英米法における電子情報取引と経済的損失の賠償に ついて(二・完)
著者 川和 功子
雑誌名 同志社法學
巻 61
号 7
ページ 1‑31
発行年 2010‑03‑31
権利 同志社法學會
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000012126
英米法における電子情報取引と経済的損失の賠償について(二・完)一同志社法学 六一巻七号
英米法における電子情報取引と 経済的損失の賠償について(二・完)
川 和 功 子
(二一一七)
一はじめに
1経済的損失と電子情報取引
外失おける経済的損に法ついての原則と例に国二英 2損るよに疵瑕害物建と失損的済経の
1不法行為制度と契約制度
2経済的損失の賠償の制限
3定制と限制償賠の失損的済経るよに疵瑕の物建法
4不実表示による経済的損失
5問合競権求請と失損済的経るよに供提の務役題
6損的済経るけにお引取報情子電失
英米法における電子情報取引と経済的損失の賠償について(二・完)二同志社法学 六一巻七号
7電子情報取引と専門家の責任
8英国の裁判例の動向
︶についての原則と損例外︵以下本号失済的に三国法米おける経 ︵以︶号七巻一六上
1不法行為制度と契約制度
2経済的損失の賠償の制限
3定制と限制償賠の失損的済経るよに疵瑕の物建法
4不実表示による経済的損失
5問合競権求請と失損的経済るけおに引取報情子電題
6電子情報取引と専門家の責任
て四えかにめとま 7動の例判裁国米向
三 米国法における経済的損失についての原則と例外
1
不法行為制度と契約制度 米国においても︑不法行為制度と契約制度の境界の問題と水門︵flo od ga te s
︶問題についての懸念が︑経済的損失の賠償に歯止めをかけている︒他方︑専門家の役務の提供がなされた場合︑詐欺的な行為が行われた場合などには︑不法 行為法上の請求が認められやすい (よる範囲で認められかどどうかは︑州にの︑復か済的損失の回が︒認められるか否経 77)
(二一一八)
英米法における電子情報取引と経済的損失の賠償について(二・完)三同志社法学 六一巻七号 って異なった対応がなされている︒
当事者間に契約関係がある場合︑競合する不法行為法上の請求を認めることは︑詐欺が存在しない際︑契約当事者が 任意に約束した契約条項に束縛されるという契約自由の政策に矛盾し (
︑乱て者間の交渉原則を混さ当せると考えられている事 ( べい渉原則が支配するき︑商業的な取引にお交 78)
場れるあが題問に質品の品製たさ給供ていおに間者事当約契︒ 79)
合の過失不実表示に基づく請求は︑事実上︑契約上の保証違反︵
br ea ch o f w ar ra nt y
︶の請求と差異はなく︑保証違反の請求が保証排除条項の存在によって可能でない場合の制限を回避するためのものであるとみられている (︒ 80)
契約関係にない第三者に対し︑被告が不法行為責任を負うことができるかどうかについては︑取引が原告に影響を与えると意図された範囲︑原告の損害の予見可能性︑原告が被害を受ける確率︑被告の行為と蒙った被害の関係の近接さ︑ 被告の行為に対する道徳的な非難︑将来の損害を防ぐ政策などさまざまな政策的な判断が関連してくる (
︒ 81)
以下︑経済的損失についていくつかの州ごとの異なった対応について検討し︑その後︑電子情報取引については︑当
事者間に契約が存在する場合に過失不法行為責任が問われた裁判例を検討する︒
2
経済的損失の賠償の制限 第三次リステイトメント不法行為法・製造物責任は﹁人身または財産への被害﹂と﹁経済的損失﹂について以下のように定義している︒人身または財産への被害とは︑原告の人身に対する被害︑または瑕疵ある製造物以外の原告の財産 に対する被害を除く︑経済的損失を含まないとする︒多くの判例が採用する見解では︑人身被害が生じた場合︑販売された財産以外の財産に損害が生じた場合︑さらにいくつかの州においては危険︵vio le nt
︶な出来事によって財産が役に立たなくなってしまった場合には不法行為法上の賠償が可能であるとされる (
︒ 82)
(二一一九)
英米法における電子情報取引と経済的損失の賠償について(二・完)四同志社法学 六一巻七号
経済的損失の賠償の制限について厳格な立場を採用する
Seely v. White Motor Co.
(East Seely River S.S.
︵︶そして 83)Corp. v. Transamerica Delaval Inc.
(す場負わないと責る立を任採用してい為行るを (
River East
い法不︑てにつ製︵︶は︑製造業者はその造物自体に関する物理的損害 84)︑重りあで性全安の身人︑はのな要上て︒為行法不︑は法しと由理のそ 85)
人身被害の場合においては︑損害のコストと時間の損失は︑個人では背負いきれないものであることがあげられる︒他方︑製造物自体の損害のみが発生する場合︑商業的な使用者︵
co m m er cia l us er
︶はその製造物についての価値の損失 を負担することができ︑損失に備え保険をかけることもできるとされる (ての的目るす在存証の保的示黙はたまそも示いいつに物造製なのし能機︑りあで的明値は物の価や品質についての維持 害損の体合自物造みの︑が存在する場︒製造製 86)
は保証違反の請求がなされるべきであるとする (
るて保が者造製︑りおしの適が法るす関に証証排にどきで限制を任責︑な除限制の済救はたま保特法約契るきでがと︑ 事けに争紛る商おに引取いにらつ者ては︑当︒が契約条項を定めるこさ 87)
ことと引き換えに︑買主は製造物を安く取得することができるのであるとする︒商取引においては取引的地位の乖離は大きくないため︑当事者のリスク配分に立ち入る必要はなく (
賠能の求請のてべするあの性可見予︑し関に失損的済経︑ 88)
償を許容すると︑製造者が多大な額の責任を負うことになることが問題になるとされる (
︒ 89)
他方︑
Santor v. A & M Karagheusian, Inc.
