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金融政策の国際的波及効果 : 3国間の独占的競争モ デルによる分析

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(1)

金融政策の国際的波及効果 : 3国間の独占的競争モ デルによる分析

著者 上ノ山 賢一

雑誌名 經濟學論叢

巻 61

号 2

ページ 393‑415

発行年 2009‑10‑20

権利 同志社大學經濟學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000012502

(2)

【研究ノート】

金融政策の国際的波及効果

― 3 国間の独占的競争モデルによる分析―

上 ノ 山 賢 一  

1 は じ め に

 独占的競争モデルを用いた国際マクロモデルの代表的な先行研究とし て,Obstfeld and Rogoff (1995, 1996)による研究(以下O-Rモデル)が挙げられ る.O-Rモデルは,ミクロ的基礎を持ち,経済厚生の観点から政策の効果の 分析が可能であることから,「新しい開放マクロ経済学」(New Open Economy

Macroeconomics)として,多くの金融政策の波及効果の分析に関する研究の基

礎とされている.

 金融政策の波及効果に関する分析におけるO-Rモデルの拡張の1つに,国 内財間の財の代替の弾力性と国内財と国外財の間での代替の弾力性を異なる ものとして設定するアプローチがある.その代表的なモデルとして,Tille (1999) が挙げられる.Tille (1999)は,O-Rモデルにおける自国財と外国財の間の代 替の弾力性が同一であるという仮定を緩め,弾力性が各国財の間で異なるケー スについて,金融政策の国際的波及効果の分析を行った.自国財と外国財間 における代替の弾力性が,自国財間の代替の弾力性よりも大きい場合,自国 の金融緩和による自国通貨安を通じて,外国財の需要は自国財需要へと大き

* 本稿の作成に際し,指導教官である篠原総一先生から貴重なコメントを頂きました.さらに 五百旗頭真吾先生(同志社大学)からもアドバイスを頂きました.また日本金融学会の学会報 告において,道和考治朗先生(京都学園大学)から有益なコメントとご指摘を頂きました.こ こに感謝申し上げます.但し,本稿の残りうる一切の誤りは全て筆者の責任に帰するものです.

(3)

くシフトすることになる.その結果,ある国の金融緩和は,需要シフトを通 じて外国の実質所得を減少させ,外国の経済厚生を下げる可能性があるとい うことが示されている.さらにCorsetti et al. (2000)は,Tille (1999)の議論を3 国間に拡張し,各国の金融政策の2国間における需要シフトの効果だけでな く,第3国における需要シフトへの影響を検討している.3国の財の間にお いて異なる財の代替の弾力性を導入することにより,自国財間の弾力性が自 国財と外国財間での代替の弾力性よりも大きい場合でも,自国と他国の間で の為替レート変化による需要シフトだけでなく,第3国の為替レート変化に よる需要シフトを通じた実質所得の低下から,ある国の金融政策が他国の経 済厚生を低下させる可能性があることを示している.

 以上のように,先行研究では,O-Rモデルにおいて自国財間の代替の弾力 性と,自国財と外国財の間の代替の弾力性が異なる場合,ある国の金融政策 が他国の経済厚生を低下させる可能性があることが示されている.しかしな がらこうしたO-Rモデルを基礎とした分析は,モデルの動学的構造から,金 融緩和の経済厚生への波及効果分析が複雑であるという問題がある.O-Rモ デルの動学的構造では,ある国が予期されない永続的な金融緩和を行ったと き,各企業は短期において価格を調整できないとし,長期において企業は価 格の調整が可能となると設定されている.O-Rモデルでは,ある国の金融緩 和は,短期,長期のそれぞれにおいて,各国の消費,生産,経常収支の各マ クロ変数の当期からの変化をもたらしている.このような設定は,債券がモ デルに導入された動学的一般均衡体系として現実に則した設定であるといえ るが,一方で,ある国の金融緩和が経済厚生を低下させるかどうかという政 策評価は,各財の間での代替の弾力性だけでなく,各マクロ変数を関連付け るパラメータ(効用関数における消費と労働の代替の弾力性や時間選好率など)の大 きさにも依存しており,波及効果の要因がどのマクロ変数によるものなのか は断定できない.

 このような動学的一般均衡体系での独占的競争モデルに対して,Fender and

(4)

Yip (1994)は,金融緩和が実施されたときに,企業は直ちに価格調整を行い,

新たな定常状態としての均衡が達成される独占的競争モデルにより,自国の 金融緩和が自国と外国の生産量に与える影響を比較静学的に分析している1)

Fender and Yip (1994)では,O-Rモデルと異なり,貿易収支が常に均衡するこ

とから,債券がモデル内に存在せず,利子率と為替レートの関係は示されない.

