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博 士 ( 医 学 ) 佐 藤 大 介

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 医 学 ) 佐 藤 大 介

学 位 論 文 題 名

遺 伝 性 疾 患 に お け る 分 子 遺 伝 学 研 究 学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  先天性奇形症候群の発症機構は多岐にわたり、発症の成因によって解析方法も多岐にわ たる。本研究では、複数の先天異常症候群において、その発症機構を考慮しながら、複数 のアプローチ法でその原因・成因を明らかにすべく解析を行った。本研究で対象とした疾 患は、先天性無鼻症、先天性合指症IV型、ダウン症候群である。尚、本研究に用いた患者 試料はすべてインフオームドコンセント取得後、収集・使用した。先天性無鼻症は出生時 より外鼻欠損・外鼻孔の閉鎖を主徴とする極めて稀な先天異常である。原因は不明である が家族発症例の存在と染色体異常例が報告されており遺伝的要因が発症に関与することが 推測されている。いくっかの候補遺伝子が考えられているが、これまで遺伝解析は行われ ていない。合指症は先天性四肢奇形の中で最も高頻度に見られる奇形のーっであり、単独 症状あるいは奇形症候群の部分症状として見られる。癒合している手指・足趾により5型 (I〜V型)に分類される。合指症I、II、III、V型はそれぞれ染色体領域2q34‑q36、2q31‑q32、 6q21‑q23.2、2q31‑q32に遺伝子座がマッピングされている。一方、合指症IV型は、骨癒合 を伴わない完全合指症で、いわゆるコップ手を呈し、Haas型とも呼ばれ極めて稀な疾患で 遺伝子座の局在は不明である。ダウン症候群は精神発達遅滞を伴う最も多い先天異常であ る。殆どのダウン症候群患者は21番染色体完全トリソミーを有するが、稀に21番染色体 部分トリソミーを有する患者が存在し、彼らのゲノム解析からダウン症候群の本質的な特 徴に寄与する遺伝子(群)を含むと考えられている特定領域、Down syndrome critical region (DSCR)の 存在 が 示 唆さ れ て い る。DSCRは21q22の長 さ約5.4 Mbの特 定の範 囲に存在 すると推測されている。本研究では、先天性無鼻症、先天性合指症W型、ダウン症候群に つ い て 、 そ れ ぞ れ の 解 析 法 に よ り 疾 患 発 症 機 構 を解 明 す る こと を 目 的と し た 。

対象と方法

(1)先天性無鼻症5症例の分子遺伝学解析

先天性無鼻症を伴う新生均衡型転座t(3;12)(q13.2;p11.22)を有する台湾人症例の染色体転座 切断 点解析 を行った 。また 、核型正 常の無鼻 症患者4症例のDNAサンプルを用いて解像 度 約 1.5Mbの 全 ゲ ノ ム ア レ イCGH解 析 お よ び 候 補 遺 伝 子 変 異 解 析 を 行 っ た 。

(2)先天性合指症IV型の連鎖解析および変異解析

中 国 で発 見 さ れた非 症候性先 天性合 指症IV型を 伴う5世代8名(男 性4名 、女性4名)

の罹患者を有し、常染色体優性遺伝性の1家系で全ゲノム連鎖解析および候補遺伝子変異 解析を行った。

(3)珍しい核型を呈するダウン症候群患者の解析

DSCRを 狭める可 能性のあ る21番染 色体部分 トリソミーのダウン症候群患者の分子遺伝 学解析を行った。550バンドGバンド解析、染色体SKY (Spectral karyotyping)法、2色カラ ーFISH、解像度 約1.5Mbの全ゲノ ムアレイCGH解析を行った。染色体切断点を同定すべ く通常のFISH解析も行った。

283

(2)

結果

(1) ゲ ノ ム デ ー タ ベ ー ス 上 か ら3q切 断 点 付 近 に 局 在す るBACク ロ ーン を 選 択 し、 次 い で 各 クロ ー ン を 用い たFISH解 析 を患 者 染 色 体上 で 行 っ たと こ ろ3q13.2転座 切 断 点 領域 に 約19 Mbの 欠 失 を 確 認 し た 。 も う 一 方 の 切 断 点 の12p11.22で は、 転 座 点 を含 むBACク ロ ー ン が同 定 で き たが 、 ゲ ノ ムデ ー タ ベース上 で転座 によっ て破壊 されて いる既 知遺伝 子は 存 在 せ ず 、 ま た 欠 失 も 無 いと 考 え ら れた 。 全 ゲ ノム ア レ イCGH解 析 で は 、ゲ ノ ム コ ピー 数 の 異 常 は 認 め な か っ た 。FISH解 析 で 明 らか に な っ た19 Mbの3q欠 失 領 域内 に 顔 面 発生 に 関 わ る 遺 伝 子C〇L8A1とCPOXが 存 在 し 、 そ れ ら を 候 補 遺伝 子 と 考 え正 常 核 型4症 例の 無 鼻 症 のDNAを 用 い て エ ク ソン 及 び エ クソ ン 近 傍 イン ト ロ ン の変 異 解 析 を行 っ た が 病的 変異は見っからなかった。

