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イ ギ リスの家 族 セ ンター に見 る 児童 虐 待 予 防 活 動

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イ ギ リスの家 族 セ ンター に見 る 児童 虐 待 予 防 活 動

副 田 あ けみ

〈 要 旨〉

本 稿 の 目的 は、 イ ギ リス に お け る 家族 セ ン ター の歴 史 的 変 遷 を概 観 して 、 そ の児 童 虐 待 防予 防活 動 の 目的 とあ り方 を確 認 し、 東 京都 の 子 ど も家庭 支援ニ セ ン タ ー に お け る予 防活 動 を考 え て い く際 の 示 唆 を得 る こ とで あ る 。 イ ギ リス で は 1989年 の児 童 法 の 影響 に よ り、 普 遍 的 サ ー ビス を提 供 して 家 族 機 能 の 強化 を図 る こ とを 目的 とす る民 間 の 開放 型 家 族 セ ン ター が 増加 した が 、 自治体 は 財 政 難 か ら虐 待 調 査 に力 点 を置 き、予 防 に つ い て は 選 別 的 サ ー ビス提 供 に よる 公 立 の 処 遇 型 家 族 セ ンタ ー を設 置 す る傾 向 が 強 か っ た 。1997年 に 誕 生 した ブ レア 政 権 の シ ュ ア ス タ ー ト子 ど もセ ン ター は 、 両 タイ プ の 連 結 を問 う ど ころ か 、 家 族 セ ン タ ー そ の もの の存 続 を危 う く して い る 。 しか し、保 育 と親 の 就 労 に よる 自立 支 援 を 中心 的 目的 とす る子 ど もセ ン ター で は 個 別 的 な 予 防 活 動 は不 可 能 で 、 連 結 に よ る統 合 家 族 セ ン ター の 試 み が 始 まっ て い る 。 た だ し、 そ の 方 策 は 特 に 目 新 しい もの で は な く、 東 京 都 の先 駆 型子 ど も家庭 支援 セ ン ター で も、 両 タイ プ のサ ー ビ ス連 結 の重 要 性 を認 識 した ス タ ッ フに よる新 しい サ ー ビス の創 出 や 支 援 が 行 わ れ る な らば、 「 統 合 的」 予 防 活 動 は可 能 と思 われ る。

〈 キ ー ワ ー ド 〉

家 族 セ ン タ ー 、 シ ュ ア ス タ ー ト子 ど も セ ン タ ー 、 児 童 虐 待 、 虐 待 予 防

は じめ に

2004年 の児 童 福 祉 法改 正 に よ り、 市 区 町村 は 、 児 童 虐 待 予 防 を中 心 とす る要

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保 護 児 童 対 策 を、 少 子 化 対 策 と して 始 ま った 子 育 て 支 援 対 策 と と も に実 施 す る こ と に な った 。 児 童 相 談 所 は児 童 保 護 に力 点 を置 き、 市 区町 村 は虐 待 予 防 に力 点 を置 い た支 援二 を行 って い くこ とに な る。

東 京 都 は、1996年 か ら市 町村 に子 ど も家 庭 支 援 セ ンター 事 業 の 実 施 を求 め て い る。 これ は、 子 育 て の不 安 や 悩 み を もつ 親 に子 育 て支 援 サ ー ビス(相 談 や 養 育 支 援 サ ー ビス)を 提 供 す る と と もに、 子 育 て に 関 わ る地 域 グ ルー プの 組 織 化 を図 る とい う 目的 を もった 事 業 で あ る。2005年 度 か らは、 こ の事 業 に先 駆 型 子 ど も家 庭 支 援 セ ンタ ーが 加 わ っ た。 こ の先 駆 型 セ ン ター は、 従 来 型 の セ ン ター よ りも、虐待 予 防 に力 点 を置 い た家 族 支 援 を行 っ て い くこ とが求 め られ て い る1。

で は、 どの よ うな家 族 支 援 を虐 待 予 防活 動 と して行 っ て い くこ とが 求 め られ る の だ ろ うか 。

本 稿 で は、 イ ギ リス の 家 族 セ ン ター の歴 史 的 変 遷 を押 さ え る こ と を通 して 、 児 童 虐 待 予 防活 動 の 官 的 とあ り方 を確 認 し、 わ が 国 の場 合 を考 え て い く示 唆 を 得 る こ と と した い。

1.家 族 セ ン タ ー の 展 開

イ ギ リス の家 族 セ ン ター の始 ま りは 、家 族 が慢 性 的 な 生 活 問題 に 陥 る前 に効 果 的 に サ ー ビス を探 せ る よ う支 援 して い く こ とを 目的 と して、1960年 代 に登 場 した 民 間 の家 族 ア ドバ イス セ ン ター と言 わ れ て い る。 この セ ン ター は、 住 宅 局 の サ ー ビス を活 用 す るな ど して 地域 改 善 な ど も手 が け て い た 。 つ ま り、始 ま り は 、 必 ず し も子 育 て 支援 を 目的 と した もの で は な く、 貧 困 地域 の家 族 が抱 え が ち な 生 活 問 題全 般 の 支援 を 目指 す もの で あ っ た 。70年 代 に な る と シー ボ ー ム改 革 に よ って 誕 生 した社 会 サ ー ビス 部 が 、 家 族福 祉 の 視 点 か ら こ う した活 動 を財 政 的 に後 押 しす る よ うに な っ た2。

そ う した なか で 、 民 間 の 児 童 養 護 施 設 が 、 児 童 虐待 や 非 行 防 止 の 観 点 か ら貧

困 地 域 の 子 ど も家庭 にサ ー ビス を提 供 す るた め 地 域 基 盤 の 施 設 に転 換 し、家 族

セ ン ター と な る例 が 出 て きた 。80年 代 に は、 社 会 サ ー ビス 部 が 公 立 児 童 養 護 施

設 を家 族 セ ン ター に転換 した り、 保 健 局 や 教 育 局 が 乳 幼 児 の 保 健 や 修 学前 児 童

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イギ リスの家族 セ ンターに見 る児童虐待予 防活 動

