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<書評と紹介>『地域文化政策の新視点』 馬場憲一 著

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Academic year: 2021

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<書評と紹介>『地域文化政策の新視点』 馬場憲一

著者 伊藤 恭子

出版者 法政大学史学会

雑誌名 法政史学

巻 52

ページ 100‑101

発行年 1999‑09‑30

URL http://hdl.handle.net/10114/10690

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本書は、長年、東京都の学芸員として文化財保護行政に携わってきた氏が、住民と共に未来に生きた地域文化を継承する視点から、これまでの執筆を集大成したものである。氏は、文化財保護行政と博物館の有機的連携への回答に、地域博物館とエコミュージァムといずれも博物館の要素を示しながら、書名に一言も「博物館」の文字を盛り込んでいない。このことは、氏の文化財行政関係者としての意地を感じると同時に、今後の博物館及び文化財関係研究者が起こす論議を待ち望むように思えた。文化財各論(保存・修復など)における科学的分野は進展しつつあるが、文化財の存在する地域における保護のあり方は、未だ事例を重ねる段階にあるといえ、課題は多い。本書の構成は次の通りである。序論伝統文化を活かした地域文化政策の視点第一章地域文化遺産の保護とその課題第一節地域文化財保護施策の現状/第二節地域文化財保護行政の課題/第三節文化財保護法の問題点と課題第二章地域博物館活動の現状とその課題 〈書評と紹介〉

馬塲憲一著 「地域文化政策の新視点 l文化遺産保護から伝統文化の継承へl』

伊藤恭子 法政史学第丘十二号

第一節地域博物館の実態と課題/第二節博物館と地域社会との関わりの実態/第三節都市近郊にみる博物館の設置と課題第三章地域文化の継承とそのシステム第一節地域文化遺産の保存と活用事例/第二節地域文化政策としてのエコミュージアム構想提言文化遺産保護から伝統文化の継承に向けてI文化財保護行政と博物館活動の乖離現象/Ⅱ新たな地域文化政策の展開/Ⅲ「遺産学」の提唱付論地域文化遺産の認識と保存への課題第一節地域文化遺産認識の始まりl『新編武蔵風土記稿』記載状況の検討からl/第二節地域文化遺産保存への課題資料編文化振興マスタープラン第一章は、東京都において、これまで各分野で実施された総合調査。緊急調査結果、それを踏まえた文化財指定状況、保護実務など文化財保護行政の実状を紹介、諸問題を提起し、今後の課題として、その基盤となる条例改正の方向性や基本理念を示した。文化財も非常に範囲が広いが、著者が一つ一つの分野を紹介しながら論じているので、文化財行政に初めて触れる方にも読みやすいだろう。文化財という名称を聞くと、|般的に国宝の寺院や重要美術品の仏像や絵画、すなわち単体としての「モノ」を想像される方が多いかもしれない。しかし、昨今の文化財保護のあり方は、文化財保護法制定時二九五○年)に比べると時代的変化を見せ、点(単体保護)から面あるいは立体的(群保護)へと保護 ’○○

Hosei University Repository

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の裾野を広げている。ゆえに、今後、体系的保護に実動しやすい法的整備が期待されている。地方分権化時代といわれ、組織的にはどれだけ小さくても必ず文化財担当が設置されている。しかし、地域に根ざした文化財保護行政のあり方は体系化されたものが未だ存在しない。ゆえに著者が指摘した旧跡や名勝・天然記念物の問題は興味深いものがある。しかし、地域の特性は千差万別であり、保護継承にあたってはそれぞれの地域で特性が充分に分析・構築されなければ、共通理念や政策のみ掲げたところで、実際に生きたものとはなりにくいのではなかろうか。地域というキーワードを受け、著者が次に注目したのは地域博物館であり、その分析が第二章となる。区部と多摩地区、島蝋部の博物館へのアンケート調査の結果に加え、来館者側の博物館の印象を通し地域社会と博物館との関係を分析、地域に実動する理解者を増やす努力継続の必要性を説く。生涯学習施設としての博物館は館員の努力により初めて地域に根付いていくことから、今後も生涯教育の場としてさらに重要な役割を担う期待を述べる。しかし、著者は、加えて地域文化遺産の継承を担うことのできる仕組みを模索し、そこにフランスで誕生したエコミュージアムという日本には存在しなかった形に辿り着く。エコミュージアムとは、地域住民参加型博物館であるが、地域とそこに存在する遺産(文化財)、住民など、多くのものが一体となって運営される博物館である。第三章では、実際に著者が視察したエコミュージアムを紹介し、日本における展開過程、エコミュージアムを東京

諜評と紹介 多摩地区に設置する可能性を追求、その構想を丁寧に論じている。構想が詳述されており、実現性の高い条件を備えているとの結論に達していることから、本書の刊行を契機として実現へ結実することが期待される。以上を踏まえ、文化財保護行政の立場をあくまで基盤とし、博物館を取り込んだ文化遺産保護を提言、最終的にこれまで唱えられてきた博物館学と文化財学の構築に加え、新たに「遺産学」という学問体系を構築することを提唱した。著者は、文化財保護と博物館活動の乖離を防ぎ、結びつけるために以上の結論に辿り着いた。二つの仕事は一心同体ではなくとも、どちらも専門員は「学芸員」と称され、調査・保存・研究・教育活動に携わる立場であることに変わりはない。筆者自身も文化財行政の一端に関わる人間として、二つの仕事の連携と乖離の現実を常々感じつつ模索している。その現実に立って呈したいのは、政策だけで遺産保護継承は成しえるものではないということである。氏の提唱する「遺産学」は応用科学ということができ、ゆえにその構築には教育的見地等も含めた幅広い内容が想定されるのである。氏は既に理想の実現に限りなく近い位置に達しているように思う。氏の論理の集大成である本書が本当に書評される時は氏や氏から影響を受けた人の手で、日本型エコミュージアムが完成した時ではなかろうか。最後に、筆者の力不足で充分に評することができなかったことをお詫びすると共に、多くの方に一読されることをお勧めする。〔’九九八年刊A5判二二四頁一一一一五○円雄山閣出版〕

Hosei University Repository

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