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第4章 アナモックス菌の固定化方法および装置化に関する研究

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第4章

アナモックス菌の固定化方法および装置化に関する研究

(2)

第 4 章 アナモックス菌の固定化方法および装置化に関する研究

4.1 はじめに

アナモックス菌を用いた廃水処理システムを開発するためには、アナモックス菌を反応 槽内に維持するための手法を開発する必要がある。その理由としては、アナモックス菌の 増殖速度(倍加時間)は 1.8 日と極めて遅いことや(1)、アナモックス汚泥の収率が極めて低 いことが挙げられる(2)

アナモックス汚泥は、自己造粒する特性を有することから、細かい砂を核として投入し、

流動床型のリアクタにより、自己造粒体を形成させ維持する方法(3,4)や、半回分法での運転

(SBR:Sequencing Batch Reactor)(5) が行われていた。さらに、近年、プラスチック担体 や、PVA ゲルビーズ等の流動する担体に付着させる方法などが考案されている。また、固定 床型のリアクタとして、不織布に付着固定する方法も報告されている(6)

本研究では、アナモックス菌を固定化するリアクタを開発するにあたり、まずリアクタ 形式について選定を行った。リアクタ形式は大分して流動(床)式のリアクタと、固定床 式のリアクタに分類されるが、アナモックスリアクタとしては、前者の方が有利であると 考えられた。これは、アナモックス菌は高濃度の亜硝酸により阻害を受けやすいため、完 全混合に近いリアクタが望ましい為である。また、汚泥脱水ろ液などの各種廃水処理では、

SS が多く含まれるケースが想定されることから、流入水中の SS で反応槽内が閉塞せず、安 定した処理が可能であることが好ましい。これらの点から、固定床のリアクタでは不利で あるという結論に至った。

さらに、流動床または完全混合式のリアクタを開発するにあたり、アナモックス菌の固 定化方法について検討した。アナモックス反応槽では、極めて高い窒素除去速度が得られ ることから、それに伴い激しい窒素ガスの生成が予想される。ガスが担体内部に溜まって、

浮上することが報告されており(4)、担体(菌)が流出してしまうことが想定され、担体を確 実に分離するための機構が必要であると考えられる。

そこで本研究では、菌の固定化や、その固定化菌体(担体)と排水の固液分離について 実績がある包括固定化法について検討を行うこととした。固定化には、様々な素材が考え られるが、既に硝化細菌の固定化で実績のあるポリエチレングリコール系のゲルによる包 括固定化を検討した。ここでは、少量のアナモックス菌をゲル内に固定化し、ゲル内で馴 養させると同時に、窒素性能を向上させる(立上げを行う)ことを目的とし、検討を行う こととした。

さらに、立ち上げ期間の短縮を目的として、固定化するアナモックス菌量の増加と立上 げ期間の短縮について検討を行った。同時に、Real-time PCR 法により、包括固定化担体内 のアナモックス菌数を定量し、担体内でのアナモックスの増殖速度について、定量的に解 析を行った。

(3)

4.2 アナモックス菌の包括固定化 4.2.1 方法

(1)供試汚泥

実験に用いた汚泥は、下水汚泥から集積培養したアナモックス汚泥を用いた(第 3 章参 照)

(2)供試担体

供試汚泥をポリエチレングリコール系のゲルにより包括固定化した(9)。製造においては、

嫌気性を維持することが好ましいが、アナモックス細菌に対する酸素の阻害は可逆的な阻 害であることが報告されていることから、好気条件下での製造を行った。ポリエチレング リコール系のモノマーに、重合促進剤((N,N,N′,N′-tetramethylenediamine)を添加したのち、

混合液の pH が 8.0 となるよう硫酸を用いて調整した。よく混合した後、アナモックス汚泥 を添加し、混合した。その後、重合開始剤(

potassium persulfate

)を添加し、シート 状になるよう、あらかじめ用意した枠の中に流し込んだ。約1分後、重合が完了し、シー ト状のゲルが得られた。これを 3mm 角の立方体となるよう整形し、実験に用いた。各薬剤 の組成は、ポリエチレングリコール 10%、重合促進剤 0.5%、重合開始剤 0.25%、アナモッ クス汚泥 0.24%である。

(3)供試廃水

実験には無機合成廃水を用いた。廃水組成を Table4.1 に示す(4)。廃水は窒素ガスでパー ジしあらかじめ DO を 0.5mg/L 以下となるよう調整した。立上り傾向が確認できたら、負荷 を上げるため、合成廃水(table4.1)のアンモニアと亜硝酸の濃度のみを上昇させた。