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教 育 の た め の 家 族 セ ンタ ー を設 置 す る こ と も見 られ た 。 こ う して、 児 童 虐 待 予 防 や 非 行 防止 、 乳 幼 児 の保 健 や 修 学 前 児 童 教 育 な ど、 児 童 の養 育 に 関 して家 族 支 援 を行 う家 族 セ ン タ ーが 増 え て くる。

70年 代 、80年 代 に は、 公 立 の セ ン ター も増 え た が 、全 体 と して は民 間 の もの が 多 く、 自治 体 は部 分 的 な財 政 支 援 を行 っ て い た 。民 間 の家 族 セ ン ター は 、 施 設 中心 の児 童 保 護 が 子 ど もに与 え る マ イ ナ ス の影 響 の懸 念 、 児童 虐 待 や家 庭 崩 壊 を引 き起 こす 地 域 環 境 へ の 関心 、 予 防 的機 能 と して の ソー シ ャル サ ポ ー ト ・

ネ ッ トワ ー クへ の期 待 、 な どか ら、広 い 意 味 で の虐 待 予 防 の 目的 を もつ傾 向 が 見 られ た3。

家 族 セ ン ター の こ う した傾 向 は、1989年 に成 立 した 児 童 法 に よっ て 強化 され る こ とに な る。 児 童 法 は、 親 子 分 離 を中心 と して い た従 来 の 児童 保 護 の傾 向 を 反 省 し、 家 族 支i援を充 実 させ る こ とに よっ て家 族 の 共 同性 と養 育力 を高 め 、 虐 待 を防 止 す る こ とを強 調 した 。 この 法 に よ り、 自治体 には 、 支援 が 必 要 な子 ど も(Childinneed:障 害 児 、慢 性 病 の児 童 、被 虐待 児、 ホ ー ム レス 状 態 の児 童 等) が 家 族 の な か で養 育 され る よ う支援 す る こ と、 普 通 の 子 ど もが 享 受 す るの にふ さ わ しい水 準 の養 育 を家 族 が提 供 で きる よ う支援 す る こ とが 義 務付 け られ る こ とに な った4。

自治体 が この家 族 支援 策 を実 施 す るの な ら、 既 存 の 家 族 セ ン ター に財 政 補 助

をす る か、 自前 で家 族 セ ン ター を開 設 す る こ と に な る。 自治体 の 多 くは 、 財 政

補 助 に は消 極 的 で あ っ た と言 わ れ て い るが 、 そ れ で も1996年 の 公 的 資 料 に よれ

ば、UK全 体 で650〜750程 度 の 家 族 セ ンター が あ り、 そ の う ち450程 度 は 地 方 自

治 体 か ら助 成 を受 け て い た5。1990年 の調 査 で は、 イ ン グ ラ ン ドとウエ ー ルズ で

確 認 され た 家 族 セ ン ター は350程 度 で あ っ たか ら6、90年 代 前 半 に家 族 セ ン タ ー

が か な り増 え て い る と推 測 で き る。 そ う した なか で 自治 体 に よ って は、 ハ イ リ

ス ク家 族 に対 象 を限 定 して 専 門 的 ・ 、 治 療 的 サ ー ビス を提 供 す る、 地 域 基 盤 で は

な い家 族 セ ン ター を 開設 す る と ころ が 出 て きた。

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2.家 族 セ ン タ ー の タ イ プ

増加 してき た家 族 セ ン ター に は 、 い くつ か の類 型 が 見 られ る7。家 族 セ ン ター につ い て 調 べ 、 質 問 紙調 査 も実 施 した(1998年)清 水 義 則 と、14の セ ン ター を 訪 問調 査(2004年)し た 金 子 恵 美 に よれ ば、 家 族 セ ン ター は大 別 す る と コ ミュ ニ テ ィ型 と治 療/送致 型 の2つ に な る8。

Pithouseら は、 これ を開放 型 家 族 セ ン ター とスペ シ ャ リス ト ・セ ンター と呼 ん で い る9。前 者 は、 地 域 の子 ど も家 庭 す べ て を対 象 と しで 家 庭 のQOLの 改 善 、 家 族 機 能 の 強化 、家 族 の孤 立 防 止 、 地域 の統 合/地 域 の絆 の 強化 を 日々 の活 動 の 目的 とす る もの で 、結 果 と して児 童 虐 待 が予 防 され る とい う方 針 を とる セ ン

ター、 後 者 は、 ハ イ リス ク事 例 を直 接 対 象 と し、 そ の 親子 の社 会 的 ス キ ル の 向 上 や家 族 機 能 の改 善 、家 族 関 係 の変 化 を 目的 とす る セ ン ター で あ る(図 表1)。

同 じよ う に虐待 予 防 を 目指 す 家族 セ ンタ ー と言 って も、 性 格 が 相 当異 な る。

図 表1家 族 セ ン ター の2つ の タ イ プ

開 放型 家族 セ ン ター

ス ペ シ ャ リ ス ト ・セ ン タ ー

対象 低所得者地域の子 ども家庭すべて

児 童 保護 の ソー シ ャル ワー クチ ー ムか ら送 致 され たハ イ リス クの 子 ど も家 庭 目的 子 ど も と家 族 のQOLの 改 善、家 族機 能 の強 化 、家庭

の孤 立 防 止、 地 域 の統 合馳 域 の 絆 の強 化 。法 的 介 入 に よる 児童 保 護 を予 防

ハ イ リス ク家 族 に対 す る処遇 を通 した 親 子 の社 会 的 スキ ル ・自尊心 の 向上 、 家 族 関係 の変 化、 家 族機 能 の改 善等

施設

相談 室 、交 流 スペ ー ス、 会議 室 、キ ッチ ン、洗 濯場

サ ー ビ ス

保育 、遊 び、お もち ゃ図書 館 、親 子 グ ルー プ、放 課後 ク ラス 、親 業 ク ラス、生活 技術 学 習 ク ラス 、妊 婦教 室 、 乳 児 保健 、親支 援 グ ルー プ、成入 教 育、 ドロ ップ イ ン、

ア ウ トリー チ

家 族療 法 、各 種 グル ー プワー ク、個 別 カウ ンセ リ ング等

ス タ ツ フ

リ ー ダ ー1人 、 フ ル タ イ ム 児 童 家 族 ワ ー カ ー2人 、パ ー ト タ イ ム 事 務1人 、パ ー ト タ イ ム プ ロ グ ラ ム ワ ー カ ー 数 名 、 ボ ラ ン テ ィ ア

