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博 士 ( 地 球 環 境 ) 山 根 雅 之

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Academic year: 2021

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博 士 ( 地 球 環 境 ) 山 根 雅 之

     学位論文題名

Paleoenvironmental Reconstruction in the Northwest   (Shatsky Rise) Pacific during the Late Quaternary

(後期第四紀の北西太平洋(シャツキーライズ)における古環境復元)

     学位論文内容の要旨

     北西太平洋には貧栄養な黒潮と栄養塩に富む親潮が形成されている。この 2 つの海流は三陸 沖でぶっかり、複雑に混ざり合いながら東進している。これらの表層水塊は過去の気候変動に伴 い、その形成位置を南北に変化させたことが予想される。また、この海域は偏西風下に位置して おり、大量のダストが供給されている。氷期におけるダストの供給量も現在と比べて変動したこ とが予想され、これに伴って海洋表層の生物生産性も変動したことが推測される。また、太平洋 は炭酸カルシウムが溶け始めるLysocline の深度が大西洋に比べると浅く、これまで古環境復元に 適した海底コアがそれほど多く採取されていなかった。特に、北西太平洋は水深カ深く、詳しい 古海洋復元は日本沿岸域の研究報告を除いて、わずかしか報告されていない。そのため、過去20 万年以前の古環境に関する詳しい研究は非常に少なく、Hovan etd(1991) カ鴻冶されているだけで あ り 、 そ の 海 洋 表 層 の 変 動 は 全 く と 言 っ て い い ほ ど 明 ら か に な っ て い な い 。    そこで、本研究では、北西太平洋(シャツキーライズ)において南北トランセクトで採取され たピストンコア乳6 , C 一1 及びS‑2 中に含まれる浮遊性有孔虫の産出量、有孔虫殻の酸素・炭素同 位体比、生物源物質及び金属成分を用いて過去約 55 万年間の海洋表層水塊変動の復元を行った。

前半では3 本のコアを比較することによって、過去15 万年間の古海洋復元を行った。後半では、

3 本のコアの中で最も長いS‑2 コアを用いて、ステージ 7 以前の古い時代の海洋表層の水塊変動を 復元した。

   浮遊性有孔虫殻の14C 年代と酸素同位体比カーブから、コアSt .6 ,C‑l 及びS‑2 は、それぞれ18 ぬ

150 ぬ 550 ka の 古環 境 を 記録 し てい る こ とが 明 らかにな った。寒冷 な水塊の 指標とな る N

pachyderma ) coiling ratio く%)は、コアst .6 く採膨也点:ゴ嚇37 度冫とC‑l 鰾取地点:ゴ隣36 閲

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の酸素同位体比ステージ24 と 5/6 境界で高い値を示した。親潮起源の寒冷な水塊の影響がこれら の時期に強かったことを示している。最も南に位置するコアS‑2 (採取地点:北緯33 度)ではス テージ6 でのみ増加した。これらの結果は、亜寒帯域と亜熱帯域の境界であるPolar Front がステ←

ジ6 で最も南下したことを示唆している。

   海洋表層の生物生産性の指標となる有機炭素沈積量(TOC AR) と生物源オバール沈積量 (Opal AR) は、寒冷なステージ 2 、 4 及び 6 で大きくなっている。これらの時期に海洋表層の生物生産量 が増加したことを示レている。また、同時期に陸源物質沈積量ぐremgenous matter AR) も増加し ている。Terrigenous matter 中に含まれる栄養塩の供給が氷期に増加することによって、海洋表層の 生産性が増加したことが示唆される。コアS‑2 中に含まれる金属成分の沈積量も氷期で増加し、TOC AR .OpalAR との間に相関が見られた。これらのことも陸起源物質の供給カ泳期に増加したこと を支持している。氷期における北西太平洋では、Martin (1991) によって提唱された鉄仮説と同じよ うなヌカこズムが働いていた可能性がある。