この設定により,新たな均衡以降での異時点間において,金融緩和の波及効 果としての消費と生産の変化は起こらない.さらにFender and Yip (1994)では,

個人が得る効用は,消費と実質貨幣保有残高で構成されており,O-Rモデル のように労働による不効用は設定されていない.そこで,実質貨幣残高によ る効用は消費から得られる効用と比べて極めて小さいというO-Rモデルの仮 定を用いれば,ある国の金融緩和の経済厚生への波及効果の分析は,当期の 均衡と金融緩和が実施されたことで成立した新たな均衡における消費量の変 化を比較することのみで可能となる.しかしながらFender and Yip (1994)では,

このような金融緩和の経済厚生に対する国際的波及効果については解析的な 分析がなされておらず,自国財間での財の代替の弾力性と自国財と外国財の 間での財の代替の弾力性が異なる場合についても検討されていない.

 そこで本稿では,Fender and Yip (1994)におけるモデルを枠組みとして,各 国財の間で異なる代替の弾力性を導入した3国間モデルを構築し,各国の金 融政策と国際的波及効果の関係について検討する.さらに,O-Rモデルを基 礎としたモデルよりも比較的分析が容易な静学モデルにおいて,ある国の金 融緩和が他国の経済厚生を低下させる可能性を検討する.

 本稿の構成は以下のとおりである.第2節では,Fender and Yip (1994)にお ける2国モデルを各国間の財の間での代替の弾力性が異なる3国モデルに拡 張する.第3節では金融緩和が実施されたことで成立した新たな均衡におけ る均衡条件を,為替レートの変化と生産の変化率の関係ならびに為替レート 変化とマネーサプライの変化の関係として導出する.第4節では,第3節で

1) Fender and Yip (1994)は,閉鎖経済での独占的競争モデルであるFender and Yip (1993)2 に拡張し,金融緩和の国際的波及効果について分析した研究である.

(5)

の均衡条件式を用いて,各国の金融緩和と,ある国の為替レート変動,生産 の変化,経済厚生の変化の関係を分析する.第5節は結論である.

2 モ デ ル 2. 1 家  計

 全世界が中央国(Center)のC国,およびその周辺国2国(Periphery)A,B

国との3国(以下jA, B, C)で構成されると仮定する.ここで [0,1]で連続に

各家計が分布しているとする.各国の規模として,A国の家計の分布は[0, γA γP) の区間とし,B国家計の分布は[γAγP, γP),さらにC国家計の分布は[γP, 1]

とする.各家計は差別化された財で構成された消費指数と自国通貨の貨幣保 有から効用を得るとし,j国の代表的家計(x)の効用を以下のように設定する.

    Uj(x)=αlog (Mj(x) /Pj)+βlogCj(x)   α+β=1 (1)  

ここでCj(x)は以下で定義される各消費財で構成された消費指数とする.Mjj国の代表的家計のj国通貨の名目保有価値とし,さらにPjj国通貨で測っ た消費指数Cj1単位あたりの物価指数となる2).物価指数Pjについては後に 詳しく述べる.

 消費指数Cjは以下のように定義され,差別化された消費財に関して合計し たCES型指数とする.

    Cj(x)=γP

1

ρ

(

cPj(x)

)

ρ−1ρ(1−γP)1ρ

(

cCj(x)

)

ρ−1ρ

ρ ρ−1

(2)  

      1 < ρ

ここでcPjj国における差別化された周辺国2国(A,B国)財で構成される 消費指数であり,cCjはC国財の消費指数である.ρはこれらの消費指数の間 の代替の弾力性を示している.

 さらにcPjは,以下のようなCES型指数として与えられる.

    cpj(x)=γA

ψ1

(

cAj(x)

)

ψ−ψ1(1−γA)ψ1

(

cBj(x)

)

ψ−1ψ

ψ−1ψ

(3)  

2) 以下の消費指数の定義,物価指数の設定はCorsetti et al. (2000)に従ったものである.

(6)

      1 <ψ

cAj(x),cBj(x)は,それぞれj国のA国財消費指数とB国財消費指数を表し,ψ はこれらの各消費指数の間の代替の弾力性を示す.

 またcAj(x),cBj(x),cCj(x)はそれぞれ,以下のように差別化された各国の財に よって構成される.

    cAj(x)=(γAγP)θ1

0 γAγP

(

cAj(z,x)

)

θ−θ1dz

θ−θ1

    cBj(x)=

(

(1−γAP

)

θ1

γAγP

γP

(

cBj(z,x)

)

θ−θ1dz

θ−1θ

    cCj(x)=(1−γP)θ1

γP

1

(

cCj(z,x)

)

θ−θ1dz

θ−1θ

      1 <θ

cij(z,x) (i=A, B, C)は,j国の家計xi国の第z財の消費を示している.θは 各個別の財の間での代替の弾力性を示している.また財の代替の弾力性は1

<ρ<ψ<θを満たす関係にあるとする3)

 さらにPjは,j国における一般物価指数であり,消費指数を用いて以下の ように導出される4)

    Pj=γP(pPj)1−ρ+(1−γP)(pCj)1−ρ

1 1−ρ

ここでpPj,pCjは,それぞれj国における周辺国財の物価指数とC国財の物価 指数とする.