リ ー ダ ー1人 、ソ ー シ ャ ル ワ ー カ ー7人 、 支 援 ス タ ッ フ3人(ワ ー カ ー1人 あ た

り2,3家 族 担 当)

Pithouse,ALindsell.S.,et.al.,FamilySupportAndFamilyCenterServices,Ashgate,pp .30‑33,63‑66,1998

を も と に 副 田 作 成

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イギ リスの家族 セ ンターに見 る児童虐待予 防活動

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(1)開 放 型家 族 セ ン タ ー(コ ミュ ニ テ ィ型)

Pithouseら は 、1990年 代 初 頭 に 開設 さ れ たサ ウス ウエ ー ルズ にあ る2つ の 開 放 型 家 族 セ ン ター を トラ イ ア ンギ ュ レー シ ョ ン法 に よっ て調 査 して い る 。 これ ら の セ ンタ ー は、 民 問 の児 童 養 護 機 関 に よっ て 運営 され て い る が、 自治体 が 一 部 財 政 補 助 を して い る。

セ ン ター の サ ー ビ ス ・プ ロ グ ラム は、 保 育 、 お もち ゃ 図書 館 、 親子 グ ル ー プ、

親 業 ク ラス 、 生 活 技 術 学 習 ク ラ ス 、放 課 後 ク ラス 、妊 婦 教 室 、乳 児 保 健 、成 人 教 育 、 ドロ ップ イ ン、 ア ウ トリー チ な どで あ る。

ス タ ッ フた ち は、 家 族 との パ ー トナ ー シ ップ をサ ー ビ ス提 供 理念 と して掲 げ、

サ ー ビス プ ロ グ ラ ム の活 動 内容 だ け で な く資金 獲 得 活 動 に も、利 用 者 や住 民 の 関与 を引 き出す よ うに して い る。 また 、彼 らは エ コロ ジ カ ル の視 点 、 ス トレ ン グス の 視 点 を重 視 して、 利 用 者へ のサ ー ビス を行 っ て い た。

利 用 者 の 大 半 は20,30歳 代 の 白人 女 性 で 、 未就 学 児 の母 親 、 一 人 親 家庭 が多 か っ た。 彼 らの なか に は 、 特 に な に か の サ ー ビス を利 用 して い る わ け で は な く、

ス タ ッフや 他 の人 々 との交 流 を楽 しむ 目的 だ け で ドロ ップ イ ンを訪 れ る 人 も少 な くなか っ た。 利 用 者 た ち は、 セ ン ター を 「 誰 で も行 け る場 」 と して ス テ ィグ マ を感 じず利 用 してお り、 もっ と も よい と感 じて い る点 は、 「ス タ ッフが フ レ ン ドリー で 支援二 的 で あ る」 点 、 問題 だ と して い るの は 、 「 年 長 の子 どもや 青 少 年 の た め の サ ー ビス ・資 源 が ない」 こ とや 週 末 閉 館 とい っ た点 で あ っ た。

ス タ ッ フた ち は、 セ ン ター を5年 間で 「 地域 にお け る予 防 的 資源 」 と して機 能 させ て きた と 自負 してい る。 家 庭 のQOLの 改 善 、 家 族 機 能 の 強化 、家 族 の孤 立 防 止 、 地 域 の統 合/地 域 絆 の 強化 に つ な が る支 援 を 日々実 践 で きて い る とい う 実 感 と、 利用 者 の満 足 度 の 高 さか ら、 こ う した 評価 を してい た 。

しか し、 調 査 者 た ち は、 利 用 者 の満 足 度 が高 い とい う こ とだ け で、 サ ー ビス が 適 切 で あ る とか効 果 的 とは言 えず 、 サ ー ビス の 費用 を正 当化 で きな い と批 判 す る。 正 当化 す る に は、 た とえ ば、 一 人 親 の職 業 訓 練 や地 域 の人 々 に よる セ ン

ター 運 営 の訓 練 、 子 ど もケ ア を ビジ ネ ス と して運 営 す る た め の訓 練 な どを実 施

し、 女 性 の雇 用 機 会 の促 進 、 地 域 開発 とい っ た成 果 を 出す 必 要 が あ る、 と指 摘

して い る。'

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1990年 以 降 の コ ミュニ テ ィ ケ ア改 革 は、 社 会 ケ ア にお け る準 市 場 メ カニ ズ ム を浸 透 させ 、 地 方 自治 体 が 各 事 業 の 業 績 、 成 果 を評 価 す る よ う求 め た 。 こ う し た なか で 、 成 果 や 効 果 が 数 値 で 表 現 で き る よ う な事 業 の 展 開 、 特 に、 風 当 た り の 強 い 一 人 親 の 経 済 的 自立 を促 す 就 労 支 援 の 事 業 を行 う こ とで 、 補 助 金 獲 得 を 図 って い か なけ れ ば 、 成 果 を数 値 で 表 す こ とが 困 難 な子 育 て 支 援 の た め の 諸 サ ー ビス の実 施 も むず か し くな る 。 こ う した判 断 ゆ えの 指摘 と考 え られ る。

な お 、 彼 らは 、 男 性 ス タ ッ フ も男 性 利 用 者 も少 な く、 セ ン ター 自体 が ジ ェ ン ダー バ イア ス を もた ら して い る、 地 域 で 孤 立 して い る よ り支 援 が 必 要 な子 ど も 家庭 に手 が 届 い て い な い お そ れが あ る、 とい っ た点 も課 題 と して指 摘 して い る。

(2)ス ペ シ ャ リ ス ト ・セ ン タ ー(処 遇/送 致 型)

Pithouseら が1992‑94年 に ア ク シ ョ ン リ サ ー チ 法 で 調 査 し た 、 サ ウ ス ウ ェ ー ル ズ の あ る カ ウ ン テ ィ に あ る ス ペ シ ャ リ ス ト ・セ ン タ ー も 、 全 国 規 模 の 児 童 養 護 機 関 が 運 営 し て い る セ ン タ ー で あ る 。 た だ し、 費 用 の 大 部 分 を 自 治 体 が 出 し て い る 。 こ の カ ウ ン テ ィ に は 低 所 得 者 層 の 多 い 地 域 を 支 援 す る た め の 開 放 型 セ ン タ ー が5つ あ る が 、 ス ペ シ ャ リ ス ト ・セ ン タ ー、 は1つ で カ ウ ン テ ィ 全 体 を 対 象 エ リ ア と し て い る 。