(Santor River East
っ認な異く全はといなめ復を回の失損的済経︑は︶︵ 90)た判断基準を示した裁判例とされてきた︒その後︑覆されているものの︑
East River
との対比のため紹介する︒Santor
は欠陥のある絨毯の製造業者に対する︑買主の黙示の保証に基づく損害賠償請求が認められたケースである︒買主は全国的に一級クラスと広告・宣伝された品質の絨毯をディーラーから購入したが︑磨耗と筋が生じるなどの欠陥が生じた︒その後︑ディーラーとの連絡が困難となったため︑買主は製造業者に責任を追及し︑買主は製造業者と契約
関係がないのにもかかわらず︑絨毯の品質につき目的適合性についての黙示的保証違反に基づき︑絨毯の売買価格と欠
(二一二〇)
英米法における電子情報取引と経済的損失の賠償について(二・完)五同志社法学 六一巻七号 陥絨毯の市場価格の差額を損害賠償として請求することができた (
︑て的終最︑とるいしは返り繰をとこうに製とにはれこ︑がるなと造こく着き行に者いる直主え︑接の売が供給者を訴え る買︑と保よに所判が主証直接の売主を︒違反で訴裁 91)
時間の浪費であり︑破産︑管轄︑責任排除︑出訴期限等によって妨げられてしまうおそれがある︒このような過程はニュージャージー州では要求されるべきではないとされた (
︒ 92)
このアプローチはその後の裁判例において採用されず (
v. Marrone Greer & Polman Const., Inc.,
︑二〇〇九年に 93)( Marrone
(Marrone Marrone
っがディングに欠陥あラり︑浸水被害を蒙ッ︑クれ︵︶において覆さている︒においては 94)た住宅の所有者が︑直接契約関係にない建物の外壁の下見張り製品の製造者および頒布者に対し︑過失︑厳格責任などを追及した︒
Marrone
においては人身被害または人的財産への損害がなく︑住宅のみに被害が生じたため経済的損失の請求は認められなかった︒請求が認められない理由としては︑不法行為法の原則が人身被害または他の財産への損害の請求を解決するのに適しているのに比べ︑契約法の原則はその製造物自体に対する損害によってもたらされる経済的
損失の請求を解決するのに適していること︑製造者が人身被害または財産的損害のリスクを負い︑買主が瑕疵ある製造物の購入によって発生した経済的損失のリスクを負うことがより適切であること︑流通連鎖の下流も含め︵
do w ns tr ea m in th e ch ain o f d ist rib ut io n
︶すべての予見可能な損害の回復を認めることは︑製造者に対して︑多くの責任を負わせる ことになること (るいてれさ摘指 ( 規保証についてのす定が存在典ることがの法足事費者が品質について満で︑きない場合には︑統一商消 95)
︒ 96)
もちろん︑人身被害の賠償は重要であるとはいえ︑財産的損失のコストも多大になる場合がある︒
East River
は商業的な使用者を対象としているが︑消費者の場合には財産的な損失に関し保険をかける場合はより少なく︑Santor
のようにディーラーに責任を追及できない場合もあり︑製造物の種類によっては︑消費者がその財産的損害についてのコス
(二一二一)
英米法における電子情報取引と経済的損失の賠償について(二・完)六同志社法学 六一巻七号
トを負担させるのが酷な場合がある︒さらに︑コンピュータなど︑電子的情報取引における高度な技術をその作成に必
要とする製品については︑製造業者が製品の品質を管理し︑欠陥があればそれを補修することが求められる場面も多いのではないかと思われる︒
Santor
においては広告・宣伝によって明示された絨毯の品質が問題とされたが︑契約が存在しない場合の広告に基づく責任を課すことができるかという点については︑二〇〇三年に改正された統一商事法典第二編の第三一三A
︑B
条が 注目される︒統一商事法典第二編第三一六条は︑広告︑宣伝などに基づく明示的保証について規定し︑その発生︑制限などに関する言葉︵w or ds
︶や行為は合理的に首尾一貫して︑解釈されるとする (とさ法州︑といなれ択採てっよに州︒ 97)
して機能しないものの︑二〇〇三年の改正は当事者間に契約が存在しない場合の広告に基づく責任を追加している (
三売一三第はていつに係関の主と主買いなが係関約契の接 直︒ 98)
A
︑に録記るす属付はたまた条れさ装包に共と品物︑のよって生じる義務と︑第三一三
三一
B
公新ついての規定が設務された︒第三のに義衆ーへのコミュニケシ条ョンにより生じるA
︑B
売義務について従来の主すの責任を拡大したものる対条直は双方とも︑売主の接にの契約関係にない買主と されるが (︑第三一三 99)
るされ (
B
へ薄告に対する信頼はいのとして批判衆公の広般のれ広告に対して課さる一責任については条︑︒ 100)
なお︑
East River
では︑商人であった原告について経済的損失の原則を適用したことから︑商人でない消費者が︑経済的損失の賠償を受ける余地は残されていたものの (ててし用適を則原の失損的済経もし対に者費消︑は州の数多大︑ 101)
いる (
︒ 102)
なお︑いくつかの州においては︑製造物の欠陥の性質︑生じる損害のリスク︑被害の状況を考慮するアプローチが採
用されている︒﹁突然に危険﹂な出来事があったかどうかを含む︑欠陥の性質︑リスクの種類︑被害が起こった状況を
(二一二二)
英米法における電子情報取引と経済的損失の賠償について(二・完)七同志社法学 六一巻七号 考慮するアプローチは︑ネブラスカ州 (
︑ニューヨーク州 103)(
︑ワシントン州 104)(
などでも採用されている︒ 105)
Pennsylvania Glass Sand Corp. v. Caterpillar Tractor Co .
