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轡野、9縮写、。累累)
急性出血性白質脳炎の1剖検例
東京女子医科大学第一病理学教室(主任 今井三喜教授)
豊 田 智
トヨ ダ チ
廣 瀬 康 子・瀬 木
ヒロセヤスコセギ
東京女子医科大学外科学教室(主任 別 府ベツ プ
里・野 ロ
サト ノ グチ
和 子・菅
カズ コ カソ
榊原 俊 男
トシ オ
(受付 昭和39年12月3日)
昌 子
マサ コ
野 愛 子
ノ アイ コ
任教授)
緒 言
急性出血性白質脳炎(Leucoencephalitis hae−
morrhagica acuta)は,1941年Weston Hurst が他の出血性脳疾患から分離して特異な病像およ び剖検所見を呈する独立疾患として報告して以 来,研究者の注意を喚起し,その実験的病因老察 を含めた症例報告が行なわれるに至った稀な疾患
である.
本症は感冒様上気道炎症状にひきつづき,又は 数日の間早期の後に発症するが,時には全く健康 状態から突然発病することもある.発熱,意識障 害,痙変,麻痺等が現われ,1〜6日のうちに死 亡することが多いが,生存中に診断をつけること は困難である■t
われわれは,最近同様の経過をたどり,臨床的 に髄膜炎の診断をうけたが,剖検:の結果急性出」血 性白質脳炎と老えられる1例を経験したのでここ
に報告する.
臨床所見
患者は23才の男子.1964年6月17日死亡.2,3 日来風邪気味で休んでいたカミ,6月11臼より頭痛 あり,セデス5錠服用.その後突然意識喪失,発 熱あり,四肢は筋緊張性となる.
翌12日救急車で来院.来院時,四肢は筋緊張性 で硬直し,初め右上下肢の間代性痙変,10分後全 身の強直性痙李を起こした.膝蓋腱反射充進,響 町搦およびバビンスキー反射陽性,Noci−Re且ex
(±),瞳孔左右同大,対光反射は正常項部強直 あり,体温39.1℃,意識は昏睡状であり,髄膜 炎を疑われた.13日には瞳孔左右不同(右〉左)
となり,薩毛反射および角膜反射は右側で低下し た.1血圧は140/0,脈搏120,体温37.4℃,白.血 球数14,400であった.鑑別診断のための脳血管撮 影では異常所見を認めなかった.
ユ3日腰椎穿刺を施行した.初圧280皿皿水柱,2 cc採取し終圧は250㎜水柱であり,髄液は白色混 油し,細胞数は3000/3であった.培養でも細菌 は証明されなかった.
16日意識は依然として昏睡,Noci−Re且ex(一),
р?モ?窒?b窒≠狽?rigidity あり,対光反射は逞延
していた.再び腰椎穿刺を施行,初圧15Qm水
柱,7CC採取した.細胞数は450/3に減少,細 胞の種類は分節球,今回も培養によっても細菌を 証明されなかった.17日午前4時には脈搏・呼吸共に良好であった が,6時には下顎呼吸となり,血圧下降著しく7
ChisfttD TOYODA. Masako NOGUCHI, Yasuko HIROSE. Kazulco SEGI, Aiko KANNO (Depart−
ment of Pathology, Tokyo Women s Medi¢al College) & Toshio BEPPU (Department of Surgery,
Tokyo Women s Medical College): Acute hemorrhagic leucoencephalitis−an autopsy report.
一一 187 ・一
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時15分に死亡した.
治療は13日より16日目で低体温,クロマイ1日 39の他,強心栄養剤,筋弛緩剤,副腎皮質ホル、
モン,脳圧下降剤等を投与した.また腰椎穿刺後 にはアイロタイシンおよびストマイを注入した.
髄液の結核菌の培養は陰性であることが判明し
た.
剖検所見
剖検は死後2時間50分で行なわれた.
剖検診断:急性出血性白質脳炎..
1)急性出血性白質脳炎:大・小脳中心部(主 として白質),脳橋に密集し,その周辺に散在せる 脱髄巣,点状出.血,軽度の脳底髄膜=炎二.
2)右肺の広汎な吸引性肺炎=.
3)心筋の混濁,少数の組織学的微小壊死巣.
4)諸臓器の急性うつ1血.
5)副腎皮質リポイドの脱失.
6)高度の脱水症.
主要所見:
a) 脳の変化:軟膜は全体にやや浮腫状で,
軽度混濁脳実質は高度に腫脹,硬度低下し,割 面では大脳中心部の白質に広汎な点状出血と透明 巣が密集し,概して左側に多少強く見られる.こ の変化は前頭葉および後頭葉にはほとんど認めら れないが,視床後部は多少侵されている.小脳で も歯状核を含む中心部に同様の変化が強く(左側 にやや高度),皮質および周辺の白質はほとんど変 化を認めない.また脳橋は全般に高度の出一血およ び透明化がみられるが,延髄以下には著変がな
い.
