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サービス経済の進展と雇用創出の地域間格差に関する分析

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(1)

サービス経済の進展と雇用創出の地域間格差に関する分析

Regional Disparities in Employment Creation under the Service-oriented Economy in Japan *

新家誠憲

**

・是友修二

***

・阿部宏史

****

By Tomonori Shinke**・ Shuji Koretomo**・Hirofumi ABE***

1.はじめに

近年のわが国では,経済に占めるサービス業の割合 が増加する,いわゆるサービス経済化が進んでいる。特 に,1980 年代後半から円高等によって製造業の空洞化 が進み,地方圏における製造業の雇用吸収力が低下した 結果,サービス業を中心とする第3次産業が雇用を牽引 する部門となっている。しかし,バブル崩壊後の長期に わたる構造不況は,サービス経済化の進んだ東京圏と地 方圏との間で,経済成長や雇用創出の地域間格差を拡大 させており,現在では経済構造の変容をふまえた地域経 済の再生が大きな課題となっている。1)2)

著者らはこれまでに,第 3 次産業の中でもサービス 業に着目して,全国 9 地域の地域産業連関表を利用した 地域経済構造と雇用変動に関する研究を行ってきた3)。 その結果,関東における雇用者数は,1980 年以降,他 地域と比較して急増しており,その成長要因としては,

移出型サービス業の影響が大きく,サービス部門におけ る他地域からの需要が関東における雇用数増加の主要因 になっていることを明らかにした。

本研究は,以上の既往研究と同様の視点に立つもので あるが,分析期間を 2000 年に拡大するとともに,産業 連関モデルに基づく要因分析手法を適用して,経済のサ ービス化が地域間の経済格差に及ぼしてきた影響を,多 時点間・他地域関比較の視点から分析する。そして,分 析結果に基づき,今後の地域再生に向けた地域振興策の 課題について考察する。

2.使用データと分析方法

(1) 産業連関表

本研究で使用する産業連関表は,経済産業省が5年毎 に公表している全国9地域別の産業連関表であり,1975

*キーワーズ:環境計画,地域計画,地域環境問題

**学生員,工修,岡山大学大学院環境学研究科

***学生員,岡山大学大学院環境学研究科

****正員,工博,岡山大学大学院環境学研究科 (〒700-8530 岡山市津島中3-1-1,

TEL.086-251-8849,FAX.086-251-8866 E-mail: abe1@cc.okayama-u.ac.jp (1=one))

~2000年のデータを用いる。なお,地域産業連関表は各 時点の名目値で表記されており,時系列の分析を行う際 には,分析時点間での貨幣価値の統一が必要となる。本 研究では,1975-80-85年,1985-90-95年,1990-95

-2000年の3つの接続産業連関表を利用して,各時点の 名目値を2000年実質値に統一した。

(2)雇用数データ

本研究は,国勢調査による就業者数と事業所・企業統 計調査による従業者数データを用いる。このうち,国勢 調査の産業中分類別就業者数は,常住地ベースのサンプ ル抽出に基づいて集計した結果であることから,本研究 では従業地ベースの全数集計である事業所・企業統計調 査データを使用する。しかし,事業所・企業統計調査で は,個人経営の農林漁業家を調査対象としておらず,こ れらの業種の雇用総数を反映していない。そこで,農業,

林業,漁業については国勢調査の産業大分類別就業者数 を使用した。

また,本研究の分析機関に該当する事業所・企業統計 調査の調査年次は,1975年,78年,81年,86年,91年,

96年,2001年の7時点であり,地域産業連関表の調査年 次とは異なるため,隣接する年次間での内挿法によって 補完し,雇用者数データを作成した。

図1に,1975~2000年における全国9地域別の雇用者 数の推移を示す。分析期間中は,関東の雇用数増加が他 地域と比較して大きく,関東地方が全国の雇用数増加を 牽引してきたことがわかる。