︵Pennsylvania Glass
((
︶においては欠陥の性質︑リ 106)スクの種類︑被害が起こった状況 (
るロダーロドンエトンフ火︑は所判裁︑ていおの災ス高あで故事な険危に度︑にの然突︑は傷損るよにーケたし傷損が トかダーロドンエがンロら︒るれさ慮フ発火エ体自ダーロドント災ンロフ︑し生が考 107)
とし︑火災を鎮圧することができず︑より深刻な損害をもたらした瑕疵であると主張されるデザインは︑人身と財産に対して︑深刻な被害のリスクをもたらす︑安全に対する危険︵
sa fe ty h az ar d
︶であるとした︒このような状況は第二次 不法行為法リステイトメント第四〇二条に規定する非合理的に危険な状態にあたるとした (︒ 108)
(
ただしPennsylvania Glass
のアプローチはEast River
からは︑製造業者がビジネス上の行動を計画するためには不 確定すぎると批判され (判裁てれわ従もていおに所い訴な控区回巡三第の後のそ︑い 109)(
保保こるけかを険てがいつに失損のとで使為な別特の上法行き法不︑めたる用のに費そいても︑消お者製造物自体とは 州ンシルバニアのの上位裁判所︒ペ 110)
護を必要とせず︑製造物自体への損害は製造物の価値と品質を維持することを目的とする保証責任に基づく請求によってなされるべきであるとされ (
East River
説のがあると意得見が表明され力はるいに論結の︑がるあはで論傍︑て 111)(︒ 112)
証物︑はていつに建物の築新︑は任責建のす準保うよすた充を水質の定一ていつにる対に人負請築建の者有所の宅住
3
定済建物の瑕疵による経的制損失の賠償の法限と制する法が存在するほか︑経済的損失の原則の例外として捉える州も存在する︒新築の住宅については︑コネチカット州︑インディアナ州︑メリーランド州︑ニュージャージー州︑ニューヨーク州などが新築住宅の保証についての規制を有し
ている (
︒ 113)
(二一二三)
英米法における電子情報取引と経済的損失の賠償について(二・完)八同志社法学 六一巻七号
アラバマ州においては︑
W ooldridge v. Rowe
(がた火に壁るあにろ後の炉暖︑めたれさ築建に切適不が炉暖ていおに 114)
燃え移って住宅とその内部が損害を蒙った事例において︑居住用の新築不動産については︑﹁売主注意せよ﹂が廃止されたものの︑その他の不動産については当事者間に契約関係がないため︑﹁売主注意せよ﹂が適用され︑建築業者の︑
住宅の所有者に対する責任が認められなかった︒買主は︑不動産譲渡証書︵
de ed
︶における明示的な契約または売買契約において自身の保護をはかることができるからであるとされる (︒ 115)
イリノイ州の
Foxcroft Townhome Owners Asso. v Hoffman Rosner Corp.
(を価たっが下が値のし産動不めたたとてて法どな任責為行不︑失過の者業築建きし壁下建物の外の見張りが徐々に悪化 はコ︑者ていドンがミニアムの所有にお 116)
追及した事例において︑裁判所は︑このような経済的損失に関し︑直接の買主だけではなくその後のすべての買主に対して合理的に手ぎわのよい方法︵
re as on ab ly w or km an lik e m an ne r
︶で建築しなかったとして︑建築業者に不法行為法上の義務を負わせることは︑建築業者に無限の責任を負わせることになるとして︑建築業者に不法行為責任を課すことはできないとした︒
メリーランド州の
Council of Co-Owners v. Whiting-T urner
(のもれ隠たれさらた果る結の失過︑は務た非意に害被身人てっよ況合状な険危に的理義注デ検のザイン︑査︑建築上の コミドンよ︑はていアニびムの建築士おに建築業者お 117)
リスクを蒙ることが予見可能である者に及ぶとした︒裁判所は死亡または人身被害の明白な危険を惹き起こす建設上の瑕疵の補修のための合理的なコストの回復を認めている (
で結かたし生発が害損てしと果︑はかうどかるれさ課が務義︒ 118)
はなく︑死亡または人身被害という過失によるリスクが生じたかどうかで決定すべきであるとし︑危険な状況を修正するための合理的な費用を回復することができるとされた (
︒ 119)
コロラド州では︑
Cosmopolitan Homes, Inc. v. W eller
(前すの入購︑もてし対に主買る続後︑は者業築建︑ていおに 120)
(二一二四)
英米法における電子情報取引と経済的損失の賠償について(二・完)九同志社法学 六一巻七号 に発見できなかった土台のひび割れについての過失による責任を負うとされ︑建築業者は契約法とは独立した︑隠れたる瑕疵のない住宅を建設する義務を負うとされる (
た個ま督監︑量技のてしと任責の人告被︑はにめたす課を任責失過︒ 121)
はデザインの瑕疵︵
de fe ct s in w or km an sh ip , s up er vis io n, or d es ig n
︶が証明されること︑瑕疵は買主が合理的な調査によっても発見できなかった隠れたる瑕疵であることが必要となるが︑これは単なる質の悪化や︑取引上のロスについて の請求を防止するためであるとされる︒買主は売買の際には隠れたる構造的な瑕疵についてまで発見することを期待されるものではない (Club Yacht v. Y Excavating A.C.
た負わせに︒さら者︑に業いと建を任責のて築つに疵瑕︑し 122)Homeowners Association, Inc.
