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(1)

消費者商品の売買及び品質保証に関するEU指令(二

) : その制定過程とドイツ法への影響を中心とし

その他のタイトル Directive EC of the sale of consumer goods and associated guarantees (2) : in focus on the legislative process and the effect on German Law

著者 今西 康人

雑誌名 關西大學法學論集

巻 50

号 4

ページ 625‑657

発行年 2000‑11‑30

URL http://hdl.handle.net/10112/00023595

(2)

二指令の制定過程と同指令の内容

1指令原案提案までの経緯

2 E

u指令原案の内容

3 E

u指令の内容

4本指令の制定過程における議論の概観︵以上︑五0

5

1本指令の性格とドイツの状況

2売買等の瑕疵担保責任に関する民法典債権法改正委員会草案の概要

3債権法改正委員会草案修正による国内法化

4債権法改正委員会草案の修正私案

E

u

その制定過程とドイツ法への影響を中心として1

西

消費者商品の売買及び品質保証に関する

E u

指令

︵ 二 ︶

(3)

①まず﹁契約適合性﹂の存否につき︑以下の諸点を指摘できよう︒第一に︑二条二項

d号は︑第三者の広告表示に

(3) 

ウィーン統一売買法三条に倣ったものである︒

まず︑本指令は動産売買を同じく対象としつつも商事売買を対象とするウィーン統一売買法と異なり︑消費者 契約不適合に関する買主の﹁通知義務﹂が本指令で強行法規として明文化されなかったのは︵五条二項参照︶︑消費

者契約における消費者保護の側面からである︒契約不適合がある場合における売主の﹁治癒権﹂が明文化されなかっ 他方︑商事売買と消費者売買とを問わない瑕疵担保責任に関する基本的な枠組み︑例えば目的物の瑕疵の定義︑

買主に認められる諸権利の内容については、本指令はウィーン統一売買法三五条・三九条二項•四五条•四六条•四

九ー五0

条の考え方を原則として踏襲している。本指令における契約不適合概念の採用(二条)、修理•取替え・代 金減額・契約解除という買主の四つの権利の承認︵三条︶と引渡しを起算点とした二年の権利行使期間の設定︵五条 一項︶がそうである︒また︑売買の意義についても同様である︒製作物供給契約が含まれることを定める一条四項は もちろん︑これらの点につき詳細な部分では本指令固有の︑又は内容を若干変更す規定も存在する︒

(2) 

たのも同様の理由からである︒ 売買だけを適用対象としている 簡単にまとめておこう︒

9 9  

,' , 

本指令の特徴 関法

4

で概観した議論を振り返り︑本指令の特徴をウィーン統一売買法との対比という観点から

︵一条︶︒ウィーン統一売買法三八条・三九条が定める買王の﹁物品検査義務﹂及び

0巻第四号

(4)

る ︒

より消費者商品に対し消費者が合理的に期待できる性質・性能が現実には存在しなかった場合をも契約不適合の範疇

に入れている︒これは固有の規定である︒第二に︑二条二項b号は︑買主の特別な目的に商品が適合しないことを契

約不適合と取扱う点につき︑ウィーン統一売買法三五条二項b号を修正し︑売主が当該特別目的を承諾していること

を要件に追加する一方︑買主が当該特別目的に関する売主の説明を信頼しなかった場合を契約不適合から除外する旨

の但書きを削除している︒第三に︑売主又は買主による商品の誤った組立てを原因とする契約不適合について固有の

規定を二条五項で設けている︒組立てを要する商品にまで言及する詳細な規定は本指令固有なものである︒第四に︑

契約不適合の存否の基準時について︑本指令三条一項はウィーン統一売買法三六条一項の危険移転時ではなく引渡し

時を採用し︑危険移転時期の論点は加盟国の国内法に委ねた︒また︑これと関連して引渡し時に契約不適合が存在す

ることの買主の証明責任を軽減すべく︑引渡し後六ヶ月以内に顕在化した契約不適合に限り引渡し時に契約不適合が

存在した旨の推定規定を五条三項で設け証明責任を転換している︒第五に︑三条三項は契約締結時における契約不適

合の存否に関する買主の主観的態様︵善意及び過失の有無︶につきウィーン統一売買法三五条二項と異なる文言を使

用し︑単なる軽過失にとどまる買主のためには消費者保護の視点から契約不適合の存在を認めようとする意図が窺え

②次に︑﹁買主である消費者の権利﹂の行使につき︑内容上明確な二段階論を三条二項から六項で採用する点は本

指令の特色である︒ウィーン統一売買法では四六条から五0条の規定を見る限り︑明確な段階論は取られていない︒

確かに同法からは︑買主側からの履行請求すなわち修理又は取替え請求︑若しくは売主側からの第二の履行提供たる

治癒の権利行使︵修理又は取替え︶が一応第一段階であることは理解し得る︒しかし︑取替えの要件が厳格化され不

4

9E

u

(5)