   ステージ7 以前のコアS‑2 中の炭酸カルシウム沈積量(CaC03 AR) はV21‑146 (Hovan et 甜.,1991) のそれよりも高い値を示す。また、浮遊性有孔虫の温暖種の産出量はステージ7111 で増加してい る。さらに、N pachyb 黝( s )co 曲lgm め(%)はこれらの期間で小さな値を示している。これらの結 果は、ステージ7 ・ 11 の期間における S12 海域がステージ7 以後よりも相対的に温暖な水塊で占め られていたことを示している。

   海水中の全炭酸の炭素同位体比(61 ℃)を記録しているといわれている浮遊性有孔虫殻の613C に

もステージ7 以前で変化が見られた。海洋表層(80m 付近:[()baandY 綱出っ1992 ])に生息してい

る G 臘艝と水深 400m 付近( ObaandYaslJda , 1992 )に生息しているG ・晩厩ぬの613C は、ステー

ジ7 以前で同じような値を示す傾向がある。これはステージ7 以前の海水中の全炭酸の6  ̄℃の鉛直

勾配が小さくなったことを示している。この鉛直勾配は現在の黒潮域の6BC と似ており、ステージ

7 以前では黒潮系の水塊カ迥鋤ゝったことを意味している。これはステージ 7 以前の水塊カ讎な水

塊であったことと調和的である。

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学位論文審査の要旨

主 査    教 授    大 場 忠 道 副 査    教 授    南 川 雅 男 副 査    助 教 授    長 谷 川 四 郎

副 査    教 授    小 泉    格 ( 大 学 院 理 学 研 究科 )

     学位論文題名

PaleoenvlronmentalReCOnStruCtionintheNOrthWeSt    ( ShatSkyRiSe )PaCifiCduringtheLateQuaternary

(後期第四紀の北西太平洋(シャツキーライズ)における古環境復元)

  北西 太平 洋に は 貧栄 養な 黒潮 と栄 養 塩に 富む 親潮 が形 成 されている。この2つの海 流は三陸沖でぶっか り 、複 雑に 混ざ り 合い なが ら東 進し ている。これらの表層 水塊は過去の気候変動に伴 い、その形成位置を 南 北に 変化 させ た こと が予 想さ れる 。また、この海域は偏 西風下に位置しており、大 量のダストが供給さ れ てい る。 氷期 に おけ るダ ス卜 の供 給量も現在と比べて変 動したことが予想され、こ れに伴って海洋表層 の 生物 生産 性も変動したことが 推測される。また、太平洋 は炭酸カルシウムが溶け始め るLysoclineの深度 が 大西 洋に 比べ る と浅 く、 これ まで 古環境復元に適した海 底コアがそれほど多く採取 されていなかった。

特 に、 北西 太平 洋 は水 深が 深く 、詳 しい古海洋復元は日本 沿岸域の研究報告を除いて 、わずかしか報告さ れていない。 そのため、過去20万年以前の古環境に関する詳しい研究は非常に少なく、Hovan etロ′・(1991) が 報 告 さ れ て い る だ け で あ り 、そ の海 洋表 層の 変 動は 全く と言 っ てい いほ ど明 らか に なっ てい ない 。   そこ で、 本研 究 では 、北 西太 平洋 (シャツキーライズ) において南北トランセクト で採取されたピス卜 ン コアSt.6,C‑l及びS‑2中に 含まれる浮遊性有孔虫の産出 量、有孔虫殻の酸素・炭素 同位体比、生物源物 質 及び 金属 成分 を 用い て過 去約54万 年 間の 海洋 表層 水塊 変 動の復元を行った。前半で は3本のコアを比較 す るこ とに よっ て 、過 去15万年 間の 古 海洋 復元 を行 った 。 後半 では 、3本の コア の中 で最も長いS‑2コア を用いて、ステージ7、22万年以前の古い時代の海洋表層の水塊変動を復元した。

  浮遊性有孔 虫殻の14C年代と酸素同位体比カーブから、コアSt.6,C‑l及びS‑2は、それぞれ18 ka, 150 ka, 554 kaの古環境を記録していることが明らかになった。寒冷な水塊の指標となる〃.pachyderma (s) coiling ratio