Table 4.1 synthetic medium for nitrogen removal tests Substrates Concetration unit

NaNO2 70~190(asN) mg/L

(NH4)SO4 70~150 (asN) mg/L

KHCO3 500 mg/L

KH2PO4 27 mg/L

MgSO4・7H2O 300 mg/L

CaCl2・2H2O 180 mg/L

T.Ellement S1 1 mL/L

T.Ellement S2 1 mL/L

T.Element1:EDTA=5g/L,FeSO4=5g/L

(4)

(4)実験装置

反応装置図を Fig. 4.1 に示す。反応容積は 1,000mL であり、内部に 300mL の包括固定化 アナモックス担体が充填されている(担体充填率 30%)。リアクター内は、連続的に 80rpm の条件で攪拌した。リアクタ内の pH コントローラを行わず、流入原水の pH のみ 7.4 とな るよう 0.2N の塩酸を用いて調整した。滞留時間(HRT)は 2h の一定条件とした。反応槽は 36℃となるよう、ウォータージャケットで加温した。

Figure 4.1. Schematic illustration of a reactor for nitrogen removal test using anammox bacteria entrapped in gel carrier.

(5) 回分試験方法

内容積 40mL のモノー型の試験管に、Table 4.1 に示す培地(NO2-N=190mg/L、NH4-N=150mg/L に調整)を 30mL 注入した。ここに連続培養装置からアナモックス担体を約 3mL 採取し、試 験管に投入した。試験管はモノー式の恒温振とう培養機(ADVANTEC TOYO, Tokyo, Japan)

を用いて、水温 36℃、70rpm の条件で振とうした(Fig. 4.2)。サンプル水は 1.5 時間ごと に 1mL 採取した。試験終了後、担体の正確な体積を測定し、担体当たりの窒素除去速度を 求めた。

Figure 4.2 Experimental facility for batch experiment

Influent Effluent

Gel Carrier Water Jacket Separator

36

36

36

(5)

(1)アナモックス菌の包括固定化担体

ポリエチレングリコールにより、アナモックス菌を包括固定化した。担体の顕微鏡写真 を Fig. 4.3 に示す。ポリエチレングリコールのゲル素材は無色透明であることから、内部 に薄い茶褐色のアナモックス菌を見ることができた。また、アナモックス菌はゲル内部に 固定化され、廃水に浸しても汚泥は溶出せず、維持されていた。これらのことから、物理 的にアナモックス菌を固定化することに成功し、包括固定化アナモックス担体を得ること ができた。

Figure 4.3. Microscope photograph of an initial gel carrier.

(2)包括固定化担体の窒素除去性能特性の評価

アナモックス菌固定化担体を用いて連続廃水処理試験を行った。流入水と処理水の水質 変化を Fig4.4a に、窒素負荷および除去速度を Fig4.4b に示す。馴養したアナモックス菌 が固定化されていることら、運転開始直後から若干の窒素除去性能は確認できた。しかし ながら 20 日目までは顕著な窒素除去速度の増加は確認できなかった。その後、運転開始 22 日目から急激にアンモニアと亜硝酸濃度の消費量が増加し、43 日目に窒素濃度を上昇させ た結果、窒素除去性能も増加し、67 日目には窒素除去速度 3.7kg-N/m3/d を得た。その後、

安定した処理性能が得られ、平均窒素除去速度 3.4 kg-N/m3/d(60~102 日目)を確認した。

アンモニア除去量に対する亜硝酸除去量の比は、1:1.2 であり、アンモニアに対する硝酸 の生成比は 1:0.24 であった。この値は、Strous らの値に近い値であることから(6)、リア クタ内でアナモックス反応が行われていることが示された。

(6)

0 50 100 150 200

0 20 40 60 80 100

Nitrogen concentration (mgN/L)

Time (d)

0 1 2 3 4 5

0 20 40 60 80 100

N-loading, N-conversion rate (kgN/m3 /d)

Time (d) a

b

Figure 4.4. (a) Time courses of influent and effluent nitrogen concentrations in a continuous-flow test using gel carrier. Influent ammonium (○), Influent nitrite (□), Effluent ammonium (●), Effluent nitrite(■), Effluent nitrate(▲). (b) Time courses of nitrogen loading and nitrogen conversion rate. Nitrogen loading (△), Nitrogen conversion rate (♦).