第五0

適合が重大な契約違反を構成することが要求される︒代金減額も同法五0条を見る限り︑必ずしも第二段階の権利行

使を予定されているわけではない︒ただ︑追完自体が不可能か又は追完をしない場合に比し不均衡な場合には︑両者

の間で結果に大差はない︒例えば︑契約不適合が重大である場合︑それが重大な契約違反を構成するなら︑本指令三

条三項一文但書き・ニ文に基づき、又は売主による治癒に先んじてウィーン統一売買法四八条一項•四九条一項a

に基づき︑買王は直ちに契約を解除できる︒修理が売主にとって不相応に高くつく場合も︑解除については同様であ

る︵三条三項一文但書き・ニ文︑ウィーン統一売買法四八条三項︶︒また︑逆に︑本指令の二段階論においても三条

五項︵特に﹁売主が合理的な期間内に修理及び取替えを実行しない場合﹂に代金減額又は解除を認める同項二号︶の

反対解釈によりウィーン統一売買法と同様︑売主が治癒︵追完︶の提供をすれば買主の解除又は代金減額請求を封じ

ることが認められている︒売主の治癒権と買主の解除又は代金減額請求の関係については︑両者に大きな違いはない

③さらに︑製造者又は直近売主に対する売主の求償権が四条で明文化されているのも本指令特有のものである︒既

述のように︑商品の特定の性質に関する製造者等の広告等の公けの表示により消費者が合理的に期待した性質・性能

が現実には存在しなかった場合︑また契約不適合の原因が設計又は製造上の瑕疵に基づく場合︑契約不適合につき責

任を負う売主は︑いずれも製造者に対し求償できる︒しかし︑明文規定を設ける発想は商事売買を対象とするウィー

ン統一売買法にすらなかった︒消費者売買契約に関する本指令に事業者間の権利・義務の規定が設けられているのは︑

奇妙である︒本来であればこのような場合には第一次的責任負担者は製造者等であるから︑これらの者の広告表示者

の表示責任又は製造者の製造物責任のみを論議すべき性質の問題である︒ただ︑本指令は消費者と直接売買契約関係

(6)

周知のようにドイツでは︑

に立つ売主の瑕疵担保責任だけを対象とするにとどめたため︑消費者法でありながら売主の求償権規定を設けざるを

④最後に︑本指令は製造者等の保証責任についても六条で規定を設けている︒これは契約不適合に関する製造者の

責任ではない︒当該商品の品質・性能と保証書で定められた品質・性能とが︑又は現実の保証条件と同一内容を有す

る広告で定められた品質・性能とがそれぞれ甑甑するすべての場合につき︑発生する保証責任である︒広告内容につ

き責任を負担する点では︑広告表示者の責任の範疇に入る︒また約定責任であるため︑

につき代金返還︑交換及び修理を例に挙げつつ︑効果をこれらに限定せず約定に委ねている︒しかし︑保証書の内容

については細かな方式規定を設けている︒消費者売買における保証書及び広告の重要性を考慮したこのような規定は︑

ウィーン統一売買法にはもちろん存在しなかった︒その他︑中古品が消費者商品に当然含まれることを前提として︑

一定の場合につき適用除外︵一条三項︶又は適用緩和︵七条︳項二文︶

本指令の性格とドイツの状況

の規定を設けているのも本指令特有のもので

( 1 0 8 )  

一九九一年末に

BGB

の債権法改定に関する委員会が改定草案を伴う最終報告を出して

いる︒特にこの委員会草案では︑多岐にわたる債権法改正のうち売買及び請負に関する瑕疵担保責任︑さらにこれと

関連する債務不履行の一般規定及び消滅時効につき

BGB

を早急に改正することが提案された︒この委員会草案は一

Eu

得ないような変則的結果に終わっている︒

e号はその法的効果

(7)

第五0

( I o o )  

九九四年第六0回ドイツ法曹大会民法部会で討議の対象となり︑学者側から概ね賛同を得た︒しかし︑これ以降︑改

正作業はストップし︑進展をみていない︒国内法化を求める本指令は︑ドイツのこのような状況の下で登場したので

ある︒既に︑本指令原案の段階でドイツ連邦参議院の法務委員会は一九九六年一0月二三日に指令原案の勧告を採択

し︑同年︱一月八日に連邦参議院で基本了承した︒その際︑連邦参議院は﹁

Eu

の管轄は︑域内市場の実現という範

囲での消費者保護の規制にとどまり︑

( 1 1 0 )  

討を要する五つの事項を指摘した︵広告表示をも瑕疵概念に組み込み売主の責任を肯定する点の妥当性︑消費者の四 一般私法の規制には及ばない﹂との基本的立場から︑今後の国内法化につき検