(がなか庫車︑やとこいい道てれらけ付り取に切ら路がで疵瑕のどなとこるあ対ま反が斜傾の道車ので適どムテスシ水な い有構てっよに者ウ所のスさハンウタ︑成るれ根排︑扉︑突煙︑屋て︑窓︑が体団では 123)
あるとして︑下請人に対し過失責任を請求した事例において︑コロラド州最高裁判所は︑所有者の団体の請求は経済的損失原則によって阻まれることはないとして︑経済的損失原則を適用しなかった︒経済的損失原則は不法行為法と契約
法の区別を維持するために存在し (
に意不︑ばれけなが務義注行たし不法行為法立おけ法為独めがるれさといなれら認法がとこすなを求請の上る ( にな違の務義約契的︑示黙はたま的示反よ︑をは者事当たっ蒙みっの失損的済経て明 124)
︑注意義 125)
務が存在するか否かの判断には政策的考慮が関わってくるとされる (
確のを権求請くづ基に疵瑕上設建の者権有所たま︒ 126)
保するために制定された特別法である︑
C on st ru ct io n D ef ec t A ct io n R ef or m A ct
︵建設欠陥訴訟修正法C D A R A
(は損人的財産に対する実際の害く﹂または︑﹁物的財産もしくはし請も建築士︑請負人︑下人などに対する︑﹁物的財産 ︶︑は 127)
人的財産の使用に対する実際の損害﹂が存在する場合の︑建設上の瑕疵の過失責任の請求を認めるものであることからも︑下請人が建設において過失を行わないという独立した義務を負うことが導かれるとする (
︒下請人は建設の専門家で 128)
あり︑過失による建設瑕疵に関わる責任を負うとされ︑住宅所有者に対して︑契約義務とは独立した不法行為上の注意
(二一二五)
英米法における電子情報取引と経済的損失の賠償について(二・完)一〇同志社法学 六一巻七号
義務を負うとされた︒この場合の注意義務とは︑住宅を建設する際に過失を行わないことであるとされた (
︒ 129)
他方︑反対意見は︑請求は契約上の保証違反に基づくものであるので経済的損失の回復は認められないとし︑また︑
C D A R A
は請求がなされた後に制定された法であること︑制定の目的は︑瑕疵が建築規制に関する技術的な違反である 場合などの不確かな被害に基づく請求を制限するためのものであるため︑下請人に独立した義務があることを支持するものではないと主張した (︑プこともあり︑全体のロあジェクトを監視しるで人社請人は通常請負に︒比べて小規模の会下 130)
プロジェクトの計画に精通する義務を負い︑買主と取引する建築請負人が下請人の仕事についてのさまざまなリスクについて査定するより良い地位にあるとする (
︒ 131)
カリフォルニア州では︑
Aas v. Superior Court
(所落失過︑ていつに下よの格価︑用費修補にるよか判裁︒たれわ争が否責かるきで及追を任るに瑕の宅住︑し対に人疵 ー所︑が者有ての宅住︑ィいデ︑ベロッパに請負人︑および下請お 132)
は︑財産的損害または人身被害が生じていない場合には︑ディベロッパー︑請負人︑または下請人は過失による責任を負わないとした︒不法行為法は︑建築の瑕疵について財産的損害または人身被害に対する救済を認めるが︑欠陥製品の
補修費用または減少した価格の補償など︑製品取引において失った利益の回復を認めないとした (
れれ築上の瑕疵によってもたらさるた責任については︑立法に委ねら建し法さ不法行為こは補償でれをなき惹起害被い ︒に的統伝にうよのこ 133)
るべきであるとする (
︒ 134)
この判決後︑カリフォルニア州は新築の住宅︵
ne w re sid en tia l c on st ru ct io n
︶について︑T he R ig ht to R ep air A ct
︵修 補権利法 (なとし定規ていつに準基の定特のど ( 重こいないてれま含がれ割びひな大につ礎制定した︒この法は建築物にい︶てドアから浸水しないこと︑基を 135)
請︑製の々個びよお人請下︑人負等は者者有所の宅住︑ばれあが反違︑造 136)(
に対して 137)
財産的損害または人身被害がなくとも︑経済的損失の賠償を請求することができるとする (
︒つまり制定法によって経済 138)
(二一二六)
英米法における電子情報取引と経済的損失の賠償について(二・完)一一同志社法学 六一巻七号 的損失原則が破棄されている︒
サウス・カロライナ州は︑
Kennedy v. Columbia Lumber & Mfg. Co .
(宅︑住いなに係関約契は者業築建︑ていおに 139)
の買主に対して︑以下の場合に不法行為法上の経済的損失についての責任を負うとした︒︵一︶建築規則︵
bu ild in g co de
︶の違反︑︵二︶業界標準︵in du st ry s ta nd ar ds
︶からの逸脱︑または︵三︶物理的な被害︵ph ys ic al ha rm
︶の深刻 なリスクを生じることを知っていたかまたは知りつつ住宅を建設した場合である (法的反違の務義な法な︑がるれさ課がさみ約為行法不と法契れ︑はに合場たがのて合任違反をし場たには︑契約上の責 上築業者が契約いの義務のみにつ︒建 140)
の両方の責任が課されること︑たまたま物理的な被害が存在しなかったとしても︑建築業者は非難されるべきであるということがその理由としてあげられている (
︒ 141)
建築士に対しては︑不法行為法上︑専門家としての責任を問うことが可能である︒
A.E. Investment Corp. v. Link Builders, Inc.