5218 5519 5893

6302 6468 6308

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000

1975年 1980年 1985年 1990年 1995年 2000年 地 域 別 雇 用 数 万 人 全

国 総 雇 用 数 万 人

全国 北海道 東北 関東 中部

近畿 中国 四国 九州 沖縄

図1 全国 9 地域別の雇用者数の推移(1975 年~2000 年)

(2)

3.分析方法

(1)地域産業連関モデル

本研究では,基本モデルとして,式(1)に示す「競争 輸移入型地域産業連関モデル」を用いる。

( )

{ I I M N A } ( { I M N ) Fd E Ec }

X = − − ˆ − ˆ

1

− ˆ − ˆ + +

(1) ただし,

X

は地域内生産額,

M ^

は輸入係数,

N ^

は移 入係数,

F d

は域内最終需要列ベクトル,

E

は輸出,

Ec

は移出である。

次に,式(1)のモデルを雇用誘発分析に応用するため に,式(2)で定義する「雇用係数」を地域別に求める。

d

jr

= D

jr

/ X

jr (2) ただし,

d

jrは地域

r

の部門

j

に対する雇用係数,

D

jrは地域

r

の部門

j

の地域内雇用数,

X

jrの地域内生 産額生産額である。

雇用係数を対角要素とする雇用係数行列

^ d

を式(1)の 左側から乗ずると,式(3)に示す雇用誘発分析用の地域 産業連関モデルが得られる。

Ec]

E )Fd N M [(I )A]

N M (I [I d

Y = ˆ − − ˆ − )

1

− ˆ − ) + +

(3) 前項の は「雇用誘発係数」を表し,

当該部門への最終需要 1 単位(ここでは百万円)が,経済 取引の中で直接・間接に誘発する雇用数を表す。また式 (3)に基づいて,地域内最終需要(消費及び投資),輸出,

移出などの最終需要項目別に,部門別の雇用誘発量を求 めることができる。

(2)雇用誘発数の変動要因分析

本研究では,2時点

t

及び

t + 1

の産業連関モデルを 用いて,式(4)に示す要因分解の手法を適用し,雇用誘 発量の変動

ΔY

を,雇用係数要因,投入係数要因,移 輸入率要因,最終需要要因の4つの変動要因に分解して,

地域経済の変動が雇用誘発に及ぼす影響を検討する

t 1

t

Y

Y

ΔY =

+

(4)

( ) ( )

[ d

t+1

ΔB + Δ d B

t

] F

t

+ d

t+1

B

t+1

( ) ΔF

= ˆ ˆ ˆ

( ) ΔB F ( ) Δ d B F d B ( ) ΔF

d

t+1 t

+

t t

+

t+1 t+1

= ˆ ˆ

( ) ( )

[ P ΔA ΔP A ] B F ( ) Δ d B F d B ( ) ΔF B

d

t+1 t+1 t+1

+

t t t

+

t t

+

t+1 t+1

= ˆ ˆ ˆ ˆ

式(4)のうち,第 1 項は雇用係数

d ˆ

の変動による効 果,第 2 項は最終需要

F

の変動による効果,第 3 項は 投入係数

A

の変動効果,第 4 項は移輸入率の変動,す なわち自給率

P

の変動による効果を表す。

(3)増加率寄与度

本研究では,産業部門別雇用数や雇用誘発数の変動を 分析する指標として,式(5)の「増加率寄与度」を用いる。

この指標は,全国増加率を各産業部門に分解したもの であり,全国の総雇用増加率が,地域

r

の部門

i

の雇用 数増加率と期首時点の雇用数全国シェアの積として定義 されることを表している。

iRt i1t

iRt 1 iRt i1t

1 i1t 1 t

~

it

X X

) X (X )

X G (X

+ +

− +

+

=

+

+

+

L

L

it iR i1

X ΔX ΔX + +

= L

it

iRt iRt

iR i1t

i1t i1

X X X X ΔX

X

ΔX ⋅ + + ⋅

=

L

it iRt iRt

iR it

i1t i1t

i1

X X X ΔX X

X X

ΔX ⋅ + + ⋅

= L

(5)