つの権利の自由選択性の是非とこれら権利の行使期間の規定方法の複雑性︑売主の求償権規定の要否︶︒要するに︑

連邦参議院はドイツ民法の改正以外の方法で国内法化の措置を採ることを考えていたと思われる︒確かに︑本指令は

売買における売主の瑕疵担保責任に関するものであるが︑その対象は﹁有体動産﹂のみを目的にした﹁消費者売買﹂

だけである︒したがって︑連邦参議院が一般私法である民法の改正を以って本指令の国内法措置を講ずる必要はない

と考えたのは︑至極もっともな反応である︒しかし︑学説の中には指令原案公表の当時︑債権法改正の委員会草案と

( l l l )  

の対比・調整をその分析視点するものがあった︒さらに最終指令が公にされて以降︑発表された雑誌論文の多くは︑

本指令の国内法化は債権法改正の委員会草案の内容︵主に瑕疵担保責任法に関する改正提案部分︶ 関法

の修正と追加を通

じて民法典の債権編を改正する形で実現すべきことを提唱している︒二000年初頭ハレ・ヴッテンベルク大学で本

( 1 1 2 )  

指令の国内法化をテーマに開催されたシンポジウムでも︑結論はやはりこの方向であった︒言うまでもなく︑こうし

た学説の背後には︑債権法改正作業の進展がストップしたままの現状に対する打開の契機にしようとする実践的意図

が読み取れる︒かって債権法改定作業に着手した当時の政権党である社民党が一九九八年再び政権を握ったことも︑

0)

(8)

Eu

徴を考慮するならば︑

本指令の国内法化を主張する諸学説を特に取上げ︑その内容をみてみたい︒

好都合なのである︒ただ︑これら学説を単なる便乗主義と即断し片付けることはできないと思われる︒本指令は製造

物責任︑訪問取引の撤回︑不公正条項の濫用禁止等に関するこれまでのEu指令とその本質が異なる︒条文数は限ら

れているが契約適合性概念︵売主の義務不履行︶をもって瑕疵担保責任を律しようとする立場は︑民法典の瑕疵担保

規定の︑さらに一般給付障碍法の基本構造に係わる︒その意味で︑ヨーロッパ一般私法的性格を潜在する本指令の特

( 1 1 3 )  

一般私法である民法典債権編の改正が国内法化の︱つの選択肢に当然なり得るのである︒以下

では︑売買等の瑕疵担保責任につき民法典債権法改正委員会草案を簡単に振り返った後︑民法典債権編の改正による

売買等の瑕疵担保責任に関する民法典債権法改正委員会草案の概要

委員会草案の詳細については既に邦顧があるので︑ここでは簡単に触れるにとどめる︵なお︑以下の

BG B̲ KE

と表記する条文は委員会草案[

K o m m i s s i o n s e n t w u

r f   : 

E]

の改正条文を指し︑現行規定の条文番号を表さない︶︒

①委員会草案は︑すべての給付障害すなわち債務不履行につき﹁義務違反﹂を中心的要件とする一般給付障害法

を創設する一方︑売買における独自の制度たる売主の瑕疵担保制度を廃止しその規制を右一般給付障害法に服させる

ことを基本内容とする︒すなわち︑売主の瑕疵なき物の給付義務を措定し

(B GB

̲K

E四三四条︶︑その義務違反こ

現行の瑕疵概念は維持し︑当事者が合意した性質を有しない場合︑性質が当事者間で合意されていない場合に

おいて当事者の約定により前提とされた使用に適しないとき︑又はその物の通常の使用に適しないときを物の瑕疵と そが瑕疵担保責任の問題であるとする︒

̲̀ J 

,1 , 

(9)

(5)  (4) 

