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平和の文化─平和メディアへの期待

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Academic year: 2021

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(研究報告)

平和の文化─平和メディアへの期待

淺川和也(明治学院大学国際平和研究所 研究員)

1.はじめに

 国連おける平和の文化の推進は、2017年国連総会において5月16日がInternational Day of Living

Together in Peace

(1)に制定されたように、すくなからず継承されている。本論では、まず、平和

の文化が現在なされている持続可能な開発目標(SDGs)と連関することを述べる。そして、再 度、平和の文化に関する宣言と行動計画(2)のなかから「参加型のコミュニケーションと情報や知 識の自由な流れを支える行動」の具体化としての平和の文化ニュースネットワーク(Culture of

Peace News Network)

(3)について、また、平和メディアへの期待について述べることにする。

2.平和の文化と持続可能な開発目標(SDGs)

 国連は2000年を平和の文化国際年とし、その後の10年を世界の子どもたちのための平和の文化 と非暴力のための国際10年(2001年から 2010年)とした。平和の文化国際年のために、ユネス コに平和の文化局がおかれ、「わたくしの平和宣言(Manifest 2000)」署名なども展開された。わ たくしの平和宣言には世界で7億5千万の署名がなされた。日本ではユネスコ協会連盟を中心に とりくまれ、119万4,089人の署名を得たという記録がある。

 国連は、安全保障のみならず平和の基盤を構築するために社会経済への貢献が必要とのことか ら、同時期、2000年にミレニアム開発目標(MDGs)を採択し、2015年までに貧困と飢餓の撲滅 にとりくむとした。以降、SDGsへのとりくみが、後継して続けられている。

 ミレニアム開発目標すなわち持続可能な社会の実現のためには教育が不可欠とのことから、

ESD(持続可能な開発のための教育)が推進されることになった。持続可能な開発のための教育

の10年(Decade of Education for Sustainable Development, 2005年 から2014年)そして、2015年以 降は、持続可能な開発のための教育(ESD)に関するグローバル・アクションプログラムとし て、5年ごとにレビューされることになっている。

 SDGsでは「目標 16 公正、平和かつ包摂的な社会を推進する:持続可能な開発に向け、平和で 包摂的な社会を推進するためには、国際的な殺人、子どもに対する暴力、

人身取引や性的暴力の

脅威に取り組むことが重要です」(4)とされている。国家間の戦争のない状態が平和であるのみな らず、これらの暴力の脅威からのがれることも平和といえる。そのためには、平和の文化による 社会の実現が求められるのである。

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3.平和の文化を再び

 平和の文化とは何か、戦争のない状態のみが平和ではなく、平和の文化に関する宣言では次の

(a)から(f)のような「価値観、態度、行動の伝統や様式、あるいは生き方のひとまとまりの

ものである」とされる。

(a)教育や対話、協力を通して生命を尊重し、暴力を終わらせ、非暴力を促進し、実践する

こと。

(b)国連憲章と国際法の精神にのっとり、本来それぞれの国の国内法下にある諸事態には、

その国の主権や領土の保全、ならびに政治的な独立の原理を十分に尊重すること。

(c)すべての人権と基本的な自由を十分に尊重し、その促進をすること。

(d)紛争の平和的な解決に向けて責任を負うこと。

(e)現代ならびに未来の世代が、開発と環境を事受できるように努力すること。

(f)発展の権利を尊重し、その促進をすること。

(g)女性および男性の平等の権利と機会均等を尊重し、その促進をする こと。

(h)表現や意見、情報の自由に関するすべての人の権利を尊重し、その促進をすること。

(i)社会と国家のあらゆるレベルにおいて、自由、正義、民主主義、寛容、連帯、協力、多元

主義、文化的多様性、対話、そして相互理解という原則をまもること。

 この平和の文化に関する宣言をうけて、平和の文化に関する行動計画が採択されたが、そのな かで「参加型のコミュニケーションと情報や知識の自由な流れを支える行動」を促進することが あげられ、次のように規定されている。

(a)平和の文化を促進するメディアの重要な役割を支持すること。

(b)報道の自由および情報とコミュニケーションの自由を保障すること。

(c)国連や関連する地域的、圏内的、地方的な機構をふくめて、平和の文化に関する情報の

宣伝と普及のためのメディアを効果的に利用すること。

(d)さまざまなコミュニティーが要求を表明し、意志決定に参加することを可能にするマス

コミを育てること。

(e)新しいコミュニケーション技術、とりわけインターネットをふくめ、メディアのなかの

暴力問題への措置を講じること。

(f)インターネットをふくめた新しい情報技術についての情報の共有を促進する努力をさらに

すすめること。

 関係機関への政策提言およびこれらの実現にあたり、平和の文化ニュースネットワーク

(Culture of Peace News Network)が構想され、展開されることになる。

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4.平和の文化ニュースネットワーク(CPNN:Culture of Peace News Network)

