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小麦粉の生地物性を強める低分子量グルテニンタンパク質の

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 船 附 稚 子

学 位 論 文 題 名

小麦粉の生地物性を強める低分子量グルテニンタンパク質の      同定とその育種的利用に関する研究

学位論文 内容の要旨

  生地物性が強い強力粉および準強力粉を利用した加工食品の国内における需要は高いが、

国内生産量は需要の1%にも満たない。小麦粉の生地物性に最も影響するグルテニンタン パ ク質 のう ち、 高分 子量 グルテニンサブユニット(HMW‑GS)については研究が進んでい る が、 低分 子量 グル テニ ンサブュニット(LMW‑GS)と生地物性との関連については十分 解明されていない。本 研究の目的は、生地物性を強めるLMW‑GSを同定し、育種を効率化 するためにこれを検出するDNAマーカーを開発することである。

生 地 物 性 を 強 め るLMW‑GSの 同 定

  カナダ産超強力春まきコムギ品種「Glenlea」、国産強カコムギ品種「春のあけぼの」、な らび に「Glenlea」 のLMW‑GS GL1とGL2を 「春のあけばの」に導入した「NIL」の生地 物性を評価した。その結果、GL1とGL2が「NIL」や「Glenlea」の非常に強い生地物性に 寄与していることが示唆された。「春のあけばの」X「Glenlea」のBC5F2個体のグルテニ ンの 解析 から 、@GL1とGL2は共 分離 する こ と、 ◎GLl/GL2と 「春 のあけぼの」のHA1 のコード遺伝子は対立関係にあることがわかった。「Chinese SpringJX「Glenlea」のF2及 ぴ「Chinese Spring」のditelocentric系統の解析から、GLl/GL2とHA1はGlu‑B3に支配さ れると考えられた。

  超 強 力 粉 並 み の 生 地 物 性 の 強 さ を 持つ 米国 産秋 まき コム ギ系 統「KS831957」 の LMW‑GS KS2、KS3は 、SDS‑PAGEに お い て 「Glenlea」 のGL1、GL2と 同 じ 易 動 度 を 持 っ て い た 。KS3は2D‑PAGEで4つ のLMWGス ポ ッ ト に 分 離 さ れ た が 、 そ の う ち 塩 基 性 側 の2つ のス ポッ ト だけ(KS3aと 命名 )が 独立 に 遺伝 した 。「KS831957̲1x国 産 中カ コム ギ品 種「ホロシリコムギ」に由来する育成系統である「勝系32号」と「勝系 34号 」 の 交 配 に 由 来 す るRILの グ ル テ ニ ン の2D‑PAGEの 結 果 か ら 、Q)KS2とKS3a が 共 分 離 する こと 、◎KS2/KS3aと「 ホロ シリ コム ギ 」のHS1のコ ード 遺伝 子が 対 立 関係 にあ るこ とが 確認 され た。GL1、GL2、HA1はKS2、KS3a、HS1之そ れぞれSDS‑PAGE お よ び2D‑PAGEに おけ る 分離 パタ ーン が酷 似し てお り、 さら に決 定で きた これ ら の LMWGス ポ ッ ト のN末 端 ア ミ ノ 酸 配 列 は す べ て 「SHIPGLERPSQQQPLPP」 に 含 ま れ たことから、これらはそれぞれ類似した機能をもつ分子種と考えられた。「勝系32号」

(HS1及 び 生 地 物 性 を 非 常 に 強 め る こ と で 知 ら れ るHMW‑GS 5+10を 持 つ )X「 勝 系 34号 」(KS2fKS3a及び5+10と 対立 関係 にあ り生 地物 性を 強め る効 果が ないI‑fMW‑GS     −304―

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2+12を 持 つ) のRl[Lの 生地 物 性を評価 した結 果、2+12と5+10のいずれ を共通 に持っ 場 合 も 、HS1を 持 つRILよ りKS2/KS3aを 持 っRILの 生 地 物 性 が 強 か っ た 。 ま た 、 KS2/KS3aと5+10の コー ド 遺 伝子は 交互作 用して生 地物性 を強めた 。このこ とから 、 KS2/KS3a (GLIIGL2)とHMW‑GS 5+10の 両 方を 併 せ 持つ コ ム ギ系 統 が 超強 力 粉 の特 段 に強 い 生 地 物性 を 持 ち得 る と 考え た 。