(ウト務所がビルのテナンに築対し責任を負った︒事建十て建設会社の監督を分でに行わなかったとしは 142)
イスコンシン州の過失に関する法律においては建築士は契約関係のない第三者に対して責任を負う可能性があるとされた (
ビ専対する責任を肯定し︑門祉家の本質とは︑そのサーに福事の判所は公衆に対して仕を︒請負った専門家の公共裁 143)
スを公共の福祉への自覚と責任なしには請負うことができないという理解のもとに提供することであるとした (
︒ 144)
建物の瑕疵による経済的損失の回復についても州によって異なった扱いがなされており︑厳格に経済的損失の賠償を認めない場合もあるが︑新築の住宅保証に関する法規制が設けられる州もあり︑人身被害のリスク︑隠れたる構造上の
瑕疵︑物理的な損害のリスク︑建築規則︑業界標準からの逸脱など州ごとの異なった基準に従って瑕疵による損害の賠償が認められる場合がある︒建築士については︑専門家の責任が認められるが︑下請人についても︑専門家としての注
意義務が認められる場合も存在する︒
(二一二七)
英米法における電子情報取引と経済的損失の賠償について(二・完)一二同志社法学 六一巻七号
4
不実表示による経済的損失(
a
)第二次不法行為法リステイトメント第五五二⑴条 経済的損失の回復は認められないという原則は︑過失および過失による不実表示についての請求にも適用されてい る︒過失不実表示の請求は︑契約関係の存在する当事者間において︑製造物の品質に瑕疵が存在する場合に主張されることが多いが︑このような場合の請求は認められないものの︑意図的な不実表示 (または契約の詐欺的誘引 145)(
が行われた場 146)
合に不法行為法上の損害の回復が認められている州も存在する︒
過失不実表示について規定する第二次不法行為法リステイトメント第五五二⑴条は︑事業︑専門もしくは雇用の過程︑
またはその者が金銭的な利害を有するその他の取引において︑その取引において相手方を誘引するために虚偽の情報を
提供した者は︑当該情報の取得または伝達において合理的注意または能力を行使しなかった場合︑相手方が当該情報に対して正当な信頼をおいたことにより被った金銭的損害について責任を負うと規定する︒同条コメントにおいては︑条
文の説明のための例がいくつかあげられており︑英国の
Hedley Byrne
に基づいているものが例の一一にあげられている (る︑採択していたとしてもそ条の適用を︑情報を提供すを二為五だし︑第二次不法行法︒リステイトメント第五た 147)
事業を営む被告に限定するなど特定のケースに制限する州もあり (
請さえ例︒るいてれな︑が応対なまざまばバてはの示表実不失過てーいおに州アニジさっめい認るかにつては︑州によ 示求請のよ表実不失認をうめるか︑どの︑な範囲で過 148)
求は一般的には認められないとされ (
るれさとるれら ( の係においてにみ限定的の認め関間い者ンディアナ州におて︑は︑雇用者・被用イ 149)
︒ 150)
(二一二八)
英米法における電子情報取引と経済的損失の賠償について(二・完)一三同志社法学 六一巻七号 (
b
)情報の提供自体が問題となった事例 英国のHedley Byrne
に類似する事例としては︑証券の売買に関わる詐欺について証券取引法上の違反を追求するこ とができるケースがある (v Ragland Shattuck Nat'l Bank
︒このほか 151)(いた銀が客顧の別しを信与てし頼信を行詐情訴おに例事たえで欺示表実不失過と報のっそて誤た情報を伝えたため︑ が長社状の行銀︑行銀態の顧客の信用でについは 152)
て︑オクラホマ州法に基づき銀行に対する過失不実表示の請求が認められた︒オクラホマ州法における過失不実表示の要件としては︑︵一︶重要事実の不実表示または非開示︑︵二︶不実表示または非開示の重要性︑︵三︶信用照会に返答
する際︑銀行が有能な︵
co m pe te nt
︶銀行員︵ba nk o ffi ce rs
︶に要求される合理的な注意義務を遂行しなかったこと︑︵四︶原告は銀行の不実表示または非開示を合理的に信頼したこと︵re as on ab ly re lie d
︶︑および︵五︶原告がその信頼の結果︑損害を蒙ったことがあげられる (
︒ 153)
Berkline Corp. v Bank of Mississippi
(︑請る不実表示を求にするためにはよ失ッにきづ基に法州ピ過シシミていお 154)
以下のことを証拠の優越をもって証明する必要があるとされる︒︵一︶不実表示または事実の非開示︑︵二︶事実表示または非開示の重要性︑︵三︶銀行員が信用の照会に返答する際に︑公衆が合理的に能力を有する銀行員に対して期待し
うる程度の勤勉性と専門性を遂行しえなかったこと︑︵四︶原告が銀行の不実表示または非開示について合理的に信頼
したこと︑および︵五︶合理的な信頼に基づく直接的かつ近因的結果︵
dir ec t an d pr ox im at e re su lt
︶として原告が損害を蒙ったことである (︒ 155)
建築に関する専門家としての責任について取り扱ったものとして︑デラウエア州法が適用された
Guar dian Construction Co. v. Tetra Tech Richar dson
︵T T R
(ン第メトイテスリ法為行法不次二︑はていおに例事のこ︒るあが︶ 156)
ト第五五二条が適用され︑防波堤建築プロジェクトの入札に参加するための計画書と仕様書を作成するために建築業者
(二一二九)
英米法における電子情報取引と経済的損失の賠償について(二・完)一四同志社法学 六一巻七号
に雇用されたデザイン技術士である
T T R
の︑建築業者に対する過失による不実表示責任が認められた︒建築業者は︑計画書と仕様書の計算の誤りのため︑請負った仕事を完成させるために損失が生じたと主張した︒イリノイ州においては︑過失による不実表示を請求するためには︑被告が情報を提供する事業に従事していること︑かつ︑被告が事業取引
において他者を指導するために情報を提供したことを証明することが必要になる︒情報ではない有形物の製造者は情報を提供する事業に従事していると判断されず︑情報の提供が︑製品情報の提供など単に物品の販売に付随しているのみ
の場合には︑物品の製造者は︑過失不実表示に基づく責任を追及できないとされた (
︒ 157)
(
c
)製造物の瑕疵が問題となった事例 オレゴン州において︑Portland Gen. Elec. Co. v W estinghouse Elec. Corp.
は人的被害または有体財産への被害︵
pe rs on al in ju ry o r in ju ry t o ta ng ib le p ro pe rty
︶が存在せず︑契約関係から発生する過失に基づく請求は︑契約から独立した義務が存在する場合のみに制限されるとした︒独立した義務とは︑例えば︑弁護士︑エンジニア︑建築士などの 専門家に課される義務を指すとされる︒独立当事者間の契約における特定の債務の不履行に基づく請求がなされた場合には︑過失および過失による不実表示についての請求は認められないとされる (為法行法不次二第も州アニバルシンペ︒ 158)
法リステイトメント第五五二条を採用しているが︑同条は建築家またはその他のデザインを行う専門家に対する責任であるという狭い解釈を採用している (
︒ 159)
アイオワ州法が適用された
Maynar d Co-op. Co. v. Zeneca, Inc .
