運動介入後の筋硬度計測における
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(2) 第1章. 序論. 筋は運動を行う上で動力を発揮するための重要な器官であり,その状態の良し悪しがア スリートのパフォーマンスに影響を与えることも少なくない.その評価方法のひとつに筋 の硬さが挙げられる.この筋の硬さは評価方法によって様々な表現がなされているが,本 研究では皮膚上からの垂直圧力に対して筋によって提供される抵抗力あるいは変形を筋硬 度と定義することとした. この筋硬度は主に触診や押し込み式筋硬度計によって評価されてきたが,筋内部の状態 や標的部位を適切に評価しているか等の問題点があった.そこで近年超音波エラストグラ フィを用いた筋硬度評価が行われるようになり,これらの問題点をクリアできるようにな ってきた.そのなかでも Strain Elastography(SE)は皮膚上からの微小圧迫による組織のひ ずみを評価するため,これまでの筋硬度の概念に最も近い超音波エラストグラフィである. しかし,Strain Elastography によって評価される筋硬度が何を反映した指標であるかとい う点ついてはいまだ明らかとされていない.そこで,本研究ではこれまで運動介入後の筋 硬度変化の主要因とされてきた,筋内水分量増加に伴う筋内圧の増加及び筋形状変化とい った説に基づき,運動介入後の筋硬度変化がどの因子の影響を受けているか明らかにする ことで,運動選手に対する筋硬度の意義について議論することを目的とした. 研究内容及び主な知見 第 2 章.伸張性収縮後の筋硬度変化の要因の検討 -MRI T2 値との関連性を中心としてこれまで運動介入後の筋硬度変化で最もよく言及されてきた仮説は,筋内水分量増加に 伴う筋内圧の増加によって筋硬度が変化するということであった.しかし,この仮説に対 して十分な実験・考察はこれまでになされていなかったためあくまで仮説止まりとなって いるのが現状である.そこで,本章では筋内水分量を MRI T2 値によって評価し,上腕二 頭筋及び大腿四頭筋に対する伸張性収縮後の筋硬度及び MRI T2 値をはじめとする各種指 標との関係性を明らかにすることを目的とし,実験を実施した. 実験 1.上腕二頭筋に対する伸張性収縮後の筋損傷マーカーと SE による筋硬度との関連性 上腕二頭筋に対して伸張性収縮を行った結果,筋硬度は有意な経時変化を示したものの, MRI T2 値は有意な経時変化を示さなかった.そのため,筋内水分量の変化を伴わなくても 筋硬度は変化する可能性が示唆された.その他の測定項目については,血清クレアチンキ ナーゼ活性,白血球数は変化せず,筋力は運動介入直後でのみ有意な変化を示したため, 一過性の筋疲労が生じていたものと考えられる.また,肘関節伸展角度については経時変 化に主効果を認めたことから,受動的張力の増加が筋硬度増加に寄与していた可能性があ る. 実験 2.大腿四頭筋に対する伸張性収縮後の MRI T2 値と SE 法による筋硬度との関連性 大腿四頭筋に対して伸張性収縮を行った結果,筋硬度,MRI T2 値共に有意な経時変化を 示したが,その変化の様相には筋間差が認められた.特に二関節筋である大腿直筋に関し.
(3) て,筋硬度は運動介入 1 日後に最高値を示したのに対し,MRI T2 値は運動介入直後で最高 値を示したように,筋硬度と MRI T2 値の最高値にずれが生じていた.また,単関節筋の 内側広筋では筋硬度,MRI T2 値ともに運動介入直後に最高値を示していたのに対し,外側 広筋では筋硬度は有意な経時変化を示した箇所が認められなかったものの,MRI T2 値は運 動介入直後に最高値を示した.このように,筋硬度の変化には筋間差があることが認めら れ,さらに相関関係を検討したところ,筋硬度と MRI T2 値の間に有意な相関関係は認め られなかった. 以上より,筋硬度変化には筋内水分量の変化が必ずしも必要な因子ではない可能性が示 唆された. 第 3 章.高強度運動後の筋硬度変化の要因の検討-筋形状変化との関連性を中心として第 2 章において,これまで主要因とされてきた筋内水分量変化に伴う筋内圧の増加が筋 硬度変化の主要因ではない可能性が示唆された.そのため,本章では筋形状に着目し,高 強度運動後の筋硬度変化と筋形状変化との関連性を,腓腹筋内側頭を対象に検討すること を目的とした. その結果,腓腹筋内側頭の筋硬度,羽状角,筋厚,受動トルクは有意な経時変化を示し ており,さらにいずれも運動介入 3 日後に最高値を示していた.腓腹筋内側頭の筋硬度の 値,特に最高値では羽状角の結果を反映している可能性が高いことが示唆された.これは 羽状角が増加したことによって応力に対する抵抗が増したことによるものであると考えら れる. 結論 本研究から,運動介入後の筋硬度が反映する因子は筋内水分量ではなく,特に羽状筋で は羽状角の増加を反映したものであると考えられる.また,第 2 章実験 1 や第 3 章の結果 から,受動的張力が増加した状態で筋硬度が高い値を示していたことから,筋の短縮に伴 う筋の受動的張力の増加も反映していた可能性もあることが示唆された..
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