 さらにpPj は,j国におけるA国財物価指数pAjj国におけるB国財物価指 数pBjで構成される周辺国物価指数として以下のように示される.

    pPj=γA(pAj)1−ψ+(1−γA)(pBj)1−ψ

1 1−ψ

3) 本稿では,消費指数や財の間での代替の弾力性の仮定はCorsetti et al. (2000)に従う.

4) 物価指数は,実質消費一定のもとで名目消費支出の最小化問題の解として求められる.

(7)

 さらにj国における各国財の物価指数pij (i,j=A, B, C)は,j国におけるi国 財価格によって以下のように示される.

    pAj= 1 γAγP

0

γAγP

(

pAj(z)

)

1−θdz

1 1−θ

    pBj= 1 (1−γAP

γAγP

γP

(

pBj(z)

)

1−θdz

1 1−θ

    pCj= 1 (1−γP)

γP

1

(

pCj(z)

)

1−θdz

1 1−θ

j国の代表的家計は,以下の予算制約の下で効用を最大化する.各国ごとに 家計は対称であるとし,各家計を示すインデックス(x)を省略する.

    PjCjMj=Ωj (4)  

    Ωj≡πj+wjlj+Mj

ここでπjは家計が保有する企業の利潤,wjは名目賃金,Mjは自国通貨の保 有額を表す.各家計は毎期,企業収入を財の販売国先の通貨で受け取り,現 在保有している自国貨幣と合わせた当期保有Ωjを,貨幣保有Mjと各国財購 入に充てる.

 効用最大化の1階条件は,予算制約式及び以下の式として導出される.

    Mj=αΩj (5)  

    Cj=βΩj/Pj (6)  

さらに各企業に対する財の需要関数は,以下のように導出される5)

    cAj(z,x)= pAj(z) pAj

−θ pAj pPj

−ψ pPj Pj

ρ

Cj(x) (7)  

    cBj(z,x)= pBj(z) pBj

−θ pBj pPj

−ψ pPj Pj

ρ

Cj(x) (8)  

    cCj(z,x)= pCj(z) pCj

−θ pCj Pj

ρ

Cj(x) (9)  

5) 各財の需要関数は,名目消費支出一定のもとでの消費指数の最大化問題により導出される.

(8)

2. 2 企  業

 世界には家計と同様に分布する企業があると仮定する.各国の代表的企業 は,労働のみを生産要素として用いて,差別化された財を生産する.各企業 の生産関数は以下のように与えられる.

    lj(z)=ayσj(z) (10)  

ここでlj(z),yj(z)は,企業zの労働投入量,生産量とし,aと σ は生産技術 のパラメータとする6)

 さらに企業zの利潤は以下のように与えられる7).     πj(z)=Ej

EApjA(z)cjA(z,x)+Ej

EBpjB(z)cjB(z,x)+EjpCj(z)cjC(z,x)−awjyσj(z) (11)  

 さらにA国通貨のC国通貨建て為替レート(以下A国為替レート)をEAと し,B国通貨のC国通貨建て為替レート(以下B国為替レート)をEBとする.

またPji(z)をj国企業が生産した財のi国販売価格とする.各国の為替レート と販売価格の関係は,第 1 表にまとめられる.

 各国為替レートは,各国間の貿易収支が常に均衡する8)ように決定される.

    

γP

1pCAcCA=EA

0 γAγP

pACcAC (12)  

6) 生産技術のパラーメータがσ>1 (σ<1)となる場合,生産関数は収穫逓減(逓増)の関数である.

7) 以下,為替レートに関してEC=1として扱う.

8) 仮に各国間で貿易収支が不均衡となる場合,本稿のモデルでは債券が存在しないことから,

為替レートが変動しなければ,この国は自国の保有通貨で赤字分の支払いをすることになる.

しかし,他国貨幣を持つことによって家計は効用を得ることは出来ないことから,為替レート 変動を通じて貿易収支の均衡が達成される.

A国企業 B国企業 C国企業

国内販売価格 A国内 pAA(z) B国内 pBB(z) C国内 pCC(z) 輸 出 価 格

B国内 pAB(z)=EB

EApAA(z) A国内 pBA(z)=EA

EBpBB(z) A国内 pCA(z)=EApCC(z) C国内 pAC(z)=1

EApAA(z) C国内 pBC(z)=1

EBpBB(z) B国内 pCB(z)=EBpCC(z) 第 1 表 各財の各国の販売価格

(9)

    

γP

1pCBcCB=EB

γAγP

(1−γAP

pBCcBC (13)  

    

γAγP

(1−γAP

pBAcBAEA EB

0

γAγP

pABcAB (14)  

 さらに代表的企業の名目賃金wjは,企業内の労働組合により設定される9). 各企業の労働組合は,名目賃金wjを就労せずに得られる保障賃金(失業保険 など)wjとの差がもっとも大きくなるように設定すると仮定する.