(っ︑対に者業農酪にてともを言助たっし除の助蒙を害損︑し言う草よるす布散を剤誤ら会除れた社がか︑草剤の製造者 草除らかた者業農酪つにめいて助言するはに雇わ︑ 160)
た酪農業者に対して︑損害の賠償をした後︑除草剤の製造者に対して過失不実表示責任を追及した事例である︒裁判所
(二一三〇)
英米法における電子情報取引と経済的損失の賠償について(二・完)一五同志社法学 六一巻七号 は製造物の欠陥のため︑製造物の品質が商業的な期待に沿わないことに基づく過失不実表示の請求は認めず︑製造物の品質に関する不実表示は保証違反の請求によって回復されるべきであるとした (
︒ 161)
ウイスコンシン州法が適用された
Cooper Power Sys. v. Union Carbide Chems. & Plastics Co .
(るけに適しているという助言を受︑材化学会社からペンキを製造す料の︑の製造会社がキ圧器変コ用ンーのペグンィテ にキンペ︑はていお 162)
ための樹脂を購入し︑その後ペンキ製造会社が電子部品会社のために行ったコーティングが︑高い気温によってはがれてしまうなどの瑕疵が存在した事例において︑電子部品会社の化学会社に対する過失不実表示の請求が認められなかっ
た︒製造物の品質が商業的な期待に沿わないことに備え︑製造物の品質に関する不実表示について原告があらかじめ明示的保証を得ておくことが可能であるということが︑過失不実表示の請求を阻む理由として挙げられる (
︒ 163)
他方︑詐欺的な不実表示がなされた場合には︑経済的損失の原則は適用されない︒
Kaloti Enterprises, Inc. v.
Kellogg Sales Co.
(Kaloti
こ売対し今後は直接小店者に商品を販売するに売業以︵︶においては︑前から取引のあった卸 164)とを告げずに商品を販売した食品メーカーに対する詐欺的不実表示の責任が認められた︒詐欺的不実表示の要件としては︑︵一︶事実に関する表示がなされ︑︵二︶表示が真実でないこと︑︵三︶被告が︑表示が真実でないことを知ってい
たか︑または表示真実か虚偽のものか否かに配慮せずに表示がなされたこと︑︵四︶被告の表示が詐欺的意図と︑相手
方の行為を誘引する意図をもってなされたこと︑および︵五︶原告が声明を信頼し︑信頼して損害を蒙ったことがあげられる︒事実について開示する義務がある場合には開示しないことも︑存在しない事実について表示することと同等で
あるとされる (
︒ 165)
経済的損失の回復は認められないという原則は︑過失及び過失不実表示についての請求にも適用されている︒米国に
おいて過失不実表示について規定する第二次不法行為法リステイトメント第五五二条は︑専門家が情報を提供した場合
(二一三一)
英米法における電子情報取引と経済的損失の賠償について(二・完)一六同志社法学 六一巻七号
の責任という限定的な捉え方がなされている場合が多く︑製造物の瑕疵が存在する事例につき︑契約締結過程における
不実表示責任が追及できる余地は限られている︒契約関係の存在する当事者間において︑製造物の品質に瑕疵が存在する場合に過失不実表示の請求がなされることが多いが︑このような場合の請求は詐欺的な行為が存在する場合を除いて
認められない場合が多い︒
5
問合競権求請と失損的経済るけおに引取報情子電題 電子情報取引において︑当事者間に契約が存在する場合︑製品に瑕疵が存在する事例において︑過失不実表示の責任を追及しても︑責任が認められる可能性は低い︒ただし︑詐欺的な契約の誘引について不法行為責任が認められる可能性がある︒
Rockport Pharmacy , Inc.
︵R oc kp or t
︶v . Digital Simplistics, Inc.,
︵D ig ita l
︶︵Rockport Pharmacy
(R ita t or kp oc D ig l
認が償ス賠らの失損め︒れなかった済はに︑カ的経いミ控訴裁判所にお︑︑てズ適れさー用が法州リ ︶回巡八第はで 166)タム仕様のコンピュータ・システムを提供し︑保守を行う契約を締結し︑納入を行った︒その後︑システムの操作に問題が生じ︑いくつかの修正の試みが失敗した後︑
R oc kp or t
は保守契約の解除と︑ソフトウエアのアップデートの受領 を中断した︒R oc kp or t
はD ig ita l
の過失責任を主張した︒しかしながら︑ミズーリ州法においては︑不法行為法上の賠償は︑人身被害もしくは販売された財産以外の財産的損害︑または暴力的な事件︵vio le nt o cc ur re nc e
︶のため財産が役に立たなくなった場合のみに可能であるとされる︒裁判所は︑本件で損害として主張されているのは︑コンピュータ・システムの費用と︑保守︑交換の費用だけであり︑コンピュータ・システムに格納されたデータの損失は︑販売された
財産以外の財産の損害にあたらないとして︑経済的損失の賠償を否定する原則に従い︑賠償は認められないとした (
︒ 167)
(二一三二)
英米法における電子情報取引と経済的損失の賠償について(二・完)一七同志社法学 六一巻七号
R oc kp or t
は経済的損失原則の例外にあたる︑専門家の役務提供における過失があったと主張したが︑当事者間に保守契約が存在したとしても︑それは物品の売買契約の一部であるため専門家としての役務提供上の過失の請求はできない とされた (︒ 168)
ニューヨーク州においても︑
AccuSystems, Inc.