(7)

0 20 40 60 80 100 120 140 160

0 1 2 3 4 5

Nitrogen concentrations (mgN/L)

Time (h) (3)回分試験による窒素除去速度の評価

運転開始 90 日目にリアクタ内から担体を少量取り出し、回分試験を行った。その結果を Fig.4.5 に示す。アンモニアおよび亜硝酸の同時除去が確認でき、さらに硝酸の増加傾向を 得ることができた。また、高い直線性が得られていることから、この傾きから窒素除去速 度を求めることができた。担体 1m3、1 日当たりの窒素除去量に換算すると、アンモニア除 去速度は 4.9 kg N/m3担体/d、亜硝酸の除去速度は 6.1 kg N/m3担体/d を得た。また、アナ モックス反応の特徴でもある硝酸の生成傾向を確認することができた。これらの結果から、

包括固定化担体がアナモックス活性を有していることが明確に示された。連続運転時の全 リアクタの窒素除去速度(アンモニアと亜硝酸除去速度の和)は平均 3.4 N/m3/d であるこ とから、担体当たりの窒素除去速度を算出すると、10.1 kg N/m3担体/d となり、回分試験 で得られた窒素除去速度とほぼ同じ値を得ることができた。この結果から、連続試験で得 られた窒素除去性能は、リアクタ内部に充填されている包括固定化担体によることが、定 量的に示された。

Figure 4.5 Consumption rates of ammonium (●), nitrite (■), and production rate of nitrate (▲) in batch experiments using entrapped anammox bacteria.

(8)

4.2.3 考察

本研究では、担体内に少量のアナモックス菌を固定化し、担体内で増殖させ、窒素除去 を行うことを目的としており、アナモックス菌が槽内で増殖しているか検討する必要があ る。そこで、SS 当たりの窒素除去速度から検討した。リアクタ内に充填した包括固定化担 体内のアナモックス菌量は、反応槽容積当たりに換算すると、0.72g-SS/L となる(担体内 の SS 濃度 0.24%、担体充填率 30%)。SS 当りの窒素除去速度(0.28kgN/g-SS/d)から、得 られる窒素除去速度は、わずか 0.2 kg /m3 /d であった。本試験で確認された窒素除去性能 は、平均 3.4 kg/m3/d であることから、担体内でアナモックス菌が増殖したことは明らかで ある。さらに、馴養前後の担体の顕微鏡写真を Fig.4.6 に示すが、担体が赤色になり、内 部でアナモックス菌が増殖した結果を見ることができた。なお、本研究では、担体内部の アナモックス菌数変化を定量しており、次項(4.3 項)に記載している。

アナモックス反応は、窒素ガスを生成することから、担体内部に窒素ガスが溜まり、担 体が破裂したり、浮上することが懸念された。しかしながら、本試験ではそのような傾向 は確認できなかった。担体から窒素ガスが放出される様子を観察した結果を Fig4.7 に示す。

アナモックス反応により生成した窒素ガスは、担体内部には溜まらず、担体表面に小さい 気泡として観察される。攪拌が無い場合は、この気泡が除々に成長するが、攪拌条件下で は、表面から気泡が外れ、放出される様子が観察された。本担体は、重合反応が内部まで 完全に起きているため、窒素ガスの気泡が溜まる空間がない。そのため、担体内部での気 泡生成する空間が無く、表面で放出されたと推察した。

アナモックス菌は嫌気性細菌であることから、アナモックス担体の製造においては、嫌 気条件下で行うことが理想的であると考える。しかしながら、工業的な製造の観点から考 えると、嫌気条件を維持するには、特別な設備を有し、酸欠などの危険性を伴うことから、

好気条件下で固定化できることが好ましい。本試験では、好気条件下で固定化を行ってお り、今回の結果により、アナモックス担体は好気条件下で作成しても、十分なアナモック ス活性が得られることが示された。

(9)

(a) (b)

Figure 4.6. Microscope photographs of a gel carrier. (a) initial (b) after continuous feeding test. Bar shows 1mm.

(a) (b)

Figure 4.7. Microscope photographs of gas production from the gel carrier. A gel carrier was placed in a Petri dish filled with influent water and photographed in (a) after 5 min, and (b) after 30 min.