    S(z)=(wj(z)−wj(z))lj(z)=a(wj(z)−wj(z))yjσ(z) (15)  

 各国間での財の価格は等しく,一物一価が成立し,各企業の名目賃金が与 えられているとする.各企業の総生産量と各企業の財に対する需要関数から 各財の需給均衡式は以下のようになる.

    yA(z)= pAA(z) pAA

−θpAA pPA

−ψ pPA PA

ρβ(ΩAEA

EBΩBEAΩC)

PA (16)  

    yB(z)= pBB(z) pBB

−θpBB pPB

−ψ pPB PB

ρβ(EB

EAΩA+ΩBEBΩC)

PB (17)  

    yC(z)=pCC(z) pCC

−θpCC PC

ρβ(1EAΩA+1

EBΩB+ΩC)

PC (18)  

 各企業の利潤最大化の1階条件は,独占価格決定式として,企業利潤(11)

式から以下のように導出される.

    pjj(z)= θ

θ−1awj(z)yjσ−1(z) (19)  

各企業の利潤最大化条件における独占価格pjj(z)は,各企業の限界費用にマー クアップ率を掛け合わせた価格として設定される.

 各企業の名目賃金wjは,労働組合による名目賃金設定式(15)式から,企

9) 本稿のモデルでは,労働組合の存在を通じて名目賃金の硬直性がもたらされている.独占的 競争モデルにおいて貨幣の存在が非中立的になるには,モデル内の名目変数の硬直性が必要で ある.独占的競争と名目変数の硬直性,貨幣の非中立性の関係については,Dixon and Rankin (1993) を参照されたい。Obstefeld and Rogoff (1996)を基礎とした「新しい開放マクロ経済学」の一連の 研究のモデルでは,予期されずにマネーサプライが変更された期である短期においては,企業の 独占価格は変更できないという仮定を通じて,貨幣の非中立性が成立するように設定されている.

(10)

業利潤式(11)式,及び各企業財の財需給均衡式(16)〜(18)式を用いて,以 下のように導出される.

    wj(z)= θσ θσ−1wj(z)

名目賃金もまた保障賃金に一定のマークアップ率がかけられたものとして導 出される10)

 以下では各国の企業は,各国内において対称であるとし,各企業を示すイ ンデックス(z)を省略する.

2. 3 政  府

 本稿における各国の政府は貨幣発行のみを行い,その貨幣発行益収益は自 国民に保有貨幣として移転される.予算制約式におけるMjは,期初におけ る各政府の貨幣総発行額の国民1人当たり保有額である.家計は他国の通貨 の保有から効用を得ることはないため,他国の通貨を受け取ることはない.

そこで各国の貨幣の需給均衡は以下のようになる.

    MjMj (20)  

3 金融緩和と新たな均衡

 本節では,各国の拡張的な金融政策(予期せざる永続的な金融緩和)により,

経済がどのような条件で新たな均衡が達成されるのかを検討する.

 各国の金融政策を通じて各企業は,需要量の変化に応じて生産財価格を変 更する.さらに消費者も物価水準の変化に応じて,各国で生産される財の需 要量を変化させる.そこで需要量の変化は,貿易収支の均衡を通じて為替レー トを変化させる.為替レートの変化は,物価指数の変化にフィードバックし,

10) 現実の世界では,通常,非就労時の保障名目賃金wjは,就労時の名目賃金wjよりも低いと考

えられる.そこで以下では,この就労時賃金と保障賃金の関係が,いかなる財の代替の弾力性の 値θに対しても成立すると仮定し,企業の生産技術は規模に関して収穫一定または低減である とする。(σ≥ 1)但し,代替の弾力性θの値が大きい場合,全ての企業の生産技術が収穫逓増(σ

>1)のケースであっても,θσ>1が成立していれば,企業の名目賃金が成立する条件は保証される.

(11)

再び各国財の需要量を変化させることになる.本稿では,この一連のプロセ スが終了し,各市場で均衡が達成された状態を新しい均衡とする.

 ここで,本稿のモデルでは,マネーサプライの変化を通じた各マクロ変数 の変化を解析的に解くことは困難である.そこで分析にあたっては,初期の 均衡における対数線形近似を用いて,各変数の新たな均衡への変化を期初の 均衡からの乖離幅で示す.具体的には,V0を当期の均衡における変数の値とし,

V1を新たな均衡における変数の値として,≈ (V1V0)/V0を計算する.そこ で導出された各変数の乖離幅であるによって金融政策の各変数への影響を 検討する.

 以下では,永続的な予期せぬマネーサプライの拡張が各国で行われたとし,

新たな均衡における均衡条件がどのように示されるのかを確認する.