︵A cc uS ys te m s
︶v . Honeywell Information Sys. Inc ,
︵H on ey w ell
︶︵
AccuSystems
(︒いーュピンコ︑れさとな・れらめ認ばれけなが係タシのなたれさといなはに係関別ス特と主買は主売のムテ関別特の 買主売るな単︑は求請示の表実不失過︑ていお︑主︶者認信はたま託信の間事間当︑ずれらめ認はにに 169)
しかしながら︑契約締結前の詐欺的な行為が契約を誘引したとされる場合には︑不法行為法上の詐欺的誘引の訴えが認められる場合が存在するとされた︒
A cc uS ys te m s
の設立者であり︑社長であるSe ld en
は︑T L
―6
といわれるオペレーティングシステムについて︑製品テストがなされており︑他の場所でも設置されていて︑満足に機能していること︑マルチタスクに対応できることなどH on ey w ell
の販売担当者から告げられたことを信頼し︑H on ey w ell
と契約を締結した︒契約は三つあり︑まず︑コンピュータ機器︑サービスおよびソフトウエア製品OEM契約は︑通常の使用・サービスにおいて︑三〇日間H on ey w ell
の販売する機器に技量または材料上の瑕疵が存在しないこと︵
fre e fro m d ef ec ts in w or km an sh ip o r m at er ia l un de r no rm al us e
︶の保証︑契約︑不法行為法上の責任︑間接︑特別︑結果損害に関していかなる責任も負わないことと︑契約上の請求について出訴期限を二年とすることを定めていた︒第二の契約はOEMソフトウエア製品のライセンス契約 であり︑A cc uS ys te m s
にライセンスされたソフトウエア製品についてのH on ey w ell
の契約法︑不法行為法︑またはその他の責任をA cc us ys te m
が支払った価格の一〇%または五〇〇〇ドルのどちらか少ない額に制限するものであった︒第三の契約はデータ処理機器の保守サービス契約であり︑
H on ey w ell
が契約法︑不法行為法上︑その他いかなる間接︑特別︑(二一三三)
英米法における電子情報取引と経済的損失の賠償について(二・完)一八同志社法学 六一巻七号
結果損害を負わないことと︑出訴期限を二年とすることが定められていた (
︒ 170)
裁判所は︑オペレーティングシステムの
T L - 6
は三つ以上の端末が操作された場合に機能せず︑A cc uS ys te m s
が設置された最初の場所であり︑テストも行われていなかったことなどから︑H on ey w ell
の表示は︑真実でないことを知っていたか︑または真実であるかどうかについて全く無頓着になされ︑原告を欺き︑その表示に基づいた行為を誘引するために提供され︑被害が生じたとし︑詐欺的な誘引は契約条項を無効にしたと判断した︒その結果︑ニューヨーク州の出訴
期限法が適用され︑詐欺の行為から六年以内またはその発見から二年以内に請求がなされれば良いとする (
Se ld en
︑エし︑コンピュータサイをンス従教えていたことから事開にでは︑が過去I発MBソフトウエア製品ell w ey on H
︒ 171)H on ey w ell
への信頼を非合理的なものであると主張したが︑裁判所は︑T L - 6
はSe ld en
が知っていたシステムと異なっており︑ダイナミックに成長する産業においては︑表示への信頼は合理的なものであったと判断し︑原告は詐欺によって 誘引されたことが証明されたとした (︒ 172)
Huron Tool
︵H ur on
︶v. Precision Consulting Services, Inc.
︵P re cis io n
︶︵Huron Tool
(︶においても経済的損失原 173)
則の例外として︑詐欺的誘引の訴えが認められる理由について述べられている︒
P re cis io n
はH ur on
との間でコンピュータ・ソフトウエアシステムとシステムのデザイン︑プログラミング︑トレーニング︑設置サービスを提供するという契 約を締結し︑カスタマイズのための仕事も行われた︒その後︑ソフトウエアの瑕疵のため︑H ur on
がP re cis io n
を契約違反︑保証違反︑詐欺︑不実表示で訴えた︒裁判所は︑経済的損失原則について︑買主の期待が︑製造物が適切に機能しないため挫折した場合︑経済的損失のみを蒙った買主の救済は契約によってのみ与えられることであるとする (
図りる救済も区別することによ︑さ商業取引の信頼性の維持をれ許契︑損失原則の目的は︑約法と不法行為法を区別し ︒的済経 174)
ることであり︑契約が締結された場合︑当事者は契約に拘束されるべきであるが︑詐欺的誘引は経済的損失原則の例外
(二一三四)
英米法における電子情報取引と経済的損失の賠償について(二・完)一九同志社法学 六一巻七号 であるされた︒その理由は︑詐欺的誘引の場合には︑一方当事者の︑公正な条項のために交渉し︑かつインフォームドデシジョンを行う能力が他方当事者の詐欺的な行為によって損なわれているからであるとされる (
︒他方︑誠意のない当 175)
事者の不実表示が物品の品質または性質に関してなされた場合には︑他方当事者は瑕疵が存在する可能性に備え︑保証その他の条項について交渉する自由があるとされる (
と質たれさなが示表的欺詐し関に性と質品︑はていおに例事のこ︒ 176)
の主張は契約違反や保証違反と独立した主張とはならず︑詐欺的誘引の主張は認められないとされた︒
詐欺的誘引の要件については前述の
Kaloti
(存てが示表実不な的図意︶一︒︵るいれ下に示提が件要のさ以︑もていお 177)
在し︑︵二︶不実表示が契約締結以前に存在したこと︑および︵三︶詐欺が契約とは無関係であり︑契約に織り込まれていないものであったこと︑つまり︑詐欺が︑当事者が契約し︑またはその他契約の履行に関連した物品の品質または
性質に関わるリスクおよび責任に関連するものでないことが必要とされる (
︒ 178)
AccuSystems
の基準によれば契約締結前の詐欺的誘引に基づいて責任を追及することが可能となるが︑Huron Tool , Kaloti
の基準によれば︑契約締結前に品質と性質に関し詐欺的誘引が行われた場合であっても︑当事者間の契約による物品の品質または性質に関わるリスクおよび責任の分配を変更するのは困難であることから︑責任を追及するのは困難となる︒
6
電子情報取引と専門家の責任 経済的損失原則の例外として︑専門家としての不法行為責任が認められるが︑コンピュータ・コンサルタントに対する専門家の責任は認められない傾向にある (Hosp. Computer Sys., Inc. v. Staten Island Hosp.
︒ 179)(はその理由として︑専 180)
門家とされるために必要な広範で正式な訓練及び学習︑適格な免許授与による実務への参入︑倫理規則の不在をあげる (
︒ 181)
(二一三五)
英米法における電子情報取引と経済的損失の賠償について(二・完)二〇同志社法学 六一巻七号
他方︑認められた裁判例である︑
Data Processing Services, Inc.
︵D P S
︶v. L.H. Smith Oil Corp .