(10)

4.3 固定化菌量が及ぼす立上げ期間への影響 4.3.1 方法

(1)供試汚泥

実験に用いた汚泥は、下水汚泥から集積培養したアナモックス汚泥を用いた(第 3 章参 照)

(2) 供試担体

供試汚泥をポリエチレングリコール系のゲルにより包括固定化した。ポリエチレングリ コール系のモノマーに、重合促進剤((N,N,N′,N′-tetramethylenediamine)を添加したのち、

混合液の pH が 8.0 となるよう硫酸を用いて調整した。よく混合した後、3 つの 300mL ビー カーに分注した。アナモックス汚泥含有量が 1.4%、0.52%、0.24%となるよう、それぞれ のビーカーにアナモックス汚泥を添加し、攪拌を行った。その後、重合開始剤(potassium persulfate)を添加し、シート状になるよう、あらかじめ用意した枠の中に流し込んだ。

約1分後、重合が完了し、シート状のゲルが得られた。これを 3mm 角の立方体となるよう 整形し、実験に用いた。各薬剤の組成は、ポリエチレングリコール 10%、重合促進剤 0.5%、

重合開始剤 0.25%である。

(3)実験装置

反応装置図を Fig. 4.8 に示す。反応容積は 1,000mL であり、内部に 300mL の包括固定化 アナモックス担体が充填されている(担体充填率 30%)。リアクターは、連続的に 80rpm の 条件で攪拌した。リアクタ内の pH コントローラを行わず、流入原水の pH のみ 7.4 となる よう、0.2N の塩酸を用いて調整した。滞留時間(HRT)は 2h とした。反応槽は 36℃となる よう、ウォータージャケットで加温した。

Figure 4.8. Schematic illustration of a reactor for nitrogen removal test using anammox bacteria entrapped in gel carrier.

Influent Effluent

Gel Carrier Water Jacket Separator

(11)

0 2 4 6 8 10 12 14

0 10 20 30 40 50 60 70

N-conversion rate (kg-N/m3 -carrier/d)

Time (d) 4.3.2 結果

固定化アナモックス菌量を増量し、立上げ試験を行った。結果を Fig. 4.9 に示す。汚泥 濃度を 0.24%から 1.4%とすることで立上げ期間が短縮できることが明らかとなった。担 体当たりの窒素除去速度が 11 kg-N/m3担体/d に達した時点を、立上げ時点とすると、0.24%

では、62 日目であり、0.52 および 1.4%では、それぞれ 39 および 25 日目であった。アナ モックスリアクタの立上げには、3ヶ月程度は必要であるとされていたが、十分な種アナ モックス汚泥があれば、包括固定化アナモックス担体を1ヶ月以内に立上げることが可能 である結果を得た。

なお、汚泥量を増加させても最大の窒素除去速度は 11~12 kg-N/m3担体/d であり、それ 以上処理性能を向上させることができなかった。この要因としては、反応槽内の pH の上昇 が要因であると考えられる。処理水の pH を測定したところ、活性が立上がった後では 8.4

~8.6 に上昇していた。アナモックス反応は反応に伴い水素を消費し、pH が上昇する。本 合成廃水を用いた試験においては、アナモックス活性が担体当たり 11~12 kg-N/m3担体/d に達すると、同時にアルカリ生成速度が上昇し、相内の pH が上昇したと考えられる。これ により、反応速度がそれ以上に増加しなかったと推定した。

Figure 4.9 Effect of sludge concentration in gel carrier on start-up periods. Sludge concentration:

1.4% (●), 0.52% (○), and 0.24%(♦)

(12)

4.3.3 考察

アナモックスリアクタの立上げでは、多くの研究が種汚泥として集積培養したアナモッ クス汚泥を利用している。多量の種汚泥を投入すれば、早期に立上がることが想像できる が、アナモックス汚泥を反応槽内に確実に維持することは困難であった。Table 4.2 に様々 タイプのリアクタにおいて、必要とされた立上げ期間および種汚泥量を記載した。

Strous らや、van der Graaf などは(3,4)、砂粒子の表面にアナモックス菌を付着させ、増殖 させることを試みたが、多量のアナモックス汚泥を添加しても、表面に汚泥が付着するに は、2~3 ヶ月の期間が必要だとしている。また、今城らはメタングラニュールの表面にア ナモックス菌を付着させることを試みたが、2.9kg-N/m3/d の窒素除去速度を得るのに、173 日間も要している(10)。これらの結果から、包括固定化したアナモックス担体は、比較的短 期間で、リアクタを立上げられることが明らかとなった。

一方、アナモックス菌の包括固定化には、デメリットがあり、種汚泥を供給されなくて は、立ち上げることができない。そのため、巨大な種汚泥の製造設備が必要となる欠点を 有する。グラニュール法では、槽内でアナモックス菌が生物膜として生長し、余剰汚泥と して引き抜くことができる。この余剰汚泥は、他のリアクタの種汚泥として利用できるこ とから、立上げに時間は要するものの、第 2、第 3 のリアクターを立ち上げることが容易で あると考えられる。