(2) 全 ゲノ ム に 均 一に 分 布 す る計406個 の マイ ク ロ サ テラ イ ト マ ーカ ー を 用 いた ア レル タイ ピング では7人(II‑2、III‑2、5、6、7、IV‑2、3) のDNAサン プルの みが解析できた。そ の 結 果 ロ ッ ド ス コ ア が1以 上 の 候 補 領 域 が5箇 所 ( そ れ ぞ れ2番 、7番 、12番 、16番 、 17番 染 色 体 上 のD2S2152、D7S559、D12S1052、D16S3039、D17S182)見 っ か っ た 。 こ れ ら の5候補 領 域 の 内、 ハ プ ロ タイ プ 解 析 によ り4候 補 領 域 が除 外 さ れ 、7q36.3のD7S559 の み が合 指 症1V型 の 候 補 領域 と な っ た。7q36.3周 囲の マ ー カー を追加 し、後 に得ら れた4 人(IV‑1、4、V‑l、2) のDNAサ ン プ ル を 加 え 更 な る解 析 を 行 った 。 候 補 領域 内 の2点 解 析 で 最大 ロ ッ ド スコ ア は 組 換え 率0.00、 浸 透率1.00で1.613を算出 した。 ハプロタ イプ解 析 に よ り5マ ー カ ー 、D7S1815、D7S798、D7S637、D7S2447、D7S559で 罹 患 者の み 同 一 ハプ ロタイ プ3 ‑1‑1―3‑4を共有 していた 。これ らの所 見より本家系の合指症IV型の遺伝子座 は 算 出ロ ッ ド ス コア が 完 全 な連 鎖 を 認 める に は 十 分な 値 で は ない が7q36の17.39‑cMに存 在 す ると 考 え ら れた 。 そ の 領域 内 でLMBR1、 駢 え 臥ZRSを 候 補 遺伝 子 と 考 えエ ク ソ ン 及び エ ク ソ ン 近 傍 イ ン ト ロ ン の 変 異 解 析 を 行 っ た が 病 的 変 異 は 見 っ か ら な か っ た 。

(3)患者の核型は最終的に46,XX,psu idic(21)(q22.13)ins(13;21)(q12.l;q22.13q22.3)dnと考 え ら れ た 。 ア レ イCGHは 同 一の21番 染色 体 部 分 トリ ソ ミ ー 領域 を 検 出 した が 他 の ゲノ ム コ ピ ー数 の 異 常 は認 め な か った 。 ゲ ノムデー タベー ス上で 切断点 に既知 遺伝子 が存在 しな いことも確認した。

考 察

(1) 転 座例 の 先 天 性無 鼻 症 の 切断 点 に 既 知遺 伝 子 は 存在 し なか ったが 、その 切断点 に未 知 のRNA転 写 物 が 存 在 す る 可能 性 と 、 切断 が 長 距 離位 置 効 果 を及 ば し て いる 可 能 性 が考 え ら れた 。 ま た 、3q11.2‑3q13.31欠 失領域 と一部 分でも 重複す る欠失 を有す る症例 の欠失 領 域 と臨 床 所 見 との 比 較 に より 、3q12‑3q13.31欠失領 域は先 天性無 鼻症発 症に関係 ないと 考 え られ 、 無 鼻 症遺 伝 子 局 在が3番 染 色体長 腕にある ならば 、3q11.2‑3q12間に限局 できる と 考 えら れ た 。

(2) 全 ゲ ノ ム 連 鎖 解 析 に よ り合 指 症IV型 の 遺 伝 子座 を7q36に マ ッ ピン グ し た 。ま た 合 指 症IV型 は 合 指症I、1I、III、V型 と はnon‑allelicな 疾患で あると 考えら れた。 合指症IV 型 の 遺伝 子 座 の マッ ピ ン グ は初 め て の報告で あり、 今後原 因遺伝 子同定 の有カ な第一 歩と な る と思 わ れ る 。

(3) 正 確 な 切 断 点 が 同 定 さ れて い る21番 染 色 体 部分 ト リ ソ ミー 症 例 群 と本 患 者 の トリ ソ ミ ー 領 域 を 比 較 す る こ と に よ り 、DSCRの 範 囲 を 従 来 の 約5.4 Mbか ら 約2.3 Mbま で に 絞 り 込む こ と が 可能 で あ る と考 え ら れた。我 々の患 者はダ ウン症 候群の 殆どの 主要症 状を 呈 し てい た の で 、今 回 新 た に限 局 さ れ たDSCRは 人 間 の ダウ ン 症 候 群発 症 の 主 要な 役 割を 担 う と考 え ら れ た。