第五0

(B GB

̲K E

瑕疵に関する買主の主観的態様については契約締結時における悪意の買主にのみ瑕疵担保請求権を否定する

(B GB 'K

E四四二条︶︒過失ある買主にもこの請求権を認めるのは︑買主が基本的に目的物検査義務を負担しない

この責任の効果として︑第一次的に買主に追完請求権︵代物給付請求権及び修補請求権︶を認める

(B GB ' K

E四三八条一項一文︶︒他方︑売主には自らの選択に従った第二の提供権である追完権が認められるが︵同条二文︶︑

追完に要する運送費︑交通費︑労務費等の必要費は売主の自己負担となっている︵同条二項︶︒さらに︑第二段階に

おいて初めて買主に解除権が認められる︒すなわち︑追完のための相当期間経過後も追完が行われない場合

(B G B' KE

四三九条一項・三二三条︶に初めて︑解除権が肯定されるのが原則である︒但し︑例外として追完が達成さ

れなかった場合

(B GB 'K

E四三九条二項;坦完不能︑追完の不当な拒絶又は遅滞︑売主に対する追完の期待不可

能の各場合を指す︶には︑買主に直ちに契約解除権が認められる︒軽微な瑕疵の場合には︑解除権は排除され代金減

額請求権が認められる

(B GB

̲K

三二三条三項一号︶︒代金減額請求権も解除権と同様に追完のための相当期間経E

過後も追完が行われない場合にだけ認められる

(B GB ,K E

0

最後に︑買主の瑕疵担保請求権︵代物給付請求権︑修補請求権︑解除権及び代金減額請求権︶ 定義する

︐ ' ︐  

, ',  

関法

の消滅時効期間

は目的物の引渡し時を起算点とし三年とされ︑現行の四七七条一項の六ヶ月︵動産︶又は一年︵不動産︶をよりも期

間を伸長している

(B GB ,K E

一九五条一項・一九六条四項︶︒これは︑短期消滅時効期間に関する現行一九六条一

( 1 1 5 )  

項の二年は追完請求権には短すぎ︑他方同条二項の四年はそれには長すぎるという判断に基づく妥協の産物である︒

(10)

(1) 

以上︑委員会草案における瑕疵担保責任の概要は既に見たウィーン統一売買法の影響を強く受けたものである︒

同時に︑買主に第一次段階で追完請求権を︑第二次段階で解除権及び代金減額請求権を与えたのは︑債権法改正委員

( 1 1 6 )  

会が売買の中でも消費者売買を特に念頭に置いた問題処理を考えていたからだと評価されている︒

本指令の国内法化につき考えられる選択肢は︑三つある︒第一は︑現行のBGB特に売買の規定を部分的に改正す

る方法︑第二に︑消費者商品売買法という名称の特別法を制定する方法︑第三に︑BGBの債権編改正委員会草案を

( 1 1 7 )  

修正し早期立法化する方法がそうである︒ーで指摘したように︑ドイツの多くの学説は第一及び第二の方法が本指令

の内容から考え︑国内法化措置として適切でないと批判する︒第三の方法による本指令の国内法化がなぜ最も望まし

いのか︑他の方法には具体的にいかなる問題点が存在するのか︑以下概観してみよう︒

第一の方法は、具体的にはBGBの売買における瑕疵担保規定四五九条•四七七条•四八0条を改正すること

( 1 1 8 )  

である︒それ自体は最も簡単かつ時間を要しない措置である︒しかし︑シェーファー/プファイファー

(S ch af fe r/ ( 1 1 9 )  

P f e i f f e r )

は︑このやり方に対し消費者の視点から適用法規の錯綜・複雑化を指摘し次のように批判する︒すなわち︑

このようなやり方は私人関係に関する一般法である民法規定の俯厳を困難にする︒というのも︑消費者商品の売買に

関する規定を

BGB

の売買の規定に組み入れた場合︑

BGB

は消費者にとって極めて見通しの悪いものとなる︒通常

何ら深い法律知識を有さず現行の債権法すら把握することが難しい消費者が︑売買という単一の契約類型に関する多

くの様々な諸規定と向かい合う︒その結果︑消費者が消費者商品に関する請求権の実現を図るためのコストを考慮す

E u

3債権法改正委員会草案修正による国内法化

(6) 

(11)

(2) 

第五0

るなら︑売買の諸規定及び消費者を取り巻く法状況を明確化するためには︑消費者センター及び消費者団体に頼るこ

とが残されるだけである︑と︒第一の方法としてもう一っ考えられるのは︑消費者売買に関する諸規定を

BGB

買法の中に新設する方法である︒本指令原案の段階で︑例えばメディクス

(M ed ic us )

は家畜売買に関する

BGB

( 1 2 0 )  

八一条から四九二条の規定を廃止し︑ここに消費者売買の規定を入れる余地があることを述べていた︒家畜売買は現

在ではほとんど行われておらず︑

BGB

に規定を設ける意味はもはや失われているからである︒しかし︑売買法全体

の理論的体系性からみてこのやり方には問題があると批判されている︒法務省参事官であるシュミットーレンチュ

(S ch mi dt

  ,  R

ii nt sc h)

 は︑個人的意見としてこのような

BGB

改正を行った場合︑消費者売買に関する規定は売買法

( 1 2 1 )  

の核心部分に係わる内容を含んでいるので︑他の売買の規定との間で理論的な一貫性に綻びが発生する︑という︒B

G

Bと本指令との間における瑕疵概念の異別性

(B GB

四五九条は物の瑕疵を欠点[価値の消滅又は重大な減少ヽ通

常若しくは契約上予定された使用に対する適性の消滅又は重大な減少]又は保証された性質の欠如と定義し︑契約適

合性概念と性質が異なる︶︑損害賠償という例外を伴う現行瑕疵担保法規定

(B GB

四六三条︶との関係︑本指令に

( 1 2 2 )  