 平和の文化国際年では、具体的な行動として「わたしの平和宣言」署名へのとりくみがなされ るとともに、平和の文化ニュースネットワーク(CPNN:Culture of Peace News Network)という運 動も組織された。マスメディアによってたえず流布される暴力に関する報道ではなく、平和の文 化を促進するための価値あるニュースを共同でつくることを目指していた。ウエッブでの投稿 にたいして、平和の文化による8つのキー(5)を踏まえ、モデレーター(編集者)とやりとりをし て、掲載をしていくという仕組みであった。8つのキーは以下のとおりである。

(1)すべての生命の尊重:あらゆる人間の権利と尊厳を尊重する。

(2)非暴力:納得と理解によって正義を実現し、あらゆる暴力を拒否する。

(3)助け合い:

調和の精神で、ともに生きていく態度とスキルを養い、排除と抑圧を終わらせる。

(4)傾聴:情報の自由な伝達をとおして、すべての人が学び共有しあう機会があたえられる。

(5)かけがえのない地球を守る:すべての人々と環境にやさしい社会進歩と開発をおこなう。

(6)寛容と連帯:人々の違いを理解し、共同体にたいして誰もが貢献しうることを理解する。

(7)男女の平等:社会を建設していくなかで男女が平等な立場で参加できるようにする。

(8)民主主義:すべての人々が重要な決定に参加する。

 投稿者が編集者のやりとりにより、平和の文化を省察し、流布することをねらっている。当 初、国際的な研修によってモデレーターを養成し、各国に拠点をおいて展開する構想であった が、かなわなかった。日本では、伊藤武彦(和光大学)によって紹介され、ウエッブサイトも運 営されたが、モデレーター養成や投稿もなされなくなり、普及できなかった。現在、CPNNはか たちをかえて、元ユネスコ平和の文化局長であったデイビッド・アダムスによって、運営されて いる。

5.平和メディアへの期待

 戦争報道のみならずメディアの影響力ははかりしれない。政府系メディアはもとより、商業メ ディアも権力による操作されはまぬがれない。

 カトリック教会で第二バチカン公会議(1962年から65年)において、

「世界広報の日(5月6日)」

が定められた。2018年の教皇メッセージでは、フェイクニュースとジャーナリズムに焦点があて られた。ジャーナリズムの使命が次のように述べられている(6)

 とりわけ──世界の大部分の──声なき人々のために尽くすジャーナリズム。事態を根底か ら理解し、人道的なプロセスを進めることを通して紛争を解決するために、情報を無駄にせず に、その紛争の真の原因を突き止めようとするジャーナリズム。怒鳴り合いやことばの暴力の 激化に対し、何か別の解決策を示そうとするジャーナリズムを指しているのです。

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 第二バチカン公会議はカトリックの現代化をすすめたといわれるが、社会に扉をひらく意味で

「広報」について問い直したことは、意義深い。他方、独立メディアおよび市民メディア、オル

タナティブメディアなどの役割がいっそう重要となる。SNSが民主化運動において大きな役割を 果たしたといわれているが、SNSによってヘイト・スピーチが拡散し、ヘイト・クライムにつな がる懸念もある。

 平和の文化を発信、交流する平和の文化ニュースネットワークのとりくみは功を奏することは なかったが、同様にメディアを活性化することはきわめて重要である。最近、はじまったWorld

Beyond War

(7)でも平和の文化の創造にあたり、ピースジャーナリズムの重要性が強調されている

ように平和メディアへの期待は大きい。

────────────── 

(1)International Day of Living Together in Peace

https://www.un.org/en/events/livinginpeace/  [2019.07.03]

(2)「平和の文化に関する宣言」および「平和の文化に関する行動計画」については、『暴力の文化から平和 の文化』(平和文化 2000)に所収

(3)CPNN:http://cpnn-world.org/new/ [2019.07.03]

(4)持続可能な目標:目標16平和と公正をすべての人に

http://www.jp.undp.org/content/tokyo/ja/home/sustainable-development-goals/goal-16-peace-justice-and-strong- institutions.html [2019.07.03]

(5)『平和の文化8つのキーワード』(平和文化 2006)

(6)第52回「世界広報の日」教皇メッセージ(2018. 5. 6)[2019.07.03]

https://www.cbcj.catholic.jp/2018/05/06/16619/

(7)World Beyond War(戦争を超えた社会)[2019.07.03]

https://worldbeyondwar.org/ja/

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参照

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