284

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

遺伝性疾患における分子遺伝学研究

  先天性奇形症候群の発症機構は多岐にわたり、発症の成因によって解析方法も多岐にわた る。本研究では、複数の先天異常症候群において、その原因・成因を明らかにすべく分子遺 伝学解析を行った。本研究で対象とした疾患は、先天性無鼻症、先天性合指症1V型、ダウン 症候群である。先天性無鼻症は出生時より外鼻欠損・外鼻孔の閉鎖を主徴とする先天異常で ある。合指症IV型は、骨癒合を伴わない完全合指症で遺伝子座は不明である。ダウン症候 群は精神発達遅滞を伴う最も多い先天異常でダウン症候群の本質的な特徴に寄与する遺伝 子( 群)を含 むと考え られて いる特定領域、Down syndrome critical region (DSCR)が 21q22の約5.4 Mbに存在すると推測されている。本研究では、先天性無鼻症、先天性合指 症IV型、ダウン症候群にっいて、分子遺伝学解析法により疾患発症機構を解明することを目 的とした。

  対象は先天性無鼻症では新生均衡型転座t(3;12)(q13.2;p11.22)を有する1症例と核型正常 の4症例で 、転座切 断点解 析およぴ全ゲノムアレイCGH解析と候補遺伝子変異解析を行っ た。 先天性合指症1V型では中国の5世代8名の罹患者を有し、常染色体優性遺伝性の1家系 で全 ゲノム連 鎖解析お よび候 補遺伝子変異解析を行った。ダウン症候群ではDSCRを狭め る可 能性のあ る21番染 色体部分 トリソミーのダウン症候群患者の分子細胞遺伝学解析を 行った。

  結果 として転 座例の 先天性無 鼻症でFISH解析を行ったところ3q13.2転座切断点領域に 約19 Mbの欠失 を確認 した。も う一方の 切断点12p11.22では、 転座点を 含むBACクロー ンが 同定できたが、転座によって破壊されている既知遺伝子は存在しなかった。全5症例 の全 ゲノムアレイCGH解析では、3qの欠失以外にはゲノムコピー数異常は認めなかった。

2つ の候補 遺伝子を 同定し 正常核型4症例の無鼻症で変異解析を行ったが病的変異は見つ から なかった 。先天性 合指症 では全ゲ ノム連 鎖解析で 合指症IV型の遺伝 子座を7q36の     ―285―

典 宏

俊 則

   

原 水

田 江

   

   

笠 清

秋 小

(4)

17.39‑cMにマッピングした。3つの候補遺伝子を変異解析したが病的変異は見っからなか った。  ダウン症候群患者の核型は  46,XX,psu

idic(21) (q22.13)ins(13;21)(q12.l;q22.13q22.3)dnと 考 え ら れ た 。   以上の結果より転座例の先天性無鼻症の切断点に既知遺伝子は存在しなかったが、その切 断点に未知のRNA転写物 が存在する可能性と、切断が長距離位置効果を及ぼしている可能 性が考えられた。また、他の3q欠失症例との比較により、無鼻症遺伝子局在が3q11.2‑ 3q12 間に限局できる可能性が考えられた。先天性合指症IV型では全ゲノム連鎖解析により遺伝 子座を7q36にマッピングした。ダウン症候群では21番染色体部分卜リソミー症例群と本 患者 の卜 リソ ミー 領域 を比 較することにより、DSCRの範囲を従来の約5.4 Mbか ら約2.3 Mbまでに絞り込むことが可能であると考えられた。

  非公開発表に際し、主査の笠原正典教授から、先天性無鼻症の候補領域、候補遺伝子、他 の候補遺伝子の可能性、合指症の候補領域、候補遺伝子、候補領域内の他の遺伝子、本研究 において申請者が実験を行った範囲、今後の本研究の発展性にっいて、副査の清水宏教授か ら、先天性無鼻症5症例 の表現型、同病は単一遺伝子病かどうか、合指症の候補領域の確 実性、更なる候補領域限局の必要性、新たなDSCR内 にダウン症候群関連遺伝子の有無に ついて、また副査の秋田弘俊教授から先天性無鼻症候補領域内の遺伝子の発現部位、同病発 症原因の考察、ダウン症候群と癌の関連性、遺伝子 の3倍量発現で正常と異なる表現型を 生じる機序にっいて、また副査の小野江和則教授から先天性無鼻症の報告数、候補遺伝子変 異解析部位と候補遺伝子を完全に否定できるかどうか、原因遺伝子の破壊という用語使用法、

合指症発生機序および治療、ダウン症候群の寿命について、また副査の有賀正教授から先天 性無鼻症の発生機序における家族発症報告例の遺伝的解釈、合指症IV型の表現型について の 質 問 が あ っ た が 、 い ず れ の 質 問 に 対 し て も 申 請 者 は 妥 当 な 回 答 を し た 。   本研究は、先天性無鼻症の初の分子遺伝学解析、合指症IV型の遺伝子座の初のマッビン グ、DSCR狭小化の可能性という多くの新しい知見を 示した点で高く評価され、今後、こ れらの結果をふまえてこれらの疾患の原因遺伝子を同定し発症機構を解明する有カな手が かりとなることが期待される。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得単位なども併 せ 申 請 者 が 博 士 ( 医 学) の学 位を 受け る のに 充分 な資 格を 有す るも のと 判定 した 。

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参照

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