おける消費者売買規定の強行法規性︵本指令七条一項︶などがそうである︒また︑シェーファー/プファイファーは︑

このやり方も

BGB

の売買規定の改正と同様

BGB

債権編の規定の透明性を失わせ︑これを極めて見通しの悪いもの

( 1 2 3 )  

にしてしまう︑と批判する︒

第二の方法は︑民法自体を改正せず︑消費者商品の売買における売主の瑕疵担保責任に関する法律を制定する

ことである︒このやり方は︑Eu指令の国内法化として既に訪問取引撤回法や消費者信用法など多くの法律において

その前例がある︒パック旅行契約につきEu指令の国内法化として

BGB

に規定

(B GB

六五一条

ai l)

を設けた 関法

10

 

(12)

のが︑特別法方式に対する唯一の例外であるにすぎない︒

ところで第二の方法に依る場合︑売買契約については

BGB 四三三条の意味での伝統的な売買契約か︑又は本指令 一条にいう消費者商品売買かに応じて︑物の瑕疵担保責任につき異なる法律効果を有する各法律が適用されることに なる︒消費者のための特別な売買法を創設する結果︑シュレヒトリームが本指令原案公表時に指摘したように︑ドイ

( 1 2 1 )  

ツの売買法は四層の重層構造となる︒つまり︑

BGB

四一二三条以下の一般売買法︑商事売買に関する商法三七三条以

六三五

一般売買法が排除される消費者商品に関する特別規定︑最後にそれ以外の商品売買に関するウィーン統一 売買法に分極化する︒シェーファー/プファイファーは︑法規のこのような併存状況は法律を知らない素人にとって ほとんど把握困難である︑と批判する︒さらに︑ある売買契約につき四層のうちのどの法規が適用されるべきかを決 定するためには︑いかなる商品がいかなる目的で購入されるのかを契約当事者の属性をも考慮しつつ検討しなければ ならない︒しかし︑自身で問題の解決を図ろうとする平均的消費者にとってこのような解決法規の発見は困難である︑

( 1 2 5 )  

と︒さらに︑より深刻な問題が発生する︒シェーファー/プファイファーは︑以下のような債権法のいわば分裂を引 き起こす︑として問題点を指摘する︒すなわち︑消費者商品の売買についても

BGB

の売買規定の多くが該当するこ

とを考えるなら︑特別法を制定したとしても多くの同一内容の諸規定が二つの法律において並存することとなる︒他

方︑売買に関する

BGB の規定と同一内容の規定を特別法に設けないならば︑今度は

BGB

の対応規定をもって補完

することで満足しなければならず︑適用法規の透明性が失われてしまう︒結局︑どちらにせよ特別法を制定するとい

BGB

の売買の規定を骨抜きにし︑

BGB 四三三条以下の規定を消費者売買以外の例外的ケースにのみ適

( 1 2 6 ) ( 1 2 7 )  

用される法律にしてしまう点で︑法体系の明確性に反する︒この点は︑シュミット'レンチュも同一意見である︒そ

Eu

(13)

0巻第四号

︵ 回

こで︑これを踏まえて︑ライヒは︑売買法体系は全体として新たに再構築されるべきなのである︑と指摘する︒消費

以上二つの方法における欠点を回避できるのが第三の方法である︒本指令の国内法化のタイムリミットそして 者法は

BGB

のいわば﹁付属法

(A

nn

ex

re

ch

t)

﹂と呼ぶべき存在であることが一般に承認されるならば︑消費者のた

( 1 2 9 )  

めの特別私法という従来の考え方は打破されるであろうとする︒

ユーロが統一通貨として現実に流通する二

0

0二年一月一日までにこれを行うことには︑相当時間的制約がある︒し

かし︑この方法を最も詳細に検討するのは︑シェーファー/プファイファーである︒彼らは︑

BGB

の債権法改正委

員会の最終草案における売主の瑕疵担保責任制度はもともと多くの点で本指令と同一方向を志向しており︑以下の点

︵ 国

で本質的な諸規範は一致又は類似している︑と述べている︒

まず第一に︑売主の責任につき包括的な基本要件を挙げる点で︑両者は類似する︒本指令二条︳項は商品の契約適

合性︵当該契約に適合した商品を給付すべき売主の義務︶を︑改正最終草案四三四条は瑕疵のない物を給付すべき売

第一一に︑売主の瑕疵担保責任につき︑以下の七つの点︵①から⑦︶で内容が大筋で一致する︒つまり①﹁契約不適

合﹂又は﹁瑕疵のない物の給付義務︑すなわち瑕疵を除去すべき義務﹂につき各々無過失責任を導入する点︵本指令

BG B, KE

四三四条︶②買主の四つの権利︵修補請求権︑代物請求権︑代金減額請求権及び解除

権︶の行使につき2で既述したようにいずれも二段階論を採用する点︵本指令三条二項・六項︶③修補請求と代物

請求のいずれかの行使を買主の選択に委ねていることから明らかなように︑現行

BGB

と異なり特定物売買と種類物

売買とを区別していない点︵本指令三条三項︳文・ニ文︑

BG BI KE

四三八条一項二文︶④買主の権利行使に関す 主の義務を各々売主の責任成立要件として定立している︒ 関法

(14)