ただし,

X

i1tは年次

t

,地域

r

における産業部門

i

雇用数,

X

itは年次

t

,部門

i

の全国雇用数,

G

it~t+1は 部門

i

の全国雇用数増加率,

ΔX

irは期間

t ~ t + 1

におけ る部門

i

,地域

r

の雇用数変動,

R

は地域数である。

また,式(5)の地域と産業部門を,それぞれ産業部門,

地域と逆に読み替えれば,地域の雇用数増加率に対する 各産業部門の寄与度を求めることができる。さらに,式 (4)の変動要因分析結果に式(5)を適用すれば,地域別,

部門別の雇用数に対する増加率寄与度を,雇用係数,地 域内需要(消費及び投資),地域外需要(移出及び輸出)の 各要因に分離して検討することも可能である。

4.分析結果

(1)全国における雇用数の推移

図2に,1975~2000年の全国における産業39部門別雇 用者数の推移を示す。農林漁業は1975年から減少傾向に あり,製造業はバブルが崩壊した1990年以降に雇用者数 が減少している。一方,サービス業は1975年から2000年 までの全期間を通じて増加しており,1990~2000年に製 造業を抜き,雇用規模で第1位の産業となっている。

)A]

1

N M (I [I

d ˆ − − ˆ − )

( ) Δ d ˆ B

t

F

t

+ d ˆ

t+1

B

t+1

( ) ΔF + d ˆ

t+1

B

t+1

P ˆ

t+1

( ) ΔA X

t

+ d ˆ

t+1

B

t+1

( ) Δ P ˆ A

t

X

t

=

( ) ( )

[ P ΔA Δ P A ] X ( ) Δ d B F d B ( ) ΔF

B

d

t+1 t+1 t+1

+

t t

+

t t

+

t+1 t+1

= ˆ ˆ ˆ ˆ ˆ

0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000

農林

鉱業 建設

製造 食料 繊維 繊維製品 木材・ 家具・装 パル紙加 印刷 化学 石油 ゴム 皮革同製品 窯業・土 鉄鋼 非鉄 金属 一般 電気 輸送 精密 その 電気 鉄道 道路運送 道路貨物運送 水運 航空 倉庫 運輸ビス 通信 卸売 小売 飲食 金融 不動産 サー 個人サービス 旅館・そ他の宿 娯楽 自動車整備 機械・家修理 物品 情報・調 そのサー 医療 保健棄物 社会 教育 学術研

機関 ・政化団体 公務・そ

雇用数万人

1980年 1985年 1990年 1995年 2000年

図2 産業部門別雇用数の推移(全国)

(3)

(2)サービス業の雇用増加率に対する9地域の寄与度 本研究では,対象期間を「安定成長期からバブル経済 期に至る1980~1990年」と「バブル崩壊後の構造不況期に あたる1990~2000年」の2期間に区分して分析する。

図3と図4は,全国9地域別にサービス業の雇用者数増 加率に対する寄与度を,2期間について求めた結果であ る。図3の1980~1990年の結果を見ると,全国では,情 報サービス・調査・広告業の雇用数増加率が最も大きく,

172.0%の増加を示している。これに次いで,物品賃貸業 も164.6%の大きな増加率となっている。地域別に見ると,

関東の増加率寄与度が,全ての部門で大きなシェアを占 めている。

図4の1990~2000年を見ると,1980~1990年と比較し て,増加率が小さい部門が多い。しかし,社会保険・社 会福祉は,1980~1990年よりも増加率が大きく,関東以 外の地域における増加率寄与度も大きい。

(3)サービス業の雇用増加率に関する要因分解の結果 以上の結果より,全国におけるサービス業の雇用数増 加には,関東地方が大きく寄与しており,その他の地域 との間で成長格差が生じていることが明らかになった。