Table 4.2 Comparison of start-up periods and nitrogen removal performance in different types of reactors

Reactor carrer Seed sludge

(per L-reactor) Nitrogen Conversion Rate Operation time(d) reference

FBR sand particle 160mL (sludge) 6.9b 96 van de Graaf (1996)

FBR sand particle 480mL (sludge) 1.8 84 Strous (1997)

SBR non 0.255g-dry-SS 1.0 336 Strous (1998)

FBR metanogenic granule 0.002-0.01 g-dry-SSa 2.9c 137 Imajo (2005)

Sterlizing gel entrapment 0.72g-dry-SS 3.7 67 This study

Sterlizing gel entrapment 4.7g-dry-SS 3.4 25 This study

ABF=Anaerobic Biofiltrated Reactor, SBR=Sequencing Batch Reactor, FBR=Fluidized Bed Reactor.

aFed ٛontinuously for 111d, bCalculated from ammonium conversion rate and nitrogen balance,

cdenitrification rate.

(13)

4.4 分子生物学的手法による担体内微生物相の解析 4.4.1 方法

(1)供試担体

実験 4.2 節に使用中の担体を、適時サンプリングし、解析に用いた。

(2)Real-time PCR 法によるアナモックス菌の定量

包括固定化担体における DNA の抽出方法としては、DNA を効率的に抽出するため、DNA 抽 出の前に凍結粉砕工程を取り入れた。破砕したサンプルは、粒径 0.1mm の Zirco / Silica Beads とともに Bead Beater(BioSpec Products, Oklahoma, USA)を用いて菌体を破砕し、

ISOPLANT(Nippon Gene, Tokyo, Japan)を用いて DNA の抽出を行った。

Real-time PCR 法では、Table 4.3 に従って PCR 反応液の調整を行った後、混合溶液を Light Cycler にセットし、初期変性:【95℃×1(min)】、PCR ステップ:【94℃:30(sec),57(℃):

15(sec),72℃:30(sec)】×40cycle、融解曲線:【67℃×15(sec)】の条件で PCR 反応を行 った。PCR 反応に用いたプライマーとしては、アナモックス菌を全て検出することができる と考えられる、Planctomycetes に特異的な Pla46frc-Univ518r プライマーセットを用いた。

PCR 反応終了後、得られた Ct 値の結果からアナモックス菌のコピー数を算出した。

また、検量線を引くためのスタンダード物質については、クローニング法によって獲得 したクローンを PCR 法で増幅し、吸光度計でコピー数を求め、濃度を決定したものを 6 段 階希釈して用いた。

Table 4.3 Real-time PCR法におけるPCR反応液の調整方法

滅菌水 3.9μl

10×Master Mix 2μl

BSA 0.5μl BSA終濃度:0.025μg/μl

MgCl2 1.6μl Mg濃度:3mM

Primer (F and R) 1μl Primer終濃度:0.5μM

template 10μl テンプレートDNA濃度:4~10ng/PCR reaction

Total 20μl

(3)FISH 法による担体内の菌相解析

サンプリングした包括固定化担体は、4%Paraformaldehyde を用いて 18 時間固定し、クラ イオスタット(CM1850, Leica Microsystems, Germany)を用いて 30μm の厚みで薄層切片 を作成した。作成した薄層切片は、Amann(11)らの標準プロトコールに従ってハイブリダイ

(14)

108 109 1010

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0

0 20 40 60 80 100

N-conversion rate (kg-N/m3 /d)

Planctomycetales (copies/g-carrier)

Time (d) 4.4.2 結果

(1)担体内でのアナモックス菌の増殖特性

Real-time PCR により担体内のアナモックス菌量を評価し、その変化を計測した。窒素除 去速度とアナモックス菌量の変化を Fig. 4.10 に示す。アナモックス菌量は徐々に増加し、

41 日目には 4.3 × 108 copies/mL に増加した。その後、41 日目から 55 日目にかけてアナ モックス菌量は、窒素除去速度と共に増加し 4.3 × 108 から 4.2 × 109 copies/mL へ急激 に増加した。また、立上がった後 76 日目にも菌量を測定したが、55 日目とほぼ同量であっ た。これらの結果から、Real-time PCR によるアナモックス菌量の定量結果と窒素除去活性 は、同様の傾向を示していることから、Real-time PCR が菌数表か方法として、有効な評価 方法であると考えられた。また、本法により、アナモックス菌が担体内で増殖しているこ とを明確にすることができた。

Figure 4.10 Time course of nitrogen conversion rate (♦) and the concentration of planctomycete gene in the gel carriers (○).