児 童 保 護 の ソ ー シ ャ ル ワ ー ク チ ー ム か ら 送 致 さ れ 、 こ の セ ン タ ー で サ ー ビ ス を 受 け た 家 族 と 、 児 童 保 護 の ソ ー シ ャ ル ワ ー カ ー の 訪 問 指 導 サ ー ビ ス を 受 け た だ け の 家 族 を10例 ず つ 取 り上 げ 、2年 間 の 変 化 を調 べ たPithouseら 調 査 研 究 に よ れ ば 、 前 者 の 家 族 で は 、 親 の 自 己 イ メ ー ジ 、 対 処 能 力 、 対 人 関 係 に 関 す る 認 知 な ど で 明 ら か な 改 善 傾 向 が 見 ら れ た 。 ま た 、 児 童 保 護 登 録 の 解 除 や 分 離 命 令 の 減 少 と い っ た 点 で も 明 確 な 成 果 が あ っ た 。 こ の 結 果 を 踏 ま え て 、 調 査 者 は 、 こ の タ イ プ の セ ン タ ー が 重 要 な 家 族 支 援 を 行 っ て い る と 評 価 し て い る 。

た だ し 、 こ ち ら の タ イ プ の セ ン タ ー に も 課 題 が あ る 。 第 一 の 課 題 は 、 開 放 型

セ ン タ ー と の 連 携 が ほ と ん ど な い 点 で あ る 。 ス ペ シ ャ リ ス ト ・セ ン タ ー の サ ー

ビ ス は 選 択 的 サ ー ビ ス で あ る だ け に 、 そ の 利 用 者 に つ い て ス テ ィ グ マ が 付 与 さ

れ や す い 。 そ れ を 避 け る た め に も 、 ま た 、 児 童 虐 待 の 早 期 発 見 ・早 期 対 応 や 早

期 の 家 庭 復 帰 ・家 族 再 統 合 を 促 進 し 、 コ ミ ュ ニ テ ィ ケ ア 改 革 を 進 め る 保 守 政 権

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イギ リ ス の家 族 セ ン ター に見 る児 童 虐 待 予 防 活 動 129

が 求 め た コ ス ト削 減 に つ な げ て い くた め に も、 こ の2つ の 型 の セ ン タ ー を ど の よ う に 連 結 さ せ る か が 課 題 で あ る とPithouseら は 指 摘 し て い る 。

た だ し 、 自 治 体 の 児 童 保 護 ワ ー カ ー た ち は 自 分 た ち の 保 護 役 割 に 固 執 し 、 民 間 の 家 族 セ ン タ ー と は 連 携 し よ う と し な い 傾 向 が あ る と い う 指 摘 も あ る か ら10、

こ の 問 題 の 改 善 は 容 易 な こ と で は な い よ う に 見 え る 。 い ず れ に せ よ 、Pithouseら は2つ の タ イ プ の セ ン タ ー の 目 的 も存 在 意 義 も 認 め て い る 。 認 め る か ら こ そ 、 と

も に 存 続 し て い く た め に は 、 そ れ ぞ れ の 課 題 を 改 善 し て い か な け れ ば な ら な い と し て い る 。

(3)開 放 型 か らス ペ シ ャ リス ト型 へ

開放 型 セ ン ター は 、利 用 者 の 選 択 に よっ て 利 用 され る ス テ ィグ マ の な い サ ー ビ ス ・プ ロ グ ラ ムで あ り、 利 用 者 の 評 価 も高 い11。セ ン タ ー で行 わ れ る 親 業 な ど個 別 の グ ル ー プ ワ ー ク に つ い て は 肯 定 的 な成 果 も出 て い る12。 そ れ に もか か わ らず 、先 に見 た よ うな 課 題 が 指摘 され る 背 景 に は 、1990年 代 の福 祉 政 策 にお け る マ ネ ジ ャ リズ ム の浸 透 が あ る。 競 争 主 義 的 な福 祉 環 境 にお い て は 、 子 ど も 家 庭 の孤 立 防止 や家 族 機 能 ・QOLの 向 上 、 地 域 絆 の 強 化 とい った 、 成 果 が 測 定 困難 な予 防 福 祉 の 目的 を掲 げ る開 放 型 セ ン ター は不 利 で あ る。

イ ギ リス で は、 「 市 民 資 金」 か らの助 成 金 に よ り種 々 のNPOや 地域 組 織 が 活 動 して い る か ら、 こ う した タイ プ の セ ン ター は そ こか らの 助 成 金 を確 保 す る こ と も考 え られ る13。だ が 、1990年 のNHSと コ ミュ ニ テ ィ ケ ア法 に よ り、社 会 サ ー ビス に契 約 文 化 が取 り入 れ られ た 結 果 、 ボ ラ ン タ リー な組 織 や独 立 型 組 織 は、

自治体 との 契 約 に よる サ ー ビス 提 供 の 傾 向 を強 め 、 自主 財 源 確 保 力 が 落 ち て き た、 とい う現 状 にあ る14。

生活 保 護 受 給 率 の 高 い 地 域 にあ る開 放 型 の セ ン ター で は 、 各種 の 公 的 サ ー ビ ス の 受 給 相 談 も重 要 な 機 能 で あ る。 また 、 利 用 者 が 運営 に参 加 す る ドロ ッ プ イ ンや ボ ラ ンテ ィア に よる グ ル ー プ活 動 の 運 営 に象 徴 され る よ う に、 この 型 の セ ン ダー は 地域 に お け る 相 互 支 援 の ネ ッ トワー クづ く りを 目的 の1つ と して お り、