Eu

る二段階論の例外すなわち直ちに代金減額又は解除を主張できる場合に関する要件が類似する点︵本指令三条五項︳

号から三号が定める要件は

BGB

四三九条二項が要件として挙げる

BGB

三二三条二項

'K

Eに当たる場合及び﹁追

完が達成されなかった場合﹂と内容上ほぼ一致する︶⑤現行

BGB

と違って︑物の瑕疵と権利の瑕疵︑欠点と保証

された性質を各々区別しない点(本指令二条、BGB,KE四三四条•四三五条)‘⑥買主による追完請求につき無償

化を図っている点︵本指令三条四項︑

BG B̲ KE

四三九条三項︶⑦買主が契約締結時において瑕疵につき悪意であ

る場合︑売主の責任を排除している点︵本指令二条三項︑

BG B' KE

四四二条︶がそうである︒

ただ︑本指令と委員会最終草案との間には︑異なる内容も存在することは事実である︒この点︑シェー

ファー/プファイファーは︑幾つかの点については本指令が当該規定を国内法に設けるにつき加盟国の裁量に委ねた

点か否か︑或いはいわゆる﹁一対この国内法化を行うにとどめるか︑それとも上乗せ規定︑すなわち消費者により

( 1 3 1 )  

有利な規定を積極的に設けるかに関係する︑とし︑その限りで両者の間に矛盾抵触はない︑とする︒例えば︑本指令

には契約不適合の場合における売主の損害賠償責任につき規定を設けていない︒他方︑委員会草案は一般債務不履行

責任の規定に基づく損害賠償責任を肯定する(BGB_KE二八0条・ニ八三条•四四一条)。しかし、本指令八条一

項はこの点を加盟国の国内法に委ねているのであるから︑その限りで両者の間に甑甑はない︒また︑買主の権利に関

する存続期間︵消滅時効期間︶につき︑本指令五条一項は二年と定めるのに対し︑委員会草案は民法総則の消滅時効

規定において三年とする

(B GB IK

E一九五条一項・一九六条四項︶︒ただ︑本指令八条二項は消費者により有利な

国内法化措置を認めているので︑委員会草案はこの点で本指令の上乗せ規定である︒

( 1 3 2 )  

以上と異なり︑委員会草案と本指令のいずれかにのみ存在する規定も確かに存在する︒例えば︑瑕疵又は契約不適

(15)

︳︱‑五条以下︶及びこれに関連する消滅時効規定

(B GB 'K E

一九五条以下︶に本指令に対応する新規定を設ける点

では共通する︒但し︑売主の瑕疵担保責任に対する基本的なスタンスはまったく異なる︒ライヒは売主の瑕疵担保責

(1)  提示している︒次のこれを見てみよう︒

(5) 

同様に扱うのに対し 第五0

合の存否の基準時及び買主の権利に関する消滅時効の起算点につき両者とも﹁引渡し時﹂を原則として採用する点で 同一方向にありながらも︑異種物の給付及び証明責任の転換に関する限り差異が存在する︒委員会草案は物の瑕疵と

(B GB 'K

E四三五条二項︶︑本指令はそのような規定は存在しない︒また︑本指令五条三項は︑

引渡し後半年以内に出現した不適合に限り契約不適合の存在に関する証明責任を転換し︑引渡し時に不適合が存在し た旨の推定規定を消費者保護の見地から設ける︒さらに︑保証につき本指令六条はその意義及び効力につき詳細に定 めるのに対し︑委員会草案は簡単な規定を設けるだけにとどまっている

(B GB 'K E

以上︑シェーファー/プファイファーの見解に代表されるように︑学説の大勢は︑現行

BGBの売買法の改正

又は特別法の制定という国内法化措置の問題点を共通認識するところから出発する︒その上で︑債権法改正委員会草 案と本指令内容との類似性を理由に︑委員会草案の内容修正による国内法化が最も妥当と結論づけるのである︒ただ︑

問題は本指令を踏まえ債権法改正委員会草案をどのように修正しそこに組み入れるのか︑また単に﹁一対一﹂の国内

( 13 2 a )

1 3 3 )