(15)

(2)FISH 法

FISH 法により、アナモックス種汚泥および担体内のアナモックス菌相を解析した。結果 を Fig.4.11a,b に示す。観察した結果、種汚泥および担体内のアナモックス菌は分散せず に、クラスターを形成して存在していることが明らかとなった。また、クラスター内は純 度の高いアナモックス菌のみのクラスターを形成している様子が確認された。なお、

Fig4.11b は、担体の中心部を観察したものであるが、担体中心部にもアナモックス菌が生 息していることを確認した。

(a) (b)

Figure 4.11 FISH image of (a) seed sludge and (b) entrapped anammox bacteria in the PEG gel carrier. Red color indicates anammox bacteria hybridized with probe Pla46. Green color indicates total cells stained with SYBR Green I. Bar shows 10μm

Gel carrier Gel carrier

(16)

108 109 1010

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5

Planctomycetales (copies/g-carrier)

N-conversion rate (kg-N/m3/d)

4.4.3 考察

今回、Real-time PCR により、担体内におけるアナモックス菌の増殖を定量的評価するこ とができた。さらに、FISH 法により、アナモックス菌が担体内部に生息していることを確 認できた。これらの結果は、アナモックス菌が付着固定化されているのではなく、担体内 部に固定化され、増殖していることを明確に示す結果である。

また、運転開始 41 から 55 日目にかけて急激な菌数変化が確認された。このときのアナ モックス菌の倍加時間を算出すると、4.3 日であることが明らかとなった。Strous ら(6)の倍 加時間(11 日)より早い傾向を得ることができたが、第3章で得た値(1.8 日)よりは遅 い結果となった。ゲル内部では立体障害が考えられるため、不織布で培養した際に確認さ れた倍加時間 1.8 日よりも若干遅くなることが想定される。また、今回の計測では、計測 間隔が 2 週間も空いてしまったことや、測定点数が2点などの問題があり、ゲル内部での アナモックス菌の増殖速度については、今後、さらに検討を行う必要がある。

また、Real-time PCR により算出されたアナモックス菌量と、窒素除去速度の相関につい て検討し、Fig4.12 の結果を得た。このときの相関係数は 0.969 であり高い相関性を確認す ることができた。これらのことから、Real-time PCR はアナモックス菌数を評価する1つの 手法として有効であると考えられる。

Figure 4.12 Relationship between nitrogen conversion rate and copy number

(17)

4.5 結言

アナモックス菌の固定化方法としてポリエチレングリコール系のゲルを用いた包括固定 化技術について検討を行った結果、世界で始めてアナモックス菌の固定化に成功すること ができた。また、包括固定化担体を用い連続処理実験を行った結果、高い窒素処理性能が 得られることを確認し、処理プロセスとしての有効性を明らかにした。また、本法ではア ナモックス菌が確実に担体内に固定化されているため、アナモックスプロセスを短期間で 立ち上げられることが示された。そして固定化するアナモックス菌量を増やすことにより、

1 ヶ月以内でアナモックスリアクタが立ち上げられる可能性を示した。

さらに、FISH 法により、担体内部でアナモックス菌が生息していることを確認すること ができた。また、Real-time PCR 法により担体内のアナモックス菌が、倍加時間 4.3 日で増 殖していることを明らかにし、包括固定化法がアナモックス菌の固定化および増殖の場と して有効であることを明らかにすることができた。

一方、包括固定化担体を用いた回分試験方法を確立し、連続試験と同様の活性を維持し て試験することができ、短時間で活性評価ができることを見出した。従来、回分系での活 性維持は困難であることが報告されており(13)、包括固定化担体により安定した回分評価系 を確立てきたことは、アナモックス菌への様々な影響因子を解明する上で、極めて有効な 手法であると考えられる。なお、本回分試験法を用いたアナモックス菌への各種影響因子 の解析は、次章以降にて述べることとする。

これらの結果から、アナモックス菌を固定し、培養する方法として包括固定化法が有効 であることが示された。今後、実用化に向け、実廃水を用いた処理試験およびリアクター の規模をスケールアップしたベンチスケール試験について検討する必要があると考えられ る。この点については、第 7 章にて述べることとする。

(18)

引用文献

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参照

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