個 人責 任 を強 調 す る 政 府 の 新 自由 主 義 の 言 説 に挑 戦 す る とい う意 義 を担 って い

る 。 しか し、 社 会 サ ー ビス 部 にお け る購 入 者/提供 者 分離 シス テ ム の導 入 は、 地

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域 資 源 を活 か した相 互 支 援 ネ ッ トワ ー ク の形 成 と い う 「ジ ェ ネ リ シズ ム ソ ー シ ャ ル ワ ー ク を解 体 」 させ 、 開放 型 家 族 セ ンタ ーが 担 っ て い る地 域 にお け る予 防 的 ケ アへ の 自治 体 の 関 心 を弱 め て しま っ た15。 そ して 、財 政 難 は 、 少 なか らぬ 自治 体 を、 開放 型 セ ンタ ーへ の財 政 支 援 よ り も、47条 に よ る虐 待 調 査 とスペ シ ャ リス ト型 セ ン ター 開設 に指 向 させ る こ と にな っ た16。

つ ま り、 地 域 に住 む家 族 のQOLの 向 上 、 家 族 機 能 の 改 善 、 地域 統 合 力 の 強化 とい っ た 目的 を掲 げ 、 地域 に住 む子 ど も家庭 すべ て を対 象 とす る多 様 な プ ロ グ ラ ム を通 し た虐 待 予 防 活 動 、 言 い換 え る と予 防 的 ケ ア を行 う家 族 セ ン ター は 、 そ の存 続 が 厳 しい状 況 に な って きた 。

3.児 童 福 祉 か ら家 族 政 策へ

1997年 、 ブ レ ア政 権 の 誕 生 は、 家 族 セ ン ター に さ ら に打 撃 を与 えた 。 ブ レア 政 権 は 、 貧 困 と社 会 的 排 除 を重 要 な政 策 課 題 と し、1999年 か ら シ ュ アス ター ト 事 業 をス ター トさせ た 。 この プ ロ グ ラ ム は、 恵 まれ ない 地 域 に国 が 資 金 を拠 出

して 保 育 環 境 を整 備 し、 乳 幼 児 期 か ら保 育 ・教 育 を受 け る こ とで 人 生 の 確 実 な ス タ ー トが で き る よ う保 障 す る も ので あ る。 同時 に、 親 の就 労 に よ る 自立 促 進 を 目指 して い る。 ア ー リ ーエ ク セ レ ンス ・セ ンタ ー、 ネ イバ ー フ ッ ドナー サ リ ー、拡大学校、 な どが これに含 まれる。 これ らの多 くは、学校 の敷地 内や 隣接 した場 所 に整備 され、 保 育 や幼 児教 育 の ほか に、 相談 事 業 、 母子 保 健 、親へ の教 育 プ ロ グ ラム 、 雇 用 支援 等 の家 族 支 援 サ ー ビ ス を提 供 す る17。

保 守 党政 権 は 、基 本 的 に子 育 て は家 族 責 任 と認識 し、母 親 の就 労 促 進 サ ー ビ ス で あ る保 育 施 策 は きわ め て不 十分 に しか 実 施 しな か っ た 。 そ れ ゆ え、 子 育 て を私 的責 任 で あ る と と もに 公 的 責任 で あ る と し、低 所 得 層 中 心 で は あ る が保 育 施 策 を充 実 させ る と した ブ レア 政権 は ラデ ィ カ ル な転 換 を 図 っ た こ とに な る。

しか し、 こ う した 保 育 ・教 育 を重 視 す る政 策 へ の 転換 に よ り、福 祉 予 算 は 削 減

され 、 大 半 の 自治 体 が 開 放 型 家 族 セ ン ター へ の 財 政 的 支 出 を終 わ らせ る こ とに

な っ た 。 そ れ らは 、2003年 か ら導 入 され た シ ュ アス ター ト ・子 ど もセ ン ター に

転換 した とこ ろ もあ るが 、全 体 と して は衰 退 してい くと考 え られて い る18。

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イ ギ リス の 家 族 セ ン ター に見 る児 童 虐 待 予 防 活 動 131

シ ュ アス タ ー ト ・子 ど もセ ン ター は、 そ れ まで の シュ ア ス ター トプ ロ グ ラム を発 展 させ た もの で 、 新 規 事 業 とい う よ りア ー リー エ ク セ レ ンス ・セ ン ター な ど従 来 の 施 設 を転換 し名称 変 更 した もの で あ る19。5歳 未 満 児 とそ の 家族 の た め に包 括 的 なサ ー ビス と情 報 の提 供 を 目的 と して い る。 保 育 、 幼 児 教 育 、 家 庭 支 援 お よ び保 健 医 療 サ ー ビス を提 供 し、 地 域 の ジ ョ ッブ セ ン ター プ ラ ス(公 共 職 業 安 定 機 関)と 連 携 して 事 業 を行 う。 す べ て の子 ど もセ ン ター に お け る保 育 プ ロ グ ラム は、 就 労 また は訓 練 を受 け て い る親 の ニ ー ズ を満 たす よ う、 少 な く と も1日10時 間 、 週5日 間、 年48週 オ ー プ ンす る こ とに な っ て い る。 当初 は貧 困地 区 に 重 点 的 に設 置 され た が 、 今 後 全 国す べ て の コ ミュ ニ テ ィ に展 開 さ れ る こ と に な っ て い る。

シ ュ ア ス ター トは 、 本 来 、社 会 的排 除 対 策 の一 環 と して 実 施 され、5歳 未 満 児 を抱 え る 貧 困 家庭 を援 助 し、 家 族 と コ ミュニ テ ィ の機 能 を強 化 しよ う とす る も の で あ る20。言 葉 の 教 室 、 乳 幼 児 グ ル ー プ、 母 親 支 援 グ ル ー プ 、 お もち ゃ図 書 館 、 ドロ ップ イ ンな ど種 々の サ ー ビス が 提 供 され て い るが 、 中 心 と な るサ ー ビ ス は保 育 で あ る。保 育 サ ー ビ ス は母 親 の 職業 訓 練 と就 労 を促 進す る ため で あ り、

ジ ョ ッブ セ ン ター プ ラス との 連 携 はそ の た め で あ る。 シ ュ アス ター トは、 児 童 虐 待 予 防(児 童 保 護登 録 に1年 以 内 に再 登 録 され る子 ど もの比 率 を 引 き下 げ る) もそ の達 成 目標 の1つ と して い る が21、母 親 の 職 業 訓練 や就 労 を通 した 貧 困 か ら の脱 却 が 、 結 果 的 に虐 待 予 防 につ なが る とい う前 提 に立 っ て い る。