3. 1 新たな均衡

 新たな均衡は,当期の均衡と同様に,家計の一階条件である①消費への予 算分配式,さらに②貿易収支均衡式,③貨幣需給均衡式,④各企業財の需給 均衡式,⑤各企業財の独占価格決定式によって表すことができる.以下では,

各国財の需要量を決定の要因となる各国の物価指数の変化とマネーサプライ 変化に関して,各国規模を示すパラメータの定義を確認し,均衡条件式を内 生変数である為替レートの変化,生産の変化と,外生変数であるマネーサプ ライの変化との関係として導出する.

 各国の一般物価指数を対数線形化することで,物価指数の変化は以下のよ うに表される11)

11) 本稿のモデルでは,Fender and Yip (1994)に従い,期初において家計及び企業は各国の国内

間において対称的であるとするが,各国間における家計の貨幣保有残高及び物価指数に与える 影響力は異なるものとしている.さらに家計が保有する貨幣の額についても各国ごとに異なる ものとする.O-Rモデルでは,世界の全ての企業と家計は対称であると仮定し,各国の企業の 物価影響指数と貨幣保有率は,各国の経済規模と一致する.本稿のモデル設定では,この仮定 は以下のように示される.

γAP=γAM=γA, γPP=γPM=γP

(12)

    Pˆj=γAP γPP pˆ

Aj+(1−γAPPP pˆ

Bj+(1−γPP)pˆ

Cj (21)  

 ここで周辺国物価影響率γPPは,各国の一般物価指数の変化に対する周辺国 2国の企業財の価格変化の影響率であり,周辺国内A国物価影響率γAPは,周 辺国物価指数の変化に対するA国企業財の価格変化の影響率である12).周辺 国物価影響率γPPが大きい場合,各国の一般物価の変化の水準は,周辺国企業 の価格変化に大きく依存する.同様に,周辺国内A国物価影響率γAPが大きい 場合,周辺国物価指数の変化の水準は,A国企業の価格変化に大きく依存する.

 さらに各国企業財の需要量を決定する要因の1つとなっている世界全体の マネーサプライの変化は,対数線形化により以下のように表される.

    MˆW=γPMP+(1−γPM)MˆC (22)  

    MˆP=γAMA+(1−γAM)MˆB (23)  

 周辺国貨幣保有率γPMは,世界の総貨幣保有額に対して周辺国2国内で保有 されている額の比率であり,周辺国内A国貨幣保有率γAMは,周辺国2国間 において保有されている貨幣保有額に対するA国で保有されている額の比率 である13).貨幣保有率の高い国と低い国が同じ比率でマネーサプライを増加 させた場合,保有率が高い国のマネーサプライの増加の方が,当期保有の増 加幅が大きいことから,世界全体の財需要を増加させる効果は大きい.

 以上の関係式を用いて,次節以降では,新たな均衡における為替レートと 生産,マネーサプライの変化の関係を導出する.

3. 2 為替レート変化と生産の変化

 個別財の需給均衡式(16)〜(18)式と価格決定式(19)式を対数線形化するこ

12) 周辺国物価影響率γPPと周辺国内A国物価影響率γAPはそれぞれ,各国の物価指数と周辺国物

価指数より,以下のように定義される.

γPP γP(pPj)1−ρ

γP(pPj)1−ρ(1−γP)(pCj)1−ρ γAP γA(pAj)1−ψ γA(pAj)1−ψ+(1γA)(pBj)1−ψ

13) 周辺国貨幣保有率γPMと周辺国内A国貨幣保有率γAMはそれぞれ,以下の定義に従う.

γPMγPMP

MW MWγPMP+(1γP)EAMC γAMγAMA

MPMP≡γAMA(1−γA)EA EBMB

(13)

とで,各国企業の生産量と為替レート変化の関係は,周辺国地域と中央国間

(Center-Periphery)および周辺国間(Intra –Periphery)で以下のように示される14).     Center-Periphery

    (yˆP−yˆC)= ρ 1+ρ(σ−1)EˆP

(24)  

    yˆP≡γAP yˆA+(1−γAP)yˆB     EˆP≡γAP EˆA+(1−γAP)EˆB

    Intra –Periphery     (yˆA−yˆB)= ψ

1+ψ(σ−1)(EˆA−EˆB) (25)  

 (24),(25)式は,企業の生産技術に関する仮定(σ≥ 1)から為替レートを減 価させた国の生産量が他国に比べて大きくなることを示している15).為替レー トの減価は,減価した国の財の価格が相対的に安価になることから,その国 の財への需要シフトが起こる.その結果,需要増に対応してその国の企業は 生産量を増加させる.但し企業は独占的に価格設定が行えることから,利潤 を最大化させるように生産量の増加に対応して価格を上昇させるため,為替 レートによる需要シフトの一部は相殺される16)

14) 各国企業の財の需給均衡式を対数線形化することで得られた生産量変化と為替レート変化の 関係を示す(24)(25)式に,各国のマネーサプライの変化が反映されない理由は以下のよう に考えられる.各国でマネーサプライが変化したとき,各国間の為替レートが変化しなければ,

当期保有の増加は,全ての国の財の需要を同率で増加させる.その結果,各国間の生産量の変 化の差は生まれないためである.以下で分析するように,マネーサプライの変化は,直接,生 産量の変化を生むのではなく,各国間の貿易収支を均衡させるような為替レート変化と生産量 の変化を同時に生じさせている.