1 3 4 )

 

法化にとどめるのかである︒既に︑この点については︑ライヒ

(R

ei

ch

)

とレーマン

(L

eh

ma

nn

)

が各々修正私案を

債権法改正委員会草案の修正私案

基本的立場

ライヒとレーマンは︑いずれも委員会草案における売主の瑕疵担保責任規定

(B GB IK

E 関法

(16)

ライヒとレーマンの私案の比較

① ( 1 3

5 )  

る︒すなわち︑同条三項において︑消費者売買に限り︑売主は当該消費者商品が一定の性質及び性能を有する点につ

き責任を負う旨の規定をおく︒この三項の内容は︑本指令二条二項d号︵契約適合性の推定が認められる場合の一

つ︶及び同条四項を立法化したものである︒同項a号からC号を立法化しなかったのは︑

BG B' KE

義規定の一項︵物が合意された性質を有するとき︑性質が合意されていない場合において契約により前提とされた使

用に適するとき︑又は通常の使用に適するとき︑物に瑕疵はない旨の条項︶によってこれらの号がカバーされている

と判断したからである︒次に︑同条四項において︑誤った組立てを原因とする消費者商品の瑕疵につき本指令二条五

項に対応する規定を設ける︒さらに︑同条五項において︑消費者商品の売買契約に限り︑商品の引渡し後六ヶ月以内

に現れた瑕疵につき引渡し時に存在したものと推定する旨の規定を設ける︒これは本指令五条=︳項を国内法化したも

以上︑まとめると︑

(2) 

Eu

物の瑕疵に関する規定

任規定に関する委員会草案につき主に消費者売買契約に関する条項を追加するにとどめ︑草案の修正を最小限に抑え

ている︒いわば﹁一対この国内法化の立場と言える︒他方︑レーマンは本指令の規定内容を消費者売買のみならず

売買一般に妥当する一般法理と評価し︑瑕疵担保責任規定に関する委員会草案をこの法理に沿うように変更しようと

している︒さらに︑本指令にはなかった製造者の瑕疵担保責任につき規定を設けようとする大胆な上乗せ提案も行っ

ライヒはBGB'KE四三五条の定義規定に新たに三項から五項の三条項を追加す

(17)

一項だけはそのまま維持し︑ 第五0

BG

BI

KE

k

[

]

③裁判上の措置︑水・ガス・電気の供給を除く動産︵消費者商品︶売買につき事業者が消費者と締結する契約において︑売主

は︑消費者商品が同一種類の消費者商品につき通常である性質及び性能を有し︑かつ︑当該消費者商品の特定の性質及び売主︑

製造者又はその代理人によって当該消費者商品の特定の性質につき広告又はラベルにより行われた公の表示を考慮するならば︑

消費者が合理的に期待することができる性質及び性能を有することについても責任を負担する︑但し︑売主が当該表示を知ら

ず︑かつ︑合理的に見て︵重過失なく︶知り得なかったとき︑当該表示が契約締結時に訂正されたとき︑又は消費者の意思決

定が当該表示によって影響され得なかったときは︑この限りでない︒

④消費者商品の組立てが売主によって合意されるとき︑組立てによる瑕疵は︑消費者商品売買契約の物の瑕疵とみなす︒誤っ

た指示に基づく消費者による組立ての場合も同様とする︒

⑥消費者商品売買契約において︑瑕疵が消費者商品の引渡し後六ヶ月以内に現れた場合︑当該瑕疵が引渡し時に存在したもの

と推定する︑但し︑この推定が消費者商品の性質又は瑕疵の性質と一致しないときは︑この限りでない︒

他方︑レーマンは︑契約不適合概念ではなく瑕疵概念を維持しつつも︑本指令の内容を売買一般につき妥当させよ

( 1 3 6 )  

うとする︒すなわち︑彼は

BGBIKE

四三五条一項以下を次のように修正する︒物の瑕疵の定義につき委員会草案

一項及び二項一号として規定を設けている︒ライヒ同様︑これらの定義は本指令二条二

a号からC号に内容的に一致していると考えるのである︒新たに規定された二項二号の定義規定は本指令二条二項

d号に︑売主の免責を認める三項は本指令二条四項に各々対応する︒四項一号は製造者を定義する本指令一条二項

d

号に相当するが︑製造者の代理人を定義する四項二号は本指令にないものである︒ 関法

一 六

0)

(18)

第三文を新たに設ける︒これは本指令三条三項に対応する︒さらに︑解除に関する

BGB'KE四一二九条二項につき ② 

(4) 

売主が営業又は職業の上の活動として売買契約を締結しなかった場合︑売主は︑第三者の公の表示につき責任を負わない︒③売主は︑以下のことを証明する場合︑前項二号に挙げた公の表示につき責任を負わない︑