︵Sm ith
(︶は︑ま 182)
ず当事者間の取引を︑物品の売買ではなく役務の提供であると判断し︑統一商事法典第二編の適用を排除することにより︑コンピュータ・プログラマーに対し︑コモンロー上の義務を課し︑さらに商業または専門において技能と資格を有
していると公に公表する者は︑その技能を有することおよび︑その商業または専門において相当に知識のある︵
w ell in fo rm ed
︶メンバーが通常有している勤勉さを示すことを黙示的に表示しているとして専門家としての注意義務を課した (
状がる存況に類似するも者在患のであるとされたす (
S P D
エるめ求を療治に者医やトンライので識知と能技はるのたれさ引取︒あたにク︑取引は弁護士め助言を求める 183)︒ 184)
7
米国裁判例の動向 米国においても契約法と不法行為法の境界の問題と水門問題についての懸念が経済的損失の賠償を制限する要因となっている︒経済的損失の賠償について厳格な立場を採用するEast River
のアプローチが多数の州で支持されるものの︑製造物の欠陥の性質︑生じる損害のリスク︑被害の状況を考慮する州の裁判例も存在している︒建物の瑕疵については︑厳格に経済的損失の賠償を認めない州もあるが︑新築の住宅保証に関する制定法を有する州も存在し︑隠れたる構造上
の瑕疵︑物理的な損害のリスクが生じる瑕疵が存在する場合︑さらには建築規則の違反が存在した場合においても契約法から独立した不法行為法上の責任が認められる州も存在している︒
過不実表示について規定する第二次不法行為法リステイトメント第五五二条については︑情報を提供する業務を行う専門家が情報を提供した場合の責任という限定的な捉え方がなされている場合が多い︒製造物の欠陥のため︑製造物の
品質が商業的な期待に沿わないことに基づく過失不実表示の請求は︑保証違反の請求によって回復されるべきであると
(二一三六)
英米法における電子情報取引と経済的損失の賠償について(二・完)二一同志社法学 六一巻七号 して認められず︑電子情報取引においても︑当事者に契約関係がある事例において製品の瑕疵が存在する場合に過失不実表示の責任を追及しても︑認められる可能性は低い︒契約締結前に品質と性質に関し詐欺的誘引が行われた場合にお
いても︑過失不実表示に基づいて品質︑性質についての責任を追及できるかどうかについては︑製造物の品質︑性質についての表示については契約違反と独立した請求とはならないとして認めないとする裁判例が多い︒
米国の裁判例においては︑英国の場合と異なり︑カスタム仕様のコンピュータ・システムの供給取引であっても︑専門家の役務提供取引とは認められず︑物品の売買であるとされ︑契約法と独立した不法行為法上の専門家としての責任
を問うことは難しいとされる︒
四 まとめにかえて 本稿においては︑英米法におけるコンピュータ・ソフトウエア︑ハードウエアの取得が関連する電子情報取引︑とりわけクライエントの要請に応じてカスタム仕様のシステムが供給される取引における経済的損失に関わる問題につい
て︑当事者間に契約が存在する場合︑直接的には契約は存在しないものの︑連鎖的な契約のつながりが存在する当事者
間において︑どのような場合に︑いかなる理由で経済的損失の賠償が可能となり得るかについて検討した︒
英国︑米国においても︑不法行為法上︑基本的には経済的損失の賠償については認められないとする
Murphy , East River ,
に代表される立場が主流となっている︒ただし︑経済的損失の賠償が認められる例外的な場合については︑不法行為制度と契約制度の区別という理論的な課題︑水門議論︑出訴期限といった実際的な問題に対処しつつ︑それぞれの国︑州が︑取引的地位や専門性などの点においてどのような者に︑欠陥・瑕疵の性質︑生じる損害のリスク︑詐欺不実
(二一三七)
英米法における電子情報取引と経済的損失の賠償について(二・完)二二同志社法学 六一巻七号
表示など供給者の行為態様も含め︑どのような状況において︑どのような保護を与えることが重要であると考えるかに
ついての政策に大きく左右される問題である︒
建物の瑕疵事例を取り上げると︑英国における
Murphy
は︑制定法の存在とあわせて理解する必要があり︑米国にお いても経済的損失について厳格な立場を採用するEast River
のアプローチを採用し︑厳格に経済的損失の回復を認めない場合もあるが︑新築の住宅保証に関する制定法がいくつかの州で存在し︑隠れたる構造上の瑕疵︑物理的な損害のリスク︑さらには建築規則の違反が存在した場合の損失の賠償が認められる州も存在している︒英国と︑他のコモンウエルス︑米国︑日本も含めて建物の瑕疵事例を比較してみると︑賠償がどのような場合に可能であるかという線引きが︑
制定法との関係も含め︑契約による救済の限界︑契約による責任配分との関係︑新築住宅の瑕疵についての責任︑新築でない住宅の瑕疵についての責任︑隠れたる構造上の瑕疵の有無︑物理的な損害のリスク・身体的被害のリスクの有無︑
建築規則の違反の有無などさまざまな観点から所有者等の権利保護をどこまで優先するかという政策的な配慮に左右されている︒多くの国が新築住宅の瑕疵に対する保証について︑特別な規定を設けるのは︑それらの住宅の所有者に対す
る保護が政策的に優先されるからである︒
英国における
Hedley Byrne
とHenderson ,
さらにJunior Books
も含め専門家の知識と技能およびそれらに対する信頼関係が存在する場合の当事者間における声明︑役務の提供に関連した事例は︑専門的知識と技能が存在する場合における︑契約と独立した不法行為法上の義務を拡張してきた︒このため︑助言︑役務の提供︑特別な技能︑特別な技能へ
の信頼︑といった要素を含む電子情報取引における︑契約法と独立した不法行為法上の義務の設定が受け入れやすいものとなっている︒
Hedley Byrne
とHenderson
によれば︑特別な技能と特別な技能への信頼をその要素として含む取引については︑声明︑役務の提供に関し︑伝統的に専門家とされてきた職業に従事する当事者以外に対しても︑契約法と
(二一三八)