15) 以下の考察では,周辺国地域と中央国間での生産量と為替レート変化の関係を示す(24)式 に関して,周辺国地域を1つの国として捉えている.

16) 企業の技術が収穫一定(σ=1)の場合,個別財の生産量変化による独占的価格の変化が起 こらないため,需要シフトは為替レート変化分に代替の弾力性を掛けた変化分だけとなる.

(14)

3. 3 マネーサプライの変化と為替レートの変化

 次に貿易収支の均衡条件式から,マネーサプライの変化率と財需要の変化,

さらに為替レートの関係を考察する.

 貿易収支の均衡式(12)〜(14)式を対数線形化することで,各国間で互いに 需要される輸出財の総価値が均衡では等しくなるように調整される為替レー トの変化は,以下のように示される.

    EˆApˆCCcˆCApˆAAcˆAC (26)  

    EˆB+pˆCC+cˆCB=pˆBB+cˆBC (27)  

    pˆBAcˆBAEˆAEˆBpˆABcˆAB (28)  

 さらに個別財需要cˆの変化率は,個別財の需要関数(7)〜(9)式及び,効用 最大化1階条件(5),(6)式を用いて以下のように表される.

    cˆCi=−ρ(pˆCi−Pˆi)+Mˆi−Pˆi (29)  

        (i=A, B)

    cˆij=−ψ(pˆij−pˆPj)−ρ(pˆPj−Pˆj)+Mˆj−Pˆj (30)  

        (j=A, B, C)(i=A, B)

 (29),(30)式から,各国の財需要の変化は2種類の要因に分けられる.つまり 価格変化による需要シフトと実質当期保有価値の変化による需要の変化である.

 各国の企業財の需要変化式(29),(30)式を為替レート決定式(26)〜(28)式 に代入することで以下のように整理される.

    Center-Periphery

    (γAPMˆA+(1−γAP)MˆBMˆC)+(ρ−1)(γAPpˆ

AA+(1−γAP)pˆ

BBpˆ

CC)=ρEˆP(31)  

    Intra –Periphery     (MˆAMˆB)+(ψ−1)(pˆ

AApˆ

BB)=ψ(EˆAEˆB) (32)  

 相手国よりも自国のマネーサプライの増加幅が大きい場合,価格及び為替 レートが変化しないとすれば,自国の相手国財需要は相手国の自国財需要よ りも増加することになる.そこで貿易収支が均衡するためには,相手国企業 の財の価格が自国企業の財よりも高くなることから生じる相手国財から自国

(15)

財への需要シフトが起こるか,為替レートが切り下がり,相手国財が自国財 よりも相対的に高価になることから生じる需要シフトが起こるかのどちらか が必要となる.

 ここで前節での分析から,相手国財と自国財の価格の差は,為替レートの 変化による需要シフトで生じる生産量変化を通じた各企業の独占価格の変化 によって生じていた.したがって,(31),(32)式を,企業の価格決定式(19)

式と生産変化率と為替レートの関係式(24),(25)式を用いて整理すれば,新 たな均衡での条件式は,以下のように各地域間でのマネーサプライの変化率 と為替レート変化率の差の関係式として導出される.

    Center-Periphery

    (γAPA+(1−γAP)MˆB−MˆC)= ρσ 1+ρ(σ−1)EˆP

(33)  

    Intra –Periphery     (MˆA−MˆB)= ψσ

1+ψ(σ−1)(EˆA−EˆB) (34)  

4 為替レート,生産量と経済厚生の変化

 本節では前節における均衡条件式を基に,各国のマネーサプライの変化が 為替レート,生産及び経済厚生にどのような変化をもたらすのかを分析する.

以下では,A国の為替レート,生産量,経済厚生の変化を例として考察する.

4. 1 為替レートの変化

 A国の為替レート変化は,新たな均衡の条件式(33),(34)式を用いて以下の ように導出される17)

17) 同様に,各国のマネーサプライの変化によるB国の為替レート変化は,以下のように導出

される. EˆB1 σ 1

ρ1

ψγAP(MˆAMˆB)+1+ρ1) ρσ (MˆB−MˆC)

(16)

     EˆA=−1 σ

1 ρ−1

ψ(1−γAP)(MˆA−MˆB)+1+ρ(σ−1)

ρσ (MˆA−MˆC

) (35)  

 (35)式から(1<ρ<ψ),(1<σ)に注意すると,MˆAMˆBにかかる係数はとも に正となり,MˆCにかかる係数は負となることから,A国とB国のマネーサ プライはA国の為替レートを減価させ,C国のマネーサプライはA国為替レー トを増価させることがわかる.