(%)は、コ アSt.6(採取地点:北緯37度)とC‑l(採取地点:北緯36度)の酸素同位体比ステージ2‑4と6 境 界で 高い 値を 示 した 。親 潮起 源の 寒冷な水塊の影響がこ れらの時期に強かったこと を示している。最も 南 に位 置す るコ アS‑2( 採取 地 点: 北緯33度 ) では ステ ージ6で のみ 増加 し た。 これ らの結果は、亜寒帯 域 と 亜 熱 帯 域 の 境 界 で あ るPolar Frontが ス テ ー ジ6で 最 も 南 下 し た こ と を 示 唆 し て い る 。

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  海 洋 表 層の 生 物生 産性 の指 標と な る有 機炭 素沈 積量(TOC AR)と 生物 源 オバ ール 沈積 量(Opal AR)は 、 寒 冷 なス テー ジ2、4及 び6で大 き くな って いる 。こ れ らの 時期に海洋 表層の生物生産量が増加し たことを 示し ている。また、同時期に陸 源物質沈積量(Terrigenous matter AR)も増加している。Terrigenous matter 中 に 含ま れる 栄養 塩の 供 給が 氷期 に増加 することによって、海洋表層 の生産性が増加したことが 示唆され る 。 コアS‑2中 に 含ま れる 金属 成 分の 沈積 量も 氷期 で 増加 し、TOC ARやOpal ARと の間に正相関 が見られ た 。 これ らの こと も陸 起 源物 質の 供給が 氷期に増加したことを支持し ている。氷期における北西 太平洋で は 、Martin (1991) に よ っ て 提 唱さ れた 鉄 仮説 と同 じよ うな ヌ カニ ズム が働 いて い た可 能性 があ る 。   ス テージ7、22万年以前のコアS‑2中の炭酸カルシウム沈積量(CaC03 AR)はV21‑146 (Hovan et al.,1991) の そ れよ りも 高い 値を 示 す。 また 、浮遊 性有孔虫の温暖種の産出量は ステージ7‑11の間氷期で増 加してい る。さらに、〃. pachyderma (s) coiling ratio(%)はこれらの期間で小さな値を示している。これらの結果は、

ス テ ージ7‑11の期 間に お けるS‑2海域 がス テー ジ7以後 より も 相対 的に 温暖 な水 塊 で占められて いたこと を示している。

  海 水中 の全 炭酸 の炭 素 同位 体比(613C)を 記 録し てい ると いわれて いる浮遊性有孔虫殻のt)13Cにもステ ー ジ7以前 で変 化が見られた。海洋表層(80m付近:[Oba and Yasuda, 1992])に生息しているG.ruberと水 深400m付 近(Oba and Yasuda,1992)に 生息 し てい るG.inflataの613Cは、ステージ7以前で同じ ような値 を 示 す傾 向が ある 。こ れ はス テー ジ7以前 の海 水中 の 全炭 酸の613Cの 鉛直勾配が小さくなったこ とを示し て い る。 この 鉛直 勾配 は 現在 の黒 潮域 の613Cと似 てお り、 ステージ7以前では黒潮系の水塊が強 かったこ と を 意 味 し て い る 。 こ れ は ス テ ー ジ7以 前 の 水 塊 が 温 暖 な 水 塊 で あ っ た こ と と 調 和 的 で あ る 。   以 上よ り、 この 研究 は 、研 究例 の数少 ない北西太平洋の古環境復元 を著しく高めることに寄与 すると考 え ら れ る 。 特 に 、 酸 素 同 位 体 比 ス テ ー ジ7,22万 年 以 前 の 古 環 境 復 元 に 新 た な 知 見 を も た ら し た 。   審 査員 一同 は、 これ ら の成 果を 高く評 価し、また研究者として誠実 かつ熱心であり、大学院課 程におけ る 研 鑽や 修得 単位 など も 併せ 申請 者が博 士(地球環境科学)の学位を 受けるのに充分な資格を有 するもの と判定した。

参照

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