シ ュ ア ス ター ト ・子 ど もセ ン ター は 、 対 象 や サ ー ビス ・プ ロ グ ラム につ い て

は かつ て の 開放 型 家 族 セ ン ター と共 通 点 が 多 い が 、 論 じられ る文 脈 が 異 な って

い る。 開放 型 家 族 セ ン ター の 目的 や 成 果 、 課 題 が 論 じ られ た の は 、 また 、 開 放

型 家 族 セ ンタ ー とス ペ シ ャ リス トセ ン ター の 連 結 が 課 題 だ と され た の は 、 児 童

虐 待 予 防 と して の家 族 支援 とい う児 童福 祉 の 文 脈 で あ っ た 。 これ に 対 し、 シュ

アス タ ー ト ・子 ど もセ ン ター は 、福 祉 国 家 か ら社 会投 資 国 家 へ とい うブ レァ 政

権 の福 祉 国家 再 編 に お け る家 族 政 策(家 族 、特 に 母 親 は 保 育 ・家族 支援 サ ー ビ

ス を利 用 しなが ら子 育 て の私 的責 任 を 果 た す と と もに 、 労 働 能力 を 身 に着 け て

就 労 し家 族 が 貧 困 に 陥 らず 自立 した 生活 を 営 む 。 国 は子 育 て の 公 的 責任 と して

そ れ らのサ ー ビス を保 障す る)の 文脈 に あ る 。 この 文脈 の な か に 、 開放 型 家 族

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132 人 文学 報No.409(社 会 福 祉 学25)2009.3

セ ン タ ー は 埋 没 し て し ま う お そ れ が あ る 。

実 際 、 子 ど も セ ン タ ー の ス タ ッ フ は 、 子 ど も の 教 育 や 親 の 労 働 能 力 向 上 に よ り 関 心 を もつ よ う求 め ら れ 、 複 合 的 な ニ ー ズ を も ち 孤 立 し て い る 家 族 や 公 的 機 関 に 対 し て 拒 否 感 を も つ 家 族 な どへ の 個 別 的 な 支 援 ア プ ロ ー チ が と り に く く な っ て い る 。 自 治 体 か ら の 財 政 支 援 を 失 っ た 伝 統 的 な 開 放 型 家 族 セ ン タ ー が 、 子 ど も セ ン タ ー に転 換 し な くて も 、 そ の 財 源 を社 会 的 包 摂 策 の 一 環 と し て の 「 子 ど も 基 金 」 に 求 め る よ う に な れ ば 、 子 ど も セ ン タ ー の 支 援 ス タ イ ル に 合 わ せ る よ う 求 め られ る 可 能 性 は 高 い22。

し か し 、 保 育 ・教 育 と 親 教 育 、 雇 用 促 進 に 重 点 を 置 く ブ レ ア 政 権 も 、 関 係 機 関 の 協 働 体 制 の 拙 さ か ら 起 き た 児 童 保 護 の 悲 劇(ク ラ ン ビ エ 事 件)に 対 す る 政 治 的 圧 力 に 応 え ざ る を 得 ず 、 緑 書 『児 童 に 関 す る す べ て の こ と(Everychild matters)』(2003年)を 公 表 す る こ と に な っ た 。 そ こ で は 、 予 防 の 視 点 と 早 期 介 入 を 児 童 福 祉 政 策 の 中 心 課 題 と し、 ホ リ ス テ ッ ク な 視 点 に よ る 普 遍 的 サ ー ビ ス と対 象 を 絞 っ た サ ー ビ ス と の 統 合 的 提 供 、 お よ び 機 関 間 協 働 の 重 要 性 を 指 摘 し て い る 。 ま た 、 翌 年 に は 『子 育 て 支 援10ヵ 年 計 画(Choiceforparents,thebest startforchildren)』 を 発 表 して い る 。 こ れ に よ り、 児 童 サ ー ビス 提 供 体 制 の 抜 本

的 見 直 し を 内 容 と す る 法 改 正 、 児 童 関 連 行 政 機 関 の 統 合 や 各 種 サ ー ビ ス の 統 合 化 な どが 実 施 さ れ る こ と に な っ た23。

4.統 合 家 族 支 援 セ ン ター

家 族 政 策 と して の 保 育 ・教 育 と成 人 教 育 、 就 労 支i援とい った 普 遍 的 な サ ー ビ ス を、 経 済 的 社 会 的 に恵 まれ ない 地 域 で 手 厚 く提 供 して い くこ と は、 虐 待 の 一 次 予 防 の 機 能 を果 た す 。 だが 、 複 合 的 ニ ー ズ を もつ 家 庭 や ハ イ リス クの 家 庭 に は、 普 遍 的 な サ ー ビス と選別 的 なサ ー ビス をニ ー ズ に合 わ せ て個 別 的 に調整 し、

統 合 的 に提 供 してい くこ とで、 予 防 ・再 発 予 防 を 図 っ てい くこ とが 必 要 とな る。

緑 書 は、 こ う した統 合 的 な児 童 福 祉 政 策 の必 要 性 を改 め て確 認 した とい って よ いo

こ う した動 きの な か で、 学 校 基 盤 や 地 域 基 盤 の統 合 的 な プ ロ グ ラ ム に よ る家

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イ ギ リス の 家 族 セ ン ター に見 る児 童 虐 待 予 防 活 動 133

族 支援 の あ り方 や 家 族 支援 評 価 方 法 の 検 討 とい っ た研 究 が 進 め られつ つ あ る24。

また 、 開 放 型 セ ン ター のサ ー ビス とス ペ シ ャ リス ト型 セ ンタ ー を連 結 し、 サ ー ビス を統 合 的 に提 供 す る よ うな統 合 的 家 族 セ ンタ ー の試 み も紹 介 さ れ てい る25。