 A国とC国のマネーサプライ変化は,前節でのA,B国間での議論と同様 に,2国間の貿易収支を均衡させる為替レート変化を生じさせる18).一方,B 国のマネーサプライの増加は,どのようにしてA国為替レートを減価させる のであろうか.この点については,以下のように考察される.

 B国のマネーサプライの増加は,B,C国間での貿易収支を均衡させるよう に,B国為替レートの減価を生じさせる.しかし同時にA,B国間での貿易 収支も均衡するように,為替レートは変化しなければならない.仮にA国為 替レートが変化しなければ,B,C国間での貿易収支を均衡させるB国為替レー トの減価は,A,B国間での貿易収支を均衡させる為替レート減価よりも大き い19)ことから同時に貿易収支が均衡しない.そこでA国為替レートが減価す れば,A国財はC国財よりも相対的に安価になり,B国財のA国財相対価格 の減少幅は縮小される.したがって,B国家計のC国財需要が抑えられると 同時にB国家計のA国財需要の減少が抑えられる.すなわちA国為替レート も減価することで,B,C国間での貿易収支を均衡させうるB国為替レート

18) C国のマネーサプライの変化は,A,B国間の貿易収支が均衡することから,A国為替レー

トとB国為替レートを同率で変化させる.そのため,マネーサプライの変化と為替レート変 化に関する議論はA,B国間での議論と同様になる.

19) B国のみがマネーサプライを変化させたときにA国為替レートが変化しないとすれば,B,

C国間の貿易収支とA,B国間の貿易収支を満たすマネーサプライの変化と為替レート変化式 の関係式は,新しい均衡となる条件式(33)(34)式から

B,C国間:MˆB ρσ

1+ρ1)EˆB  A,B国間:MˆB ψσ 1+ψ(σ−1)EˆB

となる.1<ρ<ψであることに注意すると,同じB国マネーサプライの変化に対して,B,C 国間で決定されるB国為替レート減価幅の方は,A,B国間で決定されるB国為替レート減価 幅よりも大きい.

(17)

減価幅は縮小し,A,B国間での貿易収支を均衡させうる為替レート減価幅は 拡大する.以上の関係から,B国のマネーサプライの増加は,B国為替レー トを減価させると同時に,2つの貿易収支が同時に均衡するようにA国為替 レートも減価させる.

4. 2 生産の変化

4. 2. 1 生産の変化の要因

 A国企業の生産量の変化率は,財需給均衡式(16)式を対数線形化すること で以下のように導出される.

    yˆA=−ψ(pˆAA−pˆPA)−ρ(pˆPA−PˆA)−PˆA+MˆW

       +(1−γAMPM(EˆAEˆB)+(1−γPM)EˆA (36)  

 (36)式より,A国財の生産量の変化の要因は,価格変化を通じた代替需要 による需要シフト,A国一般物価指数の変化,マネーサプライの増加と為替 レート変化による名目当期保有価値の増減に分けられる.以下では,各国の マネーサプライの変化がA国財生産の変化の各要因に対してどのような影響 をもたらすのかを分析する.

 まず代替需要によるA国財需要シフトは,企業の価格決定式(19)式を対数 線形化したもの,生産量と為替レート変化の関係式(24),(25)式,マネーサ プライ変化と為替レート変化の関係式(33),(34)式から以下のように導出さ れる.

    −ψ(pˆAApˆPA)−ρ(pˆPAPˆA)=

      (1−γAP)

σ (MˆA−MˆB)+(1−γPP)

σ (γAPMˆA+(1−γAP)MˆB−MˆC

) (37)  

(37)式から,各国のマネーサプライの変化は,為替レート変化による各国財 価格の差を通じて周辺国間(A,B国間)と周辺国,中央国間での需要シフト を引き起こすことがわかる.

 次にA国の一般物価水準の変化PˆAは,物価指数変化式(21)式に企業の価

(18)

格決定式(19)式,生産量と為替レートの関係式(24),(25)式,為替レートと マネーサプライの関係式(33),(34)式を代入することで以下のように導出さ れる.

    PˆA=(σ−1)yˆA+(1−γAP)

ψσ (MˆA−MˆB)+

         (1−γPP)

ρσ (γAPMˆA+(1−γAP)MˆB−MˆC

) (38)  

(38)式からA国の一般物価水準は,A国生産の増加によるA国企業財の独占 価格の上昇,さらにマネーサプライの変化の差による為替レート変化を通じ た物価指数の上昇の効果に分かれる.

 さらに名目貨幣の価値の変化は,マネーサプライの変化と為替レート変化 の関係を示した(33),(34)式により以下のように導出される.

