式 1 の生産可能集合の例を表している。図8は、1入力1出力で生産可能な領域全て を表している。図9は、出力を固定した場合、その出力が可能な2つの入力の集合である2入力1出力 の生産可能集合を表している。図 10 は、入力を固定した場合、その入力で生産可能な2つの出力の集合 である2入力1出力の生産可能な領域全てを表している。

図 8 生産可能集合(1入力—1出力)

図 9 生産可能集合(2入力—1出力)

図 10 生産可能集合(1入力—2出力)

(3)CCR モデルと BCC モデル

DEA には、DEA の基本概念を応用した多様なモデルがある。その中の、CCR モデルと BCC モデルについ て説明する。CCR モデルと BCC モデルには、生産可能集合に差がある。CCR モデルは、規模の収穫一定の 性質を仮定したものであり、BCC モデルは規模の収穫可変の性質を仮定したものである。

図 11 CCR モデルの生産可能集合 図 12 BCC のモデルの生産可能集合

図 11 と図 12 は、同じ DMU について、CCR モデルと BCC モデルの生産可能集合を表しているが、生産 可能集合には差がある。BCC モデルは、CCR モデルに比べ、生産可能集合の面積が少ないことがわかる。

生産可能集合について、CCR モデルは、全ての DMU において最も効率性が高い DMU を基準にするが、BCC モデルは、入力項目の状況の中で最も効率性が高い DMU を基準にある。よって、分析のモデルは、入力 項目と出力項目の関係が収穫一定の性質を満たすかを考慮し選択する必要がある。例えば、入力項目が 1%ずつ増加するとき、出力項目の増加率が一定しない場合は、BCC モデルの分析が望ましい。

① CCR モデル

CCR モデルは、Charnes,Cooper and Rhodes によって、1978 年に提案された包絡分析法の最初のモデ ルである(刀根、1993)。CCR モデルには、入力(投入)指向型モデル(input-based CCR model)と出 力(産出)指向型モデル(output-based CCR model)がある。入力指向型モデルは、生産可能集合の中で、

評価対象である当該 DMU の出力以上を保証した上で、入力を最も縮小するような活動(入出力の組み合 わせ)を求めるモデルである。これに比べ、出力指向型モデルとは、 生産可能集合のなかで、評価対象 である当該 DMU の入力以下を保証した上で、出力を最も拡大するような活動(入出力の組み合わせ)を求 めるモデルである。以下では、CCR モデルを入力指向と出力指向に分けて説明する。

i)入力(投入)指向型モデル(input-based CCR model)

入力(投入)指向型モデルでの効率性は、生産可能集合の中で、現在の出力を前提とし、現在の入力

(投入)に対し、入力を最大限に抑えられる量の比率として定義する。よって、入力(投入)指向型モデ ルでは、効率性の値が大きい方が望ましい。このモデルでは、効率性の値は1が最大値であり、最も効 率性が高いことを意味する。また、1より小さい値は、効率的なではないことを意味する。

入力項目が M 個、出力項目が N 個で構成されている J ヶ所の DMU があると仮定する。その際、k 番目 の効率性を測定するためウェイトを付け、効率性が最大になる目的関数を式2のように設定する。

式2) 目的関数

=

min

𝜃,𝜆、𝑠−,𝑠+{∅−ɛ ( ∑ 𝑠𝑚

𝑀

𝑚=1

+ ∑ 𝑠𝑛+

𝑁

𝑛=1

)}

制約式 ∅𝑥𝑚𝑘 = ∑ 𝑥𝑚𝑗

𝐽

𝑗

𝜆+ 𝑠𝑚 (𝑚 = 1,2, … , 𝑀) ;

𝑦𝑛𝑘= ∑ 𝑦𝑛𝑗

𝐽

𝑗

𝜆− 𝑠𝑛+ (𝑛 = 1,2, … , 𝑁) ;

𝜆≥ 0 (𝑗 = 1,2, … , 𝐽) ; 𝑠𝑚 ≥ 0 (𝑚 = 1,2, … , 𝑀);

𝑠𝑚+ ≥ 0 (𝑛 = 1,2, … , 𝑁);

注) ɛ:非アルキメェィアン数(限りなく 0 に近い正の数のことである)

𝜆 :DMU のウェイト、𝑠𝑚 :入力項目のスラック、𝑠𝑛+:出力項目のスラック

ii)出力(産出)指向型モデル(output-based CCR model)

出力(産出)指向型モデルでの効率性は、生産可能集合の中で、現在の入力を前提とし、現在の出力

(産出)に対し、出力を最大限に増加できる量の比率として定義する。よって、出力(産出)指向型モデ ルでは、効率性が小さい方が望ましい。CCR の出力指向型モデルでは、効率性の値は1が最小値であり、

最も効率性が高いことを意味する。また、1より大きい値は、効率的ではないことを意味する。

入力項目が M 個、出力項目が N 個で構成されている J ヶ所の DMU があると仮定する。その際、k 番目 の効率性を測定するためウェイトを付け、効率性が最小になる目的関数を式3のように設定する。

式3) 目的関数

=

max

𝜃,𝜆、𝑠−,𝑠+{∅+ɛ ( ∑ 𝑠𝑚 𝑀

𝑚=1

+ ∑ 𝑠𝑛+ 𝑁

𝑛=1

)}

制約式 𝑥𝑚𝑘 = ∑ 𝑥𝑚𝑗

𝐽

𝑗

𝜆+ 𝑠𝑚 (𝑚 = 1,2, … , 𝑀) ;

𝑦𝑛𝑘= ∑ 𝑦𝑛𝑗

𝐽

𝑗

𝜆− 𝑠𝑛+ (𝑛 = 1,2, … , 𝑁) ;

𝜆≥ 0 (𝑗 = 1,2, … , 𝐽) ; 𝑠𝑚 ≥ 0 (𝑚 = 1,2, … , 𝑀);

𝑠𝑚+ ≥ 0 (𝑛 = 1,2, … , 𝑁);

注) ɛ:非アルキメェィアン数(限りなく 0 に近い正の数のことである)

𝜆 :DMU のウェイト、𝑠𝑚 :入力項目のスラック、𝑠𝑛+:出力項目のスラック