本研究では,雇用成長格差の原因を明らかにするた めに,全国9地域別に式(4)のモデルを適用して,要因分 析を行った。ここでは,紙幅の制約上,成長地域である

「関東地方」と地方圏のうち「中国地方」の2地域を取り上 げ,成長要因の比較を通じて,サービス部門における雇 用成長格差の特徴を明らかにしていく。

図5と図6は,関東地方と中国地方における1980~1990 年の変動要因分析結果である。図5の関東地方を見ると,

成長要因としては,全部門ともに移出の割合が大きい。

特に,増加率が最も大きい情報サービス・調査・広告業 は,全国に対する増加率寄与度が109.1%となっており,

移出需要に起因する増加率寄与度が大きい。すなわち,

関東地方では,情報サービス・調査・広告業が移出型サ ービス業になっており,他地域からの需要を吸引してい ることが,雇用成長の原因となっている。

図6の中国地方を見ると,増加率寄与度は,関東地方 に比べて一桁小さい値となっている。部門別では,関東 地方と同様に物品賃貸業と情報サービス・調査・広告業 が大きな値を示しており,移出の寄与度が大きい。

図7と図8は,1990~2000年の関東地方と中国地方にお ける雇用誘発数に変動要因分析を適用した結果である。

図7の関東地方の結果を見ると,情報サービス・調査・

広告業と学術研究機関の増加率が大きく,成長要因とし ては1980~1990年と同様に,移出による寄与度が大きい。

また,社会福祉・社会保険の増加率も大きく,この部門 では消費の割合が大きい。

図8の中国地方の結果を見ると,社会保険・社会福祉

1.2%

0.9%

3.6%

0.1% 2.2%

8.1%

5.3%

3.4% 2.6% 2.1% 3.0%

0.8%

0.6%

2.3%

2.2%

-8%

-6%

-4%

-2%

0%

2%

4%

6%

8%

10%

12%

14%

個 人 サー ビ ス 業

旅 館

・ そ の 他 の 宿 泊 所

娯 楽 業

自 動 車 整 備

・ 駐 車 場

機 械

・ 家 具 等 修 理 業

物 品 賃 貸 業

情 報 サー ビ ス

・ 調 査

・ 広 告

そ の 他 の 事 業 所 サー ビ ス

医 療 業

保 健 衛 生

・ 廃 棄 物 業

社 会 保 険

・ 社 会 福 祉

教 育

学 術 研 究 機 関

宗 教

・ 政 治

・ 経 済

・ 文 化 団 体

サー ビ ス 業 全 体 増

加 率 寄 与 度

雇用係数要因 投入係数要因 移輸入率要因 消費 投資 移出 輸出 増加率寄与度 10.8% 12.1%

32.2%

2.2%

26.1%

73.2%109.1%

34.3%

15.2% 10.7% 15.2% 6.2%

25.5%

15.1% 20.6%

-60%

-40%

-20%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

120%

140%

個 人 サー ビ ス 業

旅 館

・ そ の 他 の 宿 泊 所

娯 楽 業

自 動 車 整 備

・ 駐 車 場

機 械

・ 家 具 等 修 理 業

物 品 賃 貸 業

情 報 サー ビ ス

・ 調 査

・ 広 告

そ の 他 の 事 業 所 サー ビ ス

医 療 業

保 健 衛 生

・ 廃 棄 物 業

社 会 保 険

・ 社 会 福 祉

教 育

学 術 研 究 機 関

宗 教

・ 政 治

・ 経 済

・ 文 化 団 体

サー ビ ス 業 全 体 増

加 率 寄 与 度

雇用係数要因 投入係数要因 移輸入率要因 消費 投資 移出 輸出 増加率寄与度 17.7%

-2.2%

17.8%

-0.3%

20.1%

12.7%

29.3% 34.3% 37.4% 33.0%

77.8%

2.9%

39.0%

17.1%24.9%

-20%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

個 人 サー ビ ス 業

旅 館

・ そ の 他 の 宿 泊 所

娯 楽 業

自 動 車 整 備

・ 駐 車 業

機 械