    MˆW+(1−γAMPM(EˆA−EˆB)+(1−γPM)EˆA

    MˆA−(ψ−1){(1−γAP)−(γAM−γAPPM}

ψσ (MˆA−MˆB)     −(ρ−1)(1−γPM)

ρσ (γAPMˆA+(1−γAP)MˆB−MˆC

) (39)  

各国のマネーサプライの変化を通じた為替レート変化は,A国財で測った各国 の当期保有価値を変化させ,各国の家計のA国財に対する需要を増減させる.

4. 2. 2 生産への影響

 前節の(37),(38),(39)式をA国財財需給均衡式(36)式に代入することで,

各国のマネーサプライ変化率のみで示されたA国の生産量変化率の変化式が 以下のように導出される.

     σyˆA=MˆA+(ψ−1)(γAM−γAPPM

ψσ (MˆA−MˆB)

    +(ρ−1)(γPM−γPP)

ρσ (γAPMˆA+(1−γAP)MˆB−MˆC

) (40)  

(19)

 (40)式からMˆAにかかる係数は正となり,MˆB及びMˆCにかかる係数は正と 負の両方をとる可能性があることがわかる.したがってA国の金融緩和は自 国の生産を増加させ,B国,C国の金融緩和は,A国の生産を増加させる場 合と減少させる場合があるとの結論が得られる.以下では,各国が金融緩和 を行った場合,どのようにA国の生産に影響を与えるのかについて直感的意 味を考察する.

 まずA国がマネーサプライを増加させた場合,A国の当期保有が増加しA 国財需要が高まるため,A国財の生産量は増加する.さらにA国マネーサプ ライの増加は,為替レートの変化によってB,C国内の家計の当期保有価値 を上昇させることと,A国財がB,C国財よりも相対的に安価になることから,

A国財の需要と生産量を増加させる.しかしA国内では為替レート変化によっ て他国財が相対的に高価となり,A国の一般物価水準が高まるため,A国財 の需要と生産の増加の一部は相殺される.

 次に他国であるB国(C国)のマネーサプライの増加は,B国(C国)家計 の当期保有残高の上昇20)によるA国財需要の増加から,A国財生産を増加さ せる.しかしB国(C国)のマネーサプライ増加は,為替レートの変化を通じ てB国(C国)財をA国財よりも相対的に安価にするため,B国(C国)財へ の需要シフトを引き起こす.その結果,A国財需要が低下し,A国財生産は 減少する.以上の2つの効果の大きさによりA国の生産が増加するか,減少 するかが決定される.

4. 3. 経済厚生への影響

 この節では,各国の金融政策がA国の経済厚生にどのような影響をもたら すのかを分析する.

 以下の分析では,経済厚生の変化を当期の均衡における効用水準から新

20) この結論は,(39)式から(38)式を引くことで,B国(C国)のマネーサプライ増加による,

B国(C国)の実質当期保有価値の係数が正になることから得られる.

(20)

たな均衡への効用水準の変化とする.ここでA国の経済厚生の算出方法は,

Obstfeld and Rogoff (1995, 1996)に従い,効用関数(1)式における貨幣保有か ら得られる効用が,無視できるほどに小さい(α→0)と仮定する.家計の効 用最大化条件(5),(6)式から効用水準の変化は,以下のように表すことが出 来る.

    dUA=CˆA=MˆA−PˆA (41)  

 (41)式から各国の金融緩和は,実質初期保有価値の変化(自国民の貨幣保有 増加から3国間の為替レート変化によって生じる物価指数の変化を差し引いた変化)

により,A国家計の消費量を変化させ,A国の厚生に影響を与えることを示 している.

 ここで前節の各国のマネーサプライ変化とA国の一般物価水準の変化の関 係式(37)式とA国の生産量変化式(40)式を用いると,A国の経済厚生の変化

(41)式は以下のよう求められる.

    dUA=1 σMˆA−1

σ (1−γAP)

ψ +(σ−1)

σ (ψ−1)

ψ (γAM−γAPPM (MˆA−MˆB)

       −1 σ

(1−γPP)

ρ +(σ−1) σ

(ρ−1)(γPM−γPP)

ρ (γAPMˆA+(1−γAP)MˆB−MˆC)

(42)  

 (42)式の各国のマネーサプライの変化率(Mˆjの係数の符号から,B国の 金融緩和がA国の効用水準を高める場合と低下させる場合があるという結論 が得られる.以下では各国が金融緩和を行う場合について,A国の効用水準 への影響を物価指数の変化を中心に検討する.

 まずA国で金融緩和が行われた場合,A国の貨幣保有残高が増加するため,

A国の消費は増加する.しかし前節からA国のマネーサプライの増加は,A 国の生産量を上昇させることから,A国企業の独占価格は上昇する.さらに 金融緩和による為替レート変化に伴い,B国,C国財はA国財に比べて相対 的に高価になる.つまり,A国内の3国の各財の価格が上昇することから,A

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