組織的にみると,上記変化部には広汎に出一血,
脱髄,浮腫等がみられるが,これらは血管を中心 とした変化である.更に詳細にみると.,血管周囲 の脱髄,脂肪穎粒細胞の集籏せる小病巣があり,
これに出血を伴うものと伴っていないものとあ る.出血は不規則なものもあるが,大体球状ある いは輪状を呈している.この病巣の融合した所に、
は小血管壁の変性,血管壁あるいはその周辺にフ ィプリンを含む滲出および分節球の浸潤等オミ認め られる.なお延髄では肉眼的には薯変を認めなか
ったが,組織的には軽度ながら変化を認めた.ま た実質病変の強い部の髄膜すなわち脳底部にはフ
ィブリンと分節球のある脳底髄膜炎が見られる.
b) 肺炎:主として右肺後半部に,うつ血と 肺炎性変化がある.気管支を中心とした病巣が融 合して広範囲に及び,分節球,赤血球,フ1年目 ン等が肺胞内をみたし,変化の強いところでは小 膿瘍化さえ認められる.また気管支腔あるいは肺 胞内には扁平上皮回附引物がみられた.
考 按
本例は臨床的に髄膜炎の疑いで治療を受け,確 定診断が得られぬまま死亡したもので,急性出血 性白質脳炎という診断は專ら剖検所見に基づくも のである.従来の報告にも脳腫瘍,脳膿瘍,ある いは脳栓塞症などの血管傷害を思わせる症状を 挙げ,臨床的診断の困難を述べている・ものが多 い.本例の感冒様前駆症状,発熱,神経症状(幾 つかの文献に見るような片側性麻痺や痙変は認め ないが,多少の左右差を伴う)も,ふりかえって 検討すれば本症に符合する点が多いなお髄液に関 して化学的精査は行なっていないが,主として好 中球による細胞数増加や,一血液の白血球増多症は 多くの報告例において見られる如くである.
剖検:所見の上ではHurst以来記載されている 所見と一致し,大脳および小脳白質の出血と血管 周囲の脱髄巣が特徴的であり,これの融合した大 拳な病巣では小一血管壁の変性,滲出,分節球の浸 潤を認める.多少異なる点は出血および脱髄性変 化に比し血管周囲の細胞浸潤が幾分目立たないご と,また病変の高度且っ融合性の部では視床後部
(灰白質)をまきこんでいることである.
本症は病理組織学的所見において後感染性脳炎=
と近似の関係にあるが,急性播種性脳脊髄膜炎
(Encephalomyelitis disseminata acuta)との酷 似点をあげて,これと本症とは表現に多少の差異
を示すところの同一機序による疾患と考える人も
ある.
この機序に関しては,virus感染,アレルギー 友応,更に中毒との関連などが挙げられている
が,現在最も支持されているのは中枢神経系にお 門188_
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写真1大脳の前額断.中心部白質に密集した病巣 写真2 小脳白質の病変群
写真3小脳の脱髄巣Weil染色 写真4写真3と懸盤.脱髄巣になお軸索が認めら れる.Bodian染色
難 無漏
鴇謬蓼 窒迄嘆
写真5血管周囲の脱髄性変化Wei1染色10倍 写真6 脱髄巣に残存する軸索Bodian染色10倍
けるアレルギー反応説である. るのみでなく,副病変として結節性動脈炎がみら その根拠としては,本症が脳血管壁の線維素様 れる例があったり,抗原抗体反応の一・面としての 変性,壊死を端緒として生ずる出血を主病変とす 脾臓のプラスマ細胞ないしプラスマ芽細胞増殖が 一 189 一
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写真7 血管周囲の脱髄巣Masson染色10倍 写真8輪状ないし球状出血Masson染色 4倍
写真9血管周囲の分節球浸潤(L)および線維素 を含む滲出(F)
強調された例も認められる点などである.また動 物実験を通じてある種のVirus感染→アレルギ ー反応の線が追究されつつあるとの報告も見られ
る.
本例においては,1血管壁傷害は顕著であるが,
他にアレルギー性疾患を示唆するような病変は証 明されなかった.なお死因となったのは,昏睡か ら惹起された吸引性肺炎であり,心筋変性も認め られた.
綜 括
23才の男子で,感冒様症状にひきつづき,頭 痛,意識喪失,痙李,筋緊張,痙李性硬直等の神 経症状が現われ,10日位の経過で死亡したものを
剖検し,大脳・小脳の中心部に限局する小出血巣 および脱髄巣と小1血管壁傷害を認め,急性出血性 白質脳炎と解釈すきぺ所見を得た.
文 献
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