売主が当該表示を知らず︑かつ︑知り得なかったこと︑

当該表示が契約締結時において訂正されていたこと︑

購入決定が当該表示によって影響され得なかったこと︒

二項二号にいう製造者とは︑売買の目的物の全部又は一部を製造し︑売買の目的物のための材料を製造する者をいう︒自

己の名義︑商標その他識別しうる標識を付加することによって製造者として活動する者︑

E u

域内において売買の目的物を

輸入し又は運び入れる者も製造者とみなす︒

二項二号にいう製造者の代理人とは︑専ら個人的販売業者として活動する独立した売主を除き︑製造者から販売権限を委

託された販売業者である自然人又は法人︑販売権限を委託された顧客サーヴィスステーションをいう︒

レーマンの

BG B, KE

四三五条[物の瑕疵]

①物が引渡し時において合意された性質を有し︑又は︑本条二項に挙げる要件を充足するとき︑物に瑕疵はない︒

②別段の合意がない限り︑以下の各号の場合︑物に瑕疵はない︑

1物が契約により前提とされた使用又は通常の使用に適し︑又は通常の性質を有するとき

2買主が売主︑製造者︑流通経路の中間業者又は製造者の代理人の公の表示に基づき合理的に期待してよい性質を有すると

き ︒

ライヒは︑追完に関する

BGBIKE

四三八条の一項において消費者売買のみを対象とした

消費者商品の売買及び品質保証に関する

E u

(19)

第五0

( 1 3 7 )  

直ちに解除できる場合として本指令三条五項の内容を消費者商品売買に限って追加する︒

BG

B'

KE

[

]

①買主は︑物に瑕疵があるときは︑追完を請求することができる︒売主は︑その選択に従い︑瑕疵を除去し︑又は目的物が代

替物であるときは瑕疵のないものを引渡すことができる︒消費者商品売買契約において︑消費者は︑その選択に従い︑売主が

相当な期間内に︑かつ︑重大な不便を与えずに瑕疵を除去し︑又は瑕疵のない物を引渡すことを請求することができる︒

BG

B'

KE

[

]

レーマンは︑追完に関する

BG B' KE

四三八条の一項につき買主の追完請求権の内容︵修補請求又は代物請

求︶の意味を明らかにする共に︑過大な費用を要する場合につき売主の追完拒絶権を認める同条三項において︑新た

に過大な費用を要するケースに関してみなし規定を追加する︒これは︑本指令三条三項三文に相当する︒ただ︑本指

令はこれを買主が修理又は代物請求できない場合として定めるのに対し︑委員会草案は売主の追完拒絶権の例として

規定を設ける点に特色がある︒また修理又は代物請求ができない場合を定める本指令三条三項及び直ちに解除又は代

金減額請求できる場合を定める本指令=︳条五項を一括して追完請求できないみなし規定にまとめ︑解除に関する

B G

( 1 3 8 )  

BI KE

四三九条二項二文を設ける︒ 関法

(20)

消費者商品の売買及び品質保証に関する

E u

BG

BI

KE

四三八条[追完]

①物に瑕疵があるとき︑買主は︑修理又は瑕疵のない物の給付︵代物給付︶による追完を請求することができる︒

②買主によって請求された追完が不適切な出費によってのみ可能であるときは︑売主は︑その追完を拒絶することができる︒

瑕疵がなければ売買の目的物が有したであろう価値︑瑕疵の態様と重大性︑又は買主にとって著しい不便を生ぜしめることな

く他の追完方法を採用できるかどうかを考慮すれば︑当該追完を他の追完方法により売主に生じるであろう費用と比較して期

待し得ないとき︑買主によって請求された追完のための費用は︑不適切なものである︒

BG

B,

KE

四三九条[解除]

'

KE

の場合のほか︑追完が達成されなかったときには︑期間の定めを要しない︒買主により選択された追完

の方法が︑客観的又は主観的に不能であるとき︑売主により不当に拒絶されたとき︑買主に期待し得ないとき︑又は相当な期

間内にかつ買主に著しい不便ももたらさないにもかかわらず実現されなかったとき︑その追完は︑達成されない︒

既に述べたように︑

一 九

BG B̲ KE 四四二条は︑契約締結時における悪 意の買主にのみ瑕疵担保請求権を否定する︒レーマンはこれをそのまま維持する︒他方︑ライヒは︑本指令二条三項

( 1 3 9 )  

に従い次のように修正することを提案する︒

BG

B'

KE

四四二条B

]

瑕疵を理由とする買主の権利は︑買主が契約締結時にその瑕疵を知り︑又は⁝⁝ときは︑生じない︒

※﹁又は﹂の後に﹁合理的に知り得た﹂かそれとも﹁重大な過失により知り得なかった﹂を追加する︒

参照

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