・ 家 具 等 修 理 業

物 品 賃 貸 業

情 報 サー ビ ス

・ 調 査

・ 広 告

そ の 他 の 事 業 所 サー ビ ス

医 療 業

保 健

・ 廃 棄 物 処 理

社 会 保 険

・ 社 会 福 祉

教 育

学 術 研 究 機 関

宗 教

・ 政 治

・ 文 化 団 体

サー ビ ス 業 全 体 増

加 率 寄 与 度

北海道 東北 関東 中部 近畿 中国 四国 九州 沖縄 全国雇用数増加率

23.4% 25.7%

72.9%

1.4%

45.1%

164.6%172.0%

71.7%

43.2%

30.1% 42.6%

14.7%

39.6% 36.6% 44.4%

-20%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

120%

140%

160%

180%

200%

個 人 サー ビ ス 業

旅 館

・ そ の 他 の 宿 泊 所

娯 楽 業

自 動 車 整 備

・ 駐 車 業

機 械

・ 家 具 等 修 理 業

物 品 賃 貸 業

情 報 サー ビ ス

・ 調 査

・ 広 告

そ の 他 の 事 業 所 サー ビ ス

医 療 業

保 健

・ 廃 棄 物 処 理

社 会 保 険

・ 社 会 福 祉

教 育

学 術 研 究 機 関

宗 教

・ 政 治

・ 文 化 団 体

サー ビ ス 業 全 体

北海道 東北 関東 中部 近畿 中国 四国 九州 沖縄 全国雇用数増加率

図3 全国 9 地域別の雇用者数増加率寄与度(1980~1990 年)

図4 全国 9 地域別の雇用者数増加率寄与度(1990~2000 年)

図5 要因分析による関東の要増加率寄与度(1980~90 年)

図6 要因分析による中国の要増加率寄与度(1980~90 年)

(4)

が最も大きく,次いで医療業が大きな値を示している。

これらの部門は,消費の割合が大きく,地域内需要に依 存したローカル型のサービス業と言える。

(4)移出型サービス業と地域内消費型サービス業の比較 ここでは,以上の分析結果に基づいて,雇用成長要因 として寄与度の大きかった消費と移出に着目する。そし て,移出型サービス業である情報サービス・調査・広告 業,及び地域内消費型サービス業の社会保険・社会福祉 の2部門を取り上げ,雇用誘発数の地域間比較を行う。

図9に,情報サービス・調査・広告業の1980~2000年 における域際収支(「移出需要が地域内で誘発する雇用 数」-「他地域からの移入により漏出する雇用数」)を示す。

関東の域際収支は,1980年から大きく増加傾向にあり,

2000年には約40万人の雇用が誘発されている。一方,そ の他の地域は,全地域においてマイナスとなっている。

図10は,社会保険・社会福祉の1980~2000年における 消費による雇用誘発数の推移を示した結果である。全地 域で1980年から大きく増加しており,増加率を見ると,

1980~1990年よりも1990~2000年の増加が大きい。

5.まとめ

本研究の分析結果より,関東地方とそれ以外の地域 間における雇用成長格差の原因としては,関東の大きな 地域内需要に加えて,情報サービス・調査・広告業など の移出型サービス業が,他地域の需要を関東に吸引して いることを指摘できる。また,1980~1990 年と 1990~

2000 年の2期間を対象とする時系列分析の結果,この 傾向が強まっていることも示された。

一方,地域内消費型サービス業である社会保険・社 会福祉は,関東地方以外でも高い雇用成長が見られ,情 報サービス・調査・広告業などの移出型サービス業に比 べると,地域間の雇用創出格差は大きくない。

以上の知見をふまえると,地域間の雇用成長格差を是 正していくためには,移出型サービス業の集積を地方圏 で図っていくことが重要と考えられる。ただし,地域産 業連関分析では,移出型サービス業の集積を促進する立 地要因については十分に分析できないため,今後,他の 統計データを利用して検討していきたい。

参考文献

1) 櫟本功:発展する中央と停滞する地方,季刊・中国総研,

Vol.5-2,No.15,pp.49-78, 2001 年.