この セ ン ター は 、 都 市 部 の 衰 退 した 地 域 に あ る学 校 を改 装 して 自治 体 が 作 り 運 営 して い る セ ン タ ー で あ る 。 対 象 はサ ー ビス ・プ ロ グ ラ ム に よ って 異 な る 。 地域 の す べ て の 子 ど も家 庭 が 希 望 に応 じて 参 加 で きるサ ー ビス も多 数 の 種 類 が 用 意 され て い るが 、 そ れ 以 外 に、 衣 食 住 の 生 活 ニ ーズ を もつ 親 や 貧 困 か ら抜 け 出 す 方 法 を見 出 そ う と して い る親 、 児 童 保 護 登 録 と な り養 育 能 力 向 上 を 目指 さ な け れ ば な ら ない 親 た ち を主 な対 象 とす るサ ー ビス の種 類 も多 い(図 表2参 照)。

セ ン ター の 目的 は 、 多 様 な プ ロ グ ラム を介 して 、 親 た ちの あ い だ につ なが り や相 互 支 援 を作 り出 して い くこ とで あ る。 ス タ ッ フが ス トレ ング ス の 視 点 に立 ち、 予 防 と早 期 介 入 を 原則 と して 、 子 ど もや 親 に 多 様 な 活 動へ の 参 加 を促 して い く。 た と えば 、PTSDや うつ な どの メ ン タル ヘ ルス 問題 を抱 え て い る こ との 多 いハ イ リス ク家 庭 の 親 に は 、保 育 サ ー ビス を提 供 しな が ら、 臨床 訓 練 を受 け た ス タ ッフが 発 達 的視 点 に も とつ い て カ ウ ンセ リ ング を行 う、 そ して 、 受 容 的 な

FGC=FamilyGroupConferencing

図 表2統 合 的 家 族 セ ン タ ー イ ギ リ ス に お け る1つ の 事 例 出 典:Warren‑Adamnson,C.andLighburn,A.(2006)p.265

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134 人文 学 報No.409(社 会 福 祉 学25)2009.3

関 係 を生 み 出 してい る活 動 グ ル ー プへ の参 加 や 、 当 人 が 関心 の もて る活 動 へ の 参 加 を促 して い く。

この セ ン ター ・モ デ ル を推 奨 す るWarren‐Adamsに よれ ば 、 グ ル ー プ活 動 に お け る参 加 者 同士 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンや 共 同活 動 は、 親 た ち に息 抜 きや 楽 し み を提 供 す るだ けで な く、 親 た ち の社 会 的 ス キ ル を発 達 させ 、 つ なが りや 相 互 支 援 を可 能 にす る、 そ して、 い くつ か の プ ロ グ ラ ム で生 まれ た 相 互 支 援 が 「 組 織 化 され た ケ ア の シス テ ム」 と して人 々 に 自信 や 効 用 感 を生 み 、 人 々の ラ イ フ ス タイ ル を変 え てい くとい う 「シナ ジー(相 乗 効 果)」 を も た らす26。

こ れ は 、 一 定 の 手 続 き を も と に し た 調 査 研 究 の 結 果 で は な く、Warren‑

Adamsに よる、 あ る1つ の統 合 家 族 セ ン ター に か んす る感 想 で あ る。 しか し、 保 育 と親 の就 労 に力 点 を置 く子 ど もセ ン タ ー が 全 国 に多 数 作 られ て い く過 程 で 、

こ う した 統 合 家 族 セ ン ター が 創 出 さ れ た こ とは、 児 童 福 祉 、 家 族 福 祉 の 観 点 か ら、 選 択 的 サ ー ビス と普 遍 的 サ ー ビス の連 結 に よ る個 別 的 な家 族 支 援 とい う予 防 活 動 が 不 可 欠 で あ る とい う認 識 が 、 関係 者 の あ い だ に根 強 くあ る こ と を示 唆

して い る の で は ない か 。

お わ りに

イギ リス の家 族 セ ンター の変 遷 を概 観 す る こ とで 、 児 童 保 護 の 活 動 と児 童 虐 待 予 防 活 動 とが う ま く連 結 され て い ない だ けで な く、 虐 待 予 防 活 動 の なか で も ハ イ リス ク家 庭 へ の 選 択 的 な治 療 的 支 援 活 動 と、 一 般 家 庭 を対 象 と した ス テ ィ グマ の ない 普 遍 的 な子 育 て 支 援 と して の家 族 支 援 活 動 が バ ラバ ラ に実 施 され て きた こ と も理 解 で きた 。 そ れ で も なお 、 これ らを連 結 させ 統 合 的 に実 施 す る こ とが 、 ス テ ィグマ を排 し、 「シナ ジ ー効 果 」 を生 み 出 す と して期待 され てい る こ と もわ か っ た。

分 断 して 行 わ れ て い るサ ー ビス ・プ ロ グ ラム をつ ない で い く例 は、 統 合 家 族

セ ン ター の 紹 介 文 書 の なか にい くつ か 見 る こ とが で きた 。 選 択 的 サ ー ビス を普

遍 的 サ ー ビス を提 供 して い るセ ン ター にお い て 提 供 す る、 選 択 的 サ ー ビス を受

け るべ き人 に普 遍 的 サ ー ビス を利 用 して も らい なが ら選 択 的 サ ー ビス を実 施 す

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イギ リスの家族 センターに見る児童虐待予防活動

135

る、 場 に慣 れ た り、 他 の プ ロ グ ラ ムへ の 関心 が で て きた ら参 加 す る プ ロ グ ラ ム を増 や す 。 逆 に、 普 遍 的 サ ー ビス を利 用 して い る人 の なか に、 選 択 的 サ ー ビス を受 け る こ とが 望 ま しい 人 が い る こ と に早 期 に気 づ き、 普 遍 的 サ ー ビス を利 用 しつ つ選 択 的 サ ー ビス ・プ ロ グ ラム へ の導 入 を 図 って い く。

こ う した こ と を実 施 す る には 、 多 数 の 多 様 なサ ー ビス ・プ ログ ラム を用 意 す る こ とが 必 要 で あ る 。 また 、 こ う した プ ロ グ ラム を実 施 す る実 務 家 の 感 度 とス キ ル が重 要 に な っ て くる 。 普 遍 的 サ ー ビス ・プ ログ ラム の 企 画 や 準 備 につ い て は、 地域 の 人 々 や プ ロ グ ラム 利 用 者 の 関 与 を引 き出 して し、 そ れ をオ ー ガ ナ イ ズ して く能 力 も必 要 であ る。