生 地 物 性 を強 め るLMW‑GSの 候 補 遺伝 子 の 同定

  プライマーS‑type2F/S‑type978Rを用いて「春のあけばの」、「Glenleaj、「NIL」に対して RT‑PCRを行 った結果 、LMW‑GS遺伝 子が増 幅された 。「Glenlea」、「NIL」 のLMW‑GS遺 伝 子(GLEN42K)は 「 春 の あ け ば の 」 のLMW‑GS遺 伝 子(HARU48K)よ り 短 い 反 復 配 列 を 持っ て お り、 既 知 のLMW‑GS遺 伝 子に は 見 られ な ぃ15の グ ルタ ミ ン(Q)か らなる モ チーフ を持つ ことから 、新規 のLMW‑GS遺伝 子である と考えら れた。HARU48K、GLEN42K の 推定 ア ミ ノ酸 配 列 はHA1、GL1、GL2のN末 端 アミ ノ酸配 列を含ん でいた 。これら は ORFを 完 全 に 含 む G3グ ル ー プ のLMW‑s遺 伝 子 と し て は 最 初 の 報 告 と な る 。   LMW‑GSと遺 伝子の対 応付け を行うた めに、 「春のあ けばの 」XFGlenlea」 のBC5F2個 体に対 して、HARU48K.くrLEN42Kの内部配列を増幅するようなプライマーs‑Fl/s‑R2を用 い て ゲ ノ ミ ッ クPCRを行 っ た 結果 、HARU48Kの 内 部 配列 はHA1と 共 分離 し 、GLEN42K の 内部 配 列 はGLl/GL2と 共分 離 し た。 こ の こと から 、くLEN42KはGLl/GLの、HARU48K はHA1の候補遺伝子と考えられた。「KS831957」、「ホロシリコムギ」、「勝系34号」に対 してプライマーS‑type2F/S‑type978Rを用いてRT、‐PCRを行った結果、「ホロシリコムギ」で 得られたLMW一GS遺伝子(H〇R〇´)はロ4鮒朋8Kと塩基配列が100%一致した。「KS831957」、

  「勝 系34号」で 得られ たLMW−GS遺伝子(KイW駝)は(池EMゲ2Kと1塩基のみが異なっ ていた。プライマーs‐F1/s‐R2を用いて「勝系32号」X「勝系34号」のR亅Lのグノミック PCRを 行った 結果、H〇R〇´の 内部配列 はHS1と、ムイN艶の内部配列はKS2爪S3aとそれ ぞれ共分離した。したがって、鮒M口はKS2爪S3aの、〃|〇R〇´はHS1の候補遺伝子と考 えられた。

  GLl/GL2とKS2爪S3a、HA1とHS1は 、それぞ れの候 補遺伝子 の塩基配 列がほ ぼ同一で あったことから、いずれもGん‐ぢjに支配される機能の類似したLMWこGSであると推察さ れ た。GLl/GL2とKS2爪S3aがHA1やHS1より 生 地 物性 を 強 め る効 果 が 高い 原 因は、 こ れらが他の分子と結合してポリマーを高分子量化させるのに適した構造を持ち、さらに適 正の範囲で種子に蓄積していることではないかと推察した。

生 地 物 性 を 強 め るLMW‑GS遺 伝 子 を検 出 す るDNAマー カ ー の 開発 と 育 種的 利 用

  プラ イ マ ーs‑Fl/s‑R2を 用 いて 増 幅 され るDNA断 片 をKS2/KS3a (GLIIGL2)の コ ー ド遺 伝子を検 出するDNAマー カーとし て利用 できるか 否かを 検証する ため、 模擬的選 抜 試 験を 行 っ て、5+10やKS2/KS3a (GLIIGL2)の コード 遺伝子を 検出す るマーカ ーが 増幅した系統のグルテニンタンパク質を調査したところ、マーカーとタンパク質組成が一 致し た。さら に、5+10マ ーカーの みが検 出された 系統よ り、5+10マー カーとGLl/GL2 (KS2/KS3a)マーカーの両者が検出された系統の生地物性が強くなったことから、マーカ ー に よ る 選 抜 で 超 強 カ コ ム ギ 系 統 を 効 率 的 に 育 成 で き る 可 能 性 が 示 さ れ た 。