2) 櫟本功:発展する中央と停滞する地方(その 2)―成長適合 型と高成長型―,季刊・中国総研,Vol.5-2,No.16,pp.

49-77,2001 年.

3) 阿部宏史,パク・サンチュル,永禮拓也:経済のサービ ス化と雇用創出の地域間格差,地域学研究,第 35 巻,第 1 号,日本地域学会,pp.17-35,2005 年.

図7 要因分析による関東の要増加率寄与度(1990~2000 年)

図8 要因分析による中国の要増加率寄与度(1990~2000 年)

9.0%

-2.3%

7.2%

0.5%

8.9%

2.2%

21.1%

18.0%

13.3% 11.9%

27.2%

1.9%

31.0%

5.3%

11.4%

-30%

-20%

-10%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

個 人 サー ビ ス 業

旅 館

・ そ の 他 の 宿 泊 所

娯 楽 業

自 動 車 整 備

・ 駐 車 場

機 械

・ 家 具 等 修 理 業

物 品 賃 貸 業

情 報 サー ビ ス

・ 調 査

・ 広 告

そ の 他 の 事 業 所 サー ビ ス

医 療 業

保 健 衛 生

・ 廃 棄 物 業

社 会 保 険

・ 社 会 福 祉

教 育

学 術 研 究 機 関

宗 教

・ 政 治

・ 経 済

・ 文 化 団 体

サー ビ ス 業 全 体 増

加 率 寄 与 度

雇用係数要因 投入係数要因 移輸入率要因 消費 投資 移出 輸出 増加率寄与度

0.7% -0.2%

1.0%

-0.7%

1.1% 1.2%

0.4% 1.0%

2.6% 2.4%

6.0%

0.2% 0.5%

1.0% 1.2%

-6%

-4%

-2%

0%

2%

4%

6%

8%

10%

個 人 サー ビ ス 業

旅 館

・ そ の 他 の 宿 泊 所

娯 楽 業

自 動 車 整 備

・ 駐 車 場

機 械

・ 家 具 等 修 理 業

物 品 賃 貸 業

情 報 サー ビ ス

・ 調 査

・ 広 告

そ の 他 の 事 業 所 サー ビ ス

医 療 業

保 健 衛 生

・ 廃 棄 物 業

社 会 保 険

・ 社 会 福 祉

教 育

学 術 研 究 機 関

宗 教

・ 政 治

・ 経 済

・ 文 化 団 体

サー ビ ス 業 全 体 増

加 率 寄 与 度

雇用係数要因 投入係数要因 移輸入率要因 消費 投資 移出 輸出 増加率寄与度

図9 情報サービス・調査・広告業の域際収支

図 10 社会保険・社会福祉の雇用誘発量(消費要因)の推移

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50

北海道 東北 関東 中部 近畿 中国 四国 九州

増 加 率

% 雇

用 誘 発 数 人

1980年 1985年 1990年

1995年 2000年 増加率(1980~1990)

増加率(1990~2000)

-20 -10 0 10 20 30 40 50

北海道 東北 関東 中部 近畿 中国 四国 九州

雇 用 誘 発 数 人

1980年 1985年 1990年 1995年 2000年

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日 日本 本経 経済 済の の変 変化 化に にお おけ ける る運 運用 用機 機関 関と と監 監督 督機 機関 関の の関 関係 係: : 均 均衡 衡シ シフ

バク・ヒョンス (2005,第4 章) では,農林漁 業の持つ特性や政治的な理由等により,農林漁