東 京 都 の先 駆 型 子 ど も家 庭 支援 セ ン ター は 、 相 談 サ ー ビス や 交流 事 業 、 一 時 保 育 、 トワ イ ラ イ ト、 シ ョー トス テ ィな どの 普 遍 的 サ ー ビス と、虐 待 予 防 支援 訪 問事 業 や育 児 支 援 ヘ ルパ ー事 業 、見 守 りサ ポ ー ト事 業 な どの 選択 的 サ ー ビス と を 自前 で、 あ る い は、 委 託 で もっ て い る 。 また 、虐 待 の悩 み を もつ母 親 た ち の ク ロ ー ズ ドグ ル ー プ な どの サ ー ビス を作 りだ す こ と もで きる。 交 流 事 業 と し て の子 育 て広 場 も、 多 様 な活 動 プ ロ グ ラ ム の創 出 の場 と して考 え られ る。 統 合 家 族 セ ン タ ー の よ う な多 種 多 様 な サ ー ビ ス ・プ ロ グ ラ ム の準 備 は 困難 で あ ろ う が 、 ス タ ッフ の敏 感 性 や ス キ ル、 専 門 的知 識 な どに よ り、 子 ど も家 庭 支 援 セ ン ター で 「 統 合 的 な」 児 童 虐待予 防活 動 を実現 して い く可 能性 は あ る と思 わ れ る。

(注) 1http:〃www.metro.tokyo.jp/INET/KEIKAKU12005104170f4q131.htm

2Batchlor,J.,GouldN.et.al.,Familycenters:afocusforthechildreninneeddebate.,Childand FamlySocialWork,1999,4,p.199

3Gordon,」 Anecologicalapproachtosocialworkwithchildrenandfamilies ,ChildandFamily SocialWork,1997

4田 邊 泰 美 『イ ギ リ ス の 児 童 虐 待 予 防 と ソ ー シ ャ ル ワ ー ク 』明 石 書 店 、2006年 、pp.198‑

205

5Pithouse,ALindsell.S.,et.al.,FamilySupportAndFamilyCenterServices

,Ashgate.1998, p.40

6Warren‑Adamson,C.,ResearchReview:Familycenters;areviewoftheliterature,Child&

FamilySocialWork,Volll,2006,p.173

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136 人 文 学 報No.409(社 会 福 祉 学25)2009.3

7小 地 域 モ デ ル 、 社 会 改 善 モ デ ル1エ ン パ ワ メ ン ト ・ モ デ ル 、 児 童 保 護 モ デ ル 等 。 Pithouse,opcit.pp.30‑51

8清 水 義 則 「地 域 に お け る 子 育 て 支 援 の あ り 方 一 英 国 の フ ァ ミ リ ィ セ ン タ ー を 例 と し て 一 」 社 会 福 祉 学 第39‑1、1998年 。 金 子 恵 美 「地 域 に お け る 子 ど も 家 庭 福 祉 の 展 開 に 関 す る 研 究 イ ン グ ラ ン ド に お け る グ レ イ ゾ ー ン へ の フ ァ ミ リ ィ サ ポ ー ト ー 」 日 本 社 会 事 業 大 学 研 究 紀 要51号

9以 下 の2つ の 事 例 調 査 は 、Pithouse,opcit.,pp.30‑80を ま と め た も の で あ る 。 10Gordon,」,op.cit.,pp.110‑116

111994年 、 監 査 当 局 は 家 族 セ ン タ ー に 対 し 、 オ ー プ ン ア ク セ ス に よ り 脱 ス テ ィ グ マ 化 を 促 進 す る よ う 指 示 し て い る 。Batchelor,J.,GouldN,et.al,op.cit.p.199

12Bell,M.,Community‑basedparentingprograms:anexplorationoftheinterplaybetweenenvi‑

ronmentalandorganizationalfactorsinaWebsterStrattonproject ,BritishJournalofSocial Work200737,p.57

13イ ギ リ ス の 「市 民 資 金 」 に つ い て は 、 加 藤 春 恵 子 『福 祉 市 民 社 会 を 創 る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン か ら コ ミ ュ ニ テ ィ ヘ ー 』 新 曜 社 、2004年

14Lloyd,E.,Theroleofthecenterinfamilysupport,InCrescyCannanandChrisWarreneds ., SocialActionwithChildrenandFamilies;Acommunitydevelopmentapproachtochild

andFamilywelfare,Routledge,1997,p.146 15田 邊 泰 美 、 前 掲 書 、p.253

16Waren‑Adamson,C.,ResearchReview:Familycenters;areviewoftheliterature ,Child&

FamilySocialWork,2006Volll

17伊 藤 善 典 『ブ レ ア 政 権 の 医 療 福 祉 改 革 市 場 機 能 の 活 用 と 社 会 的 排 除 へ の 取 り 組 み 一 一』 ミ ネ ル ヴ ァ 書 房 、2006年 、pp.183‑197

18Waren‑Adamson,op.cit.,pl78

19岩 間 大 和 子 「英 国 ブ レ ア 政 権 の 保 育 政 策 の 展 開 一 統 合 化 、 普 遍 化 、 質 の 確 保 へ 一 一 」 レ フ ァ レ ン ス 、2006‑4p.17

20山 本 隆 「ブ レ ア 政 権 下 の イ ギ リ ス 福 祉 行 財 政 一 一 地 方 ガ バ ナ ン ス の 可 能 性 を 求 め て

」 立 命 館 大 学 産 業 社 会 論 集38‑4、p.13 21山 本 隆 、 前 掲 論 文p.13

22Featherstone.,op.cit.,pp.7‑12 23伊 藤 、 前 掲 書 、p.200

24Dolan,P.,Canvan,」.andPinkerton,」.eds.,FamilySupportasReflectivePractice

,Jessica KingsleyPublisher,2006,p.15

25Warren‑Adamson,C.andLightburnA.DevelopingaCommunity‑BasedModelfor

IntegratedFamilyCenterPractice,inLightburnA.andSessionsP.eds.,Handbookofcom一

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イギ リスの家族 セ ンター に見 る児童虐待 予防活動

137

munity‐basedclinicalpractice,OxfordUniversityPress,2006 ,pp.262‑271

26Warren‑Adamson,C.ibid .,pp.262‑271

参照

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