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学位論文審査の要旨 主 査    教 授    三 上 哲 夫 副査   教授    喜多村啓介 副 査    教 授    大 澤 勝 次

     学位論文題名

小麦粉の生地物性を強める低分子量グルテニンタンパク質の 同定とその育種的利用に関する研究

   本 論文 は82 頁か らな る和 文論 文で あり 、図25 と表9 を含む。別に参考論文18 編が添えられている。、

   生地物性の強い強力粉や準強力粉を利用した加工食品の需要は多いが、国内生産量 は需要の1 %にも満たない。小麦粉の生地物性に最も影響を及ぼすグルテニンタンパ ク質のうち、高分子量グルテニンサブユニット(HMW‑GS) に関しては研究が進んで いるが、低分子量グルテニンサブユニット(LMW‑GS) と生地物性との関連について は十分解明されていない。本研究の目的は、生地物性を強めるLMW‑GS を同定すると ともに、育種の効率化を図るためにこれを検出できる分子マーカーを開発することで ある。得られた結果は以下のように要約される。

1 .生地物性を強めるLMW‑GS の同定

   カナダ産超強力春まき.コムギ品種「Glenlea 」のグルテニンは2 っの主要なLMW‑GS (GLI とGL2) を 含む 。遺 伝解 析を 通じ てGL1 とGL2 は 共分 離し、 強い 生地 物性に 関与することがわかった。また、GLl/GL2 はB ゲノムに含まれるGlu‑B3 遺伝子座に 支配されると考えられた。

   次いで、超強力粉なみの生地物性を示す米国産秋まきコムギ系統「KS831957 」の生

地 物 性 に は 、 LMW‑GS KSl‑‑‑KS5 が 関 与 し て い る こ と を 明 ら か に し た 。

   生地物性を強めるKS2 とKS3a (二次元電気泳動で分離する塩基性側のKS3 スポッ

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ト)はそれぞれGL1 、GL2 とN 末端アミノ酸配列が一致し、電気泳動像も酷似するの で機能の似たほば同一の分子種と考えられる。さらに、KS2/KS3a とHMW‑GS 5+10 の コード遺伝子は交互作用を現わし、生地物性を強めることが判明した。したがって、

KS2/KS3a (GLIIGL2) とHMW‑GS 5+10 の両方を併せ持つコムギが超強カコムギにな り得ると考えた。

2 .生地物性を強めるLMW‑GS の侯補遺伝子の同定

  GLl/GL2 の候 補遺伝子(GLEN42K と命名)およびKS2/KS3a の候補遺伝子(KANS2) を同 定し た。 これらはいずれも新規のLMW‑GS 遺伝子であり、既知のLMW‑GS 遺伝 子に は見 られ ない 15 個 のグ ルタ ミン残 基の 連なるモチーフを持つ。GLl/GL2 や KS2/KS3a と同じN 末端アミノ酸配列を有する既報のLMW‑GS 遺伝子については、完 全長 のORF が公 表されていない。したがって、GLEN42K 、KAN 鉈はORF を完全に含 むLMW‑GS 遺伝子として最初の報告例となる。

  3 .DNA マーカーの開発

   くrLEN42K の内部配列を増幅するプライマーを設計した。これを用いて増幅したDNA 断片は、KS2/KS3a (GLIIGL2) のコード遺伝子を検出するDNA マーカーとして利用 できることを立証した。またこのマーカニを用いた選抜を通じて、超強カコムギ系統 を効率的に育成できる可能性が示された。

   本研究は、小麦粉の生地物性とグルテニンタンパク質組成との関連性を詳細に解析 したものである。得られた知見は強力j ムギの育種に寄与するところが大きく、学術 およぴ応用の両面で高く評価できる。

   よって審査員一同は、船附稚子が博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格を有 するものと認めた。

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参照

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